JP2014155657A - バルーンカテーテル用バルーン - Google Patents

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Abstract

【課題】経皮的血管形成術に好適に用いることの出来るバルーンカテーテル用バルーンの製造方法であって、バルーンを単一材料から製造することが可能であり、特にバルーン直管部の均一な膜厚および形状により品質の安定化を実現でき、かつ、リラッピング性能やクロス性能に優れたバルーンカテーテル用バルーンを提供する。
【解決手段】バルーンカテーテルに用いられるバルーンカテーテル用バルーンであって、前記バルーンは、樹脂組成物で形成され、軸方向に直交する垂直断面において、隣接する部位よりも、軟化温度が低い低温部を少なくとも1箇所有しているバルーンカテーテル用バルーン。
【選択図】なし

Description

本発明は生体管腔の拡張操作を目的とする手術に使用されるバルーンカテーテルに用いられるバルーンカテーテルに関するものである。
従来、経皮的血管形成術(PTA:Percutaneous Transluminal Angioplasty 、またはPTCA:Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)は血管内腔の狭窄部や閉塞部などを拡張治療し、冠動脈や末梢血管などの血流の回復または改善を目的として広く用いられている。経皮的血管形成術に使用されるバルーンカテーテルは、シャフトの先端部に内圧調節により膨張・収縮自在のバルーンを接合してなるものであり、該シャフトの内部にはガイドワイヤが挿通される内腔(ガイドワイヤルーメン)と、バルーン内圧調整用の圧力流体を供給するルーメン(インフレーションルーメン)とがシャフトの長軸方向に沿って設けられている構造が一般的である。
このようなバルーンカテーテルを用いたPTCAの一般的な術例は以下のとおりである。まず、ガイドカテーテルを大腿動脈、上腕動脈、橈骨動脈等の穿刺部位から挿通し大動脈を経由させて冠動脈の入口にその先端を配置する。次に前記ガイドワイヤルーメンに挿通したガイドワイヤを冠動脈の狭窄部位を越えて前進させ、このガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテルを挿入してバルーンを狭窄部に一致させる。次いで、インデフレータ等のデバイスを用いてインフレーションルーメンを経由して圧力流体をバルーンに供給し、バルーンを膨張させることで当該狭窄部を拡張治療する。当該狭窄部を拡張治療した後は、バルーンを減圧収縮させて体外へ抜去することでPTCAを終了する。PTAも、下肢動脈の病変部等に対し前記PTCAとほぼ同様に行われる。
近年のバルーンカテーテルには、狭窄度や屈曲度のある非常に難易度の高い病変部にも適用可能なものが求められる傾向があり、バルーンをスムーズに病変部に通過させることが可能な、高い通過性を有するPTCA用及びPTA用バルーンカテーテルが求められている。
バルーンカテーテルの通過性に大きく寄与する要因の一つは、バルーン部の折畳み寸法である。このためカテーテルの作製時に折畳み方法を工夫することにより、バルーン部の小径化が行われている。一般的にバルーンカテーテルのバルーン部分は、製造段階において内側シャフトにバルーンを巻き付けて折畳み、可能な限り折畳み寸法を小さくしている
一方で、1度拡張させたバルーンを収縮させる際にも、バルーンをカテーテルシャフトの周りに折畳み、小径化できることが望ましい。これは、病変部を拡張させるため使用したカテーテルを他の病変部を治療するために再度使用する場合があるためである。また、体外に取出す際にも、可能な限り小径化させていることが望ましい。特にカテーテルがステントストラットを通過していた場合、治療後にカテーテルをステントストラットから抜去する必要があるため、バルーン部分が小径に折畳まれていた方がより安全に抜去することができる。
以下便宜上、バルーンカテーテルの製造工程において、装置を用いて外力によりバルーンを折畳むことを「ラッピング」、ラッピングされたバルーンを拡張させた後に、圧力流体を除去することにより自発的に収縮させて、バルーンを折畳むことを「リラッピング」と呼称する。
またリラッピング時の凸部、即ち、バルーンの長軸方向に対する垂直な断面において、バルーン内から外方向へ突出している部分を「翼部」、凹部、即ち、前記翼部が複数あり、翼部と隣接する翼部の間の部分を「溝部」と呼称する。また、リラッピング時の形状については、翼部の枚数を用いて表現する。例えば図8の場合であれば4枚翼である。
また狭窄部に対する、バルーンカテーテルの通過性能を「クロス性能」と呼称し、特に、ラッピングされた状態での通過性能、即ち、初回使用時の通過性能を「ファーストクロス性能」、狭窄部でバルーン拡張後、リラッピングし、リラッピングした状態における、同一のあるいは異なった狭窄部に対するバルーンカテーテルの通過性能を「リクロス性能」と呼称する。
従来、リラッピング形状の安定化や小径化を目的とした、リラッピング形状を癖付けられたバルーン及び、その製造方法が種々提案されている。
たとえば特許文献1には、バルーンの長軸方向に対する垂直断面(以下、バルーン断面と呼称する。)において肉厚分布をもたせ、その膜厚差により生じる剛性差によってバルーンのリラッピングを制御する方法が開示されている。しかしながら、バルーン断面に肉厚分布を形成した上で、バルーンの耐圧強度を達成しつつ形状癖をつけようとすると、必要な耐圧強度に合わせてバルーンの薄肉部の厚みを設定する必要がある。それに伴って、厚肉部の厚みも厚くしなければならず、全体の肉厚が大きくなるため、ラッピングおよびリラッピング寸法が大きくなる傾向があった。バルーンカテーテルにおいてバルーンのラッピングおよびリラッピング寸法が大きいと、ファーストクロス性能やリクロス性能が損なわれるというバルーンカテーテルのクロス性能の点で課題となる。
また、バルーン状態で厚み差を設けるために、ブロー成形前のバルーン用チューブで事前に極端な厚み差を設けなければならず、そのようなバルーン用チューブの製造は、非常に困難で製造収率が低くコストが高くなること、極端な厚み差のバルーン用チューブをブロー成形しバルーン形成するために、最終のバルーンの膜厚がばらつく等品質の安定したバルーンを製造することは困難であった。
特許文献2には、バルーンの長軸方向に沿って伸びる少なくとも3個の縦溝とそれと交互にある翼部によって画定された形状に形付けられたバルーンが開示されている。
また、特許文献3には少なくともバルーンの長軸方向に連続した複数の縦溝とそれに対応した同数の翼部とが予め金型により形状付けられ、凹溝と凸条とで形成されたスクロール状断面に対応した翼部と縦溝とを有する形状に形付けられたバルーンが開示されている。しかしながら、特許文献2または3のように溝部と突部を形成すると安定的なリラッピング形状の制御は実現できるものの、拡張時のバルーン断面の形状が略円形にならず、臨床では十分な効果が得られないという課題があった。加えて形状付けに使用するバルーン用金型は、非常に複雑な形状となり、製品開発に多大な時間を浪費し、製造コストも非常に高くなってしてしまう点で改善の余地があった。
特許文献4には、バルーン断面の内面(厚み方向)に少なくとも3つのリブが形成されたバルーンとその製造方法が開示されている。押出成形によって内面にリブを有するチューブ作製し、次いでブロー成形することにより内面にリブを有するバルーンを製造できることが開示されている。しかしながら、特許文献1同様、必要な耐圧強度に合わせてバルーンの薄肉部の厚みを設定するため、ラッピングおよびリラッピング寸法が大きくなってしまう傾向が有り、結果、バルーンカテーテルのファーストクロス性能やリクロス性能が低下する点で課題があった。
特許文献5 には、バルーン断面の円周上において2種類の弾性の異なるラメラ部(AとB)が同数、バルーン長軸方向に沿って存在するバルーンとその製法が開示されている。具体的な製造方法として弾性の異なる材料を共押出によってバルーン用チューブを形成する方法やバルーンにさらに樹脂を一方のラメラ部だけに局所的にラミネートすることで弾性の異なるラメラ部を形成する方法が開示されている。しかしながら、このようなバルーン用チューブを共押出成形で製造する場合、前記の弾性の異なる材料同士は、押出時の流動性が極端に異なるため、安定した寸法を付与するという点で技術難度が非常に高く、実用面で課題があった。また、共押出し成形で製造しようとすると、2台の溶融押出機が必要となり、製造コストが非常に高くなるという課題があった。また、バルーン用チューブを共押出で作製できたとしても、異種材料間の特性差により、バルーン用チューブをブロー成形によってバルーンを製造することは困難である。異種材料でバルーンを形成した場合、応力集中によるバルーンの強度低下の原因となったり、不均一拡張によって所望の治療効果が得られなかったり、血管を損傷するリスクが高いという問題があった。
特開平3−92173号公報 特開平2−224766号公報 特開2003−62080号公報 特表平6−506848号公報 欧州出願公開特許第2072067号明細書
従来技術では、作製されたバルーン断面が変形し略円形ではない、バルーンの部位毎の膜厚や材質が大きく異なっている等により、耐圧強度をはじめとしたバルーンの品質の不安定化やラッピング寸法の大径化、即ちファーストクロス性能の低下が生じていた。また、作製されたバルーンを収縮させた際、剛性の高い部位がリラッピング形状の翼部を形成してしまうため、血管を損傷させるリスクや狭窄部に対するリクロス性能が低下してしまう可能性があった。
本発明は前記の課題を解決することを目的としたものであり、その目的は、PTCAやPTA等の経皮的血管形成術に好適に用いることの出来るバルーンカテーテル用のバルーンであって、バルーン全体に亘って、同一材料から製造することが可能であり、バルーン、特にバルーン直管部の均一な膜厚および形状により品質の安定化を実現でき、かつ、リラッピング性能やクロス性能に優れたバルーンカテーテル用のバルーンを提供することにある。
前記課題に対して鋭意検討を行った結果、本発明者らは、以下に記す血管内で拡張するためのバルーンカテーテル用のバルーンを発明するに至った。
即ち、本発明は、バルーンカテーテルに用いられるバルーンカテーテル用バルーンであって、前記バルーンは、樹脂組成物で形成され、軸方向に直交する垂直断面において、隣接する部位よりも、軟化温度が低い低温部を少なくとも1箇所有しているバルーンカテーテル用バルーンに関する。
また本発明は、前記バルーンは、同一の樹脂組成物で形成されている前記バルーンカテーテル用バルーンに関する。
また本発明は、前記バルーンは、直管部を有し、該直管部の膜厚が略均一である前記バルーンカテーテル用バルーンに関する。
また本発明は、前記低温部の軟化温度は、隣接する部位より5℃以上低い前記バルーンカテーテル用バルーンに関する。
また本発明は、前記バルーンは、前記低温部を2箇所以上有している前記バルーンカテーテル用バルーンに関する。
また本発明は、前記低温度部と、最も近接する低温部が形成する少なくとも1つの円弧において、鋭角の中心角が60°以上である前記バルーンカテーテル用バルーンに関する。
また本発明は、前記バルーンは、前記低温部が翼部となって折りたたまれる請求項1〜6のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンに関する。
本発明によれば、バルーンカテーテルのバルーンは、同一材料でも作製でき、煩雑または高価な設備も必要なく、バルーン拡張後のリラッピング寸法が小径、且つ、リラッピング形状の再現性(形状安定性)に優れた、実用上有益なバルーンの製造を実現する。また、本発明で製造されるバルーンは、バルーン直管部の軸方向に直交する垂直断面における周方向かつ、軸方向において厚みが均一で、機械的強度にも優れ、さらには、拡張バルーンを収縮した際のリラッピング形状が安定的、かつ、寸法が小径となるため、狭窄部に対するクロス性能を低下させてしまうことがない。
一般的なバルーンカテーテルのうち、オーバー・ザ・ワイヤ型(OTW型)の概略斜視図である。 一般的なバルーンカテーテルのうち、高速交換型(RX型)の概略斜視図である。 一般的なRX型バルーンカテーテルであって、ガイドワイヤルーメン部分がコアキシャル構造のRX型バルーンカテーテルの縦断面を示す図である。 図3のA−A’に相当する部分の横断面図である。 本発明の突起部を有するバルーン用チューブを設けるために用いる押出金型の横断面(樹脂の流動方向に対する垂直断面図で、(a)外側突起用、及び(b)内側突起用の図である。 本発明に用いる突起部を有するバルーン用チューブにおける、(a)側面図、(b)突起部幅が狭いバルーン用チューブの断面、及び(c)突起部幅が広いバルーン用チューブの断面である。 突起部を4箇所有するバルーン用チューブから製造されたバルーンにおける、(a)側面図、及び(b)断面図である。 図7のバルーンをリラッピングした際のバルーン断面図である。 隣接する突起部同士が120°(鋭角)の間隔で2箇所存在するバルーン用チューブで、(a)側面図、及び(b)断面図である。 図9のバルーン用チューブで製造されたバルーンにおける、(a)側面図、及び(b)断面図である 図10のバルーンをリラッピングした際のバルーンの断面図である。 周方向に同じ樹脂材料で構成される2層構造のバルーン用チューブの垂直断面図である。
以下に本発明に係るバルーンカテーテル及びバルーンの種々の実施の1形態について、図に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
バルーンカテーテルは主としてバルーン及びシャフトから構成され、前記シャフト遠位部に前記バルーンが接合されている。また一般的なバルーンカテーテルは、前記シャフトは近位側シャフトと遠位側シャフトから構成され、前記近位側シャフトの遠位側に前記遠位側シャフトの近位部が接合されている。前記近位側シャフトの近位端には該バルーンカテーテル保持用のアダプター部材が接合されている。前記遠位側シャフトの一部は内側シャフトと該内側シャフトを同軸状に取り囲む外側シャフトとから形成されており、前記内側シャフトは前記外側シャフトを越えて遠位側に伸長している。前記内側シャフトの内腔にガイドワイヤルーメンを形成しているコアキシャル型が一般的であるが、それ以上の構造は特に制限されない。つまり、図1に示すOTW型でも良く、図2に示すRX型でも良い。また、それ以外の構造でも構わない。
図3に示すような内側シャフトの内腔2にガイドワイヤルーメン部分1を形成しているコアキシャル型である典型的なRX型バルーンカテーテルの場合、コアキシャル型部分(図3のA−A’に相当する部分)の断面は図4に示すような構造である。
一般にバルーンは直管部5Aとその遠位側及び近位側に接合部5D及び5Eを有し、直管部5Aと接合部5D及び5Eの間にテーパ部5B及び5Cを有している。
バルーンの寸法はバルーンカテーテルの使用用途により決定されるが、本発明を実施することに適したバルーンは、拡張されたときの直管部の外径が1.00mmから35.00mm、直管部の長さが5.00mmから300.00mmである。
本発明に係るバルーンは、バルーン直管部のバルーン断面において、円周部に、両側に隣接する部位よりも、樹脂組成物の軟化温度が低い低温部をバルーンの全長にわたって少なくとも1箇所有しており、そのため、ラッピング性やリラッピング性に優れている。尚、本発明における軟化温度とは、針状の細い突起が設けられた圧縮プローブ先端を、試料に対して一定荷重で押し当てながら試料温度を徐々に上昇させた際、圧縮プローブ先端が試料に沈み込み始める閾値の温度のことを示す。
軟化温度の異なる部位を有するバルーンは、温水中あるいは身体の血液中で常温以上に温められた際、軟化温度の低い部位は軟化温度の高い部位よりも、高い柔軟性を有することができる。一般にリラッピング時には翼部は溝部よりも大きな変形を受ける。例えば、バルーンが拡張状態から4枚翼にリラッピングされる場合、バルーン断面において溝部は約90°折り曲げられて形成されるが、翼部は約180°折り曲げられて形成されるため軟化部20が、リラッピング時には翼部になる傾向がある。このため、本発明では軟化温度の低い軟化部20が、リラッピング時に翼部を形成する傾向がある。
(222案件からコピーしました。)
本発明に係るバルーンまたはバルーン用チューブは、樹脂組成物を主成分とする材料から形成されていれば特に制限されないが、全体に亘って同一の樹脂組成物で形成されていることが好ましい。同一の樹脂組成物としては、単一の樹脂材料であっても、数種類の異なる樹脂材料で形成されたブレンド樹脂材料で構成されていてもよい。また、バルーンまたはバルーン用チューブの半径方向に2層以上で形成された多層構造であってもよい。
なお、半径方向に多層構造である場合、各層は、周方向で同じ樹脂材料で構成されている。
本発明に係るバルーンの製造方法は、従来技術では容易でなかった、同一材料でも異なる特性を付与することができることを特徴としており、最終的にバルーン作製する際、溶融押出工程、バルーンブロー成形工程での製造収率も良くなる点で単一の樹脂材料で形成されていること好ましい。
前記樹脂材料はバルーンカテーテル用バルーンに好適な材料であれば特に制限されるものではないが、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドから選択することが望ましい。特に、本発明に係る拡張用バルーンカテーテルの場合、狭窄部を拡張するために必要な耐圧強度と柔軟性に優れる点で、ポリアミドを主成分とする樹脂組成物であることが好ましい。
以下に、本発明のバルーンの製造方法の1形態について詳細に説明するが、本発明のバルーンの製造方法は、これに限定されない。
本発明に係るバルーンの製造方法は、バルーン用チューブの軸方向に対する垂直な断面(以下、チューブ断面と呼称する。)において、外周面または内周面の半径方向へ突出する先端領域を有する突起部16が形成されたバルーン用チューブを用い、ブロー成形、または、真空成形などにより二軸延伸成形してバルーンを作製することを特徴としている。
これにより、周方向において膜厚が略均一、即ち、突起部16由来の部位と非突起部22由来の部位の膜厚が同等でありながら、リラッピング時に突起部16由来の部位が翼部を形成して折畳まれ、安定的に小径化することができるバルーンを製造することができる。
また、突起部16は、軸方向の全長に亘って有することが好ましい。
前記突起部16は、図6bに示すようにチューブ断面の外周面17よりバルーン用チューブ外側へ突出している先端領域18、及び、外周面17と内周面15で画定される基端領域19から成る。先端領域18は、チューブ断面において、真円部から突出している領域を指す。また基端領域19とは、真円部において先端領域18の両裾とバルーン用チューブの中心を結んだ際に囲まれる領域を示す。
前記先端領域は、内周面15よりバルーン用チューブ内側へ突出させて設けることもでき、外周面と内周面の両方に突出させて設けてもよい。
本発明に用いることのできる突起部16を有するバルーン用チューブは、突起部16と非突起部22で異なる軟化温度を有していることが好ましい。突起部16と非突起部22で異なる軟化温度を有していれば、製造されるバルーンのリラッピング性を更に向上させることができる。
尚、本発明に係るバルーンの製造方法における軟化温度は、前記同様、針状の細い突起が設けられた圧縮プローブ先端を、試料に対して一定荷重で押し当てながら試料温度を徐々に上昇させた際、圧縮プローブ先端が試料に沈み込み始める閾値の温度のことを示す。
本発明のバルーンの製造方法で用いられる、半径方向へ突出する突起部16を有するバルーン用チューブの製造方法は、特に制限されないが、軟化温度の異なる部位を容易に設けられる点で押出成形が好ましい。本発明において、好適に用いることのできるバルーン用チューブを、押出成形法により製造する場合は、所望の突起形状、及び、突起位置に対応するよう狭部流路11が穿たれた押出金型に溶融樹脂を流し込むことで、半径方向へ突出する突起部16を有するバルーン用チューブを製造することが出来る。バルーン用チューブ外側に突出する突起部16を設ける際には、図5aに示すように外側金型13に半径方向外側に穿たれた狭部流路11を設けることができる。また、バルーン用チューブ内側に突出する突起部16を設ける際には、図5bに示すように内側金型23に半径方向内側に穿たれた狭部流路11を設けることができる。前記狭部流路11に溶融樹脂が流れることで突起部16の先端領域18が形成される。
押出成形では、溶融樹脂は金型から熱を受け取り、加熱されながら金型内を流れ進む。逆に、金型は樹脂に熱を奪われ冷却されることが知られている。しかしながら、金型に穿たれた狭部流路11は流れ込む樹脂量が少ないため、狭部流路11を形成する金型部位は樹脂に熱を殆ど奪われず、狭部流路11の温度は狭部流路11以外の金型部位よりも高温に保たれる。また、狭部流路11は狭いため、流れ込む樹脂は高い剪断応力を受け、発熱を促される。そのため、狭部流路11を流れる樹脂は、広部流路12を流れる樹脂よりも高温で押出されることになる。また狭部流路11近傍の樹脂も狭部流路11を流れる高温の樹脂の影響を受け、狭部流路11遠傍の樹脂よりも高温で押出されることになる。
押出成型では、溶融樹脂の温度が高くなると、得られる成形品の分子配向度は低くなる傾向がある。このため、狭部流路11およびその近傍を流れる樹脂は、広部流路12若しくは狭部流路11遠傍を流れる樹脂よりも高温で押し出されることによって、得られた成形品の対応する部位は、周辺部分等他の部位に比べて低配向となる傾向がある。
一般に高分子物質は分子の一次構造が同一であれば、分子の配向度が低いほど、融点、ガラス転移点、軟化点を初めとした特性温度が低下する。従って、狭部流路が設けられた金型を用いた押出成形で形成されたバルーン用チューブは、突起部と非突起部が同一の樹脂組成物から構成される場合であっても、突起部16の軟化温度が非突起部22の軟化温度よりも低く成形される傾向がある。
次いで、本発明のバルーン製造方法ではバルーン用チューブを用いてバルーンを成形する。成形方法は特に限定されないが、ブロー成形、または、真空成形が好ましい。
本発明に好適に用いることのできるバルーン用チューブを金型内に配置し、二軸延伸工程により軸方向と径方向に延伸することにより、バルーン金型と同一形状のバルーンを成形することができる。
本発明に用いることのできるバルーン金型は、形状は特に制限されないが、均一な膜厚および形状のバルーンを作製できる点で、一般的な真円形状の金型がより好適である。
また、バルーン用チューブからバルーンを製造する工程において、二軸延伸工程は加熱条件下で行っても良いし、複数回行っても良い。また、軸方向の延伸は径方向の延伸と同時に行っても良く、若しくは、その径方向の延伸の前、あるいは後に行っても良い。さらに、バルーンの形状や寸法を安定させるために、延伸後にアニーリング処理を実施しても良い。前記方法により成形されバルーンは、成形前のバルーン用チューブの有していた特徴を有することができる。即ち、バルーンにおけるバルーン用チューブの突起部16に対応する部位は非突起部22に対応する部位よりも低い軟化温度を有して成形され得る。
尚、本発明ではバルーンにおける、バルーン用チューブ時の突起部16に対応する部位を軟化部20、非突起部22に対応する部位を非軟化部21と呼称する。
また、ブロー成形、および、真空成形ではバルーン用チューブが高い応力でバルーン金型に押し付けられるため、バルーン用チューブがバルーンとして成形される過程において、バルーン用チューブにおける突起部16はその形を失い、得られるバルーンの直管部における軟化部20と非軟化部21の膜厚は、略均一となる傾向がある。軟化部20と非軟化部21の膜厚を略均一とするためには、バルーン用チューブの突起部16はチューブ断面において半径方向外側へ突出している方が望ましい。半径方向外側へ突出する突起部16は、バルーン成形時に突起部16が直接金型に押し付けられ、均一に均されるため、半径方向内側へ突出する場合と比較して、より均一な膜厚のバルーンを製造できる傾向がある。
本発明に係るバルーンの製造方法では、突起部16を有し、または、熱軟化特性の異なる部位を有するバルーン用チューブを用いることによって、熱軟化特性の異なる部位を有するバルーンを製造することができる。
本発明に係るバルーンの製造方法により製造されるバルーンは軟化温度の低い軟化部20が、リラッピング時に翼部を形成することができる。また本発明ではバルーンの膜厚を周方向において略均一とすることが可能である。
本発明に係るバルーンの製造方法により製造されるバルーンは、バルーンに肉厚差を設けてリラッピングの制御を行うのではなく、熱軟化特性の異なる部位を設けることでリラッピングの制御する点に特徴があり、体内挿入時に血管壁に接触する翼部がバルーンの軟化部により形成されることで、血管を損傷させるリスクや狭窄部に対するリクロス性能に優れている。
本発明のバルーンの製造方法により製造されるバルーンにおいて、安定的にリラッピングを制御するためには、軟化部20の軟化温度が非軟化部21の軟化温度よりも5℃以上低いことが望ましい。5℃以上の差異を有していれば、何れの場合も同等の効果を得ることが可能である。このようなバルーンは、突起部16の軟化温度が非突起の軟化温度よりも5℃以上低いバルーン用チューブを用いることで作製することが可能である。
また、バルーンにおいて意図した部位で安定的にリラッピングさせるためには、バルーン用チューブの突起部16は高く細く形成させることが好ましい。例えば、チューブ断面における突起部16の形状としては、先端領域18の半径方向長さと先端領域18と基端領域19の界面である円弧長の比で表されるアスペクト比値が高い形状が好ましく、例えば、半円形(図6(c))よりも鋭角三角形(図6(b))のような形状がより好ましい。
バルーン用チューブにおける突起部16の半径方向の長さが長い(以下、高さが高いと示す。)、即ち、先端領域18の高さが高い程、本発明の効果が得られやすい。高い突起部16は、押出成形時の金型の狭部流路11の高さが高い場合に形成され得る。狭部流路11の高さが高いと、押出成形時に高温に保たれる金型部位が増加することに加え、狭部流路11を流れる溶融樹脂による剪断発熱が起こりやすくなる。そのため、狭部流路11を流れる樹脂と、広部流路12を流れる樹脂の加工時の温度差が大きくなるために、樹脂の配向の差異も大きくなる傾向がある。そのため、突起部16の軟化温度と非突起部22の軟化温度の差異が大きくなり、バルーンにおける軟化部20と非軟化部21の軟化温度の差異が大きくなるため、安定的なリラッピング効果が得られ易くなる。
本発明に好適に用いることのできるバルーン用チューブの突起部の先端領域18の高さは、バルーンの安定的なリラッピング効果が得られやすい点で、基端領域19の高さの15%以上であることが好ましい。バルーン用チューブから成形された。前記の基端領域19の高さとは、即ち、バルーン用チューブの真円部の肉厚を示し、突起部16の高さがバルーン用チューブ肉厚の115%以上であることが好ましい。
また、突起部16の幅は、バルーンの安定的なリラッピング効果が得られやすい点で、バルーン用チューブのチューブ断面において、チューブの円周に対して突起部16の基端領域19が占める円弧の合計が50%以下となる様に形成することが好ましい。
突起部16の幅が狭いと、突起を形成する工程において、突起部16と非突起部22の加工時の温度差が大きくなる傾向があり、結果、バルーンにおける軟化部20と非軟化部21の軟化温度の差異が大きくなる傾向があるためである。
また、最も近接する2つの突起部で形成される円弧において、鋭角の中心角が60°以上であることが好ましい。突起部16から形成される、軟化部同士の位置が近すぎる、即ち、突起部同士が形成する鋭角側の中心角が60°未満であるとバルーンのリラッピング時に、最も近接した軟化部同士が競合していまい、意図した部位でのリラッピングが困難となる傾向がある。
本発明ではバルーン用チューブの突起部16の個数は、リラッピング性が得る事が出来れば、特に制限されないが、突起部16を2箇所設けることで、課題を解決するための本発明の効果を得ることができる。例えば、突起部同士が形成する鋭角側の中心角が120°となるよう2箇所に突起部16を配置したバルーン用チューブ(図9)より作成したバルーン(図10)は、リラッピング時に2箇所の軟化部20が翼部となるために、2箇所の軟化部20から互いに120°の位置にある非軟化部も翼部を形成し、バルーンは3枚翼にリラッピングされる。
また、突起部16を3箇所以上に設ければ、突起部16由来の軟化部20を基点として3枚翼以上にリラッピングすることが可能である。このため突起部16を2箇所以上設けることで、バルーンを3枚翼以上にリラッピングすることが可能であり、課題を解決するための本発明の効果を得ることができる。
以下に本発明に係る具体的な実施例及び比較例について詳説するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
(実施例1)
デュロメーター硬度で72Dのポリアミドエラストマー(商品名:PEBAX7233SA01:アルケマ社製)を用いて溶融押出成形によりバルーン用チューブを作製した。バルーン用チューブの溶融押出成形金型は、図5(a)に示すチューブ外層側にバルーンの突起部となる流路の狭い部位11を有した断面形状のものを用いて、図6(a)に示す形状のバルーン用チューブを作製した。バルーン用チューブの寸法は非突起部外径:1.00mm、内径:0.50mmとした。突起部は、長手方向に垂直な断面において等間隔に4個存在し、幅33μm、高さ40μmとなるよう作製した。
次いで、このバルーン用チューブを、ブロー成形金型を用いて二軸延伸ブロー成形を行い、直管部の外径が3.00mm、直管部の長さが15mmのバルーンを作製した。
作製したバルーンは表2の通りであり、直管部の膜厚はマイクロメータで測定したところ軟化部が17.2μm、非軟化部が16.5μmで略同膜厚であった。このバルーン用チューブとバルーンの軟化点をアナシスインスツルメント社製ナノサーマルアナリシスVESTAシステム(極微小領域熱分析装置)を用いて、突起部、非突起部のそれぞれ中央部を測定した。その結果、バルーン用チューブでは突起部130℃、非突起部143℃であり、バルーンでは軟化部136℃、非軟化部146℃であった。
次いで、バルーンカテーテルの内側シャフト用チューブとして高密度ポリエチレン(HY540、日本ポリケム株式会社)を用いて押出成形によりチューブ(外径:0.56mm、内径:0.42mm)を、外側シャフト用チューブとしてポリアミドエラストマー(商品名:PEBAX7233A01:アルケマ社製)を用いて外径:0.88mm、内径:0.71mmのチューブを押出成形法により作製した。これらと射出成形でポリカーボネート(Makloron2658、Bayer社)を用いて得られたアダプター部材を用い、コアキシャル構造のOTW型のバルーンカテーテルを作製した。
(実施例2)
バルーン用チューブの突起部を幅33μm、高さ35μmとして、それ以外は実施例1と同じ材料、方法、金型でバルーン用チューブ、バルーン、カテーテルを作製した。
作製したバルーンの直管部の膜厚は、軟化部が17.0μm、非軟化部が16.5μmであった。軟化点については、バルーン用チューブでは突起部140℃、非突起部145℃であり、バルーンでは軟化部150℃、非軟化部153℃であった。
(実施例3)
バルーン用チューブの突起部を120°の位置関係で2個配置されるようチューブ成形を行い、それ以外は実施例1と同じ材料、方法、金型でバルーン用チューブ、バルーン、カテーテルを作製した。バルーンの直管部の膜厚は、軟化部が17.0μm、非軟化部が16.0μmであった。軟化点については、バルーン用チューブでは突起部131℃、非突起部143℃であり、バルーンでは軟化部135℃、非軟化部146℃であった。
(実施例4)
バルーン用チューブの突起部を等間隔に5個、幅33μm、高さ50mとして、それ以外は実施例1と同じ材料、方法、金型でバルーン用チューブ、バルーン、カテーテルを作製した。バルーンの直管部の膜厚は、軟化部が17.8μm、非軟化部が16.0μmであった。軟化点については、バルーン用チューブでは突起部138℃、非突起部144℃であり、バルーンでは軟化部142℃、非軟化部155℃であった。
(実施例5)
バルーン用チューブ作製で、材料にデュロメーター硬度で74Dのナイロン12(商品名:RILSAN AESN OTL:アルケマ社製)を用いて、それ以外は実施例1と同じ材料、方法、金型でバルーン用チューブ、バルーン、カテーテルを作製した。バルーン用チューブの寸法は非突起部外径:1.00mm、内径:0.50mmとした。突起部は、長手方向に垂直な断面において等間隔に3個存在し、幅35μm、高さ50μmとなるよう作製した。バルーンの直管部の膜厚は、軟化部が17.0μm、非軟化部が16.0μmであった。軟化点については、バルーン用チューブでは突起部144℃、非突起部164℃であり、バルーンでは軟化部158℃、非突起部168℃であった。
(実施例6)
バルーン用チューブの突起部を幅35μm、高さ30μmとして、それ以外は実施例5と同じ材料、方法、金型でバルーン用チューブ、バルーン、カテーテルを作製した。バルーンの直管部の膜厚は、軟化部16.7μm、非軟化部16.2μmであった。軟化点については、バルーン用チューブでは突起部158℃、非突起部162℃であり、バルーンでは軟化部162℃、非軟化部164℃であった。
(比較例1)
デュロメーター硬度で72Dのポリアミドエラストマー(商品名:PEBAX7233SA01:アルケマ社製)を用いて溶融押出成形によりバルーン用チューブを作製した。バルーン用チューブの溶融押出成形金型は、断面形状が真円のものを用いて、断面が真円形状のバルーン用チューブを作製した。バルーン用チューブの寸法は外径:1.00mm、内径:0.50mmである。バルーンは、実施例1と同じ方法で作製し、膜厚や軟化点の測定を実施したところ、バルーンの直管部の膜厚は15.3μmであった。軟化点については、バルーン用チューブでは144℃、バルーンでは154℃であった。
次いで実施例1と同じ材料、方法でカテーテルを作製した後、バルーンカテーテル用の一般的な折畳み装置を用いてバルーンを4枚翼にラッピングすることで、物理的にリラッピング形状の癖付けを行った。
(比較例2)
デュロメーター硬度で74Dのナイロン12(商品名:RILSAN AESN OTL:アルケマ社製)を用いて溶融押出成形によりバルーン用チューブを作製し、それ以外は比較例1と同じ材料、方法、金型でバルーン用チューブ、バルーン、カテーテルを作製後、リラッピング形状の癖付けを行った。バルーンの直管部の膜厚は17.7μmであった。軟化点については、バルーン用チューブが162℃、バルーンは164℃、であった。
(バルーンのリラッピング性能の評価)
実施例1から7及び比較例1、2のバルーンカテーテルに各5本について、バルーン内部を負圧下にした上で内側シャフトに巻き付け、バルーン保護用の管を被せてEOG滅菌したものを評価サンプルとし、バルーンのリラッピング性能の評価を実施した。評価方法概要を下記に示す。
37℃の生理食塩水を満たした水槽中に、ガイディングカテーテルを配置した。バルーンカテーテルをガイドワイヤとともにガイディングカテーテルの遠位端から100mm露出するよう配置した。そしてバルーンカテーテル内に造影剤と生理食塩水の混合液を14atmまでインデフレータで導入拡張して、30秒間保持した後、バルーンを即座に収縮させた。各水準ともサンプル5本用いて、1サンプルごとに5回繰り返し評価した。全サンプルで測定毎にバルーンのリラッピング形状を確認した。これら評価結果を表1に示す。
(評価結果)
実施例1から6は突起部由来である軟化部が翼部を形成して、それぞれ所望通りのリラッピング形状に制御できた。
比較例1、2は4枚翼として癖付けを行ったが、何れもリラッピング形状を制御することができなかった。
1.ガイドワイヤールーメン
2.インフレーションルーメン
5.バルーンカテーテル用バルーン
11.狭部流路
12.広部流路
15.内周面
16.突起部
17.外周面
18.先端領域
19.基端領域
20.軟化部
21.非軟化部
22.非突起部
24.第1の樹脂材料層
25.第2の樹脂材料層

Claims (7)

  1. バルーンカテーテルに用いられるバルーンカテーテル用バルーンであって、前記バルーンは、樹脂組成物で形成され、軸方向に直交する垂直断面において、隣接する部位よりも、軟化温度が低い低温部を少なくとも1箇所有しているバルーンカテーテル用バルーン。
  2. 前記バルーンは、同一の樹脂組成物で形成されている請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
  3. 前記バルーンは、直管部を有し、該直管部の膜厚が略均一である請求項1または2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
  4. 前記低温部の軟化温度は、隣接する部位より5℃以上低い請求項1〜3のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
  5. 前記バルーンは、前記低温部を2箇所以上有している請求項1〜4のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
  6. 前記低温度部と、最も近接する低温部が形成する少なくとも1つの円弧において、鋭角の中心角が60°以上である請求項5の記載のバルーンカテーテル用バルーン
  7. 前記バルーンは、前記低温部が翼部となって折りたたまれる請求項1〜6のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
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