JP2014173997A - 近赤外イメージング装置校正用ファントム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ファントム1は、例えば、少なくとも外表面11が光不透過性の樹脂からなる本体10と、本体10の上面11aから下面11bに向かって延びた筒状開口部13と、筒状開口部13内に収容された蛍光色素12と、動物組織の光透過性に近似した光透過性を有しかつ筒状開口部13を覆うキャップ20と、を備える。筒状開口部13は、本体10に少なくとも3つ以上設置される。キャップ20は筒状開口部13の設置数に対応した数が設置される。キャップ20の厚みt又は蛍光色素12の濃度或いは量のうち、いずれかのパラメータが変化するように設定されていることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
近年、医療や動物実験の分野においては、非侵襲的な画像診断法の発展が著しい。画像診断法には、μCT等のコンピュータ断層撮影法(Computed Tomography;CT)やポジトロン断層法(Positron Emission Tomography;PET)の他、近赤外分光法(NIRS: near-infrared spectroscopy)が挙げられる。
しかしながら、NIR装置を利用した画像診断の分野では、X線診断装置で使用されているような校正用ファントムが実用化されていないのが現状である。この校正用ファントムとは、(1)同一のNIR装置で同一の被診断対象の経時的な変化を定量的に評価したい場合や(2)同一条件下の実験(例えば動物実験)を異なるNIR機種を用いて診断し、各装置での検出結果(検出された出力値)に差が生じないようにしたい場合に、検出される出力データの標準化を行うための装置であり、いわば、NIR装置を使用する際の「共通の物差し」或いは「標準器」となるべきものである。
上述したように、NIR画像診断の分野においては実用化或いは市販されたファントムは見受けられない。また、異なる機種間のデータの標準化を目的とするファントムの発想すら提案されているかどうかも定かではない。
ところで、NIR装置校正用ファントムに封入される蛍光色素は、蛍光顕微鏡などに使用されかつ励起・蛍光波長の短いフルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate; FITC)などの蛍光色素に比べて、比較的減衰しにくい物性を有すると言われている。しかしながら、ファントムの外形を光が透過する素材にした場合、この蛍光色素を保存できる期間が極端に短くなってしまい、このことが、NIR装置による被診断対象の経時変化の定量評価に障害となり、ひいてはファントム実用化への障壁となることが懸念される。
一方、動物組織や生体器官組織の光学的挙動に近い挙動を発揮する材料でファントムを作製することは、被測定物全体を模擬(シミュレーション)する上でメリットが大きい。しかしながら、このような材料のみからなるファントムを使用する場合には、実際の動物や生体をNIR装置で計測した場合に観察されるような散乱光やボケを誘発することになり、ファントムとしてのデータ再現性を不安定にさせかねない。このデータ再現性の不安定化も、データ校正やデータの標準化という本来の目的にかなったファントムの実用化を阻む要因となり得る。
さらに、本発明者らは、使用するNIR装置毎(つまり機種毎)の光学特性を明らかにするとともに、各装置で得られる定量性の正確さを向上する必要性や課題を感じた。より具体的には、本発明者らは、使用する機種毎に光学特性に関する検量線を得ることのできるファントムの必要性に気が付いたのである。こうした要求を満足するファントムは今までに見当たらないばかりか、そもそも、ファントムを使って上記の点を事前に検証するといった発想自体も見当たらない。
少なくとも外表面が光不透過性の樹脂又は光不透過性の硬質ゴムからなる本体と、
前記本体の上面から下面に向かって延びた筒状開口部と、
前記筒状開口部内に収容された蛍光色素と、
生体組織又は動物組織の光透過性に近似した光透過性を有しかつ前記筒状開口部を覆うキャップと、
を備え、かつ、
前記筒状開口部は前記本体に少なくとも3つ以上設置され、
前記キャップは前記筒状開口部の設置数に対応した数が設置され、
前記キャップの厚み又は前記蛍光色素の濃度或いは量のいずれかのパラメータが変化するように設定してあることを特徴とする近赤外イメージング装置校正用ファントム。
(態様2)
前記本体には、少なくとも3つ以上の前記筒状開口部からなる複数のアレイを有し、
第1アレイでは、前記キャップの厚み又は前記蛍光色素の濃度或いは量のいずれかのパラメータが変化するように設定され、
第2アレイでは、前記パラメータのうち、前記第1アレイで設定したパラメータとは異なるパラメータが変化するように設定されていることを特徴とする態様1に記載のファントム。
(態様3)
前記本体は、前記パラメータのうち、前記第1・第2アレイで設定したパラメータとは異なるパラメータが変化するように設定された第3アレイを有することを特徴とする態様2に記載のファントム。
(態様4)
前記本体の前記樹脂又は前記硬質ゴムは、黒色を呈する樹脂又は黒色を呈する硬質ゴムであることを特徴とする態様1〜3のいずれかに記載のファントム。
(態様5)
前記キャップは、シリコンゴムであることを特徴とする態様1〜4のいずれかに記載のファントム。
(態様6)
前記筒状開口部には、前記蛍光色素を封入するように粘稠性を有した液体がさらに注入されていることを特徴とする態様1〜5のいずれかに記載のファントム。
図1乃至図3は、実施例1の近赤外イメージング装置校正用ファントム1の構成を示した図である。特に、図1は、ファントム1の構成部材であるキャップ20(具体的には、複数のキャップ20a〜20j)を本体10から離した状態を示したファントム1の分解斜視図である。一方、図2は、これらの構成部材10,20を組み付けた状態を示したファントム1の斜視図及び平面図である。さらに、図3の各図は、図2の各破断線(A−A’線及びB−B’線)で破断した断面図である。
先ず、本発明のファントム1は、少なくとも外表面11が光不透過性の樹脂又は光不透過性の硬質ゴムからなる本体10を備える。ここで、外表面11とは、上下面11a,11b及び四方の側面11c〜11fを意味し、さらに、これらの面11a〜11fを有する本体外縁部分をも含んでもよい。
さらに、本体10には、上面11aから下面11bに向かって延び、かつ、蛍光色素12を収容可能な筒状開口部13が複数個(少なくとも3つ以上)、設けられている。図示の例では、これらの開口部13は、本体10の深さ方向(つまり鉛直方向)に延びた円筒状を成し、内径が軸方向に沿ってほぼ同一である。
ここで、図3(a)及び図3(b)を参照しながら、筒状開口部13に収容される蛍光光色素12について説明を加える。蛍光色素12として、NIR装置に通常設置される光源31からレーザー光等の光を照射した際に、600nm〜900nmの付近で励起波長と発光波長とを有する色素であれば良い。なお、この蛍光色素12を直接使用するだけでなく、この蛍光色素12を標識した材料(例えば、ビスフォスフォネート(bisphosphonate)、パミドロネート(pamidronate))を使用するようにしてもよい。
一方、蛍光色素12を封入する方法については、蛍光色素12を通常の濾紙(図示せず)に染み込ませて筒状開口部13内に載置する方法、蛍光色素12と水(図示せず)とを混ぜ、水溶液状態の蛍光色素12を筒状開口部13内に注入する方法等が考えられるが、必ずしもこれらに限定されない。さらに、後者の水に替えて、透明或いは半透明の粘稠性を有した液体15で蛍光色素12を封入した、ゲル状の蛍光色素12を筒状開口部13内に注入するようにしてもよい。
さらに、本発明のファントム1は、上述の本体10の他に、生体組織又は動物組織の光透過性に近似した光透過性を有しかつ筒状開口部13を覆う複数のキャップ20を備える。各キャップ20a〜20jは、図示のように、ファントム1の製造段階では、上述の蛍光色素12や粘稠性を有した液体15を筒状開口部13内に封入できるようにするため、筒状開口部13に着脱可能に設置されていてもよい。しかしながら、ファントム1がNIR装置へ使用される段階では、各キャップ20a〜20jは、通常、筒状開口部13へ堅固に固定される。
ここで、生体組織又は動物組織の光透過性に近似した光透過性を有するキャップ20の材料として、例えばシリコンゴムが挙げられる。好ましくは、透明又は半透明のシリコンゴムであり、さらに好ましくは、表面が比較的滑沢で半透明な(白濁色の)シリコンゴムである。キャップ20における表面の滑沢度として、表面を十点測定したときの平均高さをRzと表記した場合、好ましくはRz≦5μmであり、さらに好ましくはRz≦3μmである。
上述の蛍光色素12を封入した筒状開口部13にさらに、上述のキャップ20を取り付けることで、本発明のファントム1は完成する。図3(a)に示すように、本発明のファントム1は、NIR装置の光源31からファントム1へ光が入射する経路つまりパスP1及びファントム1から検出器32へ光が戻るパスP2に当たる部分にのみ、光透過性のある素材(キャップ20、蛍光色素12、空気層16、水(図示せず)、粘稠性を有した液体15など)が割り当てられ、その他の部分には、光を透過しない素材(つまり、本体10の材料)が割り当てられた構成を採用している。
また、筒状開口部13は、上述の通り、少なくとも3つ以上設置され、キャップ20も筒状開口部13の設置数に対応した数が設置される。つまり、NIR装置でファントム1を測定した際に、その検出エリアが複数(3個以上、実施例1では10個)となる。
さらに、図示の例では、5つの筒状開口部13及びキャップ20が列(以下、アレイとも呼ぶ。)を成し、さらにこのアレイが複数(2つ)並んだ構成をしている(図2(b)に示すA1,A2を参照)。そして、図1及び図3(a)に示すように、第1アレイA1では、キャップ20(20a〜20e)の厚みtが変化するように設定されている。一方、第2アレイA2では、第1アレイA1で設定したパラメータ(つまり、キャップ20の厚みt)とは異なるパラメータ(つまり、蛍光色素12の濃度)が変化するように設定されていることに留意されたい。
以上のようなパラメータを変化させた筒状開口部13及びキャップ20(つまり、検出エリア)が少なくとも3つ以上、本体10に設置した場合、本発明のファントム1は、以下の利点・効果を発揮するようになる。
本発明のファントム1を実際に試作し、蛍光性能の検証を行った(この試作品を実施例2のファントム1とも呼ぶ。)。なお、図4(a)は実施例2のファントム1全体の外観を示し、図4(b)は、第1アレイA1上の各キャップ20a〜20eの外観を示す。
本体10には、図4(a)に示すように、黒色(マットブラック)を呈する樹脂材料(具体的には、熱可塑性樹脂の一種であるポリアセタール(polyoxymethylene;POM))を採用し、そのサイズをヌードマウスの体幹サイズに近似するよう、縦×横×高さを40mm×80mm×22mmに加工した。なお、ポリアセタールは、加工性、耐衝撃及び耐摩耗性に優れた材料であるだけでなく、吸水・吸湿性が少なく、耐溶剤性にも優れた材料であると知られており、本体10の材料として好適である。
さらに、本体10には、その上面11aから深さ方向(鉛直方向下向き)に延びた合計10個の筒状開口部13をドリル加工により形成した。そのうち5個の筒状開口部13が第1アレイA1を構成し、残りの5個の筒状開口部13が第2アレイA2を構成するようにした。
これらの第1・第2アレイA1,A2上の筒状開口部13に着脱自在に取り付け可能なキャップ20(20a〜20j)には、滑沢な表面を有した半透明色のシリコンゴムを採用した。なお、第1アレイA1上のキャップ20a〜20eには、互いに同一の直径(6mm)を有するが、異なる長さ(1mm、2mm、4mm、8mm、16mm)を有するものを使用した。一方、第2アレイA2上のキャップ20f〜20jには、互いに同一の直径(6mm)と長さ(1mm)とを有するものを使用した。さらに、第1・第2アレイA1,A2上のキャップ20a〜20jには、直径8mm及び厚み0.8mmを有した円筒状の鍔部21が設けられている。各鍔部21は、筒状開口部13に設置された際に隙間Gを形成するよう円筒の一部が切除された面を有する。
実施例2の蛍光色素12には、励起波長及び発光波長がそれぞれ680±10nm及び700±10nmを有するもの、具体的には、パミドロネート(商品名;Osteosense、製造元VisEn Medical, Inc.)に標識された色素を使用した。この蛍光色素12を、5%のアルギン酸ナトリウム(sodium alginate)と2%の塩化カルシウム水和物(CaCl2・2H2O)を等量混合して作製した2.5%のアルジネートゲル(alginate gel)15中に封入した状態で、第1アレイA1上の筒状開口部13内に収容した。なお、本検証試験において、アルジネートゲル15の濃度は1〜3%が好ましいことが確認された。
以上のように蛍光色素12が収容されたファントム1の蛍光強度の経時変化を、NIR装置を用いて検証した。なお、測定時以外の保存期間は、ファントム1をアルミホイルで包み、4℃下の冷蔵庫内に保管するようにした。
10 本体
11(11a〜11f) 本体の外表面
11a 本体の上面
11b 本体の下面
11c,11d,11e,11f 本体の側面
12 蛍光色素
13 筒状開口部
14 キャップ支持部
15 粘稠性を有した液体(アルジネートゲル)
16 空気(空気層)
20(20a〜20j) キャップ
21 キャップの鍔部
22 キャップの本体
31 近赤外イメージング装置の光源
32 近赤外イメージング装置の検出器
A1 筒状開口部、キャップ、及び蛍光色素からなる検出エリアの第1アレイ
A2 筒状開口部、キャップ、及び蛍光色素からなる検出エリアの第2アレイ
P1 光源からファントムまでの入射光の経路(パス)
P2 ファントムから検出器までの反射光の経路(パス)
t キャップの厚み
Claims (6)
- 少なくとも外表面が光不透過性の樹脂又は光不透過性の硬質ゴムからなる本体と、
前記本体の上面から下面に向かって延びた筒状開口部と、
前記筒状開口部内に収容された蛍光色素と、
生体組織又は動物組織の光透過性に近似した光透過性を有しかつ前記筒状開口部を覆うキャップと、
を備え、かつ、
前記筒状開口部は前記本体に少なくとも3つ以上設置され、
前記キャップは前記筒状開口部の設置数に対応した数が設置され、
前記キャップの厚み又は前記蛍光色素の濃度或いは量のいずれかのパラメータが変化するように設定してあることを特徴とする近赤外イメージング装置校正用ファントム。 - 前記本体には、少なくとも3つ以上の前記筒状開口部からなる複数のアレイを有し、
第1アレイでは、前記キャップの厚み又は前記蛍光色素の濃度或いは量のいずれかのパラメータが変化するように設定され、
第2アレイでは、前記パラメータのうち、前記第1アレイで設定したパラメータとは異なるパラメータが変化するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のファントム。 - 前記本体は、前記パラメータのうち、前記第1・第2アレイで設定したパラメータとは異なるパラメータが変化するように設定された第3アレイを有することを特徴とする請求項2に記載のファントム。
- 前記本体の前記樹脂又は前記硬質ゴムは、黒色を呈する樹脂又は黒色を呈する硬質ゴムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のファントム。
- 前記キャップは、シリコンゴムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のファントム。
- 前記筒状開口部には、前記蛍光色素を封入するように粘稠性を有した液体がさらに注入されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のファントム。
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