JP2014171801A - 表皮一体発泡成形品及びその製造方法 - Google Patents

表皮一体発泡成形品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】部品点数が少なく、製造が容易な、縫製レスの車両用ヘッドレスト、アームレスト、シートバック、シートクッション等の表皮一体発泡成形品を実現する。
【解決手段】表皮一体発泡成形品(例えば、ヘッドレスト)1は、表皮10と、ステー30と、パッド材40とを有している。表皮10は、裏面側に発泡合成樹脂の含浸が可能な層を有する表皮材11が、加熱及び加圧されて立体的な形状に成形され、開口部18を有し且つその開口部18における開口端の周縁が内側方向に折り曲げられた折り曲げ部12a,16a同士が接触してその開口部18が閉じられたものである。ステー30は、一部が表皮10内に埋設されている。パッド材40は、折り曲げ部12a,16a同士の接触箇所18a,18b,18cを含む表皮10内に充填された発泡合成樹脂が表皮10と一体発泡されて形成されたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、表皮一体発泡成形品及びその製造方法に係り、特に、立体成形された無縫製(以下「縫製レス」という。)の表皮内に、発泡合成樹脂を注入して、パッド材を一体発泡させて形成される車両用のヘッドレスト、アームレスト、シートバック、シートクッション等の表皮一体発泡成形品及びその製造方法に関するものである。
例えば、自動車等の車両内に設置される車両用のシートは、乗員が着座するシートクッション、乗員が着座した際の背もたれとなるシートバック、着座した際の頭たれとなるヘッドレスト、及び、着座した際の腕休めとなるアームレスト等を備えている。
従来、特許文献1〜3等に記載されているように、車両用ヘッドレスト、アームレスト、シートバック、シートクッション等の表皮一体発泡成形品は、例えば、次のようにして製造される。
自動裁断機(CAM)又はプレス裁断機を用いて、表皮材となる生地を裁断する。裁断された複数枚の表皮材における裏側の端部を重ね合わせて縫製し、袋状の表皮を形成する。後工程の発泡合成樹脂を表皮内に注入して発泡させる際に、端部周縁の縫い目から発泡合成樹脂が漏れるのを防ぐために、その端部周縁の縫い目箇所にテープを貼る。手で表皮の表返し作業を行う。表皮内にステー等のフレームを挿入する。フレームが挿入された表皮を発泡成形型に装着する。発泡合成樹脂を表皮内に注入し、その発泡合成樹脂を発泡させてパッド材を形成する。これにより、表皮内にパッド材が充填された車両用ヘッドレスト、アームレスト、シートバック、シートクッション等の表皮一体発泡成形品が完成する。
実用新案登録第2515242号公報 特開2006−6522号公報 特開2006−75408号公報
しかしながら、従来の表皮一体発泡成形品及びその製造方法では、手作業で縫製した袋状の表皮を使用しているので、縫製の手間が掛かる、手作業の縫製のために製品にばらつきや不良品が生じる、発泡合成樹脂の漏れ防止のために縫い目箇所にテープを貼らなければならないので部品点数が多くなると共に作業工程が増える、等の課題があった。
本発明の表皮一体発泡成形品は、表皮と、パッド材とを有している。
前記表皮は、裏面側に発泡合成樹脂の含浸が可能な層を有する表皮材が、加熱及び加圧されて立体的な形状に成形され、開口部を有し且つ前記開口部における開口端の周縁が内側方向に折り曲げられた折り曲げ部同士が接触して前記開口部が閉じられるものである。更に、前記パッド材は、前記折り曲げ部同士の接触箇所を含む前記表皮内に充填された前記発泡合成樹脂が前記表皮と一体発泡されて形成されたものである。
なお、前記表皮一体発泡成形品は、一部又は全部が前記表皮内の前記パッド材に埋設されたフレームを有する構成であってもよい。
本発明の表皮一体発泡成形品の製造方法は、表皮形成工程と、発泡成形型装着工程と、パッド材形成工程とを有している。
前記表皮形成工程では、加熱及び加圧成形により所定の形状に保持され、裏面側に発泡合成樹脂の含浸が可能な層を有する表皮材を、加熱及び加圧成形して、開口部を有し且つ前記開口部における開口端の周縁が内側方向に折り曲げられた折り曲げ部を有する立体的な表皮を一体形成する。前記発泡成形型装着工程では、前記表皮を発泡成形型に装着すると共に、前記表皮における前記折り曲げ部同士を接触させて前記開口部を閉じる。更に、前記パッド材形成工程では、前記折り曲げ部同士の接触箇所を含む前記表皮内に前記発泡合成樹脂を充填し、前記発泡合成樹脂を前記表皮と一体発泡させてパッド材を形成する。
なお、前記発泡成形型装着工程では、更に、フレームの一部又は全部を前記表皮内に配置して前記発泡成形型に装着するようにしてもよい。
前記表皮一体発泡成形品は、例えば、車両用のヘッドレスト、アームレスト、シートバック、シートクッション等である。
本発明の表皮一体発泡成形品及びその製造方法によれば、次の(i)〜(iii)のような効果がある。
(i) 表皮材の縫製をしないので、従来のような縫製の手間が省け、更に、製品のばらつきや不良品の発生を抑制して高精度の表皮一体発泡成形品を提供できる。
(ii) 表皮の接触箇所としての接合箇所は、発泡合成樹脂の対向する圧力により挟持される。そのため、従来のような発泡合成樹脂の漏れ防止のために縫い目箇所にテープ等を貼るといった煩雑な作業を省略でき、製造工程の簡略化、及び部品点数の削減化により、製品コストの低減が可能になる。
(iii) 表皮材を加熱及び加圧成形して表皮を立体形成しているので、その表皮に装飾用のキャラクタライン等を容易に形成することができる。
図1(a)〜(c)は本発明における実施例1の表皮一体発泡成形品(例えば、車両用のヘッドレスト)を示す概略の構成図である。 図2−1(1)〜(5)は図1中の表皮10の表皮形成工程例を示す概略の製造工程図である。 図2−2(6)は図1中の表皮10を示す概略の斜視図である。 図3−1(1)、(2)は図1のヘッドレスト1の製造例を示す概略の工程図である。 図3−2(3)、(4)は図1のヘッドレスト1の製造例を示す概略の工程図である。 図3−3(5)は図1のヘッドレスト1の製造例を示す概略の工程図である。 図4は本発明における実施例2の表皮一体発泡成形品(例えば、車両用のシートバック)を示す概略の斜視図である。 図5(1)、(2)は図4のシートバックの製造例を示す概略の工程図である。
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
(ヘッドレストの構成)
図1(a)〜(c)は、本発明における実施例1の表皮一体発泡成形品(例えば、車両用のヘッドレスト)を示す概略の構成図であり、同図(a)はヘッドレストの全体の斜視図、同図(b)は同図(a)中のI1−I1断面拡大図、及び同図(c)は表皮材の拡大断面図である。
この車両用のヘッドレスト1は、立体的に成形された縫製レスの表皮10と、この表皮10内に一部分が包み込まれたフレーム(例えば、略コの字状のステー)30と、表皮10内に形成されたパッド材40とにより構成されている。
表皮10は、加熱及び加圧されて立体的な形状に保持される表皮材11により形成されている。表皮材11は、表面側に設けられた表皮層11aと、この表皮層11aの裏面側に接着された弾性層11bと、この弾性層11bの裏面側に接着された不織布層11cとの3層構造であり、例えば、厚みが数mm以上10mm以下である。
表皮層11aは、織物、編物、不織布あるいは合成革のいずれか1つの生地、又は、天然皮革や、樹脂フィルム等により構成され、接着剤や熱融着等により弾性層11b上に接着されている。表皮層11aは、弾性層11bの表面を保護し、更に、装飾用のキャラクタライン等が形成されて装飾性を向上させる機能等を有している。弾性層11bは、ウレタンフォーム等で構成され、表皮材11に弾力性を持たせる機能を有している。不織布層11cは、発泡合成樹脂の含浸が可能な天然繊維、化学繊維等の繊維からなる不織布で構成されている。不織布を構成する繊維として、例えば、天然繊維の場合には、綿、ウール、麻等を用いることができ、化学繊維の場合には、レーヨン等の再生繊維や、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル等の合成繊維を用いることができる。又、不織布層11cを構成する繊維は、短繊維でもよいし、スパンボンド等の長繊維でもよいし、あるいは、短繊維及び長繊維を混合したものでもよい。
不織布層11cは、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の熱可塑性樹脂又は熱可塑性繊維を含有することが好ましい。不織布層11cに含有された熱可塑性樹脂又は熱可塑性繊維は、金型や樹脂型等の型を用いたプレス加工により加熱及び加圧成形を行う時に、加熱により溶融して不織布層11cが柔らかくなり、型に対する形状追従性が向上し、複雑な形状を有する型であっても不織布層11cを所望の形状に成形することができる。更に、冷却後には、溶融していた熱可塑性樹脂又は熱可塑性繊維が固化することで、加熱及び加圧形成後に得られる表皮材11に高い形状保持性を与えることができる。又、不織布層11cに熱可塑性樹脂又は熱可塑性繊維を含有させることで、加熱処理により、不織布層11cと弾性層11bとを融着することもできる。
表皮10は、乗員の頭部が当接する略方形の前部12と、この前部12の上端から上面側に延設された上部13と、この上部13の背面側に延設された略方形の後部14と、この後部14の左右両側に延設された側部15,16と、前部12の下端から底面側に延設された下部17−1と、後部14の下端から底面側に延設されて下部17−1と接合される下部17−2とにより構成され、1枚の表皮材11が加熱及び加圧成形されて一体的に形成されている。
両側部15,16の前縁側と下部17−2の前縁側とにより、表皮10の開口部18が形成されている。開口部18は、前部12の両側縁及び下部17−1の底面側縁により、前面側の接触箇所としての接合箇所18a,18bと底面側の接触箇所としての接合箇所18cとにおいて、封止されている。開口部18における開口端の周縁は、内側に折り曲げられて折り曲げ部15a,16a,17−2aが形成されている。同様に、前部12の両側縁及び下部17−1の底面側縁は、内側に折り曲げられて折り曲げ部12a,17−1aが形成されている。折り曲げ部12a,15a,16a,17−1a,17−2aは、例えば、幅が5mm〜25mm程度で、厚みが他の平坦箇所等よりも薄くなっている。
開口部18における開口端の周縁の折り曲げ部15a,16a,17−2aと、前部12の両側縁及び下部17−1の底面側縁の折り曲げ部12a,17−1aとは、接触箇所としての接合箇所18a,18b,18cにおいて、相互に接合されて、開口部18が封止されている。底面側の接合箇所18cには、ステー30を挿通するための一対の挿通孔19,20と、表皮10内に発泡合成樹脂を注入するための注入孔21とが、形成されている。例えば、各挿通孔19,20の直径は十数cm、注入孔21の直径は5mm〜10mm程度である。
略コの字状のステー30は、略平行に配置された一対の支柱部31,32と、この支柱部31,32の一端を連結する基枠部とにより構成され、金属棒、金属管等で形成されている。ステー30における支柱部31,32は、挿通孔19,20を貫通し、基枠部がパッド材40内に埋設されている。
パッド材40は、表皮10内に充填した発泡ポリウレタン等の発泡合成樹脂を樹脂発泡させて形成されている。接合箇所18a,18b,18cにおいて、開口部18における開口端の周縁の折り曲げ部15a,16a,17−2aと、前部12の両側縁及び下部17−1の底面側縁の折り曲げ部12a,17−1aとは、樹脂発泡時の膨張力により生じる対向する圧力F1,F2によって、強固に圧接されて挟持されている。
以上のような構成のヘッドレスト1は、車両の衝撃時において、乗員の頭部が前部12に当接してその衝撃力が吸収されるようになっている。
(表皮の製造例)
図2−1(1)〜(5)、及び図2−2(6)は、図1中の表皮10の表皮形成工程例を示す概略の製造工程図である。
図1中の表皮10は、プレスを用いた加熱及び加圧成形により、例えば、以下の表皮形成工程(A)〜(F)にて製造される。
(A) 図2−1(1)の工程
ロール50に巻かれた帯状の図1(c)の表皮材11の繰り出し方向には、ヒータ51とプレス52が設置されている。プレス52は、表皮形成型としての上型52a及び下型52bを備え、上型52aと下型52bとが上下動して離接可能な構造になっている。上型52aは、上部52a−1と、この下方に配置された複数の側部52a−2,52a−3とが、離接可能な構造になっている。
帯状の表皮材11は、ロール50から繰り出されてヒータ51にて表側及び裏側から加熱され、軟化する。軟化した表皮材11は、プレス52において上下に離間した上型52aと下型52bとの間へ送られる。
(B) 図2−1(2)の工程
プレス52の下型52bが上昇して表皮材11の裏側に接触する。この間も次のショットの表皮材11が、ヒータ51にて加熱されている。
(C) 図2−1(3)の工程
プレス52において、表皮10の特性により、ブロウ及び真空引きが行われる。
(D) 図2−1(4)の工程
プレス52において、上型52aの上部52a−1と側部52a−2,52a−3とが離間し、上部52a−1が下降して表皮材11が下型52bの上面に圧接されると共に、側部52a−2,52a−3が横方向に移動してその表皮材11が下型52bの側面に圧接される。これにより、表皮材11が上下左右から加圧成形され、図1(a)に示す表皮材11の前部12、上部13、後部14、側部15,16、及び下部17−1,17−2が形成される。
(E) 図2−1(5)の工程
プレス52の上型52aと下型52bとが上下に離間し、所定の形状に一体成形された表皮材11のショットがプレス52から排出されると共に、次の表皮材11が上型52aと下型52bとの間に送られてくる。成形された表皮材11は、プレス52から排出する前に又は排出した後に、強制冷却あるいは自然冷却により冷却されて固化され、所定の形状に保持される。
(F) 図2−2(6)の工程
図示しない裁断工程にて、表皮材11が1ショット毎に裁断され、立体的な表皮10が完成する。
表皮10は、開放された前部12と、この前部12に延設された上部13と、この上部13に延設された後部14と、この後部14に延設された両側部15,16と、前部12に延設された開放された一部分の下部17−1と、後部14に延設された他の部分の下部17−2とにより構成されている。両側部15,16の前縁側と下部17−2の前縁側とにより、表皮10の開口部18が形成されている。
開放された前部12及び一部分の下部17−1の周縁は、例えば、角度45°〜90°程度、内側に曲げられて薄い折り曲げ部12a,17−1aが形成されている。同様に、開放された両側部15,16及び他の部分の下部17−2の周縁にも、例えば、角度45°〜90°程度、内側に曲げられて薄い折り曲げ部15a,16a,17−2aが形成されている。更に、一部分の下部17−1と他の部分の下部17−2との接合予定箇所には、ステー挿通用の一対の挿通孔19,20と、発泡合成樹脂注入用の注入孔21とが、形成されている。
(ヘッドレストの製造例)
図3−1(1)、(2)、図3−2(3)、(4)、及び図3−3(5)は、図1のヘッドレスト1におけるパッド材40の製造例を示す概略の工程図である。
図1のヘッドレスト1におけるパッド材40は、発泡成形型を用いた発泡合成樹脂の発泡により、例えば、以下の発泡成形型装着工程(A)、(B)、及びパッド材形成工程(C)にて製造される。
(A) 図3−1(1)、(2)の発泡成形型装着工程
発泡に使用する発泡成形型60は、図3−3(5)に示すように、2つの上型61,62と2つの下型63,64との4つの分割型から構成され、内部にヘッドレスト形状のキャビティ65が形成されている。各上型61,62において、それらの下面には、分割面61a,62aがそれぞれ形成され、それらの側面にも、分割面61b,62bがそれぞれ形成されている。下型63の上面には、上型61の分割面61aに当接する分割面63aが形成され、下型63の下部にも、分割面63bが形成されている。更に、下型64の上面には、上型62の分割面62aに当接する分割面64aが形成され、下型64の下部にも、下型63の分割面63bに当接する分割面64bが形成されている。上型61と下型63とは、ヒンジ66によって開閉自在に連結され、上型62と下型64とは、ヒンジ67によって開閉自在に連結され、更に、下型63と下型64とは、ヒンジ68によって開閉自在に連結されている。上型61の分割面61bと上型62の分割面62bとの当接箇所には、2つのステー挿通用の孔69,70と、1つの発泡合成樹脂注入用の孔71とが形成されている。
ヒンジ68を軸にして下型63と下型64とを左右に開くと共に、ヒンジ66を軸にして上型61を上方に開き、更に、ヒンジ67を軸にして上型62を上方に開く。そして、表皮10の後部14、両側部15,16及び下部17−2を下型63,64内に装着する。次に、表皮10の後部14、両側部15,16及び下部17−2により囲まれる開口部18内に、ステー30を図3−1の矢印方向へ挿入し、そのステー30の支柱部31,32をステー挿通用の孔69,70に係止する。
(B) 図3−2(3)、(4)の発泡成形型装着工程
表皮10の下部17−1及び前部12を図3−2(3)の矢印方向へ折り畳み、その下部17−1及び前部12の周縁の折り曲げ部17−1a,12aを、表皮10における開口部18の周縁の折り曲げ部15a,16a,17−2a内に挿入する。これにより、図1(b)に示すように、下部17−1及び前部12の周縁の折り曲げ部17−1a,12aと、開口部18の周縁の折り曲げ部15a,16a,17−2aとが接触し、表皮10が袋状に折り畳まれる。
(C) 図3−3(5)のパッド材形成工程
発泡成形型60において、ヒンジ68を軸にして下型63と下型64とを閉じると共に、ヒンジ66,67を軸にして上型61,62をそれぞれ下型63,64方向へ閉じる。これにより、袋状に折り畳まれた表皮10と、この表皮10内に収容されたステー30の基枠部33とが、発泡成形型60のキャビティ65内に収容される。
次に、図示しない発泡合成樹脂注入用のノズルを、発泡合成樹脂注入用の孔71へ挿入し、そのノズルから表皮10内へ、発泡合成樹脂を注入する。そして、表皮10内に充填した発泡合成樹脂を樹脂発泡させると、パッド材40が表皮10内に一体成形され、図1(a)に示すヘッドレスト1が製造される。
この際、樹脂発泡時の膨張力により、表皮10の内周面がキャビティ面へ押し付けられると共に、図1(b)に示すように、表皮10における下部17−1及び前部12の周縁の折り曲げ部17−1a,12aと、開口部18の周縁の折り曲げ部15a,16a,17−2aとが、対向する圧力F1,F2により強固に圧接されて挟持される。そのため、表皮10の折り曲げ部12a,15a,16a,17−1a,17−2aにおける接合箇所18a,18b,18cから、発泡合成樹脂が漏れることがない。
その後、発泡成形型60の上型61,62及び下型63,63を開き、ヘッドレスト1を取り出せば、製造が終了する。
(実施例1の効果)
本実施例1のヘッドレスト1及びその製造方法によれば、次の(1)〜(5)のような効果がある。
(1) 表皮材11の縫製をしないので、従来のような縫製の手間が省け、更に、製品のばらつきや不良品の発生を抑制して高精度のヘッドレスト1を提供できる。
(2) 表皮10の接合箇所18a,18b,18cは、樹脂発泡時の膨張力により生じる対向する圧力F1,F2によって、強固に圧接されて挟持される。そのため、従来のような発泡合成樹脂の漏れ防止のために縫い目箇所にテープ等を貼るといった煩雑な作業を省略でき、製造工程の簡略化、及び部品点数の削減化により、製品コストの低減が可能になる。
(3) 従来のように、表皮10内にステー30を挿通する必要がないので、製造工程をより簡略化できる。
(4) 立体成形された縫製レスの表皮10内に、発泡合成樹脂を注入して、パッド材40を一体発泡させてヘッドレスト1を形成しているので、衝撃吸収等の機能性を向上させる種々の形状に容易に成形することができる。
(5) 表皮材11を加熱及び加圧成形して表皮10を製造しているので、その表皮10に装飾用のキャラクタライン等を容易に形成することができる。
(シートバックの構成)
図4は、本発明における実施例2の表皮一体発泡成形品(例えば、車両用のシートバック)を示す概略の斜視図である。更に、図5(1)、(2)は、図4中のI2−I2断面箇所のシートバックの製造例を示す概略の工程図である。
図4及び図5(1)、(2)に示すように、車両用のシートバック80は、それぞれ立体的に形成された縫製レスの一対の前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2と、この一対の前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2内に形成されたパッド材100と、を備えている。なお、パッド材100内には、図示しないシートバック用のフレームが埋設されている。
一対の前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2は、実施例1と同様に、加熱及び加圧されて立体的な形状に保持された図1(c)に示す各1枚の表皮材11により、それぞれ形成されている。
前側用表皮90−1は、乗員の背中が当接する略方形の前部91と、この前部91の上端から上面側に延設された上部92と、前部91の左右両端から両側面側に延設された両側部93,94と、前部91の下端から底面側に延設された下部95とにより構成され、実施例1と同様に、1枚の表皮材11が加熱及び加圧成形されて一体的に形成されている。前部91の中央付近の横方向には、装飾用のキャラクタライン91aが形成されている。上部92、両側部93,94、及び下部95の周縁は、内側に折り曲げられて折り曲げ部90−1aが形成されている。後側用表皮90−2は、シートバック80の背面側に配置され、実施例1と同様に、1枚の表皮材11が加熱及び加圧成形されて一体的に形成されている。後側用表皮90−2の周縁は、内側に折り曲げられて折り曲げ部90−2aが形成されている。
前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2をそれぞれ形成している表皮材11は、実施例1と同様に、例えば、厚みが数mm以上10mm以下である。前側用表皮90−1の周縁の折り曲げ部90−1aと、後側用表皮90−2の周縁の折り曲げ部90−2aとは、実施例1と同様に、例えば、幅が5mm〜25mm程度で、厚みが他の平坦箇所等よりも薄くなっている。前側用表皮90−1の折り曲げ部90−1aと、後側用表皮90−2の折り曲げ部90−2aとは、実施例1と同様に、接触箇所としての接合箇所96において、相互に接合されて封止されている。
パッド材100は、前側用表皮90−1及び後側表皮90−2内に充填した実施例1と同様の発泡ポリウレタン等の発泡合成樹脂を樹脂発泡させて形成されている。接合箇所96において、前側用表皮90−1の折り曲げ部90−1aと、後側用表皮90−2の折り曲げ部90−2aとは、実施例1と同様に、樹脂発泡時の膨張力により生じる対向する2方向の圧力によって、強固に圧接されて挟持されている。
(シートバックの製造例)
図4及び図5(1)、(2)に示す前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2は、実施例1の表皮10と同様に、プレスを用いた加熱及び加圧成形により製造される。
シートバック80におけるパッド材100は、図5(1)、(2)に示す発泡成形型110を用いた発泡合成樹脂の発泡により、例えば、以下の発泡成形型装着工程(A)、及びパッド材形成工程(B)にて製造される。発泡成形型110は、上型111と下型112との2つの分割型から構成され、内部にシートバック形状のキャビティ113が形成されている。図5(1)には、上型111と下型112とを上下に開いた状態を示す横断面図が示され、更に、図5(2)には、上型111と下型112とを上下に閉じた状態を示す横断面図が示されている。
(A) 図5(1)の発泡成形型装着工程
発泡成形型110の上型111と下型112を上下に開く。準備しておいた前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2の内、前側用表皮90−1を下型112内に装着し、後側用表皮90−2を上型111内に装着する。この時、前側用表皮90−1の折り曲げ部90−1aと、後側用表皮90−2の折り曲げ部90−2aとは、キャビティ113の内側に折り曲がった状態になっている。又、上部92の後縁側と両側部93,94の後縁側と下部95の後縁側とにより、前側用表皮90−1の開口部97が形成されている。次に、図示しないシートバック用のフレームを前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2間に挿入する。
(B) 図5(2)のパッド材成形工程
図示しない発泡合成樹脂注入用のノズルから発泡成形型110の下型112へ発泡合成樹脂を注入し、発泡成形型110の上型111と下型112を上下に閉じる。上型111と下型112を閉じると、発泡成形型110のキャビティ113内に収容された前側用表皮90−1の折り曲げ部90−1aと後側用表皮90−2の折り曲げ部90−2aとが、接合箇所96において相互に接合される。
次に、注入した発泡合成樹脂を発泡、流動させて、発泡成形型110のキャビティ113内に発泡合成樹脂を充填することで、パッド材100を成形すると共に、このパッド材100を前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2内に一体化させ、シートバック80を製造する。
この際、樹脂発泡時の膨張力により、前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2がキャビティ面へ押し付けられると共に、前側用表皮90−1の折り曲げ部90−1aと後側用表皮90−2の折り曲げ部90−2aとが、対向する2方向の圧力により強固に圧接されて挟持される。そのため、折り曲げ部90−1a,90−2aにおける接合箇所96から、発泡合成樹脂が漏れることがない。
その後、発泡成形型110の上型111及び下型112を上下に開き、シートバック80を取り出せば、製造が終了する。
(実施例2の効果)
本実施例2のシートバック80及びその製造方法によれば、次の(1)〜(4)のような効果がある。
(1) 実施例1と同様に、表皮材11の縫製をしないので、従来のような縫製の手間が省け、更に、製品のばらつきや不良品の発生を抑制して高精度のシートバック80を提供できる。
(2) 実施例1と同様に、前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2の接合箇所96は、樹脂発泡時の膨張力により生じる対向する2方向の圧力によって、強固に圧接されて挟持される。そのため、従来のような発泡合成樹脂の漏れ防止のために縫い目箇所にテープ等を貼るといった煩雑な作業を省略でき、製造工程の簡略化、及び部品点数の削減化により、製品コストの低減が可能になる。
(3) 立体成形された縫製レスの前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2内に、発泡合成樹脂を注入して、パッド材100を一体発泡させてシートバック80を形成しているので、実施例1と同様に、衝撃吸収等の機能性を向上させる種々の形状に容易に成形することができる。
(4) 実施例1と同様に、表皮材11を加熱及び加圧成形して前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2を製造しているので、その前側用表皮90−1に装飾用のキャラクタライン91a等を容易に形成することができる。
(変形例)
本発明は、上記実施例1、2に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
(a) 実施例1のヘッドレスト1や実施例2のシートバック80の形状、構造、構成材料、製造方法等は、図示以外のものに変形が可能である。例えば、図1(c)の表皮材11において、弾性層11bを省略し、表皮層11a及び不織布層11cの2層構造にしてもよい。この場合、表皮層11a又は不織布層11cを厚くして、弾性力を持たせるようにすることが望ましい。
又、図1(a)の表皮10には、注入孔21を形成しなくてもよい。注入孔21を形成しない場合には、図3−3(5)の製造工程において、図示しない発泡合成樹脂注入用のノズルを、図3−2(4)中の接合箇所18cへ挿入し、そのノズルから表皮10内へ、発泡合成樹脂を注入すればよい。
(b) 実施例1、2では、表皮一体発泡成形品として、ヘッドレスト1やシートバック80を例にとって説明したが、これに限定されない。本発明は、立体的に成形された表皮10内、あるいは、前側用表皮90−1及び後側用表皮90−2内に、発泡合成樹脂を注入して、一体に発泡成形するものであれば、ヘッドレスト1やシートバック80以外にも、アームレスト、シートクッション等の他の車両用あるいは家具用等の表皮一体発泡成形品に適用することができる。
(c) 実施例1、2では、表皮一体発泡成形品としてのヘッドレスト1やシートバック80が、ステー30等のフレームを含む構成及び製造方法であったが、これに限らず、ステー30等のフレームを有しない構成の表皮一体発泡成形品及びその製造方法であってもよい。
1 ヘッドレスト
10 表皮
11 表皮材
11a 表皮層
11b 弾性層
11c 不織布層
12a,15a,16a,17−1a,17−2a,90−1a,90−2a 折り曲げ部
18a,18b,18c,96 接合箇所
30 ステー
40,100 パッド材
51 ヒータ
52 プレス
60,110 発泡成形型
80 シートバック

Claims (10)

  1. 裏面側に発泡合成樹脂の含浸が可能な層を有する表皮材が、加熱及び加圧されて立体的な形状に成形され、開口部を有し且つ前記開口部における開口端の周縁が内側方向に折り曲げられた折り曲げ部同士が接触して前記開口部が閉じられる表皮と、
    前記折り曲げ部同士の接触箇所を含む前記表皮内に充填された前記発泡合成樹脂が前記表皮と一体発泡されて形成されたパッド材と、
    を有することを特徴とする表皮一体発泡成形品。
  2. 請求項1記載の表皮一体発泡成形品は、更に、
    一部又は全部が前記表皮内の前記パッド材に埋設されたフレームを有することを特徴とする表皮一体発泡成形品。
  3. 前記表皮材は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性繊維を含む複数の層により形成され、
    前記表皮材における前記裏面側の前記層は、不織布層であることを特徴とする請求項1又は2記載の表皮一体発泡成形品。
  4. 前記表皮材における表面側の層は、布地、天然皮革、又は樹脂フィルムのいずれか1つの表皮層からなることを特徴とする請求項3記載の表皮一体発泡成形品。
  5. 前記表皮一体発泡成形品は、車両用のヘッドレスト、アームレスト、シートバック又はシートクッションのいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表皮一体発泡成形品。
  6. 加熱及び加圧成形により所定の形状に保持され、裏面側に発泡合成樹脂の含浸が可能な層を有する表皮材を、加熱及び加圧成形して、開口部を有し且つ前記開口部における開口端の周縁が内側方向に折り曲げられた折り曲げ部を有する立体的な表皮を一体形成する表皮形成工程と、
    前記表皮を発泡成形型に装着すると共に、前記表皮における前記折り曲げ部同士を接触させて前記開口部を閉じる発泡成形型装着工程と、
    前記折り曲げ部同士の接触箇所を含む前記表皮内に前記発泡合成樹脂を充填し、前記発泡合成樹脂を前記表皮と一体発泡させてパッド材を形成するパッド材形成工程と、
    を有することを特徴とする表皮一体発泡成形品の製造方法。
  7. 前記発泡成形型装着工程では、更に、
    フレームの一部又は全部を前記表皮内に配置して前記発泡成形型に装着することを特徴とする請求項6記載の表皮一体発泡成形品の製造方法。
  8. 前記表皮材は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性繊維を含む複数の層により形成され、
    前記表皮材における前記裏面側の前記層は、不織布層であることを特徴とする請求項6又は7記載の表皮一体発泡成形品の製造方法。
  9. 前記表皮材における表面側の層は、布地、天然皮革、又は樹脂フィルムのいずれか1つの表皮層からなることを特徴とする請求項8記載の表皮一体発泡成形品の製造方法。
  10. 前記フレームは、ヘッドレスト用フレーム、アームレスト用フレーム、シートバック用フレーム又はシートクッション用フレームのいずれか1つであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の表皮一体発泡成形品の製造方法。
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