以下に添付図面を参照して、本発明に係る遠心顕微鏡の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る遠心顕微鏡の全体構成例を示す斜視図、図2は、第1の実施の形態の遠心顕微鏡における固定部品の内部の構成を説明するための部分構成図、図3は、第1の実施の形態の遠心顕微鏡の全体構成例を上から見た上面図、図4は、第1の実施の形態の遠心顕微鏡の縦断面図、図5は、第1の実施の形態の遠心顕微鏡にスピンドルユニットを装着させた状態の遠心顕微鏡の全体斜視図、図6は、第1の実施の形態の遠心顕微鏡における試料装着部の縦断面図、図7は、第1の実施の形態の遠心顕微鏡における流路形成チップの流路パターンを概略的に示す平面図、図8は、第1の実施の形態の遠心顕微鏡における絞り系の縦断面図である。
第1の実施の形態に係る遠心顕微鏡は、サンプルに対して遠心力を作用させることで、このサンプルから所定の物質を分離あるいは合成させる装置に、分離反応中あるいは合成反応中におけるサンプルの状態をリアルタイムで目視により確認することが可能なものである。
図1から図5に示すように、第1の実施の形態に係る遠心顕微鏡Aは、所定の回転軸2を中心に回転する回転盤4と、回転盤4の外周部に配設されてサンプルを収容して回転盤4と共に回転する反応器6と、反応器6内におけるサンプルの状態を目視により観察するための顕微鏡8とから構成されている。そして、遠心顕微鏡Aは、反応器6内のサンプルに対して遠心力を作用させることで、このサンプルから所定の物質(液体、固体および気体、若しくはこれらの混合体など)を分離、あるいは、合成させている。
なお、遠心顕微鏡Aの大きさや形状、具体的には、回転盤4の大きさや形状は、遠心分離あるいは遠心合成させるサンプルの性質や数などに応じて任意に設定すればよいが、本実施の形態においては、回転盤4が直径220mmの円盤として構成されている場合を、一例として想定する。また、反応器6は、その内部に所定のサンプルを収容し、サンプルを遠心分離反応あるいは遠心合成反応させることが可能であれば、その形態は特に限定されず、任意の形態を成す反応器6を選択して適用することができるが、本実施の形態においては、チップ型の反応器6が適用されている場合を、一例として想定する。そして、反応器6は、内部にサンプルを収容した状態で、回転盤4に対して固定され、回転盤4とともに回転している。
上述した遠心顕微鏡Aにおいて、顕微鏡8は、反応器6内におけるサンプルの状態を観察可能となるように回転盤4の所定位置(外周部)へ固定されている。この回転盤4には、顕微鏡8で捉えた反応器6内のサンプル状態の顕微鏡画像を撮影するための撮像デバイス10と、撮像デバイス10で撮影された顕微鏡画像の撮影像を、リアルタイムで動画として無線により伝送するための映像無線伝送デバイス12が取付けられている。なお、本実施の形態において、顕微鏡8は、一例として、反応器6内におけるサンプルの状態を捉える対物レンズ8aと、対物レンズ8aが捉えた顕微鏡画像を撮像デバイス10まで伝達するための光路が内部に形成された鏡筒8bとを備えて構成されている。また、撮像デバイス10には、顕微鏡8で捉えた反応器6内のサンプル状態の顕微鏡画像を撮影することが可能な各種の撮像装置を適用することができるが、本実施の形態においては、撮像デバイス10としてCCDカメラを適用した場合を一例として想定する。
この場合、顕微鏡8は、鏡筒8b内において、顕微鏡8の光路が回転盤4の盤面(図4の上側の面)4aに対して所定の角度で部分的に屈折されており、撮像デバイス(以下、CCDカメラという)10は、所定角度で屈折された顕微鏡8の光路上で、上述した顕微鏡画像を撮影可能となるように、回転盤4の回転中心の近傍に位置付けられている。なお、以下の説明においては、上述した顕微鏡8の光路を観察光路と呼び、この観察光路を進む光を観察光と呼ぶ。
本実施の形態においては、一例として、図4に示すように、顕微鏡8の鏡筒8b内へミラー14を観察光路の屈折角に応じて任意に設定される所定角度だけ観察光路に対して傾斜して配設している。なお、図4に示す構成において、遠心顕微鏡Aは、顕微鏡8の対物レンズ8aが反応器6内のサンプル状態を垂直方向(同図の上下方向)の上方から捉えると共に、回転盤4の回転中心の近傍で回転盤4の盤面4aに対して平行する方向(水平方向)から対物レンズ8aが捉えた顕微鏡画像をCCDカメラ10で撮影する構造を成している。このため、ミラー14を図4の観察光nの進入方向に対して約135°の角度で後傾させて顕微鏡8の鏡筒8b内に配設することで、進入した観察光nを約90°だけ屈折させ、回転盤4の盤面4aに対して平行となるようにさらに進行させている。なお、顕微鏡8は、その鏡筒8bを略直角に屈折させることで、鏡筒8b内に略直角に屈折した観察光路を形成した構成とすればよい。
この場合、顕微鏡8を回転盤4の周縁部へ位置付けることで、垂直方向から進入した観察光nがミラー14によって回転盤4の周方向から中心方向へ向けて回転盤4の盤面4aと平行して屈折するように、その進行方向を変化させる構成とすることができる。この結果、顕微鏡8は、その観察光n(即ち、顕微鏡画像)が回転盤4の中心部、即ち、回転盤4の回転中心の方向へ向けて到達(収束)される構造となり、CCDカメラ10を観察光路の到達(収束)先へ位置付けることで、CCDカメラ10が回転盤4の回転中心の近傍で顕微鏡の観察光nを捉えること、具体的には、顕微鏡画像を撮影することが可能な構成とすることができる。
このため、CCDカメラ10を回転盤4の回転中心の近傍に位置付けることができ、回転盤4が回転することによって遠心力が生じた場合であっても、CCDカメラ10に対して作用する遠心力を軽減させることができ、遠心力によってCCDカメラ10の性能が阻害されることや撮影時の顕微鏡画像がブレることがなく、CCDカメラ10において常に安定した顕微鏡画像の撮影を行うことが可能となる。
また、上述したように顕微鏡8を観察光路がミラー14によって屈折される構造とすることで、顕微鏡8の鏡筒8bの高さ(図4の上下方向の距離)を抑えることができる。これにより、回転盤4が回転することで回転振動が発生した場合であっても、回転振動に対する顕微鏡8の剛性を高めることができ、顕微鏡8において常に安定した反応器6内におけるサンプル状態の観察を行うことが可能となる。但し、鏡筒8bの高さを抑えるためには、顕微鏡8を観察光路の屈折角度が0°より大きく90°以下となる構造とすることが好ましい。
なお、顕微鏡8は、その鏡筒8bが反応器6に対して垂直方向(鉛直方向−図4の上下方向)へ上下動可能な構造を成しており、このような構造を成すことにより、反応器6(具体的には、サンプル)と対物レンズ8aとの間の距離(焦点距離)を調整することができるようになっている。この場合、回転盤4には、その盤面4aに対して垂直方向へ所定の長さで延出したガイド(以下、Z軸ガイドという)20が設けられており、鏡筒8bをZ軸ガイド20に沿ってスライドさせることで、顕微鏡8は、サンプルと対物レンズ8aとの焦点距離を調整する構造となっている。
また、本実施の形態においては、顕微鏡8の対物レンズ8aと反応器6とを同一部品(以下、固定部品という)16の内部に収容すると共に、収容された対物レンズ8a及び反応器6を固定部品16と一体的に回転盤4へ固定することで、対物レンズ8aと反応器6との間の外部振動(具体的には、回転盤4の回転によって生ずる回転振動)による相対変位を極小化させている。これにより、顕微鏡8は、常に安定して反応器6内のサンプル状態をブレのないクリアな画像として捉えることができ、分離過程あるいは合成過程におけるサンプルの状態を正確且つ確実に観察することが可能となる。
この場合、固定部品16の内部には、図2に示すように、所定の照明装置(例えば、エッジ式のLED(Light Emitting Diode)バックライト)22が設けられており、サンプルを顕微鏡8の対物レンズ8aとは反対側から照明装置22で照らして透過させた状態で観察できるようにしている。これにより、反応器6内におけるサンプルの状態をより鮮明に観察することができ、対物レンズ8aによって当該サンプル状態を、よりクリアな顕微鏡画像として捉えることができる。なお、照明装置(エッジ式のLEDバックライト)22の光源であるLED22aは、上述したCCDカメラ10と同様に、回転盤4の回転によって生じる遠心力の作用を軽減させるため、回転盤4の回転中心の近傍に位置付けられている。
ここで、照明装置22は、サンプルを照らして透過させた状態で観察することが可能であれば、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、サンプルの性質や種類などに応じて、任意の照明装置を選択すればよく、一例として、本実施の形態においては、株式会社モリテックス製のLED照明(エッジ式バックライト)MEBL−CW25を用いている。但し、例えば、この照明装置22と同等、若しくは、それ以上の性能を有する照明装置であってもよい。
また、固定部品16は、顕微鏡8の対物レンズ8aとサンプルとの焦点距離を調整し、適正距離に設定された状態で、対物レンズ8aとサンプルとの相対位置、具体的には、対物レンズ8aのサンプルに対する高さを固定している。これにより、分離反応中あるいは合成反応中、サンプルに対する顕微鏡8の対物レンズ8aの高さを一定に維持することができ、当該サンプルの状態を安定して観察することが可能となる。
ここで、上述した遠心顕微鏡Aにおいて、微小生物などの特定な物質よりも更に微小な対象物を観察可能にするために、より倍率及び解像度を向上させる必要がある。そのため、本実施の形態では、より簡易的に解像度を向上するため、遠心顕微鏡Aの試料装着部を下記に説明するような構造としている。
図6に示すように、試料装着部60は、ほぼ中心にピンホール61aを有する試料台61と、試料台61の表面61b上にピンホール61aを覆うように配置されたガラス板や樹脂板等からなるカバー部材62とを備え、観察対象物である反応器6とバックライト式の照明装置22との間に設けられる。カバー部材62上には反応器6が載置されて装着される。
試料台61は、平坦な表面61bに対し照明装置22側の裏面は、ピンホール61aを中心としたすり鉢状に、すなわち、ピンホール61aに向けて傾斜した略円錐状凹面61cに構成されており、略円錐状凹面61cの外周部が照明装置22上に載る構成である。試料台61は、アルミニウム等の軽金属材料や樹脂材料から構成できる。試料台61の内部の略円錐状凹面61cは、例えば、黒色処理されている。
この試料装着部60によれば、照明装置22の上にピンホール61aを設けた試料台61を設置することで、照明装置22からのバックライト照明光Pの一部がピンホール61aを透過し、その透過光が観察対象物(反応器6)の観察領域6aに背面側から照射され、観察領域6aを透過した光が観察光nとして対物レンズ8aに入射し、反応器6内のサンプルを観察できる。このように、ピンホール61aを透過した透過光がほとんど観察領域6aのみに照射されるので、像のコントラストが向上し、解像度の高い画像が得られる。
本実施の形態では、試料台61にピンホール61aを設け、バックライト照明光Pのうちのピンホール61aを透過した透過光が観察領域6aのみに照射されるように改良することで、コントラスト及び解像度の向上を実現できるのである。また、試料台61の内部の略円錐状凹面61cがピンホール61aを中心とするすり鉢状に構成されることで、照明装置22からの照明光を効率よくピンホール61aに導入できるとともに、略円錐状凹面61cの黒色処理により散乱光の発生を防止している。
なお、上述の遠心顕微鏡Aは、例えば、反応器6として、図7に示すように、ダンベル型の微細流路パターン(両端に円形の溶液槽を設け、溶液槽同士を直線流路で接続した形状の流路)を形成した流路デバイスを作製し、この流路デバイスが設置されている。この流路デバイスは、微細流路パターンを形成したPDMS樹脂をガラス基板上へ貼り付けた構造である。流路パターンは、例えば、直径3mmの円形の溶液層を700μm幅の直線流路で接続した形状で、深さ約120μmである。一方には溶液導入用の孔が形成されている。
流路デバイスを、溶液導入用の孔を反遠心側にして直線流路部分がCCDカメラ10で観察できるように遠心顕微鏡Aに取付ける。このとき、流路内は溶液で満たされている。溶液導入孔から溶液を導入し、遠心顕微鏡Aを駆動すると、遠心力によって特定の物質が直線流路を介して遠心側の溶液槽へ移動する。遠心顕微鏡Aでは、特定の物質が直線流路内を移動する速度を任意の回転数(遠心力)で測定できるため、特定の物質の移動速度vを正確に測定することができる。
ところで、本実施の形態では、遠心顕微鏡Aは、反応器6のサンプルを蛍光観察可能な蛍光観察手段を有している。即ち、特定波長の光をサンプルに照射(励起)し、このときに発生する蛍光現象を観察することで、このサンプルの挙動を効果的に知ることができる。この場合、特に良質な蛍光観察像を得るには、効果的な励起光の照射と、高感度観察のための光路設計(蛍光光学系)を実現する必要がある。このような蛍光光学系には、特定波長を発生するための励起光源、サンプルからの蛍光を励起光と分離して撮像デバイスへ送るスプリッタなどが必要である。
本実施の形態の遠心顕微鏡Aでは、反応器6のサンプルに対して、上方から照明をあてる落射照明装置を付加している。即ち、顕微鏡8にて、鏡筒8bの上部には、所定の照明装置(例えば、砲弾型のLED(Light Emitting Diode))41が設けられており、サンプルを上方から照らした状態で観察できるようにしている。また、鏡筒8bには、照明装置41とミラー14との間に位置して、上方から絞り系42と集光光学系43とが直列に配設されている。
絞り系42は、図8に示すように、ほぼ中心にピンホール44aを有するプレート44と、プレート44の表面(下面)44b上にピンホール44aを覆うように配置されたガラス板や樹脂板等からなるカバー部材45とを備えている。なお、このカバー部材45を不要とすることもできる。このプレート44は、平坦な表面44bに対し照明装置41側の裏面(上面)は、ピンホール44aを中心としたすり鉢状に、即ち、ピンホール44aに向けて傾斜した略円錐状凹面44cに構成されており、略円錐状凹面44cに対向して照明装置41が配置される。プレート44は、アルミニウム等の軽金属材料や樹脂材料から構成でき、内部の略円錐状凹面44cは、例えば、黒色処理されている。なお、ピンホール44aを有する絞り系42は、照明装置41の種類に応じて設定すればよいものであり、大きな光量を確保する場合には、この絞り系42をなくしてもよい。
また、集光光学系43は、絞り系42のピンホール44aを透過した照明装置41の照明光を集光してミラー14に伝達するものである。そして、対物レンズ8aの上部のミラー14は、分光器として機能するダイクロイックビームスプリッターであり、照明装置41からの照明光mがダイクロイックビームスプリッター14を透過し、対物レンズ8aを通して反応器6内のサンプルを照射する。また、サンプルからの反射光(観察光)nは対物レンズ8aを通してダイクロイックビームスプリッター14で反射し、CCDカメラ10へ到達する。
ここで、照明装置41は、サンプルを照らした状態で観察することが可能であれば、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、サンプルの性質や種類などに応じて、任意の照明装置を選択すればよい。
本実施の形態においては、生物学実験で一般に知られているFITC(fluorescein isothiocyanate)やGFP(green fluorescent protein)などの蛍光物質(蛍光試薬)をターゲットとして観察を行うため、光源として青色LED(波長:460nm〜490nm)を使用した。本光学系では、この波長の光を励起光としてサンプルに照射し、FITCやGFPの発生する510nm〜550nmの蛍光を観察する。この励起光源として使用できるLED照明として、例えば、株式会社モリテックス製のハイパワースポット照明MCEP−CB8や、株式会社イマックス製の同軸・スポット照明IHV−27BmkIIなどを使用することができるが、遠心力の影響を受けないようにできるだけコンパクトで軽量なものが好ましい。また、上述したような市販品の照明装置に限らず、高輝度の砲弾型LEDにカバーを取付けたものとしてもよい。更に、予め、光源において、レンズなどで平行光束化(コリメート)されたものが好ましく、半導体レーザなども好適に使用することができる。
また、この集光光学系43の用いられる集光レンズは、例えば、エドモンド・オプティクス株式会社製TECH SPEC φ12 平凸レンズ(PCX)、または、両凸レンズ(DCX)(焦点距離12〜100mm)を用いている。また、この顕微鏡8の対物レンズ8aは、例えば、株式会社オリンパス製SLMPL50(開口数0.45、作動距離15.0mm、質量91g)を用いているが、より明るい像を得るためには、開口数の大きいレンズを選択することが望ましい。また、ダイクロイックビームスプリッター14は、セムロック製FF505−SDi01を用いている。
このように本実施の形態の遠心顕微鏡Aにて、光学系は、照明装置41、絞り系42、集光光学系43、ダイクロイックビームスプリッター14、対物レンズ8aを用いることで、ケラー照明を実現している。ケラー照明は、大きな開口率(開口数)の均一で強い照明を可能とするものであり、絞り系42及び集光光学系43を調節して対物レンズ8aの後面(光源側)の焦点位置に光源の像を結像させる。開口絞りはサンプルの対物レンズ8aの光源側焦点の位置に置かれるので、結像した光は対物レンズ8aを通過した後にサンプル面に均一に照射される。対物レンズ8aとサンプルとの作動距離は、視野絞りの像がサンプルで結像するように調整する。そのため、サンプルでは、視野絞りの空中像ができるが、視野絞りの位置では明るさがより均一であるので、サンプルでの明るさも均一になる。
従って、照明装置41からの励起光Qは、絞り系42のピンホール44a(例えば、直径0.2mm程度)を通過することで絞られ、その絞り光が集光光学系43により集光されて対物レンズ8aに入射する。この場合、絞り光は、ダイクロイックビームスプリッター14を透過し、対物レンズ8aのバックフォーカス(後焦点面)近傍に集光するように、集光光学系43により調整される。このとき、バックフォーカス位置に開口絞りを設けても良く、また、開口絞りの前後に視野絞りを設けると、照明系の調整が容易となり、迷光などにより像の劣化を抑制することができる。そして、励起光が対物レンズ8aによりサンプルに照射されると、特定の物質から発生した反射光(蛍光)がダイクロイックビームスプリッター14に戻り、この特定の物質の蛍光発光に由来する505nm以上の波長の光のみを屈折するように反射し、撮像デバイスであるCCDカメラ10へ送る。
具体的には、照明装置41から青色LEDの励起光(波長λ1:460nm〜490nm)が反応器6内のサンプルに照射されると、サンプルのFITCやGFPで反射光の一部として発生する蛍光(波長λ2:510nm〜550nm)が得られる。サンプルで反射した励起光(波長λ1)と蛍光(波長λ2)は、ダイクロイックビームスプリッター14にて分光され、蛍光(波長λ2)のみが屈折してCCDカメラ10へ送られる。
本実施の形態においては、回転盤4に対し、上述した顕微鏡画像を動画として撮影するCCDカメラ10と共に、CCDカメラ10で撮影された顕微鏡画像のカメラ映像(撮影像)をリアルタイムで動画として無線伝送するための映像無線伝送デバイス12が取付けられている。また、ダイクロイックビームスプリッター14とCCDカメラ10との間には、ダイクロイックビームスプリッター14による反射光のうち、蛍光に含まれる励起光を除去する励起光除去フィルタ46が配設されている。
この励起光除去フィルタ46は、ダイクロイックビームスプリッター14で屈折させられた反射光に含まれる励起光成分を除去するものである。即ち、励起光除去フィルタ46は、反射光のうち、500nm以上の光だけを透過する吸収フィルタであり、蛍光(波長λ2)を透過して励起光(波長λ1)を吸収する、例えば、セムロック製FF01−512/630−25を用いている。
このように、CCDカメラ10で撮影された映像を外部受信機(図示略)に対して伝送する方式として、有線方式ではなく無線方式を採用することで、回転盤4とともにCCDカメラ10並びに映像無線伝送デバイス12を回転させた場合であっても、これらから直接信号線を取り出す必要がなく、信号線の取り回しを考慮する必要が全くない。この結果、CCDカメラ10および映像無線伝送デバイス12の周辺構造を容易に簡略化させることができる。
また、信号線の取り回しを考慮する必要がないため、CCDカメラ10並びに映像無線伝送デバイス12を回転盤4(具体的には、顕微鏡8および反応器6内のサンプル)と共に回転させる構造とすることができ、回転盤4の回転数による制約を受けることなく、任意の高フレームレート(コマ数)でCCDカメラ10によって顕微鏡画像を撮影することができ、撮影した顕微鏡画像のカメラ映像を外部の受信装置(図示略)に対して伝送することができる。
これにより、かかる外部受信装置として、例えば、液晶パネルやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどの表示器を設けることで、上述したカメラ映像(即ち、反応器6の内部におけるサンプルの状態)を、かかる表示器においてリアルタイムに確認しながらサンプルの分離反応あるいは合成反応を進行させることができる。また、パソコンなどを介して収録したカメラ映像を解析することにより、サンプル(具体的には、その内部物質や、分離物質あるいは合成物質など)の挙動をモニタし、回転盤4の最適な回転条件(別の捉え方をすれば、サンプルに作用させる遠心力の最適な大きさ)を推定すると共に、この推定された最適条件(例えば、回転速度や回転時間など)で回転盤4を回転制御することも可能となる。
この場合、映像無線伝送デバイス12は、上述したCCDカメラ10と同様に、回転盤4の回転によって生じる遠心力の作用を軽減させるため、回転盤4の回転中心の近傍に位置付けられており、CCDカメラ10によって撮影されたカメラ映像の映像データを所定のアンテナ18から外部受信装置(受信機に接続された液晶パネルやCRTディスプレイなどの表示器)に対して無線伝送している。また同様に、アンテナ18も回転盤4の回転によって生じる遠心力の作用を軽減させるため、回転盤4の回転中心の近傍、具体的には、回転盤4の回転中心の延長線上に立ち上がる構成としている。
なお、映像無線伝送デバイス12がカメラ映像の映像データ(映像信号)を外部受信装置(図示略)へ無線伝送する際、映像データの伝送速度(ビットレート)やデータ形式(周波数や圧縮・非圧縮の有無など)は、遠心顕微鏡Aの使用態様や使用条件などに応じて任意に設定すればよい。例えば、本実施の形態においては、一例として、CCDカメラ10が撮影した顕微鏡画像のカメラ映像を、映像無線伝送デバイス12によって周波数が2.4GHzの非圧縮デジタル信号の映像テータに変換し、当該映像データを外部受信装置に対して無線伝送している。これにより、映像無線伝送デバイスから送信された映像信号を欠落させることなく、外部受信装置に対して送信することができ、当該外部受信装置においてサンプル状態をクリアで安定した映像で確認しながら、分離反応あるいは合成反応を進行させることができる。但し、映像無線伝送デバイス12から外部受信装置へ伝送する映像データは、上述した非圧縮のデジタル信号に代えて、圧縮信号であってもよいし、アナログ信号としてあってもよい。
ここで、CCDカメラ10は、顕微鏡8で捉えた反応器6内におけるサンプル状態の顕微鏡画像を撮影することが可能であれば、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、遠心顕微鏡Aの使用態様や使用条件などに応じて、任意のCCDカメラを選択すればよく、一例として、本実施の形態においては、株式会社モスウェル製のカラーボードカメラMSC−90(最低被写体照度/0.5lx.)を用いている。また、蛍光観察用の高感度カメラとして、ワテック(株)WAT902HB2S(最低被写体照度/0.0003 lx.)を用いてもよい。ただし、例えば、かかるCCDカメラ10と同等、若しくはそれ以上の性能を有するCCDカメラであってもよい。
また、映像無線伝送デバイス12は、CCDカメラ10が撮影した顕微鏡画像のカメラ映像を外部受信装置(図示しない)に対して無線伝送することが可能であれば、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、遠心顕微鏡Aの使用態様や使用条件などに応じて、任意の映像無線伝送デバイスを選択すればよく、一例として、本実施の形態においては、株式会社アイデンビデオトロニクス製のTRX24miniを用いている。ただし、例えば、かかる映像無線伝送デバイス12と同等、若しくはそれ以上の性能を有する映像無線伝送デバイスであってもよい。
なお、上述したCCDカメラ10、映像無線伝送デバイス12、並びに照明装置22など、遠心顕微鏡Aに設けられた各種の電装部品は、図1及び図3に示すように、所定の電源装置(例えば、バッテリー)24によって駆動されている。この場合、電源装置24は、かかる各種の電装部品(CCDカメラ10、映像無線伝送デバイス12、並びに、照明装置22など)を正常に動作させることが可能な電力を、サンプルに対する分離反応中あるいは合成反応中、安定して供給可能であれば、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、上述した各種の電装部品が要する電力の大きさなどに応じて、任意の電源装置を選択すればよく、一例として、本実施の形態においては、ULTRA LIFE株式会社製のバッテリーであるUBBP01(電圧3.7v、バッテリー容量1.8Ah)を用いている。但し、例えば、かかる電源装置24と同等、若しくはそれ以上の性能を有する電源装置であってもよい。
本実施の形態においては、かかる電源装置(バッテリー)24を4個直列で使用し、これら4つのバッテリー24を、回転盤4の回転中心に対して対称となる位置へ(180°の位相差で)2つずつ均等に配置しているとともに、顕微鏡8、反応器6および固定部品16に対して90°の位相差で配置している(図3参照)。この場合、バッテリー24は、一例として、回転盤4の盤面4aを凹状に窪ませて成る取付部へ埋設され、板状部材26で固定されて回転盤4に対して取り付けられている。
ここで、かかる遠心顕微鏡Aにおいて、回転盤4の回転軸2は、図示しない所定の駆動装置(例えば、スピンドルモータなど)によって回転されていると共に、各種の軸受27によって回転自在に支持されており、図4には、一例として、転動体として玉を適用した転がり軸受27によって回転軸2を支持した構成が示されている。この場合、転がり軸受27は、転動体として玉を適用した各種の玉軸受の他、転動体として各種のころ(円筒ころ、円すいころおよび球面ころなど)を適用したころ軸受であってもよい。また、図4に示す構成においては、回転軸2を2つの軸受27で支持する構造としているが、回転軸2は、1つの軸受27で支持してもよいし、3つ以上の軸受27で支持してもよい。
なお、軸受27として、上述した各種の転がり軸受に代えてエア軸受を適用し、回転軸2を当該エア軸受によって回転自在に支持することで、回転盤4が回転する際に生ずる回転振動を格段に軽減させることができ、ひいては、顕微鏡8やCCDカメラ10の回転振動を抑制させ、分離反応中あるいは合成反応中におけるサンプル状態の安定した観察ならびに撮影を行うことが可能となり、さらに好ましい。ここで、一例として、エア軸受は、回転軸2の外周面を全周に亘って覆うように位置付けられた筒状のハウジングによって回転軸2を回転自在に支持する構造を成し、ハウジングの内周面(回転軸2の外周面に対する対向面)に設けた複数の噴出口(噴出孔)から回転軸2の外周面へ向けてエアを吹き付け、ハウジングの内周面と回転軸2の外周面とを非接触状態に保つことで、回転軸2を非常に滑らかに回転させることができる。この場合、エアスピンドルユニットとしては、例えば、日本精工株式会社製のGBS100Hなどを用いることができる。
また、本実施の形態において、回転軸2および回転軸2を回転自在に支持する軸受27は、これらがハウジングとともに一体を成すスピンドルユニット28として構成されており、スピンドルユニット28が回転盤4に装着されることで、回転盤4が回転軸2を中心として回転される構造となっている。この場合、回転盤4には、その中央部が上側(顕微鏡8、反応器6、CCDカメラ10、および映像無線伝送デバイス12などが配設されている側)へ所定の大きさで凸状に突出し、回転盤4の下側(上述した各部品などが配設されている側とは反対側)を当該凸状に窪ませて形成されたスピンドルユニット取付部4bが設けられており、スピンドルユニット28は、回転盤4の下側からスピンドルユニット取付部4bへ挿入されて、回転盤4に対して取付けられている。
このように、遠心顕微鏡Aをスピンドルユニット28に対して回転盤4が被さるような構造とすることで、顕微鏡8、反応器6、CCDカメラ10、及び映像無線伝送デバイス12などが配設された回転盤4の回転時における回転重心と、回転軸2が軸受27によって回転自在に支持された軸支部分との距離を狭めることができ、当該軸支部分に生じる回転モーメントを有効に軽減させることができる。
なお、上述した本実施の形態において、遠心顕微鏡Aの構成部材の材料については特に言及しなかったが、遠心顕微鏡Aの使用態様や使用目的などに応じて各種の素材を任意に選択して使用すればよい。一例として、本実施の形態においては、回転盤4の材料、並びに顕微鏡8、反応器6、CCDカメラ10、及び映像無線伝送デバイス12などを回転盤4に対して取り付けるための各種の取付部材を高強度アルミニウム合金(A2017)製とすることで、回転時における剛性を十分に確保しながら、これらの部材の軽量化を図っている。この場合、この軽量化のための材料として、各種Ti合金、Mg合金などを用いてもよい。
また、本実施の形態においては、回転時における遠心顕微鏡Aの重量バランスを均等にし、回転時に生じるスピンドルユニット28に対する振れ回り応力を減少させるため、回転盤4に対し、顕微鏡8および反応器6の配設位置と回転中心に対して略対称となる位置(回転中心に対して反対側)へ所定のバランスウェイト30を設けている。バランスウェイト30の重量、および配設位置は、回転盤4に配設された顕微鏡8、反応器6、CCDカメラ10、および映像無線伝送デバイス12などの各種の部材重量やそのバランス(重心)などに応じて、上述したスピンドルユニット28に対する振れ回り応力が小さくなるように調整すればよい。
次に、上述のように反応器6を遠心顕微鏡Aに装着して回転させ、発生する遠心力を流体に作用させて流体を駆動し流動させることによる作用効果について説明する。
反応器6に外部機器との流体接続(流体駆動にポンプを利用する場合)、及び、電気的接続(流体駆動に例えば電気浸透流などを利用する場合)が不要となり、反応器6の構造が簡素化できる。この効果として、反応器6の取り扱いが容易となり、自動化しやすく、解析速度も向上する。また、反応器6をさらに小型化することができ、より微小サンプルでの解析が可能となる。この場合は、細胞は電気的に破砕することができないので、力学的な衝突によって破砕させる。また、周辺機器も小型化できるため、測定系全体を小型化できる。
また、サンプルの化学的な特性に影響されず、流体を駆動させることができる。特に、電界印加により電気分解し易い溶液を主体とするサンプルでも、駆動(解析)が可能である。また、電気的な刺激によって、変化する可能性のあるサンプルに対しても、これらの影響を気にせず利用でき、適用範囲が広がり好ましい。
また、サンプルの遠心分離効果を同時に発生させることができ、サンプルの比重による分離が可能である。
さらに、本実施の形態の遠心顕微鏡を利用することによって、低回転数(低遠心力)の領域での反応であっても、情報が欠落(コマ落ち)することなく、検出状態を把握することができる。同時に、蛍光観察のような微弱光を観察する場合において、露光時間を長くしても観察側の対物レンズとサンプルが一体化して回転するため像のブレが少なく、高精度の観察が可能である。
また、本実施の形態の遠心顕微鏡Aでは、反応器6のサンプルを蛍光観察可能な蛍光観察手段を設けており、分離あるいは合成の反応過程におけるサンプルの状態を、高フレームレート(コマ数)で安定した画質の映像でリアルタイムに確認することができると共に、蛍光観察を行うことができる。
そして、この蛍光観察手段として、回転盤4に反応器6と回転盤4の回転軸方向に対向して配設される照明装置41と、照明装置41からの励起光を反応器6のサンプルに照射する対物レンズ8aと、照明装置41からの励起光を透過する一方、反応器6のサンプルから反射した蛍光を反射してCCDカメラ10に送るダイクロイックビームスプリッター14とを設けている。従って、照明装置41からの励起光が、ダイクロイックビームスプリッター14を透過し、対物レンズ8aにより反応器6のサンプルに照射されると、反応器6のサンプルから反射した蛍光が生じ、この蛍光がダイクロイックビームスプリッター14により反射してCCDカメラ10に送られることとなり、装置のコンパクト化を可能としながらも、高精度な蛍光観察を行うことができる。
また、ダイクロイックビームスプリッター14とCCDカメラ10との間にダイクロイックビームスプリッター14による反射光から励起光を除去する励起光除去フィルタ46を配設しており、ダイクロイックビームスプリッター14で反射された蛍光に励起光が混在したとしても、この励起光が励起光除去フィルタ46により除去されてCCDカメラ10に送られることとなり、高精度な蛍光画像を得ることができる。
そして、照明装置41とダイクロイックビームスプリッター14と対物レンズ8aと反応器6を回転盤4の回転軸方向に沿って直列に配設すると共に、ダイクロイックビームスプリッター14と励起光除去フィルタ46とCCDカメラ10を回転盤4の径方向に沿って直列に配設している。そして、反応器6を回転盤4上に支持し、照明装置41を回転盤4の上方に配設し、照明装置41から反応器6のサンプルに向けて励起光を落射している。そのため、照明装置41、ダイクロイックビームスプリッター14、対物レンズ8a、反応器6、励起光除去フィルタ46、CCDカメラ10を回転盤4に効率良く配設することで、装置のコンパクト化及び高剛性化を可能とすることができる。また、各装置を全て回転盤4上に配設することで、装置のコンパクト化を可能とすることができる。
更に、照明装置41とダイクロイックビームスプリッター14との間に絞り系42と集光光学系43を配設しており、照明装置41からの励起光は、絞り系42により絞られ、集光光学系43により対物レンズ8aのバックフォーカス近傍に集光することとなり、コンパクトな光路設計を可能とすることができると共に、均一で、且つ、高光量の励起光を確保することができる。
[第2の実施の形態]
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る遠心顕微鏡の縦断面図である。なお、前述した実施の形態で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
第2の実施の形態において、図9に示すように、遠心顕微鏡は、微小生物の重力走性挙動などを測定する目的で、比較的低遠心力(重力の数倍程度の過重力)を発生させるために特に低速域での可視下性を要求されるが、本実施の形態では、遠心顕微鏡Bが回転盤上へ顕微鏡システムを搭載しているため、回転数に関係なく高フレームレートの動画撮影が可能であり、特に動きの早い微小生物の挙動観察装置として最適である。同用途では、重力環境の急激な変化を再現するため、回転数変化応答の速い装置が要求されている。そこで、遠心顕微鏡Bを、ダイレクトドライブモータにより回転盤4を直接駆動するようにしてもよい。
即ち、ダイレクトドライブモータ50の外周側に位置する回転部51を回転盤4に取付けてモータビルトインタイプに構成する。これにより、回転数変化の応答性を向上できるとともに装置の小型化を達成できる。なお、ダイレクトドライブモータ50としては、例えば、日本精工株式会社製のPSモータ(1006シリーズ)を用いることができる。
更に、このダイレクトドライブモータ50の内側の固定部52の上方の取付部4bにスリップリング53を設け、例えば、画像のサンプリング間隔が長く画像がみえない場合や重力反応の著しく遅いサンプルを対象として長時間の連続観察が必要な場合等にはスリップリング53を介して映像信号を外部に伝送したり、電源を供給するようにしてもよい。また、スリップリング53を用いることにより、外部機器や、生体応用の場合に生体サンプルへの電波の影響を抑制した上で、遠心負荷テストを実施することができる。更に、電波の使用できない環境、例えば、医療機器、宇宙ステーション内、その他の電波干渉機器の周辺などでの利用を可能とすることができる。
[第3の実施の形態]
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る遠心顕微鏡の全体構成例を示す斜視図、図11は、第3の実施の形態の遠心顕微鏡の縦断面図、図12は、第3の実施の形態の遠心顕微鏡の光路を表す概略図である。なお、前述した実施の形態で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
第3の実施の形態において、図10乃至図12に示すように、遠心顕微鏡Cは、倒立型遠心顕微鏡であって、回転盤4の外周部に配設されてサンプルを収容して回転盤4と共に回転する反応器6と、反応器6内におけるサンプルの状態を目視により観察するための顕微鏡8とから構成されている。そして、遠心顕微鏡Cは、反応器6内のサンプルに対して遠心力を作用させることで、このサンプルから所定の物質(液体、固体および気体、若しくはこれらの混合体など)を分離、あるいは、合成させている。
この遠心顕微鏡Cにおいて、顕微鏡8は、反応器6内におけるサンプルの状態を観察可能となるように回転盤4の所定位置(外周部)へ固定されている。この回転盤4には、顕微鏡8で捉えた反応器6内のサンプル状態の顕微鏡画像を撮影するための撮像デバイス(CCDカメラ)10と、撮像デバイス10で撮影された顕微鏡画像の撮影像を、リアルタイムで動画として無線により伝送するための映像無線伝送デバイス12が取付けられている。この場合、顕微鏡8は、光路が回転盤4の盤面(図11の上側の面)4aに対して所定の角度で部分的に屈折されており、CCDカメラ10は、所定角度で屈折された顕微鏡8の光路上で、上述した顕微鏡画像を撮影可能となるように、回転盤4の回転中心の近傍に位置付けられている。
本実施の形態の遠心顕微鏡Cにて、回転盤4には、その盤面4aに対して垂直方向へ所定の長さで延出したガイド(図示略)が設けられており、反応器6が装着されるサンプルホルダ71は、このガイドに沿って上下にスライド可能に支持されており、このサンプルホルダ71をスライドさせることで、顕微鏡8の焦点距離を調整する構造となっている。そして、この反応器6は、サンプルホルダ71に対してその下面に装着されており、サンプルに対して、下方から照明をあてる昇射照明装置を付加している。即ち、顕微鏡8にて、回転盤4の下面には、所定の照明装置(例えば、砲弾型のLED)41が設けられており、サンプルを下方から照らした状態で観察できるようにしている。
また、照明装置41に対向する回転盤4の盤面4aには、顕微鏡8の鏡筒8bが一体に固定されており、この鏡筒8bに分光器として機能するダイクロイックビームスプリッター14が固定されると共に、このダイクロイックビームスプリッター14の上方に対物レンズ8aが固定されている。この場合、顕微鏡8の鏡筒8b内へダイクロイックビームスプリッター14を観察光路の屈折角に応じて任意に設定される所定角度だけ観察光路に対して傾斜して配設している。なお、図示しないが、鏡筒8bまたは回転盤4には、照明装置41とダイクロイックビームスプリッター14との間に位置して、下方から絞り系42と集光光学系43とが直列に配設されている。
本実施の形態においては、顕微鏡8の対物レンズ8aに対して、反応器6が装着されたサンプルホルダ71が嵌合して上下に相対移動可能となっており、これにより対物レンズ8aと反応器6のサンプルとの焦点距離を調整可能である。また、対物レンズ8aの外周部にサンプルホルダ71が嵌合することで、対物レンズ8aと反応器6との間の外部振動(具体的には、回転盤4の回転によって生ずる回転振動)による相対変位を極小化させている。そのため、顕微鏡8は、常に安定して反応器6内のサンプル状態をブレのないクリアな画像として捉えることができ、分離過程あるいは合成過程におけるサンプルの状態を正確且つ確実に観察することが可能となる。なお、対物レンズ8aには、下方から視野絞り系72と開口絞り系73とが直列に配設されている。
従って、照明装置41からの励起光は、絞り系42で絞られ、集光光学系43により集光されて対物レンズ8aに入射し、ダイクロイックビームスプリッター14を透過し、対物レンズ8aのバックフォーカス(後焦点面)近傍に集光される。そして、励起光が対物レンズ8aによりサンプルに照射されると、特定の物質の反射光(蛍光)がダイクロイックビームスプリッター14に戻り、この特定の物質の蛍光発光に由来する505nm以上の波長の光のみを反射し、撮像デバイスであるCCDカメラ10へ送る。
本実施の形態においては、回転盤4に対し、上述した顕微鏡画像を動画として撮影するCCDカメラ10と共に、CCDカメラ10で撮影された顕微鏡画像のカメラ映像(撮影像)をリアルタイムで動画として無線伝送するための映像無線伝送デバイス12が取付けられている。また、ダイクロイックビームスプリッター14とCCDカメラ10との間には、ダイクロイックビームスプリッター14による反射光のうち、蛍光に含まれる励起光を除去する励起光除去フィルタ46が配設されている。
このように本実施の形態の遠心顕微鏡Cでは、反応器6を回転盤4の上方に支持し、照明装置41を回転盤4の下方に配設し、照明装置41から反応器6のサンプルに向けて励起光を昇射可能としている。そのため、照明装置41を回転盤4の下方に配設する一方、その他の装置を回転盤4上に配設することで、サンプルへのアクセスを容易化し、且つ、対物レンズ8aとサンプル間の作動距離を短くすることができ、対物レンズ8aの開口率を向上することができるため、明るい観察を可能とすることができると共に、装置のコンパクト化を可能とすることができる。また、照明装置41以外の装置を回転盤4上に倒立して配設することで、鏡筒8bを回転盤4に固定することができ、光学系の振動を緩和することができる。
また、本実施の形態の遠心顕微鏡Cでは、倒立型にすることで蛍光観察以外でも、サンプルへのアクセスを容易化しつつ、レンズをサンプルに近づけて高開口率の(明るい)測定ができるという効果があり、同時に分解能を向上することができる。
なお、本実施の形態の遠心顕微鏡Cでも、前述の第2の実施の形態のように、スリップリングを設けることで、映像信号を外部に伝送したり、電源を供給するようにしている。この場合、液体金属(水銀など)を導電担体とした非接触式のロータリコネクタ(例えば、メルコタック社製のmodel 331)や、発光素子と受光素子を組合わせて光学的に非接触送受信を行えるロータリコネクタ(例えば、日本マルコ株式会社製 ロータリリンクコネクタ Type2)など、非ブラシタイプのスリップリングを用いて映像信号を伝送する。
このようなスリップリングを用いることで、無線伝送に比べ、外部電波の影響を受け難くてノイズが少ない。また、映像送信用のトランスミッターやアンテナを顕微鏡に設置する必要がなく、それらへの電源供給も不要となるため、装置構造を簡略化できる。更に、受信機が必要なく、システムとしてもコンパクトになる。この点は、遠心顕微鏡全体(各実施の形態共通)にいえることである。
また、倒立型遠心顕微鏡に適用した場合、これまでは送信用のアンテナを回転中心に設置する必要があったが、これが不要となる。そのため、サンプルを上下するZ軸ステージを装置の中心近傍に配置することができ、ステージにかかる遠心力を軽減できるため、サンプルホルダの振動を低減できる。また、サンプルホルダーまでの距離を短くできるため、フォーカス調整のためのサンプルステージの上下動が滑らかに実施できる。なお、以前のタイプは、サンプルステージの内径面がレンズと干渉して滑らかな上下動を阻害する場合がある。今回は、更にガイドブッシュを取付けることにより、部材の弾性変形などによるサンプルホルダと対物レンズのアライメントが発生し難い様に工夫している。
[第4の実施の形態]
図12は、本発明の第4の実施の形態に係る遠心顕微鏡の光路を表す概略図である。なお、本実施の形態の遠心顕微鏡における全体構成は、上述した実施の形態3とほぼ同様であり、図10を用いて説明すると共に、この実施の形態で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
第4の実施の形態において、図13に示すように、遠心顕微鏡Dは、倒立型遠心顕微鏡であって、主たる構成は第3の実施形態と同様である。本実施の形態にて、顕微鏡8は、反応器6内におけるサンプルの状態を観察可能となるように回転盤4の所定位置(外周部)へ固定されている。この回転盤4には、顕微鏡8で捉えた反応器6内のサンプル状態の顕微鏡画像を撮影するための撮像デバイス(CCDカメラ)10が取付けられている。この場合、顕微鏡8は、光路がダイクロイックビームスプリッター14により回転盤4の盤面4aに対して所定の角度で部分的に屈折されており、CCDカメラ10は、所定角度で屈折された顕微鏡8の光路上で、上述した顕微鏡画像を撮影可能となるように、回転盤4の回転中心の近傍に位置付けられている。そして、ダイクロイックビームスプリッター14とCCDカメラ10との間には、励起光除去フィルタ46が配設されている。
また、回転盤4には、顕微鏡8で捉えた反応器6内のサンプル状態の顕微鏡画像を撮影するための第2の撮像デバイス(CCDカメラ)82が取付けられている。この場合、ダイクロイックビームスプリッター14とCCDカメラ10との間に、第2のダイクロイックビームスプリッター81が設けられている。顕微鏡8は、光路がダイクロイックビームスプリッター14,81により2度屈折されており、CCDカメラ82は、この2度屈折された顕微鏡8の光路上で、上述した顕微鏡画像を撮影可能となるように、回転盤4の回転中心の近傍に位置付けられている。そして、ダイクロイックビームスプリッター82とCCDカメラ81との間には、励起光除去フィルタ83が配設されている。
従って、照明装置41からの励起光mは、絞り系42で絞られ、集光光学系43により集光されて対物レンズ8aに入射し、ダイクロイックビームスプリッター14を透過し、対物レンズ8aのバックフォーカス(後焦点面)近傍に集光される。そして、励起光が対物レンズ8aによりサンプルに照射されると、特定の物質の反射光(蛍光)がダイクロイックビームスプリッター14に戻り、この特定の物質の蛍光発光nに由来する505nm以上の波長の光のみを反射する。そして、この特定の物質の蛍光発光nは、ダイクロイックビームスプリッター81により、所定の2つの波長が分光され、一方の波長の光がCCDカメラ10へ送られ、他方の波長の光がCCDカメラ82へ送られる。
このように本実施の形態の遠心顕微鏡Dでは、蛍光観察を実施する場合に、1波長帯域の蛍光像だけではなく、2波長帯域の蛍光像を同時に観察することができる。この場合、ダイクロイックビームスプリッター14とCCDカメラ10との間に第2のダイクロイックビームスプリッター81を設け、このダイクロイックビームスプリッター81により屈折した光をCCDカメラ82に取り込んでいる。これにより、最初のダイクロイックミラー14で分光した光をさらに第2のダイクロイックミラー81で分光して、2波長帯域の同時観察を可能とすることができる。例えば、細胞を測定する場合GFPによる緑色の特定部位観察と、赤色による細胞内物質の自家蛍光像の観察が可能となる。この場合、最初のダイクロイックミラー14で分光した光を複数に分光し、3波長帯域以上の同時観察を可能としてもよい。
[第5の実施の形態]
図14は、本発明の第5の実施の形態に係る遠心顕微鏡の要部縦断面図、図15−1及び図15−2は、第5の実施の形態の遠心顕微鏡における励起光除去フィルタによる吸収波長領域を表すグラフである。なお、前述した実施の形態で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
第5の実施の形態の第1の実施の形態の遠心顕微鏡Aとほぼ同様の構成となっており、集光光学系が相違すると共に励起光除去フィルタ94が追加された構成となっている。第5の実施の形態にて、図14に示すように、遠心顕微鏡Aでは、顕微鏡8にて、鏡筒8bの上部には、所定の照明装置41が設けられており、サンプルを上方から照らした状態で観察できるようにしている。また、鏡筒8bには、照明装置41とミラー14との間に位置して、上方から絞り系42と集光光学系91とが直列に配設されている。
集光光学系91は、絞り系42を透過した照明装置41の照明光を集光してミラー14に伝達するものである。本実施の形態にて、集光光学系91は、光源41からの照射光の照射方向に直列に配置される2つの集光レンズ92,93から構成されている。
集光光学系91において、上方に配置された集光レンズ92は、平凸レンズであって、例えば、エドモンド・オプティクス株式会社製TECH SPEC φ12 平凸レンズ(PCX)(焦点距離12〜100mm)を用いている。また、下方に配置された集光レンズ93は、両凸レンズであって、例えば、エドモンド・オプティクス株式会社製TECH SPEC φ12 両凸レンズ(DCX)(焦点距離12〜100mm)を用いている。
この場合、2つの集光レンズ92,93は、屈折率が異なるものであって、光源41からの照射光を2段階屈折させることで、観察精度を維持しながら焦点距離を短縮可能としている。そして、集光レンズ92を平凸レンズとし、集光レンズ93を両凸レンズとすることで、照射光をできるだけ大きな面積で受け止め、適正な位置に均一に集光可能としている。
なお、ここでは、絞り系42とダイクロイックビームスプリッター14との間に集光光学系91を設けたが、この位置に限るものではない。例えば、絞り系42とダイクロイックビームスプリッター14との間に集光レンズ92を配置し、ダイクロイックビームスプリッター14と対物レンズとの間に集光レンズ93を配置してもよい。また、集光光学系91を構成する集光レンズの個数も2つに限るものではなく、選定されたレンズの種類によって3つ以上の複数としてもよい。
また、光源41と反応器との間、具体的には、光源41と絞り系42との間に、光源41から照射される励起光から予め設定された所定の波長の励起光を除去する励起光除去フィルタ94が配設されている。この励起光除去フィルタ94は、光源41からの励起光に含まれる蛍光の波長領域に図った波長範囲の励起光成分を除去するものである。なお、図示しないが、第1の実施の形態(図4参照)と同様に、ダイクロイックビームスプリッター14とCCDカメラ10との間に、蛍光に含まれる励起光を除去する励起光除去フィルタ46が配設されている。
本実施の形態では、光源41とCCDカメラ10との間に、2つの励起光除去フィルタ94,46が配設される。ここで、励起光除去フィルタ94,46の役割に関して説明する。1つの励起光除去フィルタ46だけを用いた場合、図15−1に示す場合、励起光除去フィルタ46により所定の波長領域αを吸収すると、斜線で表す波長領域の励起光λ1が残留する。この場合、溶液中の蛍光ビーズなどの蛍光発光強度の強い物質を観察する場合には、観察精度に大きな影響を与えないが、観察対象物の蛍光発生強度が弱くより微小なもの、例えば、GFPを発現させた細胞内物質などを対象として観察する場合には、コントラストの低下、解像度不足などの観察精度へ悪影響を与えてしまうおそれがある。
一方、2つの励起光除去フィルタ94,46を用いた場合、図15−2に示すように、蛍光λ2の強度が非常に弱い場合、まず、励起光除去フィルタ94により蛍光λ2の波長領域の入った波長範囲の励起光λ1を吸収し、好ましいのは、励起光λ1の強度のピーク部βを透過し、それ以外の波長範囲を吸収する。次に、励起光除去フィルタ46により所定の波長領域αを吸収すると、励起光λ1がほとんど吸収されることとなる。このように吸収する光の励起光λ1の強度が透過する光の蛍光λ2の強度より大きいと、励起光除去フィルタ46だけでは、残留する励起光λ1の光が多くなるが、この場合であっても、励起光λ1の光を確実に吸収することができ、観察対象物が細胞やガラスビーズより微小なGFPやたんぱく質などの物質も高精度な観察が可能となる。この2つの励起光除去フィルタ94,46を組み合わせることで、蛍光λ2の強度が非常に弱い場合であっても、これを適正に透過させることができ、一般の顕微鏡で利用されるような大型の光源(例えば、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、高集積LED、大型レーザ光源など)を用いる必要はなく、小型の光源で蛍光観察を行うことが可能となる。そのため、顕微鏡の鏡筒8bを簡素化することができ、遠心回転負荷をより低減することができると共に、安定した観察像を得ることができる。
この場合、励起光除去フィルタ94,46は、異なる波長領域の励起光を除去可能となっている。具体的に、例えば、励起光除去フィルタ46は、反射光のうち、所定値以上の光だけを透過する吸収フィルタであり、例えば、セムロック製FF01−512/630−25を用いて、512nm周辺(約25nm幅)の光だけを透過する。また、除去フィルタ94は、励起光のうち、所定波長領域の光だけを透過する吸収フィルタであり、例えば、セムロック製FF01−470/22−25を用いて、450nm〜495nmのみの光を透過する。
ここで,光源41とダイクロイックビームスプリッター14の間に短波長側の励起光除去フィルタ94を設け、ダイクロイックビームスプリッター14とCCDカメラ10との間に長波長側の励起光除去フィルタ46を設けたが、これらはこの位置に限るものではない。ただし、サンプル(反応器6)へ照射される励起光への干渉を避けるため、長波長側の励起光除去フィルタ46はダイクロイックビームスプリッター14で観察光が屈折され、照射される励起光の光路と分離された後に設けることが望ましい。また、同様の理由で、短波長側の励起光除去フィルタ94は,光源41とダイクロイックビームスプリッター14の間に設けることが望ましい。
本実施の形態の遠心顕微鏡Aにて、照明装置41からの励起光は、絞り系42を通過することで絞られ、その絞り光が集光光学系91により集光されて対物レンズに入射する。この場合、絞り光は、ダイクロイックビームスプリッター14を透過し、対物レンズのバックフォーカス(後焦点面)近傍に集光するように、集光光学系91により調整される。そして、励起光が対物レンズによりサンプルに照射されると、特定の物質から発生した反射光(蛍光)がダイクロイックビームスプリッター14に戻り、この特定の物質の蛍光発光に由来する光のみを屈折するように反射し、撮像デバイスであるCCDカメラへ送る。
このように本実施の形態の遠心顕微鏡Aでは、光源41とダイクロイックビームスプリッター14との間に集光光学系91を配設し、この集光光学系91として、励起光の照射方向に直列に配置される2つの集光レンズ92,93を設けている。一般に、集光レンズの焦点距離を小さくするには、レンズの屈折率を大きくするか、曲率半径を小さくする必要がある。そのためには、特殊な材料のレンズを用いることが考えられるが、高コスト化を招く。また、ボールレンズのような曲率半径の小さなレンズを採用すればよいが、レンズの各種単色収差が大きくなり、解像度の低下、像のゆがみ等の観察精度低下を生じるおそれがある。こうした収差は、レンズ中心部を透過する光と、レンズ端部を透過する光の干渉によって生じ、一般の顕微鏡では絞り(アイリス)を設けて光の透過部位をレンズ中心近傍へ限定することによって補正される。ただし、この場合は像の明るさを確保するために光源を強化(高出力化)する必要があり、電源容量、設置スペースなどの制限される当該遠心顕微鏡には不適切である。そのため、本実施の形態では、複数の集光レンズ92,93を用いることで、光源41から焦点距離までの距離を短くし、装置のコンパクト化を可能とすることができる。その結果、装置の軽量化が可能となり、回転時に顕微鏡に作用する遠心力が軽減され、振動を低減して観察の高精度化を可能とすることができる。更に、特殊な材料のレンズを用いる必要がなく、生産コストを低減することができる。
また、光源41と集光光学系91との間に励起光から所定の波長領域の光を除去する励起光除去フィルタ94を配設すると共に、ダイクロイックビームスプリッター14とCCDカメラ10との間に反射光から所定の波長領域の光を除去する励起光除去フィルタ46を配設し、各励起光除去フィルタ94,46は、異なる波長領域の光を除去する。そのため、光源から照射された励起光、ダイクロイックビームスプリッター14により反射された蛍光から、蛍光の波長領域に入った波長範囲の励起光が除去され、より鮮明な画像を得ることが可能となり、光源41の形態(波長特性、強度)や観察対象物に拘らず高精度な蛍光画像を得ることができる。
[第6の実施の形態]
図16は、本発明の第6の実施の形態に係る遠心顕微鏡における集光光学系の開口数と作動距離を表すグラフである。なお、本実施の形態の遠心顕微鏡における全体構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図4を用いて説明すると共に、この実施の形態で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
第6の実施の形態では、反応器のサンプルに対して、上方から照明をあてる落射照明装置を付加した遠心顕微鏡を採用している。この落射照明式の遠心顕微鏡では、対物レンズと反応器との間に作業用スペースが必要となるものの、構造上このスペースが制限されてしまう。そのため、対物レンズを選定する場合、ある程度の作動距離を維持しながら開口率の大きい(明るい)ものを採用することが望ましい。本実施の形態では、図4に示すように、遠心顕微鏡Aの顕微鏡8は、回転盤4の所定位置に固定され、反応器6内におけるサンプルの状態を捉える対物レンズ8aと、対物レンズ8aが捉えた顕微鏡画像を撮像デバイス10まで伝達するための光路が内部に形成された鏡筒8bとを有している。また、顕微鏡8は、反応器6のサンプルを蛍光観察可能な蛍光観察手段として、鏡筒8bに、照明装置41と、絞り系42と、集光光学系43と、ダイクロイックビームスプリッター14が設けられて構成されている。
このように構成された顕微鏡8にて、対物レンズ8aは、開口数が0.3〜1.3の範囲で、且つ、作動距離が0.2〜18.0mmの範囲に設定されている。即ち、対物レンズ8aとしての機能は、開口数と作動距離との関係を最適化することで良好に発揮される。例えば、図16に示すように、開口数を高くして作動距離を短くした領域cの場合、解像度は向上するものの、反応器6近傍の空間が減少することから、サンプル交換などの作業性が低下してしまう。また、プレパラートなどサンプル上にカバーや突起物があって、レンズを近づけることが難しいことから、サンプルを観察できない場合があるなどの問題が発生してしまう。一方、開口数を低くして作動距離を長くした領域aの場合、反応器6近傍の空間が十分となり、サンプル交換などの作業性が良好となるが、解像度は低下してしまう。
そのため、本実施の形態では、対物レンズ8aにて、開口数0.3〜1.3の範囲で、且つ、作動距離0.2〜18.0mmの範囲に設定している。この場合、好ましくは、対物レンズ8aにて、開口数0.5〜0.55の範囲で、且つ、作動距離8.3〜10.6mmの範囲に設定するとよい。
このように本実施の形態の落射照明式の遠心顕微鏡Aでは、対物レンズ8aの開口数を0.3〜1.3の範囲で、且つ、作動距離が0.2〜18.0mmの範囲、好ましくは、対物レンズ8aにて、開口数0.5〜0.55の範囲で、且つ、作動距離8.3〜10.6mmの範囲に設定している。従って、開口数と作動距離との関係を最適化することで、蛍光画像の高い解像度と装置の高い操作性の両立を可能とすることができる。
[第7の実施の形態]
図17は、本発明の第7の実施の形態に係る遠心顕微鏡の要部縦断面図、図18−1及び図18−2は、第7の実施の形態の遠心顕微鏡の変形例を表す要部縦断面図である。なお、前述した実施の形態で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
第7の実施の形態にて、図17に示すように、遠心顕微鏡の顕微鏡8は、反応器6内におけるサンプルの状態を捉える対物レンズ8aを有している。また、顕微鏡8は、反応器6のサンプルを蛍光観察可能な蛍光観察手段として、照明装置と、絞り系と、集光光学系と、ダイクロイックビームスプリッターとを有している。
このように構成された顕微鏡8にて、対物レンズ8aと反応器6との間に、蛍光観察用流体が充填されると共に、この蛍光観察用流体の漏洩及び飛散を防止するキャップ101が配設されている。このキャップ101は、円筒形状をなし、下端部が反応器6の上面に載置されている。また、キャップ101は、上端部に内周部側の高さが低くなるリング形状のテーパ面101aが形成され、このテーパ面101aは、対物レンズ8aの円錐台形状をなす傾斜面に平行で、所定隙間をもって、または、密着するように配設されている。そして、対物レンズ8aとキャップ101と反応器6により囲繞された空間部に蛍光観察用流体が充填されている。
なお、この蛍光観察用流体は、空気よりも高い屈折率を有する、例えは、油浸オイル(イマージョンオイル)であって、分解能やコントラストが改善される。また、キャップ101は、シリコンゴム(PDMS:ポリジメチルシロキサン)などの弾性体が好ましく、対物レンズ8aと反応器6との間に適正に介在し、遠心力により内部に充填された蛍光観察用流体の漏洩や飛散を抑制する。この場合、励起光が散乱したり、外部からの外乱光が透過しないように着色することが好ましい。
なお、キャップ101は、この形状に限定されるものではない。第7の実施の形態の遠心顕微鏡の変形例において、図18−1に示すように、顕微鏡8にて、対物レンズ8aと反応器6との間に、蛍光観察用流体が充填されると共に、この蛍光観察用流体の漏洩及び飛散を防止するキャップ102が配設されている。このキャップ102は、上下の中間部が細くなるように屈曲した円筒形状をなし、下端部が反応器6の上面に載置されている。また、キャップ102は、上端部に内周部側の高さが低くなるリング形状のテーパ面102aが形成され、このテーパ面102aは、対物レンズ8aの円錐台形状をなす傾斜面に平行で、所定隙間をもって、または、密着するように配設されている。そして、対物レンズ8aとキャップ102と反応器6により囲繞された空間部に蛍光観察用流体が充填されている。
また、図18−2に示すように、顕微鏡8にて、対物レンズ8aと反応器6との間に、蛍光観察用流体が充填されると共に、この蛍光観察用流体の漏洩及び飛散を防止するキャップ103が配設されている。このキャップ103は、上下の中間部が細くなるように湾曲した円筒形状をなし、下端部が反応器6の上面に載置されている。また、キャップ103は、上端部の内周面103aが対物レンズ8aの円錐台形状をなす傾斜面に密着するように配設されている。そして、対物レンズ8aとキャップ103と反応器6により囲繞された空間部に蛍光観察用流体が充填されている。
更に、キャップは、このような構成に限らず、例えば、対物レンズ8aと反応器6に対して摺動性と密着性を確保できるように、ラビリンスシール(末端が分枝状のもの)を用いてもよいものである。
このように本実施の形態の遠心顕微鏡では、対物レンズ8aと反応器6との間に、蛍光観察用流体を充填すると共に蛍光観察用流体の漏洩及び飛散を防止するキャップ101,102,103を配設している。従って、蛍光観察用流体により高精度な蛍光画像を得ることができると共に、キャップ101,102,103によりこの蛍光観察用流体の漏洩や飛散を防止することができ、装置の信頼性を向上することができる。
なお、本発明の遠心顕微鏡は、上述した各実施形態に示すように、遠心過重力を負荷しながら微小サンプルを観察できる。これを利用して,例えば、細胞など微小物体の基板面との接着性を定量的に測定することができる。また、逆に基板面の特性評価として、遠心重力下での液体の広がり(濡れ性)などを評価することもできる。また、一方向の重力だけではなく、加減速を組合わせることでコリオリ力を利用した微粒子の空間位置制御なども可能である。また、重力下での各種細胞、細菌類などの挙動解析に有効なのは言うまでもない。特に、細胞など生体分子を対象とした用途においては、蛍光観察機能により特定タンパク質の局在、発現状態を観察することができ、有効である。
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。