JP2014072497A - キャパシタ電極材用活性炭及びその製造方法、キャパシタ用電極、並びにキャパシタ - Google Patents

キャパシタ電極材用活性炭及びその製造方法、キャパシタ用電極、並びにキャパシタ Download PDF

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Abstract

【課題】充放電に適した細孔を有し、静電容量の大きいキャパシタ電極材用活性炭を提供する。
【解決手段】椿の実を原料として作製され、細孔直径が2nm以上10nm以下の細孔の占める細孔容積を全細孔容積の25%以上であるキャパシタ電極材用活性炭である。
【選択図】なし

Description

本発明は、キャパシタ電極材用活性炭及びその製造方法、キャパシタ用電極、並びにキャパシタに関する。
電気エネルギーの蓄積・供給デバイスとして期待されるキャパシタは、エネルギーの回生に有効であり、物理現象を利用するため、無公害で半永久的な使用が可能であるほか、重金属等の有害物質を含まない等の利点がある。そのため、従来から大容量化に対する研究が盛んに行なわれている。
例えば電気二重層キャパシタは、電極として使用される活性炭の高性能化が性能向上に必要不可欠とされている。具体的には、(1)イオンをより多く吸着するために大きな比表面積を有していること、(2)イオンの移動が容易な大きさの細孔が存在していることが挙げられる。細孔の大きさは、一般に、0〜2nmのミクロ孔、2〜50nmのメソ孔、50nm〜のマクロ孔に分類され、電気二重層キャパシタに用いられる活性炭では、ミクロ孔〜メソ孔の大きさの細孔が存在することが望まれる。
細孔との関連において、活性炭の性能を向上させる方法の1つとして、賦活技術に関する検討が広く行なわれている。ところが、特殊な活性炭を製造しようとすると、工程が複雑化しやすいばかりか、コストが嵩む傾向もある。
炭素質原料を多孔質の材料に変化させて活性炭を得るための賦活方法には、アルカリ賦活とガス賦活とがあり、吸脱着する物質に応じた細孔径と細孔容積を得る観点から、近年では、アルカリ賦活法による活性炭製造が有効手段となっている。
アルカリ賦活法では、一般に原料重量に対して2〜5倍重量のアルカリ剤を必要とするため、(1)工程数が多くなる、(2)アルカリ腐食による装置の短寿命化、(3)アルカリ回収、再利用に係わる装置の大規模化などの懸念がある。特に、アルカリと炭素の混合物を昇温すると、150℃前後から融解現象を生じて容器等に付着するため、容器の腐食が激しく、後の取り扱いが困難であるとの懸念が大きい。このような事情が原因で製造コストが高く、更なる改善が求められている。
上記のような状況のもと、粘結性を与えて成型性を高めるための弱粘結性以上の石炭系の炭素質材料とアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有する微粘結性の石炭系の炭素質材料との2種類の石炭を用いることで、活性炭を効率よく製造する活性炭の製造方法が開示されており、高い脱色性能と高強度が得られるとされている(例えば、特許文献1参照)。
また、木質にアルカリ金属等を分散し、炭化しつつ、炭化時の加熱に伴い発生する木質由来の水性ガス及び揮発性炭化水素類により木質の賦活を行なう活性炭の製法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、原料としてヤシガラを用いる技術が知られており、例えば、ヤシガラを炭化し水蒸気賦活することで所定のBET比表面積を有するヤシガラ活性炭に関する開示がある(例えば、特許文献3参照)。
特開2006−104002号公報 特許第4142341号 国際公開第2008−53919号パンフレット
上記のように、活性炭の性能を向上させる技術については、従来から種々の検討がなされてはいるものの、特にキャパシタに専ら使用される活性炭に適した構造については、未だ詳細に判明しておらず、大容量化などの性能向上が達成されるに至っていないのが実情である。
キャパシタには、メソ孔と称される2〜50nm程度のサイズの細孔を有することが適当とされているが、上記のように、ヤシガラを原料として炭化、賦活して得られるヤシガラ活性炭では、0.5〜0.6nm付近に孔径ピークがあることが考えられ、むしろ細孔径が小さくなり過ぎ、キャパシタの性能向上に寄与しない。
このようにキャパシタの性能向上に適した活性炭が提供されるに至っていないのが現状であり、アルカリ賦活による場合の懸念や問題が解消され、コストをも抑え得るような技術の確立が必要とされている。
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、充放電に適した細孔を有し、静電容量の大きいキャパシタ電極材用活性炭並びにキャパシタ用電極及びキャパシタ、並びにアルカリ賦活によることなく、充放電に適した細孔を有し、その細孔容積の大きい活性炭が製造されるキャパシタ電極材用活性炭の製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
本発明は、下記の知見に着目して達成されたものである。
キャパシタに一般に用いられる活性炭には、特にミクロ孔〜メソ孔の大きさの細孔が存在することが望まれているが、このような特殊な細孔構造を有する活性炭の製造方法は、その工程が複雑になり、コスト高になる傾向がある。そこで、従来から使用されている石油系原料やヤシガラとは異なる他の原料を探索したところ、椿果実は比較的アルカリ金属の含有濃度が高く、炭素材料として適しているとの知見を得た。具体的には、まず椿の実の油搾り滓や外殻には、天然にカリウムなどの無機物が含まれるため、別に化学薬品を添加する必要がない。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 椿の実を原料として作製され、細孔直径が2nm以上10nm以下の細孔の占める細孔容積が全細孔容積の20%以上であるキャパシタ電極材用活性炭である。
<2> BET比表面積が2000m/g以上である前記<1>に記載のキャパシタ電極材用活性炭である。
<3> 椿の実を原料とし、該原料を炭化する炭化工程と、前記炭化工程で得られた炭化物を、水蒸気及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一方の気体を賦活ガスとして賦活し、活性炭を生成する賦活工程と、前記活性炭を粉砕して活性炭粉状物とする粉砕工程と、前記活性炭粉状物を酸性液により酸処理する酸処理工程と、を有するキャパシタ電極材用活性炭の製造方法である。
<4> 前記賦活工程は、収率が12%以上である範囲で前記炭化物を賦活する前記<3>に記載のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法である。
<5> 前記椿の実が、椿油の搾り滓、又は椿の実の殻である前記<3>又は前記<4>に記載のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法である。
<6> 前記<1>又は前記<2>に記載のキャパシタ電極材用活性炭、又は前記<3>〜前記<5>のいずれか1つに記載のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法により製造されたキャパシタ電極材用活性炭を含むキャパシタ用電極である。
<7> 前記<1>又は前記<2>に記載のキャパシタ電極材用活性炭、又は前記<3>〜前記<5>のいずれか1つに記載のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法により製造されたキャパシタ電極材用活性炭を含む電極を備えたキャパシタである。
本発明によれば、充放電に適した細孔を有し、静電容量の大きいキャパシタ電極材用活性炭並びにキャパシタ用電極及びキャパシタが提供される。また、
本発明によれば、アルカリ賦活によることなく、充放電に適した細孔を有しその細孔容積の大きい活性炭が製造されるキャパシタ電極材用活性炭の製造方法が提供される。
酸処理による収率を示すグラフである。 酸処理前後における活性炭サンプルの収率と比表面積との関係を示すグラフである。 酸処理前後における活性炭サンプルの収率と細孔容積との関係を示すグラフである。 酸処理前後における活性炭サンプルの全細孔容積に対するメソ細孔容積の占める比率を示すグラフである。 酸処理前後における活性炭サンプルの収率と平均細孔直径との関係を示すグラフである。 酸処理前の活性炭サンプルAの全細孔容積を収率を変えて示すグラフである。 酸処理前の活性炭サンプルBの全細孔容積を収率を変えて示すグラフである。 酸処理後の活性炭サンプルAの全細孔容積を収率を変えて示すグラフである。 酸処理後の活性炭サンプルBの全細孔容積を収率を変えて示すグラフである。 酸処理前後における活性炭サンプル(水系)の静電容量を示すグラフである。 酸処理前後における活性炭サンプル(非水系)の静電容量を示すグラフである。 BET比表面積と静電容量との関係を示すグラフである。 電流密度に対する静電容量の変化を対比して示すグラフである。
以下、本発明のキャパシタ電極材用活性炭及びその製造方法、並びにこれを用いたキャパシタ用電極及びキャパシタについて詳細に説明する。
本発明のキャパシタ電極材用活性炭は、椿の実を原料として作製され、細孔直径が2nm以上10nm以下の細孔の占める細孔容積を、全細孔容積の20%以上として構成されたものである。
従来から、キャパシタに適した活性炭について種々の検討がなされてきているが、その主たる方法は、活性炭を製造する過程で行なわれる賦活技術に関するものであり、炭化に用いる原料種については、これまで有意な知見は得られていない。
本発明においては、原料種として、従来の石油系原料やヤシガラとは異なる植物原料、具体的には椿の実に着目し、さらに製造過程のうち、賦活処理で生成された活性炭の後処理に着目することで、キャパシタの性能、特に静電容量が高められる孔構造が得られる。詳細には、本発明のキャパシタ電極材用活性炭は、細孔直径が2nm以上10nm以下の細孔を有し、該細孔の占める細孔容積が全細孔容積の20%以上であることで、充放電に優れ、キャパシタを構成したときの静電容量が高い。
<活性炭>
本発明の活性炭は、椿の実を原料として作製され、細孔直径が2nm以上10nm以下の細孔の占める細孔容積を全細孔容積の20%以上として構成されている。いわゆるメソ孔に属する所定サイズの細孔を、細孔容積全体に対して所定の容積比率以上を占めることで、静電容量の大きい電極材を得ることができる。
本発明の活性炭は、椿の実を原料としたものであり、カリウムを実の全質量に対して0.8質量%以上含有する椿の実が好ましい。椿の実は、アルカリ賦活相当の性能、すなわち静電容量を高めるのに適した細孔径を有している。具体的には、本発明の活性炭は、以下の細孔直径、及びその占有割合を満たす。
細孔直径は、窒素吸着法で求められる値である。例えば、自動比表面積/細孔分布測定装置BELSORP−miniII(日本ベル社製)により計測することができる。
本発明の活性炭の細孔直径は、2nm以上10nm以下である。細孔直径が2nmを下回ると、細孔径が小さ過ぎて電解質イオンの移動及び吸着が妨げられ、静電容量が低下する。細孔直径が10nmを超えても静電容量の向上に著しい影響はほとんどない。細孔直径については、上記範囲にすることで、電解質、電解液が程よく吸脱着され、電荷が移動しやすくなる。
中でも、細孔直径としては、単位体積あたり若しくは単位質量あたりの静電容量を高める観点から、3nm以上8nm以下が好ましい。
また、本発明の活性炭の、細孔直径が2nm以上10nm以下の細孔が占める細孔容積は、全細孔容積に対して20%以上である。細孔容積が20%に満たないと、活性炭としての物質の吸脱着能、特に低分子量の物質(例えば低分子量の有機物)の吸脱着能が低下する。細孔容積としては、吸脱着の観点から、30%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。
活性炭の細孔容積は、以下の方法で算出される値である。
日本ベル社製の自動比表面積/細孔分布測定装置BELSORP−miniIIを使用し、定温(77K)下での圧力と窒素の吸着量との変化を表す吸着等温線を作成後、これを吸着層厚みに対する窒素吸着量に変換してプロットした関係線の勾配変化(即ち表面積の変化)から体積変化を求め、細孔分布を算出する。つまり、細孔直径から直接、細孔容積が求められる。
本発明の活性炭中における、周期律表1族の金属(アルカリ金属)の合計含量が、活性炭の総質量に対して、5質量%以上であることが好ましい。この合計含量が5質量%以上であると、1%に近い原料中のカリウム量が約5倍になる程度の賦活処理が施されたことになり、物質の吸脱着に適した細孔の形成が期待できる。また、アルカリ金属の合計含量は、1質量%以上がより好ましい。
アルカリ金属のうち、活性炭中におけるカリウム(K)の含有量が前記範囲にあることが好ましい。
本発明の活性炭は、上記の細孔直径の細孔が占める細孔容積を全細孔容積の20%以上とし得る方法であれば、いずれの方法で作製されてもよいが、好ましくは、後述する本発明のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法により作製される。
<キャパシタ電極材用活性炭の製造方法>
本発明のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法は、椿の実を原料とし、該原料を炭化する炭化工程と、炭化工程で得られた炭化物を、水蒸気及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一方の気体を賦活ガスとして賦活し、活性炭を生成する賦活工程と、活性炭を粉砕して活性炭粉状物とする粉砕工程と、活性炭粉状物を酸性液により酸処理する酸処理工程とを設けて構成されている。本発明のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法は、必要に応じて、更に、炭化工程で得られた炭化物や賦活後の活性炭を洗浄する洗浄工程などの他の工程を設けて構成することができる。
本発明においては、炭化工程での炭化に用いる原料として、特に椿の実(植物原料)を用い、椿の実から得られた炭化物に対して、アルカリ賦活を行なうのではなくガス賦活(特に水蒸気賦活)を行なうと共に、さらに得られた活性炭を粉砕して酸処理することで、キャパシタ用電極材に適した性能、すなわち電荷が移動しやすい細孔直径(2nm以上10nm以下)の細孔の細孔容積が大きい活性炭が作製される。
また、アルカリ賦活を行なわないことで、活性炭に付着した過剰なアルカリ剤を洗浄除去する手間が省け工程の簡略化が図れるのみならず、洗浄後のアルカリ金属の回収作業も不要になる。更に、アルカリ賦活を行なわないため、アルカリ環境に曝されて生じる装置自体の腐食が防止され、多量アルカリの存在で懸念される爆発などの危険性も解消される。
−炭化工程−
本発明における炭化工程では、椿の実を原料として用い、この原料を炭化処理する。したがって、本工程では、活性炭を作成するための椿の実の炭化物が得られることになる。
ここで用いる
原料として用いられる椿の実は、植物である椿にできる実のことであり、この椿の実には、種子の部分とこの外側を包んでいる殻とが含まれる。原料としては、椿の実のうち、カリウムを絶乾原料質量比率で0.8%以上含有する部位が好ましい。特にカリウム含有量が絶乾原料質量に対して1質量%以上である点で、椿の実を形成している種子や外殻が好ましく、椿の枝や幹の部分はカリウムの含有量が絶乾原料質量比率で0.1質量%を下回るため好ましくない。炭化工程で用いる原料としては、椿の実あるいはその種子や外殻をそのまま用いるほか、油絞り滓を用いてもよい。
本発明においては、原料として、カリウムを含有する椿の実を用いることで、後述する賦活工程でのアルカリ賦活が不要になる。従来から活性炭の原料として用いられている石炭系の炭素質材料では、高比表面積、高細孔容積にする場合、多孔の活性炭を得るためにアルカリ賦活処理あるいはアルカリ金属等を含む副成分の併用が不可欠とされている。また、ヤシガラや椿の実以外の例えば枝や幹などは、含有されるカリウム量が椿の実と比べて一桁程度少ないため、この程度のカリウム量ではアルカリ賦活を行なわなければ、所望とする細孔が形成された活性炭を得ようとすると長時間を要する。
本発明における椿の実は、カリウムを含有しており、カリウムは実を形成している組織中に均質かつ高分散に分布していると考えられることから、後述する賦活工程において賦活処理する場合に、原料に多量のアルカリ剤を別添し賦活処理する従来の方法と比較して、形成される細孔の偏在を防ぎ、物質の吸脱着に適した均質性のある細孔が一様に得られる。したがって、活性炭を作製したときには、所定の細孔直径を有する細孔が適切に分布した細孔分布が得られ、硬度も高められる。換言すれば、カリウムの含有量が実の全質量に対して0.8質量%以上であることで、所望とする均質性のある細孔が一様に形成された活性炭が得られる。
原料である椿の実に含まれるカリウムの含有量としては、細孔形成の点では多いほど好ましいが、上記と同様の理由から1.0質量%以上が好ましい。カリウムの含有量の上限値については、必ずしも制限されるものではないが、賦活後の洗浄の観点からは、1.5質量%以下が好ましい。
炭化処理は、原料を600℃以上の温度範囲で加熱して炭化することにより好適に行なうことができる。原料を炭化するにあたり、用意した原料を一度に600℃以上の高温に加熱して炭化させてもよいが、好ましくは、原料中の水分が排出されるように一旦200〜300℃程度の温度域まで昇温し、必要に応じて200〜300℃で保持して水分を気化した後、炭化のため更に昇温することが好ましい。
原料を炭化させる炭化温度は、600℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、更に好ましくは850℃以上である。炭化温度の上限値は、装置の耐久性の点で、1050℃が望ましい。炭化温度が600℃以上であることで、原料に含まれる植物成分(例えばセルロースやリグニン)の結晶化がより進んだ炭化物が得られやすい。
炭化処理においては、所望とする温度に昇温するまでの過程で昇温速度を多段階に分けて昇温を行なうことが好ましく、特には2段階に昇温速度を変化させて昇温する方法が好ましい。段階的に温度を上昇させることで、原料組成の熱分解に合わせた炭化処理が行なえ、最終的に得られる活性炭の性能を高めるのに有効である。具体的には、
原料を加熱していくと、200℃付近に達する過程及び必要により200〜300℃で保持する過程で原料中の水分が気化し水分の排出が減少していくが、その後の200℃を超える温度域において、原料中の成分の熱分解反応が進行する。原料成分の熱分解が始まると、可燃ガス(例えばメタンガス)の発生を伴なって原料質量が低下する傾向が現れる。このように原料成分が熱分解して可燃ガスが生じ質量低下する温度範囲では、比較的ゆっくりとした昇温速度で温度上昇させることが、最終的に得られる活性炭の性能を高める点で好ましい。
上記の観点から、本発明における炭化工程では、200℃以上600℃以下の温度領域における昇温速度を2℃/min以上4℃/min以下とすることが好ましい。この温度範囲での昇温速度を前記範囲にすることで、単位体積あたりの質量が大きい活性炭が得られやすく、活性炭の有する物質の吸脱着に優れる。
昇温速度の切り替えは、原料の質量変化を追跡することで把握することができる。
本発明における炭化工程では、上記のように600℃以下の温度領域の昇温速度を前記範囲にした後、更に600℃を超える温度(好ましくは800℃以上、より好ましくは850℃以上)に昇温することが好ましい。この場合の昇温速度には、特に制限はないが、600℃を超える温度領域では原料組成の変化が少ないため、炭化処理をより効率良く行なう観点から、昇温速度を4℃/minを超える範囲に切り替えてもよい。このときの昇温速度は、更に8℃/min以上であることが好ましい。
上記の炭化温度に昇温して炭化処理を行なう場合、所望とする温度(例えば800〜850℃)まで昇温するときには、その温度(例えば800〜850℃)に達した時点から一定時間その温度に保持されることが好ましい。所望の温度で一定時間保持することで、炭化をより均一に行なうことができる。
本発明においては、炭化工程は、200℃以上600℃以下の温度領域における昇温速度を2℃/min以上4℃/min以下とし、600℃超(好ましくは800℃以上)の温度領域における昇温速度を4℃/min超、好ましくは8℃/min以上とする態様が好ましい。
原料の炭化は、ロータリーキルン、各種炉(例えば流動層炉、固定層炉、移動層炉、移動床炉など)を使用して行なうことができる。本発明では、原料の投入や取り出しを連続的に行なう連続炉を適用可能であり、原料の投入や取り出しを間欠的に行なうバッチ炉を適用することもできる。
加熱手段としては、所望とする温度まで加熱可能な手段であれば特に制限はなく、例えば、電気加熱、ガス燃焼加熱、高周波誘導加熱などを適用することができる。
−賦活工程
本発明における賦活工程では、前記炭化工程で得られた炭化物を、水蒸気及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一方の気体を賦活ガスとして賦活処理する。本工程では、原料の炭化物をガス賦活して活性炭を得る。
本発明におけるガス賦活は、水蒸気、二酸化炭素、あるいはこれらの二種以上を混合した混合気体(以下、「水蒸気等」ともいう。)を用いて行なわれる。中でも、水蒸気を賦活ガスとして賦活する場合が好ましい。本発明では、原料がカリウムを含んでおり、カリウムが存在する原料の炭化物に対して賦活を行なう点から、水蒸気による態様が好ましい。カリウム含有の炭化物に対して水蒸気を用いることで、細孔形成の制御が容易となる。
賦活処理は、750℃以上の温度で行なうことが好ましい。賦活処理時の温度(賦活温度)が750℃以上であることで、細孔が形成されやすく、所望とする細孔構造が得られやすい。賦活処理の温度としては、上記と同様の理由から、800℃以上が好ましく、850℃以上がより好ましい。
賦活処理する時間(賦活時間)は、賦活温度や導入される水蒸気等の量、炭化物の量などに依存して変化し、特に制限されるものではないが、賦活時間は短い程よく、100分以上300分以下の範囲であるのが好ましく、100分以上250分以下の範囲であることがより好ましい。
賦活は、周期律表1族の金属の総質量に対する含有量が質量基準で5%以上である活性炭が得られるように行なわれるのが好ましい。本発明では、原料としてカリウム濃度が0.8質量%以上の椿の実が用いられるが、例えば賦活により原料(カリウム含量=1%)の質量が1/5に減少した場合、逆に活性炭中に占めるカリウム含量の比率が5倍になることになる。すなわち、賦活の度合いを示し、カリウムを含む金属量が5%以上になるように賦活することで、吸脱着に適した細孔径を有する活性炭が得られやすい。
賦活処理は、賦活温度まで昇温し、賦活温度に達した後に水蒸気等を導入することにより行なえる。水蒸気等の導入は、その導入開始から所定の賦活時間が経過するまで継続し、賦活時間経過後に導入を停止する態様が好ましい。
賦活処理は、空気中の酸素、二酸化炭素などによる反応を抑える点で、水蒸気等の導入前にあらかじめ窒素ガス等の不活性ガスを賦活処理するロータリーキルン等の処理器内に充填しておくことが好ましい。器内に存在する反応性の物質をあらかじめ除去した後に賦活を開始することで、賦活反応が効率良く行なわれ、均一性のある細孔が得られやすい。
−粉砕工程−
本発明の活性炭の製造方法は、粉砕工程において、前記賦活工程で得られた活性炭を粉砕し、活性炭粉状物を生成する。粉状物にすることで、キャパシタに付与できる量を増やすことができる利点がある。
粉砕処理は、活性炭を粉状にすることができる方法であれば、いずれの方法で行なってもよい。粉砕は、例えば、乳鉢と乳棒を用いて擦る方法などによって行なうことができる。
粉砕後の活性炭の平均粒子径としては、1μm〜75μmの範囲が好ましく、特に1μm〜10μmの範囲がより好ましい。平均粒子径が75μm以下、更には10μm以下であると、電極材を成形する際の塗布液の調製が行ないやすく、所望の形状に調節しやすい。
−酸処理工程−
本発明の活性炭の製造方法は、酸処理工程において、前記粉砕処理で作製された活性炭粉状物に対して酸性液により酸処理を施す。酸処理は、洗浄処理を兼ねて行なうことができる。
ここでの酸処理は、粉砕した活性炭中の無機物等を除去、洗浄する工程である。酸処理により、炭化物や活性炭に付着する不純物が除去され、灰分が0.5質量%未満、好ましくはゼロ(すなわち灰分が完全に除去)になるように洗浄することができる。
酸処理は、酸性液に浸漬して行なってもよいし、酸性液を活性炭に噴霧する等して行なってもよい。中でも、無機酸による酸処理が好ましく、活性炭を酸化しない塩酸による洗浄が好ましい。
例えば塩酸を用いた酸処理を行なう場合、塩酸濃度が0.1質量%以上3.0質量%以下の塩酸水溶液を用いた方法が好ましく、塩酸濃度は0.3質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましい。塩酸濃度が0.1質量%以上であることで、適当な処理回数にて洗浄が行なえる。また、塩酸濃度が3.0質量%以下であることで、残留塩酸が少なく抑えられる。
酸処理温度については、洗浄性の点で高い方が好ましく、通常は80℃以上である。また、煮沸状態にした洗浄液に活性炭を浸漬し、洗浄することも好ましい態様である。
本発明においては、前記賦活工程で得られた活性炭に対して、活性炭の総量に対する金属含有量が質量基準で0.5%以下になるように、酸処理することが好ましい。本発明においては、アルカリ賦活を行なわないことで必ずしも過剰にアルカリが付着している状態ではないが、不純物となる金属量を減らす観点から、洗浄により前記範囲に調節されていることが好ましい。金属量が前記範囲にあると、例えば電極と共に用いられた場合に耐久性能を損なう等の支障を回避することができる。
金属含有量などの炭素材料中の無機物の量については、空気気流中で炭素質を燃焼させ、残さ(灰分)の重さを測定することで求められる。
本発明においては、前記酸処理後に、さらに脱酸処理が施されることも好ましい。例えば塩酸を用いた酸処理後に、酸化性ガスと接触させることで残留塩酸を除くことができる。具体的には、水蒸気等でガス賦活された活性炭を塩酸等で酸洗処理した後、酸化性ガス雰囲気下で脱酸することが好ましい。酸化性ガスとしては、酸素、水蒸気、炭酸ガス等が挙げられる。
更に、上記のように脱酸した活性炭に対して、その表面の官能基を減少させるために、希ガスや窒素ガス等の不活性ガス下でさらに熱処理してもよい。
本発明のキャパシタ用電極は、既述の本発明のキャパシタ電極材用活性炭又はその製造方法により製造された活性炭を含むものであり、好ましくは更に導電材、結合剤などを用いて構成される。
また、本発明のキャパシタは、既述の本発明のキャパシタ電極材用活性炭又はその製造方法により製造された活性炭を含む電極(本発明のキャパシタ用電極)を設けて構成されたものであり、電気二重層キャパシタに構成されるのが好ましい。
本発明のキャパシタ用電極及びキャパシタは、以下のように製造されたものでもよい。
例えば、活性炭粉末に必要により導電剤(例えばカーボンブラック等)と結合剤(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)を加えて混練した後、圧延等することでシート状等の所定の形状に成形する。これと集電材(例えばアルミニウムなどの金属板等)とを積層し、セパレータを介して、電解液に浸すことにより作製された電気二重層キャパシタでもよい。
また、活性炭粉末と樹脂系バインダ(ポリフッ化ビニリデン等)や水溶性バインダ(ヒドロキシメチルセルロース等)とを混合して調製した塗液を集電材(例えばアルミニウムなどの金属板等)に塗布し、セパレータを介して、電解液に浸することにより作製された電気二重層キャパシタでもよい。
電気二重層キャパシタの電解液としては、公知の電解質溶液を使用可能であり、水系、非水系のいずれでもよい。水系では、硫酸水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、塩化カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液等が挙げられる。非水系では、4級アンモニウム塩又は4級ホスホニウム塩等の電解質と、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物類;メチルエチルケトン等のジアルキルケトン類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類とを含有する溶液が挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
(実施例1)
−活性炭の作製−
(a)原料の準備
原料として、椿の実の油搾り滓〔カリウム含量:1.0質量%(対油絞り滓全量)〕と、椿外殻〔カリウム含量:1.2質量%(対外殻全量)〕とを用意した。
(b)炭化工程
原料である椿の実の油搾り滓と椿外殻とを順次用い、原料の投入と処理とを連続的に行なえるロータリー式キルンに投入し、はじめに昇温速度8℃/minにて250℃まで昇温した。続いて、キルン内の温度が250℃に達してから原料由来の水分が出終わるまで約30分保持した。水分の排出が終了したことの判断は、排気管から水蒸気が出なくなったことの確認により行なった。
その後、昇温速度を4℃/minに下げて600℃まで昇温し、次いで昇温速度を8℃/minに上げて850℃まで昇温した。更に、850℃に達した時点から約30分間保持した。このようにして、原料の炭化処理を行なった。
(c)賦活工程
炭化処理が施された原料をロータリー式キルンに投入し、窒素充填後、賦活温度を850℃まで昇温した。賦活温度に到達後、キルン内への水蒸気の導入を開始し、所定の賦活時間が経過するまで水蒸気の導入を継続した。そして、賦活時間が経過したところで水蒸気の導入を停止した。
以上のようにして活性炭を得た。炭化及び賦活前後の質量の変化から、収率(%)を算出した。
ここで、椿の実の油搾り滓から、収率が8.0%、12.0%、及び15.7%の活性炭を作製した。以下、この油搾り滓を原料とした活性炭を「サンプルA」とする。また、椿外殻から、収率が8.4%、12.1%、及び15.3%の活性炭を作製した。以下、この椿外殻を原料とした活性炭を「サンプルB」とする。
(d)粉砕工程
次に、得られた活性炭の各々を乳鉢に入れ、乳棒で擦って粉砕し、篩分けにより75μm以下の炭素粉末からなる活性炭粉状物とした。
(e)酸処理工程
前記粉砕工程で得た活性炭粉状物(試料)を約7g秤量し、これを試験管(直径:10mm、長さ:200mm)に入れた。続いて、1mol/Lの塩酸(和光純薬工業株式会社、35〜37質量%)を20mlを、ホールピペットで測り採り、試料の入ったガラス管に加えた。そして、90℃で7時間加熱した。このとき、気体が発生するため、蓋を少し開けておき、ガス抜きをした。加熱終了後、ろ紙で試料と塩酸とを分離し、試料をイオン交換水で洗浄した。その後、乾燥機で試料を乾燥させた。試料を完全に塩酸で洗うため、この操作をさらに2回繰り返し行なった。
以上のようにして、酸処理を行なって作製した6種の粉末状の活性炭と、酸処理を行なわずに作製した6種の粉末状の活性炭とを作製した。
作製した活性炭を用い、以下のようにして、細孔構造を評価すると共に、セルを作製し、電気的特性の評価を行なった。
−セルの作製−
(1)水系スラリーの調製
サンプル管に測定しようとするサンプルを採って質量を測定し、空のサンプル管と試料が入ったサンプル管との質量差からサンプルの質量を求めた。続いて、サンプルに電解液を加え、スパチュラで混ぜ、スラリーとした。ここで、サンプルとして3種のサンプルAと3種のサンプルBを用い(酸処理の有無により各6種ずつ)、12種の水系スラリーを調製した。また、電解液として、30質量%の硫酸(和光純薬工業株式会社製、純度95%以上)を用いた。
次いで、このサンプル管を真空ポンプで2分間引き、その状態で28分放置した。その後、サンプルの状態を30質量%の硫酸で調整し、真空ポンプで2分間引き、8分放置した。最後に再度サンプルの状態を30質量%の硫酸で調整し、真空ポンプで2分間引き、8分放置した。このスラリーが入ったサンプル管の質量を計測し、空のサンプル管の質量との差から、スラリーの質量を求めた。
(2)非水系スラリーの調製
使用しようとするサンプルを200℃で5時間真空乾燥させた。アルゴンガスを循環させているグローブボックスに使用する器具とサンプルを移した。この後の作業は全てグローブボックス内にて行なった。
まず、サンプル管に測定しようとするサンプルを採って質量を測定し、空のサンプル管と試料が入ったサンプル管との質量差からサンプルの質量を求めた。このサンプルに電解液を加え、スパチュラで混ぜてスラリーとした。ここで、サンプルとして3種のサンプルAと3種のサンプルBを用い(酸処理の有無により各6種ずつ)、12種の非水系スラリーを調製した。ここで、電解液として、テトラフルオロほう酸テトラエチルアンモニウム(和光純薬工業株式会社製、純度95%以上)をプロピレンカーボネート(和光純薬工業株式会社製)に混合した1.0Mの混合溶液を用いた。
次いで、このサンプル管を真空ポンプで30分間真空に引きながら放置した。その後、スラリーが入ったサンプル管の質量を計測し、空のサンプル管の質量の差から、スラリーの質量を求めた。
(3)セルの作製
上記より得た1つのサンプルにつき2枚の白金板(直径18mm)を用意した。
この白金版上に、直径が18mmで中心に直径3mmの穴が空いたシリコーンシートを置き、この状態で質量を測定した。シリコンシートの穴に、上記のように調製した所望の水系スラリー又は非水系スラリーを順次入れ、それぞれの質量を測定した。これらの測定値から、穴に入れた各スラリーの質量を求めた。そして、白金板上のシリコーンシートの上に更にセパレータを載せ、その上に更に別の白金板を載せて、セルとした。
−評価−
(1)細孔構造−
試料管を真空ポンプで真空にした後、窒素を注入して空の試料管とした。この試料管にキャップをつけて密封し、質量を測定した。試料管の中に細孔構造を測定しようとするサンプルを詰め、305℃で5時間真空乾燥させた。乾燥が終了した試料管の質量を測定し、空の試料管との質量の差から、詰めたサンプルの質量を計算した。次いで、−196℃の条件で自動窒素吸着解析装置(日本ベル社製、BELSORP miniII)により細孔構造の計測を行なった。
サンプルには、上記の3種のサンプルA,及び3種のサンプルBを用い、酸処理の有無による影響を評価した。
まず、酸処理の有無による収率への影響を図1に示す。収率は、下記式(1)により酸処理前の活性炭の質量と酸処理後の活性炭の質量から算出した。
酸処理後の収率〔Yield (acid treatment)〕
=(酸処理後の活性炭の質量)/(酸処理前の活性炭の質量) ・・・(1)
図1に示されるように、賦活による収率が低いものほど、酸処理により収率がより低くなっていることが分かる。
続いて、酸処理前後のサンプルの比表面積と収率との関係を図2に示す。
図2から明らかなように、収率が低いもの、すなわち賦活時間が長いものほど比表面積が大きいことが分かる。酸処理前のサンプルA及びBの比表面積は、約1000〜1500m/gであるのに対し、酸処理を行なうことで、サンプルA及びBの比表面積は、約1500〜2600m/gに上昇している。これは、酸処理前の比表面積が大きいサンプルほど、酸処理による比表面積の増加幅も大きく現れている。
一般にキャパシタ用として市販されている活性炭の比表面積は、約1300m/g程度であり、酸処理を行なうことで椿の実を原料とした活性炭は、大きい比表面積を有するものであるといえる。
酸処理前後の試料の全細孔容積と収率の関係を図3に示す。酸処理を行なうことで、全細孔容積は大きくなり、比表面積の変化と同様に、特に収率の低いものほど、全細孔容積の上昇幅は大きく現れた。続いて、酸処理前後のサンプルの全細孔容積に対するメソ細孔容積の比と収率との関係を図4に表す。この全細孔容積に対するメソ細孔容積の比については、酸処理の有無によってほとんど変化がみられなかった。しかしながら、賦活による収率が低いサンプルほど、メソ細孔容積の比が大きくなることが分かる。賦活時間を所定の時間を行なうことが、より大きな細孔を形成する上で重要である。
次いで、酸処理前後のサンプルの平均細孔直径と収率との関係を図5に示す。図5から明らかなように、酸処理によっては平均細孔直径はほとんど変化しなかった。ところが、図4に示すようなメソ細孔容積の割合は増えている。そのため、賦活が進むにつれて細孔が拡大するとともに、新しい細孔が形成すると考えられる。この点について、図6〜図9を参照して説明する。図6及び図8は、酸処理前のサンプルA及びBの全細孔容積(累積細孔容積;ΣVp)を、図7及び図9は、酸処理後のサンプルA及びBの全細孔容積(累積細孔容積;ΣVp)をそれぞれ示す。これらの結果から明らかなように、酸処理によるメソ細孔部分の発達が大きく現れることが分かる。換言すれば、賦活時間により、メソ細孔の占める比率を制御することができるといえる。
図8〜図9から各値を抜粋し、下記表1に対比して示す。

(2)電気的性質
[充放電性能]
水系スラリーを用いたセルに対しては、電流密度:100mA/g、電圧:0〜900mVとして100回充放電を繰り返し、静電容量[F/g]を測定した。
また、非水系スラリーを用いたセルに対しては、電流密度:100mA/g、電圧:0〜2000mVとして100回充放電を繰り返し、静電容量[F/g]を測定した。
[rate特性]
非水系スラリーを用いたセルを用い、充放電測定を行なった。このとき、電圧を0〜2000mVとし、10mA/g、20mA/g、30mA/g、50mA/g、100mA/g、500mA/g、10mA/gの電流密度にて、それぞれ5サイクルずつ充放電測定し、rate特性を調べた。
まず、水系スラリーを用いたセルについて、静電容量を測定し、酸処理による影響を調べた。その測定結果を図10に示す。図10に示されるように、いずれのセルも酸処理により静電容量が向上する傾向にあるが、収率の少ない、すなわち賦活時間が長くなるほど、酸処理による向上効果が大きく現れることが分かる。特に収率が8.4%、12.1%の場合、すなわち細孔直径が2〜10nmの細孔が占める容積が全細孔容積の20%以上の範囲で顕著な効果が現れた。酸処理前は、30F/g〜40F/g程度であったのに対し、酸処理後には約40F/g〜50F/gの静電容量が得られている。酸処理によることで、細孔構造はさることながら、静電容量の大幅な改善が期待される。
次に、非水系スラリーを用いたセルを用い、セルの静電容量を計測して、酸処理による影響を調べた。計測結果を図11〜図12に示す。図11に示すように、酸処理を施していない場合、収率が低いほど静電容量も低下していく傾向がみられるが、酸処理を行なうことで、静電容量が向上し、特に収率の低いサンプルほど酸処理を施したことによる静電容量の向上効果がより顕著に現れている。すなわち、酸処理を施すことによる静電容量の向上効果が大きい。この場合も、細孔直径が2〜10nmの細孔が占める容積が全細孔容積の20%以上の範囲で顕著な効果が現れた。
また、図12は、BET比表面積と静電容量との関係を示す。一般に、比表面積が大きいほど静電容量も大きくなるが、酸処理を施さないサンプルでは、比表面積が1000〜1500m/gで推移し、静電容量は大きくなっていない。これは、酸処理前のサンプルに付着して存在している無機物が、キャパシタの電気二重層の形成に影響しているためと考えられる。これに対し、酸処理を行なったサンプルでは、比表面積が大きくなるにつれて静電容量も向上する傾向を示した。
次に、図13は、電流密度と静電容量との関係をレート特性の横軸に電流密度をとったものである。市販品との対比において、サンプルA及びBの電流密度を大きくしたときの静電容量の低下が小さい。また、市販品よりも全細孔容積に対するメソ細孔容積の比が大きい。試料Aおよび試料Bはイオンの移動が容易なメソ孔が多く、高電流密度でも効率よく吸脱着が細孔内で行われていると考えられる。
上記から明らかなように、粉砕後に酸処理を行なうことにより、細孔直径が2nm以上10nm以下の細孔の占める細孔容積が全細孔容積の20%以上である場合に、良好な静電容量を確保することができた。

Claims (7)

  1. 椿の実を原料として作製され、細孔直径が2nm以上10nm以下の細孔の占める細孔容積が全細孔容積の20%以上であるキャパシタ電極材用活性炭。
  2. BET比表面積が2000m/g以上である請求項1に記載のキャパシタ電極材用活性炭。
  3. 椿の実を原料とし、該原料を炭化する炭化工程と、
    前記炭化工程で得られた炭化物を、水蒸気及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一方の気体を賦活ガスとして賦活し、活性炭を生成する賦活工程と、
    前記活性炭を粉砕して活性炭粉状物とする粉砕工程と、
    前記活性炭粉状物を酸性液により酸処理する酸処理工程と、
    を有するキャパシタ電極材用活性炭の製造方法。
  4. 前記賦活工程は、収率が12%以上である範囲で前記炭化物を賦活する請求項3に記載のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法。
  5. 前記椿の実が、椿油の搾り滓、又は椿の実の殻である請求項3又は請求項4に記載のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法。
  6. 請求項1又は請求項2に記載のキャパシタ電極材用活性炭、又は請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法により製造されたキャパシタ電極材用活性炭を含むキャパシタ用電極。
  7. 請求項1又は請求項2に記載のキャパシタ電極材用活性炭、又は請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載のキャパシタ電極材用活性炭の製造方法により製造されたキャパシタ電極材用活性炭を含む電極を備えたキャパシタ。
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