JP2014165307A - フェライト磁器組成物、及びセラミック電子部品 - Google Patents

フェライト磁器組成物、及びセラミック電子部品 Download PDF

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Abstract

【課題】Cuを主成分とする導電性材料と同時焼成しても、内部の比抵抗が低下することもなく、十分な絶縁性能を確保することができるようにする。
【解決手段】少なくともFe、Mn、Ni、及びZnを含有し、CuOの含有モル量が0〜5mol%であり、Feの含有モル量xmol%、及びMnの含有モル量ymol%を(x,y)で表したときに、(x,y)が、A(30,1)、B(47,1)、C(47,7.5)、D(45,7.5)、E(45,10)、F(35,10)、G(35,7.5)、及びH(30,7.5)で囲まれる領域にあり、かつ、少なくともSi、B、及びアルカリ土類金属Mを含むガラス成分が、Fe3、Mn、NiO、ZnO、及びCuOに換算したときの総計100重量部に対し1重量部以上(好ましくは5重量部以下)含有されている。
【選択図】図1

Description

本発明はフェライト磁器組成物、及びセラミック電子部品に関し、より詳しくは、Cuを主成分とした導電性材料との同時焼成が可能なフェライト磁器組成物、該フェライト磁器組成物を使用したコモンモードチョークコイル等のセラミック電子部品に関する。
従来より、各種電子機器の信号ラインや電源ラインとGND(グランド)間で発生するコモンモードのノイズ除去にはコモンモードチョークコイルが広く使用されている。
このコモンモードチョークコイルでは、ノイズ成分はコモンモードで伝送され、信号成分はノーマルモードで伝送されることから、これらの伝送モードの相違を利用し、信号とノイズに分離してノイズ除去を行っている。
一方、Ni−Zn等のスピネル型結晶構造を有するフェライト系磁器を使用したセラミック電子部品も広く使用されており、従来より、フェライト材料の開発も盛んに行なわれている。
例えば、特許文献1には、フェライト材料からなる磁性体部と、Cuを主成分とする導電部とを有し、前記磁性体部は、3価のFeと少なくとも2価のNiを含む2価元素とを含有すると共に、前記Feの含有量が、Feに換算し、モル比で20〜48%であり、かつ、前記Fe及びMnの総計に対するMnの比率が、Mn及びFeにそれぞれ換算し、モル比で50%未満(0%を含む。)となるように、前記磁性体部は前記Mnを含有したセラミック電子部品が提案されている。
特許文献1では、Cu系材料とフェライト材料とを同時焼成しても、比抵抗ρを向上させることができ、コイル導体が積層方向に券回された積層コイル部品では、10以上の比抵抗ρを有する絶縁性能を確保することが可能である。
国際公開2011/108701号(請求項1、段落番号〔0037〕、〔0077〕〜〔0084〕等)
特許文献1では、Cuを含有した導電性ペーストを磁性体シートに塗布してコイルパターン及びビア導体を形成し、次いで、前記コイルパターン及びビア導体の形成された複数の磁性体シートを積層し、脱脂処理を行った後、焼成処理を行って内部導体の埋設された部品素体を作製している。
上記脱脂処理は、磁性体シートや導電性ペーストに含有される有機バインダを消失・除去するために行われるが、斯かる脱脂処理はコイル導体となるCuが酸化されないように、酸素濃度をCu−CuO平衡酸素分圧以下に雰囲気調整して行う必要がある。
ところが、Cu−CuO平衡酸素分圧以下の雰囲気で脱脂処理を行った場合、有機バインダを完全には除去し難い。すなわち、上述した脱脂処理では、磁性体表面及び表面近傍の有機バインダは除去できるものの、磁性体の内部に存在する有機バインダを完全に除去するのは困難であり、有機バインダ中の炭素成分が残存するおそれがある。そして、このように磁性体内部に炭素成分が残存した状態で焼成処理を行うと、磁性体内部の比抵抗ρが磁性体の表面や表面近傍に比べて低下するおそれがある。
この場合、特許文献1で例示された積層コイル部品のように積層方向にコイル導体が埋設されている場合は、磁性体の表面や表面近傍の比抵抗ρは十分に高いので、外部電極の表面に電解めっきを施す際に、Ni皮膜やSn皮膜等のめっき皮膜が磁性体表面に付着することもない。
しかしながら、コモンモードチョークコイル等の電極間で電位差が生じるコイル部品の場合、磁性体の表面や表面近傍に比べて磁性体内部の比抵抗ρが低下すると、十分に絶縁性能を確保することができなくなり、信頼性低下を招くおそれがある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、Cuを主成分とする導電性材料と同時焼成しても、内部の比抵抗が低下することもなく、十分な絶縁性能を確保することができるフェライト磁器組成物、該フェライト磁器組成物を使用した高信頼性を有するコモンモードチョークコイル等のセラミック電子部品を目的とする。
本発明者は、一般式X・MeO(XはFe、Mn、MeはZn、Cu、Ni)で表わされるスピネル型結晶構造のフェライト材料について鋭意研究を行ったところ、CuOの含有モル量を5mol%以下とした上で、FeとMnとの配合量を特定範囲とし、さらにSi、B、及びアルカリ土類金属を含有したガラス成分を所定量含有することにより、Cu系材料とフェライト材料とを同時焼成しても、表面や表面近傍のみならず内部での比抵抗ρも十分に高く、所望の良好な絶縁性を有するフェライト磁器組成物を得ることができるという知見を得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係るフェライト磁器組成物は、少なくともFe、Mn、Ni、及びZnを主成分として含有したフェライト磁器組成物であって、Cuの含有モル量がCuOに換算して0〜5mol%であり、FeをFeに換算したときの含有モル量xmol%、及びMnをMnに換算したときの含有モル量ymol%を(x,y)で表したときに、(x,y)が、A(30,1)、B(47,1)、C(47,7.5)、D(45,7.5)、E(45,10)、F(35,10)、G(35,7.5)、及びH(30,7.5)で囲まれる領域にあり、かつ少なくともSi、B、及びアルカリ土類金属を含有したガラス成分が、Si、B、及びアルカリ土類金属Mを含むガラス成分が、Fe、Mn、Ni、Zn、及びCuをそれぞれFe3、Mn、NiO、ZnO、及びCuOに換算したときの総計100重量部に対し1重量部以上含有されていることを特徴としている。
これによりCuが酸化されたり、Feが還元されるのを抑制でき、しかも結晶粒界にガラス相を形成することができることから、フェライト磁器組成物の表面や表面近傍のみならず、内部の比抵抗ρを高く維持することができ、所望の絶縁性能を確保することができる。
また、本発明のフェライト磁器組成物は、前記ガラス成分の含有量が、前記総計100重量部に対し5重量部以下であるのが好ましい。
これにより所望の良好な透磁率を確保することが可能となる。
また、本発明のフェライト磁器組成物は、前記ガラス成分に含有されるSi、B、及びアルカリ土類金属Mの含有量が、それぞれSiO換算で20〜55重量%、B換算で10〜20重量%、MO換算で25〜60重量%であるのが好ましい。
これにより比抵抗ρの向上に寄与するガラス相を結晶粒界に十分に形成することができる。
また、本発明のフェライト磁器組成物は、前記アルカリ土類金属が、Ba、Sr、Ca、及びMgの中から選択された少なくとも一種を含んでいるのが好ましい。
また、本発明のフェライト磁器組成物は、前記Znの含有モル量が、ZnOに換算して33mol%以下であるのが好ましい。
これにより、十分なキュリー点を確保することができ、使用時の温度が高い条件下での動作保証がなされたセラミック電子部品を得ることができる。
さらに、本発明のフェライト磁器組成物は、前記Znの含有モル量が、ZnOに換算して6mol%以上であるのが好ましい。
これにより良好な透磁率を確保することが可能となる。
また、本発明に係るセラミック電子部品は、コイル導体が部品素体に埋設されたセラミック電子部品であって、前記コイル導体が、Cuを主成分とする導電性材料で形成されると共に、前記部品素体が、上述したいずれかに記載のフェライト磁器組成物で形成されていることを特徴としている。
これにより、Cu系材料と同時焼成しても所望の良好な電気特性や磁気特性を有すると共に、絶縁性能が良好な高信頼性を有するセラミック電子部品を得ることが可能となる。
さらに、本発明のセラミック電子部品は、前記コイル導体が、第1のコイル導体と第2のコイル導体とを有すると共に、前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とが一定の離間距離を有して対向状となるように前記部品素体に埋設されているのが好ましい。
これにより、電極間に電位差が生じるようなコモンモードチョークコイル等の場合であっても、内部の比抵抗ρが低下するのを抑制できることから十分な絶縁性能を確保することができる。
また、本発明のセラミック電子部品は、前記コイル導体と前記部品素体は同時焼成されてなるのが好ましい。
これにより、Cu系材料と同時焼成しても所望の良好な電気特性や磁気特性を有し、絶縁性能が良好で高信頼性を有するセラミック電子部品を得ることが可能となる。
また、本発明のセラミック電子部品は、Cu−CuOの平衡酸素分圧以下の雰囲気で焼成されてなるのが好ましい。
これにより、コイル導体にCuを主成分とする導電性材料を使用して部品素体となるべきフェライト磁器組成物と同時焼成しても、Cuが酸化されることなく、焼結させることができ、絶縁性能が良好な高信頼性を有するコモンモードチョークコイル等のセラミック電子部品を得ることができる。
上記フェライト磁器組成物によれば、Cuの含有モル量がCuOに換算して0〜5mol%であり、FeをFeに換算したときの含有モル量xmol%、及びMnをMnに換算したときの含有モル量ymol%を(x,y)で表したときに、(x,y)が、A(30,1)、B(47,1)、C(47,7.5)、D(45,7.5)、E(45,10)、F(35,10)、G(35,7.5)、及びH(30,7.5)で囲まれる領域にあり、かつ、少なくともSi、B、及びアルカリ土類金属Mを含有したガラス成分が、Fe、Mn、Ni、Zn、及びCuをそれぞれFe3、Mn、NiO、ZnO、及びCuOに換算したときの総計100重量部に対し1重量部以上含有されているので、Cu系材料と同時焼成してもCuが酸化されたり、Feが還元されるのを抑制でき、しかも結晶粒界にガラス相を形成することができることから、フェライト磁器組成物の表面や表面近傍のみならず、内部の比抵抗ρを高く維持することができ、所望の絶縁性能を確保することができる。
具体的には、比抵抗ρは10Ω・cm以上の良好な絶縁性能を確実に得ることができる。
また、本発明のセラミック電子部品によれば、コイル導体が部品素体に埋設されたセラミック電子部品であって、前記コイル導体が、Cuを主成分とする導電性材料で形成されると共に、前記部品素体が、上述したいずれかに記載のフェライト磁器組成物で形成されているので、Cu系材料と同時焼成しても部品素体の内部まで良好な比抵抗を確保できる。したがって、電極間に電位差が生じるようなコモンモードチョーク等のセラミック電子部品であっても、良好な絶縁性能を有し、高信頼性を確保することができる。
本発明に係るフェライト磁器組成物のFeとMnの組成範囲を示す図である。 本発明に係るセラミック電子部品としてのコモンモードチョークコイルの一実施の形態を示す斜視図である。 図2のA−A断面図である 図2の部品素体の分解斜視図である。 実施例1で作製された比抵抗測定用試料の断面図である。 上記比抵抗測定用試料の要部を示す分解斜視図である。
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
本発明の一実施の形態としてのフェライト磁器組成物は、一般式X・MeOで表わされるスピネル型結晶構造を有し、少なくとも3価の元素化合物であるFe、Mn、及び2価の元素化合物であるZnO、NiOを含み、必要に応じて2価の元素化合物であるCuOを含有し、かつ少なくともSi、B、及びアルカリ土類金属を含むガラス成分を含有している。
具体的には、本フェライト磁器組成物は、CuOの含有モル量が0〜5mol%とされ、Fe及びMnの各含有モル量は、図1に示すように、Feの含有モル量をxmol%、Mnの含有モル量をymol%としたときに、(x,y)が点A〜点Hで囲まれる斜線部Xの領域とされ、残部がZnO、NiOで形成されている。さらに、前記ガラス成分の含有量は、Fe、Mn、Ni、Zn、及びCuをそれぞれFe3、Mn、NiO、ZnO、及びCuOに換算したときの総量100重量部に対し1重量部以上とされている。
ここで、点A〜点Hの各点(x,y)は、以下の各含有モル量を示している。
A(30,1)、B(47,1)、C(47,7.5)、D(45,7.5)、E(45,10)、F(35,10)、G(35,7.5)、及びH(30,7.5)
次に、CuO、Fe、Mnの各含有モル量を、上述の範囲にした理由について詳述する。
(1)CuOの含有モル量
Ni−Zn系フェライトでは、融点が1026℃と低いCuOをフェライト磁器組成物中に含有させることにより、より低温での焼成が可能となり、焼結性を向上させることができる。
一方、Cuを主成分としたCu系材料とフェライト材料とを同時焼成する場合、大気雰囲気で焼成するとCuは容易に酸化されてCuOを生成することから、Cuが酸化しないような還元性雰囲気で焼成する必要がある。
しかしながら、このような還元性雰囲気で焼成した場合、CuOの含有モル量が5mol%を超えると、フェライト原料中のCuOが還元されてCuOの生成量が増加し、このため比抵抗ρの低下を招くおそれがある。
そこで、本実施の形態では、CuOの含有モル量が5mol%以下、すなわち0〜5mol%となるように配合量を調整している。
(2)Fe及びMnの各含有モル量
Feを化学量論組成から減量させ、Feの一部をMnで置換する形態でMnを含有させることにより、比抵抗ρが低下するのを回避でき、絶縁性の向上を図ることができる。
すなわち、スピネル型結晶構造(一般式X・MeO)の場合、化学量論組成では、X(X:Fe、Mn)とMeO(Me:Ni、Zn、Cu)との比率は50:50であり、XとMeOとは、通常、概ね化学量論組成となるように配合される。
そして、Cuを主成分としたCu系材料とフェライト材料とを同時焼成する場合、大気雰囲気で焼成するとCuは容易に酸化されてCuOを生成することから、Cuが酸化しないような還元性雰囲気で焼成する必要がある。一方、フェライト材料の主成分であるFeを還元性雰囲気で焼成するとFeを生成することから、Feに対しては酸化性雰囲気で焼成する必要がある。
しかしながら、Cu−CuOの平衡酸素分圧とFe−Feの平衡酸素分圧との関係から、800℃以上の温度で焼成する場合、Cu金属とFeとが共存する領域が存在しないことが知られている。
すなわち、800℃以上の温度では、Feの状態を維持するような酸化性雰囲気に酸素分圧を設定して焼成を行った場合、Cuも酸化されてCuOを生成する。一方、Cu金属の状態を維持するような還元性雰囲気に酸素分圧を設定して焼成を行った場合は、Feが還元されてFeを生成する。
このようにCuとFeとが共存する領域が存在しないことから、Cuが酸化しないような還元性雰囲気で焼成すると、FeがFeに還元されるため比抵抗ρが低下し、このため電気特性の劣化を招くおそれがある。
しかるに、Mnは、800℃以上の温度領域ではFeに比べ、より高い酸素分圧で還元性雰囲気となる。したがって、Cu−CuOの平衡酸素分圧以下の酸素分圧では、MnはFeに比べ強還元性雰囲気となり、このためMnが優先的に還元されて焼結を完了させることが可能となる。つまり、MnがFeに比べて優先的に還元されることから、FeがFeに還元される前に焼成処理を完了させることが可能となる。
このようにFeの含有モル量を化学量論組成から減量させる一方で、同じ3価の元素化合物であるMnをフェライト磁器組成物中に含有させることにより、Cu−CuOの平衡酸素分圧以下でCu系材料とフェライト材料とを同時焼成しても、Mnが優先的に還元されることから、Feが還元される前に焼結を完了させることが可能となり、Cu金属とFeとをより効果的に共存させることができる。そしてこれにより比抵抗ρが低下するのを回避でき、絶縁性を向上させることができる。
ただし、Feの含有モル量が30mol%未満になると、Feの含有モル量が過度に少なくなって却って比抵抗ρの低下を招き、所望の絶縁性を確保できなくなる。
また、Mnの含有モル量が1mol%未満になると、Mnの含有モル量が過度に少なくなるため、FeがFeに還元されやすくなり、比抵抗ρが低下し、十分な絶縁性を確保できない。
また、Feの含有モル量が47mol%を超える場合も、Feの含有モル量が過剰となってFeがFeに還元されやすくなり、比抵抗ρが低下し、十分な絶縁性を確保できない。
また、Mnの含有モル量が10mol%を超えた場合も、十分に大きな比抵抗ρを得ることができず、絶縁性を確保できない。
さらに、Feの含有モル量が30mol%以上であっても35mol%未満の場合、及びFeの含有モル量が45mol%以上であっても47mol%未満の場合は、Mnの含有モル量が7.5mol%を超えると、却って比抵抗ρの低下を招き、所望の絶縁性を確保できなくなる。
そこで、本実施の形態では、Fe及びMnの含有モル量は、図1の点A〜点Hに囲まれた領域となるように各含有モル量を調整している。
さらに、本フェライト磁器組成物は、少なくともSi、B、及びBa、Sr、Ca、及びMgに代表されるアルカリ土類金属を含むガラス成分を含有している。
すなわち、前記ガラス成分をフェライト磁器組成物中に含有することにより、焼成処理で結晶粒界にガラス相を形成することができ、これにより部品素体の表面又は表面近傍のみならず、部品素体内部の比抵抗ρも高く維持することができる。そしてその結果、電極間で電位差が生じるコモンモードチョークコイル等のセラミック電子部品に使用しても、絶縁性能が良好な高信頼性を有するフェライト磁器組成物を得ることができる。
ただし、ガラス成分の含有量は、Fe、Mn、Ni、Zn、及びCuをそれぞれFe3、Mn、NiO、ZnO、及びCuOに換算したときの総計100重量部に対し1重量部以上含有させる必要がある。ガラス成分の含有量が、前記総計100重量部に対し1重量部未満の場合は、結晶粒界に十分なガラス相を形成することができず、所望の高い比抵抗ρを得ることができない。
尚、ガラス成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、透磁率を十分に確保する観点からは、前記総計100重量部に対し5重量部以下が好ましい。
また、フェライト磁器組成物中のZnO及びNiOの各含有モル量は、特に限定されるものではなく、Fe3、Mn、及びCuOの各含有モル量に応じて適宜設定することができるが、ZnO:6〜33mol%、NiO:残部となるように配合するのが好ましい。
すなわち、ZnOの含有モル量が33mol%を超えると、キュリー点Tcが低下し、高温での動作保証がなされない可能性があることから、ZnOの含有量は33mol%以下が好ましい。
一方、ZnOは透磁率μの向上に寄与する効果があるが、斯かる効果を発揮するためにはZnOの含有モル量は6mol%が必要である。
したがって、ZnOの含有モル量は6〜33mol%が好ましい。
このように本フェライト磁器組成物は、Cuの含有モル量がCuOに換算して0〜5mol%であり、FeをFeに換算したときの含有モル量xmol%、及びMnをMnに換算したときの含有モル量ymol%を(x,y)で表したときに、(x,y)が、上述した点A〜点Hに囲まれる特定の範囲にあり、かつ、少なくともSi、B、及びアルカリ土類金属Mを含有したガラス成分が、Fe、Mn、Ni、Zn、及びCuをそれぞれFe3、Mn、NiO、ZnO、及びCuOに換算したときの総計100重量部に対し1重量部以上含有されているので、Cu系材料と同時焼成してもCuが酸化されたり、Feが還元されるのを抑制でき、しかも結晶粒界にガラス相を形成することができることから、フェライト磁器組成物の表面や表面近傍のみならず、内部の比抵抗ρを高く維持することができ、所望の絶縁性能を確保することができる。
具体的には、比抵抗ρは10Ω・cm以上の良好な絶縁性能を確実に得ることができる。
また、前記ガラス成分の含有量を、前記総計100重量部に対し5重量部以下とすることにより、所望の良好な透磁率を確保することが可能となる。
また、ZnOの含有モル量を6〜33mol%とすることにより、良好な透磁率を有すると共に、十分なキュリー点を確保することができ、使用時の温度が高い条件下での動作が保証されたセラミック電子部品を得ることができる。
尚、前記ガラス成分に含有されるSi、B、及びアルカリ土類金属Mの各含有量は特に限定されないが、好ましくは、それぞれSiO換算で20〜55重量%、B換算で10〜20重量%、MO換算で25〜60重量%であり、これにより比抵抗ρの向上に寄与するガラス相を結晶粒界に十分に形成することができる。
次に、上記フェライト磁器組成物を使用したセラミック電子部品について詳述する。
図2は本発明に係るセラミック電子部品としてのコモンモードチョークコイルの一実施の形態を示す斜視図であり、図3は図2のA−A断面図である。
このコモンモードチョークコイルは、部品素体1の両端面に第1〜第4の外部電極2a〜2dが形成されている。
すなわち、部品素体1は、第1の内部導体3a及び第2の内部導体3bを有する第1のコイル導体3と、第3の内部導体4a及び第2の内部導体4bを有する第2のコイル導体4とを備え、これら第1のコイル導体3及び第2のコイル導体4は、互いに一定の離間距離を有して対向状となるように前記部品素体1に埋設されている。
具体的には第1のコイル導体3において、第1の内部導体3aは、一端が外部電極2aに電気的に接続され、コイル状に巻回されると共に、他端はビア導体10を介して第2の内部導体3bの一端に接続されている。第2の内部導体3bは適宜屈曲され、他端は外部電極2bに電気的に接続されている。
また、第2のコイル導体4において、第3の内部導体4aは、一端が外部電極2cに電気的に接続され、コイル状に巻回されると共に、他端はビア導体11を介して第4の内部導体4bの一端に接続されている。第4の内部導体4bは適宜屈曲され、他端は外部電極2dに電気的に接続されている。
そして、本実施の形態では、第1及び第2のコイル導体3、4がCuを主成分とする導電性材料で形成されると共に、部品素体1が上述した本発明のフェライト磁器組成物で形成されている。これによりCuが酸化されたりFeが還元されることもなく、しかも部品素体1内部で比抵抗ρが劣化することもなく、10Ω以上の比抵抗ρを有する絶縁性能が良好な高信頼性を有するコモンモードチョークコイルを得ることができる。
また、第1及び第2のコイル導体3、4にCu系材料を使用しているので、Ag系材料のようにマイグレーションが生じるのを極力回避することができ、絶縁抵抗の低下を招くこともなく高信頼性を有するコモンモードチョークコイルを得ることが可能となる。
図4は部品素体1の分解斜視図である。
以下、この図4を参照しながら上記コモンモードチョークコイルの製造方法を詳述する。
まず、セラミック素原料として、主成分であるFe、ZnO、NiO、及び必要に応じてCuOを用意し、さらにSi−B−M−O系ガラス成分(M:アルカリ土類金属)を用意する。そして、CuOが0〜5mol%であり、Fe及びMnが図1の点A〜点Hで囲まれる特定領域を満たし、かつ、ガラス成分の含有量が、Fe、Mn、Ni、Zn、及びCuをそれぞれFe3、Mn、NiO、ZnO、及びCuOに換算したときの総計100重量部に対し1重量部以上(好ましくは、5重量部以下)となるように、各セラミック素原料及びガラス成分を秤量する。
次いで、これらの秤量物を純水及びPSZ(部分安定化ジルコニア)ボール等の玉石と共にポットミルに入れ、湿式で十分に混合粉砕し、蒸発乾燥させた後、700〜800℃の温度で所定時間仮焼する。
次いで、これらの仮焼粉末に、ポリビニルブチラール系等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤、及びPSZボールと共に、再びポットミルに投入し、十分に混合粉砕し、セラミックスラリーを作製する。
次に、ドクターブレード法等を使用して前記セラミックスラリーをシート状に成形加工し、所定膜厚の磁性体セラミックグリーンシート(以下、単に「磁性体シート」という。)5a〜5jを作製する。
次いで、これらの磁性体シート5a〜5jのうち磁性体シート5d及び磁性体シート5fについて、レーザ加工機を使用し、所定箇所にビアホール6a、6bを形成する。
次に、Cuを主成分とする導電性ペースト(以下、「Cuペースト」という。)を用意する。そして、該Cuペーストを使用してスクリーン印刷し、磁性体シート5d〜5g上に所定の導体パターン7a〜7d及び電極パターン8a〜8dを形成し、さらに、ビアホール6a、6bを前記Cuペーストで充填する。
この後、これら磁性体シート5d〜5gを順次積層し、上下両主面に外装用の磁性体シート5a〜5c、5h〜5jを配し、これらを加圧・圧着させ、所定寸法に切断して積層成形体を作製する。
次に、この積層成形体をN−H−HOの混合ガスを焼成炉に供給し、Cu−CuOの平衡酸素分圧をCuが酸化しないように調整し、500〜700℃で8〜12時間程度、脱脂処理を行い、さらに900〜1050℃で焼成処理を行ってもCuが酸化しないようにCu−CuOの平衡酸素分圧を調整し、上述した900〜1050℃で約2時間焼成し、これにより第1及び第2のコイル導体3、4が埋設された部品素体1を得る。
次に、部品素体1の端面に、Cu等を主成分とした外部電極用導電ペーストを塗布し、乾燥させた後、900℃で焼き付けて第1〜第4の外部電極2a〜2dを形成し、これによりコモンモードチョークコイルが作製される。
このように本実施の形態では、第1のコイル導体3及び第2のコイル導体4がCuを主成分とする導電性材料で形成されると共に、部品素体1が、上述したフェライト磁器組成物で形成され、かつCu−CuOの平衡酸素分圧以下の雰囲気で焼成されてなるので、Cu系材料と同時焼成してもCuが酸化されることなく、焼結させることができる。しかも、結晶粒界にはガラス相が形成されるので、部品素体1の内部での比抵抗ρが劣化することのない絶縁性能が良好で高信頼性を有するコモンモードチョークコイルを得ることが可能となる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、仮焼粉末から磁性体シート5a〜5jを作製しているが、例えば、PETフィルム上に印刷処理を行なって磁性塗膜を形成し、斯かる磁性塗膜上に導電膜であるコイルパターンを形成してもよい。
また、上記実施の形態では、第1及び第2のコイルパターン7a〜7dをスクリーン印刷で形成しているが、これらコイルパターンの作製方法も特に限定されるものではなく、他の方法、例えばめっき法、転写法、或いはスパッタ等の薄膜形成方法で形成してもよい。
また、上記実施の形態では、コモンモードチョークコイルのように電極間で電位差が生じるセラミック電子部品を例示して説明したが、本発明はCuを主成分とする導電性材料と同時焼成する用途に広範に使用することができ、他のセラミック電子部品、例えば積層方向にコイル導体を形成して該コイル導体を部品素体に埋設した各種コイル部品等にも適用可能であるのはいうまでもない。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
〔比抵抗測定用試料の作製〕
表1に示すようなガラス組成を有するガラス粉末A〜Dを用意した。
Figure 2014165307
次に、セラミック素原料として、Fe、Mn、ZnO、CuO、及びNiOを用意し、Fe:44モル%、Mn:5モル%、ZnO:25モル%、CuO:2モル%、及びNiO:24モル%となるように、これらセラミック素原料を秤量した。
次いで、これら秤量物を純水及びPSZボールと共にボールミルに投入し、48時間、湿式で混合粉砕し、これを蒸発乾燥させた後、750℃の温度で2時間仮焼し、仮焼粉末を得た。
次に、この仮焼粉末100重量部に対し、上記各ガラス粉末A〜Dを0〜7.5重量部の範囲で添加し、次いで、PSZボールと共にボールミルに投入し、純水を加えて24時間湿式で混合粉砕し、さらにアクリル系バインダ(有機バインダ)を8重量%となるように加えて十分に混合し、セラミックスラリーを得た。
次いで、ドクターブレード法を使用し、厚さが25μmとなるようにセラミックスラリーをシート状に成形し、これを縦50mm、横50mmの大きさに打ち抜き、図5に示すように、磁性体シート51a〜51fを作製した。
次に、テルピネオール(有機溶剤)及びエチルセルロース樹脂(バインダ樹脂)を含有した有機ビヒクルにCu粉末を混合し、三本ロールミルで混錬し、Cuペーストを作製した。
次いで、磁性体シート51a〜51fのうち2枚の磁性体シート51c、51dについてCuペーストを使用してスクリーン印刷を行い、磁性体シート51c、51dの表面に所定形状の導体パターン52a、52bを作製した。
そして、導体パターン52aが形成された磁性体シート51cと導体パターン52bが形成された磁性体シート51dとを重ね合わせ、さらにこれを導体パターンの形成されていない磁性体シート51a、51b、51e、51fで挟持し、60℃に加熱し、100MPaの圧力で60秒間加圧して圧着し、積層成形体を得た。
次に、この積層成形体をN−H−HOの混合ガスを焼成炉に供給し、Cuが酸化しないように酸素分圧を調整し、600℃の温度で10時間脱脂処理を行った。具体的には、600℃でのCu−CuOの平衡酸素分圧である2.8×10-8Paの1〜1/100となるように焼成炉の酸素分圧を調整し、脱脂処理を行った。
そしてその後、酸素分圧を6.7×10-2Paに調整し、1000℃の温度で2時間焼成し、内部電極が埋設されたセラミック焼結体を得た。ここで、酸素分圧:6.7×10-2Paは、1000℃におけるCu−CuOの平衡酸素分圧であり、これによりCuが酸化しないようにCu−CuOの平衡酸素分圧を調整して焼成処理を行った。
次いで、このセラミック焼結体を純水と共にポットに投入し、遠心バレル機を用いてセラミック焼結体にバレル処理を施し、これにより内部電極を端面から露出させて部品素体を得た。
次に、Cu粉末、ガラス粉末及び有機ビヒクルを含有した外部電極用導電性ペーストを用意した。
そして、部品素体の両端に、前記外部電極用導電性ペーストを塗布し、乾燥させた後、酸素分圧を4.3×10-3Paに調整した焼成炉内で900℃の温度で10分間、焼き付け処理を行い、試料番号1〜21の比抵抗測定用試料を作製した。尚、酸素分圧:4.3×10-3Paは温度900℃におけるCu−CuOの平衡酸素分圧である。
比抵抗測定用試料の外形寸法は、縦3.0mm、横3.0mm、厚み1.0mmであった。
図6は、比抵抗測定用試料の断面図であって、部品素体53には内部電極54a、54bの端部が互い違いとなるように内部電極54a、54bが埋設され、かつ、部品素体53の両端面には外部電極55a、55bが形成され、内部電極54a、54bと電気的に接続されている。
〔透磁率測定用試料の作製〕
上述した導体パターンの形成されていない磁性体シートを、厚さが総計で1.0mmとなるように複数枚積層し、60℃に加熱し、100MPaの圧力で60秒間加圧して圧着し、その後、外径20がmm、内径が12mmとなるようにリング状に切り出し、セラミック成形体を得た。
次いで、得られたセラミック成形体を上述と同様の脱脂条件及び焼成条件で脱脂・焼成処理を行い、これにより試料番号1〜21のリング状の透磁率測定用試料を得た。
〔試料の評価〕
試料番号1〜21の各比抵抗測定用試料について、外部電極55a、55bに50Vの電圧を30秒間印加し、電圧印加時の電流を測定した。そしてこの測定値から抵抗を算出し、試料寸法から比抵抗の対数logρ(以下、「比抵抗logρ」という。)を算出した。
また、試料番号1〜21の各透磁率測定用試料を透磁率測定治具(アジレント・テクノロジー社製、16454A−s)に収容し、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製、E4991A)を使用し、測定周波数1MHzで透磁率μを測定した。
表2は、試料番号1〜21のフェライト磁器組成物中のガラス種、仮焼粉末100重量部に対するガラス成分の含有量、比抵抗logρ及び透磁率μを示している。
Figure 2014165307
試料番号1は、フェライト磁器組成物中にガラス成分が含まれていないため、比抵抗logρが6.4と低くなった。これは焼成時に有機バインダが完全には除去されずに部品素体内部に炭素が残存してしまい、その結果、絶縁性能が低下したものと思われる。
また、試料番号2、7、12、及び17は、フェライト磁器組成物中のガラス成分の含有量が、仮焼粉末100重量部に対し0.5重量部と少ないため、比抵抗logρは試料番号1に比べると大きくなっているものの、6.5〜6.9と7.0未満であり、未だ十分な比抵抗logρが得られないことが分かった。これはガラス成分の含有量が過少であるため結晶粒界にはガラス相が十分に形成されず、絶縁性能を十分に確保できなかったためと思われる。
これに対し試料番号3〜6、8〜11、13〜16、及び18〜21は、ガラス成分の含有量が仮焼粉末100重量部に対し1重量部以上であるので、比抵抗logρは7.0以上の良好な結果が得られ、また、透磁率μも23以上となって実用性を確保できることが分かった。
ただし、試料番号6、11、16、及び21に示すように、ガラス成分の含有量が仮焼粉末100重量部に対し5重量部を超えると、透磁率μが23〜26に低下した。したがって、より良好な透磁率μを得るためには、ガラス成分の含有量は仮焼粉末100重量部に対し5重量部以下が好ましいことが分かった。
セラミック素原料として、Fe、Mn、ZnO、CuO、及びNiOを用意し、含有モル量が表3、表4に示すような組成となるように、これらセラミック素原料を秤量した。すなわち、ZnOを25mol%、CuOを2mol%と一定にし、FeとMnとの含有モル量を種々異ならせ、残部がNiOとなるように各セラミック素原料を秤量した。
次いで、これら秤量物を純水及びPSZボールと共にボールミルに投入し、48時間、湿式で混合粉砕し、これを蒸発乾燥させた後、750℃の温度で2時間仮焼し、仮焼粉末を得た。
次に、この仮焼粉末100重量部に対し、上記ガラス粉末Bを3重量部添加し、次いで、PSZボールと共にボールミルに投入し、純水を加えて24時間湿式で混合粉砕し、さらにアクリル系バインダを8重量%となるように加えて十分に混合し、セラミックスラリーを得た。
その後は、〔実施例1〕と同様の方法・手順で試料番号31〜94の比抵抗測定用試料を作製し、比抵抗logρを求めた。
表3及び表4は、試料番号31〜94の各試料のフェライト組成と比抵抗logρを示している。
Figure 2014165307
Figure 2014165307
試料番号31〜40、44〜47、53〜55、61〜63、69〜72、76〜94は、図1の斜線部Xの領域外であるので、比抵抗logρが7.0未満となって比抵抗logρが小さく、所望の絶縁性を得ることができなかった。
これに対し試料番号41〜43、48〜52、56〜60、64〜68、73〜75は、図1の斜線部Xに囲まれる領域内にあり、CuOの含有モル量及びガラス成分の含有重量も本発明範囲内であるので、比抵抗logρが7.0以上となり、良好な絶縁性が得られることが分かった。
セラミック素原料として、Fe、Mn、ZnO、CuO、及びNiOを用意し、含有モル量が表5に示すような組成となるように、これらセラミック素原料を秤量した。すなわち、Feを44モル%、Mnを5モル%、ZnOを25モル%と一定とし、CuOの含有モル量を0〜10モル%の範囲で種々異ならせ、残部がNiOとなるように各セラミック素原料を秤量した。
その後は、〔実施例2〕と同様の方法・手順で試料番号101〜105の比抵抗測定用試料を作製し、比抵抗logρを求めた。
表5は、試料番号101〜105の各試料のフェライト組成と比抵抗logρを示している。
Figure 2014165307
試料番号104及び105はCuOの含有モル量が7.5モル%及び10モル%であり、5モル%を超えているため、比抵抗logρがそれぞれ6.8、5.9となって7.0未満となり、絶縁性能が劣化した。
これに対し試料番号101〜103はCuOの含有モル量が0〜5モル%と本発明範囲内であり、しかもFe及びMnの含有モル量、及びガラス成分の含有重量も本発明範囲内であるので、比抵抗logρは7.3〜7.7となり、良好な絶縁性能が得られることが分かった。
〔実施例1〕で作製した試料番号1、9の磁性体シートを使用して図3に示すようなコモンモードチョークコイルを作製し、リーク電圧を測定して試料を評価した。
すなわち、レーザ加工機を使用し、試料番号1、9の各磁性体シートの所定箇所にビアホールを形成した。
次に、〔実施例1〕で使用したCuペーストを使用し、磁性体シート上にスクリーン印刷し、第1〜第4のコイルパターン及び電極パターンを形成し、かつ、ビアホールを前記Cuペーストで充填した。
次いで、これら第1〜第4のコイルパターン及び電極パターンが形成された磁性体シートを所定順序で積層し、上下両主面を第1〜第4のコイルパターン及び電極パターンが形成されていない磁性体シートで挟持し、これらを60℃に加熱し100MPaの圧力で60秒間加圧して圧着し、所定寸法に切断し、積層成形体を作製した
次に、〔実施例1〕と同様の方法・手順で脱脂・焼成処理を行い、部品素体を作製し、さらに部品素体の両端面に外部電極を形成した。
その後、外部電極の表面に電解めっきを施し、Ni皮膜及びSn皮膜を順次形成し、これにより試料番号111、112のコモンモードチョークコイルを作製した。作製された試料の外形形状は、長さ1.2mm、幅1.0mm、高さ0.5mmであった。
次に、試料番号111、112の各試料10個について、外部電極、すなわち第1及び第2のコイル導体間に直流電圧を印加し、徐々に昇圧しながらリーク電流が0.1mAになった時の電圧、すなわちリーク電圧を求めた。
表6は、各試料について、試料10個の測定結果の平均値を示している。
Figure 2014165307
この表6から明らかなように、試料番号111は、試料番号1の磁性体シートを使用していることから、磁性体シート中にはガラス成分が含有されておらず、比抵抗logρが6.4と低い。このため、10Vの直流電圧を印加した時点でリーク電流は0.1mAを超えてしまい、絶縁性能に劣ることが分かった。
これに対し試料番号112は、50Vの直流電圧を印加しても、リーク電流は0.1mAを超えず、良好な絶縁性能を有することが分かった。すなわち、試料番号102では、試料番号9の磁性体シートを使用していることから、素子内部での比抵抗logρも7.9と高いためと思われる。
Cuを主成分とする導電性材料と磁性体材料とを同時焼成しても、絶縁性が良好で、良好な磁気特性を有するコモンモードチョークコイル等のセラミック電子部品を実現できる。
1 部品素体
3 第1のコイル導体
4 第2のコイル導体

Claims (10)

  1. 少なくともFe、Mn、Ni、及びZnを含有したフェライト磁器組成物であって、
    Cuの含有モル量がCuOに換算して0〜5mol%であり、
    FeをFeに換算したときの含有モル量xmol%、及びMnをMnに換算したときの含有モル量ymol%を(x,y)で表したときに、(x,y)が、A(30,1)、B(47,1)、C(47,7.5)、D(45,7.5)、E(45,10)、F(35,10)、G(35,7.5)、及びH(30,7.5)で囲まれる領域にあり、
    かつ、少なくともSi、B、及びアルカリ土類金属Mを含むガラス成分が、Fe、Mn、Ni、Zn、及びCuをそれぞれFe3、Mn、NiO、ZnO、及びCuOに換算したときの総計100重量部に対し1重量部以上含有されていることを特徴とするフェライト磁器組成物。
  2. 前記ガラス成分の含有量は、前記総計100重量部に対し5重量部以下であることを特徴とする請求項1記載のフェライト磁器組成物。
  3. 前記ガラス成分に含有されるSi、B、及びアルカリ土類金属Mの各含有量は、それぞれSiO換算で20〜55重量%、B換算で10〜20重量%、MO換算で25〜60重量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフェライト磁器組成物。
  4. 前記アルカリ土類金属は、Ba、Sr、Ca、及びMgの中から選択された少なくとも一種を含んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフェライト磁器組成物。
  5. 前記Znの含有モル量が、ZnOに換算して33mol%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフェライト磁器組成物。
  6. 前記Znの含有モル量が、ZnOに換算して6mol%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフェライト磁器組成物。
  7. 部品素体にコイル導体が埋設されたセラミック電子部品であって、
    前記コイル導体が、Cuを主成分とする導電性材料で形成されると共に、
    前記部品素体が、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のフェライト磁器組成物で形成されていることを特徴とするセラミック電子部品。
  8. 前記コイル導体が、第1のコイル導体と第2のコイル導体とを有すると共に、
    前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とが一定の離間距離を有して対向状となるように前記部品素体に埋設されていることを特徴とする請求項7記載のセラミック電子部品。
  9. 前記コイル導体と前記部品素体は同時焼成されてなることを特徴とする請求項7又は請求項8記載のセラミック電子部品。
  10. Cu−CuOの平衡酸素分圧以下の雰囲気で焼成されてなることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれかに記載のセラミック電子部品。
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