JP2014172314A - 液滴吐出ヘッド、電圧制御方法、および、画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】液滴吐出ヘッドに用いる電気機械変換素子400を、アクチュエータ基板401、成膜振動板402、第1電極403、電気機械変換膜404、第2電極405、第1絶縁保護膜406、第3電極408、第4電極409、および、第2絶縁保護膜407等を有して構成する。液滴の吐出開始前に、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、液滴を吐出させない電圧波形を、電気機械変換素子400に印加する。
【選択図】図1
Description
図1に示すように、液滴吐出ヘッド300は、液滴を吐出するノズル302を有するノズル板303と、ノズル302が連通する加圧室(インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも呼ばれる)301と、この加圧室301内の液滴を加圧する電気機械変換素子としての圧電素子309と、加圧室301が設けられた圧力室基板304と、加圧室301および圧電素子309間に設けられた振動板(下地)305と、圧電素子309の駆動を制御する駆動回路部材(図示せず)と、等を備えて構成されている。
まず、液滴吐出ヘッド300に用いられる圧電素子309として、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものについて説明する。このたわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層を、リソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室(加圧室301)に対して、独立するように圧電素子を形成したものが知られている。
図4に示すように、本願に係る実施例の電気機械変換素子400は、アクチュエータ基板401、成膜振動板402、第1電極403、電気機械変換膜404、および、第2電極405を備えて構成されている。本願に係る実施例の電気機械変換素子400は、さらに、図5に示すように、保護膜としての第1絶縁保護膜406、第3電極408と第4電極409(引き出し配線)、および、第2絶縁保護膜407等を有する素子構成を有している。この電気機械変換素子400の駆動は、第1電極403および第2電極405が、それぞれ配線を介して接続された駆動IC等の駆動手段(図示せず)によって行われる。
以下に、電気機械変換素子400の各構成の材料および工法について具体的に説明する。
アクチュエータ基板401の材料としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100μm〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されている。本実施形態では、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図1に示すような加圧室301を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していく。この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。
図1に示すように、PZT膜307によって発生した力を受けて、振動板(下地)305が変形変位して、加圧室301の液滴を吐出させる。そのため、図4に示す本願の実施例の成膜振動板402としては、所定の強度を有したものであることが好ましい。成膜振動板402の材料としては、ケイ素Si、二酸化ケイ素SiO2、窒化ケイ素Si3N4が挙げられ、これらを用いて振動板305をCVD法(Chemical Vapor Deposition)により作製したものが挙げられる。
第1電極403としては、金属または金属と酸化物とから成ることが好ましい。ここで、どちらも成膜振動板402と第1電極403用の金属膜との間に、密着層(図示せず)を介在させて、双方の剥がれ等を抑制するように工夫している。以下に、密着層含めて第1電極403の金属電極膜、酸化物電極膜の詳細について記載する。
密着膜としてチタンTiをスパッタ成膜後、RTA(rapid thermal annealing)装置を用いて、650℃〜800℃、1分〜30分、酸素O2雰囲気でチタン膜を熱酸化して、チタン膜を酸化チタン膜(TiO2膜)にする。酸化チタン膜を作成するには、反応性スパッタでもよいが、チタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とするからである。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方が、酸化チタン膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTA装置による酸化の方が、良好な結晶を形成するために有利になる。またTi以外の材料としては、タンタルTa、イリジウムIr、ルテニウムRu等の材料も好適に挙げられる。
金属電極膜の金属材料としては、従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金Ptが用いられているが、鉛Pbに対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムIrや白金−ロジウム合金などの白金族元素や、これら合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地である成膜振動板402(特にSiO2)との密着性が悪いために、先の密着層を先に積層することが好ましい。
酸化物電極膜の材料としては、ストロンチウム・ルテニウム酸化物SrRuO3を用いることが好ましい。左記以外にも、Srx(A)(1−x)Ruy(1−y)、A=Ba,Ca、B=Co,Ni、x,y=0〜0.5で記述されるような材料も好適に挙げられる。成膜方法についてはスパッタ法により作製される。スパッタ条件によって、SrRuO3薄膜の膜質が変化する。そのため、特に結晶配向性を重視し、第1電極403のプラチナPt(111)にならって、SrRuO3膜(SRO成膜とも呼ぶ)についても(111)配向させるためには、成膜温度については500℃以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。
電気機械変換膜404の材料としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbTiO3)とチタン酸(PbTiO3)との固溶体であり、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成は、PbZrO3とPbTiO3との比率が53:47の割合である。化学式で示すと、Pb(Zr0.53,Ti0.47)O3、一般的にはPZT(53/47)と示される。
第2電極405としては、金属または酸化物と金属とから成ることが好ましい。以下に、酸化物電極膜、金属電極膜の詳細について記載する。
酸化物電極膜の材料等については、第1電極403で使用した酸化物電極膜で記載したとおりである。SRO膜の膜厚としては、20nm〜80nmが好ましく、40nm〜60nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や変位劣化特性については十分な特性が得られず、この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が悪く、リークしやすくなるため好ましくない。
金属電極膜の材料等については、第1電極403で使用した金属電極膜で記載したとおりである。膜厚としては30nm〜200nmが好ましく、50nm〜120nmがさらに好ましい。この範囲より膜厚が薄い場合、個別電極配線412として十分な電流を供給することができなくなり、液滴吐出をする際に不具合が発生するため好ましくない。さらに、この範囲より膜厚が厚い場合、白金族元素の高価な材料を使用するとコストアップとなる。この理由や、白金を材料とし、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、絶縁保護膜を介して第6電極(図示せず)を作製する際に、膜剥がれ等のプロセス不具合が発生しやすくなるため好ましくない。
第1絶縁保護膜406は、成膜・エッチングの工程による電気機械変換素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、緻密な無機材料とする必要がある。有機材料では十分な保護性能を得るためには膜厚を厚くする必要があるため、好ましくない。第1絶縁保護膜406を厚い膜とした場合、成膜振動板402の振動変位を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低い液滴吐出ヘッドになってしまうことが要因である。
第3電極408、第4電極409の材料としては、Ag(銀)合金、銅Cu、アルミニウムAl、金Au、白金Pt、イリジウムIrのいずれかから成る金属電極材料であることが好ましい。第3電極408、第4電極409の作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
第2絶縁保護膜407は、個別電極配線412や共通電極配線411の保護層の機能を有するパシベーション層である。図5に示すように、個別電極配線412の引き出し部と、図示しないが共通電極配線411の引き出し部とを除き、個別電極配線412と共通電極配線411との上面を被覆する。これにより、電極材料に安価なAlまたはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高い液滴吐出ヘッドとすることができる。
次に、各実施例および比較例で使用する、上記電気機械変換素子400を備えた液滴吐出ヘッドの作製手順を、以下に具体的に説明する。
上述のように作製した液体吐出ヘッドを用いて、比較例では「ならし電圧波形」なしに駆動して吐出を中断後、再度吐出を行ったところ、液滴速度(以下「Vj」と呼ぶ)が約4%低下した。その後、吐出を繰り返すに従い、図6(a)に示すように、Vjが正常に戻ってくることを確認した。そのときの分極特性(P−Eヒステリシス)を見ると、吐出終了時、吐出開始時、連続吐出時は図6(b)のようになっていることを確認した。「ならし電圧波形」とは、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、液滴を吐出させない電圧波形をいう。
次に、上述の液滴吐出ヘッド用いた実施例1の液滴吐出制御について、図7を用いて説明する。実施例1では、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出後、1時間中断し、吐出を再開するに当たり、分極特性を安定化させる「ならし電圧波形」を印加した。なお、ならし電圧波形としては、空吐出を行わない条件として、図7に示すよう、電圧波形の電位差として0v−15vを印加し、引き込み側に変位する立下り時間を1μsとし、保持時間を1.5μsとした。そして、吐出側に変位する立上り時間を4μs、つまり立上り速度を通常吐出時よりも遅くすることで、空吐出しない条件としている。この波形を100kHzで10sec印加することで、分極特性が安定し、中断後のVj低下率は2%以下に低減できることを確認した。ここで、「引き込み側」とは、液滴を吐出させない圧力室方向をいい、電圧を「引き込み側に変位する」とは、液滴を圧力室側に引き込む電圧を印加することをいう。「吐出側」とは、液滴を吐出させる外部方向をいい、電圧「吐出側に変位する」とは、液滴を吐出させる電圧を印加することをいう。
次に、液滴吐出ヘッド用いた実施例2の液滴吐出制御について、図8を用いて説明する。実施例2では、液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出後、1時間中断し、吐出を再開するに当たり、分極特性を安定化させる「ならし電圧波形」を印加した。ならし電圧波形としては、空吐出を行わない条件として、図8に示すように、電圧波形の電位差として0v−15vを印加し、引き込み側に変位する立下り時間を4μsとし、吐出側に変位する立上り時間を4μsとした三角波形を125kHzで10sec印加した。その結果、中断後のVj低下率は、2%以下に低減できることを確認した。
次に、液滴吐出ヘッド用いた実施例3の液滴吐出制御について、図9を用いて説明する。実施例3では、液滴の吐出波形として、図9に示すように、電気機械変換素子400の分極方向に対して、逆バイアスから正方向の電圧を印加している。すなわち、電気機械変換素子400の分極方向に対して、負側抗電界を越えない範囲で負バイアスまで電圧波形を印加している。これにより、変位効率を向上することから、吐出特性を向上することができる。
次に、液滴吐出ヘッド用いた実施例4の液滴吐出制御について、図10を用いて説明する。実施例4では、ならし電圧波形の印加に関して、電気機械変換素子400への吐出波形印加後の中断時間において、ヘッドごと、ノズル列ごと、または、ノズルごとに、ならし電圧波形を印加するか否かを判断するとともにその印加時間も制御する構成としている。つまり、中断時間が所定以上となると、ならし電圧波形を印加した後、吐出シーケンスに入ることを示す。また、中断時間が長くなると、ならし電圧波形の印加時間も長くなるように設定している。これは、中断時間が長くなると、電気機械変換素子400の分極特性変化が大きくなるためである。
次に、実施例5では、本願の液滴吐出ヘッドを備える画像形成装置の一例を、図11および図12を参照して説明する。図11は画像形成装置の主要機構部の構成を示す概略図であり、図12は同主要機構部の要部の概略平面図である。
図11、図12に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100は、シリアル型画像形成装置であり、図12に示すように、左右の側板(図示せず)に横架したガイド部材であるガイドロッド101とガイドレール102とで、キャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持している。この保持状態で、主走査モータ104で駆動プーリ106Aと従動プーリ106Bとの間に架け渡したタイミングベルト105を介して、キャリッジ103を矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
以下、以上のように構成した画像形成装置100においては、給紙部から用紙112が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙112はガイド115で案内される。その後、用紙112は搬送ベルト121とカウンタローラ122との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド123で案内されて先端加圧コロ125Bで搬送ベルト121に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
107,107k,107c,107m,107y 液滴吐出ヘッド
301 加圧室(液室)
400 電気機械変換素子
401 アクチュエータ基板
402 成膜振動板(振動板)
Claims (10)
- 液滴を吐出するノズルと、
前記ノズルに連通する液室と、
前記液室上に設けられた振動板と、
前記振動板上に設けられ、該振動板を振動させることにより、前記液室内に圧力変動を発生させる電気機械変換素子と、を備え、
前記電気機械変換素子に、正側の抗電界を越える電圧波形を印加して前記ノズルから前記液滴を吐出するとともに、前記液滴の吐出開始前に、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、前記液滴を吐出させない電圧波形を、前記電気機械変換素子に印加することを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 前記電気機械変換素子の分極方向に対して、負側抗電界を越えない範囲で負バイアスまで電圧波形を印加することで、前記ノズルから前記液滴を吐出するとともに、前記液滴を吐出させない前記電圧波形の印加時にも、負バイアスまで印加することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記液滴を吐出させない前記電圧波形として、前記電気機械変換素子の負側抗電界を越えない範囲の負バイアスから印加可能な正側の最大電源電圧までの範囲で前記電気機械変換素子に電圧を印加することを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記液滴を吐出させない前記電圧波形の前記液滴を吐出させる側に変位する前記電圧の立上り速度を、前記液滴の吐出時の吐出波形の前記電圧の立上り速度よりも遅くする電圧波形とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記液滴を吐出させない前記電圧波形の前記電圧の立上り速度と立下り速度とを、前記液滴の吐出時の吐出波形の前記電圧の立上り速度と立下がり速度よりも、各々遅くする電圧波形を印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記液滴を吐出させない前記電圧波形として、三角波形を印加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
- 振動板を振動させることにより、ノズルに連通する液室に圧力変動を発生させる電気機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドの電圧制御方法であって、
前記液滴吐出ヘッドの電気機械変換素子に、正側の抗電界を越える電圧波形を印加して液滴を吐出させる工程と、
吐出を開始するときに、吐出終了後から吐出開始までの間に中断時間があった場合に、該吐出前に、正側の抗電界を上回る部分と下回る部分とを有し、前記液滴を吐出させない電圧波形を、前記電気機械変換素子に印加する工程と、を有することを特徴とする電圧制御方法。 - 前記液滴吐出ヘッドからの前記液滴の吐出終了から吐出開始までの前記中断時間に対応して、前記液滴を吐出させない電圧波形を印加する時間を変更することを特徴とする請求項7に記載の電圧制御方法。
- 前記電気機械変換素子に対して、逆バイアスまで電圧を印加して、前記液滴を吐出し、電圧印加終了時には、前記電気機械変換素子の分極方向に対して、正側バイアスを印加した後、前記電気機械変換素子への電圧印加を終了することを特徴とする請求項7または8に記載の電圧制御方法。
- 請求項1〜6の何れか一項に記載の液滴吐出ヘッドを有し、請求項7〜9に記載の電圧制御方法を用いて、前記液滴吐出ヘッドから吐出した液滴を被着媒体上に着弾させることを特徴とする画像形成装置。
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