JP2019069741A - 乗物用シートのシートカバー - Google Patents
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Abstract
Description
ここでシートクッション4の着座面となる上面側は、着座部4aと、左右一対の土手部4bに区分けでき、これら両部4a,4bは、本発明の乗物用シートの立体的な部分に相当する。そして着座部4aは、シート幅方向におけるシートクッション4の中央部分であり、概ね平坦とされて適度な幅寸法でシート前後方向に延びている。また着座部4aの左右両側にはそれぞれ土手部4bが設けられている。これら左右の土手部4bは、着座部4aに比して上方に向けて山なりに突出している部位であり、これら左右の土手部4bによってカーブ走行時などの旋回時に乗員下半身の側部を支持できる。そして本実施形態では、シートクッション4の立体的な部分である上面側が、左右の土手部4bに比して着座部4aが相対的に凹状となった凹面形状となっている。
そして各シートカバー4S(6S)は、シートの意匠面を構成する皮革調の外観を備えた面材であり、それぞれ対応する着座部4a(6a)と各土手部4b(6b)に跨って配置されている。この種のシートカバー4S,6Sは、着座性を考慮して適度な柔軟性を備えていることが望ましく、さらに意匠性向上の観点から、シート外形形状(本実施形態では凹面形状)に倣った立体的な外形形状を有していることが望ましい。そこで本実施形態では、後述する構成によって、各シートカバー4S,6Sを、所望の性能を持たせつつ、比較的簡素な構成によって立体的な外形形状とすることとした。
表皮層10は、図2を参照して、皮革調の外観を備えている樹脂層であり、主としてシートカバー4Sの意匠を構成している。この表皮層10は、後述する基層14に対して液状の樹脂又はその原料を含む溶剤を付与したのち、基層14上で硬化又は固化させた樹脂に皮革調の外観を付与することで形成できる。また別の手法として、離型性基材に、液状の樹脂又はその原料を含む溶剤を付与し、離型性基材上で硬化または固化させ、表皮層10を形成する。次いで、表皮層10の表面に接着剤を塗布し、該接着剤が粘稠性を有する状態のうちに、後述する基層14を貼り合わせることで形成できる。なお表皮層10を構成する樹脂の種類は特に限定しないが、適度な可撓性を備えた樹脂であることが望ましい。この種の樹脂として、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの合成樹脂を例示でき、これらの樹脂は、単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。また表皮層10に対して皮革調の外観を付与する手法は特に限定しないが、3Dプリントなどの印刷や、エンボス加工やシボ加工(シボ付け)などの凹凸加工を例示できる。
保護層12は、図2を参照して、外部に露出する表皮層10の表面に沿って設けられている樹脂層であり、表皮層10の表面略全面に設けることができる。この保護層12は、表皮層10に対して液状の樹脂又はその原料を含む溶剤を付与したのち、表皮層10上で硬化又は固化させることで形成できる。そして保護層12を構成する樹脂の種類は特に限定しないが、適度な可撓性を備え且つ光透過性を備えた透明又は半透明の樹脂であることが望ましい。このように光透過性を備えた保護層12を用いることで、この保護層12を通して表皮層10の外観を目視で確認可能となる。この種の光透過性を備えた樹脂として、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂を例示でき、これらの樹脂は、単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。なかでも好適な耐熱性を備えて黄変しにくいポリウレタン樹脂や、強度に優れて破断しにくいアクリル樹脂が保護層12の樹脂として望ましい。なお保護層12は、表皮層10の外観を外部から認識可能ならば不透明な樹脂で形成することもできる。
ここで表皮層10と保護層12の厚み寸法(図2の上下の寸法)は、これら両層が所望の性能を備える限り特に限定しないが、シートカバー4Sの意匠性等を考慮して両層の厚み寸法の合計値を適切に設定することが望ましい。例えば後述の基層14の表面が相対的に荒い(凹凸である)ことを考慮して、表皮層10の厚み寸法と保護層12の厚み寸法とを合計した値を200μmより大きくすることが望ましく、230μm以上とすることが更に好ましい。このように適度な厚み寸法に調節された表皮層10と保護層12によって後述する基層14を覆うことにより、シートカバー4Sの表面(意匠面)側に基層14の凹凸が現れることを極力阻止することができる。なお表皮層10と保護層12の厚み寸法の上限値は特に限定しないが、製造コストとの兼ね合いから概ね500μmに設定することができる。そして表皮層10の厚み寸法と保護層12の厚み寸法とを合計した値を250μm〜400μmの範囲に設定することで、これら両層が所望の性能を備え、さらにシートカバー4Sの意匠面側に基層14の凹凸が現れることをより確実に阻止することができる。なお表皮層10の厚み寸法と保護層12の厚み寸法とは概ね同一であってもよく(数μmの誤差は許容)、わずかに又は極端に異なっていてもよい。
基層14は、図2を参照して、表皮層10の裏面に沿って設けられている布帛製の層であり、表皮層10の裏面略全面に設けることができる。この基層14は、後述する固化材20を有し且つ表皮層10及び保護層12とともに撓み変形可能である。そして後述するように固化した固化材20にて基層14の立体形状が維持され、さらにこの基層14の立体形状によってシートカバー4Sの立体的な外形形状が保持されることとなる。この種の基層14の素材として織物や編物や不織布を例示でき、なかでも編物は相対的に伸長性に優れているため、基層14の素材として好適に用いることができる。ここで基層14の素材として、経編や緯編(丸編を含む)の編物を用いることができ、基層14に求められる性能に応じて、編物の編組織を適宜設定することができる。例えば緯編の編組織として、基本組織(平編,ゴム編,パール編)やその変化組織を例示でき、経編の編組織として、基本組織(デンビー編,コード編,アトラス編,鎖編)やその変化組織を例示できる。
ここで図3に示す一般糸Y1として、動物系又は植物系の天然繊維、合成繊維又はこれらの混紡繊維の糸を適宜用いることができる。合成繊維として、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、セルロース系繊維又はこれらの混紡繊維のフィラメントを例示でき、これらの合成繊維は、単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。なかでもポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート(PTT),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリ乳酸など)のフィラメントや、ポリアミド系繊維(ナイロン6,ナイロン66など)のフィラメントは、使用時の耐久性に優れるため一般糸Y1として好適に使用できる。なお一般糸Y1の繊度(太さ)は特に限定しないが、例えば30d〜3000d程度に設定できる。
固化材20は、図2及び図3を参照して、加熱により溶けたのち固化可能な部材である。この固化材20は、表皮層10及び保護層12及び一般糸Y1(以下、これらを総称して表皮層10等と呼ぶことがある)が熱可塑性樹脂で構成されている場合にはこれらよりも低融点の部材である。この種の固化材20として、各種の融着糸Y2を用いることができ、特に表皮層10等の融点より低い融点を有する融着糸Y2を用いることが好ましい。この種の融着糸Y2として、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ナイロン系の樹脂からなる融着糸Y2を例示でき、これらの樹脂は、単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。また融着糸Y2は、その一部が溶融固化可能であればよく、この種の融着糸Y2として混繊型や芯鞘型の融着糸Y2を例示できる。なお混繊型の融着糸Y2とは、比較的高融点の繊維と、比較的低融点の繊維(溶融固化部分)が混在する合成繊維の糸である。また芯鞘型の融着糸Y2とは、比較的高融点の芯材部分と、比較的低融点の鞘部分(溶融固化部分)とを有する合成繊維の糸である。なお融着糸Y2の繊度(太さ)も特に限定しないが、例えば30d〜3000d程度に設定できる。
そして基層14としての布帛を形成する場合、その構成糸の少なくとも一部に固化材20としての融着糸Y2を用いることができる。例えば図3を参照して、構成糸の一部に固化材20としての融着糸Y2を用いる場合には、融着糸Y2を局所的に配置することもできるが、本実施形態のように基層14の面方向に概ね均等に融着糸Y2を配置することが望ましい。そして基層14の単位面積当たりの一般糸Y1に対する融着糸Y2の本数(g/m2)を調整して、固化材20としての融着糸Y2の含有量を、基層14の全質量に対して5質量%以上に設定することが望ましい(融着糸の含有量の上限値は後述)。このように5質量%以上の固化材20が基層14に含まれることで、後述するように固化した固化材20にて基層14の立体形状がより確実に維持されることとなる。なお固化材20の含有量が5質量%未満の場合には、後述する基層14の立体形状が適切に維持されず、シートカバー4Sが型崩れをおこすおそれがある。
ここで基層は、緯編の編物のほか、図4〜図6に示す各種の編物で形成することもできる。例えば図4及び図5に示す変形例1の基層14Aは、丸編の一種であるダブルジャージの編物であり、表皮層10側に配置される第一編組織K1と、第一編組織K1の裏側に配置する第二編組織K2を有している。この基層14Aとしてのダブルジャージの編物は、面方向の伸長性に特に優れているため、シートカバー4Sの着座性の向上に資する構成となる。そしてダブルジャージの編物においては、第一編組織K1をなしている構成糸の一部が、第二編組織K2をなしている構成糸に交絡して第二編組織K2の一部を構成している。そこで第一編組織K1と第二編組織K2の少なくとも一方の構成糸に融着糸Y2を用いることができる。このとき図4に示すように第二編組織K2だけをなしている構成糸に融着糸Y2を用いることができ、こうすることで表皮層10側の第一編組織K1の伸長性を好適に維持することが可能となる。また図5に示すように第一編組織K1だけをなしている構成糸に融着糸Y2を用いることができ、この場合には、複数の一般糸Y1に一本の割合で融着糸Y2を配置することができる。また図5の第一編組織K1に融着糸Y2を用いる場合には、一般糸Y1と融着糸Y2とを交互に配置することもできる。また図6に示す変形例2の基層14Bは、経編の一種であるトリコットの編物であり、一般糸Y1と融着糸Y2の双方を構成糸として用いている。この基層14Bとしてのトリコットの編物は、緯編の編物に比して安定感に優れているため、シートカバー4Sの支持性能の向上に資する構成となる。そして各変形例の基層14A,14Bにおいても、固化材20の含有量を、基層14の全質量に対して5質量%以上に設定することが好ましく、20質量%より多く且つ75質量%以下とすることがより好ましく、25質量%〜75質量%とすることがさらに好ましい。
パッド層16は、図2を参照して、弾性的に厚み方向に伸縮可能な素材で形成されているマット状の部材であり、必要に応じて基層14の裏側に一体化することができる。この種のパッド層16の素材として、基層14に比して柔軟で且つ適度な可撓性を備えた素材を用いることができ、スラブウレタンなどの発泡樹脂、綿材、3Dネット体(一般糸を三次元状に編製してなる部材)を例示できる。そして基層14の裏側にパッド層16を配置したのち、これらを接着や融着や縫合等の手法で一体化でき、例えばフレームラミネーションによって比較的強固に一体化することができる。なお後述するシートカバー4Sの剛軟度は、典型的にパッド層16を省略した状態のシートカバー4Sを元に測定される。このためシートカバー4Sの剛軟度を測定する場合には、図7及び図8に示すようにパッド層16を省略した状態で、後述するシートカバー4Sの予備加熱とプレ成形を行う。そして図9に示すように後述するシートパッド4Pとの一体成形の前にシートカバー4Sにパッド層16を一体化することができる。これとは異なり剛軟度を測定しない場合には、パッド層16を一体化した状態で、後述するシートカバー4Sの予備加熱とプレ成形を行うこともでき、この場合のパッド層16の融点は固化材20の融点より高温に設定されることが好ましい。
図7及び図8を参照して、予備加熱とプレ成形装置30によるプレ成形とをこの順で行うことで、シートカバー4Sを立体的な外形形状とする(保形する)。すなわちシートカバー4Sを予備加熱することにより、基層14中の固化材20としての融着糸Y2を溶かした状態とする。このとき予備加熱の温度を調節して、表皮層10等は極力溶かすことなく融着糸Y2だけを溶かしておく。なお予備加熱時に融着糸Y2全てを溶融させて不定形状とすることもできるが、融着糸Y2を部分的に溶融させるなどして糸としての外形形状を適度に維持することもできる。例えば芯鞘型の融着糸Y2では、比較的高融点の鞘部分を不定形状としたとしても、比較的低融点の芯材部分によって糸としての外形形状を維持することができる。
そして本実施形態では、基層14の立体形状が固化材20にて維持された状態において、JIS L 1096 8.21.1A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定されたシートカバー4Sの剛軟度が100mm以下に設定される。このようにシートカバー4Sの剛軟度を100mm以下となるように設定して、シートカバー4Sに適度な柔軟性を付与することにより、着座性の向上に資する構成となる。なおシートカバー4Sの剛軟度が100mmを超えると、シートカバー4Sが硬くなって着座性が極端に悪化するおそれがある。そしてシートカバー4Sの剛軟度は、概ね固化材20の含有量によって調整可能であり、固化材20の含有量が多くなるに従ってシートカバー4Sの剛軟度が高くなる(後述の試験例を参照)。このため固化材20の含有量の上限値は、上述のとおりシートカバー4Sの剛軟度が100mmとなる場合の固化材20の含有量となる。なおシートカバー4Sの剛軟度の下限値は特に限定しないが、シートカバー4Sの支持性能や触感などを考慮すると概ね15mmに設定することができる。
つぎに図9を参照して、シートカバー4Sによってシートパッド4Pを被覆する。このとき本実施形態では、一体成形などの手法によって、シートパッド4Pの成形と同時にシートカバー4Sに一体化することができる。そしてシートパッド4Pは、成形装置40のキャビティ42内で、シートパッド4Pの樹脂材料を発泡させることで成形される。そこでシートカバー4Sを、キャビティ42を構成する成形装置40の内壁の適所に予め配置し、シートカバー4Sの裏側をなす基層14又はパッド層16をキャビティ42の内方に向けておく。この状態でキャビティ42内に樹脂材料を射出したのち、この樹脂材料を発泡させてシートパッド4Pを成形する。そして樹脂材料が発泡しつつ、シートカバー4Sの基層14又はパッド層16に含浸して固化する。こうしてシートパッド4Pの樹脂がシートカバー4Sの裏側に入り込んで固化することで、シートカバー4Sがシートパッド4Pに一体化されることとなる。
図1を参照して、シートクッション4においては、シートカバー4Sとシートパッド4Pをシートフレーム4F上に配置することにより、シートカバー4Sによってシートの意匠面が構成される。このシートカバー4Sは、図2に示す表皮層10が皮革調の外観を備えているため、シートクッション4に、高級感のある風合い等を付与できる。このとき固化材20を、表皮層10ではなく基層14中に設けておくことで、表皮層10の構成(例えば皮革調の外観)が固化材20で限定されるといった事態を回避でき、シートカバー4Sの意匠選択の自由度が高められている。さらにシートカバー4Sは、着座部4aと左右の土手部4bの形状に倣った立体的な外形形状とされているため、これら各部4a,4bに沿って仕上がり性良く配置することができる。このためシートカバー4Sによって、乗物用シート2の立体的な形状(凹面形状)を適切に表現することができ、シートの意匠性向上に資する構成となる。そしてシートカバー4Sは、無縫製で一枚物の面材で形成できるため、カバー材同士の縫合が原因となる分割線がなく、シートの意匠が制約されるといった事態を好適に回避できる。さらにシートカバー4Sの剛軟度が100mm以下となるように設定されているため、シートカバー4Sが所望の柔軟性を有して着座性に優れる構成とされている。
以下、本実施形態を試験例に基づいて説明するが、本発明は試験例に限定されない。なお[表1]に、実施例1のシートカバーと比較例1のシートカバーの剛軟度と融着糸比率の数値を示し、[表2]に、実施例2〜実施例6のシートカバーの表皮層と保護層の厚み寸法の合計値と凹凸評価の結果を示す。また図10に、シートカバーの剛軟度と融着糸比率の関係を示すグラフを図示し、図11に、シートカバーの戻り率と融着糸比率の関係を示すグラフを図示する。
実施例1では、表皮層と保護層と基層を一体で有しているシートカバーを作成した。また実施例1では、表皮層を、シボ付けされたポリウレタン系の熱可塑性樹脂で構成し、表皮層の厚み寸法(膜厚)を200〜350μmの範囲に設定した。また保護層を、透明なポリウレタン系の熱可塑性樹脂で構成し、保護層の膜厚を5〜10μmの範囲に設定した。また基層として、ジャージの編物を用いた(密度:ウェール/コース=40/56(本/2.54cm))。また基層の一般糸として、ポリエステル製のフィラメント糸(繊度50d,融点250℃)を使用し、融着糸として、芯鞘構造をなすポリエステルフィラメント糸(繊度50d,融点160℃)を使用した。そして実施例1では、基層の単位面積当たりの一般糸に対する融着糸の本数(g/m2)を調整して、固化材としての融着糸の含有量を、基層の全質量に対して50質量%に設定した。そして実施例1のシートカバーを、図7及び図8に示すように予備加熱によってプレ成形時に温度160℃となるように加熱してプレ成形したのち、これらの剛軟度を、JIS L1096 8.21.1A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定した。
また比較例1では、表皮層と保護層と基層を有しているシートカバーを作成した。そして比較例1では、基層として、一般糸のみで構成されたジャージの編物を使用し、その他のシートカバーの構成は実施例1と同一とした。
本試験では、実施例2〜6のシートカバーをサンプルとして用いた。そしてCIE標準の光D65又は標準の光Aのそれぞれに近似する分光分布をもつ常用光源で照明されたブース内に各サンプルを配置した。この状態で各サンプルの表面を、30cm離れた位置から30度と45度の角度でそれぞれ目視で観察した。
そしてサンプルの表面(意匠面)に凹凸が見られなかった場合を「◎」、凹凸がほとんど見られなかった場合を「〇」、かすかに凹凸が見られた場合を「△」、明らかに凹凸が見られた場合を「×」と評価した。
実施例1、実施例7〜実施例10及び比較例1のシートカバーの戻り率を下記の手法で測定した。すなわち各シートカバー(生地)を30%伸長させてプレ成形した後に、脱型した際の生地の戻り率を下記の計算式1にて算出した。
なおシートカバーの伸長率(%)は、JIS L 1096に準拠して測定した。
計算式1:戻り率(%)=(1.3A−B)/(1.3A)×100(式中、Aは、プレ成形前の生地の長さを示し、1.3Aは、30%伸長でのプレ成形時の生地の長さを示し、Bは、脱型時の生地の長さを示す。)
[表1]及び図10を参照して、比較例1のシートカバーでは、基層が立体的な形状を維持できなかった。また参考に融着糸の含有量を5質量%未満に設定したシートカバーを作成しようとしたが、比較例1と同様に、基層が立体的な形状を維持できなかったため作成を途中で断念した。
4 シートクッション
6 シートバック
4S,6S シートカバー
4P,6P シートパッド
4F,6F シートフレーム
4a,6a 着座部(本発明の乗物用シートの立体的な部分)
4b,6b 土手部(本発明の乗物用シートの立体的な部分)
10 表皮層(本発明のその他の層)
12 保護層(本発明のその他の層)
14 基層
14A 変形例1の基層
14B 変形例2の基層
16 パッド層(本発明のその他の層)
20 固化材
30 プレ成形装置
31 上型
32 下型
40 成形装置
K1 第一編組織
K2 第二編組織
Y1 一般糸
Y2 融着糸
Claims (5)
- 乗物用シートの立体的な部分に沿って配置される面材であり、前記乗物用シートの意匠面側に配置される皮革調の外観を備えた樹脂製の表皮層と、前記表皮層の外観を構成する表面に沿って設けられている樹脂製の保護層と、前記表皮層の表面とは反対の裏面に沿って設けられている布帛製の基層とを一体で有する乗物用シートのシートカバーにおいて、
前記基層は、加熱により溶けたのち固化可能な固化材を有し、
固化した状態の前記固化材にて、前記乗物用シートの立体的な部分に倣った前記基層の立体形状がその他の層の形とともに維持された状態において、JIS L 1096 8.21.1A法に準拠して測定された前記シートカバーの剛軟度が100mm以下である乗物用シートのシートカバー。 - 前記固化材の含有量は、前記基層の全質量に対して5質量%以上である請求項1に記載の乗物用シートのシートカバー。
- 前記固化材の含有量は、前記基層の全質量に対して20質量%より多く且つ75質量%以下である請求項2に記載の乗物用シートのシートカバー。
- 前記表皮層の厚み寸法と前記保護層の厚み寸法とを合計した値は200μmより大きい請求項1〜3のいずれか一項に記載の乗物用シートのシートカバー。
- 前記固化材は、編物である前記基層の構成糸である請求項1〜4のいずれか一項に記載の乗物用シートのシートカバー。
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