JP2014153285A - 核特性計算結果補正装置および補正方法 - Google Patents
核特性計算結果補正装置および補正方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】使用済み核燃料の反応度の計算値に含まれる不確かさを合理的に定量評価して、その結果使用済み核燃料の安全性と経済性を合理的に両立させる安全裕度を設定する。
【解決手段】実施形態によれば、核特性計算結果補正装置は、入力値による不確かさを演算する断面積共分散誤差行列演算部114、入力値に対する感度を演算する目的体系感度係数ベクトル演算部116、実験体系での感度を演算する実験体系感度係数ベクトル演算部115、模擬性評価因子演算部118および線形結合定数演算部117、実験結果と演算結果の比である換算係数rを用いて目的体系の反応断面積起因の不確かさを算出する断面積起因不確かさ推定部120、原子数密度起因の不確かさを算出する原子数密度起因物理量不確かさ演算部123および目的体系の計算結果を補正する物理量計算結果補正部126を有する。
【選択図】図1
【解決手段】実施形態によれば、核特性計算結果補正装置は、入力値による不確かさを演算する断面積共分散誤差行列演算部114、入力値に対する感度を演算する目的体系感度係数ベクトル演算部116、実験体系での感度を演算する実験体系感度係数ベクトル演算部115、模擬性評価因子演算部118および線形結合定数演算部117、実験結果と演算結果の比である換算係数rを用いて目的体系の反応断面積起因の不確かさを算出する断面積起因不確かさ推定部120、原子数密度起因の不確かさを算出する原子数密度起因物理量不確かさ演算部123および目的体系の計算結果を補正する物理量計算結果補正部126を有する。
【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、使用済み核燃料の核特性に関する物理現象を表現するコンピュータ上のモデルを用いたシミュレーション計算結果に含まれる誤差について、その対象を模擬した実験の結果を用いた推定と、推定した誤差に基づく核特性計算結果補正装置およびこれを用いた補正方法に関する。
原子炉で一定期間使用された後に取り出された燃料を使用済み核燃料と呼んでいる。
使用済み核燃料は使用前の核燃料と比較して、(1)中性子を含む放射線を多量に放出する、(2)発熱する、という理由のために、1体1体の特性を実際に測定して取り扱うことは非常に困難であり、その管理は燃料集合体を特定の方法で計算(シミュレーション)した計算結果に基づいて実施される。
使用済み核燃料は管理やその後の運用(例えば冷却期間、再処理施設への輸送など)の過程において取り扱う人々や一般の公衆の安全の確保はこれらの計算値に基づいて判断がなされている。
ここで、原子力分野が他の工業分野と異なり、これら計算(シミュレーション)に大きく依存していること、および計算シミュレーションと実験による検証について説明する。
工業分野で製作される製品は、実際に使用する前に目的とする性能が発揮できることを確認する必要がある。最もよく用いられる方法は、最終的な製品と殆ど同じものを試作して、その試作品の性能を確かめる方法で、実証試験と呼ばれている。たとえば家電製品でも自動車でも鉄道車両でも試作品を製作して、その性能を確認し品質を保証して最終的な製品として出荷している。
一方、特定の工業分野では、製作する製品の大きさが巨大で、最終的な製品の性能を試作によって確認することが極めて困難である場合がある。また、製作する製品が非常に高価であるか製作数が唯一つあるいは少数であるか、経済的あるいは他のいくつかの理由によって試作品を製作することが合理性をもたない場合もある。
たとえば、実際の原子力発電所や核物質に関係する施設では、これらの発電所や施設を試作することは経済的にも物理的にもほとんど不可能である。理由の一つとして、使用する核物質を自由に用意することができないことがある。
使用済み核燃料の貯蔵施設を建設する場合、予め貯蔵する使用済み核燃料と同じものを用意しておいて施設の性能を測定することは現実的には不可能である。原子力発電所を建設する際も、予め別の燃料集合体を用意しておいてその核燃料によって炉心の核的性能を確認することは、経済的な面からも成立性がほとんど無い。
そこで、原子力分野では実物を用いた性能の確認ではなく、計算による性能の確認が産業分野の誕生時点から行われてきた。また他の分野、特に高額な製品である航空機やロケット、大型船舶などの設計でも、製品のコストアップを抑え、製作時間を短縮するために設計段階で計算によって最終的な性能を把握することが、ますます一般的になってきている。
予測計算には、一般的にコンピュータを用いる。製品が従う物理理論に基づいて作成された計算機プログラムによってその「製品」の性能を把握する技術は、計算物理、計算実験あるいは計算機シミュレーション(コンピュータシミュレーション)などと呼ばれ、大きく発達した技術分野になっている。
原子力発電所を建設する場合、設計段階において、実際の燃料集合体を用意して原子炉の炉心の核的性能を確認することは不可能であるので、コンピュータシミュレーションで性能を確認する。また原子炉の炉心に装荷する製作する燃料集合体の体数や燃料集合体に含まれる核物質の濃度や分布についてもコンピュータシュミレーションに基づいて決定される。原子力分野ではこのようなコンピュータシュミレーション技術は不可欠である。
コンピュータシュミレーションは、数値計算の積み重ねであって、必ず計算誤差が付きまとう。計算の確からしさを計算精度と呼ぶが、計算精度を把握することは設計の信頼性・安全性の向上、経済性の改善、設計の合理化のために非常に重要である。計算精度を正確に把握することとは、得られた計算値に伴っている計算誤差を正確に把握することと同じ意味である。
次に、計算誤差の種類について説明する。
計算で生じる誤差の要因は幾つかの種類に分けられる。計算手法の誤差、数値計算の誤差および計算に用いる数値(入力値)に起因する誤差である。
計算に用いる物理モデルは、あくまで自然界の物理現象を数学的にモデル化したものであり、自然界がこの物理モデルを尊重するようにして変化するわけではない。加えて、物理モデルをコンピュータで計算できるように近似・変形した場合にも誤差が生じる。これらが計算手法の誤差である。
原子力の核計算において、中性子の運動の基礎方程式は、ボルツマンの輸送方程式によって記述される。ボルツマンの輸送方程式をコンピュータで解く場合、何らかの近似を用いて解くことになる。原子炉の炉心計算では、ボルツマンの輸送方程式を近似した拡散方程式が広く利用されている。この拡散方程式は、ボルツマンの輸送方程式を中性子の運動の角度方向の情報を無視して近似したものである。よって中性子の運動方向が均一でない体系では、拡散方程式による計算で誤差が大きくなるおそれがある。加えて、拡散方程式で使用される拡散係数は、密度の薄い媒質に対して適切な数値を設定することができない場合があり、そのため誤差を生ずる。計算対象の体系が小さい場合、すなわち中性子の洩れの割合が大きい小型の炉心を拡散理論で計算すれば、洩れを過大評価して臨界固有値を過小評価する傾向があり、計算誤差が大きくなる傾向があるといわれている。
このように、計算を行なう際、計算に用いる理論やモデルが適切であるか、計算手法で生じている誤差の検討が必要である。
数値計算の誤差は、コンピュータで計算する過程の四則演算で生じる誤差である。数値計算の誤差として代表的なものには、たとえば丸め誤差とか、切り上げ・切り捨て誤差がある。ただし、数値計算の誤差は、現在の工夫された数値計算技術とコンピュータのハードウェアの発達によって十分無視できるレベルになっており、一般に他の誤差と比較して十分小さく、誤差の主たる支配因子ではない。
誤差の要因として一番大きいと考えられるものは、計算に使用する数値に起因する誤差である。計算に用いられる数値は、寸法、体系を構成する物質、その物質の数密度などの計算対象に固有な数値と、計算対象それぞれには依存せず、計算に共通に使用される数値がある。たとえば、水の温度と圧力が決まれば水の密度は決まるが、その密度の値は計算体系には依存せず共通に使用される値である。計算に用いられるこれら全ての数値を、以下パラメータと呼ぶことにする。またパラメータによって計算結果に生ずる誤差を、以下パラメータ誤差と呼ぶことにする。
一般的に用いられる物理定数も真の値ではなく、誤差が含まれている。ただし、物理定数の精度は他の数値に比べて遥かに高く、有効数字も6桁を越えるものが多くある。このため、一般的に、物理定数の誤差が原子力施設の設計や建設、燃料集合体のなどの設計、製作で問題となることはないと判断できる。
一方、これまで核計算の中で最も重要と判断されてきたパラメータは「核データライブラリ」に関する数値であり、中性子反応断面積、崩壊定数、収率、遅発中性子割合などがそれにあたる。「核データライブラリ」は、核計算に直接的に関わる数値群で、これら数値の変化が核特性を示す計算値に与える影響が大きい。また、もともと「核データライブラリ」は、全ての値が測定によって正確に確認・決定されたものではなく、理論計算によって定められた数値も含まれる。このため、「核データライブラリ」に含まれる誤差は、他のパラメータ誤差よりも大きいと判断される。したがって、核計算では、「核データライブラリ」のパラメータ誤差が重要視される。
パラメータ誤差のなかで次に重要なものは、原子数密度の誤差である。原子力分野において、運転後の燃料集合体などについては、燃焼計算によって原子数密度を得る。このため、その後の計算で原子数密度を用いるときには、既にこの原子数密度に計算誤差が含まれていると判断される。
原子力産業では、扱う製品の構成元素、元素の原子数密度などの組成を高い精度で確認・測定することが困難あるいは非現実的な場合がある。燃料集合体内の核種組成や核種の原子数密度は、次にその燃料集合体を使用する場合の反応度の決定、保管・輸送の際の臨界安全性や燃料集合体から放出される放射線量を定量化するために極めて重要な数値である。しかし、核種の組成や原子数密度の測定のために燃料集合体を炉心から取り出すこと、さらに、破壊して分析測定することは現実的ではなく、また、高い放射線レベルの燃料集合体を取扱い、正確に測定することも技術的にも経済的にも成立性が乏しい。
そこで燃料集合体の核種組成や原子数密度は、過去燃料集合体が置かれていた環境をできるかぎり正確に把握して、計算機プログラムによって計算する。これを燃焼計算と呼ぶ。このようにして求めた原子数密度には、計算誤差が含まれる。この原子数密度もこの数値を入力とした核計算の計算結果に与える影響が大きいものである。使用済み核燃料に含まれる核分裂生成物の原子数密度の計算精度あるいは逆の意味で計算誤差はその後の使用済み核燃料の取扱いに大きな影響を与える。
実際の原子力発電所に関する計算を行なう場合には、原子炉の中で移動する流体の流量や温度、材料温度は、計算に必要な入力点数について精度の高い数値が得られないことがあり、経験的な数値を仮定し入力して計算を行なう。炉心の中に水と蒸気の二相流が存在する沸騰水型原子炉(BWR)の炉心計算では、流量の誤差によって生ずる計算誤差は有意な値である考えられている。ただし沸騰水型原子炉(BWR)の炉心計算に用いる個々の数値と使用済み核燃料の中に含まれる核種の原子数密度の計算精度との関係を明らかにすることは容易ではなく近い将来完全にあるいは合理的に解決される見込みも乏しい。
次に原子力分野での計算精度を補助的な実験で確認する考え方について説明する。
原子力産業の初めから、核物質の臨界性という原子力に特有の現象を確認するために、実験装置が作られ、利用されてきた。そのひとつが、臨界実験装置である。臨界実験装置は、一般的に、大気圧下、常温(室温)で運転・稼動できるように設計された装置である。
臨界実験装置は小型の原子炉であって、実際の原子炉で使用するウランやプルトニウムなどの核物質を使用して臨界状態を達成する。しかし、装置が非常に小型であるために熱をほとんど出さない。原子炉のミニチュア版といった装置であり、臨界状態を実現できることから、臨界実験装置と呼ばれている。臨界実験装置を用いた実験は、臨界実験と呼ばれる。
臨界実験は、計算の誤差を減らすために役立てられてきた。物理的に非常に単純化され、簡略化された条件で、体系を組み上げて、同時に精度の高い測定データを取得することが臨界実験の目的である。物理的に非常に単純で簡略化した体系では、形状や組成に関わる計算入力パラメータの誤差を減らすことができ、誤差の少ない測定値は計算値との比較を容易にする。過去から現在に至るまで「計算手法に起因する誤差」と「核データライブラリに起因する誤差」を明らかにすることを目的に、臨界実験によって得られた多くの測定値と計算値が比較されて、その結果、誤差要因が特定され誤差が定量化されてきた。
加えて、臨界実験の測定値を計算値がよく再現できていれば、計算に使った手法、計算に使った主として核データライブラリなどのパラメータの品質が高いと判断される。品質が高いと判断されれば、同じ手法とパラメータの組み合わせで目的とする体系の設計を行っても良いという品質保証・判断基準となってきた。
臨界実験の測定値で一番重要視されるものは、臨界になった条件である。そこで、臨界になった諸条件を、データとして正確に取得する。原子炉物理の言葉では、臨界になった条件を「臨界質量」という言葉で表すことがあり、これは核物質種類、質量のみならず、体系の幾何形状、温度や核物質の組成や質量一式の正確な数値を指す。
次に重要とされるものは、臨界実験装置が臨界になったときの核分裂反応の空間分布である。燃料棒を組み合わせて構成された臨界実験装置では、燃料棒から放出される放射線を測定して、放射線量の比によって核分裂反応の分布を測定することが多い。これは核分裂反応と放出される放射線の量は比例関係にあると考えられるからである。なお、臨界実験装置に、たとえば小型核分裂電離箱などの特別の放射線測定器を挿入して、目的とする位置での放射線の量を測定することも多い。この場合も、測定値の比によって中性子束の分布などが求められる。
目的とする測定値が得られれば、次に臨界実験の体系や実験条件を入力として計算を行なう。計算で求めた値を臨界実験で得られた臨界量と核分裂反応の分布、中性子束の分布などの測定値と比較することで、計算全体の品質が把握できる。すなわち計算値と測定値が測定誤差の範囲や許容できる程度で一致していれば、臨界実験を計算した計算機プログラム(計算手法)と核データライブラリを中心として計算に用いたパラメータが十分な品質を有しているという根拠になる。その後、同じ計算機プログラム(計算手法)と核データライブラリを用いて最終的に目的とする原子炉や原子炉施設の設計の計算に適用できるという判断がなされる。
一方、計算値と測定値に有意な差が認められる場合は、計算手法や核データライブラリの問題点や改良すべき点を特定し、計算値と測定値の一致が改善されるように改良がなされる。このように、臨界実験は、計算機プログラムと核データライブラリの品質の確認や保証、あるいは計算手法や核データライブラリの改良に寄与してきた。
臨界実験で得られた数値(測定値)にも誤差が含まれる。その誤差は、測定誤差と呼ばれる。測定誤差には、それぞれの測定の際に偶然発生する統計誤差(ランダム誤差、統計誤差)と、測定に用いた計測器や手法に伴う誤差(系統誤差)が含まれる。統計誤差は、確率分布に従い、測定の回数を増やせば誤差の割合は減少する性質がある。系統誤差は、測定方法そのものに付随した誤差であるので、測定ごとに常に発生し、系統誤差の割合は測定の回数によって変化することはない。なお、通常測定誤差の割合は、計算誤差の割合よりも小さいと考えられている。
これまで臨界実験で得られたデータを利用する方法として、一般的に次の二つの応用がなされてきた。補正因子(バイアス)法と、断面積アジャストメントである。
補正因子(バイアス)法では、目的とする体系において計算で生じる相対誤差を減らすことを目的としており、その誤差の原因を取り除くことは考察しない。
臨界実験の計算値と測定値を利用して目的とする体系の計算精度を向上させる別の手法として、断面積アジャストメントがある。計算誤差の要因を核データライブラリ(断面積ライブラリ)と考えて、臨界実験での計算値と測定値とが一致するように、核データライブラリの値を調整・修正(アジャストメント)し、その調整を行った核データを用いて、目的とする体系の計算を行ない、計算精度を向上させるという考え方である。
特許文献1には、主に流体の計算に際して、幾何学的な寸法誤差・公差、境界条件など入力値の持つ誤差、数値解析誤差について、計算値に含まれる誤差を、感度係数を用いて評価する手法が開示されている。また、非特許文献1には、目的とする体系に対して最終的な設計値を得る際に、計算値にバイアスを乗じ、計算値を補正する手法が開示されている。この手法では、実験で得られた測定値と計算値との比を組み合わせることで、一般的なバイアスを得る。
特許文献1に記載された手法は、あくまで計算値だけを利用しており、実験で得られる測定値を有効的に利用する手段がない。また、非特許文献2に記載された手法は、数学的手法が記載されているものの、指数関数を利用するため演算が極めて複雑であり各実験に必要な係数を一意的に簡便に計算できない。さらに、基本的問題として計算のアルゴリズムに、なぜ指数関数を用いるべきかの物理学的な理由付けがないので、理論の基盤が十分でなかった。
特許文献2では、この点を解決するために、理論的な裏付けをもった誤差の推定方法に基づく誤差推定装置の発明が開示されている。
さて工業製品に関する実設計において、製品が要求する性能を必ず満たすために裕度をもった設計がなされる。例えば最高速度100km/hの自動車を設計する際には、設計計算で見込まれる誤差が6%であれば信頼度は94%(0.94)と考えられるので、計算上では余裕を見て107km/h(=100÷0.94)の性能が出るように設計される。このように実際の工業製品を製作する際に、設計計算値に裕度や安全係数を加減したり、乗除して設計がなされてきた。
これは建築分野の設計に良く用いられてきた手法で、例えば地震などで要求される建物の強度に対して最低限要求される数値に2を掛けるなどして設計上は2倍の強度を持つように設計されることがある。エレベーターを吊り下げるケーブルについても同様で、エレベーターに乗り込む最大人員あるいは持ち込まれる重量の何倍かに耐えるように設計・製作されている。
原子力分野も同様で、原子力に関する性能で最も注意を払わなければいけない臨界に関係する臨界安全の分野では、中性子の(実効)増倍率が1.0になることが臨界であるため、安全上、燃料集合体などの製品や原子力施設が臨界にならないように、設計計算ではそれらの中性子増倍率kが0.95を下回るように設計される。これらは設計計算で5%の計算誤差があっても最終的に実製品や実施設が臨界状態にはならないようにするための配慮である。
これらの裕度や安全係数は歴史的に、(1)政府や国際的な公的機関が設定する、(2)これまで過去の経験やこれまで長い期間使用されてきた手法で決める、(3)技術者の個人的判断、等によって数値が決められ、計算誤差として加えられるかあるいは乗じられて利用されてきた。
着目する性能に対しての実験で明らかになった計算誤差を設計計算値に何かの形で適用する際にも、これまで過去の経験やこれまで長い期間使用されてきた手法、技術者の個人的判断、によって安全係数と称される値が別に決められ、評価された計算誤差に更に加減されるか乗除されて利用されてきた。
例えば推測統計学では信頼性区間95%という値がよく使われ、判断基準として5%という数値がよく使われている。原子力分野でもしばしば0.95という数値を臨界安全の基準に用いたり、その他の設計に適用している。これは5%という値を無条件に安全係数として臨界での値1.000から差し引いて使用している例である。
確かに、これらの安全係数を用いて設計値としてより安全側の評価をした後工業製品を製作することは、安全を担保するのに重要な考え方である。一方、過大な安全係数は設計余裕度を必要な範囲を越えて大きく見積もりすぎることになるため、経済性の面では必ずしも賢明な方法ではない。例えば100kgの鋼材で組み立てれば強度的に十分成立する構造物をわざわざ150kgの鋼材を用いて製作するのは経済的に不利益を招くので、過度な安全係数の適用は経済的に最適な設計をもたらさない。
使用済み核燃料が臨界にならないよう安全な取扱いを行う際に、核分裂性物質が原子炉の運転によって減少していないという仮定を用いることがある(新燃料仮定)。これは明らかに安全側の評価になるが、多くの場合、過度な仮定であり使用済み核燃料を扱う上で経済性を損なっていると判断される。
先に述べたように、(臨界)実験の測定値とその実験を設計コードで計算して得られた値との差として評価できた計算誤差を設計計算の値に利用する際には、(臨界)実験が目的とする実機体系に十分に模擬しているほど得られた計算誤差の価値が高い。別の言葉では得られた計算誤差は目的とする実機体系の計算値への適用性がより高いことは明らかである。
しかしながらこれまで実験体系の類似性の程度に関わらず常に同じ安全係数を用いられることが多かった。
よって安全面に十分な大きな配慮をしているとは言えるが、安全係数の扱いに際して工学的に経済面を含めて最適化するような配慮はこれまでなされてこなかった。
通常安全係数は一定の値が用いられ、設計精度の良いものにもそうでないものにも一律に使用されてきた。これは毎回設計精度を確認する必要が無く簡便な方法であるが、余裕度を過度に設定してしまう場合があり、工業製品として経済面を考慮した場合、必ずしも最適な取扱いがなされているとは言えない。
特許文献1および2で開示されている発明は、評価された誤差の推定結果を使用して、もとの設計計算値を補正することを目的としており、目的とする実機体系の性能が特に人間社会活動の安全に直接関わるものでなければこれで完結できる十分な手法である。一方、例えば飛行機の機体の強度計算のように設計の信頼度が人間の社会活動に直接関係するものがある。そのようなものには設計計算値に加えて安全係数というものが適用されてきた。このような安全係数を組み合わせるという観点は特許文献1および2には記述されていないが、これらの提案内容を否定するものではなくて、さらに設計計算値を補足する考え方である。
また、目的とする実機体系がある特定の製品や施設である場合、最終的な精度を保つために計算誤差(不確かさ)について適切な裕度を設定する必要がある。例えば核物質や燃料集合体を保管して未臨界を保持する施設などである。これらの施設では未臨界を保つことが最重要課題である。安全の程度を増加させるためには核物質や燃料集合体の総量を減らせば良いが、それは装置や施設の経済的運用の目的からは逆の方向である。それゆえ経済性と臨界安全の両立の観点から、未臨界の程度の非常に正確な評価が強く求められる。
長年、使用済み核燃料についても未臨界を担保するために安全係数や補正因子等が多く用いられてきた。あるいは安全を担保するために現実的ではない仮定も用いられてきた。またそれらの値や方法は十分な理論的背景に基づいて決められたものではなく、多くは技術者の経験や判断によって決められることが多かった。
Tadafumi SANO、他1名、"Generalized Bias Factor Method for Accurate Prediction of Neutronics Characteristics"、Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY、Vol.43, No.12、Page 1465-1470、2006年
Teruhiko KUGO、他2名、"Theoretical Study on New Bias Factor Methods to Effectively Use Critical Experiments for Improvement of Prediction Accuracy of Neutronic Characteristics"、Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY、Vol.44, No.12、Page 1509-1517、2007年
Nuclear Technology Volume 174, Number 2 MAY 2011: Special Issue on the SCALE Nuclear Analysis Code System
商業用原子力発電所が一定の運転期間を経た後、原子炉から取り出される使用済み核燃料は、原子炉内に装荷されていない未使用の新燃料と比較して発生する放射線の強度、発生する熱量が非常に大きく、使用済み核燃料を原子炉から取り出したり原子炉外に移動させたり、あるいは他の場所に保管する際には取り扱う人間を含めて一般公衆の安全を確保するために細心の注意が必要である。
安全の確保には個々の使用済み核燃料が放出する放射線の種類別の放射線強度、発熱量、あるいは保管する際の臨界性に関わる反応度の正確な把握が不可欠である。一方、これら重要な数値である放射線の種類別の放射線強度、発熱量、使用済み核燃料の反応度については一般的には実際の使用済み核燃料自体を1体毎に測定することはほぼ不可能であって、これらの数値は原子炉内の物理現象を忠実に模擬したシミュレーション計算の結果から求められる。シミュレーション計算の技術は原子力産業が誕生して以来、絶え間なく進歩し続けていて現在の技術では相当な高精度で使用済み核燃料について必要とされる物理量を求めることが可能になっている。しかしながら計算で得られた数値については計算で生じた誤差や不確かさが計算値に含まれているので、安全の確保のために計算値に安全裕度を適用してより安全側の評価になる一定の補正を行うことが多い。
このことは例えば使用済み核燃料を扱う際に、反応度を必要以上に大きく見積もって取り扱うことを招き、次のような影響がある。(1)使用済み核燃料の輸送に際して1回あたりに輸送する使用済み核燃料集合体の体数を少なくし過ぎて輸送回数を多くして、輸送に関するリスクを増大させ、あるいは輸送に関する費用を増大させる。(2)保管に関して使用済み核燃料集合体の保管体数を少なくするか、あるいは過大な裕度をもった広い保管場所を必要とする。すなわち保管に関わる費用を増大させている。
使用済み核燃料の取り扱いについては安全が第一であることは当然であるが、使用済み核燃料の特性を把握するための計算結果に含まれる曖昧さや不確かさの合理的評価がなされておらず、安全性と経済性とを両立させるべき工学的見地からは課題となっている。
そこで、本発明の実施形態は使用済み核燃料の反応度に注目する。本発明の実施形態では使用済み核燃料の反応度の計算値に含まれる不確かさを合理的に定量評価して、その結果使用済み核燃料の安全性と経済性を合理的に両立させる安全裕度の設定を可能にすることを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態は、使用済み核燃料の核特性に関する物理現象を表現するコンピュータ上のモデルを用いたシミュレーション計算結果に含まれる誤差について、その対象を模擬した実験の結果を用いて推定を行い、推定した前記誤差に基づき前記計算結果を補正する核特性計算結果補正装置において、iを1から実験の総数nまでの自然数としたときにi番目の実験についての前記モデルを用いたシミュレーションで得られたある物理量の計算値の当該実験で測定された当該物理量の測定値に対する前記モデルへの入力値に関する相対誤差Ep i(i=1,2,・・・,n)を演算するとともに、シミュレーションに用いる前記モデルへの入力値の不確かさの割合の関係を示す断面積共分散誤差行列WCを演算する断面積共分散誤差行列演算部と、前記対象において核分裂生成物が無いと仮定した場合の前記モデルを用いたシミュレーションの結果のそのモデルへの入力値の単位変化に対する前記物理量の変化量を示す目的体系感度係数ベクトルS0 Rを演算するとともに、前記対象について前記モデルを用いたシミュレーションの結果のそのモデルへの入力値の単位変化に対する前記物理量の変化量を示す目的体系感度係数ベクトルSRを演算する目的体系感度係数ベクトル演算部と、i番目の実験の体系について前記モデルを用いたシミュレーションした結果のそのモデルへの入力値の単位変化に対する前記物理量の変化量を表す実験体系感度係数ベクトルSiを演算する実験体系感度係数ベクトル演算部と、前記実験体系感度係数ベクトルSiを線形結合した線形結合ベクトルSkの線形結合定数αiを、Sk T・WC・Sk=S0 R T・WC・S0 Rを満足しかつ同時に前記目的体系感度係数ベクトルS0 Rと前記線形結合ベクトルSkとのなす角が最小になるように求める線形結合定数演算部と、前記断面積共分散誤差行列WCおよび前記線形結合ベクトルSkとから模擬性評価因子RFを求める模擬性評価因子演算部と、前記線形結合定数αiを重みとして前記相対誤差Ep i(i=1,2,…,n)の値を合成して前記モデルを用いたシミュレーションの結果得られる前記対象の物理量に含まれる相対誤差(ΔZ/Z)2を推定する相対誤差演算部と、前記相対誤差演算部で推定された前記相対誤差(ΔZ/Z)2と、前記断面積共分散誤差行列WCと前記目的体系感度係数ベクトルS0 Rとに基づいて算出された核分裂生成物なしの場合の不確定さの2乗の計算値であるUCC0=S0 R T・WC・S0 Rとの比の値を換算係数rとして、r=(ΔZ/Z)2/UCC0により算出する換算係数演算部と、前記換算係数演算部で算出されたrを記憶する換算係数記憶部と、前記断面積共分散誤差行列WCおよび前記目的体系感度係数ベクトルSRに基づき前記物理量の反応断面積起因の不確かさUCC1をUCC1=SR T・WC・SRにより算出して、前記rおよび前記UCC1に基づき実験結果を反映した目的体系に関する断面積起因の不確かさUCCSをUCCS=r×UCC1として算出する断面積起因不確かさ推定部と、使用済み核燃料に含まれる元素の原子数密度Nの算定誤差によって使用済み核燃料の物理量に生ずる誤差として原子数密度共分散誤差行列WNを算出する原子数密度共分散誤差行列演算部と、前記対象について前記モデルを用いたシミュレーションの結果のそのモデルへの原子数密度の単位変化量ΔNi/Niに対する前記物理量の変化量を原子数密度感度係数ベクトルSNを演算する原子数密度感度係数ベクトル演算部と、前記原子数密度感度係数ベクトルSNおよび前記原子数密度共分散誤差行列WNとから原子数密度起因の物理量不確かさUCNをUCN=SNT・WN・SNにより算出する原子数密度起因物理量不確かさ演算部と、前記断面積起因の不確かさUCCSおよび前記原子数密度起因の物理量不確かさUCNの合計値UCTに基づき前記目的体系に関する物理量の計算結果を補正する物理量計算結果補正部と、を有することを特徴とする。
また、本発明の実施形態は、使用済み核燃料の核特性に関する物理現象を表現するコンピュータ上のモデルを用いたシミュレーションによる計算結果に含まれる誤差について、その対象を模擬した実験体系における実験結果を用いて推定を行い、推定した前記誤差に基づき前記計算結果を補正する核特性計算結果補正方法であって、実験体系測定値記憶部が前記実験体系での実験結果を記憶する測定値記憶ステップと、断面積共分散誤差行列演算部が、中性子反応の反応断面積に関する断面積共分散誤差行列WCを導出するWC算出ステップと、実験体系物理量演算部が模擬実験体系についてのシミュレーション計算を実施する実験体系計算ステップと、前記測定値記憶ステップおよび前記実験体系計算ステップの後に、相対誤差演算部が、前記シミュレーション計算の結果と前記実験結果とに基づき各実験に関する相対差Er iを算出する相対誤差算出ステップと、前記測定値記憶ステップの後に、実験体系感度係数ベクトル演算部が、実験体系の物理量の感度係数ベクトルSiを導出する実験体系Sベクトル算出ステップと、前記実験体系Sベクトル算出ステップおよび前記WC算出ステップの後に、前記感度係数ベクトルSiと前記断面積共分散誤差行列WCとを用いて、実験体系の物理量についての中性子反応断面積に関する計算誤差を算出するとともに、線形結合定数演算部および模擬性評価因子演算部が実験結果と最も整合するように実験結果の線形結合のための線形結合係数を選定する断面積起因算出ステップと、前記断面積起因算出ステップの後に、前記相対誤差演算部が、係数調整後の相対誤差(ΔZ/Z)2を算出する調整後相対誤差算出ステップと、前記調整後相対誤差算出ステップの後に、換算係数演算部が、前記断面積共分散誤差行列WCを相対値から実際の値に換算する換算係数rを算出する換算係数算出ステップと、前記換算係数算出ステップの後に、目的体系物理量演算部が、目的体系における物理量を算出する目的体系計算ステップと、前記目的体系計算ステップの後に、目的体系感度係数ベクトル演算部が、使用済み核燃料に関する目的体系感度係数ベクトルSRを算出する目的体系S値算出ステップと、原子数密度感度係数ベクトル演算部が原子数密度についての感度係数SNを算出するSN算出ステップと、前記SN算出ステップの後に、原子数密度共分散誤差行列演算部が、使用済み核燃料に含まれる核種の原子数密度の不確かさの割合の関係を示す原子数密度共分散誤差行列WNを算出するWN算出ステップと、前記断面積起因算出ステップおよび前記換算係数算出ステップの後に、断面積不確かさ推定部が、前記断面積共分散誤差行列WCと前記換算係数rとから、目的体系の中性子増倍率の反応断面積に関する不確かさr×SR T・WC・SRを算出する断面積起因不確かさ演算ステップと、換算係数記憶部が、前記断面積共分散誤差行列WCと目的体系感度係数ベクトルS0 Rとに基づいて算出された核分裂生成物なしの場合の不確定さの2乗の計算値であるUCC0=S0 R T・WC・S0 Rとの比の値を換算係数rとして、r=(ΔZ/Z)2/UCC0により算出し、得られたrを記憶する換算係数記憶ステップと、断面積起因不確かさ推定部が、前記断面積共分散誤差行列WCおよび前記目的体系感度係数ベクトルSRに基づき前記物理量の反応断面積起因の不確かさUCC1をUCC1=SR T・WC・SRにより算出して、前記換算係数rおよび前記反応断面積起因の不確かさUCC1に基づき実験結果を反映した目的体系に関する反応断面積起因の不確かさUCCSをUCCS=r×UCC1として算出する断面積起因不確かさ推定ステップと、前記WN算出ステップの後に、原子数密度共分散誤差行列演算部が、使用済み核燃料に含まれる核種の原子数密度の不確かさの割合の関係を示す原子数密度共分散誤差行列WNを求めるWN算出ステップと、前記WN算出ステップの後に、原子数密度共分散誤差行列演算部が、前記原子数密度共分散誤差行列WNに基づいて、目的体系の中性子増倍率の原子数密度に関する不確かさSNT・WN・SNを算出する原子数密度起因不確かさ演算ステップと、前記断面積起因不確かさ演算ステップおよび前記原子数密度起因不確かさ演算ステップの後に、物理量不確かさ演算部が、前記断面積共分散誤差行列WC、前記換算係数rおよび前記原子数密度共分散誤差行列WNに基づいて、反応断面積の誤差と原子数密度の誤差の両者に起因する全体の誤差UCTを算出する全体誤差算出ステップと、前記全体誤差算出ステップの後に、物理量計算結果補正部が、前記目的体系計算ステップにおいて算出された使用済み核燃料体系についての前記物理量の値を補正して補正された物理量を求めるステップと、を有することを特徴とする。
本発明の実施形態によれば、使用済み核燃料の反応度の計算値に含まれる不確かさを合理的に定量評価して、その結果使用済み核燃料の安全性と経済性を合理的に両立させる安全裕度の設定をすることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る核特性計算結果補正装置および補正方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
[第1の実施形態]
図3は、本発明の実施形態に係る核特性計算結果補正装置の構成を示すブロック図である。この使用済み核燃料の核特性計算結果補正装置10は、計算機20上に構築することができる。
図3は、本発明の実施形態に係る核特性計算結果補正装置の構成を示すブロック図である。この使用済み核燃料の核特性計算結果補正装置10は、計算機20上に構築することができる。
計算機20は、中央演算処理装置(CPU)100、記憶部140、入力装置160および出力装置170を備える。CPU100は、演算部110および制御部130を有し、制御部130はその一部として入力制御部131および出力制御部132を有する。これらの各構成要素は、バス30を介して接続されている。
入力制御部131には、キーボードやマウスなどの入力装置160が接続されており、これらの周辺装置を制御する。出力制御部132には、液晶ディスプレイなどの出力装置170が接続されており、出力装置170を制御する。
使用済み核燃料の核特性計算結果補正装置10への演算開始の指示など計算機20への入力は、入力装置160を介して行われる。途中の計算に必要な入力値、推定された誤差(不確かさ)や、使用済み核燃料の反応度計算結果を補正した結果などの必要な情報は、出力装置170に表示される。
なお、以下、反応度計算と核特性計算、反応度計算結果と核特性計算結果を同義に用いることがある。
図1は、本発明の実施形態に係る核特性計算結果補正装置の演算部の構成を示すブロック図である。
CPU100の演算部110は、実験体系物理量演算部111、相対誤差演算部112、物理量相対差判定部113、断面積共分散誤差行列演算部114、実験体系感度係数ベクトル演算部115、目的体系感度係数ベクトル演算部116、線形結合定数演算部117、模擬性評価因子演算部118、換算係数演算部119、断面積起因不確かさ推定部120、原子数密度共分散誤差行列演算部121、原子数密度感度係数ベクトル演算部122、原子数密度起因反応度不確かさ演算部123、目的体系物理量演算部124、反応度不確かさ演算部125および反応度計算結果補正部126を有する。
図2は、本発明の実施形態に係る核特性計算結果補正装置の記憶部の構成を示すブロック図である。記憶部140は、実験体系測定値記憶部141、断面積共分散誤差行列記憶部142、換算係数記憶部143、核燃料演算値記憶部144、原子数密度共分散誤差行列記憶部145を有する。
使用済み核燃料の核特性計算結果補正装置10は、対象の挙動をコンピュータ上に表現したモデルを用いてシミュレーションした結果に付随する計算誤差をその対象を模擬した実験の結果を用いて定量的に推定し、推定結果を用いて使用済み核燃料の反応度計算結果を補正する。
なお、反応度ρと中性子増倍率kとの間には、ρ=(k−1)/kの関係があり相互に換算することができ、いずれも臨界状態との対応において核反応の連鎖反応の程度を示しており、この点ではほぼ同様の意味を有している。したがって、反応度を求めることと中性子増倍率kを求めることを同じ意味に用い、多くの場合反応度と表現する場合がある。また、中性子増倍率kが注目する物理量であることから、中性子増倍率kを物理量Rあるいは核特性Rと表現する場合がある。
実施すべき実験としては、まず使用済み核燃料の反応度(中性子無限増倍率)を考慮すべき体系において、使用済み核燃料内の核分裂生成物を無視した状態、あるいは使用済み核燃料が、原子炉に装荷される前の新燃料の状態を考える。
すなわち燃料集合体の幾何形状は同じであるが、燃料棒に含まれている核物質の種類と数量が異なり、また核分裂生成物が存在しない状況を考える。この状態を目的とする体系と見做して、できるだけ模擬性の高い臨界実験を実施する。
ここで、実験とは、使用済み核燃料をできる限り模擬するか、あるいは少なくとも一部を模擬して行うものであり、実験に用いた装置などの体系を「実験体系」と呼ぶ。前述のように、実験体系では、使用済み核燃料の核分裂生成物を考慮しない場合について示している。
臨界実験において『良く模擬されている』というのは使用済み核燃料と臨界実験装置に関する幾何形状のみではなくて反応断面積の変化が目的とする核特性Rの値(ここでは中性子増倍率k)の変化割合に与える効果が類似しているという意味である。
ここで使用済み燃料集合体と十分な模擬性を有する臨界実験について説明する。使用済み核燃料には何種類もの核分裂生成物が存在するが、通常の臨界実験では核分裂生成物は存在しないので、この場合の比較は、使用済み核燃料が新燃料であり、核分裂生成物が存在しない場合と臨界実験を比較すれば十分である。新燃料と仮定した使用済み核燃料に対する臨界実験の模擬性については、例えばTSUNAMIシステム等で計算して模擬性評価因子が1.0に十分近い値であればよい。
実験体系測定値記憶部141は、各臨界実験の条件である各パラメータおよび実験結果である物理量Rを記憶する。
実験体系物理量演算部111は、前記のn個の実験に関して、それぞれの実験体系についてモデルを用いてシミュレーションを行い、物理量R(中性子実効増倍率)の値を求める。なお、以下、物理量Rについての第i番目(i=1,2,・・・,n)の実験に関するシミュレーションで得られた計算値をRC iと表記する。
相対誤差演算部112は、実験体系物理量演算部111においてモデルを用いて実験体系についてシミュレーションした結果に含まれる誤差を、各実験に関する相対差Er i(i=1,2・・・,n)として算出する。ここで、iは、1から実験の総数nまでの自然数である。実験により、着目する物理量Rに対して得られた測定値をREとし、シミュレーション計算により得られた計算値をRCとすると、計算値RCと測定値REの相対差Er i(i=1,2・・・,n)は、i番目の実験について、式(1)により算出される。
Er i=(RC−RE)/RE=(RC/RE)−1 ・・・(1)
この値は、「パラメータによる相対誤差」+「計算手法による相対誤差」−「測定誤差」 にほぼ等しい。なお、ここでの測定誤差は相対誤差である。この値から「計算手法による相対誤差」と「測定誤差」を取り除くことは非常に困難であるので「計算手法による相対誤差」および「測定誤差」は、いずれもパラメータによる相対誤差よりも十分小さいと判断できることが望ましい。
この値は、「パラメータによる相対誤差」+「計算手法による相対誤差」−「測定誤差」 にほぼ等しい。なお、ここでの測定誤差は相対誤差である。この値から「計算手法による相対誤差」と「測定誤差」を取り除くことは非常に困難であるので「計算手法による相対誤差」および「測定誤差」は、いずれもパラメータによる相対誤差よりも十分小さいと判断できることが望ましい。
測定誤差は臨界実験を十分な準備を行って実施した場合には測定の不確かさとして扱うことができる。すなわち式(1)では無視することが可能である。一方、計算手法による相対誤差は実施した臨界実験の幾何形状を十分詳細に計算機上で再現し汎用Monte Carloコードを用いた計算などの十分精密な計算手法を利用すればこの値もパラメータによる相対誤差に比べて無視できる程度の値になる。したがって、式(1)の値は「パラメータによる相対誤差」と見做してもよい。
あるいは「計算手法による相対誤差」については十分小さいといえるときは、(EP i)2を(Er i)2−(相対測定誤差)2から求めてもよい。また「相対測定誤差」については十分小さいといえるときは、(EP i)2を(Er i)2−「計算手法による相対誤差」2から求めてもよい。
さらに「計算手法による相対誤差」も「相対測定誤差」も共に十分小さいといえるときは、(Er i)2を(EP i)2としてもよい。十分小さいといえるか否かについては、たとえば、{(RC/RE)−1}2に対して、「相対測定誤差」の二乗あるいは「計算手法による相対誤差」の二乗が、たとえば、1/100未満すなわち1%未満程度の判断値を基準とすればよい。なお、この演算は正確な評価ではないが、便宜上の評価である。
物理量相対差判定部113は、相対誤差演算部112で算出された相対差Er i(i=1,2・・・,n)の絶対値が、予め採用した臨界実験の数(n個)に整合して判断のために与えられたn個のそれぞれの規定値以内にあるか否かを判定し、いずれであるかの判定値を出力する。規定値以内である場合は使用した計算手法(シミュレーション方法)を使用済み核燃料の反応度の計算手法として用いても良いとの判断がなされる。
断面積共分散誤差行列演算部114は、計算に使用する断面積ファイルの反応断面積に関する不確かさの割合を示す断面積共分散誤差行列WCを算出する。使用済み核燃料の核特性を計算する際に生じる不確かさは反応断面積の不確かさに起因するものと、原子数密度の不確かさに起因するものとがある。断面積共分散誤差行列演算部114は、前者の不確かさに関する断面積共分散誤差行列WCを算出する。
ここで、断面積共分散誤差行列WCは、目的とする体系と実験体系とで使用する同じ構造の入力値の不確かさを表す反応断面積データに起因する誤差行列である。目的とする体系と実験体系で共通に使用するこの断面積共分散誤差行列WCは、対角成分wciiにそれぞれのパラメータxi(i=1,2,…,m)の相対誤差を二乗した値が、また、非対角成分wcijにはパラメータiとパラメータjの間の相対誤差の積が収められている。
この断面積共分散誤差行列WCの各成分の大きさは、互いの大きさの関係が正しければ良く、絶対値は問題ではない。なお、ここでは、目的とする体系の入力に関しての不確かさを表した共分散誤差行列とそれぞれの実験についての体系の入力に関しての不確かさを表した共分散誤差行列が同じ行列であるという仮定をしている。
一般に、モデルへの入力値の不確かさの割合を表す共分散誤差行列は、必ずしも明確に定義されない。この場合は、共分散誤差行列を単位行列としてもよい。
核データライブラリの誤差をΔσ、核種の原子数密度の誤差をΔNとして、誤差の伝播式を用いれば、
なおここで反応断面積や原子数密度を単に1種類のような表記をしているが、当然ながら使用済み核燃料には複数の核種と複数の核反応が存在するので、その数だけ式(2)の右辺は項が増える。すなわち正確な数学表記では総和記号Σを用いるべきであるが、ここでは表記を簡略化するために割愛している。
現在の原子力産業で使用されているコンピュータコード類では、この値を効率的に計算することが可能なコードが何種類か用意されていている(ただし微係数を1次のオーダーとして扱うものが殆どである)。
したがって、計算機資源を惜しまなければ現在の技術水準で特別な努力を必要とせず、ごく普通に計算できる値である。また核データライブラリのうち(エネルギー多群構造で)2種類の反応断面積の相対誤差の積(Δσi)/(Δσj)が共分散(誤差)行列として用意されているものがある。
したがって、計算機資源を惜しまなければ現在の技術水準で特別な努力を必要とせず、ごく普通に計算できる値である。また核データライブラリのうち(エネルギー多群構造で)2種類の反応断面積の相対誤差の積(Δσi)/(Δσj)が共分散(誤差)行列として用意されているものがある。
まず使用済み核燃料内で発生した核分裂生成物を含めた使用済み核燃料内の全ての核種について使用済み核燃料の反応度すなわち物理量Rについてその中性子反応断面積に関する感度係数を計算する。本技術は現在において特定の核計算コードで可能となっている(例えばSCALEシステム)。特定の核種iの感度係数をsiと表す。
siを成分とする感度係数ベクトルをSとし、計算に用いた核データライブラリに付随する共分散(誤差)行列を断面積共分散誤差行列WCとすれば式(3)の右辺の第一項、使用済み核燃料の反応度(中性子増倍率k)Rの不確かさの2乗のうち、核データライブラリに起因する不確かさである前述の式(4)は行列とベクトルの次の2次形式の式(6)で表される。
UCC=ST・WC・S ・・・(6)
(Tはベクトルの転置(transpose)を表す。以下同様。)
UCC=ST・WC・S ・・・(6)
(Tはベクトルの転置(transpose)を表す。以下同様。)
断面積共分散誤差行列演算部114において算出された断面積共分散誤差行列WCは、断面積共分散誤差行列記憶部142に格納され、記憶される。
実験体系感度係数ベクトル演算部115は、i番目の実験の体系についてモデルを用いてシミュレーションした結果について、そのモデルのパラメータxj(j=1,2,…,m)の入力値の単位変化によって生ずる、着目する物理量Rの変化量を表す実験体系感度係数ベクトルSiを次の式(7)により算出する。
目的体系感度係数ベクトル演算部116は、目的とする使用済み核燃料体系において核分裂生成物(FP)が含まれていないと仮定した場合についてシミュレーションした結果について、そのモデルのパラメータxi(i=1,2,…,m)の入力値の単位変化によって生ずる着目する物理量Rの変化量を表す目的体系感度係数ベクトルSR 0(ここで0は核分裂生成物がないことを示す)を次の式(8)により算出する。
・・・(8)
各臨界実験の実験体系感度係数ベクトルSi(i=1,2,…,n)、断面積共分散誤差行列WCを使用し、n種類の臨界実験を線形結合することにより、目的とする体系に対する模擬性を最大化することができる。すなわち、線型結合の結合係数をαi(i=1,2,…,n)と表して、実験体系感度係数ベクトルSiを線形結合した線形結合ベクトルSkの線形結合定数αiを、Sk T・WC・SkがS0 R T・WC・S0 Rと等しくかつ目的体系感度係数ベクトルS0 Rと線形結合ベクトルSkとのなす角が最小になるように求める。具体的には、次の線形結合定数演算部117および模擬性評価因子演算部118において算出される。
線形結合定数演算部117は、目的とする体系(使用済み核燃料)の反応断面積に関する感度係数をn種類の臨界実験における感度係数の線形結合で表し、目的とする体系に対する模擬性を最大化にするような線形結合の係数(以下、線形結合係数)を以下のように算出する。
各臨界実験の実験体系感度係数ベクトルをSi(i=1,2,・・・,n)とする。さらに核反応断面積の不確かさを表す共分散(誤差)行列を断面積共分散誤差行列WCとする。n種類の臨界実験を線形結合することで目的とする体系に対する模擬性を最大化することができる。
すなわち、線形結合定数演算部117は、実験体系感度係数ベクトルSiを線形結合した線形結合ベクトルSkの線形結合定数αiを、Sk T・WC・SkがS0 R T・WC・S0 Rと等しくかつ目的体系感度係数ベクトルSRと線形結合ベクトルSkとのなす角が最小になるように求める。
まず、i番目の実験体系感度係数ベクトルSiを用いて、式(3)を満足する感度係数ベクトルの線形結合(線形結合ベクトル)Skを次の式(9)により定義し、算出する。ここで、αiは任意の定数であり、これを線形結合定数と呼ぶ。
・・・(9)
次に、線形結合定数αiを、次の式(10)を満足し、かつ目的体系感度係数ベクトルSRと線形結合ベクトルSkとのなす角θが最小になるように求める。
Sk T・WC・Sk=S0 R T・WC・S0 R ・・・(10)
この式(10)は、相対誤差の総量が同じであるという条件を表している。
この式(10)は、相対誤差の総量が同じであるという条件を表している。
目的体系感度係数ベクトルSRと線形結合ベクトルSkとのなす角θが最小になるように求める方法はいくつか想定される。
たとえば、(S0 R−Sk)T・WC・(S0 R−Sk)の絶対値を最小とすることにより、目的体系感度係数ベクトルSRと線形結合ベクトルSkとのなす角θを最小にすることができる。(SR−Sk)T・WC・(SR−Sk)の値が零(0)となった場合、すなわち、次の式(11)を満足する場合は自動的に次の式(12)となる。
(S0 R−Sk)T・WC・(S0 R−Sk)=0 ・・・(11)
Sk T・WC・SR/{(Sk T・WC・Sk)1/2(S0 R T・WC・S0 R)1/2}=1 ・・・(12)
となる。この場合、式(12)は、後述する模擬性評価因子RF(Representativity Factor)が1となっていることを示している。
Sk T・WC・SR/{(Sk T・WC・Sk)1/2(S0 R T・WC・S0 R)1/2}=1 ・・・(12)
となる。この場合、式(12)は、後述する模擬性評価因子RF(Representativity Factor)が1となっていることを示している。
式(12)の左辺の分子は、断面積共分散誤差行列WCを考慮した線形結合ベクトルSkと目的体系感度係数ベクトルS0 Rとの内積を示している。式(12)の左辺の分母は、断面積共分散誤差行列WCを考慮した線形結合ベクトルSkと目的体系感度係数ベクトルSRのベクトルの大きさになっている。
(S0 R−Sk)T・WC・(S0 R−Sk)の絶対値を最小とする線形結合定数αiは、たとえば次に示すようにLagrangeの未定定数法を用いて求めることができる。
今、dを、式(13)のように定義し、この式を束縛条件とし、Lagrangeの未定定数λを用いて、以下のLの式(14)を作る。
d=Sk T・WC・Sk ・・・(13)
L={(S0 R−Sk)TWC(S0 R−Sk)}+λ{Sk T・WC・Sk−d}
L={2d−2(Sk T・WC・S0 R)}+λ{Sk T・WC・Sk−d}
・・・(14)
d=Sk T・WC・Sk ・・・(13)
L={(S0 R−Sk)TWC(S0 R−Sk)}+λ{Sk T・WC・Sk−d}
L={2d−2(Sk T・WC・S0 R)}+λ{Sk T・WC・Sk−d}
・・・(14)
今、rij=Si T・WC・Sj、rRi=S0 R T・WC・Siとすれば、Lagrangeの未定定数λを用いて、λとαi(i=1,2,…,n)とを解く方程式は以下のように書ける。
R・λ・α=r ・・・(16)
ここで、RはRijで構成される行列、αはαiで構成される列ベクトル、rはrRiで構成される列ベクトルである。
ここで、RはRijで構成される行列、αはαiで構成される列ベクトル、rはrRiで構成される列ベクトルである。
なお、λとαi(i=1,2,…,n)は、正負で与えられる。原理的には、2d−2・(Sk T・WC・S0 R)が小さくなるほうの符号を選ぶことになる。しかし、新たに定義される模擬性評価因子がλに等しいことがわかっており、模擬性評価因子は1に近い値であるべきなので、λを負の値とすることは目的と合致しない。そこで、λとしては常に正の値を選択すればよいことになる。
模擬性評価因子演算部118は、実験体系と、目的とする実機体系の類似度を数理的に定義する。
実験体系に関して着目する物理パラメータRに関する線形結合ベクトルSK、目的とする実機体系に関して着目する物理パラメータRに関する目的体系感度係数ベクトルSR、および計算に用いたパラメータの断面積共分散誤差行列WCを用いて、これらの体系間の類似性を示す模擬性評価因子RFを求めることができる。
模擬性評価因子RFは、
RF=SR T・WC・SK/((S0 R T・WC・S0 R)1/2(SK T・WC・SK)1/2) ・・・(20)
により算出する。
RF=SR T・WC・SK/((S0 R T・WC・S0 R)1/2(SK T・WC・SK)1/2) ・・・(20)
により算出する。
模擬性評価因子RFとは、目的体系感度係数ベクトルS0 Rと線形結合ベクトルSkとのなす角をθとしたときの、cosθを表している。この値が1のとき、すなわちcosθ=1のときに、θ=0となり、線形結合ベクトルSkと目的体系感度係数ベクトルS0 Rとが重なった状態、すなわち、数理的に完全に一致していることになる。逆に何の関係もない場合は、模擬性評価因子は0となる。
なお、線形結合定数αiを求める際にその絶対値を最小化しようとする評価値の値が、零(0)となった場合、すなわち、
(S0 R−Sk)T・WC・(S0 R−Sk)=0 ・・・(21)
を満足する場合には、自動的に、
Sk T・WC・SR/{(Sk T・WC・Sk)1/2(S0 R T・WC・S0 R)1/2}=1 ・・・(22)
となる。
(S0 R−Sk)T・WC・(S0 R−Sk)=0 ・・・(21)
を満足する場合には、自動的に、
Sk T・WC・SR/{(Sk T・WC・Sk)1/2(S0 R T・WC・S0 R)1/2}=1 ・・・(22)
となる。
この式(22)は、模擬性評価因子RFが1となっていることを示している。式(22)の左辺の分子は、断面積共分散誤差行列WCを考慮した線形結合ベクトルSkと目的体系感度係数ベクトルSRとの内積を示している。式(22)の左辺の分母は、断面積共分散誤差行列WCを考慮した線形結合ベクトルSkと目的体系感度係数ベクトルSRのベクトルの大きさになっている。
選択した臨界実験の物理量Rとして臨界固有値(中性子実効増倍率)を選ぶ。臨界実験を使用済み核燃料の反応度を計算する同じ手法(同じ核データライブラリ、同じ計算コード)で計算して計算値ECを得る。臨界実験では臨界固有値は物理的に 1.000であるのでECに含まれる相対誤差は(EC−1)/1すなわち(EC−1)となる。
次に再び、相対誤差演算部112で行われる演算について説明する。各臨界実験の測定値と計算値の相対誤差(EC−1)をベースに、計算手法に起因する相対誤差、臨界実験の測定値の相対誤差を除いて核データに起因する誤差を評価した値を Ep i(i=1,2,…,n)とすれば、係数αiを調整後の相対誤差(ΔZ/Z)2、すなわちS0 R T・WC・S0 Rの値を次の式(23)で実評価できる。
ここでCORijは実験体系iと実験体系jとの相関を表す。すなわち、CORij=Si T・WC・Sj/{(Si T・WC・Si)1/2(Sj T・WC・Sj)1/2}とする。
換算係数演算部119は、模擬性評価因子演算部118で模擬性を最大にする条件から得られた係数調整後の(ΔZ/Z)2である式(23)と、その模擬対象としているFPなしの場合の目的体系感度係数ベクトルSR 0と断面積共分散誤差行列WCとの二次形式であるUCC0=S0 R T・WC・S0 Rの値との比である換算係数rを求める。
断面積起因不確かさ推定部120は、換算係数演算部119において算出された換算係数rを用いて、計算値における断面積起因の実際の不確かさを求める。
ここで、使用済み核燃料の核分裂生成物を含んだ体系での目的体系感度係数をSRとする。このrを使用すれば、核反応断面積の不確かさに起因する使用済み核燃料の計算値の不確かさの2乗UCCSが、反応断面積に起因する不確かさUCC1を、断面積共分散誤差行列WCを用いて、UCC1=SR T・WC・SRにより算出した上で、次の式(25)により得られる。
UCCS=r×UCC1=r×SR T・WC・SR ・・・(25)
UCCS=r×UCC1=r×SR T・WC・SR ・・・(25)
原子数密度共分散誤差行列演算部121は、使用済み核燃料に含まれる核種の原子数密度の不確かさの割合の関係を示す原子数密度共分散誤差行列WNを求める。使用済み核燃料の中に存在する核種の原子数密度はその燃料を実際に測定して求めるものではなくて、その燃料を原子炉でどのような条件化で使用してきたかの情報に沿って計算を行って求める。その計算を燃焼計算と呼ぶ。
この燃焼計算でもそれぞれの核種の中性子との反応を計算する際に核データライブラリのデータを使用するので核データライブラリに含まれる誤差によっても各核種について得られた原子数密度に不確かさが生じる。すなわち核データライブラリに含まれる誤差と使用済み核燃料に含まれる核種の原子数密度の計算値は密接な相関関係があるが、本発明提案ではそれぞれを独立として扱う。
原子数密度感度係数ベクトル演算部122は、原子数密度についての感度係数を算出する。
いま考慮する核種の種類をi=1,2,…,nとする。i番目の核種の原子数密度の変化量をΔNiとすればΔNiによって中性子反応断面積がどのように変化するかを考える。今i番目の核種の核反応の種類を1種類と仮定して核反応断面積はg=1,2,…,G群のエネルギー区間に分かれているとする。このときマクロ核反応断面積は、Σi=(Σ1 i,Σ2 i,…,ΣG i)となる。また、次の式(26)が成り立つ。
・・・(26)
以上の考え方に基づけば、着目する核特性R(ここでは使用済み核燃料の反応度(中性子増倍率k))についてのi番目の核種の原子数密度の単位変化量ΔNi/Niに関する単位変化割合ΔR/Rの比を一次のオーダーの微分係数として(i番目という指標を表記しないで)表す。これは、上記の考え方に基づけばエネルギー群をg=1,2,…,Gとして、核種の反応の種類をp=1,2,…,Kとして、
特定の核特性Rについての感度係数Sg pを計算する手法は既に感度係数を計算するコードで可能である技術なので、i番目の核種の原子数密度の変化に関する感度係数を求めることができる。この感度係数をsNiと表記する。sNiを成分とするベクトルを原子数密度感度係数ベクトルSNと表す。この原子数密度感度係数ベクトルSNの各成分は、式(28)に示すように、その成分位置が示す核種の中性子反応種類ごと、エネルギー群別の感度係数を全て合計した値になっている。
原子数密度起因反応度不確かさ演算部123は、使用済み核燃料の複数の核種の原子数密度の誤差あるいは不確かさをまとめて表現した原子数密度共分散誤差行列WNを求める。原子数密度共分散誤差行列WNの第ii成分は核種iの原子数密度の誤差あるいは不確かさの割合の2乗、(ΔNi/Ni)2が示されている。
この(ΔNi/Ni)2は使用済み核燃料の原子数密度を計算する計算コードや計算手法から経験的に得られるか、あるいはPIE(Post Irradiation Examination:照射後分析)の測定結果と原子数密度を計算する計算コードの計算値との比較から得ることができる。原子数密度共分散誤差行列の非対角成分に関しては、0(零)とするか核種の燃焼方程式等に関する理論から導出される。
なお幾つかの理由によって適切な原子数密度共分散誤差行列WNを得ることが困難な場合は原子数密度共分散誤差行列WNとして単位行列を用いてもよい。
この結果、原子数密度の不確かさに起因する誤差UCNは、UCN=SNT・WN・SNにより求められる。
目的体系物理量演算部124は、目的とする使用済み核燃料体系についての反応度(中性子無限増倍率)(k−inf)calを求める。
反応度不確かさ演算部125は、断面積共分散誤差行列演算部114、換算係数演算部119および原子数密度反応度不確かさ演算部123の結果に基づいて、反応断面積の誤差と原子数密度の誤差の両者に起因する全体の誤差の2乗UCTを次の式(29)により求める。
UCT=UCCS+UCN=r×UCC1+UCN
=r×SR T・WC・SR+SNT・WN・SN ・・・(29)
UCT=UCCS+UCN=r×UCC1+UCN
=r×SR T・WC・SR+SNT・WN・SN ・・・(29)
反応度計算結果補正部126は、目的体系物理量演算部124において求められた目的とする使用済み核燃料体系についての反応度(中性子無限増倍率)(k−inf)calの値を次の式(30)によって補正する。
(k−inf)corr=(k−inf)cal×(1/(1−√UCT))
・・・(30)
(ただし、√UCTはUCTの平方根を意味する。)
(k−inf)corr=(k−inf)cal×(1/(1−√UCT))
・・・(30)
(ただし、√UCTはUCTの平方根を意味する。)
核燃料演算値記憶部144は、使用済み核燃料がこれまで原子炉のどのような位置に装荷され、どのような運転条件のもとで使用されていたかに関する情報など、使用済み核燃料に関する各パラメータの詳しい情報を格納、記憶する。また、炉心シミュレータによって計算された使用済核燃料に含まれる各核種の原子数密度の値も記憶される。
図4は、本発明の実施形態に係る核特性計算結果補正方法の手順を示すフロー図である。ここでは用いる実験体系の数はn個としているので、その場合について図で説明する。
まず、準備ステップとして準備段階の各手順を実施する(ステップS210)。次に、判定前処理ステップとして、判定ステップの前に行う各手順を実施する(ステップS220)。
次に、判定ステップとして実験および解析手法の妥当性を判定する(S10)。ステップS10において規定値以下であると判定された場合は、判定後処理ステップとして、判定ステップS10の後に行う各手順(ステップS230)を実施する。
ステップS10において規定値以下であると判定されなかった場合は、ステップS5に戻り、ステップS5以下を再度実施する。
図5は、本発明の実施形態に係る核特性計算結果補正方法の準備ステップの手順を示すフロー図である。まずシミュレーション計算を開始するに当たり、判断のための規定値が設定される(ステップS1)。
次に、目的とする使用済み核燃料が選定される(ステップS2)。加えて実験体系が選定される(ステップS3)。通常は1種類の模擬実験を選定するが2種類以上の模擬実験を選定してもよい。実験体系の測定値は、実験体系測定値記憶部141に記憶される(ステップS4)。ステップS4の後に、判定前処理ステップS220に移行する。
図6は、本発明の実施形態に係る核特性計算結果補正方法の判定前処理ステップの手順を示すフロー図である。準備ステップS210の後に、以下が実施される。
まず、着目する物理量を計算する手法(シミュレーション方法)が選定され(ステップS5)、計算のためのパラメータ入力の選定と設定が行われる(ステップS6)。なおここでは装置の汎用的な使用を考慮して物理量と記載しているが、この物理量は、具体的にはたとえば反応度(中性子増倍率k)を意味する。
次に、断面積共分散誤差行列演算部114において、中性子反応の反応断面積に関する断面積共分散誤差行列WCが導出される(ステップS7)。導出された断面積共分散誤差行列WCは、断面積共分散誤差行列記憶部142に記憶される。
引き続き実験体系物理量演算部111において模擬実験体系についてのシミュレーション計算が実施される(ステップS8)。ステップS8の後に、相対誤差演算部112において、ステップS8で得られたシミュレーション計算の結果と、実験体系測定値記憶部141に記憶されている実験結果とに基づき、各実験に関する相対差Er i(i=1,2・・・,n)が算出される(ステップS9)。
ステップS9までの判定前処理ステップS220の後に、物理量相対差判定部113において、相対誤差演算部112で算出された相対差Er iの絶対値を規定値と比較、判定が行われる(ステップS10)。規定値以内ではないと判定された場合は、ステップ5で選択したシミュレーション方式が適切ではなかったということで、ステップS5に戻り計算手法(シミュレーション方式)の選定を再び行う。実験体系を複数個選定した場合は、これらのステップは実験の総数であるn回繰り返される。すべて規定値以内と判定された場合は、シミュレーション方式が適切であったとして次のステップに進む。
図7は、本発明の実施形態に係る核特性計算結果補正方法の判定後処理ステップの手順を示すフロー図である。ステップS10の後に、判定後処理ステップS230として以下の手順で進められる。
実験体系感度係数ベクトル演算部115において、その計算手法に基づく方法で実験体系の(中性子反応)断面積に関する実験体系感度係数ベクトルSiが導出される(ステップS11)。
ステップS11の後に、実験体系感度係数ベクトル演算部115で導出された実験体系感度係数ベクトルSiと断面積共分散誤差行列記憶部142に記憶された断面積共分散誤差行列WCとを用いて、実験体系の反応度についての(中性子反応)断面積に関する計算誤差(計算の不確かさ)が算出される。
目的体系感度係数ベクトル演算部116においては、核燃料の燃焼を考慮するが、核分裂生成物をゼロにセットして目的体系感度係数ベクトルS0 Rが計算される。この結果、目的体系においてFPを含まないとした場合の目的体系感度係数ベクトルS0 Rと、断面積共分散誤差行列S0 R T・WC・S0 Rと比較すべき値が前述の式(23)により算出される(ステップS12)。
この際に、実験結果と最も整合するように実験結果の線形結合のための線形結合係数が選定される。この演算は、目的体系感度係数ベクトル演算部116、線形結合定数演算部117および模擬性評価因子演算部118において行われる。
そして、換算係数演算部119において、断面積共分散誤差行列を相対値から実際の値に換算する換算係数rが算出される(ステップS13)。
ステップS13の後に、目的体系物理量演算部124において、目的体系における物理量を算出する。この場合の目的体系は、使用済み燃料体系でありFPを含む体系である(ステップS14)。
ステップS14の後に、目的体系感度係数ベクトル演算部116において、核燃料の燃焼を考慮して、加えて核分裂生成物を考慮して(この2点で即ち使用済み核燃料扱いということになる)感度係数ベクトルを計算する。すなわち、目的体系についての反応断面積に対する感度係数ベクトルSRが導出され記憶される(ステップS15)。また、原子数密度感度係数ベクトル演算部122において原子数密度についての感度係数SNが算出される(ステップS16)。
ステップS16の後に、原子数密度共分散誤差行列演算部121において、使用済み核燃料に含まれる核種の原子数密度の不確かさの割合の関係を示す原子数密度共分散誤差行列WNが算出される。原子数密度起因反応度不確かさ演算部123において、使用済み核燃料の複数の核種の原子数密度の誤差あるいは不確かさをまとめて表現した原子数密度共分散誤差行列WNが求められる。(ステップS17)。
なお、ステップS17が実施される順序は、ステップS16の後である必要はなく、ステップS10以降であって次のステップS18の前、すなわち、判定後処理ステップS230内であってステップS18の前に実施されればよい。
次に、断面積起因不確かさ推定部120において、断面積共分散誤差行列記憶部142および換算係数記憶部143のそれぞれに格納、記憶されている断面積共分散誤差行列WCと換算係数rとから、式(25)により目的体系の中性子増倍率kの反応断面積に関する不確かさr×SR T・WC・SRが算出される(ステップS18)。
一方、原子数密度共分散誤差行列演算部121において、原子数密度共分散誤差行列WNに基づいて、目的体系の中性子増倍率kの原子数密度に関する不確かさSNT・WN・SNが算出される(ステップS19)。
次に、物理量不確かさ演算部125において、断面積共分散誤差行列演算部114、換算係数演算部119および原子数密度起因物理量不確かさ演算部123の結果に基づいて、反応断面積の誤差と原子数密度の誤差の両者に起因する全体の誤差UCTが式(29)により算出される(ステップS20)。
最後に、物理量計算結果補正部126において、目的体系物理量演算部124において求められた目的の使用済み核燃料体系についての反応度(中性子無限増倍率)(k−inf)calの値が、式(30)によって補正され、補正された反応度(k−inf)corrが求められる(ステップS21)。
以上、本実施形態について説明したが、以上の説明は単なる例示であり、本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。
たとえば、実験体系における物理量の測定値と、その計算値との相対差の演算にあたり、両者の大きさを合わせる方法は、実験体系の性格により、装置に式(1)を組み込み使用するか、式(2)を組み込み使用するか、あるいは、式(1)、(2)のいずれも組み込み使用時に選択できるようにするか、いずれも可能である。
(効果)
本発明によれば、モデルを用いたシミュレーションにおいて、パラメータに起因して使用済み核燃料の反応度計算結果に含まれる不確かさを、使用済み核燃料を模擬した体系の実験結果を用いて定量的に推定した補正係数を用いて補正することができる。
(効果)
本発明によれば、モデルを用いたシミュレーションにおいて、パラメータに起因して使用済み核燃料の反応度計算結果に含まれる不確かさを、使用済み核燃料を模擬した体系の実験結果を用いて定量的に推定した補正係数を用いて補正することができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
また実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
例えば、各実施形態においては、演算し記憶する場合に、演算部と称する各演算機能部分と記憶部と称する記憶装置内の各記憶機能部分とに区分した形で説明している。しかしながら、演算した結果を次のステップで使用する場合は、一々記憶装置に記憶させるようなことはせずCPU内に仮置きしてステップを進めるのが一般的である。従って、記憶装置内にあるとして記載している記憶部が、CPU内の演算部分の一部として一時的に記憶される場合も、本発明の実施形態に含まれる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10…核特性計算結果補正装置、20…計算機、30…バス、100…中央演算処理装置(CPU)、110…演算部、111…実験体系物理量演算部、112…相対誤差演算部、113…物理量相対差判定部、114…断面積共分散誤差行列演算部、115…実験体系感度係数ベクトル演算部、116…目的体系感度係数ベクトル演算部、117…線形結合定数演算部、118…模擬性評価因子演算部、119…換算係数演算部、120…断面積起因不確かさ推定部、121…原子数密度共分散誤差行列演算部、122…原子数密度感度係数ベクトル演算部、123…原子数密度起因反応度不確かさ演算部(原子数密度起因物理量不確かさ演算部)、124…目的体系物理量演算部、125…反応度不確かさ演算部(物理量不確かさ演算部)、126…反応度計算結果補正部(物理量計算結果補正部)、130…制御部、131…入力制御部、132…出力制御部、140…記憶部、141…実験体系測定値記憶部、142…断面積共分散誤差行列記憶部、143…換算係数記憶部、144…核燃料演算値記憶部、145…原子数密度共分散誤差行列記憶部、160…入力装置、170…出力装置
Claims (11)
- 使用済み核燃料の核特性に関する物理現象を表現するコンピュータ上のモデルを用いたシミュレーション計算結果に含まれる誤差について、その対象を模擬した実験の結果を用いて推定を行い、推定した前記誤差に基づき前記計算結果を補正する核特性計算結果補正装置において、
iを1から実験の総数nまでの自然数としたときにi番目の実験についての前記モデルを用いたシミュレーションで得られたある物理量の計算値の当該実験で測定された当該物理量の測定値に対する前記モデルへの入力値に関する相対誤差Ep i(i=1,2,・・・,n)を演算するとともに、
シミュレーションに用いる前記モデルへの入力値の不確かさの割合の関係を示す断面積共分散誤差行列WCを演算する断面積共分散誤差行列演算部と、
前記対象において核分裂生成物が無いと仮定した場合の前記モデルを用いたシミュレーションの結果のそのモデルへの入力値の単位変化に対する前記物理量の変化量を示す目的体系感度係数ベクトルS0 Rを演算するとともに、前記対象について前記モデルを用いたシミュレーションの結果のそのモデルへの入力値の単位変化に対する前記物理量の変化量を示す目的体系感度係数ベクトルSRを演算する目的体系感度係数ベクトル演算部と、
i番目の実験の体系について前記モデルを用いたシミュレーションした結果のそのモデルへの入力値の単位変化に対する前記物理量の変化量を表す実験体系感度係数ベクトルSiを演算する実験体系感度係数ベクトル演算部と、
前記実験体系感度係数ベクトルSiを線形結合した線形結合ベクトルSkの線形結合定数αiを、Sk T・WC・Sk=S0 R T・WC・S0 Rを満足しかつ同時に前記目的体系感度係数ベクトルS0 Rと前記線形結合ベクトルSkとのなす角が最小になるように求める線形結合定数演算部と、
前記断面積共分散誤差行列WCおよび前記線形結合ベクトルSkとから模擬性評価因子RFを求める模擬性評価因子演算部と、
前記線形結合定数αiを重みとして前記相対誤差Ep i(i=1,2,…,n)の値を合成して前記モデルを用いたシミュレーションの結果得られる前記対象の物理量に含まれる相対誤差(ΔZ/Z)2を推定する相対誤差演算部と、
前記相対誤差演算部で推定された前記相対誤差(ΔZ/Z)2と、前記断面積共分散誤差行列WCと前記目的体系感度係数ベクトルS0 Rとに基づいて算出された核分裂生成物なしの場合の不確定さの2乗の計算値であるUCC0=S0 R T・WC・S0 Rとの比の値を換算係数rとして、r=(ΔZ/Z)2/UCC0により算出する換算係数演算部と、
前記換算係数演算部で算出されたrを記憶する換算係数記憶部と、
前記断面積共分散誤差行列WCおよび前記目的体系感度係数ベクトルSRに基づき前記物理量の反応断面積起因の不確かさUCC1をUCC1=SR T・WC・SRにより算出して、前記rおよび前記UCC1に基づき実験結果を反映した目的体系に関する断面積起因の不確かさUCCSをUCCS=r×UCC1として算出する断面積起因不確かさ推定部と、
使用済み核燃料に含まれる元素の原子数密度Nの算定誤差によって使用済み核燃料の物理量に生ずる誤差として原子数密度共分散誤差行列WNを算出する原子数密度共分散誤差行列演算部と、
前記対象について前記モデルを用いたシミュレーションの結果のそのモデルへの原子数密度の単位変化量ΔNi/Niに対する前記物理量の変化量を原子数密度感度係数ベクトルSNを演算する原子数密度感度係数ベクトル演算部と、
前記原子数密度感度係数ベクトルSNおよび前記原子数密度共分散誤差行列WNとから原子数密度起因の物理量不確かさUCNをUCN=SNT・WN・SNにより算出する原子数密度起因物理量不確かさ演算部と、
前記断面積起因の不確かさUCCSおよび前記原子数密度起因の物理量不確かさUCNの合計値UCTに基づき前記目的体系に関する物理量の計算結果を補正する物理量計算結果補正部と、
を有することを特徴とする核特性計算結果補正装置。 - 前記線形結合定数演算部は、(S0 R−Sk)TWC(S0 R−Sk)の値を最小とすることにより前記目的体系感度係数ベクトルSRと前記線形結合ベクトルSkとのなす角を最小にすることを特徴とする請求項1に記載の核特性計算結果補正装置。
- 前記相対誤差演算部は、i番目の実験体系についての計算値Ciとi番目の実験体系についての測定値Eiの比較値として、相対差Er i=(Ci−Ei)/Ei(i=1,2,…,n)を算出した上で、予め算出した前記相対差E1 i に基づき、(EP i)2=(Er i−E1 i)2により(EP i)2を求めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核特性計算結果補正装置。
- 前記換算係数rを前記断面積共分散誤差行列WCの値が相対値である場合に実際の値に換算する際の換算係数として用いて、使用済み核燃料の核分裂生成物を含んだ体系での感度係数をSRとして前記断面積共分散誤差行列WCを用いて、核反応断面積の不確かさに起因する使用済み核燃料の前記物理量の計算値の不確かさの2乗の推定値をr×SR T・WC・SRにより算出する断面積起因不確かさ推定部をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の核特性計算結果補正装置。
- 前記原子数密度共分散誤差行列WNの演算は、使用済み核燃料に含まれる原子数密度をシミュレーションして求める際のシミュレーション計算のモデルによる誤差や不確かさ、計算手法から経験的に得られている誤差や不確かさ、および照射後試験などの分析結果から得られた知見のうち少なくとも一つに基づいて行うことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の核特性計算結果補正装置。
- 前記物理量計算結果補正部は、前記断面積共分散誤差行列WCを用いて、r×SR T・WC・SRによって使用済み核燃料の中性子反応断面積に起因する前記断面積起因の不確かさと、前記原子数起因の不確かさの二つの要因を合成した使用済み核燃料の前記物理量の計算値の不確かさを表す総合不確かさUC2求め、前記UCT2に基づいて前記使用済み核燃料の物理量Zを、Z/(1−√(UCT2))と補正する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の核特性計算結果補正装置。 - 前記断面積共分散誤差行列WCが単位行列であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の核特性計算結果補正装置。
- 前記原子数密度共分散誤差行列WNが単位行列であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の核特性計算結果補正装置。
- 使用済み核燃料の核特性に関する物理現象を表現するコンピュータ上のモデルを用いたシミュレーションによる計算結果に含まれる誤差について、その対象を模擬した実験体系における実験結果を用いて推定を行い、推定した前記誤差に基づき前記計算結果を補正する核特性計算結果補正方法であって、
実験体系測定値記憶部が前記実験体系での実験結果を記憶する測定値記憶ステップと、
断面積共分散誤差行列演算部が、中性子反応の反応断面積に関する断面積共分散誤差行列WCを導出するWC算出ステップと、
実験体系物理量演算部が模擬実験体系についてのシミュレーション計算を実施する実験体系計算ステップと、
前記測定値記憶ステップおよび前記実験体系計算ステップの後に、相対誤差演算部が、前記シミュレーション計算の結果と前記実験結果とに基づき各実験に関する相対差Er iを算出する相対誤差算出ステップと、
前記測定値記憶ステップの後に、実験体系感度係数ベクトル演算部が、実験体系の物理量の感度係数ベクトルSiを導出する実験体系Sベクトル算出ステップと、
前記実験体系Sベクトル算出ステップおよび前記WC算出ステップの後に、前記感度係数ベクトルSiと前記断面積共分散誤差行列WCとを用いて、実験体系の物理量についての中性子反応断面積に関する計算誤差を算出するとともに、線形結合定数演算部および模擬性評価因子演算部が実験結果と最も整合するように実験結果の線形結合のための線形結合係数を選定する断面積起因算出ステップと、
前記断面積起因算出ステップの後に、前記相対誤差演算部が、係数調整後の相対誤差(ΔZ/Z)2を算出する調整後相対誤差算出ステップと、
前記調整後相対誤差算出ステップの後に、換算係数演算部が、前記断面積共分散誤差行列WCを相対値から実際の値に換算する換算係数rを算出する換算係数算出ステップと、
前記換算係数算出ステップの後に、目的体系物理量演算部が、目的体系における物理量を算出する目的体系計算ステップと、
前記目的体系計算ステップの後に、目的体系感度係数ベクトル演算部が、使用済み核燃料に関する目的体系感度係数ベクトルSRを算出する目的体系S値算出ステップと、
原子数密度感度係数ベクトル演算部が原子数密度についての感度係数SNを算出するSN算出ステップと、
前記SN算出ステップの後に、原子数密度共分散誤差行列演算部が、使用済み核燃料に含まれる核種の原子数密度の不確かさの割合の関係を示す原子数密度共分散誤差行列WNを算出するWN算出ステップと、
前記断面積起因算出ステップおよび前記換算係数算出ステップの後に、断面積不確かさ推定部が、前記断面積共分散誤差行列WCと前記換算係数rとから、目的体系の中性子増倍率の反応断面積に関する不確かさr×SR T・WC・SRを算出する断面積起因不確かさ演算ステップと、
換算係数記憶部が、前記断面積共分散誤差行列WCと目的体系感度係数ベクトルS0 Rとに基づいて算出された核分裂生成物なしの場合の不確定さの2乗の計算値であるUCC0=S0 R T・WC・S0 Rとの比の値を換算係数rとして、r=(ΔZ/Z)2/UCC0により算出し、得られたrを記憶する換算係数記憶ステップと、
断面積起因不確かさ推定部が、前記断面積共分散誤差行列WCおよび前記目的体系感度係数ベクトルSRに基づき前記物理量の反応断面積起因の不確かさUCC1をUCC1=SR T・WC・SRにより算出して、前記換算係数rおよび前記反応断面積起因の不確かさUCC1に基づき実験結果を反映した目的体系に関する反応断面積起因の不確かさUCCSをUCCS=r×UCC1として算出する断面積起因不確かさ推定ステップと、
前記WN算出ステップの後に、原子数密度共分散誤差行列演算部が、使用済み核燃料に含まれる核種の原子数密度の不確かさの割合の関係を示す原子数密度共分散誤差行列WNを求めるWN算出ステップと、
前記WN算出ステップの後に、原子数密度共分散誤差行列演算部が、前記原子数密度共分散誤差行列WNに基づいて、目的体系の中性子増倍率の原子数密度に関する不確かさSNT・WN・SNを算出する原子数密度起因不確かさ演算ステップと、
前記断面積起因不確かさ演算ステップおよび前記原子数密度起因不確かさ演算ステップの後に、物理量不確かさ演算部が、前記断面積共分散誤差行列WC、前記換算係数rおよび前記原子数密度共分散誤差行列WNに基づいて、反応断面積の誤差と原子数密度の誤差の両者に起因する全体の誤差UCTを算出する全体誤差算出ステップと、
前記全体誤差算出ステップの後に、物理量計算結果補正部が、前記目的体系計算ステップにおいて算出された使用済み核燃料体系についての前記物理量の値を補正して補正された物理量を求めるステップと、
を有することを特徴とする核特性計算結果補正方法。
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