JP6529234B2 - 高い靭性と軟化抵抗性を有する高速度工具鋼 - Google Patents

高い靭性と軟化抵抗性を有する高速度工具鋼 Download PDF

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Description

この発明は、冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造、熱間押出、ダイカストなどの金型に好適な高い靭性と軟化抵抗性を有する高速度工具鋼に関する。
硬度と耐磨耗性が得られる高速度工具鋼として、例えばJIS規格のSKH51がある。しかし、このSKH51は、Mo、V、Wといった合金元素が多く添加されているので、一次炭化物が増加し、靭性が低下する傾向にあった。この高速度工具鋼と同等の硬さを得つつ、靭性を高めた高速度工具鋼として、マトリクスハイス系の高速度工具鋼がある。このマトリクスハイス系の高速度工具鋼は、JIS−SKH51などの高速度工具鋼の基地(マトリクス)の組成を参考にしてMo、V、Wといった合金元素の含有量を低くした成分系からなり、高い強度と靭性を兼備した工具鋼が従来技術として知られている。
これらの従来技術の一つとして、切削工具および熱間・温間ないし冷間における鍛造、圧造、据込み、剪断等の各種工具に利用され高速度工具鋼、特に低温焼入れが可能な高速度工具鋼の発明が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この特許文献1の発明の実施例として示される成分系における(2Mo+W)の成分量の上限は20%と高いので、安定した靱性が得られない。
さらに他の従来技術として、塑性加工用圧造工具などに使用される耐衝撃性および耐摩擦性に優れた低合金高速度工具鋼の発明が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。また、C含有量などの合金元素の関係式を用いて、合金元素の添加量の最適化を図り、高温環境下での軟化抵抗および耐磨耗性の維持が可能な金型鋼の発明が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、これらの文献は靱性を低下させる要因となるP、S、O、Nなどの不純物元素に関する考慮がなされておらず、安定した靱性が得られない。
さらに上記の特許文献1〜特許文献4の他に、マトリクスハイス系高速度工具鋼の靭性を考慮した発明が提案されている(例えば、特許文献5、特許文献6参照。)。しかし、特許文献5の発明はCr量が高いので、軟化抵抗性が不足する場合があり、また、各合金元素の炭化物に対するMo系炭化物の割合を考慮した値について考慮されておらず、靱性が低下する場合がある。また、特許文献6の発明は、各合金元素の炭化物に対するMo系炭化物の割合を考慮した値について考慮されておらず、さらに、この特許文献6の発明の実施例として示される成分系では、靱性と軟化抵抗性を同時に考慮したC、Mo、Wなどの成分検討がなされておらず、靱性や軟化抵抗性が不足する場合がある。
特開2003−268499号公報 特開平1−108348号公報 特開平1−159349号公報 特開2013−213256号公報 特開2004−285444号公報 特開2005−206913号公報
本発明が解決しようとする課題は、鋼中の合金元素添加量の最適化により、軟化抵抗性を兼備し、特にCr、V、W、Nbの添加量に対するMoの添加量を考慮することにより、靭性を高位で安定させることが可能な金型用の工具鋼を提供することである。
従来の技術として上述したような問題を解消するために、発明者は、鋭意開発を進めた結果、請求項に示す合金成分、C量−Ceq=ΔCからなる式およびA値=0.063×%Mo/Ceqからなる式を満たすことで、靭性および軟化抵抗性のバランスに優れた工具鋼が得られることを見出した。
すなわち、上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の手段では、質量%で、C:0.60〜0.75%、Si:0.10〜2.50%、Mn:0.10〜1.00%、Cr:3.00%〜5.00%未満、Mo:2.00〜3.60%、W:3.00%以下、ただし、2Mo+W:5.00〜9.00%、V:0.50〜2.00%、P:0.050%以下、S:0.030%以下、O:0.0100%以下、N:0.0079%〜0.0400%を含有し、さらに選択的成分としてNb:1.00%以下およびCo:5.00%以下の1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、ΔC:−0.1000〜0.0600であり、A値:0.256〜0.350であることを特徴とする高い靱性を有する高速度工具鋼である。
ここに、ΔC=C−Ceqであり、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nbである。Ceqは、主に添加した各合金元素が総て炭化物となる場合に必要なC量の目安として用いられている。
すなわち、ΔCは、鋼中のCと各合金元素量との関係から、固溶C量に関して考慮した値である。
さらに、A値=0.063×%Mo/Ceqであり、A値は、靱性と軟化抵抗性の両方の特性を兼備するために、各合金元素の炭化物に対するMo系炭化物の割合に関して考慮した値である。
この発明は、冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造、熱間押出、ダイカストなどの金型に好適な高い靱性を有する高速度工具鋼であり、鋼中の合金元素添加量の最適化によって、焼入れ後の靱性が高く、高温で長時間保持した場合の軟化量の小さい優れた軟化抵抗性を有し、かつ、靱性と軟化抵抗性のバランスに優れた高速度工具鋼である。
本発明の実施するための形態に先立って、本願の請求項に係る発明の化学成分の限定理由並びにΔC(=C−Ceq)およびA値(=0.063%Mo/Ceq)について説明する。なお、以下の各化学成分における%は、質量%である。
C:0.60〜0.75%
Cは、十分な焼入れ性や焼入焼戻し硬さを確保し、炭化物を形成させることで耐摩耗性や高温強度を得るために必要な元素である。Cが0.60%より少なすぎると十分な硬さと高温強度と耐摩耗性が得られない。一方、Cが0.75%より多すぎると、鋼中での凝固偏析および炭化物偏析を助長し、靱性を阻害する。そこで、Cは0.60〜0.75%とする。
Si:0.10〜2.50%
Siは、製鋼での脱酸効果および焼入性の確保として必要な元素である。しかし、Siが0.10%より少ないと、製鋼での脱酸および焼入性の効果は得られない。一方、Siが2.50%より多すぎると、靱性を低下させる。そこで、Siは0.10〜2.50%とする。
Mn:0.10〜1.00%
Mnは、焼入性の確保として必要な元素である。しかし、Mnが0.10%より少ないと、焼入性の効果は得られない。一方、Mnが1.00%より多く含有されると、加工性を低下させる。そこで、Mnは0.10〜1.00%とする。
Cr:3.00〜5.00%
Crは、焼入性を改善する元素である。しかし、Crが3.00%より少ないと、焼入
性は十分に改善されない。一方、Crが5.00%より多すぎると、焼入焼戻し時にCr系の炭化物の偏析を助長し、高温強度および軟化抵抗性を低下させる。そこで、Crは3.00〜5.00%とする。
Mo:2.00〜3.60%、W:3.00%以下、かつ、2Mo+W:5.00〜9.00%
MoおよびWは、ともに焼入性、焼戻し時の二次硬化、高温強度、軟化抵抗性に寄与する元素である。また、焼入れ時に未固溶の微細な炭化物が結晶粒の粗大化を抑制し、靱性の低下を抑制する。しかし、Moが2.00%より少なく、かつ2Mo+Wが5.00%より少ないと、焼入性、焼戻し時の二次硬化、高温強度、軟化抵抗性は得られず、焼入れ時に未固溶の微細な炭化物が結晶粒の粗大化が抑制できず、靱性の低下も抑制できない。一方、Moが3.60%より過剰に、Wが3.00%より過剰に、かつ2Mo+Wが9.00%より過剰に含有されると、凝固偏析を助長して粗大炭化物を晶出し、靱性を低下させる。特にMoはWと同等の効果を得るためには、MoはWの2倍の量を含有させる必要があるが、Moを過剰に含有させるとコストが嵩む。そこで、Moは2.00〜3.60%、Wは3.00%以下とし、かつ、2Mo+Wは5.00〜9.00%とする。
V:0.50〜2.00%
Vは、焼戻し時に微細で硬質なMC型の炭化物、窒化物、炭窒化物を析出し、高温強度や耐摩耗性に寄与する元素である。また、焼入れ時に未固溶の微細な炭化物や炭窒化物が結晶粒の粗大化を抑制し、靱性の低下を抑制する。しかし、Vが0.50%より少ないと高温強度や耐摩耗性が得られず、結晶粒の粗大化や靱性の低下が抑制できない。一方、Vが2.00%より多すぎると、凝固偏析を助長し、粗大な炭化物、窒化物、炭窒化物を晶出し、靱性を阻害する。そこで、Vは0.50〜2.00%とする。
P:0.050%以下
Pは、不純物元素として不可避的に含有される元素である。ところで、Pが0.050%より多いと、結晶粒界へ偏析し、靱性を低下させる。そこで、Pは0.050%以下とする。
S:0.030%以下
Sは、不純物元素として不可避的に含有される元素である。ところで、Sが0.030%より多いと、硫化物を形成し、靱性および熱間加工性を低下させる。そこで、Sは0.030%以下とする。
O:0.0100%以下
Oは、不純物元素として不可避的に含有される元素である。ところで、Oが0.0100%より多いと、酸化物を形成して破壊の起点となり、靱性や疲労強度を低下させる。そこで、Oは0.0100%以下とする。
N:0.0400%以下
Nは、V、Nb、Tiと結合して、MC型の窒化物や炭窒化物を形成し、硬度や耐摩耗性に寄与する。それらのMC型の窒化物や炭窒化物は、焼入れ時に結晶粒の粗大化を抑制し、靱性を改善する。ところで、Nが0.0400%より多すぎると、凝固過程で、より高温でのV、Nb、Tiとの結合を助長するため、晶出したMC型の窒化物や炭窒化物が粗大化し、逆に靱性を阻害する。そこで、Nは0.0400%以下とする。
Nb:1.00%以下
Nbは、Vと同様に、焼戻し時に微細で硬質なMC型の炭化物、窒化物、炭窒化物を析出し、高温強度や耐摩耗性に寄与する元素である。また、焼入れ時に未固溶となった微細な炭化物や炭窒化物が結晶粒の粗大化を抑制し、靱性の低下を抑制する。ところで、Nbが1.00%より多すぎると、凝固偏析を助長し、粗大な炭化物、窒化物、炭窒化物を晶出し、靱性を阻害する。そこで、Nbは1.00%以下とする。
Co:5.00%以下
Coは、基地を強化し高温強度を改善する元素で、高温での炭化物の凝集粗大化を抑制し、高温軟化抵抗性や硬さを上昇させる元素である。ところで、Coが5.00%より多く含有されると、靱性を劣化させるとともにコスト上昇の原因ともなる。そこで、Coは5.00%以下とする。
ΔC:−0.1000〜0.0600
ΔCはΔC=C−Ceqで定義される値である。このΔC値が、−0.1000未満であると、十分な焼入焼戻し硬さを得にくくなるばかりでなく、炭化物量が減少し、軟化抵抗性が低下する。一方、ΔCが0.0600を超えると、成分偏析や炭化物偏析を助長し、靱性が悪化する。そこで、ΔCは−0.1000〜0.0600とする。
A値:0.256〜0.350
A値はA値=0.063%Mo/Ceqで定義される値である。このA値が、0.256よりも小さな値になると、靱性と軟化抵抗性を高めるためにはMoとその他の元素との成分バランスが重要となる中において、焼入焼戻後の鋼材中に存在するMo系炭化物の割合が低下し、軟化抵抗性が低下する。一方、A値が0.350を超えると、Mo系炭化物の割合が過剰となり、炭化物偏析を助長し、靱性が低下する。そこで、A値は0.256〜0.350とする。
本願の発明の実施の形態について以下に記載する。
先ず、本願の発明の鋼の化学成分からなる鋳造材を真空アーク再溶解法(VAR)によって2次溶解して再凝固させる。この方法では、2次溶解により、再溶解後の凝固が短時間で行われるため、凝固偏析が起こりにくく、炭化物の局部的な凝集および偏析を抑えることが可能となる。なお、上記の真空アーク再溶解法(VAR)に代えてエレクトロスラグ炉再溶解法(ESR)で2次溶解を行うこともできる。
次いで、上記の2次溶解して再凝固させた鋼を1000〜1200℃で10時間以上のソーキング処理を実施する。この製造方法は、鋼中に析出した粗大な炭化物を適性範囲の大きさにコントロールするために最適の製造方法である。このソーキング処理は、焼入れ温度よりも高温で、かつ、融点よりも低い温度で実施する必要がある。ソーキング処理を適性に行えば、形成された粗大な炭化物を小さくし、さらに炭化物の量を少なくして均一に分散させることが可能である。なお、ソーキング処理する温度と時間は成分によって適性値が異なる。
すなわち、本発明の実施の形態では、下記の表1の記号A〜Qに示す発明鋼と記号1〜17に示す比較鋼の、各化学成分の組成および残部Feおよび不可避不純物からなるインゴットを、1トン真空溶解炉を用いて溶製した後、造塊してインゴットとし、この得られたインゴットを1200℃で10時間以上のソーキング処理を行った後、熱間鍛造を行って、鍛練成形比が凡そ6Sとなる直径160mmの棒鋼に製造した。
Figure 0006529234
表1において、成分組成中のNbおよびCoにおける「−」は無添加を表している。さらに数値に下線を有するものは本発明の請求項の範囲外であることを示している。
表1の記号A〜Qからなる発明鋼の成分組成からなる上記で製造した、直径160mmの棒鋼の鋼材の中心部より割り出した、縦25mm、横25mm、高さ25mmのブロックからなる試料を用いて、表2に記載の、実施例として、(1)の1180℃の焼入れ温度で10分間保持した後、および実施例として、(2)の1100℃の焼入れ温度で10分間保持した後、それぞれの試料を、攪拌している50℃の油に投入して焼入れを実施した。次いで、これらの焼入れした各ブロックからなる試料を、表2の(1)における焼戻温度および(2)における焼戻し温度にそれぞれ60分保持した後空冷する操作を、3回繰り返して行った。得られた各試料を切断し、切断面を測定面として、測定面の熱影響層およびその反対面の表面にあるスケール層を平面研磨機にて除去して、平行精度を高めた後、ロックウェル硬度計にて硬さを測定し、表2に硬さをHRCで示した。
表2における靭性は、シャルピー衝撃試験により評価を実施した。用いた試験片は、直径160mmの上記の熱間鍛造材の中心部の圧延方向から採取し、表2に記載の(1)の1180℃の焼入温度と焼戻温度、および(2)の1100℃の焼入温度と焼戻温度でそれぞれ焼入および焼戻しを実施した後、10RCノッチのシャルピー試験片にそれぞれ加工した。評価は(1)の実施例の最高硬さであるHRC63以上と、(2)の実施例のHRC58の2条件を選択して行った。ただし、比較鋼で63HRC以上が得られない鋼材は、その最高焼入焼戻し硬さに調質した。表2において、(1)の実施例の63HRC以上の硬さの場合、シャルピー衝撃値が25.0J/cm2以上であるときは○とし、25.0J/cm2未満であるときは×とした。また、(2)の実施例のHRC58の硬さの場合、シャルピー衝撃値が120.0J/cm2以上であるときは○とし、120.0J/cm2未満であるときは×とした。
軟化抵抗性試験の方法を以下に示す。本発明鋼および比較鋼の各鋼材の中心部から、縦25mm、横25mm、高さ25mmのブロックからなる供試材を割出し、(1)の実施例の1180℃で焼入れを実施した後、焼戻しを行うことで、HRC63〜65に調質した。軟化抵抗性をみるために、これらの供試材を600℃にて50時間保持した後、これらの鋼材を空冷した。上記と同様に、鋼材の表面にあるスケール層を除去した後、ロックウェル硬度計にて各供試材の硬さを測定し、この硬さの値と1180℃焼入の初期硬さとの差、即ち軟化量(ΔHRC)により軟化抵抗性を評価した。ただし、比較鋼でHRC63以上が得られない鋼材は、その最高焼入焼戻し硬さに調質した。評価は、軟化量のΔHRCが20.0以下であるときは○とし、軟化量のΔHRCが20.0を超えるときは軟化量のΔHRCの数値に下線を付して×として表2に示した。
Figure 0006529234
表1および表2の比較鋼について以下に説明する。
比較鋼1は、Cが0.86%で請求項1のCの上限値の0.75%より高いため、硬さは(1)でHRC65.2、(2)でHRC58.4が得られるものの、偏析を助長するので、靱性が(1)で14.2J/cm2、(2)で35.2J/cm2と、いずれも本願で規定する値よりも低下しており、靱性はいずれも×である。
比較鋼2は、Cが0.53%で請求項1のCの下限値の0.60%より低いため、硬さは(1)でHRC61.2、(2)でHRC56.8と十分な硬さが得られない。また、高温強度に有効な炭化物量が少なくなり、軟化抵抗性の軟化量のΔHRCが23.6で×ある。
比較鋼3は、Moが4.30%で請求項1のMoの上限値の3.60%より高いため、A値は0.365で本願のA値の上限の0.350を超えることとなり、偏析を助長するので、靱性が(1)で23.1J/cm2、(2)で110.3J/cm2と、いずれも本願で規定する値よりも低下しており、靱性はいずれも×である。
比較鋼4は、2Mo+Wが9.10で請求項1の2Mo+Wの上限値の9.00を超え、ΔCが0.1575で請求項1のΔCの上限値の0.0600を超えるため、偏析を助長するので、靱性が(1)で18.4J/cm2、(2)で70.2J/cm2と、いずれも本願で規定する値よりも低下しており、靱性はいずれも×である。
比較鋼5は、Moが1.85%で請求項1のMoの下限値の2.00%より低く、Wが0.51%であるので2Mo+Wが4.21と請求項1の2Mo+Wの下限値の5.00より低いため、高温強度に有効な炭化物量が少なくなって、軟化抵抗性が低下し、軟化量のΔHRCが22.7で評価基準の20.0を超えているので×である。
比較鋼6は、Crが5.04%で請求項1のCr上限値の5.00%より高いため、A値は0.242で請求項1の下限値の0.256より低く、高温強度に有効な炭化物量が少なくなって、軟化抵抗性が低下し、軟化量のΔHRCが23.2で評価基準の20.0を超えているので×である。
比較鋼7は、成分バランスが悪く、ΔCが−0.1068で請求項1のΔCの下限値の−0.1000より低いので、軟化抵抗性の軟化量のΔHRC20.6で評価基準の20.0を超えているので×である。
比較鋼8は、Vが2.67%で請求項1のVの上限値の2.00%より高いため、硬さに有効な固溶Cが減少し、焼戻し時に析出する炭化物量が不十分なため、硬さが得にくく、高温強度に有効な炭化物量も少なくなるため、軟化抵抗性が低下し、軟化量のΔHRCが20.5で評価基準の20.0を超えているので×である。
比較鋼9は、Vが0.44%で請求項1のVの下限値の0.50%より低いため、A値は0.390で本願のA値の上限の0.350を超えることとなり、靱性が(1)で23.9J/cm2、(2)で114.1J/cm2と、いずれも本願で規定する値よりも低下している。すなわち焼入れ時の未固溶炭化物が減少し、結晶粒の粗大化抑制能が低下することが一要因となり、靱性が(1)で23.4J/cm2、(2)で114.1J/cm2と、いずれも本願で規定する靱性値よりも劣っているので、靱性はいずれも×である。
比較鋼10は、Nbが1.37%で請求項2のNbの上限値の1.00%よりも高いため、硬さに有効な固溶Cが減少し、目標硬さが得にくく高温強度に有効な炭化物量も少なくなるため、軟化抵抗性が低下し、軟化量のΔHRCが23.3で評価基準の20.0を超えているので×である。
比較鋼11は、Coが7.03%で請求項2のCoの上限値の5.00%を超えているので、基地組織の延性が低下し、靱性が(1)で22.5J/cm2、(2)で97.8J/cm2と、いずれも本願で規定する靱性値よりも劣っているので、靱性はいずれも×である。
比較鋼12は、Cr、Mo、W、V成分のバランスが悪く、A値が0.226で請求項1の下限値の0.256より低いため、高温強度に有効な炭化物量も少なくなり、軟化抵抗性が低下し、軟化量のΔHRCが21.0で評価基準の20.0を超えているため×である。
比較鋼13は、Cr、Mo、W、V成分のバランスが悪く、A値が0.364で請求項1の上限値の0.350より高いため、偏析を助長し、靱性が(1)で23.7J/cm2、(2)で100.6J/cm2と、いずれも本願で規定する靱性値よりも劣っているので、靱性はいずれも×である。
比較鋼14は、Sが0.041%で請求項1のSの上限値の0.030%より高く、硫化物を多量に形成し、靱性が(1)で21.4J/cm2、(2)で105.7J/cm2と、いずれも本願で規定する靱性値よりも劣っているので、靱性はいずれも×である。
比較鋼15は、Oが0.0230%で請求項1のOの上限値の0.0100%より高いため、多量の酸化物を形成し、破壊の起点となり、靱性が(1)で20.0J/cm2、(2)で103.4J/cm2と、いずれも本願で規定する靱性値よりも劣っているので、靱性はいずれも×である。
比較鋼16は、Pが0.061%で請求項1のPの上限値の0.050%より高いので、Pが結晶粒界に偏析し、さらにNが0.049%で請求項1のNの上限値の0.0400%より高いので、炭窒化物の偏析を助長し、靱性が(1)で19.4J/cm2、(2)で87.6J/cm2と、いずれも本願で規定する靱性値よりも劣っているので、靱性はいずれも×である。
比較鋼17は、Siが2.78%で請求項1のSiの上限値の2.50%より多いので、基地組織の延性が低下し、靱性が(1)で24.1J/cm2、(2)で111.4J/cm2と、いずれも本願で規定する靱性値よりも劣っているので、靱性はいずれも×である。
上記の比較鋼に比して、本発明鋼のA〜Qは、いずれも軟化抵抗性に優れ、軟化抵量のΔHRCが20.0以下でいずれも○であり、靱性が(1)で25.0J/cm2以上で、(2)で20.0J/cm2以上であり、いずれも高い靱性を兼備しており、靱性はいずれも○である。したがって、本発明鋼のA〜Qは高い靱性と軟化抵抗性を有する高速度工具鋼を提供することが可能である。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.60〜0.75%、Si:0.10〜2.50%、Mn:0.10〜1.00%、Cr:3.00%〜5.00%未満、Mo:2.00〜3.60%、W:3.00%以下、ただし、2Mo+W:5.00〜9.00%、V:0.50〜2.00%、P:0.050%以下、S:0.030%以下、O:0.0100%以下、N:0.0079%〜0.0400%を含有し、さらに選択的成分としてNb:1.00%以下およびCo:5.00%以下の1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、ΔC:−0.1000〜0.0600であり、A値:0.256〜0.350であることを特徴とする高い靱性と軟化抵抗性を有する高速度工具鋼。
    ここに、ΔC=C−Ceq、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb、A値=0.063×%Mo/Ceqである。
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