JP2014173093A - 金多孔質膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板を用い、しゅう酸及びその塩を除くオキソ酸類水溶液中で金のアノード酸化を行う酸化工程と、該酸化工程終了後、金多孔質皮膜の膜厚が200nm未満となる場合は直ちに、金多孔質皮膜の膜厚が200nm以上となる場合は所定時間放置した後に、カソード還元を行う還元工程とを行い、上記還元工程における上記放置は、上記酸化工程終了後アノード酸化により得られる酸化反応物を放置して酸化金全体の10%以上が金に還元されるまで行うか、及び/又は上記還元工程における上記放置は、上記酸化工程酸化終了後、0〜150℃の条件で、4日間〜10秒間行うことを特徴とする金多孔質膜の製造方法。
【選択図】なし
Description
たとえば、特許文献1には、均質なナノスケールの細孔を有する金多孔質膜の安全かつ簡単な製造方法として、カルボン酸またはカルボン酸塩水溶液中で電位を、水素標準電極電位に対して+1.5〜11V程度としてアノード酸化数ことにより、均質で数nm〜数百nmの微細孔を有する金多孔質膜が得られる製造方法が提案されている。
しゅう酸以外のカルボン酸水溶液を用いて得られる多孔質皮膜は金の酸化物であり,大気中で金へと序々還元される.この反応を利用した金微細構造の形成手法として,水中での金のナノ粒子形成も提案されている。
たとえば、特許文献2には、粒状金ナノ粒子の製造方法の中で、しゅう酸およびその塩を除くカルボン酸またはカルボン酸塩水溶液中で金をアノード酸化して多孔質膜を得ることが記載されている。
このため、均質な多孔質膜をより短期間で製造することのできる金多孔質膜の製造方法の開発が要望されている。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.基板を用い、しゅう酸及びその塩を除くオキソ酸類水溶液中で金のアノード酸化を行う酸化工程と、該酸化工程終了後、金多孔質皮膜の膜厚が200nm未満となる場合は直ちに、金多孔質皮膜の膜厚が200nm以上となる場合は所定時間放置した後に、カソード還元を行う還元工程とを行うことを特徴とする金多孔質膜の製造方法。
2.上記還元工程における上記放置は、上記酸化工程終了後アノード酸化により得られる酸化反応物を放置して酸化金全体の10%以上が金に還元されるまで行うことを特徴とする1記載の金多孔質膜の製造方法。
3.上記還元工程における上記放置は、上記酸化工程酸化終了後、0〜150℃の条件で、4日間〜10秒間行うことを特徴とする1記載の金多孔質膜の製造方法。
4.上記オキソ酸が、無機オキソ酸類であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の金多孔質膜の製造方法。
5.上記基板が、バルブ金属からなることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の金多孔質膜の製造方法。
6.上記バルブ金属がアルミニウムまたはチタンであることを特徴とする5記載の金多孔質膜の製造方法。
7.上記オキソ酸類がホウ酸およびその塩であることを特徴とする5記載の金多孔質膜の製造方法。
8. 1記載の製造方法により得られた金多孔質膜であって、形成された細孔の長径/短径の比が3以下であり、細孔の長径/短径の比が3を超える細孔を含まないことを特徴とする金多孔質膜。
本発明の金多孔質膜の製造方法は、基板を用い、しゅう酸を除くオキソ酸類水溶液中で金のアノード酸化を行う酸化工程と、該酸化工程終了後、金多孔質膜の厚さが200nm以上であるか否かによって放置しカソード還元を行う還元工程とを行うことにより実施することができる。
本発明の製造方法により得られる金多孔質膜については後述する。
以下、各工程について説明する。
<酸化工程>
酸化工程は、金のアノード酸化を行い、金酸化物の多孔質膜を形成する工程であり、該アノード酸化は、基板をオキソ酸類水溶液中に浸漬した状態で正の電圧を印加することで行うことができる。
ここで用いる上記基板としては、金箔などの金の薄膜をそのまま基板として用いることができる他、アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル等のバルブ金属からなる基板が好ましく用いられ、中でも上記バルブ金属としてアルミニウム又はチタンが水溶液中でのアノード酸化時の基板の安定性および金多孔質皮膜との接着性が高く好ましい。上記基板として上記バルブ金属を用いる場合には、金をアノード酸化環境に供給する必要があるが、基板表面にスパッタリングなどの公知の手法を用いて金を付着させるのが好ましい。
またはその塩の導電率等により異なり、特に限定されるものではない。酸化時間が長くなれば、一般的には酸化皮膜の膜厚は厚くなる。他方、ある程度の厚さとなると膜厚の増加が停止し、更に電解を続けると酸化皮膜が剥離する場合がある。よって、このような酸化皮膜の剥離が起きないような時間が選択されることが通常好ましい。
また、本発明においては、上記基板がバルブ金属からなるものである場合に、上記無機オキソ酸類としてホウ酸およびその塩を用いると、電解液が基板に達した時の酸化反応が穏やかとなり、基板と金多孔質皮膜との接着性が向上する点で特に好ましく、具体的にはホウ酸、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム等が好ましく挙げられる。
本発明における還元処理は、上記所定条件下として、金多孔質皮膜の膜厚が200nm以上であるか否かを判断して、200nm未満となる場合は直ちに、金多孔質皮膜の膜厚が200nm以上となる場合は放置した後にカソード還元を行うことにより還元処理を行う。
カソード還元は、上記のアノード酸化により基板上に形成された金酸化物多孔質膜をカソードとして、電解質溶液中で、アノードとなる対極との間で電流を流すことにより、金酸化物膜を還元処理する方法であり、本発明においては上記アノード酸化に際して用いた電極及び電解質溶液をそのまま用いて、アノード酸化の際とは陰極と陽極を逆にして電圧を印加することでカソード還元を行うのが好ましい。
したがって、この際用いられる電解質溶液としては、上述したアノード酸化において用いられる電解質溶液を上記アノード酸化に用いて得られる電解質溶液を挙げることができ、カソード還元を行う際に用いられる陽極用の電極としては、上述したアノード酸化において用いられる陰極を挙げることができる。
また、カソード還元を行う際の印加電圧は、電極から水素が発生する電位まで下げないことが好ましい。標準電極電位に対して―0.0〜―1.5Vであり、より好ましくは−0.5〜−1.0Vである。基板にバルブ金属を用いた場合はアノード酸化時に基板の酸化反応が進行するため、その酸化皮膜の電気抵抗に対応してカソード還元の電位を低く設定するのが好ましい。
カソード還元は、アノード酸化後放置して酸化金全体の10%以上を金に還元させた後行うのが好ましい。このときの還元量の定量は、電気化学的に行うことが好ましい。すなわち、アノード酸化後直ちにカソード還元を実施した時のカソード反応の電気量(カソード電気量)をAとし、所定時間放置後にカソード還元した際のカソード電気量をBとする。Bは未還元の酸化金の還元に要した電気量であるから,放置中の還元量(%)は{(A−B)/A×100}の計算によって求めることができる。XPS測定により得られるAu4fスペクトルのピーク分離によって金と酸化金の比を求める事も可能であるが、この場合は皮膜の最表面のみの比であり、皮膜全体の還元量を定量的に示すものではない.また、上記カソード還元は、
具体的には、0〜150℃の条件で、4日間〜10秒間放置した後行うのが好ましい。すなわち、0℃の条件では4日間放置し、150℃の条件では10秒間放置するというように、低温であれば長時間、高温であれば短時間放置するのが好ましい。
このように、一旦放置して一定量自然に還元させた後カソード還元を行って金酸化物の全量を金に還元するのが、良好で均質な多孔質を形成する上で好ましい。
本発明の製造方法により得られる金多孔質膜は、均質な多孔質が形成された膜であり、形成された細孔の長径/短径の比が3以下(細孔の長径/短径の比が3以上の細孔を含まない) 、好ましくは2〜1である。このように細孔の形状も均質なものが得られるので、各種電子材料として有用である。
純度99.95%の金箔(厚さ10μm)を基板として用い、0℃,0.1Mの硫酸水溶液中でHg/Hg2SO4参照極に対して0Vから1.8Vまで10mVs−1で電位を上げ、その後電気量が50Ccm−2に達するまで1.8Vでアノード酸化を実施した。その後直ちにカソード還元を行った。カソード還元は、−10mVs−1で0Vまで電位を下げて0Vで電位を3分間維持することで行い、この際、図1に示す様にカソード電流が確認され、この時のカソード還元の電気量は0.41Ccm−2であり、カソード還元されていることが確認された。得られた試料の破断面をSEMにより観察し、その結果を図2に示す。図2に示す様に皮膜の下側に縦穴が存在する多孔質皮膜が得られた。図3に得られた試料のAu4fのXPSスペクトルを示すが,多孔質皮膜の金の酸化状態は0価であることが確認された。
アノード酸化後に試料を純水で洗浄し,大気中約15℃で3日静置した後カソード還元を行った以外は実施例1と同様にしてカソード還元を実施したところ、図4に示す様にカソード電流が確認され、カソード還元が起こったことを確認した。この時のカソード還元の電気量は0.26Ccm−2であった。得られた試料の破断面をSEMにより観察し、その結果を図5に示す。図5に示す様に縦穴状の欠陥の無い微細な多孔質構造が得られた。
基板としてAl,Ti,ステンレス(SUS304、以下SUSとする)を使用し、99.99%の金をターゲットとするため,イオンコーターでそれぞれの基板の表面に金をスパッタした。金が膜厚50nmでスパッタされた基板を、0℃の硫酸水溶液(濃度0.1M)中に浸漬し、Hg/Hg2SO4参照電極を用いてアノード酸化した。保持電位は、参照電極に対し1.8Vとし、金酸化物多孔質皮膜の細孔を通して電解液が基板に達し、基板のアノード酸化が進行したところで停止した。
アノード酸化終了後直ちに1mVs−1の掃引速度でカソード還元を行い、金多孔質膜を得た。この際保持電位は、参照電極に対し−1.4Vを基準とし、カソード電流が流れなくなるまでカソード還元を行い、金多孔質膜を得た。
図6に0℃,0.1Mの硫酸水溶液中で金および各基板を5mVs−1でアノード掃引した際の電位−電流(V−I)曲線を示す。
金の場合は約1.2Vで電流が立ち上がり、1.4Vを過ぎたあたりから直線的に増加し、1.8Vでの電流値は28mAcm−2となった。SUSの場合は約1.1Vでの電流の立ち上がりと共に直線的に増加し,1.8Vでの電流値は金と近い値となった。
これらに対して、バルブ金属であるAlとTiはこれらと比較して非常に低い電流値となり、1.8V到達時の電流密度はそれぞれ0.06,0.10 mAcm-2であった。
各金多孔質膜は均質な多孔質膜であったが、基板としてSUSを用いた場合には金のアノード酸化の終了時点の判断が困難であり、またSUS基板から気泡が大量に発生したために多孔質皮膜が剥離する等問題もあった。一方、AlとTiを基板に用いた際は,電解液が多孔質皮膜を通して基板に達すると電流値が減少し,最終的に基板をアノード酸化した際の電流値まで低下したことから,金のアノード酸化の完了を明確に判断することができた。なかでもAlはカソード還元後の金多孔質皮膜の接着性に優れたものであった。
電解液を中性の硫酸ナトリウム水溶液とした場合も同様の結果となった。
電解液を硫酸水溶液に代えて0℃,濃度0.1Mの四ホウ酸アンモニウム水溶液とした以外は実施例2と同様にして金多孔質膜を得た。その結果、特にAlとTiとにおいて、目視でムラの無い良好な金多孔質膜が得られた(AlとTiとで硫酸を用いたときのような差はなく、両者ともに均質な多孔質が形成されていた)。
Al基板を用いて得られた金多孔質膜のSEM観察を行ったが、非常に均質な多孔質膜が形成されたものであった。Alの表面に形成した膜厚100nmの金のアノード酸化およびカソード還元により得られた皮膜の外観を図7に、SEM像を図8に示す。
このように四ホウ酸アンモニウムを用いることでAl基板の酸化反応が抑制され、均質な皮膜を得ることができた。アノード酸化後にカソード還元を実施することで、酸化皮膜の還元を短時間で完了できた。
Claims (8)
- 基板を用い、しゅう酸及びその塩を除くオキソ酸類水溶液中で金のアノード酸化を行う酸化工程と、該酸化工程終了後、金多孔質皮膜の膜厚が200nm未満となる場合は直ちに、金多孔質皮膜の膜厚が200nm以上となる場合は所定時間放置した後に、カソード還元を行う還元工程とを行うことを特徴とする金多孔質膜の製造方法。
- 上記還元工程における上記放置は、上記酸化工程終了後アノード酸化により得られる酸化反応物を放置して酸化金全体の10%以上が金に還元されるまで行うことを特徴とする請求項1記載の金多孔質膜の製造方法。
- 上記還元工程における上記放置は、上記酸化工程酸化終了後、0〜150℃の条件で、4日間〜10秒間行うことを特徴とする請求項1記載の金多孔質膜の製造方法。
- 上記オキソ酸が、無機オキソ酸類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金多孔質膜の製造方法。
- 上記基板が、バルブ金属からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金多孔質膜の製造方法。
- 上記バルブ金属がアルミニウムまたはチタンであることを特徴とする請求項5記載の金多孔質膜の製造方法。
- 上記オキソ酸類がホウ酸およびその塩であることを特徴とする請求項5記載の金多孔質膜の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法により得られた金多孔質膜であって、形成された細孔の長径/短径の比が3以下であり、細孔の長径/短径の比が3を超える細孔を含まない ことを特徴とする金多孔質膜。
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