JP2014173119A - 被削性と鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 質量%で、C:0.12〜0.30%、Si:0.25〜0.45%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.012〜0.060%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.10〜0.40%、Al:0.001〜0.050%、O:0.10%未満を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で、この鋼の基地の硬さが26〜38HRCで、介在物の体積率が0.03〜0.30%で、介在物のうち体積割合で75%以上である介在物の硬さと基地の硬さの差が250HV以下で、介在物のうち個数割合で95%以上を占める介在物の大きさの√Areaが50μm以下である被削性と鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
【選択図】 なし
Description
Cは、硬さ向上に有効な元素である。しかし、Cが0.12%より少ないと必要硬さの略26HRCが得られず、さらにフェライトの析出により、得られた鋼材面の鏡面性が低下する。しかし、Cが0.30%を超えて含有されると、炭化物量が増加し被削性を低下し、さらに靭性や溶接性も低下する。そこでCは0.12〜0.30%とする。
Siは、製鋼時の脱酸材として必要な元素であり、さらに焼入性を高める元素である。このためには、Siは0.25%以上が必要である。しかし、Siは0.45%より多く含有されると、靱性が低下する。そこで、Siは0.25〜0.45%とする
Mnは、Sと結合して硫化物のMnSを生成して被削性を改善する元素であり、さらに、焼入性を高める元素である。このためには、Mnは0.5%以上が必要である。しかし、Mnは2.0%を超えて含有されると、靭性が低下する。そこで、Mnは0.5〜2.0%とする。
Sは、Mnと結合して硫化物のMnSを生成して被削性を改善する元素である。このためには、Sは0.012%以上が必要である。しかし、Sは0.060%を超えて含有されると、鋼中の介在物量が多くなり鏡面性を低下し、さらに靭性を低下する。そこで、Sは0.012〜0.060%とする。
Crは、焼入性を改善し、焼戻し軟化抵抗を上昇する元素である。このためには、Crは1.0%以上が必要である。しかし、Crは3.0%を超えて含有されると、鋼が硬くなり過ぎて被削性を低下する。そこで、Crは1.0〜3.0%とする。
Moは、焼入性を改善し、焼戻し軟化抵抗を上昇し、さらに焼戻し脆化を防止する元素である。このためには、Moは0.10%以上が必要である。しかし、Moは0.40%を超えて含有されると、鋼が硬くなり過ぎて被削性を低下する。そこで、Moは0.10〜0.40%とする。
Alは、本発明において重要な元素であって、介在物の大きさと分布を調整し、過度に大きい介在物の生成を抑制する元素である。このためには、Alは0.001%以上が必要である。しかし、Alは0.050%を超えて含有されると、得られた鋼材の溶接性を低下する。そこで、Alは0.001〜0.050%とする。
Oは、硫化物系介在物の凝固形態を制御する元素である。しかし、Oは鋼にとって不純物元素でもある。したがって、Oは0.010%以上含有されると介在物が大型化し、鏡面性を低下させる。そこで、Oは0.010%未満とする。
V、Nb、W、Tiの各元素は、炭化物を生成し二次硬化に寄与する元素である。しかし、Vは0.05%以上、Nbは0.05%以上、Wは0.05%以上、Tiは0.05%以上として、V、Nb、W、Tiから選択される1種または2種以上が含有されると、これら元素の炭化物である硬質炭化物が過剰に生成されて被削性を低下する。そこで、Vは0.05%未満、Nbは0.05%未満、Wは0.05%未満、Tiは0.05%未満として、V、Nb、W、Tiから選択される1種または2種以上とする。
Ni、Cuの各元素は、プラスチック成形時に発生するガスに対する耐食性を向上する元素である。しかし、Niは0.30%以上、Cuは0.10%以上で含有されると、プラスチック成形金型の溶接時に、凝固割れの感受性が上昇し、被削性を低下する。そこで、Niは0.30%未満、Cuは0.10%未満として、Ni、Cuから選択される1種または2種を含有するものとする。
Nは、不純物元素でもあり、硬質の介在物を生成し、鏡面性と被削性を低下させる元素である。そこで、Nは0.020%未満とする。
Pは、不純物元素でもあり、靭性を低下させる元素である。そこで、Pは0.040%未満とする。
Bは、不純物元素でもあり、溶接割れ感受性を上昇させる元素である。そこで、Bは0.010%未満とする。
鋼の基地の硬さは、必要な鏡面を得るための研削を左右する。すなわち、基地の硬さが26HRC未満では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABSなどの汎用プラスチック成型用金型として必要な鏡面が得られない。そこで、基地の硬さは26HRC以上とする必要がある。しかし、基地の硬さが38HRCを超えると、被削性が低下し、軟質介在物がある場合は磨きムラの原因となり鏡面性を低下する。そこで、鋼の基地(すなわち、マトリクス)の硬さは26〜38HRCとする。
鋼中の介在物の体積率は、0.03%以上で、切削加工中に応力集中源となり、切屑の破砕性を向上し、切削工具の摩耗を軽減する。しかし、介在物の体積率は0.30%を超えると鋼の靱性を低下し、鏡面性を低下する。そこで、介在物体積率は0.03〜0.30%とする。
介在物のうち体積割合で75%以上を占める介在物の硬さと基地の硬さの差は、鏡面を研磨する時に生じる鋼面の凹凸を小さくして鏡面性を維持するために必要である。ところで、上記した介在物の硬さと基地の硬さの差が大きいと、磨きムラを生じて鋼面が凹凸になり易く、鏡面性が低下する。そこで、介在物のうち体積割合で75%以上を占める介在物の硬さと基地の硬さの差は250HV以下とする。
介在物のうち個数割合で95%以上を占める介在物の大きさの√Areaは、プラスチック成形金型用鋼材を研磨する時に、鋼材中の介在物が脱落して鋼材面に生じるピットの大きさの目安になる。金型に生じたピットはプラスチック製品の表面に転写されて凹凸となる。人の目に視認され易くなる凹凸はおよそ50μm程度の大きさである。そこで、視認性や美観を損なうプラスチック金型の使用上の有害度を小さくするためには、介在物のうち個数割合で95%以上を占める介在物の大きさの√Areaは50μm以下とする。
硬さについては、断面60mm角の角棒の断面内中周部の硬さをロックウェル硬度計により測定した。評価は、HRC硬さで、表2に示した。
2.エンドミル加工性
エンドミル加工性については、エンドミル径を32mm、エンドミル刃数を2枚、材種を超硬P20、切削速度を10m/min、送りを0.3mm/刃、切り込みを軸方向8mmで半径方向1mm、切削油なしの条件で、エンドミルの加工性の試験を実施した。評価は、2m切削時の逃げ面の摩耗幅が0.15mm以下を○とし、2m切削時の逃げ面の摩耗幅が0.15mmを超えるものを×として表2に示した。
3.ドリル加工性
ドリル加工性については、使用ドリルをSKH51、ドリル径をφ8mm、回転数を640rpm、送りを60m/min、穿孔深さを50mm、切削油に水溶性切削油剤とする条件でドリル加工性の試験を実施した。評価は、穿孔数が100孔以上を○とし、100孔未満でドリルの折損した場合またはキー音の発生で穿孔中止したものを×として表2に示した。
介在物と基地の硬さの差については、ビッカース硬度計により、介在物および基地の硬さを、個数N=5で測定し、それぞれの平均値の差を求めた。評価は、平均硬さの差が250HV以下を○とし、平均硬さの差が250HVを超えるものを×として表2に示した。
5.介在物体積率
介在物体積率については、試料を鏡面研磨し、被検面を顕微鏡で観察し、代表的な箇所の10mm平方の視野内の介在物の面積率を画像解析により求めて体積率とした。評価は、体積率が0.03〜0.30%のものを○とし、体積率が0.03%未満または0.30%を超えるものを×として表2に示した。
6.介在物寸法
介在物の寸法については、試料を鏡面研磨し、被検面を顕微鏡で観察し、代表的な箇所の縦10mm、横10mmの視野内の介在物の大きさの√Area(すなわち√{(介在物の長径)×(介在物の短径)})を求めた。評価は、介在物の大きさの√Areaが50μm以下である介在物の個数が95%以上を○とし、介在物の大きさの√Areaが50μm以下である介在物の個数が95%未満を×として表2に示した。
7.鏡面性試験
鏡面性試験については、縦15mm、横60mm、長さ100mmの平板の広面を砥石粒度♯4000の研磨紙で研磨し、中央部が縦10mm、横10mmの研磨面をレーザー顕微鏡で観察し、凹み部の寸法を測定し、肉眼でもピットが見えるか目視評価を行った。評価は、鏡面における凹み部の平均径の大きさの√{(長径)×(短径)}が50μm以下でかつ凹み部の深さが5μm以下を○とし、鏡面における凹み部の平均径の大きさの√{(長径)×(短径)}が50μmを超えかつ凹み部の深さが5μmを超えるものを×とし、あるいは鏡面における凹み部の平均径の大きさの√{(長径)×(短径)}が50μmを超えるかまたは凹み部の深さが5μmを超えるかのいずれかであるものを×として表2に示した。
Claims (8)
- 質量%で、C:0.12〜0.30%、Si:0.25〜0.45%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.012〜0.060%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.10〜0.40%、Al:0.001〜0.050%、O:0.10%未満を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で、該鋼の基地の硬さが26〜38HRCであり、介在物の体積率が0.03〜0.30%であり、介在物のうち体積割合で75%以上である介在物の硬さと基地の硬さの差が250HV以下であり、介在物のうち個数割合で95%以上の介在物の大きさの√Areaが50μm以下であることを特徴とする被削性と鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
- 質量%で、C:0.12〜0.30%、Si:0.25〜0.45%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.012〜0.060%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.10〜0.40%、Al:0.001〜0.050%、O:0.10%未満を含有し、さらに、V:0.5%未満、Nb:0.5%未満、W:0.5%未満、Ti:0.5%未満から選択される1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で、該鋼の基地の硬さが26〜38HRCであり、介在物の体積率が0.03〜0.30%であり、介在物のうち体積割合で75%以上である介在物の硬さと基地の硬さの差が250HV以下であり、介在物のうち個数割合で95%以上を占める介在物の大きさの√Areaが50μm以下であることを特徴とする被削性と鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
- 質量%で、C:0.12〜0.30%、Si:0.25〜0.45%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.012〜0.060%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.10〜0.40%、Al:0.001〜0.050%、O:0.10%未満を含有し、さらに、Ni:0.30未満、Cu:0.10%未満から選択される1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で、該鋼の基地の硬さが26〜38HRCであり、介在物の体積率が0.03〜0.30%であり、介在物のうち体積割合で75%以上である介在物の硬さと基地の硬さの差が250HV以下であり、介在物のうち個数割合で95%以上を占める介在物の大きさの√Areaが50μm以下であることを特徴とする被削性と鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
- 質量%で、C:0.12〜0.30%、Si:0.25〜0.45%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.012〜0.060%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.10〜0.40%、Al:0.001〜0.050%、O:0.10%未満を含有し、さらに、V:0.5%未満、Nb:0.5%未満、W:0.5%未満、Ti:0.5%未満から選択される1種または2種以上を含有し、さらに、Ni:0.30未満、Cu:0.10%未満から選択される1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で、該鋼の基地の硬さが26〜38HRCであり、介在物の体積率が0.03〜0.30%であり、介在物のうち体積割合で75%以上である介在物の硬さと基地の硬さの差が250HV以下であり、介在物のうち個数割合で95%以上を占める介在物の大きさの√Areaが50μm以下であることを特徴とする被削性と鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
- 質量%で、C:0.12〜0.30%、Si:0.25〜0.45%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.012〜0.060%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.10〜0.40%、Al:0.001〜0.050%、O:0.10%未満を含有し、さらに、N:0.020%未満、P:0.040%未満、B:0.010%未満を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で、該鋼の基地の硬さが26〜38HRCであり、介在物の体積率が0.03〜0.30%であり、介在物のうち体積割合で75%以上である介在物の硬さと基地の硬さの差が250HV以下であり、介在物のうち個数割合で95%以上を占める介在物の大きさの√Areaが50μm以下であることを特徴とする被削性と鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
- 質量%で、C:0.12〜0.30%、Si:0.25〜0.45%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.012〜0.060%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.10〜0.40%、Al:0.001〜0.050%、O:0.10%未満を含有し、さらに、V:0.5%未満、Nb:0.5%未満、W:0.5%未満、Ti:0.5%未満から選択される1種または2種以上を含有し、さらに、N:0.020%未満、P:0.040%未満、B:0.010%を含有し未満、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で、該鋼の基地の硬さが26〜38HRCであり、介在物の体積率が0.03〜0.30%であり、介在物のうち体積割合で75%以上である介在物の硬さと基地の硬さの差が250HV以下であり、介在物のうち個数割合で95%以上を占める介在物の大きさの√Areaが50μm以下であることを特徴とする被削性と鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
- 質量%で、C:0.12〜0.30%、Si:0.25〜0.45%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.012〜0.060%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.10〜0.40%、Al:0.001〜0.050%、O:0.10%未満を含有し、さらに、Ni:0.30未満、Cu:0.10%未満から選択される1種または2種を含有し、さらに、N:0.020%未満、P:0.040%未満、B:0.010%未満を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で、該鋼の基地の硬さが26〜38HRCであり、介在物の体積率が0.03〜0.30%であり、介在物のうち体積割合で75%以上である介在物の硬さと基地の硬さの差が250HV以下であり、介在物のうち個数割合で95%以上を占める介在物の大きさの√Areaが50μm以下であることを特徴とする被削性と鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
- 質量%で、C:0.12〜0.30%、Si:0.25〜0.45%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.012〜0.060%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.10〜0.40%、Al:0.001〜0.050%、O:0.10%未満を含有し、さらに、V:0.5%未満、Nb:0.5%未満、W:0.5%未満、Ti:0.5%未満から選択される1種または2種以上を含有し、さらに、Ni:0.30未満、Cu:0.10%未満から選択される1種または2種を含有し、さらに、N:0.020%未満、P:0.040%未満、B:0.010%未満を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で、該鋼の基地の硬さが26〜38HRCであり、介在物の体積率が0.03〜0.30%であり、介在物のうち体積割合で75%以上である介在物の硬さと基地の硬さの差が250HV以下であり、介在物のうち個数割合で95%以上を占める介在物の大きさの√Areaが50μm以下であることを特徴とする被削性と鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
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