JP2014172816A - 炭素材料の製造方法、炭素材料および二次電池 - Google Patents
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Abstract
【構成】 この発明に係る炭素材料の製造方法では、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料(10)を製造する。先ず、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を回収する(S1)。そして、回収した残液に含まれる糖分を150−250℃の低温(S5)、および1000−3000℃の高温(S7)の2段階で加熱して炭素化させることによって、炭素材料(10)を得る。
【効果】 木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物の有効利用を図ることができる。
【選択図】 図1
【効果】 木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物の有効利用を図ることができる。
【選択図】 図1
Description
この発明は炭素材料の製造方法、炭素材料および二次電池に関し、特にたとえば、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料を製造する、炭素材料の製造方法、炭素材料および二次電池に関する。
近年、地球温暖化防止に向けた取り組みが広がる中、木質系(リグノセルロース系)バイオマスを原料としてエタノールを製造する技術が注目されている。木質系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの3つの主要成分から構成されており、木質系バイオマスを原料とするエタノールの製造は、通常、セルロースおよびヘミセルロースを糖化し、その糖を酵母によりエタノール発酵した後、生成したエタノールを分離することによって行われる。
たとえば、特許文献1には、木質系バイオマスを原料としてエタノールを製造する技術の一例が開示される。特許文献1の技術では、木質系バイオマスを微粉砕する前処理を施した後、同一反応帯域内で、酵素を用いた糖化工程、酵母を用いたエタノール発酵工程、およびエタノール蒸留工程を行うことにより、簡単かつ効率よくエタノールを製造している。
木質系バイオマスからエタノールを製造する際には、多くの残存物(残渣および残液)が発生する。ここで、エタノール発酵工程後に残るリグニンを主成分とする残渣は、燃料や壁材などとして用いられ、エタノール発酵に利用されなかった糖分を含む残液は、メタン発酵用などとして用いられることが知られている。しかしながら、今後、木質バイオマスを原料とするエタノールの製造量が増加していく(つまり残存物の量が増加していく)ことを考慮すると、そのような利用だけでは不十分であり、その残存物の有用かつ新たな利用方法の開発が望まれる。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、炭素材料の製造方法、炭素材料および二次電池を提供することである。
この発明の他の目的は、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を有効利用することができる、炭素材料の製造方法、炭素材料および二次電池を提供することである。
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
第1の発明は、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料を製造する炭素材料の製造方法であって、(A)エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を回収するステップ、(B)ステップ(A)で回収した残液を150−250℃に加熱して乾燥させ、当該残液に含まれる水溶性成分を粉末状にするステップ、および(C)ステップ(B)で得た粉末を不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成するステップを含む、炭素材料の製造方法である。
第1の発明では、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料(10)を製造する。先ず、ステップ(A)において、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を回収する(S1)。この残液には、エタノール発酵に利用されなかったグルコースおよびマンノース等の糖分が水溶性成分として含まれている。次のステップ(B)では、電気炉などを利用して、ステップ(A)で回収した残液を150−250℃に加熱して乾燥させ、当該残液に含まれる水溶性成分を粉末状にする(S5)。そして、ステップ(C)では、電気炉などを利用して、ステップ(B)で得た粉末を窒素などの不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成する(S7)。すなわち、ステップ(B)および(C)において、残液に含まれる糖分を低温および高温の2段階で加熱して炭素化させる。これによって、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域(12)と、孔径が0.40−0.46nmである細孔(14)とが混在する炭素材料が得られる。なお、必要に応じて、ステップ(A)で回収した残液に対して、糖類の中から数種類の糖、たとえばグルコースやスクロースを添加してもよい。
第1の発明によれば、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を利用して、炭素材料を製造することができる。つまり、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物の有効利用を図ることができる。
第2の発明は、第1の発明に従属し、(D)エタノール発酵工程後に残る残渣を回収するステップ、(E)ステップ(D)で回収した残渣を加熱して乾燥させるステップ、および(F)ステップ(B)で得た粉末とステップ(E)で乾燥させた残渣とを混合するステップをさらに含み、ステップ(C)では、ステップ(F)で得た混合物を不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成する。
第2の発明では、ステップ(D)−(F)をさらに含み、エタノール発酵工程後に残る残渣をさらに利用して炭素材料(10)を製造する。ステップ(D)では、エタノール発酵工程後に残るリグニンを主成分とする残渣を回収し(S11)、ステップ(E)では、ステップ(D)で得た残渣をたとえば50−80℃で加熱して水分を蒸発させ、乾燥させる(S17)。また、ステップ(F)では、ステップ(B)で得た粉末とステップ(E)で乾燥させた残渣とを重量比でたとえば1:1−10:1の割合で混ぜ合わせた後、ボールミル等を用いて粉砕しつつ均一的に混合する(S19)。そして、ステップ(C)では、ステップ(F)で得た混合物の粉末を窒素などの不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成する(S21)。これによって、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域(12)と、孔径が0.40−0.46nmである細孔(14)とが混在する炭素材料が得られる。この際、リグニンを主成分とする残渣は隙間材として機能するため、炭素材料に対して細孔をより適切に形成することができる。また、残渣の混合量を調整することによって、細孔の数や大きさをコントロールすることもできる。
第2の発明によれば、エタノール発酵工程後に残る残渣も利用するので、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物をより効果的に有効利用できる。
第3の発明は、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料を製造する炭素材料の製造方法であって、(A)エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を得るステップ、および(B)ステップ(A)で回収した残液を1000−3000℃に加熱した不活性ガス雰囲気下の空間に噴霧することによって、当該残液に含まれる水溶性成分を熱分解してハードカーボンの微粒子として堆積させるステップを含む、炭素材料の製造方法である。
第3の発明では、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料(10)を製造する。先ず、ステップ(A)において、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を回収する(S31)。この残液には、エタノール発酵に利用されなかったグルコースおよびマンノース等の糖分が水溶性成分として含まれている。そして、ステップ(B)では、アトマイザ(32)を備える製造装置(20)などを利用して、1000−3000℃の不活性ガス雰囲気下の加熱空間(24a)に対してステップ(A)で得た残液を噴霧することによって、残液に含まれる糖分を熱分解させてハードカーボンの微粒子(40)として堆積させる(S35)。これによって、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域(12)と、孔径が0.40−0.46nmである細孔(14)とが混在する炭素材料が得られる。なお、必要に応じて、ステップ(A)で回収した残液に対して、糖類の中から数種類の糖、たとえばグルコースやスクロースを添加してもよい。
第3の発明によれば、第1の発明と同様に、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を利用して、炭素材料を製造することができる。
第4の発明は、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料を製造する炭素材料の製造方法であって、(A)エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を得るステップ、(B)ステップ(A)で回収した残液に対して水溶性高分子を含む水溶液を添加した後、当該混合液を冷却して固形化するステップ、(C)ステップ(B)で得た固形物を乾燥させた後、粉砕機を用いて粉末状にするステップ、および(D)ステップ(C)で得た粉末を不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成するステップを含む、炭素材料の製造方法である。
第4の発明では、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料(10)を製造する。先ず、ステップ(A)において、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を回収する(S41)。この残液には、エタノール発酵に利用されなかったグルコースおよびマンノース等の糖分が水溶性成分として含まれている。次のステップ(B)では、ステップ(A)で回収した残液に対して寒天やゼラチン等の水溶性高分子を含む水溶液を添加した後、冷却して固形化させる(S45)。この際、残液に含まれる糖分は、水溶性高分子の3次元の網目構造に取り込まれるようにして水溶性高分子に吸着される。続くステップ(C)では、電気炉などを利用して、ステップ(B)で得た固形物をたとえば150−250℃に加熱して乾燥させた後、ボールミル等の粉砕機を用いて粉砕して粉末状にする(S47)。そして、ステップ(D)では、電気炉などを利用して、ステップ(C)で得た粉末を窒素などの不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成する(S49)。これによって、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域(12)と、孔径が0.40−0.46nmである細孔(14)とが混在する炭素材料が得られる。この際、水溶性高分子は隙間材として機能するため、炭素材料に対して細孔をより適切に形成することができる。また、水溶性高分子の混合量を調整することによって、細孔の数や大きさをコントロールすることもできる。なお、必要に応じて、ステップ(A)で回収した残液に対して、糖類の中から数種類の糖、たとえばグルコースやスクロースを添加してもよい。
第4の発明によれば、第1の発明と同様に、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を利用して、炭素材料を製造することができる。
第5の発明は、第4の発明に従属し、(E)エタノール発酵工程後に残る残渣を回収するステップ、および(F)ステップ(E)で回収した残渣を加熱して乾燥させるステップをさらに含み、ステップ(C)では、ステップ(B)で得た固形物を乾燥させた後、ステップ(F)で乾燥させた残渣を加え、当該混合物を粉砕機を用いて粉末状にし、ステップ(D)では、混合物の粉末を不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成する。
第5の発明では、ステップ(E)−(F)をさらに含み、エタノール発酵工程後に残る残渣をさらに利用して炭素材料(10)を製造する。ステップ(E)では、エタノール発酵工程後に残るリグニンを主成分とする残渣を回収し(S51)、ステップ(F)では、ステップ(E)で得た残渣をたとえば50−80℃で加熱して水分を蒸発させ、乾燥させる(S57)。そして、ステップ(C)では、ステップ(B)で得た固形物をたとえば150−250℃に加熱して乾燥させた後、ステップ(F)で乾燥させた残渣と混ぜ合わせ、当該混合物をボールミル等の粉砕機を用いて粉砕して粉末状にする(S57)。また、ステップ(D)において、ステップ(C)で粉末状にした混合物を窒素などの不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成する(S59)。これによって、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域(12)と、孔径が0.40−0.46nmである細孔(14)とが混在する炭素材料が得られる。この際、残渣および水溶性高分子は隙間材として機能するため、炭素材料に対して細孔をより適切に形成することができる。また、残渣および水溶性高分子の混合量を調整することによって、細孔の数や大きさをコントロールすることもできる。
第5の発明によれば、エタノール発酵工程後に残る残渣も利用するので、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物をより効果的に有効利用できる。
第6の発明は、第1ないし第5のいずれかの発明に係る炭素材料の製造方法によって製造される、炭素材料である。
第6の発明では、炭素材料(10)は、第1ないし第5のいずれかの発明に係る炭素材料の製造方法によって製造され、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域(12)と、孔径が0.40−0.46nmである細孔(14)とを有する。このような炭素材料は、リチウムイオン又はナトリウムイオンの吸蔵および放出に適したグラファイト領域および細孔を有していることから、リチウム又はナトリウムを活物質とする二次電池の陰極材料として好適に用いることができる。
第7の発明は、第6の発明に係る炭素材料を用いて形成された陰極を備え、リチウム又はナトリウムを活物質とする、二次電池である。
第7の発明では、二次電池は、リチウム又はナトリウムを活物質とし(つまりリチウムイオン二次電池又はナトリウムイオン二次電池であり)、第6の発明に係る炭素材料(10)を用いて形成された陰極を備える。この陰極は、リチウムイオン又はナトリウムイオンの吸蔵および放出に適したグラファイト領域および細孔を有しているので、優れた充放電機能を発揮することができる。
この発明によれば、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を利用して、炭素材料を製造することができる。つまり、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物の有効利用を図ることができる。
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
この発明の一実施例である炭素材料の製造方法は、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料10(図2参照)を製造するものであって、詳細は後述するように、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を原料として炭素材料10を製造する。
炭素材料10の原料となる残存物(残液)を得るためのエタノール製造方法の具体的態様は、特に限定されない。つまり、木質バイオマスの前処理工程、糖化工程、エタノール発酵工程およびエタノール分離工程などを含む公知のエタノール製造方法によって発生する残存物を、この発明の原料として適宜利用することができる。この実施例では、強酸または強アルカリによる前処理工程を行うことなく糖化工程を実施できる、つまり残存物に強酸または強アルカリが含まれず、これらを中和する必要がないという点から、特許文献1(WO/2008/047679)に開示されるエタノール製造方法によって発生する残存物を利用している。特許文献1のエタノール製造方法では、各工程を同一反応槽内で行うので、この製造方法によって生じる残存物は、リグニンを主成分とする残渣と、エタノール発酵に利用されなかった糖分を含む残液とが混在する状態で残ることになる。このため、以下の実施例の説明においては、エタノール分離工程後に反応槽内に残る、残渣および残液を含む残存物が出発物質となることを前提として説明する。
なお、エタノール発酵工程とエタノール分離工程とが別々の槽で行われるエタノール製造方法で発生する残存物を利用する場合には、たとえばエタノール分離工程後に分離装置(蒸留装置)に残る残液を原料として用いるとよい。また、後述する他の実施例(実施例2および5)で用いる残渣としては、たとえばエタノール発酵工程後に発酵装置で生じる残渣を用いるとよい。
以下、図1を参照して、炭素材料の製造方法の一実施例(実施例1)について説明する。上述のように、この実施例では、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離(蒸留)した後に残る残液を原料として用いる。この残液には、エタノール発酵に利用されなかった糖分が含まれているので、この糖分を低温(ステップS5)および高温(ステップS7)の2段階で加熱して炭素化することによって、ハードカーボンと呼ばれる炭素材料10を製造するのである。以下、具体的に説明する。
図1に示すように、この実施例では、先ずステップS1において、エタノール分離後の残液を回収する。すなわち、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を回収する。具体的には、木質バイオマスからエタノールを製造する際に、エタノール分離工程後に反応槽内に残る残存物を回収する。そして、濾過などを用いて、この残存物から残渣(非水溶性成分)を取り除くことによって、水溶性成分を含む残液(水溶液)を回収する。残液に含まれる水溶性成分の主成分は、グルコース、マンノース、キシロース、ガラクトースおよびアラビノース等の糖分である。濾過方法としては、濾紙やメンブランフィルタ等を濾材として用いる自然濾過法や減圧濾過法などを用いることが好ましい。なお、必要に応じて、ステップS1で回収した残液に対して、糖類の中から数種類の糖、たとえばグルコースやスクロースを添加してもよい。
次のステップS3では、残液に含まれる水溶性成分の濃度を調整する。具体的には、残液に含まれる水溶性成分の重量濃度が1−3%程度となるように調整する。たとえば、ステップS1で回収した残液の水溶性成分の濃度が0.2%である場合には、残液をセラミックス製などの耐熱容器に入れ、電気ヒータやガスバーナ等の外部熱源を用いて残液を50−80℃に加熱して水分を蒸発させることによって、水溶性成分の濃度が10倍程度(2%程度)となるように濃縮するとよい。ただし、ステップS1で回収した残液の水溶性成分の濃度が適度に高い場合には、ステップS3の工程は省略可能である。
続くステップS5では、濃度調整した残液(濃縮液)を加熱して乾燥させ、水溶性成分を粉末状にする。具体的には、電気炉などを用いて、ステップS3で得た濃縮液を150−250℃に加熱して水分をさらに蒸発させ、粉末状の水溶性成分を得る。
そして、ステップS7では、ステップS5で得た粉末を焼成する。具体的には、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを流通させた不活性ガス雰囲気下(つまり無酸素状態)の電気炉内またはガス炉内において、ステップS5で得た粉末を1000−3000℃で1−10時間焼成する。以上の工程によって、炭素材料10が形成される。
この実施例によって得られる炭素材料10は、図2に示すように、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域12と、孔径が0.40−0.46nmである細孔14とを有しており、二次電池の陰極材料や吸着剤等として用いられる。
その中でも特に、炭素材料10は、リチウムイオン又はナトリウムイオンの吸蔵および放出に適したグラファイト領域12および細孔14を有していることから、リチウム又はナトリウムを活物質とする二次電池(つまりリチウムイオン二次電池又はナトリウムイオン二次電池)の陰極材料として好適に用いられる。なお、リチウムイオン二次電池の陽極材料としては、LiCoO2やLi2MnO3-LiNiCoMnO2などの公知のLi系層状酸化物などを適宜用いるとよい。また、ナトリウムイオン二次電池の陽極材料としては、NaxCoO2やNa2/3Ni0.5Mn0.5O2などの公知のNa系層状酸化物などを適宜用いるとよい。炭素材料10を用いて形成された陰極を備えるリチウム又はナトリウムを活物質とする二次電池は、陰極がリチウムイオン又はナトリウムイオンの吸蔵および放出に適したグラファイト領域および細孔を有しているので、従来のリチウム又はナトリウムを活物質とする二次電池と比較して、優れた充放電機能を発揮することができる。
この実施例によれば、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を利用して炭素材料10を製造することができる。つまり、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物の有効利用を図ることができる。
次に、図3を参照して、炭素材料の製造方法の他の実施例(実施例2)について説明する。図3に示す実施例では、エタノール発酵工程後に残る残渣(この実施例では同一反応層内でエタノール発酵工程とエタノール分離工程とが行われるので、エタノール分離工程後に反応槽内に残る残渣)をさらに用いることが、図1に示す実施例と異なる。以下、図3に示す実施例について具体的に説明するが、重複する説明は、簡略化または省略して行う。なお、重複する説明を簡略化または省略することは、後述する図4、図6および図7に示す実施例(実施例3−5)についても同様である。
図3に示すように、この実施例では、先ずステップS11において、エタノール分離後の残液および残渣のそれぞれを分離回収する。すなわち、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を回収すると共に、残渣も別に回収する。具体的には、エタノール分離工程後に反応槽内に残る残存物を回収し、濾過などを用いてこの残存物に含まれる残液と残渣とを分離することによって、非水溶性成分である残渣および水溶性成分を含む残液のそれぞれを回収する。非水溶性成分である残渣の主成分は、リグニンである。なお、必要に応じて、ステップS11で回収した残液に対して、糖類の中から数種類の糖、たとえばグルコースやスクロースを添加してもよい。
次のステップS13では、残液に含まれる水溶性成分の濃度を調整する。具体的には、電気ヒータやガスバーナ等を用いて残液を加熱して濃縮し、残液に含まれる水溶性成分の重量濃度が1−3%程度となるように調整する。
続くステップS15では、濃度調整した残液を加熱して乾燥させ、水溶性成分を粉末状にする。具体的には、電気炉などを用いて、ステップS13で得た濃縮液を150−250℃に加熱して水分をさらに蒸発させ、粉末状の水溶性成分を得る。
また、ステップS17では、残渣を加熱して乾燥させる。具体的には、ステップS11で得た残渣をセラミックス製などの耐熱容器に入れ、電気ヒータやガスバーナ等の外部熱源を用いて、50−80℃に加熱して水分を蒸発させることによって乾燥させる。なお、ステップS17の工程は、ステップS13およびS15の工程と並行して行うとよい。
続くステップS19では、ステップS15で得た粉末とステップS17で得た残渣とを均一的に混合する。すなわち、水溶性成分の粉末と非水溶性成分である残渣とを重量比で1:1−10:1の割合で混合して均一化する。具体的には、水溶性成分の粉末と非水溶性成分である残渣とを上記割合で混合し、この混合物に非水系カチオン界面活性剤と水溶性有機溶媒とを添加した後、ボールミル等の粉砕機を用いて、残渣を粉砕しつつ水溶性成分の粉末と残渣とを均一的に混合する。その後、この混合物をセラミックス製などの耐熱容器に入れ、電気ヒータやガスバーナ等の外部熱源を用いて50−80℃に加熱して、適宜乾燥させておくとよい。
そして、ステップS21では、ステップS19で得た混合物を焼成する。具体的には、不活性ガス雰囲気下の電気炉内またはガス炉内において、ステップS19で得た混合物を1000−3000℃で1−10時間焼成する。
図3に示す実施例においても、図2に示すような、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域12と、孔径が0.40−0.46nmである細孔14とを有する炭素材料10が形成される。この際、リグニンを主成分とする残渣は、隙間材として機能するため、炭素材料10に対して細孔14をより適切に形成することができる。また、残渣の混合量を調整することによって、細孔14の数や大きさをコントロールすることもできる。さらに、図3に示す実施例では、エタノール発酵工程後に残る残渣も利用するので、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物をより効果的に有効利用することができる。
続いて、図4を参照して、炭素材料の製造方法のさらに他の実施例(実施例3)について説明する。図4に示す実施例では、図5に示す製造装置20を用いて、残液を噴霧しながら水溶性成分(糖分)を熱分解させてハードカーボンの微粒子として堆積させることによって、炭素材料10を形成する。
先ず、図4に示す実施例の説明に先立ち、図5を参照して、製造装置20の構成について説明する。図5に示すように、製造装置20は、電気炉およびガス炉などの加熱炉22を備える。加熱炉22には、その内部を通るようにセラミック管および石英管などの円筒状の反応容器24が設置される。反応容器24の両端には、ガス流路26a,26bを有する封止部28が設けられる。また、反応容器24内には、加熱炉22内に配置される部分(加熱空間24a)において、セラミック板および石英板などの平板30が反応容器24の管軸と直交する方向に設けられる。さらに、反応容器24の上流側には、アトマイザ(噴霧器)32が設けられ、アトマイザ32のノズル34が上流側のガス流路(ガス導入口)26aに接続される。アトマイザ32は、窒素ガス等の不活性ガスを供給するガス供給部36および噴霧する液体を貯留するための貯留タンク38を備え、ガス供給部36から供給される不活性ガスをフローガスとして、貯留タンク38に貯留された液体をノズル34から噴霧する。
図4に戻って、この実施例について具体的に説明する。図4に示す実施例では、先ずステップS31において、エタノール分離後の残液を回収する。すなわち、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を回収する。具体的には、濾過などを用いて、エタノール分離工程後に反応槽内に残る残存物から残渣を取り除くことによって、水溶性成分を含む残液を回収する。なお、必要に応じて、ステップS31で回収した残液に対して、糖類の中から数種類の糖、たとえばグルコースやスクロースを添加してもよい。
次のステップS33では、残液に含まれる水溶性成分の濃度を調整する。具体的には、残液に含まれる水溶性成分の重量濃度が20−200ppm程度となるように調整する。たとえば、ステップS31で回収した残液の水溶性成分の濃度が0.2%である場合には、水を添加して10−100倍に希釈する。ただし、ステップS31で回収した残液の水溶性成分の濃度が適度に低い場合には、ステップS33の工程は省略可能である。
そして、ステップS35では、濃度調整した残液(希釈液)を加熱空間に噴霧することによって、水溶性成分を熱分解させてハードカーボンの微粒子として堆積させる。具体的には、ステップS33で濃度調整した残液を製造装置20の貯留タンク38に充填し、アトマイザ32のノズル34から反応容器内に、つまり1000−3000℃の不活性ガス雰囲気下の加熱空間24aに対して残液を噴霧する。この際、加熱空間24aに噴霧された残液に含まれる水溶性成分(糖分)は、熱分解されてハードカーボンの微粒子40(図5参照)となり、平板30の一方面に堆積される。
図4に示す実施例においても、図2に示すような、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域12と、孔径が0.40−0.46nmである細孔14とを有する炭素材料10が形成される。
続いて、図6を参照して、炭素材料の製造方法のさらに他の実施例(実施例4)について説明する。図6に示す実施例では、残液に含まれる水溶性成分(糖分)を寒天などの水溶性高分子に対して吸着させてから焼成する。以下、具体的に説明する。
図6に示すように、この実施例では、先ずステップS41において、エタノール分離後の残液を回収する。すなわち、エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を回収する。具体的には、濾過などを用いて、エタノール分離工程後に反応槽内に残る残存物から残渣を取り除くことによって、水溶性成分を含む残液を回収する。なお、必要に応じて、ステップS41で回収した残液に対して、糖類の中から数種類の糖、たとえばグルコースやスクロースを添加してもよい。
次のステップS43では、残液に含まれる水溶性成分の濃度を調整する。具体的には、残液に含まれる水溶性成分の重量濃度が20−200ppm程度となるように調整する。たとえば、ステップS41で回収した残液の水溶性成分の濃度が0.2%である場合には、水を添加して10−100倍に希釈する。ただし、ステップS41で回収した残液の水溶性成分の濃度が適度に低い場合には、ステップS43の工程は省略可能である。
続くステップS45では、濃度調整した残液に寒天溶液を添加した後、冷却して固形化する。具体的には、ステップS43で濃度調整した残液と寒天の重量濃度が0.1−1.0%である寒天水溶液とを、80℃程度に加熱した状態で、体積比で1:1程度の割合で混合する。その後、この混合液を冷却して固形化する。この際、残液の水溶性成分(糖分)は、寒天の3次元の網目構造に取り込まれるようにして寒天に吸着される。なお、ここでは、ゲル化可能な水溶性高分子の一例として寒天を用いているが、糖分を吸着する性質を有するものであれば適宜用いることができ、寒天の代わりに、ゼラチンやアルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子を適宜利用することができる。
続くステップS47では、ステップS45で得た固形物を乾燥させた後、粉砕機を用いて粉末状にする。具体的には、電気炉などを用いて、ステップS45で得た寒天ゲルを150−250℃に加熱して水分を蒸発させ、乾燥させる。そして、乾燥させた寒天ゲルに非水系カチオン界面活性剤と水溶性有機溶媒とを添加した後、ボールミル等の粉砕機を用いて、寒天ゲルを粉砕して均一化する。その後、粉砕した寒天ゲルをセラミックス製などの耐熱容器に入れ、電気ヒータ等の外部熱源を用いて50−80℃に加熱して、適宜乾燥させておくとよい。
そして、ステップS49では、ステップS47で得た粉末を焼成する。具体的には、不活性ガス雰囲気下の電気炉内またはガス炉内において、ステップS47で得た粉末を1000−3000℃で1−10時間焼成する。
図6に示す実施例においても、図2に示すような、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域12と、孔径が0.40−0.46nmである細孔14とを有する炭素材料10が形成される。この際、寒天などの水溶性高分子は、隙間材として機能するため、炭素材料10に対して細孔14をより適切に形成することができる。また、水溶性高分子の混合量を調整することによって、細孔14の数や大きさをコントロールすることもできる。
続いて、図7を参照して、炭素材料の製造方法の他の実施例(実施例5)について説明する。図7に示す実施例では、残液に含まれる水溶性成分を寒天などの水溶性高分子に対して吸着させた後、エタノール発酵工程後に残る残渣を加えて焼成する。以下、具体的に説明する。
図7に示すように、この実施例では、先ずステップS51において、エタノール分離後の残液および残渣のそれぞれを分離回収する。具体的には、エタノール分離工程後に反応槽内に残る残存物を回収し、濾過などを用いてこの残存物に含まれる残液と残渣とを分離することによって、非水溶性成分である残渣および水溶性成分を含む残液のそれぞれを回収する。なお、必要に応じて、ステップS51で回収した残液に対して、糖類の中から数種類の糖、たとえばグルコースやスクロースを添加してもよい。
次のステップS53では、残液に含まれる水溶性成分の濃度を調整する。具体的には、残液に含まれる水溶性成分の重量濃度が20−200ppm程度となるように、水を添加して希釈する。
続くステップS55では、濃度調整した残液に寒天溶液を添加した後、冷却化して固形化する。具体的には、ステップS53で濃度調整した残液と寒天の重量濃度が0.1−1.0%である寒天水溶液とを、80℃程度に加熱した状態で、体積比で1:1程度の割合で混合する。その後、この混合液を冷却して固形化する。
続くステップS57では、ステップS55で得た固形体およびステップS51で得た残渣のそれぞれを乾燥させた後、これらを混合して粉砕機を用いて粉末状にする。具体的には、電気炉などを用いて、ステップS55で得た寒天ゲルを150−250℃に加熱して乾燥させると共に、耐熱容器および電気ヒータ等の外部熱源などを用いて、ステップS51で得た残渣を50−80℃に加熱して乾燥させる。そして、乾燥させた寒天ゲルと残渣とを重量比で1:1−10:1の割合で混合し、この混合物に非水系カチオン界面活性剤と水溶性有機溶媒とを添加した後、ボールミル等の粉砕機を用いて、寒天ゲルおよび残渣を粉砕しつつ均一的に混合する。その後、粉砕した混合物は、耐熱容器および電気ヒータ等の外部熱源などを用いて、50−80℃に加熱して適宜乾燥させておくとよい。
そして、ステップS59では、ステップS57で得た粉末を焼成する。具体的には、不活性ガス雰囲気下の電気炉内またはガス炉内において、ステップS57で得た粉末を1000−3000℃で1−10時間焼成する。
図7に示す実施例においても、図2に示すような、層間距離が0.378−0.382nmであるグラファイト領域12と、孔径が0.40−0.46nmである細孔14とを有する炭素材料10が形成される。この際、残渣および水溶性高分子は、隙間材として機能するため、炭素材料10に対して細孔14をより適切に形成することができる。また、残渣および水溶性高分子の混合量を調整することによって、細孔14の数や大きさをコントロールすることもできる。さらに、図7に示す実施例では、エタノール発酵工程後に残る残渣も利用するので、木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物をより効果的に有効利用することができる。
なお、上述の各実施例で用いた装置および器具(加熱装置や分離器具など)は単なる一例であり、同様の機能を有する他の装置および器具を適宜利用できる。
10 …炭素材料
12 …グラファイト領域
14 …細孔
20 …製造装置
22 …加熱炉
24 …反応容器
32 …アトマイザ
12 …グラファイト領域
14 …細孔
20 …製造装置
22 …加熱炉
24 …反応容器
32 …アトマイザ
Claims (7)
- 木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料を製造する炭素材料の製造方法であって、
(A)エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を回収するステップ、
(B)前記ステップ(A)で回収した残液を150−250℃に加熱して乾燥させ、当該残液に含まれる水溶性成分を粉末状にするステップ、および
(C)前記ステップ(B)で得た粉末を不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成するステップを含む、炭素材料の製造方法。 - (D)エタノール発酵工程後に残る残渣を回収するステップ、
(E)前記ステップ(D)で回収した残渣を加熱して乾燥させるステップ、および
(F)前記ステップ(B)で得た粉末と前記ステップ(E)で乾燥させた残渣とを混合するステップをさらに含み、
前記ステップ(C)では、前記ステップ(F)で得た混合物を不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成する、請求項1記載の炭素材料の製造方法。 - 木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料を製造する炭素材料の製造方法であって、
(A)エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を得るステップ、および
(B)前記ステップ(A)で回収した残液を1000−3000℃に加熱した不活性ガス雰囲気下の空間に噴霧することによって、当該残液に含まれる水溶性成分を熱分解してハードカーボンの微粒子として堆積させるステップを含む、炭素材料の製造方法。 - 木質バイオマスからエタノールを製造する際に発生する残存物を利用して炭素材料を製造する炭素材料の製造方法であって、
(A)エタノール発酵工程によって得られたエタノール含有水溶液からエタノールを分離した後に残る残液を得るステップ、
(B)前記ステップ(A)で回収した残液に対して水溶性高分子を含む水溶液を添加した後、当該混合液を冷却して固形化するステップ、
(C)前記ステップ(B)で得た固形物を乾燥させた後、粉砕機を用いて粉末状にするステップ、および
(D)前記ステップ(C)で得た粉末を不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成するステップを含む、炭素材料の製造方法。 - (E)エタノール発酵工程後に残る残渣を回収するステップ、および
(F)前記ステップ(E)で回収した残渣を加熱して乾燥させるステップをさらに含み、
前記ステップ(C)では、前記ステップ(B)で得た固形物を乾燥させた後、前記ステップ(F)で乾燥させた残渣を加え、当該混合物を粉砕機を用いて粉末状にし、
前記ステップ(D)では、前記混合物の粉末を不活性ガス雰囲気下で1000−3000℃で焼成する、請求項4記載の炭素材料の製造方法。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載の炭素材料の製造方法によって製造される、炭素材料。
- 請求項6記載の炭素材料を用いて形成された陰極を備え、リチウム又はナトリウムを活物質とする、二次電池。
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WO2020103140A1 (zh) * | 2018-11-23 | 2020-05-28 | 辽宁星空钠电电池有限公司 | 基于生物质的钠离子电池硬碳负极材料及其制备方法和应用 |
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-
2013
- 2013-03-13 JP JP2013050229A patent/JP2014172816A/ja active Pending
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