JP2014172314A - 液滴吐出ヘッド、電圧制御方法、および、画像形成装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッド、電圧制御方法、および、画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】液滴吐出の中断前後における吐出特性を安定化させることが可能な液滴吐出ヘッド、電圧制御方法、および、画像形成装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出ヘッドに用いる電気機械変換素子400を、アクチュエータ基板401、成膜振動板402、第1電極403、電気機械変換膜404、第2電極405、第1絶縁保護膜406、第3電極408、第4電極409、および、第2絶縁保護膜407等を有して構成する。液滴の吐出開始前に、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、液滴を吐出させない電圧波形を、電気機械変換素子400に印加する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ノズル孔等の穴部から液滴を吐出する液滴吐出ヘッド、この液滴吐出ヘッドの電圧制御方法、および、この液滴吐出ヘッドを有するプリンタ、複写装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置に関する。
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置または画像形成装置として、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備えた画像記録装置または画像形成装置が知られている。このような液滴吐出ヘッドとして、ノズル孔と連通する加圧室(インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも称される。)に圧電素子などの電気機械変換素子で圧力変動を発生させることで、ノズル孔から液滴を吐出させる方式がある。この方式では複数のものが実用化され、製品化されている。一例としては、加圧室内にヒータなどの電気熱変換素子を設置することで液体を気化させ、圧力変動を利用するサーマルインクジェット方式、加圧室に圧電素子などの電気機械変換素子を設置する方式が挙げられる。また、インク流路の壁面を形成する振動板とこれに対向する電極からなるエネルギー発生手段とを備えて、エネルギー発生手段で発生したエネルギーで加圧室内の液滴を加圧する方式も挙げられる。電気機械変換素子として、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものとの2種類が実用化されている。
ここで、液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置では、従来より、液滴吐出ヘッドの液滴の安定した吐出特性を確保する上で、液滴の乾燥および温度に起因した液滴の粘度変化に対する対策が施されてきた(例えば、特許文献1〜6参照)。特許文献1では、液滴の乾燥を防止する対策として、ノズルに微駆動波形を印加することで個別液室内の液を攪拌し、メニスカスの乾燥を抑制する提案がされている。また、特許文献2では、液滴の乾燥後のメンテナンス動作として、吸引時に空吐出波形を印加することが提案されている。また、温度特性に対する対策として、特許文献3〜6では、温度検出手段と加熱用信号、予備波形あるいは微駆動波形を具備して温度制御することで吐出安定性を確保することが提案されている。
そして、吐出する液滴の適用範囲が広く、今後の高精細化に向けた要求に対して、電気機械変換素子のたわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものが注目されている。たわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成されており、アクチュエータの変位を稼ぐために駆動電圧としては、抗電界を越える電圧を印加する必要がある。
しかしながら、このように抗電界を越える電圧を印加することで、吐出特性を確保した場合でも、吐出を中断し再開するに当たり、液滴の乾燥および液滴の粘度が一定であっても吐出特性が変化してしまうことがある。
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、液滴吐出の中断前後における吐出特性を安定化させることが可能な液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの電圧制御方法、およびこの液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本願に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、ノズルに連通する液室と、液室上に設けられた振動板と、振動板上に設けられ、該振動板を振動させることにより、液室内に圧力変動を発生させる電気機械変換素子と、を備え、電気機械変換素子に、正側の抗電界を越える電圧波形を印加してノズルから液滴を吐出するとともに、液滴の吐出開始前に、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、液滴を吐出させない電圧波形を、電気機械変換素子に印加することを特徴とする。
本発明によれば、吐出中断前後の電気機械変換素子の分極特性を安定化することにより、吐出特性を安定化させることが可能な液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの電圧制御方法、および、この液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置を提供することができる。
液滴吐出ヘッドの基本構成例を示す断面図である。 PZT膜の微細分域構造の模式拡大図であって、(a)は分極処理前のPZT膜分域の分極方向を示し、(b)は分極処理後のPZT膜分域の分極方向状態を示す。 PZT膜の分極処理後の分極特性を示すグラフである。 本願の各実施例に係る液滴吐出ヘッドに用いられる電気機械変換素子の構成例を示す断面図である。 各実施例に係る絶縁保護膜等を含む電気機械変換素子の構成を示し、(a)は断面図であり、(b)は第1絶縁保護膜の一部と、第2絶縁保護膜を省略した状態の平面図である。 比較例での液滴吐出中断前後の、液滴吐出ヘッドの挙動を説明するための説明図であって、(a)は液滴吐出中断前後の液滴速度Vjの変化を示すグラフであり、(b)はユニポーラ駆動時の分極ヒステリシスを示すグラフである。 実施例1における、ならし電圧波形の電圧と印加時間とを示すグラフである。 実施例2における、ならし電圧波形の電圧と印加時間とを示すグラフである。 実施例3における、逆バイアスからの電圧と印加時間とを示すグラフである。 実施例4の液滴吐出時の電圧制御の手順を示すフローチャートである。 本願の画像形成装置に係る実施例5の主要機構部の構成を示す概略図である。 図11の主要機構部の要部の概略平面図である。
以下、本願に係る液滴吐出ヘッドの実施形態について説明する。まず、液滴吐出ヘッドの基本的な構成例を、図1〜図3を参照して説明する。図1は、液滴吐出ヘッドの基本構成を示す断面図である。図2は、ピエゾアクチュエータのPZT膜の分極方向を説明するための模式図である。図3は、PZT膜の分極処理後の分極特性を示すグラフである。
[液滴吐出ヘッドの基本構成]
図1に示すように、液滴吐出ヘッド300は、液滴を吐出するノズル302を有するノズル板303と、ノズル302が連通する加圧室(インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも呼ばれる)301と、この加圧室301内の液滴を加圧する電気機械変換素子としての圧電素子309と、加圧室301が設けられた圧力室基板304と、加圧室301および圧電素子309間に設けられた振動板(下地)305と、圧電素子309の駆動を制御する駆動回路部材(図示せず)と、等を備えて構成されている。
[電気機械変換素子(圧電素子)の基本構成]
まず、液滴吐出ヘッド300に用いられる圧電素子309として、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものについて説明する。このたわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層を、リソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室(加圧室301)に対して、独立するように圧電素子を形成したものが知られている。
また、たわみ振動モードのアクチュエータに使用される圧電素子(電気機械変換素子)309としては、例えば、図1に示すものでは、共通電極である下部電極306と、下部電極306上に形成された電気機械変換膜としてのPZT膜(圧電体層)307と、PZT膜307上に形成された個別電極である上部電極308とで構成されている。さらに、上部電極308上には、層間絶縁膜(図示せず)が形成されて、下部電極306と上部電極308との絶縁が図られ、この層間絶縁膜に開口されたコンタクトホール(図示せず)を介して、上部電極308に電気的に接続される配線が設けられた構造となっている。
また、図2に、PZT膜の微細分域構造の模式図を示した。この図2(a)に示すように、圧印加直前においてPZT膜の圧電体結晶は、分極の向きがランダムな状態となっている。これに電圧印加を繰り返すことで、図2(b)に示すように、圧電体結晶は分極の向きが揃ったドメインの集合体となってくる。このため、電圧印加を行う前から分極の向きを揃えることが試されており、エージング工程またはポーリング(分極処理)工程と称した所定駆動電圧に対して変位量を安定化させる工夫が行われてきた。具体的には、圧電素子に対して駆動パルス電圧を超える高電圧を印加するような手法が行われている。また電極と電荷供給手段との間に電圧を印加してコロナ放電を生じさせることにより、電荷を供給し、圧電体内に電界を発生させる工夫が行われている。分極処理後の分極特性を図3に示す。
ここで、吐出する液滴の適用範囲が広く、今後の高精細化に向けた要求に対して、電気機械変換素子のたわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものが注目されている。たわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成されている。このようなアクチュエータでは、変位を稼ぐために、駆動電圧としては抗電界を越える電圧を印加する必要がある。
発明者は、このような圧電アクチュエータを鋭意開発し、吐出特性の安定性を評価した。その結果、抗電界を越える電圧を印加して吐出特性を確保している液滴吐出ヘッドにおいて、吐出を中断し再開するに当たり、液滴の乾燥および液滴の粘度が一定でも吐出特性が変化してしまうことが分かった。この現象を解析した結果、電気機械変換素子の分極特性が中断することにより、吐出特性が変動していることが分かった。このため、液滴の吐出中断前後の電気機械変換素子の分極特性を安定化することにより、吐出特性を安定化させる本願の液体吐出ヘッド等を発明するに至った。
すなわち、本願の液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、ノズルに連通する液室と、液室上に設けられた振動板と、振動板上に設けられ、該振動板を振動させることにより、液室内に圧力変動を発生させる電気機械変換素子と、を備えて構成する、
上述のような液滴吐出ヘッドでは、液滴吐出の際には、電気機械変換素子に、正側の抗電界を越える電圧波形を印加してノズルから液滴を吐出する。また、液滴の吐出を中断し、再開する際には、この液滴の吐出開始前に、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、液滴を吐出させない電圧波形を、電気機械変換素子に印加する。以下、この「正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、液滴を吐出させない電圧波形」を「ならし電圧波形」と呼ぶ。本願では、このように、吐出開始前に「ならし電圧波形」を印加することで、電気機械変換素子の分極特性を安定化させることができ、液滴の吐出特性を向上させて、良好な印字を長期に維持することができる。また、液滴の無駄な吐出を省いて、消耗品の低コスト化等も可能となる。
また、本願の液滴吐出ヘッドは、電気機械変換素子の分極方向に対して、負側抗電界を越えない範囲で負バイアスまで電圧波形を印加することで、ノズルから液滴を吐出するとともに、ならし電圧波形の印加時にも、負バイアスまで印加するように構成してもよい。このように、電気機械変換素子の分極方向に対して、逆バイアス波形を印加して駆動する液体吐出するとともに、ならし電圧波形も逆バイアスまで印加することで、アクチュエータとしての変位効率を向上できるとともに吐出特性の安定化の向上を図ることができる。
また、本願の液滴吐出ヘッドは、ならし電圧波形として、電気機械変換素子の負側抗電界を越えない範囲の負バイアスから印加可能な正側の最大電源電圧までの範囲で電気機械変換素子に電圧を印加するよう構成してもよい。このように、ならし電圧波形として電気機械変換素子の負側抗電界を越えない範囲で逆バイアスから、印加可能な正側の最大電圧までの範囲で印加することで、印加電圧範囲全般での分極特性をより安定化することができる。
また、本願の液滴吐出ヘッドは、ならし電圧波形の液滴を吐出させる側に変位する電圧の立上り速度を、液滴の吐出時の吐出波形の電圧の立上り速度よりも遅くする電圧波形とするように構成してもよい。この構成により、ならし波形での消費電流を抑えることができる。
また、本願の液滴吐出ヘッドは、ならし電圧波形の電圧立上り速度と立下り速度とを、液滴の吐出時の吐出波形の電圧の立上り速度と立下がり速度よりも、各々遅くする電圧波形を印加するように構成してもよい。この構成により、ならし電圧波形の電圧の印加時のヘッド発熱を抑えることで、温度上昇を抑えることができ、空吐出なしで吐出動作が可能となり、記録液の無駄な消費も抑えることができる。
また、本願の液滴吐出ヘッドは、ならし電圧波形として、三角波形を印加するように構成してもよく、高電界を電気機械変換素子に掛け続けることによる分極特性変化を抑止することができる。
また、本願の電圧制御方法は、振動板を振動させることにより、ノズルに連通する液室に圧力変動を発生させる電気機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドの電圧制御方法であり、液滴吐出ヘッドの電気機械変換素子に、正側の抗電界を越える電圧波形を印加して液滴を吐出させる工程と、吐出を開始するときに、吐出終了後から吐出開始までの間に中断時間があった場合に、該吐出前に、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、液滴を吐出させない電圧波形を、電気機械変換素子に印加する工程と、を有している。このように、吐出終了から吐出開始までの中断時間の状態により、ならし波形印加の実施の有無を判断することで、メンテナンス時間を低減することができる。
また、本願の電圧制御方法は、液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出終了から吐出開始までの中断時間に対応して、液滴を吐出させない電圧波形を印加する時間を変更することが好ましい。これにより、吐出終了から印字開始までの中断時間に対応して、ならし波形の印加時間を変更することで、メンテナンス時間の最適化が可能となる。
また、本願の電圧制御方法は、電気機械変換素子に対して、逆バイアスまで電圧を印加して、液滴を吐出し、電圧印加終了時には、電気機械変換素子の分極方向に対して、正側バイアスを印加した後、電気機械変換素子への電圧印加を終了することが好ましい。これにより、電気機械変換素子が分極反転することなく、安定した分極特性を確保することができる。
また、本願の画像形成装置は、上述のような液滴吐出ヘッドを有し、上述のような電圧制御方法を用いて、液滴吐出ヘッドから吐出した液滴を被着媒体上に着弾させる。そのため、液滴の吐出特性に優れた液滴吐出ヘッドによって画像形成を行うことにより、優れた画像品質を保持することができる。
以下、本願の液滴吐出ヘッドに係る各実施例について、図面を参照して説明する。液滴吐出ヘッドの基本構成は、上記で図1を用いて説明したとおりであるため、液滴吐出ヘッドの詳細な構成については説明を省略する。以下では、各実施例の液滴吐出ヘッドで用いる電気機械変換素子の構成例について、図4、図5を参照して詳細に説明する。図4は電気機械変換素子の主要部分の構成例を示す拡大断面図である。図5は、絶縁保護膜等を含む電気機械変換素子のより詳細な構成例を示し、図5(a)は断面図であり、図5(b)は第1絶縁保護膜の一部と、第2絶縁保護膜を省略した状態での平面図である。
[電気機械変換素子の構成]
図4に示すように、本願に係る実施例の電気機械変換素子400は、アクチュエータ基板401、成膜振動板402、第1電極403、電気機械変換膜404、および、第2電極405を備えて構成されている。本願に係る実施例の電気機械変換素子400は、さらに、図5に示すように、保護膜としての第1絶縁保護膜406、第3電極408と第4電極409(引き出し配線)、および、第2絶縁保護膜407等を有する素子構成を有している。この電気機械変換素子400の駆動は、第1電極403および第2電極405が、それぞれ配線を介して接続された駆動IC等の駆動手段(図示せず)によって行われる。
図5に示すように、第1絶縁保護膜406はコンタクトホール部410を有しており、第1電極403と第3電極408、第2電極405と第4電極409とが、それぞれ導通した構成となっている。このとき、第1電極403および第3電極408を共通電極配線411とし、第2電極405および第4電極409を個別電極配線412として、共通電極411および個別電極配線412の上面に、これらを保護する第2絶縁保護膜407が形成されている。この第2絶縁保護膜407が一部開口されて(開口部O)、電極PADとして構成されている。共通電極配線411用に作製されたものを、共通電極PAD413、個別電極配線412用に作製されたものを、個別電極用PAD414としている。この共通電極配線411と個別電極配線412間に、電圧印加あるいはコロナ帯電により、分極処理を実施している。
[電気機械変換素子の材料および工法]
以下に、電気機械変換素子400の各構成の材料および工法について具体的に説明する。
(アクチュエータ基板)
アクチュエータ基板401の材料としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100μm〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されている。本実施形態では、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図1に示すような加圧室301を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していく。この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。
異方性エッチングとは、結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えば、水酸化カリウムKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。したがって、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝を設けることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。そのため、本実施形態では、(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。ただし、この場合、マスク材である二酸化ケイ素SiO2(もエッチングされてしまうことがあるため、この点に留意して利用している。
(成膜振動板)
図1に示すように、PZT膜307によって発生した力を受けて、振動板(下地)305が変形変位して、加圧室301の液滴を吐出させる。そのため、図4に示す本願の実施例の成膜振動板402としては、所定の強度を有したものであることが好ましい。成膜振動板402の材料としては、ケイ素Si、二酸化ケイ素SiO2、窒化ケイ素Si34が挙げられ、これらを用いて振動板305をCVD法(Chemical Vapor Deposition)により作製したものが挙げられる。
成膜振動板402は、さらに、下部電極としての第1電極403、電気機械変換膜404の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、電気機械変換膜404としては、一般的に材料としてPZT(Pb(Zr,Ti)O、ジルコニウム酸−チタン酸鉛)が使用される。このことから、線膨張係数8×10-6(1/K)に近い線膨張係数として、5×10-6〜10×10-6の線膨張係数を有した材料が好ましく、さらには7×10-6〜9×10-6の線膨張係数を有した材料がより好ましい。
成膜振動板402の具体的な材料としては、酸化アルミニウムAl23、酸化ジルコニウムZrO2、酸化イリジウムIrO2、酸化ルテニウムRUO2、酸化タンタルTa2O5、酸化ハフニウムHfO2、酸化オスミウムOsO、酸化レニウムReO2、酸化ロジウムRh23、酸化パラジウムPdO、および、これらの化合物等が挙げられる。これらをスパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて成膜振動板402を作製することができる。成膜振動板402の膜厚としては、0.1μm〜10μmが好ましく、0.5μm〜3μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと、図1に示すような加圧室301の加工が行いにくくなり、この範囲より大きいと、成膜振動板402が変形変位しにくくなり、液滴の吐出が不安定になるため好ましくない。
(第1電極)
第1電極403としては、金属または金属と酸化物とから成ることが好ましい。ここで、どちらも成膜振動板402と第1電極403用の金属膜との間に、密着層(図示せず)を介在させて、双方の剥がれ等を抑制するように工夫している。以下に、密着層含めて第1電極403の金属電極膜、酸化物電極膜の詳細について記載する。
「密着層」
密着膜としてチタンTiをスパッタ成膜後、RTA(rapid thermal annealing)装置を用いて、650℃〜800℃、1分〜30分、酸素O2雰囲気でチタン膜を熱酸化して、チタン膜を酸化チタン膜(TiO2膜)にする。酸化チタン膜を作成するには、反応性スパッタでもよいが、チタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とするからである。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方が、酸化チタン膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTA装置による酸化の方が、良好な結晶を形成するために有利になる。またTi以外の材料としては、タンタルTa、イリジウムIr、ルテニウムRu等の材料も好適に挙げられる。
密着膜の膜厚としては、10nm〜50nmが好ましく、15nm〜30nmがさらに好ましい。この範囲以下の場合では、密着性に懸念があり、この範囲以上では、密着膜上で作製する電極膜の結晶の質に影響が出てくるため好ましくない。
「金属電極膜」
金属電極膜の金属材料としては、従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金Ptが用いられているが、鉛Pbに対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムIrや白金−ロジウム合金などの白金族元素や、これら合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地である成膜振動板402(特にSiO2)との密着性が悪いために、先の密着層を先に積層することが好ましい。
金属電極膜の作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、80nm〜200nmが好ましく、100nm〜150nmがより好ましい。この範囲より薄い場合においては、共通電極として十分な電流を供給することが出来なくなり、液滴吐出をする際に不具合が発生するため好ましくない。さらに、この範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合においては、コストアップとなる点や、白金を材料とした場合においては、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなる。そして、その上に作製する酸化物電極膜やPZTの表面粗さや結晶配向性に影響を及ぼして、液滴吐出に十分な変位が得られないような不具合が発生するため好ましくない。
「酸化物電極膜」
酸化物電極膜の材料としては、ストロンチウム・ルテニウム酸化物SrRuO3を用いることが好ましい。左記以外にも、Srx(A)(1−x)Ruy(1−y)、A=Ba,Ca、B=Co,Ni、x,y=0〜0.5で記述されるような材料も好適に挙げられる。成膜方法についてはスパッタ法により作製される。スパッタ条件によって、SrRuO3薄膜の膜質が変化する。そのため、特に結晶配向性を重視し、第1電極403のプラチナPt(111)にならって、SrRuO3膜(SRO成膜とも呼ぶ)についても(111)配向させるためには、成膜温度については500℃以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。
例えば、SRO成膜条件として、室温成膜でその後、RTA処理にて結晶化温度(650℃)で熱酸化する方法がある。この場合、SRO膜としては、十分結晶化され、電極としての比抵抗としても十分な値が得られる。しかしながら、膜の結晶配向性としては、(110)が優先配向しやすくなり、その上に成膜したPZTについても(110)配向し易くなる。
Pt(111)上に作製したSRO結晶性については、PtとSROとで格子定数が近いため、通常のθ−2θ測定では、SRO(111)とPt(111)の2θ位置が重なってしまい判別が難しい。Ptについては消滅則の関係からPsi=35°傾けた2θが約32°付近の位置には回折線が打ち消し合い、回折強度が見られない。そのため、Psi方向を約35°傾けて、2θが約32°付近のピーク強度で判断することでSROが(111)に優先配向しているかを確認することができる。2θ=32°に固定し、Psiを振ったときのデータを、以下に示す。
Psi=0°ではSRO(110)ではほとんど回折強度が見られず、Psi=35°付近において、回折強度が見られることから本成膜条件にて作製したものについては、SROが(111)配向していることが確認できた。また、上述した室温成膜+RTA処理により作製されたSROについては、Psi=0°のときに、SRO(110)の回折強度が見られる。
詳細は後述するが、圧電アクチュエータとして連続動作したときに、駆動させた後の変位量が、初期変位に比べてどのくらい劣化したかを見積もったところ、PZTの配向性が非常に影響しており、(110)では変位劣化抑制において不十分である。さらにSRO膜の表面粗さを見たときに、成膜温度に影響し、室温から300℃では表面粗さが非常に小さく2nm以下になる。粗さについては、AFMにより測定される表面粗さ(平均粗さ)を指標としている。表面粗さとしては、非常にフラットにはなっているが結晶性が十分でなく、その後成膜したPZTの圧電アクチュエータとしての初期変位や連続駆動後の変位劣化については、十分な特性が得られない。
表面粗さとしては、4nm〜15nmになっていることが好ましく、6nm〜10nmがさらに好ましい。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなるため好ましくない。したがって、上述に示すような、結晶性や表面粗さを得るためには、成膜温度としては500℃〜700℃、好ましくは520℃〜600℃の範囲で成膜を実施している。
成膜後のSrとRuの組成比については、Sr/Ruが0.82以上1.22以下であることが好ましい。この範囲から外れると比抵抗が大きくなり、電極として十分な導電性が得られなくなるため好ましくない。さらに、SRO膜の膜厚としては、40nm〜150nmが好ましく、50nm〜80nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと、初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない点や、PZTのオーバーエッチングを抑制するためのストップエッチング層としての機能も得られにくくなるため好ましくない。また、この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が悪く、リークしやすくなるため好ましくない。また比抵抗としては、5×10-3Ω・cm以下になっていることが好ましく、さらに1×10-3Ω・cm以下になっていることがさらに好ましい。この範囲よりも大きくなると、共通電極配線411として、第5電極(図示せず)との界面で接触抵抗が十分得られず、共通電極配線411として十分な電流を供給することができなくなり、液滴吐出をする際に不具合が発生するため好ましくない。
(電気機械変換膜)
電気機械変換膜404の材料としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbTiO3)とチタン酸(PbTiO3)との固溶体であり、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成は、PbZrO3とPbTiO3との比率が53:47の割合である。化学式で示すと、Pb(Zr0.53,Ti0.47)O3、一般的にはPZT(53/47)と示される。
PZT以外の複合酸化物としては、チタン酸バリウムBaTiO3などが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料とし、共通溶媒に溶解させることで、チタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
これら材料は、一般式ABO3で記述され、A=Pb,Ba,Sr、B=Ti,Zr,Sn,Ni,Zn,Mg,Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O3、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O3、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は、2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
電気機械変換膜404の作製方法としては、スパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて作製することができる。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
PZTをSol−gel法により作製した場合、酢酸鉛PbO、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料とし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ことで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトンC582、酢酸C242、ジエタノールアミンC411NO2などの安定化剤を適量、添加してもよい。
下地基板全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴う。そのため、クラックフリーな膜を得るには、一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
電気機械変換膜404の膜厚としては、0.5μm〜5μmが好ましく、1μm〜2μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと、十分な変位を発生することができなくなり、この範囲より大きいと何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなるので好ましくない。
また比誘電率としては、600以上2,000以下になっていることが好ましく、1,200以上1,600以下になっていることがさらに好ましい。この値を満たさないと、十分な変位特性が得られず、この値より大きくなると、分極処理が十分行われず、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生するため好ましくない。
(第2電極)
第2電極405としては、金属または酸化物と金属とから成ることが好ましい。以下に、酸化物電極膜、金属電極膜の詳細について記載する。
「酸化物電極膜」
酸化物電極膜の材料等については、第1電極403で使用した酸化物電極膜で記載したとおりである。SRO膜の膜厚としては、20nm〜80nmが好ましく、40nm〜60nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や変位劣化特性については十分な特性が得られず、この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が悪く、リークしやすくなるため好ましくない。
「金属電極膜」
金属電極膜の材料等については、第1電極403で使用した金属電極膜で記載したとおりである。膜厚としては30nm〜200nmが好ましく、50nm〜120nmがさらに好ましい。この範囲より膜厚が薄い場合、個別電極配線412として十分な電流を供給することができなくなり、液滴吐出をする際に不具合が発生するため好ましくない。さらに、この範囲より膜厚が厚い場合、白金族元素の高価な材料を使用するとコストアップとなる。この理由や、白金を材料とし、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、絶縁保護膜を介して第6電極(図示せず)を作製する際に、膜剥がれ等のプロセス不具合が発生しやすくなるため好ましくない。
(第1絶縁保護膜)
第1絶縁保護膜406は、成膜・エッチングの工程による電気機械変換素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、緻密な無機材料とする必要がある。有機材料では十分な保護性能を得るためには膜厚を厚くする必要があるため、好ましくない。第1絶縁保護膜406を厚い膜とした場合、成膜振動板402の振動変位を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低い液滴吐出ヘッドになってしまうことが要因である。
第1絶縁保護膜406を薄膜で高い保護性能を得るようにするためには、酸化物、窒化物、炭化膜を用いるのが好ましいが、絶縁膜の下地となる、電極材料、圧電体材料、振動板材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。また、成膜法も電気機械変換素子を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法や、プラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。第1絶縁保護膜406の好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD法(Chemical Vapor Deposition)等が例示できるが、使用できる材料の選択肢が広い点で、ALD法が好ましい。
第1絶縁保護膜406の好ましい材料としては、酸化アルミニウムAl23、酸化亜鉛ZrO2、酸化イットリウムY23、酸化タンタルTa23、酸化チタンTiO2などのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。特に、ALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制しようとしている。
第1絶縁保護膜406の膜厚としては、電気機械変換素子400の保護性能を確保できる十分な薄膜とする必要があると同時に、成膜振動板402の変位を阻害しないように、可能な限り薄くする必要がある。第1絶縁保護膜406の好ましい膜厚は、20nm〜100nmの範囲である。100nmより厚い場合は、振動板の変位が低下し、吐出効率の低い液滴吐出ヘッドとなるため好ましくない。一方、20nmより薄い場合は電気機械変換素子400の保護層としての機能が不足してしまい、電気機械変換素子400の性能が前述の通り低下してしまうため好ましくない。
また、第1絶縁保護膜406を2層にする構成であってもよい。この場合は、2層目の絶縁保護膜を厚くするため、振動板の振動変位を著しく阻害しないように第2電極405付近において、2層目の絶縁保護膜を開口するような構成も挙げられる。このとき2層目の絶縁保護膜としては、任意の酸化物、窒化物、炭化物、またはこれらの複合化合物を用いることができる。この中でも、半導体デバイスで一般的に用いられる二酸化ケイ素SiO2を用いることができる。
第1絶縁保護膜406の成膜は、任意の手法を用いることができ、CVD法、スパッタリング法が例示できる。この中でも、電極形成部等のパターン形成部の段差被覆を考慮すると等方的に成膜できるCVD法を用いることが好ましい。2層目の絶縁保護膜の膜厚は、下部電極としての第1電極403と個別電極配線412に印加される電圧で絶縁破壊されない膜厚とする必要がある。すなわち絶縁保護膜に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する必要がある。さらに、2層目の絶縁保護膜の下地の表面性やピンホール等を考慮すると、膜厚は200nm以上必要であり、500nm以上がさらに好ましい。
(第3電極および第4電極)
第3電極408、第4電極409の材料としては、Ag(銀)合金、銅Cu、アルミニウムAl、金Au、白金Pt、イリジウムIrのいずれかから成る金属電極材料であることが好ましい。第3電極408、第4電極409の作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
第3電極408、第4電極409の膜厚としては、0.1μm〜20μmが好ましく、0.2μm〜10μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと抵抗が大きくなって電極に十分な電流を流すことができなくなり、ヘッド吐出が不安定になるため好ましくない。この範囲より大きいと、プロセス時間が長くなるため好ましくない。また、共通電極配線411、個別電極配線412とした場合、コンタクトホール部410(10μm×10μm)での接触抵抗として、共通電極配線411としては、10Ω以下が好ましく、個別電極配線412としては、1Ω以下が好ましい。また、共通電極配線411としては、5Ω以下がさらに好ましく、個別電極配線412としては、0.5Ω以下がさらに好ましい。この範囲を超えると、十分な電流を供給することができなくなり、液滴吐出をする際に不具合が発生するため好ましくない。
(第2絶縁保護膜)
第2絶縁保護膜407は、個別電極配線412や共通電極配線411の保護層の機能を有するパシベーション層である。図5に示すように、個別電極配線412の引き出し部と、図示しないが共通電極配線411の引き出し部とを除き、個別電極配線412と共通電極配線411との上面を被覆する。これにより、電極材料に安価なAlまたはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高い液滴吐出ヘッドとすることができる。
第2絶縁保護膜407の材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため、後述のパターニングに適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上に窒化ケイ素Si34を用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であるため好ましい。
また、第2絶縁保護膜407の膜厚としては、200nm以上とすることが好ましく、500nm以上とすることがさらに好ましい。膜厚が薄い場合は十分なパシベーション機能を発揮できず、配線材料の腐食による断線が発生し、液滴吐出ヘッドの信頼性を低下させてしまうため好ましくない。
また、第2絶縁保護膜407は、電気機械変換素子400上とその周囲の成膜振動板402上に開口部Oをもつ構造が好ましい。これは、前述の第1絶縁保護膜406の圧力室領域を薄くしていることと同様の理由である。これにより、高効率かつ高信頼性の液滴吐出ヘッドとすることが可能になる。
この開口部Oの形成には、フォトリソグラフィ法とドライエッチングを用いることが、第1、第2絶縁保護膜406,407で電気機械変換素子400が保護されているため可能である。また、PAD部の面積については、50×50μm2以上が好ましく、100×300μm2以上がさらに好ましい。この値に満たない場合は、十分な分極処理ができなくなり、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生するため好ましくない。
[液滴吐出ヘッドの作製例]
次に、各実施例および比較例で使用する、上記電気機械変換素子400を備えた液滴吐出ヘッドの作製手順を、以下に具体的に説明する。
6インチシリコンウェハに熱酸化膜(膜厚1ミクロン)を形成し、第1電極403としての密着膜として、チタン膜(膜厚30nm)をスパッタ装置にて成膜した。その後に、RTA装置を用いて750℃にて熱酸化し、引き続き金属膜として白金膜(膜厚100nm)、酸化物膜としてSrRuO膜(膜厚60nm)をスパッタ成膜した。スパッタ成膜時の基板の加熱温度は550℃とし、この条件下で成膜を実施した。
次に、電気機械変換膜404として、Pb:Zr:Ti=114:53:47に調整された溶液を準備し、スピンコート法により膜を成膜した。具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.5モル/Lにした。このPZT前駆体溶液を用いて、スピンコートにより成膜し、成膜後、120℃乾燥→500℃熱分解を行った。3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度750℃)をRTA(急速熱処理)にて行った。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回(24層)実施し、約2μmのPZT膜厚を得た。
次に、第2電極405としての酸化物膜として、SrRuO膜(膜厚40nm)、金属膜としてPt膜(膜厚125nm)をスパッタ成膜した。その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ製)を用いて、図5に示すようなパターンを作製した。
次に、第1絶縁保護膜406として、ALD工法を用いてAL23膜を50nm成膜した。このとき原材料としてALについては、TMA(シグマアルドリッチ社)、Oについてはオゾンジェネレーターによって発生させたO3を交互に積層させることで、成膜を進めた。その後、図5に示すように、エッチングによりコンタクトホール部410を形成する。その後、第3電極408および第4電極409として、ALをスパッタ成膜し、エッチングによりパターニング形成した。また、第2絶縁保護膜407として、Si34をプラズマCVDにより500nm成膜し、電気機械変換素子400を作製した。このとき、6インチウェハ内30mm×10mm四方のエリアを25個配置した。
このように形成したアクチュエータ基板401に対して、共通液室(図1の加圧室301参照)の一部を形成する開口部を設けたサブフレーム(図示せず)を接着接合した。このサブフレームはシリコンウェハを活用し、熱酸化膜を形成した。なお、本実施例ではアルミニウムをスパッタリングで形成したが、金、白金、等の電極を活用することもできる。また、アクチュエータ基板401上の個別電極に対してAuスタッドバンプ(図示せず)を形成した。
この後、コロナ帯電処理により分極処理を行った。コロナ帯電処理には直径50μmのタングステンのワイヤーを用い、コロナワイヤに7kV、サブフレーム上のガード電極に2kvの電圧を印加し、30秒間処理を行った。そして、DrICをアクチュエータ基板401上に実装した。また、シリコンウェハの液室加工を行い、ノズル接合等ヘッド組立を行った。
<比較例>
上述のように作製した液体吐出ヘッドを用いて、比較例では「ならし電圧波形」なしに駆動して吐出を中断後、再度吐出を行ったところ、液滴速度(以下「Vj」と呼ぶ)が約4%低下した。その後、吐出を繰り返すに従い、図6(a)に示すように、Vjが正常に戻ってくることを確認した。そのときの分極特性(P−Eヒステリシス)を見ると、吐出終了時、吐出開始時、連続吐出時は図6(b)のようになっていることを確認した。「ならし電圧波形」とは、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、液滴を吐出させない電圧波形をいう。
以上、連続吐出を繰り返すことにより、Vjが安定化してくることは分かったが、空吐出すると液滴を消耗してしまうため、そのたびごとに実施することができない。
また、中断後の分極特性を安定化させる方法として、液滴を吐出させない微駆動波形を印加したときについても検証した。微駆動波形としては、電圧波形:1〜4vのパルス波形を印加した。しかしながら、吐出開始時のVj低下および分極特性の変化を抑えることができなかった。
<実施例1>
次に、上述の液滴吐出ヘッド用いた実施例1の液滴吐出制御について、図7を用いて説明する。実施例1では、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出後、1時間中断し、吐出を再開するに当たり、分極特性を安定化させる「ならし電圧波形」を印加した。なお、ならし電圧波形としては、空吐出を行わない条件として、図7に示すよう、電圧波形の電位差として0v−15vを印加し、引き込み側に変位する立下り時間を1μsとし、保持時間を1.5μsとした。そして、吐出側に変位する立上り時間を4μs、つまり立上り速度を通常吐出時よりも遅くすることで、空吐出しない条件としている。この波形を100kHzで10sec印加することで、分極特性が安定し、中断後のVj低下率は2%以下に低減できることを確認した。ここで、「引き込み側」とは、液滴を吐出させない圧力室方向をいい、電圧を「引き込み側に変位する」とは、液滴を圧力室側に引き込む電圧を印加することをいう。「吐出側」とは、液滴を吐出させる外部方向をいい、電圧「吐出側に変位する」とは、液滴を吐出させる電圧を印加することをいう。
なお、実施例1では、立上り時間を4μsで実施したが、本願がこれに限定されることはなく、吐出しない範囲で調整可能である。また、空吐出する条件でも分極特性を制御することは可能であるが、液滴を捨てる量が増えてしまうため、空吐出を行わない条件であることが望ましい。
<実施例2>
次に、液滴吐出ヘッド用いた実施例2の液滴吐出制御について、図8を用いて説明する。実施例2では、液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出後、1時間中断し、吐出を再開するに当たり、分極特性を安定化させる「ならし電圧波形」を印加した。ならし電圧波形としては、空吐出を行わない条件として、図8に示すように、電圧波形の電位差として0v−15vを印加し、引き込み側に変位する立下り時間を4μsとし、吐出側に変位する立上り時間を4μsとした三角波形を125kHzで10sec印加した。その結果、中断後のVj低下率は、2%以下に低減できることを確認した。
また、この電圧波形により、立下り速度と、立上り速度を通常吐出時の吐出波形よりも遅くすることで、空吐出しないとともに、「ならし電圧波形」の印加時のヘッド発熱を防止することもできる。また、三角波を印加することで、電気機械変換素子400に対して高電界を印加している時間を短くすることができ、ならし電圧波形による長期的な分極特性劣化を抑制することができる。
<実施例3>
次に、液滴吐出ヘッド用いた実施例3の液滴吐出制御について、図9を用いて説明する。実施例3では、液滴の吐出波形として、図9に示すように、電気機械変換素子400の分極方向に対して、逆バイアスから正方向の電圧を印加している。すなわち、電気機械変換素子400の分極方向に対して、負側抗電界を越えない範囲で負バイアスまで電圧波形を印加している。これにより、変位効率を向上することから、吐出特性を向上することができる。
この逆バイアスを印加する方法としては電気機械変換素子400の共通電極配線411側に所定の電圧、ここでは5vを印加し、個別電極配線412に対して2v〜17vの矩形波を印加する。これにより電気機械変換素子400に対しては、実質的に−3v〜12vの電圧を印加していることとなる。この吐出波形に対して、ならし電圧波形も、負側抗電界を越えない範囲で、負のバイアス電圧から、印加可能な正側の最大印加電圧を印加することで、駆動電圧範囲内において、分極特性を安定化させることができる。
ここで、逆バイアスまで電圧を印加する吐出波形、および、ならし電圧波形等において、必ず正側に電圧を振ってから電圧をOFF(終了)するようにする。実施例3としては、終了時に共通電極側を先に0vに落とし、その後個別電極側を0vとしている。これは逆バイアスを印加した後、そのまま電圧波形をOFFすると、電気機械変換素子400の分極方向に対して、逆方向の電荷が蓄積された状態を維持される。これにより、長期的には分極特性が変化してしまい、Vj変化を引き起こす要因となってしまうことが判明したためである。
<実施例4>
次に、液滴吐出ヘッド用いた実施例4の液滴吐出制御について、図10を用いて説明する。実施例4では、ならし電圧波形の印加に関して、電気機械変換素子400への吐出波形印加後の中断時間において、ヘッドごと、ノズル列ごと、または、ノズルごとに、ならし電圧波形を印加するか否かを判断するとともにその印加時間も制御する構成としている。つまり、中断時間が所定以上となると、ならし電圧波形を印加した後、吐出シーケンスに入ることを示す。また、中断時間が長くなると、ならし電圧波形の印加時間も長くなるように設定している。これは、中断時間が長くなると、電気機械変換素子400の分極特性変化が大きくなるためである。
以下、図10のフローチャートを用いて、実施例4の液滴吐出制御の手順を具体的に説明する。まず、ステップS1で、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出して印刷する。次に、液滴吐出を中断し、吐出を再開するに当たり、ステップS2で、中断時間が所定時間以上か否かを判断する。中断時間が所定時間未満であれば、ならし電圧波形の印加不要として、ステップS3で液滴吐出(印刷)を行う。これに対して、中断時間が所定時間以上であれば、次に、ステップS4で中断時間の判定を行い、同時にステップS5で、ならし電圧波形の条件が設定されたデータテーブルを参照して、中断時間に対応した、ならし電圧波形の印加時間を取得する。すなわち、中間時間が長いほど、ならし電圧波形の印加時間も長くする。この印加時間に従って、ステップS6でヘッドごと(または、ノズル列ごと、ノズルごと)に、電圧波形を印加する。次に、ステップS7では、空吐出が必要か否かを判断し、必要であればステップS8で空吐出を行い、ステップS9で液滴吐出(印刷)を行う。空吐出が不要であれば、空吐出を行うことなく、ステップS9で液滴吐出(印刷)を行う。
以上のような制御により、中断時間が短い場合には、ならし電圧波形印加によるメンテナンスシーケンスを短くすることができ、液滴吐出ヘッドの生産性を向上させることができる。
<実施例5>
次に、実施例5では、本願の液滴吐出ヘッドを備える画像形成装置の一例を、図11および図12を参照して説明する。図11は画像形成装置の主要機構部の構成を示す概略図であり、図12は同主要機構部の要部の概略平面図である。
[画像形成装置の構成]
図11、図12に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100は、シリアル型画像形成装置であり、図12に示すように、左右の側板(図示せず)に横架したガイド部材であるガイドロッド101とガイドレール102とで、キャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持している。この保持状態で、主走査モータ104で駆動プーリ106Aと従動プーリ106Bとの間に架け渡したタイミングベルト105を介して、キャリッジ103を矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ103には、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の記録液の液滴を吐出する本実施形態の液滴吐出ヘッド107k,107c,107m,107yで構成した記録ヘッド107を主走査方向に沿う方向に配置し、液滴吐出方向を下方に向けて装着している。なお、ここでは独立した液滴吐出ヘッド107k,107c,107m,107yを用いているが、本願がこれに限定されるものではない。例えば、各色の記録液の液滴を吐出する複数のノズル列を有する1又は複数のヘッドを用いる構成とすることもできる。また、色の数および配列順序はこれに限るものではない。また、キャリッジ103には、記録ヘッド107に各色の液滴を供給するための各色のサブタンク108を搭載している。このサブタンク108には、図11に示すように、記録液供給チューブ109を介して、メインタンク(インクカートリッジ、図示せず)から記録液が補充供給される。
一方、画像形成装置100の本体は、図11に示すように、被記録媒体(以下「用紙」と呼ぶ)112を積載した用紙積載部(圧板)111を備える給紙カセット110と、この給紙カセット110から用紙112を給紙するための給紙部とを備える。この給紙部は、用紙積載部111から用紙112を1枚ずつ分離給送する半月コロ(以下、「給紙ローラ」と呼ぶ)113と、この給紙ローラ113に対向し摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド114と、を備えている。この分離パッド114は、付勢手段(図示せず)により、給紙ローラ113側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙112を、記録ヘッド107の下方側で搬送するための搬送部を備えている。この搬送部として、搬送ベルト121と、カウンタローラ122と搬送ガイド123と、加圧コロ125Aおよび先端加圧コロ125Bと、帯電ローラ126と、を備えている。
搬送ベルト121は、給紙部から給紙された用紙112を静電吸着して搬送するためのものである。カウンタローラ122は、給紙部からガイド115を介して送られる用紙112を搬送ベルト121との間で挟んで搬送するためのものである。搬送ガイド123は、カウンタローラ122と搬送ベルト121とで略鉛直上方に送られる用紙112を、略90°方向転換させて搬送ベルト121上に倣わせるためのものである。加圧コロ125Aおよび先端加圧コロ125Bは、押さえ部材124で搬送ベルト121側に付勢されている。帯電ローラ126は、搬送ベルト121表面を帯電させるための帯電手段である。
ここで、搬送ベルト121は、無端状ベルトであり、搬送ローラ127とテンションローラ128との間に掛け渡されている。搬送ローラ127は、副走査モータ131からタイミングベルト132およびタイミングローラ133を介して回転されることで、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成されている。なお、搬送ベルト121の裏面側には、記録ヘッド107による画像形成領域に対応してガイド部材129を配置している。帯電ローラ126は、搬送ベルト121の表層に接触し、搬送ベルト121の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
画像形成装置100は、さらに、記録ヘッド107で記録された用紙112を排紙するための排紙部として、搬送ベルト121から用紙112を分離するための分離部としての排紙ローラ152および排紙コロ153と、排紙される用紙112をストックする排紙トレイ154と、を備えている。また、画像形成装置100の背部には、両面給紙ユニット155が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット155は、搬送ベルト121の逆方向回転で戻される用紙112を取り込んで反転させ、再度カウンタローラ122と搬送ベルト121との間に給紙する。
画像形成装置100は、さらに、図12に示すように、キャリッジ103の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド107のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構156を配置している。この維持回復機構156は、記録ヘッド107の各ノズル面をキャッピングするための複数のキャップ157と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード158と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け159と、等を備えている。
以下、以上のように構成した画像形成装置100においては、給紙部から用紙112が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙112はガイド115で案内される。その後、用紙112は搬送ベルト121とカウンタローラ122との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド123で案内されて先端加圧コロ125Bで搬送ベルト121に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、制御回路(図示せず)によって、ACバイアス供給部(図示せず)から帯電ローラ126に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加される。この電圧は、搬送ベルト121が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラスとマイナスとが交互に帯電した搬送ベルト121上に用紙112が給送されると、用紙112が搬送ベルト121に静電力で吸着され、搬送ベルト121の周回移動によって用紙112が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ103を往路および復路方向に移動させながら、画像信号に応じて記録ヘッド107を駆動することにより、停止している用紙112に液滴を吐出して1行分を記録し、用紙112を所定量搬送後、次の行の記録を行う。そして、記録終了信号または用紙112の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙112を排紙トレイ154に排紙する。
また、両面印刷の場合には、用紙112の表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト121を逆回転させることで、記録済みの用紙112を両面給紙ユニット155内に送り込み、用紙112を反転させる(裏面が印刷面となる状態にする)。この反転した用紙112を、再度カウンタローラ122と搬送ベルト121との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベルト121上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ154に排紙する。
また、印字(記録)待機中には、キャリッジ103は維持回復機構156側に移動されて、キャップ157で記録ヘッド107のノズル面がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことにより、液滴の乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ157で記録ヘッド107をキャッピングした状態で、ノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という)、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。この回復動作によって、記録ヘッド107のノズル面に付着した液滴を清掃除去するためにワイパーブレード158でワイピングを行なう。また、記録開始前や、記録途中などに記録と関係しない液滴を吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド107の安定した吐出性能を維持する。また、印字再開の際には、上記で説明したような電圧制御方法を用いて、液滴吐出ヘッド107k,107c,107m,107yから液滴吐出することにより、無駄な空吐出等を抑制するとともに、良好な吐出特性を維持した状態で印字を続行することができる。
以上のように、本願に係る実施例5の画像形成装置100では、本願に係る液体吐出ヘッドを備え、本願に係る電圧制御方法を適用しているため、液滴吐出の中断前後における吐出特性を安定化させることが可能となり、優れた印字を続行することができる。また、記録液の無駄な消費を抑えてコスト性も向上させることができる。なお、実施例5では、本願をプリンタ構成の画像形成装置に適用した例で説明したが、これに限るものではなく、例えば、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これ等の複合機等の画像形成装置に適用することができる。また、記録液以外の液体である定着処理液などを用いる画像形成装置にも適用することができる。
以上説明した実施例1〜5は一例であって、本願がこれらの実施例に限定されるものではない。液滴吐出の中断前後における吐出特性を安定化させることが可能な構成であれば、本願の課題を解決できるものである。また、上記各実施例では、本願に係る液滴吐出ヘッドとして、記録液を吐出する液滴吐出ヘッドを示したが、液滴吐出ヘッドとしてはこれに限定されることはない。記録液以外の液体、例えばパターニング用の液体レジストを吐出する液滴吐出ヘッド、遺伝子分析試料を吐出する液滴吐出ヘッド等に適用してもよい。
100 画像形成装置
107,107k,107c,107m,107y 液滴吐出ヘッド
301 加圧室(液室)
400 電気機械変換素子
401 アクチュエータ基板
402 成膜振動板(振動板)
特開2003−341048号公報 特開2007−136989号公報 特許第4218083号公報 特許第4857575号公報 特開2012−214018号公報 特開2012−196881号公報

Claims (10)

  1. 液滴を吐出するノズルと、
    前記ノズルに連通する液室と、
    前記液室上に設けられた振動板と、
    前記振動板上に設けられ、該振動板を振動させることにより、前記液室内に圧力変動を発生させる電気機械変換素子と、を備え、
    前記電気機械変換素子に、正側の抗電界を越える電圧波形を印加して前記ノズルから前記液滴を吐出するとともに、前記液滴の吐出開始前に、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、前記液滴を吐出させない電圧波形を、前記電気機械変換素子に印加することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記電気機械変換素子の分極方向に対して、負側抗電界を越えない範囲で負バイアスまで電圧波形を印加することで、前記ノズルから前記液滴を吐出するとともに、前記液滴を吐出させない前記電圧波形の印加時にも、負バイアスまで印加することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記液滴を吐出させない前記電圧波形として、前記電気機械変換素子の負側抗電界を越えない範囲の負バイアスから印加可能な正側の最大電源電圧までの範囲で前記電気機械変換素子に電圧を印加することを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記液滴を吐出させない前記電圧波形の前記液滴を吐出させる側に変位する前記電圧の立上り速度を、前記液滴の吐出時の吐出波形の前記電圧の立上り速度よりも遅くする電圧波形とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
  5. 前記液滴を吐出させない前記電圧波形の前記電圧の立上り速度と立下り速度とを、前記液滴の吐出時の吐出波形の前記電圧の立上り速度と立下がり速度よりも、各々遅くする電圧波形を印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
  6. 前記液滴を吐出させない前記電圧波形として、三角波形を印加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
  7. 振動板を振動させることにより、ノズルに連通する液室に圧力変動を発生させる電気機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドの電圧制御方法であって、
    前記液滴吐出ヘッドの電気機械変換素子に、正側の抗電界を越える電圧波形を印加して液滴を吐出させる工程と、
    吐出を開始するときに、吐出終了後から吐出開始までの間に中断時間があった場合に、該吐出前に、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、前記液滴を吐出させない電圧波形を、前記電気機械変換素子に印加する工程と、を有することを特徴とする電圧制御方法。
  8. 前記液滴吐出ヘッドからの前記液滴の吐出終了から吐出開始までの前記中断時間に対応して、前記液滴を吐出させない電圧波形を印加する時間を変更することを特徴とする請求項7に記載の電圧制御方法。
  9. 前記電気機械変換素子に対して、逆バイアスまで電圧を印加して、前記液滴を吐出し、電圧印加終了時には、前記電気機械変換素子の分極方向に対して、正側バイアスを印加した後、前記電気機械変換素子への電圧印加を終了することを特徴とする請求項7または8に記載の電圧制御方法。
  10. 請求項1〜6の何れか一項に記載の液滴吐出ヘッドを有し、請求項7〜9に記載の電圧制御方法を用いて、前記液滴吐出ヘッドから吐出した液滴を被着媒体上に着弾させることを特徴とする画像形成装置。
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