JP2014165846A - Δς変調器及び通信装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】周波数の異なる複数の信号が含まれた出力信号を出力することができるΔΣ変調器を提供する。
【解決手段】Σ変調器は、周波数の異なる複数の入力信号がそれぞれ入力される複数の入力ポート10a,10bと、複数の入力ポートそれぞれに対応して設けられた複数のループフィルタ11,12と、複数のループフィルタの出力を加算する加算器15と、加算器15の出力を量子化する量子化器16と、を備えている。複数のループフィルタ11,12は、それぞれ、対応する入力ポート10a,10bに入力される入力信号と、量子化器16の出力のフィードバック信号と、が入力される。複数のループフィルタ11,12は、それぞれ、対応する入力ポート10a,10bに入力される入力信号の周波数付近の雑音を阻止する特性を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ΔΣ変調器及び通信装置に関するものである。
ΔΣ変調器は、ループフィルタと量子化器とを有して構成されている(非特許文献1参照)。ループフィルタは、2入力システムであり、一方の入力にはΔΣ変調器への入力信号が入力され、他方の入力には、量子化器の出力がフィードバックされる。
ループフィルタの出力は、量子化器に与えられる。量子化器は、ループフィルタの出力を量子化して出力信号(量子化信号)を生成し、出力する。
和保 孝雄、安田 明 監訳(原著者 Richard Schreier, Gabor C. Temes)ΔΣ型アナログ/デジタル変換器入門(Understanding Delta-Sigma Data Converters)、丸善株式会社、2007
ΔΣ変調器は、デジタル回路だけで無線信号を出力させるための技術として有用である。
ここで、本発明者は、コンカレントデュアルバンドなどのように複数の帯域を同時に使用して通信が行われる場合に、ΔΣ変調方式を利用するという着想を得た。この場合、一つのΔΣ変調器から出力された単一の出力信号に、周波数の異なる複数の信号を含めることができるのが望ましい。
しかし、従来のΔΣ変調器は、一つの入力信号に対してΔΣ変調を行って、一つの出力信号を出力する一入力一出力システムにすぎず、複数の入力信号を扱うことはできない。
そこで、本発明は、周波数の異なる複数の信号が含まれた出力信号を出力することができるΔΣ変調器を提供することを目的とする。
(1)一の観点からみた本発明は、周波数の異なる複数の入力信号がそれぞれ入力される複数の入力ポートと、複数の前記入力ポートそれぞれに対応して設けられた複数のループフィルタと、複数の前記ループフィルタの出力を加算する加算器と、前記加算器の出力を量子化する量子化器と、を備え、複数の前記ループフィルタは、それぞれ、対応する前記入力ポートに入力される入力信号と、前記量子化器の出力のフィードバック信号と、が入力されるよう設けられ、複数の前記ループフィルタは、それぞれ、対応する前記入力ポートに入力される入力信号の周波数付近の雑音を阻止する特性を有するΔΣ変調器である。
上記本発明によれば、量子化器は、周波数の異なる複数の信号が含まれた出力信号を出力することができる。
(2)複数の前記ループフィルタは、それぞれ、対応する前記入力ポートに入力される入力信号と前記量子化器の出力のフィードバック信号との差を求める差分器と、前記差分器の出力が入力される内部フィルタと、を備えているのが好ましい。
(3)複数の前記ループフィルタは、それぞれ、対応する前記入力ポートに入力される入力信号を前記内部フィルタの出力に加算するフィードフォワード経路を更に備えているのが好ましいこの場合、ループフィルタを経由することなく入力信号を量子化器側に与えることができるため、ループフィルタの設計が容易になる。
(4)他の観点からみた本発明は、前記(1)〜(3)ののいずれか1項に記載の前記ΔΣ変調器と、前記ΔΣ変調器の前記量子化器から出力された出力信号が通過する1又は複数のバンドパスフィルタと、を備え、一又は複数の前記バンドパスフィルタは、前記ΔΣ変調器への複数の前記入力信号それぞれを通過させる通過帯域を有する通信装置である。
(5)一又は複数の前記バンドパスフィルタを通過した複数の前記入力信号が入力される周波数混合器を更に備え、前記ΔΣ変調器への複数の前記入力信号には、前記周波数混合器による周波数変換に用いられるローカル信号が含まれるのが好ましい。この場合、ΔΣ変調器の出力信号に含まれるローカル信号を用いて周波数変換を行うことができる。
本発明によれば、周波数の異なる複数の信号が含まれた出力信号を出力することができる。
デュアルバンドΔΣ変調器のブロック図である。 CRFB構造のΔΣ変調器のブロック図である。 図2の等価回路のブロック図である。 (a)はNTFの零点と極の位置を示し、(b)はNTFの零点と極の位置を示す図である。 NTFの周波数応答を示す図である。 STF及びSTFの周波数応答を示す図である。 デュアルバンドΔΣ変調器の出力をシミュレーションしたパワースペクトラムである。 デュアルバンドΔΣ変調器の出力の800MHzにおけるパワースペクトラムである。 デュアルバンドΔΣ変調器の出力の1.5GHzにおけるパワースペクトラムである。 デュアルバンドΔΣ変調器の出力の実測結果を示すパワースペクトラムである。 一般化したデュアルバンドΔΣ変調器のブロック図である。 マルチバンドΔΣ変調器のブロック図である。 マルチバンドΔΣ変調器の出力のパワースペクトラムである。 第1例に係る通信機のブロック図である。 第2例に係る通信機のブロック図である。 第3例に係る通信機のブロック図である。 第4例に係る通信機のブロック図である。 第5例に係る通信機のブロック図である。 第5例に係るΔΣ変調器の出力のパワースペクトラムである。 ランレングスの大きさを示すグラフである。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態:デュアルバンドΔΣ変調器]
図1は、本実施形態に係るΔΣ変調器1を示している。このΔΣ変調器1には、周波数の異なる2つの入力信号U,Uを入力可能である。ΔΣ変調器1は、2つの入力信号U,Uがそれぞれ入力される2つの入力ポート(第1入力ポート10a及び第2入力ポート10b)と、単一の出力ポート10dと、を有している。
ΔΣ変調器1の出力ポート10dは、2つの入力信号が含まれる単一の出力信号(量子化信号;ΔΣ変調信号)を出力する。
図1に示すΔΣ変調器1は、複数のループフィルタ(第1ループフィルタ11及び第2ループフィルタ12)と、加算器15と、量子化器16と、を備えている。
ループフィルタ11,12は、入力ポート10a,10bの数に対応した数(2つ)ほど設けられている。
複数のループフィルタ11,12は、それぞれ、対応する入力ポート10a,10bに接続された第1入力部11a,12aと、フィードバック経路18a,18bを介して量子化器16の出力側に接続された第2入力部11b,12bと、を備えている。
第1入力部11a,12aには、対応する入力ポート10a,10bに入力された入力信号U,Uが入力される。第2入力部11b,12bには、量子化器1の出力Vのフィードバック信号Vが入力される。
複数のループフィルタ11,12は、それぞれ、差分器110a,120aを備えている。差分器110a,120aには、それぞれ、第1入力部11a,12aに接続された第1経路110d,120dと、第2入力部11b,12bに接続された第2経路110e,120eと、が接続されている。差分器110a,120aは、それぞれ、入力信号U,Uと、量子化器16からのフィードバック信号Vとの差分U−V,U−Vを求める。
差分器110a,120aによって求められた差分U−V,U−Vは、各ループフィルタ11,12に設けられた内部フィルタ110b,120bに入力される。なお、第1ループフィルタ11の内部フィルタ110bの伝達関数をL(z)と表現し、第2ループフィルタ11の内部フィルタ120bの伝達関数をL(z)と表現する。
各内部フィルタ110b,120bの出力L(z)(U(z)−V(z)),L(z)(U(z)−V(z))は、各ループフィルタ11,12に設けられた加算器110c,120cに与えられる。
各加算器110c,120cには、第1入力部11a,12aに入力される入力信号U,Uを加算器110c,120cに入力させるためのフィードフォワード経路110f,120fが接続されている。したがって、各加算器110c,120cは、入力信号U1,U2と、内部フィルタ110b,120bの出力L(z)(U(z)−V(z)),L(z)(U(z)−V(z))と、を加算する。
各加算器110c,120cの出力(各ループフィルタ11,12の出力)Y,Yは、加算器15によって加算される。なお、本実施形態では、2入力加算器15,110c,120cを3つ用いているが、3つの2入力加算器15,110c,120cに代えて、1つの4入力加算器を用いてもよい。
加算器15の出力Yは、量子化器16に与えられる。本実施形態の量子化器16は、2レベル量子化器であり、1bitのパルス列を量子化信号(ΔΣ変調信号)Vとして出力する。この量子化信号VがΔΣ変調器1の出力信号となる。なお、出力信号Vは、フィードバック経路18a,18bを介して各ループフィルタ11,12に与えられる。
さて、図1に示すΔΣ変調器1(複数入力一出力システム)の理解を容易にするため、従来のΔΣ変調器(一入力一出力システム)を説明する。
従来のΔΣ変調器には、ローパスΔΣ変調器とバンドパス(Band-pass Delta-Sigma Modulator)とがある。ローパスΔΣ変調器は、量子化雑音阻止帯域の中心が周波数ゼロにあるものをいい、バンドパスΔΣ変調器は、ゼロ以外の所望の周波数帯域に量子化雑音阻止帯域の中心があるものをいう。バンドパスΔΣ変調器の雑音伝達関数NTFは、所望の周波数帯域における量子化雑音をバンドストップフィルタによって抑制する特性を持つ。
ローパスΔΣ変調器は、雑音伝達関数NTF(z)(Noise Transfer Function)の零点が単位円上の周波数ゼロ(z=1)付近にあり、バンドパス型ΔΣ変調器は、雑音伝達関数NTFの零点が単位円上の周波数ゼロ(z=1)以外の位置にある。
したがって、所望の帯域の入力信号に対して動作するバンドパスΔΣ変調器を得るには、ローパスΔΣ変調器の雑音伝達関数NTFにおける零点及び極を、所望の帯域に対応する単位円上の位置へ回転させればよい。
そこで、以下では、まず、ローパスΔΣ変調器について説明する。図2は、2次のCRFB(cascade of resonators with distributed feedback)構造のローパスΔΣ変調器(Low-Pass Delta-Sigma Modulator)を示している(非特許文献1参照)。
CRFB構造のローパスΔΣ変調器は、低歪モード(low distortion mode)を持つ。この低歪モードでは、図2において、a1=b1,a2=b2,b3=1となり、ΔΣ変調器の信号伝達関数(Signal Transfer Function)STF(z)=1となる。したがって、図2に示すΔΣ変調器の出力V(z)は、下記の式(1)のように簡単化される。なお、U(z)はΔΣ変調器の入力であり、E(z)はΔΣ変調器の量子化雑音である。

ここで、
図3は、図2に示すΔΣ変調器の等価回路を示している。したがって、図3のΔΣ変調器の出力V(z)も前述の式(1)式(2)で表される。
図3に示すΔΣ変調器は、図2に示す回路よりも簡単化されている。図3に示すΔΣ変調器では、差分器101によって入力信号U(z)と出力信号V(z)との差分U(z)−V(z)が求められ、その差分U(z)−V(z)が、伝達関数L(z)で示されるフィルタ102に与えられる。フィルタ102の出力L(z)(U(z)−V(z))は、加算器103に与えられる。加算器103には、入力信号U(z)が直接入力される。
図3におけるフィルタ102の伝達関数L(z)は、下記の式(3)のようにΔΣ変調器の雑音伝達関数NTF(z)を用いて示される。雑音伝達関数NTF(z)は、ΔΣ変調器の入力信号の周波数帯域の量子化雑音を抑制する特性(バンドストップ特性又はハイパス特性)を有する。
図1に示す複数のループフィルタ11,12それぞれの構成は、図3において符号100で示す点線で囲まれた範囲の構成(ループフィルタとしての構成)に対応している。
つまり、図1に示すΔΣ変調器1は、複数の従来のΔΣ変調器を、量子化器が共用されるように組み合わせたものである。なお、複数の従来のΔΣ変調器の組み合わせ方としては、雑音阻止帯域が異なる複数のバンドパスΔΣ変調器の組み合わせであってもよいし、バンドパスΔΣ変調器とローパスΔΣ変調器との組み合わせであってもよい。
図3のフィルタ102(伝達関数L(z))に対応する第1ループフィルタ11のフィルタ(内部フィルタ)110bは、第1雑音伝達関数NTF(z)を用いて示される伝達関数L(z)を持つ。第1雑音伝達関数NTF(z)は、第1ループフィルタ11に入力される第1入力信号U(z)のキャリア周波数(第1周波数)f1における量子化雑音を抑制する特性(バンドストップ特性)を有するものである。
同じく図3のフィルタ102(伝達関数L(z))に対応する第2ループフィルタ12のフィルタ(内部フィルタ)120bは、第2雑音伝達関数NTF(z)を用いて示される伝達関数L(z)を持つ。第2雑音伝達関数NTF(z)は、第2ループフィルタ12に入力される第2入力信号U(z)のキャリア周波数(第1周波数)f2における量子化雑音を抑制(バンドストップ特性)する特性を有するものである。
図1のΔΣ変調器1の出力信号V(z)は、下記の式(4)のように表される。なお、式(4)において、STF(z)は第1入力信号U(z)についての第1信号伝達関数であり、STF(z)は第2入力信号U(z)についての第2信号伝達関数であり、NTF(z)はΔΣ変調器全体での雑音伝達関数である。

ここで、





以下では第1入力信号U(z)の第1周波数f1を800MHzとし、第2入力信号U(z)の第2周波数f2を1.5GHzとした場合の実施例について説明する。なお、各ループフィルタ11,12は、それぞれ、6次(M=6)のCRFB構造とした。また、ΔΣ変調器1のサンプリング周波数fsは、3.9GHzとした。
第1入力信号U(z)の周波数f1が800MHzであるため、その第1入力信号U(z)が入力される第1ループフィルタ11の第1雑音伝達関数NTF(z)は、雑音阻止帯域の中心が、ほぼ800MHzとなるように設定される。具体的には、図4(a)に示すように、零点(Zero)zxi及び極(Pole)pxiが、単位円上の800MHz(fs/4=約1GHzよりもやや手前)付近に存在するように設定した
また、第2入力信号U(z)の周波数f2が1.5GHzであるため、その第2入力信号U(z)が入力される第2ループフィルタ12の第2雑音伝達関数NTF(z)は、雑音阻止帯域の中心が、ほぼ1.5GHzとなるように設定される。具体的には、図4(b)に示すように、零点(Zero)zxi及び極(Pole)pxiが、単位円上の1.5GHz付近(fs/4=約1GHzとfs/2=約2GHzとの間)に存在するように設定した。
なお、NTF(z)、NTF(z)を決定するための全ての変数は、式(10)に示すように、零点(Zero)zxi及び極(Pole)pxiによって決定される(零点及び極の最適化については非特許文献1参照)。
以上のように第1雑音伝達関数NTF(z)及び第2雑音伝達関数NTF(z)が設定されると、ΔΣ変調器1の雑音伝達関数NTF(z)は図5に示すようになる。
図5から明らかなように、雑音伝達関数NTF(z)は、800MHz及び1.5GHzという2つの周波数(デュアルバンド)に対応して、800MHz付近及び1.5GHz付近の2ヶ所に阻止帯域(ノッチ)を有する。
したがって、量子化雑音はこれら2つの阻止帯域外に移行し、これら2つの阻止帯域内では量子化雑音が抑制される(ノイズシェイピング)。
図6は、以上のように第1雑音伝達関数NTF(z)及び第2雑音伝達関数NTF(z)が設定された場合の第1信号伝達関数STF(z)及び第2信号伝達関数STF(z)を示している。
図6から明らかなように、第1入力信号U(z)=800MHzについての第1信号伝達関数STF(z)は、800MHz付近の帯域(通過帯域)では、信号をほとんど減衰させない一方、第2入力信号U(z)の周波数である1.5GHz付近に阻止帯域(ノッチ)を持つ。
また、第2入力信号U(z)=1.5GHzについての第2信号伝達関数STF(z)は、1.5GHz付近の帯域(通過帯域)では、信号をほとんど減衰させない一方、第1入力信号U(z)の周波数である800MHz付近に阻止帯域(ノッチ)を持つ。
図7は、図1のΔΣ変調器1の出力V(z)のパワースペクトラム(simulated power spectrum)を示している。図7に示すように、800MHzの信号と1.5GHzの信号が出力されており、800MHz付近及び1.5GHz付近に阻止帯域が形成されている。これらの阻止帯域内では、量子化雑音が十分に抑制されている。
したがって、図1のΔΣ変調器1では、周波数の異なる複数の入力信号U(z),U(z)が同時に入力されても、各入力信号U(z),U(z)が互いに干渉することなく、複数の入力信号U(z),U(z)を、同時に単一の出力信号V(z)に含めて出力することができる。
図8〜10は、5MHzの帯域幅を持つ800MHz及び1.5GHzのLTE(Long Term Evolution)信号を、ΔΣ変調器1への2つの入力信号U,Uとした場合の実測結果を示している。
図8は、ΔΣ変調器1の出力Vである1ビットデジタルデータストリーム(3.9Gbps)における800MHz付近のパワースペクトラムであり、ACLRが約50dBmであることがわかる。
図9は、ΔΣ変調器1の出力Vである1ビットデジタルデータストリーム(3.9Gbps)における1.5GHz付近のパワースペクトラムであり、ACLRが約48dBmであることがわかる。
また、図10は、ΔΣ変調器1の出力Vのパワースペクトラムの全体象を示している。
図7〜図10から明らかなように、図1のΔΣ変調器1の出力Vのスペクトラムは、RF信号のスペクトラムとして良好なものである。
したがって、図1のΔΣ変調器1は、複数のRF信号を1ビットデジタルデータストリームとして出力するのに適している。
[2.第2実施形態:一般化したΔΣ変調器の構造]
ΔΣ変調器1の各ループフィルタ11,12の構造は、一例であり、図1に示す構造に限定されるものではなく、従来の一入力一出力のΔΣ変調器におけるループフィルタが採り得る様々な構造を、ΔΣ変調器1の各ループ付いる多11,12の構造として採用することができる。
図11に、ループフィルタ11,12を一般化したΔΣ変調器1を示す。
図11の第1ループフィルタの特性は、図1のL1(z)に代えて、LA(z),LB(z)を用いて表される。図11の第2ループフィルタの特性は、図1のL(z)に代えて、LA(z),LB(z)を用いて表される。これらの伝達関数LA(z),LB(z),LA(z),LB(z)については後述する。
その他の点は、図1と同様である。
[3.第3実施形態:マルチバンド対応ΔΣ変調器]
図12は、周波数の異なる3つの入力信号U,U,Uを入力可能なマルチバンド対応ΔΣ変調器1を示している。
図12のΔΣ変調器1は、図1のΔΣ変調器1と同様の第1ループフィルタ11及び第2ループフィルタ12のほか、第3入力信号Uに対応する第3ループフィルタ13を備えている。第3ループフィルタは、第3入力信号Uが入力される第3入力ポート10cに対応して設けられており、基本的に、第1ループフィルタ11及び第2ループフィルタ12と同様の構成を有している。
つまり、第3ループフィルタ13は、第3入力ポート10cに接続された第1入力部13aと、第3フィードバック経路18cを介して量子化器16の出力側に接続された第2入力部13bと、を備えている。
また、第3ループフィルタ13は、差分器130a、内部フィルタ130b、加算器103c、フィードフォワード経路130fなどを有している。
図12の加算器15は、3つのループフィルタ11,12,13の出力Y,Y,Yを加算して量子化器16に与える。
量子化器16の出力Vは、3つのループフィルタ11,13,13それぞれの第2入力部11b,12b,13bにフィードバックされる。
図12のΔΣ変調器1の出力Vは、下記の式(11)のように表される(式(11)においてN=3の場合)。式(11)において、STF(z)は第i入力信号U(z)についての第i信号伝達関数である。なお、ΔΣ変調器1に入力可能な入力信号の数Nは、2又は3に限定されず、4以上であってもよい。

ここで、



図13は、5MHzの帯域幅を持つ800MHz、1.5GHz、及び500MHzのLTE(Long Term Evolution)信号を、ΔΣ変調器1への3つの入力信号U,U,Uとした場合のΔΣ変調器1の出力V(z)のパワースペクトラム(simulated power spectrum)を示している。
なお、第1ループフィルタ11の第1雑音伝達関数NTF(z)は、第1入力信号Uの周波数(800MHz)に対応させて、雑音阻止帯域の中心が、ほぼ800MHzとなるように設定した。
また、第2ループフィルタ12の第2雑音伝達関数NTF(z)は、第2入力信号Uの周波数(1.5GHz)に対応させて、雑音阻止帯域の中心が、ほぼ1.5GHzとなるように設定した。
また、第3ループフィルタ13の第3雑音伝達関数NTF(z)は、第3入力信号Uの周波数(500MHz)に対応させて、雑音阻止帯域の中心が、ほぼ500MHzとなるように設定した。
図13に示すように、500MHzの信号と、800MHzの信号と、1.5GHzの信号が出力されており、500MHz付近、800MHz付近及び1.5GHz付近に阻止帯域が形成されている。これらの阻止帯域内では、量子化雑音が十分に抑制されている。
このように入力信号の数を3にした場合にも良好な結果が得られている。
[4.一般化したΔΣ変調器の出力]
以上のように、前述のΔΣ変調器1における複数のループフィルタの数は、特に限定されない。
したがって、図11に示す一般化したΔΣ変調器1が、任意の数のループフィルタを持つようにした場合、そのようなΔΣ変調器1の出力は、各ループフィルタの伝達関数LA,LBを用いて、次のように表される。なお、LA,LBは、第iループフィルタ11,12の伝達関数であり、Nは入力信号(ループフィルタ)の数である。
上記式より、第iループフィルタ11,12の伝達関数LA,LBは、対応する第i入力信号それぞれについて所望される信号伝達関数STFi雑音伝達関数NTFiが決まれば、計算にて求めることができる。この計算は、従来の一入力一出力のΔΣ変調器におけるループフィルタにおける計算と同等のものとなるため、容易に計算することができる。
なお、図1のように、各ループフィルタ11,12が、内部フィルタ110b,120bに入力信号U(z)とフィードバック信号V(z)との差分U(z)−V(z)だけが入力されるものであり、かつ、フィードフォワード経路110f,120fを有するものである場合、伝達関数LA,LBについては、
LA(z)=L(z)+1
LB(z)=−L(z)
が成り立つ。
また、図1の各ループフィルタ11,12が、フィードフォワード経路110f,120fを有していない場合、
LA(z)=L(z)
LB(z)=−L(z)
が成り立つ。
このように、入力信号U(z)とフィードバック信号V(z)との差分U(z)−V(z)だけが入力される内部フィルタ110b,120bを持つ場合、各ループフィルタ11,12について一つの伝達関数L(z)を決定するだけでよいため、設計が容易となる。
また、図1のようにフィードフォワード経路110f、120fを有していると、出力すべき入力信号U(z)を、内部フィルタ110b,120bを経由することなく、直接、量子化器側に与えることができるため、設計が容易となる。
[5.通信装置]
[5.1 通信装置の第1例]
図14は、前述の実施形態に係るΔΣ変調器1を用いた通信機(無線通信機)200の第1例を示している。
この通信機200は、複数の直交変調部(一次変調器)21,22と、ΔΣ変調器(二次変調器)1と、バンドバスフィルタ25と、を備えている。
複数の直交変調部21,22は、それぞれ、ベースバンド信号I,Q,I,Qに対して、一次変調として直交変調を行う。複数の直交変調部21,22は、ローカル発信器21a,22aの周波数w,wがそれぞれ異なっているため、それぞれ異なる周波数の無線信号(RF信号)U,Uを出力する。
複数の無線信号U,Uは、ΔΣ変調器1への入力信号となる。
ΔΣ変調器1は、複数の無線信号U,Uに対して、二次変調としてΔΣ変調を行い、複数の無線信号U,Uを含むパルス信号を出力する。ΔΣ変調器1の出力信号は、伝送路24を介して、バンドパスフィルタ25に与えられる。このバンドパスフィルタ25は、複数の無線信号U,Uを共に通過させる通過帯域を持つ。バンドパスフィルタ25によって、複数の無線信号U,Uの帯域外の雑音が除去される。
複数の無線信号U,Uの周波数が互いに近接している場合には、ΔΣ変調器1から複数の無線信号U,Uが出力される場合であっても、バンドパスフィルタ25は、図14に示すように一つでもよい。
バンドパスフィルタ25から出力された複数の無線信号U,Uは、パワーアンプ31によって増幅され、アンテナ32から出力される。
この通信装置200では、周波数の異なる複数の無線信号を同時に出力するデュアルバンドモード(マルチバンドモード)で動作することができる。
また、ΔΣ変調器1の出力はデジタル信号であるため、無線信号をデジタル信号として、光ファイバーなどの高速伝送路24で遠方まで伝送することが可能である。
また、一つのデジタルデータストリーム中に複数の無線信号を含めることができるため、複数の無線信号を一本の伝送路24で送信することができる。
[5.2 通信装置の第2例]
図15は、前述の実施形態に係るΔΣ変調器1を用いた通信機(無線通信機)200の第2例を示している。
第2例に係る通信機200では、バンドパスフィルタ25,26が、無線信号,Uの数に対応して複数(2つ)設けられている。ΔΣ変調器1の出力は、伝送路24を介して、複数のバンドパスフィルタ25,26それぞれに与えられる。
複数の無線信号U,Uの周波数が離れている場合には、それぞれの無線信号U,Uの周波数に対応した通過帯域を持つ複数のバンドパスフィルタ25,26を用いることで、無線信号U,Uの帯域外の雑音を適切に除去することができる。
その他の点は、図14と同様である。また、図15においては、バンドパスフィルタ25,26以降の回路は省略した。
[5.3 通信装置の第3例]
図16は、前述の実施形態に係るΔΣ変調器1を用いた通信機(無線通信機)200の第3例を示している。
第3例に係る通信機200は、第2例に係る通信機200の一方のバンドパスフィルタ26の出力側に周波数混合器(周波数変換器)28を設けたものである。第3例において、その他の点は第2例と同様である。
第3例では、第1直交変調部21から出力される信号(周波数w1)は、無線周波数信号(RF信号)であり、第2直交変調部22から出力される信号(周波数w2)は、比較的周波数の低い中間周波数信号(IF信号)である。
第3例では、バンドパスフィルタ26から出力されたIF信号に対して周波数混合器28による周波数変換が行われ、w2+w3(w3はローカル発振器29の周波数)のRF信号に変換される。
ΔΣ変調器1への入力信号の周波数を低く抑えておいて、ΔΣ変調器1の出力側で周波数変換を行うことで、ΔΣ変調器1の動作周波数(サンプリング周波数)を低く抑えることができる。
なお、図16では、複数の入力信号の一方だけがIF信号であるが、両方ともIF信号であってもよい。
[5.4 通信装置の第4例]
図17は、前述の実施形態に係るΔΣ変調器1を用いた通信機(無線通信機)200の第4例を示している。
第4例では、ΔΣ変調器1の一方の入力ポートには、直交変調部21の出力信号(IF信号;周波数w1)が入力されるのに対し、他方の入力ポートには、周波数変換のためのローカル信号(ローカル発振信号;周波数w2)が入力される。
第4例のΔΣ変調器1は、周波数w1のIF信号と周波数w2のローカル信号とを含むデジタル信号を出力する。
これらの信号は、バンドパスフィルタ25,26によって雑音が除去された後に、周波数混合器(周波数変換器)28に入力される。周波数混合器28によって、周波数w1のIF信号は、周波数w1+w2のRF信号に変換される。
第4例の通信機200のように、ΔΣ変調器1にRF信号ではなくIF信号が入力されるようにすることで、ΔΣ変調器1の動作周波数(サンプリング周波数)を低く抑えることができる。
しかも、デジタル信号であるΔΣ変調器1の出力に、周波数変換のためのローカル信号も含まれるため、BPF25,26以降のアナログ回路は、ローカル発振器を具備する必要がなく、構成を簡素化することができる。
[5.5 通信装置の第5例]
図18は、前述の実施形態に係るΔΣ変調器1を用いた通信機(無線通信機)200の第5例を示している。
第5例では、ΔΣ変調器1の一方の入力ポートには、直交変調部21の出力信号(周波数w1)が入力されるのに対し、他方の入力ポートには、何も入力されない。
ΔΣ変調器1の2つのループフィルタ11,12のうち、直交変調部21の出力信号が入力される入力ポートに対応するループフィルタは、その雑音阻止帯域の中心が、その出力信号の周波数w1となるように設定される。
一方、無入力となる入力ポートに対応するループフィルタは、雑音阻止帯域の中心が周波数ゼロ付近に設定される(ハイパスフィルタ)。
図19は、図18において、直交変調部21の出力信号の周波数w1が1.5Gである場合におけるΔΣ変調器1の出力のパワースペクトラムを示している。
図19から明らかなように、ΔΣ変調器1の出力には1.5GHzの信号が含まれているが、周波数ゼロには信号が存在しない。ただし、1.5GHz付近及び0Hz付近の双方で雑音が抑制されている。
このように、第5例によれば、ΔΣ変調器1は、特定の周波数の信号を含み、かつ、直流成分(周波数ゼロの信号)が少ない出力信号を出力することができる。
ΔΣ変調器1の出力信号において直流成分を低減すると、ランレングスを小さくすることができる。
つまり、図20に示すように、パルス信号において0(図20(a)参照)又は1(図20(b)参照)が連続する回数が2〜4程度に抑えられており、ランレングスが小さくなっていることがわかる。
ランレングスを小さくするとパルス信号の歪を抑制できる。したがって、第5例では、ΔΣ変調器1の出力信号(パルス信号)の歪を抑制することができる。
なお、第5例では、周波数ゼロ付近に信号も雑音も少ない信号を得たが、無入力となるループフィルタの雑音阻止帯域の中心を所望の周波数に設定することで、所望の周波数付近に信号も雑音も少ない信号を得ることができる。
[6.付記]
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 ΔΣ変調器
10a,10b,10c 入力ポート
10d 出力ポート
11 第1ループフィルタ
110a 差分器(加算器)
110b 内部フィルタ(フィルタ)
110c 加算器
110f フィードフォワード経路
12 第2ループフィルタ
120a 差分器(加算器)
120b 内部フィルタ(フィルタ)
120c 加算器
120f フィードフォワード経路
13 第3ループフィルタ
130b 内部フィルタ(フィルタ)
130c 加算器
130f フィードフォワード経路
15 加算器
16 量子化器
18a,18b,18c フィードバック経路

Claims (5)

  1. 周波数の異なる複数の入力信号がそれぞれ入力される複数の入力ポートと、
    複数の前記入力ポートそれぞれに対応して設けられた複数のループフィルタと、
    複数の前記ループフィルタの出力を加算する加算器と、
    前記加算器の出力を量子化する量子化器と、
    を備え、
    複数の前記ループフィルタは、それぞれ、対応する前記入力ポートに入力される入力信号と、前記量子化器の出力のフィードバック信号と、が入力されるよう設けられ、
    複数の前記ループフィルタは、それぞれ、対応する前記入力ポートに入力される入力信号の周波数付近の雑音を阻止する特性を有する
    ΔΣ変調器。
  2. 複数の前記ループフィルタは、それぞれ、
    対応する前記入力ポートに入力される入力信号と前記量子化器の出力のフィードバック信号との差を求める差分器と、
    前記差分器の出力が入力される内部フィルタと、
    を備えている
    請求項1記載のΔΣ変調器。
  3. 複数の前記ループフィルタは、それぞれ、対応する前記入力ポートに入力される入力信号を前記内部フィルタの出力に加算するフィードフォワード経路を更に備えている
    請求項2記載のΔΣ変調器。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記ΔΣ変調器と、
    前記ΔΣ変調器の前記量子化器から出力された出力信号が通過する1又は複数のバンドパスフィルタと、
    を備え、
    一又は複数の前記バンドパスフィルタは、前記ΔΣ変調器への複数の前記入力信号それぞれを通過させる通過帯域を有する
    通信装置。
  5. 一又は複数の前記バンドパスフィルタを通過した複数の前記入力信号が入力される周波数混合器を更に備え、
    前記ΔΣ変調器への複数の前記入力信号には、前記周波数混合器による周波数変換に用いられるローカル信号が含まれる
    請求項4記載の通信装置。
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