JP2019069741A - 乗物用シートのシートカバー - Google Patents

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Abstract

【課題】シートカバーを、所望の性能を持たせつつ、比較的簡素な構成によって立体的な外形形状としておくことにある。【解決手段】表皮層10と、保護層12と、基層14とを一体で有する乗物用シートのシートカバー4Sにおいて、基層14は、加熱により溶けたのち固化可能な固化材20を有し、固化した状態の固化材20にて、乗物用シートの立体的な部分に倣った基層14の立体形状がその他の層(10,12,16)の形とともに維持された状態において、JIS L 1096 8.21.1A法に準拠して測定されたシートカバー4Sの剛軟度が100mm以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、乗物用シートのシートカバーに関し、詳しくは、皮革調の外観を備え且つ立体的な外形形状を有しているシートカバーに関する。
この種の乗物用シートでは、シートの意匠性や着座性向上の観点などから、シートの意匠面を構成するシートカバーの性能を向上させたいとの要請がある。例えばシートカバーが皮革調の外観を備えることで、乗物用シートに、高級感のある風合い等を付与することができる。またシートカバーは、着座性を考慮して適度な柔軟性を備えていることが望ましく、さらに意匠性向上の観点からシート形状に倣った立体的な外形形状を有していることが望ましい。すなわち乗物用シートは、意匠性や着座性向上の観点などから立体的な部分を有しており、例えば乗員の着座が可能な着座部と、着座部の左右に配置する土手部とを有している。着座部は、シート幅方向における中央に形成された概ね平坦な部分であり、土手部は、着座部の左右で着座側に山なりに盛り上がっている部分である。そしてシートカバーは、適度な柔軟性を備えつつ、着座部と土手部に沿って配置できるような立体的な外形形状を有していることが望ましい。
例えば特許文献1に開示の自動車シートは、シートカバーに相当するトリム・カバーを有し、このトリム・カバーは、複数の面状のトリム・カバー材を縫合することで形成されている。そこで特許文献1に開示の技術を適用して、着座部用のトリム・カバー材と、土手部用のトリム・カバー材をそれぞれ用意したのち、これらトリム・カバー材の縫い代同士を縫製線で縫合する。このように面状の各トリム・カバー材を縫合して三次元的に配置することで、立体的な外形形状を備えたシートカバーを形成することができる。そしてシートの意匠面には、トリム・カバー材同士の境となる分割線が縫製線に沿って現れ、この分割線によってシートの意匠の一部が構成されることとなる。
特開2012−81091号公報
ところで上述の縫合構成では、乗物用シートの立体的な部分にシートカバーをスムーズに沿わせる必要上、トリム・カバー材の使用枚数が増加する傾向にある。このためトリム・カバー材の増加に伴って無数の分割線が意匠面に現れることとなり、これら無数の分割線によってシートの意匠が制約されるおそれがあった。またトリム・カバー材の枚数が増加することで、シートカバーの製造工程時の手間が増し、とりわけ各トリム・カバー材の型取りや縫製作業は、多くの人手を要する労働集約型の工程となっていた。もっともトリム・カバー材の枚数をできるだけ減らすことも考えられるが、そうすると乗物用シートの形状選択の自由度が低下してしまう。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シートカバーを、所望の性能を持たせつつ、比較的簡素な構成によって立体的な外形形状としておくことにある。
上記課題を解決するための手段として、第1発明の乗物用シートのシートカバーは、乗物用シートの立体的な部分に沿って配置される面材であるとともに、乗物用シートの意匠を構成する皮革調の外観を備えた樹脂製の表皮層と、表皮層の外観を構成する表面に沿って設けられている樹脂製の保護層と、表皮層の表面とは反対の裏面に沿って設けられている布帛製の基層とを一体で有する。この種の構成では、シートカバーを、所望の性能(意匠性や着座性など)を持たせつつ、比較的簡素な構成によって立体的な外形形状としておくことが望ましい。
そこで本発明のシートカバーでは、基層は、加熱により溶けたのち固化可能な固化材を有している。そして固化した状態の固化材にて、乗物用シートの立体的な部分に倣った基層の立体形状がその他の層の形とともに維持された状態において、JIS L1096 8.21.1A法に準拠して測定されたシートカバーの剛軟度が100mm以下である。本発明では、固化した固化材によって基層の立体形状を維持することにより、シートカバーを、所望の立体的な外形形状としておくことができる。そして立体的な外形形状となっている状態のシートカバーは、剛軟度が100mm以下であるため、適度な柔軟性を有して着座性に優れる構成とされている。
第2発明の乗物用シートのシートカバーは、第1発明の乗物用シートのシートカバーにおいて、固化材の含有量は、基層の全質量に対して5質量%以上である。本発明では、適切な量の固化材にて、基層の立体形状をより確実に維持することができる。
第3発明の乗物用シートのシートカバーは、第2発明の乗物用シートのシートカバーにおいて、固化材の含有量は、基層の全質量に対して20質量%より多く且つ75質量%以下である。本発明では、固化材の含有量を20質量%より多くして、シートカバーの戻り率(プレ成形後に伸長率が何%戻ったかを示す値)を所望の値に収束させることにより、製品段階におけるシートカバーを安定的に伸長させることができる。さらに本発明では、固化材の含有量を75質量%以下とすることで、固化した状態の固化材によってシートカバーの剛軟度が悪化することを極力回避することができる。
第4発明の乗物用シートのシートカバーは、第1発明〜第3発明のいずれかの乗物用シートのシートカバーにおいて、表皮層の厚み寸法と保護層の厚み寸法とを合計した値は200μmより大きい。本発明では、適度な厚み寸法に調節された表皮層と保護層によって基層を覆うことにより、シートカバーの表面(意匠面)側に基層の凹凸が現れることを極力阻止することができる。
第5発明の乗物用シートのシートカバーは、第1発明〜第4発明のいずれかの乗物用シートのシートカバーにおいて、固化材は、編物である基層の構成糸である。本発明では、基層が、相対的に伸長性に富む編物で構成されて適度な柔軟性を備えている。そして基層の構成糸を固化材とすることにより、更に簡素な構成によって、基層の立体形状をより確実に維持することができる。
本発明に係る第1発明によれば、シートカバーを、所望の性能を持たせつつ、比較的簡素な構成によって立体的な外形形状としておくことができる。また第2発明によれば、シートカバーを、比較的簡素な構成によって、より確実に立体的な外形形状としておくことができる。また第3発明によれば、シートカバーを、所望の性能をより確実に持たせつつ、立体的な外形形状としておくことができる。また第4発明によれば、シートカバーの意匠性をより向上させつつ、立体的な外形形状としておくことができる。そして第5発明によれば、シートカバーを、所望の性能を持たせつつ、より簡素な構成によって立体的な外形形状としておくことができる。
乗物用シートの概略正面図である。 シートカバー一部の概略断面図である。 基層の正面図である。 変形例1にかかる基層の斜視図である。 変形例1の別例にかかる基層の斜視図である。 変形例2にかかる基層の正面図である。 プレ成形前のシートカバーとプレ成形装置の概略断面図である。 プレ成形後のシートカバーとプレ成形装置の概略断面図である。 一体成形時のシートカバーと成形装置の概略断面図である。 シートカバーの剛軟度と融着糸比率の関係を示すグラフである。 シートカバーの戻り率と融着糸比率の関係を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図11を参照して説明する。図1には、乗物用シートの上下方向と左右方向を示す矢線を適宜図示する。また図2〜図6には、シートカバー又は基層が乗物用シートに配置されている状態を基準として、上下方向と前後方向と左右方向を示す矢線を適宜図示する。また図3及び図4及び図6に示す基層では、便宜上、固化材としての融着糸にハッチを付して図示し、図5に示す基層では、便宜上、固化材としての融着糸を太線で示している。そして図5及び図6では、便宜上、第二編組織をなす構成糸部分にハッチを付して図示している。
図1の乗物用シート2は、シートクッション4とシートバック6を有しており、シートクッション4の後部にシートバック6の下部が起倒可能に連結されている。これらシート構成部材4,6は、各々、シート骨格をなすシートフレーム(4F,6F)と、乗員を弾性的に支持するシートパッド(4P,6P)と、シートパッドを被覆する後述のシートカバー(4S,6S)を有する。ここで各シートフレーム4F,6F(図示省略)は、対応するシート構成部材の外形に倣った形状の枠体であり、金属や硬質樹脂などの剛性に優れる素材で形成できる。また各シートパッド4P,6P(図示省略)は、対応するシート構成部材の外形をなす部材であり、ポリウレタンフォーム(密度:10kg/m〜60kg/m)等の発泡樹脂で形成できる。
[着座部・土手部(乗物用シートの立体的な部分)]
ここでシートクッション4の着座面となる上面側は、着座部4aと、左右一対の土手部4bに区分けでき、これら両部4a,4bは、本発明の乗物用シートの立体的な部分に相当する。そして着座部4aは、シート幅方向におけるシートクッション4の中央部分であり、概ね平坦とされて適度な幅寸法でシート前後方向に延びている。また着座部4aの左右両側にはそれぞれ土手部4bが設けられている。これら左右の土手部4bは、着座部4aに比して上方に向けて山なりに突出している部位であり、これら左右の土手部4bによってカーブ走行時などの旋回時に乗員下半身の側部を支持できる。そして本実施形態では、シートクッション4の立体的な部分である上面側が、左右の土手部4bに比して着座部4aが相対的に凹状となった凹面形状となっている。
またシートバック6の着座面となる正面側も、着座部6aと、左右一対の土手部6bに区分けでき、これら両部6a,6bは、本発明の乗物用シートの立体的な部分に相当する。そして着座部6aは、シート幅方向におけるシートバック6の中央部分であり、概ね平坦とされて適度な幅寸法でシート上下方向に延びている。また着座部6aの左右両側にはそれぞれ土手部6bが設けられている。これら左右の土手部6bは、着座部6aに比して前方に向けて山なりに突出している部分であり、これら左右の土手部6bによってカーブ走行時などの旋回時に乗員上半身の側部を支持できる。そしてシートバック6の立体的な部分である正面側も、左右の土手部6bに比して着座部6aが相対的に凹状となった凹面形状となっている。
[シートカバー]
そして各シートカバー4S(6S)は、シートの意匠面を構成する皮革調の外観を備えた面材であり、それぞれ対応する着座部4a(6a)と各土手部4b(6b)に跨って配置されている。この種のシートカバー4S,6Sは、着座性を考慮して適度な柔軟性を備えていることが望ましく、さらに意匠性向上の観点から、シート外形形状(本実施形態では凹面形状)に倣った立体的な外形形状を有していることが望ましい。そこで本実施形態では、後述する構成によって、各シートカバー4S,6Sを、所望の性能を持たせつつ、比較的簡素な構成によって立体的な外形形状とすることとした。
ここで各シートカバー4S,6Sの基本構成及び形成手法は同一であることから、以下に、シートクッション4のシートカバー4Sを一例にその構成及び形成手法を説明することとする。すなわちシートクッション4のシートカバー4Sは、図2を参照して、表皮層10と、保護層12と、基層14と、パッド層16とを一体で有しているとともに、後述する固化材20によって外形形状が保持されている。なお表皮層10と保護層12と基層14はシートカバー4Sの必須構成であるが、パッド層16は、必要に応じてシートカバー4Sに設けることができる。そして本実施形態のシートカバー4Sは、無縫製で且つ一枚物の面材(比較的簡素な構成)であり、後述する立体的な形状を有して、図1に示す着座部4aと左右の土手部4bに沿って配置されている。
[表皮層]
表皮層10は、図2を参照して、皮革調の外観を備えている樹脂層であり、主としてシートカバー4Sの意匠を構成している。この表皮層10は、後述する基層14に対して液状の樹脂又はその原料を含む溶剤を付与したのち、基層14上で硬化又は固化させた樹脂に皮革調の外観を付与することで形成できる。また別の手法として、離型性基材に、液状の樹脂又はその原料を含む溶剤を付与し、離型性基材上で硬化または固化させ、表皮層10を形成する。次いで、表皮層10の表面に接着剤を塗布し、該接着剤が粘稠性を有する状態のうちに、後述する基層14を貼り合わせることで形成できる。なお表皮層10を構成する樹脂の種類は特に限定しないが、適度な可撓性を備えた樹脂であることが望ましい。この種の樹脂として、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの合成樹脂を例示でき、これらの樹脂は、単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。また表皮層10に対して皮革調の外観を付与する手法は特に限定しないが、3Dプリントなどの印刷や、エンボス加工やシボ加工(シボ付け)などの凹凸加工を例示できる。
[保護層]
保護層12は、図2を参照して、外部に露出する表皮層10の表面に沿って設けられている樹脂層であり、表皮層10の表面略全面に設けることができる。この保護層12は、表皮層10に対して液状の樹脂又はその原料を含む溶剤を付与したのち、表皮層10上で硬化又は固化させることで形成できる。そして保護層12を構成する樹脂の種類は特に限定しないが、適度な可撓性を備え且つ光透過性を備えた透明又は半透明の樹脂であることが望ましい。このように光透過性を備えた保護層12を用いることで、この保護層12を通して表皮層10の外観を目視で確認可能となる。この種の光透過性を備えた樹脂として、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂を例示でき、これらの樹脂は、単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。なかでも好適な耐熱性を備えて黄変しにくいポリウレタン樹脂や、強度に優れて破断しにくいアクリル樹脂が保護層12の樹脂として望ましい。なお保護層12は、表皮層10の外観を外部から認識可能ならば不透明な樹脂で形成することもできる。
[表皮層と保護層の厚み寸法]
ここで表皮層10と保護層12の厚み寸法(図2の上下の寸法)は、これら両層が所望の性能を備える限り特に限定しないが、シートカバー4Sの意匠性等を考慮して両層の厚み寸法の合計値を適切に設定することが望ましい。例えば後述の基層14の表面が相対的に荒い(凹凸である)ことを考慮して、表皮層10の厚み寸法と保護層12の厚み寸法とを合計した値を200μmより大きくすることが望ましく、230μm以上とすることが更に好ましい。このように適度な厚み寸法に調節された表皮層10と保護層12によって後述する基層14を覆うことにより、シートカバー4Sの表面(意匠面)側に基層14の凹凸が現れることを極力阻止することができる。なお表皮層10と保護層12の厚み寸法の上限値は特に限定しないが、製造コストとの兼ね合いから概ね500μmに設定することができる。そして表皮層10の厚み寸法と保護層12の厚み寸法とを合計した値を250μm〜400μmの範囲に設定することで、これら両層が所望の性能を備え、さらにシートカバー4Sの意匠面側に基層14の凹凸が現れることをより確実に阻止することができる。なお表皮層10の厚み寸法と保護層12の厚み寸法とは概ね同一であってもよく(数μmの誤差は許容)、わずかに又は極端に異なっていてもよい。
[基層]
基層14は、図2を参照して、表皮層10の裏面に沿って設けられている布帛製の層であり、表皮層10の裏面略全面に設けることができる。この基層14は、後述する固化材20を有し且つ表皮層10及び保護層12とともに撓み変形可能である。そして後述するように固化した固化材20にて基層14の立体形状が維持され、さらにこの基層14の立体形状によってシートカバー4Sの立体的な外形形状が保持されることとなる。この種の基層14の素材として織物や編物や不織布を例示でき、なかでも編物は相対的に伸長性に優れているため、基層14の素材として好適に用いることができる。ここで基層14の素材として、経編や緯編(丸編を含む)の編物を用いることができ、基層14に求められる性能に応じて、編物の編組織を適宜設定することができる。例えば緯編の編組織として、基本組織(平編,ゴム編,パール編)やその変化組織を例示でき、経編の編組織として、基本組織(デンビー編,コード編,アトラス編,鎖編)やその変化組織を例示できる。
そして本実施形態では、基層14として、図3に示す緯編の一種であるシングルジャージを用いることができる。この緯編の編物は、面方向(図3の前後左右方向)の伸長性に優れた低モジュラスの素材であるため、後述するプレ成形時に、シートカバー4Sをスムーズに伸長させて適切な形状に撓み変形させることができる。さらに基層14としての編物の構成糸として、後述するように、一般糸Y1と、固化材20としての融着糸Y2とを用いることができる。
[一般糸]
ここで図3に示す一般糸Y1として、動物系又は植物系の天然繊維、合成繊維又はこれらの混紡繊維の糸を適宜用いることができる。合成繊維として、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、セルロース系繊維又はこれらの混紡繊維のフィラメントを例示でき、これらの合成繊維は、単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。なかでもポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート(PTT),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリ乳酸など)のフィラメントや、ポリアミド系繊維(ナイロン6,ナイロン66など)のフィラメントは、使用時の耐久性に優れるため一般糸Y1として好適に使用できる。なお一般糸Y1の繊度(太さ)は特に限定しないが、例えば30d〜3000d程度に設定できる。
[固化材(融着糸)]
固化材20は、図2及び図3を参照して、加熱により溶けたのち固化可能な部材である。この固化材20は、表皮層10及び保護層12及び一般糸Y1(以下、これらを総称して表皮層10等と呼ぶことがある)が熱可塑性樹脂で構成されている場合にはこれらよりも低融点の部材である。この種の固化材20として、各種の融着糸Y2を用いることができ、特に表皮層10等の融点より低い融点を有する融着糸Y2を用いることが好ましい。この種の融着糸Y2として、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ナイロン系の樹脂からなる融着糸Y2を例示でき、これらの樹脂は、単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。また融着糸Y2は、その一部が溶融固化可能であればよく、この種の融着糸Y2として混繊型や芯鞘型の融着糸Y2を例示できる。なお混繊型の融着糸Y2とは、比較的高融点の繊維と、比較的低融点の繊維(溶融固化部分)が混在する合成繊維の糸である。また芯鞘型の融着糸Y2とは、比較的高融点の芯材部分と、比較的低融点の鞘部分(溶融固化部分)とを有する合成繊維の糸である。なお融着糸Y2の繊度(太さ)も特に限定しないが、例えば30d〜3000d程度に設定できる。
[基層の形成例(固化材の含有量)]
そして基層14としての布帛を形成する場合、その構成糸の少なくとも一部に固化材20としての融着糸Y2を用いることができる。例えば図3を参照して、構成糸の一部に固化材20としての融着糸Y2を用いる場合には、融着糸Y2を局所的に配置することもできるが、本実施形態のように基層14の面方向に概ね均等に融着糸Y2を配置することが望ましい。そして基層14の単位面積当たりの一般糸Y1に対する融着糸Y2の本数(g/m)を調整して、固化材20としての融着糸Y2の含有量を、基層14の全質量に対して5質量%以上に設定することが望ましい(融着糸の含有量の上限値は後述)。このように5質量%以上の固化材20が基層14に含まれることで、後述するように固化した固化材20にて基層14の立体形状がより確実に維持されることとなる。なお固化材20の含有量が5質量%未満の場合には、後述する基層14の立体形状が適切に維持されず、シートカバー4Sが型崩れをおこすおそれがある。
さらに基層14の全質量に対する固化材20の含有量は、シートカバー4Sの性能向上の観点などから20質量%より大きいことが望ましく、25質量%以上であることがより好ましい。すなわち固化材20の含有量を20質量%より多くすることにより、シートカバー4Sの戻り率(プレ成形後に伸長率が何%戻ったかを示す値)を所望の値に収束させることができる。例えば戻り率を6%未満(好ましくは5%以下)に設定して、プレ成形後のシートカバー4Sを適度に収縮させた状態とすることにより、製品段階のシートカバー4Sを、乗員からの押圧で安定的に伸長させることが可能となる。そして固化材20の含有量の下限値を25質量%に設定することにより、シートカバー4Sの戻り率をより確実に所望の値(5%以下)に収束させることが可能となる。
また固化材20としての融着糸Y2は、固化後に硬くなって相対的に伸長性が低下し、さらに伸縮を繰り返すことで折れの発生が懸念される。このため固化材20の含有量が過度に多くなると、シートカバー4Sの柔軟性が低下して後述する剛軟度が上昇してしまうおそれがある。このため固化材20の含有量の上限値は、後述するようにシートカバー4Sの剛軟度が100mmとなる場合の固化材20の含有量とすることが望ましく、75質量%以下とすることがより好ましい。さらに融着糸Y2は相対的に滑らかで一般糸Y1と絡みにくいため、融着糸Y2の含有量が過度に多いと、基層14としての編物を製造しにくくなる。そこで固化材20の含有量を75質量%以下とすることにより、シートカバー4Sの剛軟度が悪化することを極力回避でき、さらにシートカバー4Sを比較的容易に製造することが可能となる。
[基層の変形例]
ここで基層は、緯編の編物のほか、図4〜図6に示す各種の編物で形成することもできる。例えば図4及び図5に示す変形例1の基層14Aは、丸編の一種であるダブルジャージの編物であり、表皮層10側に配置される第一編組織K1と、第一編組織K1の裏側に配置する第二編組織K2を有している。この基層14Aとしてのダブルジャージの編物は、面方向の伸長性に特に優れているため、シートカバー4Sの着座性の向上に資する構成となる。そしてダブルジャージの編物においては、第一編組織K1をなしている構成糸の一部が、第二編組織K2をなしている構成糸に交絡して第二編組織K2の一部を構成している。そこで第一編組織K1と第二編組織K2の少なくとも一方の構成糸に融着糸Y2を用いることができる。このとき図4に示すように第二編組織K2だけをなしている構成糸に融着糸Y2を用いることができ、こうすることで表皮層10側の第一編組織K1の伸長性を好適に維持することが可能となる。また図5に示すように第一編組織K1だけをなしている構成糸に融着糸Y2を用いることができ、この場合には、複数の一般糸Y1に一本の割合で融着糸Y2を配置することができる。また図5の第一編組織K1に融着糸Y2を用いる場合には、一般糸Y1と融着糸Y2とを交互に配置することもできる。また図6に示す変形例2の基層14Bは、経編の一種であるトリコットの編物であり、一般糸Y1と融着糸Y2の双方を構成糸として用いている。この基層14Bとしてのトリコットの編物は、緯編の編物に比して安定感に優れているため、シートカバー4Sの支持性能の向上に資する構成となる。そして各変形例の基層14A,14Bにおいても、固化材20の含有量を、基層14の全質量に対して5質量%以上に設定することが好ましく、20質量%より多く且つ75質量%以下とすることがより好ましく、25質量%〜75質量%とすることがさらに好ましい。
[パッド層]
パッド層16は、図2を参照して、弾性的に厚み方向に伸縮可能な素材で形成されているマット状の部材であり、必要に応じて基層14の裏側に一体化することができる。この種のパッド層16の素材として、基層14に比して柔軟で且つ適度な可撓性を備えた素材を用いることができ、スラブウレタンなどの発泡樹脂、綿材、3Dネット体(一般糸を三次元状に編製してなる部材)を例示できる。そして基層14の裏側にパッド層16を配置したのち、これらを接着や融着や縫合等の手法で一体化でき、例えばフレームラミネーションによって比較的強固に一体化することができる。なお後述するシートカバー4Sの剛軟度は、典型的にパッド層16を省略した状態のシートカバー4Sを元に測定される。このためシートカバー4Sの剛軟度を測定する場合には、図7及び図8に示すようにパッド層16を省略した状態で、後述するシートカバー4Sの予備加熱とプレ成形を行う。そして図9に示すように後述するシートパッド4Pとの一体成形の前にシートカバー4Sにパッド層16を一体化することができる。これとは異なり剛軟度を測定しない場合には、パッド層16を一体化した状態で、後述するシートカバー4Sの予備加熱とプレ成形を行うこともでき、この場合のパッド層16の融点は固化材20の融点より高温に設定されることが好ましい。
[シートカバーの予備加熱とプレ成形(基層の賦形作業)]
図7及び図8を参照して、予備加熱とプレ成形装置30によるプレ成形とをこの順で行うことで、シートカバー4Sを立体的な外形形状とする(保形する)。すなわちシートカバー4Sを予備加熱することにより、基層14中の固化材20としての融着糸Y2を溶かした状態とする。このとき予備加熱の温度を調節して、表皮層10等は極力溶かすことなく融着糸Y2だけを溶かしておく。なお予備加熱時に融着糸Y2全てを溶融させて不定形状とすることもできるが、融着糸Y2を部分的に溶融させるなどして糸としての外形形状を適度に維持することもできる。例えば芯鞘型の融着糸Y2では、比較的高融点の鞘部分を不定形状としたとしても、比較的低融点の芯材部分によって糸としての外形形状を維持することができる。
つぎにプレ成形装置30によって、シートカバー4Sをコールドプレスしつつ、固化材20としての融着糸Y2を固化させる。ここでプレ成形装置30は、閉じ合わせ可能な上型31と下型32とで構成されている。またこれら両型の閉じ合わせ面である上型31の下面31aと下型32の上面32aの面形状は、着座部4aと左右の土手部4bの外形形状(凹面形状)に倣った形状とされている。そこでシートカバー4Sを適度に張った状態(図7の2D状態のシートカバーを参照)としつつ上型31と下型32の間に挟み込む。このとき編物で形成された基層14が低モジュラスの面材であるため、シートカバー4Sをスムーズに伸長させて、上型31の下面31aと下型32の上面32aに沿う形に撓み変形させることができる。そして上型31と下型32でシートカバー4Sをコールドプレスしつつ一定時間保持することにより、基層14が、固化した融着糸Y2によってその他の層10,12とともに着座部4aと土手部4bの外形形状に倣った立体形状で維持される(図8の3D状態のシートカバーを参照)。すなわち適度な可撓性を備えた表皮層10と保護層12(その他の層)が、基層14の立体形状に追従して概ね同形に保形されることにより、シートカバー4Sが、所望の立体的な外形形状で保持されることとなる。なおシートカバー4Sにパッド層16を設ける場合には、このパッド層16もその他の層に該当する。
[シートカバーの剛軟度]
そして本実施形態では、基層14の立体形状が固化材20にて維持された状態において、JIS L 1096 8.21.1A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定されたシートカバー4Sの剛軟度が100mm以下に設定される。このようにシートカバー4Sの剛軟度を100mm以下となるように設定して、シートカバー4Sに適度な柔軟性を付与することにより、着座性の向上に資する構成となる。なおシートカバー4Sの剛軟度が100mmを超えると、シートカバー4Sが硬くなって着座性が極端に悪化するおそれがある。そしてシートカバー4Sの剛軟度は、概ね固化材20の含有量によって調整可能であり、固化材20の含有量が多くなるに従ってシートカバー4Sの剛軟度が高くなる(後述の試験例を参照)。このため固化材20の含有量の上限値は、上述のとおりシートカバー4Sの剛軟度が100mmとなる場合の固化材20の含有量となる。なおシートカバー4Sの剛軟度の下限値は特に限定しないが、シートカバー4Sの支持性能や触感などを考慮すると概ね15mmに設定することができる。
[シートパッドとシートカバーの一体化の手法]
つぎに図9を参照して、シートカバー4Sによってシートパッド4Pを被覆する。このとき本実施形態では、一体成形などの手法によって、シートパッド4Pの成形と同時にシートカバー4Sに一体化することができる。そしてシートパッド4Pは、成形装置40のキャビティ42内で、シートパッド4Pの樹脂材料を発泡させることで成形される。そこでシートカバー4Sを、キャビティ42を構成する成形装置40の内壁の適所に予め配置し、シートカバー4Sの裏側をなす基層14又はパッド層16をキャビティ42の内方に向けておく。この状態でキャビティ42内に樹脂材料を射出したのち、この樹脂材料を発泡させてシートパッド4Pを成形する。そして樹脂材料が発泡しつつ、シートカバー4Sの基層14又はパッド層16に含浸して固化する。こうしてシートパッド4Pの樹脂がシートカバー4Sの裏側に入り込んで固化することで、シートカバー4Sがシートパッド4Pに一体化されることとなる。
[乗物用シートの使用態様]
図1を参照して、シートクッション4においては、シートカバー4Sとシートパッド4Pをシートフレーム4F上に配置することにより、シートカバー4Sによってシートの意匠面が構成される。このシートカバー4Sは、図2に示す表皮層10が皮革調の外観を備えているため、シートクッション4に、高級感のある風合い等を付与できる。このとき固化材20を、表皮層10ではなく基層14中に設けておくことで、表皮層10の構成(例えば皮革調の外観)が固化材20で限定されるといった事態を回避でき、シートカバー4Sの意匠選択の自由度が高められている。さらにシートカバー4Sは、着座部4aと左右の土手部4bの形状に倣った立体的な外形形状とされているため、これら各部4a,4bに沿って仕上がり性良く配置することができる。このためシートカバー4Sによって、乗物用シート2の立体的な形状(凹面形状)を適切に表現することができ、シートの意匠性向上に資する構成となる。そしてシートカバー4Sは、無縫製で一枚物の面材で形成できるため、カバー材同士の縫合が原因となる分割線がなく、シートの意匠が制約されるといった事態を好適に回避できる。さらにシートカバー4Sの剛軟度が100mm以下となるように設定されているため、シートカバー4Sが所望の柔軟性を有して着座性に優れる構成とされている。
また同様にシートバック6においても、シートカバー6Sとシートパッド6Pをシートフレーム6F上に配置することにより、シートカバー6Sによってシートの意匠面が構成される。このシートカバー6Sは、シートクッション4のシートカバー4Sと略同一の基本構成を備えている。このためシートカバー6Sによって、シートバック6の意匠性と着座性を向上させることができる。
以上説明した通り本実施形態では、固化した固化材20によって基層14を立体形状で維持することにより、各シートカバー4S,6Sを、所望の立体的な外形形状としておくことができる。このため各シートカバー4S,6Sによって、分割線のないシームレスな凹面形状の意匠表現が可能となり、シートのデザイン性が広がる。そして立体的な外形形状となっている状態の各シートカバー4S,6Sは、剛軟度が100mm以下であるため、適度な柔軟性を有して着座性に優れる構成とされている。また本実施形態では、適切な量の固化材20にて、基層14の立体形状をより確実に維持することができる。また本実施形態では、固化材20の含有量を20質量%より多くして、シートカバー4Sの戻り率(プレ成形後に伸長率が何%戻ったかを示す値)を所望の値(6%未満)に収束させることにより、製品段階におけるシートカバー4Sを安定的に伸長させることができる。さらに本実施例では、固化材20の含有量を75質量%以下とすることで、固化した状態の固化材20によってシートカバー4Sの剛軟度が悪化することを極力回避することができる。また本実施形態では、適度な厚み寸法に調節された表皮層10と保護層12によって基層14を覆うことにより、シートカバー4Sの表面(意匠面)側に基層14の凹凸が現れることを極力阻止することができる。また本実施形態では、基層14が、相対的に伸長性に富む編物で構成されて適度な柔軟性を備えている。そして基層14の構成糸を固化材20(融着糸Y2)とすることにより、更に簡素な構成によって、基層14の立体形状をより確実に維持することができる。このため本実施形態によれば、各シートカバー4S,6Sを、所望の性能を持たせつつ、比較的簡素な構成によって立体的な外形形状としておくことができる。さらに本実施形態では、各シートカバー4S,6Sの製造工程にて、予備加熱とプレ成形で基層14を賦形するため、型取りや縫製作業が省略又は簡略化されるなどして製造時の省人化に資する構成となる。
[試験例]
以下、本実施形態を試験例に基づいて説明するが、本発明は試験例に限定されない。なお[表1]に、実施例1のシートカバーと比較例1のシートカバーの剛軟度と融着糸比率の数値を示し、[表2]に、実施例2〜実施例6のシートカバーの表皮層と保護層の厚み寸法の合計値と凹凸評価の結果を示す。また図10に、シートカバーの剛軟度と融着糸比率の関係を示すグラフを図示し、図11に、シートカバーの戻り率と融着糸比率の関係を示すグラフを図示する。
[実施例]
実施例1では、表皮層と保護層と基層を一体で有しているシートカバーを作成した。また実施例1では、表皮層を、シボ付けされたポリウレタン系の熱可塑性樹脂で構成し、表皮層の厚み寸法(膜厚)を200〜350μmの範囲に設定した。また保護層を、透明なポリウレタン系の熱可塑性樹脂で構成し、保護層の膜厚を5〜10μmの範囲に設定した。また基層として、ジャージの編物を用いた(密度:ウェール/コース=40/56(本/2.54cm))。また基層の一般糸として、ポリエステル製のフィラメント糸(繊度50d,融点250℃)を使用し、融着糸として、芯鞘構造をなすポリエステルフィラメント糸(繊度50d,融点160℃)を使用した。そして実施例1では、基層の単位面積当たりの一般糸に対する融着糸の本数(g/m)を調整して、固化材としての融着糸の含有量を、基層の全質量に対して50質量%に設定した。そして実施例1のシートカバーを、図7及び図8に示すように予備加熱によってプレ成形時に温度160℃となるように加熱してプレ成形したのち、これらの剛軟度を、JIS L1096 8.21.1A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定した。
また実施例2〜実施例6のシートカバーでは、表皮層と保護層の厚み寸法の合計値を変更し、実施例2〜実施例6のその他のシートカバーの構成は実施例1と同一とした。そして実施例2では、表皮層と保護層の厚み寸法の合計値を200μmとした。また実施例3では、表皮層と保護層の厚み寸法の合計値を232μmとした。また実施例4では、表皮層と保護層の厚み寸法の合計値を250μmとした。また実施例5では、表皮層と保護層の厚み寸法の合計値を268μmとした。また実施例6では、表皮層と保護層の厚み寸法の合計値を300μmとした。
また実施例7〜実施例10のシートカバーでは、基層の単位面積当たりの一般糸に対する融着糸の本数を調整して基層中の固化層の割合を変更し、実施例7〜実施例10のその他のシートカバーの構成は実施例1と同一とした。そして実施例7では、固化材としての融着糸の含有量を、基層の全質量に対して10質量%に設定した。また実施例8では、固化材としての融着糸の含有量を、基層の全質量に対して20質量%に設定した。実施例9では、固化材としての融着糸の含有量を、基層の全質量に対して30質量%に設定した。また実施例10では、固化材としての融着糸の含有量を、基層の全質量に対して40質量%に設定した。
[比較例]
また比較例1では、表皮層と保護層と基層を有しているシートカバーを作成した。そして比較例1では、基層として、一般糸のみで構成されたジャージの編物を使用し、その他のシートカバーの構成は実施例1と同一とした。
[シートカバー表面の凹凸評価の試験方法]
本試験では、実施例2〜6のシートカバーをサンプルとして用いた。そしてCIE標準の光D65又は標準の光Aのそれぞれに近似する分光分布をもつ常用光源で照明されたブース内に各サンプルを配置した。この状態で各サンプルの表面を、30cm離れた位置から30度と45度の角度でそれぞれ目視で観察した。
そしてサンプルの表面(意匠面)に凹凸が見られなかった場合を「◎」、凹凸がほとんど見られなかった場合を「〇」、かすかに凹凸が見られた場合を「△」、明らかに凹凸が見られた場合を「×」と評価した。
[戻り率の測定]
実施例1、実施例7〜実施例10及び比較例1のシートカバーの戻り率を下記の手法で測定した。すなわち各シートカバー(生地)を30%伸長させてプレ成形した後に、脱型した際の生地の戻り率を下記の計算式1にて算出した。
なおシートカバーの伸長率(%)は、JIS L 1096に準拠して測定した。
計算式1:戻り率(%)=(1.3A−B)/(1.3A)×100(式中、Aは、プレ成形前の生地の長さを示し、1.3Aは、30%伸長でのプレ成形時の生地の長さを示し、Bは、脱型時の生地の長さを示す。)
Figure 2019069741
Figure 2019069741
[結果及び考察]
[表1]及び図10を参照して、比較例1のシートカバーでは、基層が立体的な形状を維持できなかった。また参考に融着糸の含有量を5質量%未満に設定したシートカバーを作成しようとしたが、比較例1と同様に、基層が立体的な形状を維持できなかったため作成を途中で断念した。
実施例1のシートカバーでは、基層の立体形状が維持されることで、シートカバーを、所望の立体的な外形形状とすることができた。また実施例1のシートカバーは、剛軟度が100mm以下となって、適度な柔軟性を有していることがわかった。このため実施例1によれば、シートカバーに所望の性能を持たせつつ、比較的簡素な構成によって立体的な外形形状にできることがわかった。さらに図10を参照して、ジャージ製のシートカバーの剛軟度は、固化材の含有量が75質量%のときに95mmであると推測された。このことから固化材の含有量を基層の全質量に対して75質量%以下に設定することで、シートカバーに適度な柔軟性を持たせつつ、より簡素な構成によって立体的な外形形状にできることが容易に推測された。さらに図10を参照して、シートカバーの剛軟度が100mmである場合の固化材の含有量(上限値)は80質量%であると推測された。
また[表2]を参照して、実施例2〜実施例6では、表皮層と保護層の厚み寸法の合計値を調整することで、シートカバーの意匠面側に基層の凹凸が現れにくくなることがわかった。そして実施例3では、シートカバーの表面に凹凸がほとんど見られず、特に実施例4〜実施例6では、シートカバーの表面に凹凸が見られなかった。このため表皮層と保護層の厚み寸法の合計値を200μmより大きくし、好ましくは230μm以上とし、より好ましくは250μm以上とすることで、シートカバーの意匠面側に基層の凹凸が現れることを極力阻止できることがわかった。
また図11を参照して、実施例1、実施例7〜実施例10及び比較例1のシートカバーのように固化材の含有量を調節することで、シートカバーの戻り率を所望の値に収束させることができることがわかった。そして実施例1及び実施例8〜実施例10では、シートカバーの戻り率を概ね所望の値(5%以下の値)に収束させることができた。このため固化材の含有量を、20質量%より多くし、好ましくは25質量%以上として、戻り率を所望の値に収束させることにより、製品段階におけるシートカバーを安定的に伸長させることができると容易に推測された。
本実施形態の乗物用シートのシートカバーは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、シートカバー4Sの構成(形状,寸法,配置位置など)を例示したが、シートカバーの構成を限定する趣旨ではない。例えばシートカバー全体を、無縫製で一枚物の面材で構成することができるが、シートカバーの少なくとも一部を、無縫製で一枚物の面材で構成することもできる。すなわち本実施形態のシートカバーは、複数のカバー材を縫合することで形成でき、この場合には各カバー材の外形形状を基材の固化材で維持することにより、カバー材の使用枚数を極力少なくすることが可能である。またシートカバーは、着座部と土手部のほか、乗物用シートの立体的な部分の適宜の位置に配置することができる。そして乗物用シートの立体的な部分は、凹面形状のほか、凸面形状や凹凸面形状などの各種の形状を取り得る。
また本実施形態では、基層14等に編物を用いるとともに、編物の組織となる構成糸に、固化材20としての融着糸Y2を使用する例を説明した。これとは異なり基層に織物を用いることができ、この織物は、平織組織、斜文織組織、朱子織組織又はこれらの組合せ組織で構成することができる。また基層をなしている編物又は織物の構成糸に対して添え糸や押え糸を撚合わせたり引き揃えたりして用いる場合には、これら添え糸や押え糸に、固化材としての融着糸を使用することもできる。また基層の構成糸の一部に固化材を用いる場合には、固化材を局所的に配置することもできる。例えば着座部と土手部に沿ってシートカバーを配置する場合、シートカバーの湾曲又は屈曲の基点となる部分にのみ固化材を集中して配置する(局所的に配置する)ことができる。なお固化材の形状は、糸(線状)のほか、帯状(面状)などの各種の形状を取り得る。
また本実施形態では、専らシートクッション4とシートバック6を一例に説明したが、本実施形態の構成は、ヘッドレストやアームレスト等の各種シート構成部材に適用可能である。そして本実施形態の構成は、車両や航空機や電車などの乗物用シート全般に適用可能である。
2 乗物用シート
4 シートクッション
6 シートバック
4S,6S シートカバー
4P,6P シートパッド
4F,6F シートフレーム
4a,6a 着座部(本発明の乗物用シートの立体的な部分)
4b,6b 土手部(本発明の乗物用シートの立体的な部分)
10 表皮層(本発明のその他の層)
12 保護層(本発明のその他の層)
14 基層
14A 変形例1の基層
14B 変形例2の基層
16 パッド層(本発明のその他の層)
20 固化材
30 プレ成形装置
31 上型
32 下型
40 成形装置
K1 第一編組織
K2 第二編組織
Y1 一般糸
Y2 融着糸

Claims (5)

  1. 乗物用シートの立体的な部分に沿って配置される面材であり、前記乗物用シートの意匠面側に配置される皮革調の外観を備えた樹脂製の表皮層と、前記表皮層の外観を構成する表面に沿って設けられている樹脂製の保護層と、前記表皮層の表面とは反対の裏面に沿って設けられている布帛製の基層とを一体で有する乗物用シートのシートカバーにおいて、
    前記基層は、加熱により溶けたのち固化可能な固化材を有し、
    固化した状態の前記固化材にて、前記乗物用シートの立体的な部分に倣った前記基層の立体形状がその他の層の形とともに維持された状態において、JIS L 1096 8.21.1A法に準拠して測定された前記シートカバーの剛軟度が100mm以下である乗物用シートのシートカバー。
  2. 前記固化材の含有量は、前記基層の全質量に対して5質量%以上である請求項1に記載の乗物用シートのシートカバー。
  3. 前記固化材の含有量は、前記基層の全質量に対して20質量%より多く且つ75質量%以下である請求項2に記載の乗物用シートのシートカバー。
  4. 前記表皮層の厚み寸法と前記保護層の厚み寸法とを合計した値は200μmより大きい請求項1〜3のいずれか一項に記載の乗物用シートのシートカバー。
  5. 前記固化材は、編物である前記基層の構成糸である請求項1〜4のいずれか一項に記載の乗物用シートのシートカバー。
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