JP7339738B2 - 積層体 - Google Patents
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即ち、特許文献1および特許文献2に開示される成形加工物は、芯材に熱可塑性樹脂を用いているため、人体が接触した場合の感触が硬く、適度な柔軟性が求められる分野において望ましくない場合があり、また縫製により他の部材と組み合わせることができないという問題がある。また近年の車両等のように、軽量化が大きな課題となっている技術分野において、車両用部材に用いる成形加工物自体のさらなる軽量化が望まれている。
特許文献3に開示される加工成形物の硬度を上げるためには、不織布の目付を大きくすることが考えられるが、この場合、不織布に含浸させる合成樹脂の量を増加させなければならい。ところが、目付の大きい不織布に多量の合成樹脂を均一に含侵させることは難しく、合成樹脂の含浸が不均一であると、成形加工時の成形性が不良となる場合がある。また、特許文献3に開示される成形加工物は、不織布がむき出しになるため見栄えが良くない。特許文献3には、合成樹脂を含侵させた成形不織布の成形時に装飾用の樹脂フィルムをラミネートしてもよい旨が記載されているが、プレス加工時に不織布と樹脂フィルムとを同時にラミネートした場合、成形加工品の細部に皺が寄り易いという問題があった。
また上記積層体を用いてなるプレス成形加工物は、上記優れた効果を奏するとともに、成形性が良好で見栄えも良好である。本発明の効果の詳細は、以下の発明を実施するための形態において述べる。
尚、以下の説明においてプレス成形加工物の成形性が良好であるとは、積層体を用いてプレス成形によりプレス成形加工物を成形した際に成形不良が生じない、または生じ難いことを意味する。ここでいう成形不良とは、プレス成形加工物が、所望の形状に賦形されないという状態を意味する。
以下に本発明の第一実施形態にかかる積層体100について図1を用いて説明する。図1は、積層体100を厚み方向に切断してなる断面を模式的に示す断面図である。
図1に示すとおり、積層体100は、接着層20を介して積層された表皮30と目付が450g/m2以上900g/m2以下である不織布10とを有している。
不織布10は、不織布構成繊維110からなる不織布本体120と低融点材130とを含んで構成されている。本発明は、低融点材130として、表皮30の融点および不織布本体120の融点よりも低い融点の部材が選択される。
以下に、積層体100の詳細について説明する。
不織布10は、積層体100の芯材に相当し、繊維(不織布構成繊維110)を絡みあわせてなるシート状物である。不織布10を芯材として備える積層体100は、芯材が熱可塑性樹脂である従来の成形加工物に比べて柔軟性および軽量性に優れる上、縫製により他の部材との縫合が可能であり加工性にも優れる。
不織布10の目付が450g/m2未満であると、積層体100を用いてプレス成形してなるプレス成形加工物の硬度が充分でなくなる虞がある。プレス成形加工物の硬度をより大きくするという観点からは、上記目付は、500g/m2以上であることが好ましく、550g/m2以上であることがより好ましい。
不織布10の目付が900g/m2を超える場合、柔軟性が損なわれる虞があり、また、積層体を製造する際にロール状に巻き難くなるため、加工性が悪化する傾向にある。適度な硬度を有しつつ、より柔軟なプレス成形加工物を提供するという観点からは、上記目付は、850g/m2以下であることが好ましく、800g/m2以下であることがより好ましい。
たとえば不織布10は、ます不織布構成繊維110を用いてシート状のプレ不織布を形成し(第一工程)、次いで、プレ不織布を構成する不織布構成繊維110同士を結合させる(第二工程)ことにより、製造することができる。
上記第一工程としては、たとえば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法などが挙げられる。上記第二工程としては、たとえば、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、スパンレース法、ステッチボンド法、またはスチームジェット法などが挙げられる。
低融点材130は、表皮30および不織布本体120の融点よりも低い融点の部材である。低融点材130を含む積層体100は、プレス成形前にプレヒーティングされることで、低融点材130を溶融させることができる。低融点材130が溶融された状態の積層体100をプレス成形して所望形状に賦形し、その状態で低融点材130を硬化させることによって、所望形状に成形されたプレス成形加工物を製造することができる。
たとえば、適度な融点を示す熱可塑性樹脂は低融点材130として適している。上記熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル(特には低融点ポリエステル)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、およびメタクリル系樹脂から選択される1種または2種以上の組合せ等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記比率は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明者らの検討によれば、上記比率が40質量%を境にして、これ以上、低融点材130を混合させても、成形性の向上効果が得られ難いことが把握されている。そのため、コストパフォーマンスの観点から、上記比率は、40質量%以下であることが好ましい。
表皮30は、接着層20を介して不織布10に積層し固着させることができるものであればよい。たとえば、表皮30として、天然皮革、合成皮革、またはファブリックなどから構成される1層のシートまたはこれらの任意の組合せでなる2層以上の積層シートを挙げることができる。
上記天然皮革は、動物の皮膚をなめしてシート状にしたものであり、牛、豚、馬等のいずれの動物の皮膚を用いたものであってもよい。
上記合成皮革は、たとえば、ポリウレタンまたはポリ塩化ビニルなどを用いて構成されるものが挙げられるがこれに限定されない。上記合成皮革は、適宜選択された基材上に上述する合成樹脂が塗布されてなる樹脂層を備えるものであってもよい。ポリ塩化ビニルを用いてなる、所謂塩ビレザーは、代表的な合成皮革であって、表皮30として好適である。上記合成皮革は、表面加工により、スエード調に加工されたものであってもよいし、表面平滑な所謂銀面に仕上げられたものであってもよい。
上記ファブリックは、織物、編物、および不織布を含む。
上述するとおり、芯材を予め所望の深絞り形状に成形し、後工程において表皮を貼り付けてなる成形加工品では、表皮が皺になり易い。これに対し、積層体100は、予め芯材である不織布10に表皮30が積層されているため、これを用いて深絞り形状にプレス成形した場合、不織布10と表皮30とが互いに追従して所望の形状をなすため、表皮30に皺が寄り難く成形性に優れる。しかも、後工程において表皮を貼り付けて成形加工品を製造する場合に比べ、簡易な製造設備でプレス成形品を製造可能である。
接着層20は、不織布10と表皮30とを積層させ固着させる。かかる目的が達成される範囲において、接着層20は、いずれの部材から構成されてもよいが、望ましくは、上述する低融点材130の融点よりも高い融点を示す部材から構成された接着層20が好ましい。
接着層20を接着剤で構成する場合には、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられるがこれに限定されない。また不織布10または表皮30の少なくとも一方に接着剤を塗布して、他方を積層することにより、接着層20を形成しつつ、両者を積層させてもよいが、シート状のポリウレタンフォームを用い、フレームラミネートにより当該ポリウレタンフォームを接着層20として不織布10と表皮30とを積層させることもできる。
他のシート状の接着剤の例としては、シート状のホットメルト接着剤が挙げられる。シート状のホットメルト接着剤を用いて接着層20を形成する場合には、不織布10と表皮30との間に当該ホットメルト接着剤を挟み、少なくとも一方側から加熱して、接着剤を溶融させる必要がある。しかしこの場合、不織布10に含まれる低融点材130が溶融しないよう配慮が必要である。これに対し、上記フレームラミネートであれば、軟質ウレタンフォームの表面を火炎により溶融させればよいので、低融点材130が溶融する虞がない。
図1では、フォームレス加工により形成された接着層20を備える積層体100を示している。フォームレス加工により形成された接着層20の厚みは、1μm以下程度に調整することができるので、厚みの小さいプレス成形加工物を提供する場合には、フォームレス加工により形成された接着層20が好ましい。フォーム加工により形成された接着層を備える積層体については、後述する第二実施態様において説明する。
以下に本発明の第二実施形態にかかる積層体150について図2を用いて説明する。図2は、積層体150を厚み方向に切断してなる断面を模式的に示す断面図である。
積層体150は、接着層22が、ポリウレタンフォーム230を備えること以外は、積層体100と同様に構成される。そのため、以下の説明では、主として接着層22について説明し、積層体100と同様の構成について適宜第一実施形態を参照するものとする。
接着層22は、中間部にポリウレタンフォーム230を備えるとともに、不織布10側の面に不織布側接着面220を有し、表皮30側の面に表皮側接着面210を有している。積層体150は、接着層22において、ポリウレタンフォーム230を備えることから、柔軟性に優れるとともに衝撃吸収性を示すプレス成形加工物を提供可能である。
また積層体150を用いてプレス成形する際、不織布10に若干の収縮や歪みが生じる場合があるが、ポリウレタンフォーム230が、かかる収縮や歪みを吸収するため、当該収縮や歪みに起因する凹凸が表皮30に発生し難い。またポリウレタンフォーム230の存在により、プレス成形時の不織布10の収縮や歪み自体を抑制することができる。さらに、不織布10が元来有する表面の凹凸が、表皮30にあばた模様となって現れ難い効果も有する。したがって積層体150を用いてなるプレス成形加工物は特に外観が優れる。
次に、図3および図4を用いて、本発明の積層体を用いてなるプレス成形加工物200について説明する。具体的には、積層体150を用いてなるプレス成形加工物200について説明する。図3は、プレス成形加工物200を厚み方向に切断してなる断面を模式的に示す断面図である。図4は、プレス成形加工物200の製造方法の例を説明する工程図であり、図4(a)はプレス成形加工物の製造に用いられる積層体150の断面図であり、図4(b)は、積層体150における不織布10に含まれる低融点材130を融解させる加熱工程を示し、図4(c)は、低融点材130が融解した状態の積層体150をプレス成形用型(雄型320、雌型330)に設置した状態を示し、図4(d)は、設置された積層体150をプレス成形するとともに冷却するプレス冷却工程を示している。
プレス成形加工物200における不織布10のショアA硬度は40以上70以下である。上記ショアA硬度が40未満であると、プレス成形加工物200の硬度が充分でない場合がある。また上記ショアA硬度が70を超える場合、プレス成形加工物200の柔軟性が損なわれる。
次にプレス成形加工物200の製造方法について説明する。かかる製造方法は、本発明の積層体を用いてプレス加工し、所望形状のプレス成形加工物200を得られる方法であればよい。具体的には、以下のような製造方法が適切である。
即ち、プレス成形加工物200の製造方法は、不織布10に含まれる低融点材130を溶融させるプレヒーティングを行う工程1、上記工程1を経た積層体150をプレス成形し所望の形状に賦形する工程2、プレス成形されてなるプレス成形加工物200の形状を維持した状態で冷却する工程3を備える。尚、工程3における冷却とは、相対的に低い温度にすることを意味し、たとえば加温状態にあるプレス成形加工物200を積極的に冷却する態様および室内に放置して温度を冷ます態様のいずれも包含する。
推奨される製造方法の態様として、まず積層体150をプレヒーティングし(工程1)、続いて、低温状態にあるプレス成形型に積層体150を配置して型締めしプレスする(即ち、工程2と工程3とを同時に行う)態様1が挙げられる。ここで低温状態とは、プレス成形型が、配置された積層体150における不織布10の表面温度よりも相対的に低い温度である状態をいい、例えば不織布10の表面温度が室温を超える温度であれば、上記プレス成形型は室温程度(より具体的には、例えば20℃±3℃程度)でもよい。
また製造方法の異なる態様として、まず積層体150を加熱してプレス成形し(即ち、工程1と工程2とを同時または連続的に行い)、次いでプレスされた形状が維持された状態でプレス成形加工物200を冷却する(工程3)態様2が挙げられる。ここでいう冷却は、室温に放置することによる冷却であってもよいし、室温を下回る温度で工程2を経たプレス成形加工物200を積極的に冷やすことによる冷却であってもよい。
まず図4(a)に示すとおり、積層体150を準備する。
そして、図4(b)に示すとおり積層体150を適温に加熱された下側加熱部300と上側加熱部310との間に配置し、プレヒーティングを行う。このとき、低融点材130を溶融させるとともに、表皮30が加熱により変性しないよう配慮するとよい。具体的には図4(b)に示すとおり、適温(例えば170℃以上190℃以下の温度)に加熱された下側加熱部300に不織布10を下側にして積層体150を載置し、かつ表皮30から離間した位置に配置された上側加熱部310により適温(例えば130℃以上150℃以下の温度)で加熱するとよい。表皮30の表面から上側加熱部300までの距離hは特に限定されないが、例えば1mm以上10mm以下の範囲にすることによって、表皮30を変性させない範囲で上方からも積層体150を加熱することができ、溶融しない低融点材130が有意に残存することを防止することができる。
図4(c)に示すとおり、プレヒーティングにより低融点材130が溶融された積層体150は、速やかにプレス成形用型に配置される。図4(c)に示されるプレス成形用型である雄型320および雌型330は、上述する低温状態であることが好ましい。これにより、図4(d)に示すとおり、雄型320および雌型330を接近させて型締めし、積層体150を所望形状にプレスすることで、賦形と冷却とを同時に実施することができる。以上により、溶融していた低融点材130が硬化し、所望形状に賦形されたプレス成形加工物200を得ることができる。
また、上記の方法で得られるプレス成形加工物200は、表皮30を熱により変性させないよう配慮されているため、成形加工後においても表皮30の艶や意匠が維持され美観に優れる。
(1)接着層を介して積層された表皮と、目付が450g/m2以上900g/m2以下である不織布とを有し、
前記不織布は、不織布本体と低融点材とを含み、
前記低融点材の融点が、前記表皮および前記不織布本体の融点よりも低いことを特徴とする積層体。
(2)前記不織布が、前記低融点材を10質量%以上60質量%以下の範囲で含む上記(1)に記載の積層体。
(3)前記低融点材の融点は、100℃以上120℃以下である上記(1)または(2)に記載の積層体。
(4)前記接着層が、ポリウレタンフォームを備える上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の積層体。
(5)前記表皮が、合成皮革である上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の積層体。
(6)上記(1)から(5)のいずれ一項に記載の積層体を用いてなり、
前記接着層を介して積層された前記表皮と前記不織布とを有し、
前記不織布のショアA硬度が40以上70以下であることを特徴とするプレス成形加工物。
(7)単位面積当たりの質量が750g/m2以上2000g/m2以下である上記(6)に記載のプレス成形物。
20、22・・・接着層
30・・・表皮
100、150・・・積層体
110・・・不織布構成繊維
120・・・不織布本体
130・・・低融点材
200・・・プレス成形加工物
210・・・表皮側接着面
220・・・不織布側接着面
230・・・ポリウレタンフォーム
300・・・下側加熱部
310・・・上側加熱部
320・・・雄型
330・・・雌型
h・・・距離
Claims (3)
- 接着層を介して積層された表皮と、目付が450g/m2以上900g/m2以下である不織布とを有し、
前記表皮は、厚みが0.5mm以上1.5mm以下の合成皮革であり、
前記接着層は、厚みが1.0mm以上10mm以下の軟質ポリウレタンフォームであり、
前記不織布は、不織布本体と低融点材とを含み、
前記不織布の質量における低融点材の質量の比率は10質量%以上40質量%以下であり、
前記低融点材の融点が、前記表皮および前記不織布本体の融点よりも低く、
前記軟質ポリウレタンフォームの中間部に発泡状態を残し前記表皮と前記不織布とが、前記接着層である前記軟質ポリウレタンフォームを介して貼り合わされてなることを特徴とする積層体。 - 前記低融点材の融点は、100℃以上120℃以下である請求項1に記載の積層体。
- 前記不織布本体が、アラミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維から選択される1種または2種以上の繊維から構成されている請求項1または2に記載の積層体。
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