JP2014153090A - 絶縁状態検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】セラミックコンデンサ等を検出用コンデンサとして使用している場合であっても温度変化の影響を受けにくく正確な計測値を出力することが可能な絶縁状態検出装置を提供する。
【解決手段】サーミスタ25を用いて検出用コンデンサC1の温度を検出する。検出用コンデンサC1の充電開始から計測タイミングまでの時間の長さ(Tc)を、検出した温度に応じて自動的に調整する。定数テーブル(TB1)を用いて充電時間の長さを決定する。更にバックアップモードを設けて、電源電圧(高電圧)の推定値の出力を可能にする。電源電圧を計測する場合にも、温度に応じて充電時間の長さを自動調整する。コンデンサC1の充電率や直流バイアスの影響を考慮した換算係数をテーブル(TB2)から取得する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両に搭載可能な絶縁状態検出装置に関する。
例えば、電気自動車のように、推進用エネルギーとして電力を利用する車両においては、200V程度の高電圧を出力する直流電源装置を搭載する場合がある。このような高電圧の直流電源装置を搭載した車両の場合には、直流電源装置の正負の電源ラインと車体との間が電気的に絶縁された状態で使用される。すなわち、車体は高電圧を出力する電源のアースとして利用しない。
このような車両においては、安全性の確保等のために、高電圧の直流電源出力の配線と車体との間が十分に電気絶縁されていることを検査して確認する必要がある。このような検査を行う場合に用いられる絶縁状態検出装置の従来技術が、例えば特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示されている。
この種の絶縁状態検出装置は、フライングキャパシタを用いている。すなわち、スイッチング素子を介して、高電圧の正負の電源ラインと接地電極(車体)との間に一定時間だけ検出用コンデンサ(フライングキャパシタと呼ばれる)を接続する。このフライングキャパシタの充電電圧を監視し、この充電電圧から計算により地絡抵抗、すなわち電源ラインと接地電極との間の絶縁抵抗を算出する。
このような絶縁状態検出装置の検出用コンデンサとしては、例えばフィルムコンデンサやセラミックコンデンサを利用することが考えられる。しかし、フィルムコンデンサは高精度である反面、小型化するのが難しく、耐湿性が低いという特性もある。従って、車載用の絶縁状態検出装置の場合には、大きさが小さいセラミックコンデンサを利用することが想定される。
しかし、セラミックコンデンサを利用する場合には精度の点で課題がある。すなわち、次のような課題がある。
(1)部品毎の静電容量のばらつきが大きい。
(2)DC(直流)バイアス電圧の影響により実際に使用する際の静電容量が変動する。
(3)実際に使用する際の静電容量が温度変化に応じて変動する。
そこで、特許文献1においては、検出用コンデンサとしてセラミックコンデンサを使った場合のDCバイアス特性の影響を除くための技術を開示している。具体的には、地絡抵抗RLが警報閾値RLxのときの各充電電圧と充電時定数を全て同じにする。これにより、警報閾値RLxの近傍ではDCバイアス特性の影響を低減し、測定精度の低下を防止できる。
また、特許文献2においては、電源充電電圧V0と負極側地絡抵抗測定電圧VC1nとの計測タイミングと、電源充電電圧V0と正極側地絡抵抗測定電圧VC1pとの計測タイミングとを同じにしている。その結果、電源の電圧が変動するときでも、その変動の影響を低減できる。
また、特許文献3においては、検出精度を確保しつつ計測時間を短縮する技術を開示している。具体的には、CPUのアナログ入力ポートの前にサンプルホールド回路を接続し、電圧を計測するタイミングを制御することにより検出精度の低下を防止している。
特開2009−281986号公報 特開2009−281987号公報 特開2011−102788号公報
絶縁状態検出装置の検出用コンデンサとしてセラミックコンデンサを利用する場合には、上記(1)、(2)、(3)等の課題があるが、絶縁抵抗の計測という特殊な環境であるため、実際にはこれらの複数の要因が互いに影響し複雑に絡み合って計測精度に悪影響を及ぼす。
従って、上記(3)の温度特性の課題についても、影響をなくすことは容易ではない。例えば、温度センサを用いて実際の検出用コンデンサの温度を把握できたとしても、この温度変化を反映して地絡抵抗の計測結果を正しく補正することは簡単ではない。
一方、高電圧を出力する直流電源装置を搭載した車両においては、電源電圧を計測する特別な装置を備え、電圧の異常の有無を常時監視する必要がある。しかし、電源電圧を計測する装置に故障等のトラブルが生じる可能性もあるので、電源電圧を計測する装置のバックアップを用意することも望まれている。
上記のような絶縁状態検出装置は、高電圧を出力する直流電源装置から供給される高電圧に基づき検出用コンデンサを充電し、この検出用コンデンサの充電電圧を計測するので、この充電電圧の計測値から電源電圧を推定することも可能である。つまり、電源電圧の検出機能を絶縁状態検出装置に搭載すれば、絶縁状態検出装置を本来の電源電圧計測装置の代わりのバックアップ装置としても使用できる。
しかしながら、正確な電源電圧を検出するためには、検出用コンデンサを完全に充電しなければならないので、充電の所要時間が長くなる。つまり、検出用コンデンサの端子間の充電電圧は、検出用コンデンサの静電容量に応じた指数関数カーブに従って時間の経過と共に上昇し、完全に充電されると電圧の上昇が停止する。電圧の上昇が停止した状態で計測すれば、静電容量を影響を受けることなく電源電圧を検出できる。従って、電源電圧を計測する時間周期が長くなるのは避けられない。
しかし、バックアップを必要とするような状況においては、なるべく短い時間間隔で電源電圧を計測できることが望まれる。但し、検出用コンデンサを完全に充電しない状態で電圧を計測すると、静電容量の違いに応じて計測誤差が生じることになる。特に、検出用コンデンサとしてセラミックコンデンサを使用している場合には、上記のような様々な要因によって静電容量が変化するので、完全に充電しない状態では正確な電源電圧を測定するのは困難である。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、様々な要因により特性が変化しやすいセラミックコンデンサ等の部品を検出用コンデンサとして使用している場合であっても、温度変化の影響を受けにくく、正確な計測値を出力することが可能な絶縁状態検出装置を提供することにある。
前述した目的を達成するために、本発明に係る絶縁状態検出装置は、下記(1)〜(6)を特徴としている。
(1) 所定の高圧直流電源出力の正極側電源ライン及び負極側電源ラインとそれぞれ接続される正極側入力端子及び負極側入力端子と、接地電極とを有し、フライングキャパシタの充電電圧に基づいて前記正極側電源ライン及び負極側電源ラインと前記接地電極との間の絶縁状態を把握する絶縁状態検出装置であって、
前記フライングキャパシタの近傍における温度を検出する温度検出部と、
前記フライングキャパシタの充電電圧を計測する充電電圧計測部と、
前記フライングキャパシタの充電電圧に関する計測値に基づいて、前記正極側電源ライン及び負極側電源ラインと前記接地電極との間の絶縁抵抗値を算出する地絡抵抗値算出部と、
前記温度検出部が検出した温度のパラメータを、前記フライングキャパシタの充電電圧の計測に関連する制御タイミングの変化に反映する計測タイミング制御部と
を備えること。
(2) 上記(1)に記載の絶縁状態検出装置であって、
前記計測タイミング制御部は、前記温度のパラメータを、前記フライングキャパシタを充電する時間の長さの違いに反映すること。
(3) 上記(1)に記載の絶縁状態検出装置であって、
前記計測タイミング制御部は、複数の温度範囲のそれぞれと、前記フライングキャパシタを充電する時間の長さに相当する係数の情報とを対応付けて保持する定数テーブルを有し、前記温度検出部が検出した温度に基づき、前記定数テーブルを利用して、前記フライングキャパシタを充電する時間の長さを自動的に補正すること。
(4) 上記(1)に記載の絶縁状態検出装置であって、
前記充電電圧計測部を用いて、前記正極側電源ライン又は負極側電源ラインと前記接地電極との間に現れる電源電圧を検出する電源電圧検出部を更に備え、
前記電源電圧検出部は、前記フライングキャパシタの完全充電に要する充電所要時間よりも短い電源電圧計測周期で、前記フライングキャパシタを充電した後で電圧を計測し、計測値から前記電源電圧の推定値を把握すると共に、前記温度検出部が検出した温度のパラメータを前記推定値の補正に利用すること。
(5) 上記(4)に記載の絶縁状態検出装置であって、
前記電源電圧検出部は、前記温度検出部が検出した温度のパラメータを、電源電圧計測周期内で前記フライングキャパシタを充電する時間の長さの違いに反映すること。
(6) 上記(4)に記載の絶縁状態検出装置であって、
前記電源電圧検出部は、電圧の計測値を前記推定値に換算するための複数の換算係数の情報を、電圧計測値の複数の範囲のそれぞれと対応付けて保持する電圧換算定数テーブルを有し、前記電圧換算定数テーブルから取得した1つの換算係数に基づいて前記推定値を算出すること。
上記(1)の構成の絶縁状態検出装置によれば、温度の違いに応じて前記フライングキャパシタの静電容量が変動する場合であっても、正確な絶縁抵抗値を算出することが可能になる。すなわち、温度の違いに応じた静電容量の変化分を充電電圧の計測に関連する制御タイミングの調整により補償できる。
上記(2)の構成の絶縁状態検出装置によれば、正確な絶縁抵抗値を算出することが可能になる。すなわち、前記フライングキャパシタの端子間の充電電圧は、入力に印加される電源電圧、静電容量、および充電開始からの経過時間を含む各パラメータに応じて指数関数状に変化するので、温度の変動に応じた静電容量の誤差を充電時間の調整により補償することができる。
上記(3)の構成の絶縁状態検出装置によれば、温度の変動に応じた前記フライングキャパシタの静電容量の誤差を正しく補償するために必要な充電時間のパラメータを簡単に取得でき、制御が容易になる。
上記(4)の構成の絶縁状態検出装置によれば、地絡抵抗値だけでなく電源電圧も計測できる。しかも、温度に応じた補正を行うので、温度に応じて静電容量が変動する状況であっても正確な計測が可能である。すなわち、前記フライングキャパシタが完全に充電される前に計測できるので、計測周期を短くすることができる。
上記(5)の構成の絶縁状態検出装置によれば、正確な電源電圧を算出することが可能になる。すなわち、前記フライングキャパシタの端子間の充電電圧は、入力に印加される電源電圧、静電容量、および充電開始からの経過時間を含む各パラメータに応じて指数関数状に変化するので、温度の変動に応じた静電容量の誤差を充電時間の調整により補償することができる。
上記(6)の構成の絶縁状態検出装置によれば、直流バイアス電圧の変動に応じた前記フライングキャパシタの静電容量の誤差を正しく補償するために必要な換算係数を簡単に取得でき、制御が容易になる。
本発明の絶縁状態検出装置によれば、様々な要因により特性が変化しやすいセラミックコンデンサ等の部品を検出用コンデンサとして使用している場合であっても、温度変化の影響を受けにくく、正確な計測値を出力することが可能になる。
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
図1は、実施形態の絶縁状態検出装置およびその周辺回路の構成例を示す電気回路図である。 図2は、図1に示した絶縁状態検出装置の主要な制御の内容を示すフローチャートである。 図3は、図1に示した絶縁状態検出装置の動作タイミングの具体例を示すタイムチャートである。 図4は、温度に応じた補償値を保持する定数テーブルの構成例を示す模式図である。 図5は、コンデンサの印加電圧、充電電荷、および温度の関係の具体例を示すグラフである。 図6は、温度変化に対応した補償特性の具体例を示すグラフである。 図7は、電圧換算定数テーブルの構成例を示す模式図である。 図8は、基本計測サイクルの動作タイミングを示すタイムチャートである。
本発明の絶縁状態検出装置に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
<全体の構成および動作の概要>
車両に搭載された絶縁状態検出装置10およびその周辺回路の構成を図1に示す。
図1に示した絶縁状態検出装置10は、例えば電気自動車、あるいは駆動源としてエンジンおよび電気モータを備えたハイブリッド自動車のような車両に搭載して使用することができる。車載直流高圧電源50は、例えば200V程度の高電圧の直流電力を出力する。車載直流高圧電源50が出力する電力により、車両の推進力を発生する電気モータを駆動することができる。
車載直流高圧電源50の出力の正極側電源ライン111と接地電極103との間は電気的に絶縁されている。また、負極側電源ライン112と接地電極103との間も電気的に絶縁されている。接地電極103は、車両の車体などのアース部分に相当する。ここで、正極側電源ライン111と接地電極103との間の絶縁状態を地絡抵抗RLpとして表すことができる。また、負極側電源ライン112と接地電極103との間の絶縁状態を地絡抵抗RLnとして表すことができる。
また、コモンモードノイズを低減するために、図1に示すように、正極側電源ライン111と接地電極103との間にYコンデンサ101を接続し、負極側電源ライン112と接地電極103との間にYコンデンサ102を接続してある。
図1に示した絶縁状態検出装置10を車両に搭載することにより、必要に応じていつでも車両の絶縁状態を監視することができる。すなわち、車載直流高圧電源50の出力における地絡抵抗RLp、RLnを検出し絶縁状態を把握するために絶縁状態検出装置10を利用することができる。
従って、図1に示すように、絶縁状態検出装置10の正極側入力端子13及び負極側入力端子14をそれぞれ正極側電源ライン111及び負極側電源ライン112と接続してある。また、絶縁状態検出装置10の接地電極15は、接地電極103と接続してある。
絶縁状態検出装置10の計測結果や警報の情報を出力するために、図1に示すように出力端子21が設けてある。この出力端子21は、例えば車両側の電子制御装置(ECU)と接続することができる。
<絶縁状態検出装置10の構成例>
図1に示すように、絶縁状態検出装置10の回路にはフライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサC1が設けてある。この検出用コンデンサC1には、車載用であることを考慮してセラミックコンデンサを採用している。
また、検出用コンデンサC1の充電及び放電を制御するために、その周辺に4つのスイッチング素子S1〜S4が設けてある。これらのスイッチング素子S1〜S4の各々は、例えば光MOSFETのように、絶縁された信号の制御によって接点の開閉(オフ/オン)状態を切替可能なスイッチである。
スイッチング素子S1は、正極側入力端子13と接続され、他端が配線31と接続されている。スイッチング素子S2は、一端が負極側入力端子14と接続され、他端が抵抗器R2を介して配線32と接続されている。
スイッチング素子S3は、一端が配線33と接続され、他端が配線35と接続されている。スイッチング素子S4は、一端が配線32と接続され、他端が抵抗器R4を介して接地電極15と接続されている。
検出用コンデンサC1は、負極側端子が配線32と接続されている。検出用コンデンサC1の正極側端子は、ダイオードD1及び抵抗器R1で構成される直列回路を介して配線31と接続されている。また、検出用コンデンサC1の正極側端子は、ダイオードD3及び抵抗器R3で構成される直列回路を介して配線33と接続され、更にダイオードD2を介して配線33と接続されている。ダイオードD2は配線33から配線34に向かう方向の通電を許可する極性で接続され、ダイオードD3は配線34から配線33に向かう方向の通電を許可する極性で接続されている。
なお、検出用コンデンサC1に蓄積された電荷を放電するために、配線34を図示しない特別なスイッチおよび抵抗器を介して接地しても良い。しかし、抵抗器R3、R4、R5に比較的抵抗値の小さい部品を使用することにより、そのような特別な放電回路は省略できる。
図1に示すように、検出用コンデンサC1の近傍にサーミスタ25が配置されている。このサーミスタ25は、検出用コンデンサC1の温度に応じてその抵抗値が変化するので、この温度に対応してレベルが変化する電気信号を出力することができる。
マイクロコンピュータ(CPU)11は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、絶縁状態検出装置10に必要とされる各種制御を実行する。具体的には、マイクロコンピュータ11は、スイッチング素子S1〜S4を個別に制御して検出用コンデンサC1の充電及び放電を制御する。また、マイクロコンピュータ11は検出用コンデンサC1の充電電圧に相当するアナログレベルを、配線36を介して一方のアナログ入力ポートAD1から入力し、この入力レベルに基づいて計算を行い、地絡抵抗RLp及びRLnを把握する。
配線35と配線36との間には入力回路20が接続されている。この入力回路20は、配線35に現れる信号をマイクロコンピュータ11の処理に適した信号に変換するための信号処理を行う。入力回路20については様々な機能および構成が考えられるが、代表的な入力回路20としてはサンプルホールド回路が想定される。
例えば、配線35と配線36との間にアナログスイッチを接続し、配線36と接地電極15との間に信号レベルを保持するキャパシタ(コンデンサ)を接続する。特定のタイミングでマイクロコンピュータ11が前記アナログスイッチを一時的にオン(導通状態)にすることにより、そのタイミングで入力された信号レベルをサンプリングし、入力回路20内の前記キャパシタで保持することができる。もちろん、このようなサンプルホールド回路の機能は、省略することも可能である。
また、マイクロコンピュータ11のもう一方のアナログ入力ポートAD2は、配線37を介してサーミスタ25の一端と接続されている。従って、マイクロコンピュータ11はアナログ入力ポートAD2の入力レベルを計測することにより、サーミスタ25の検出した検出用コンデンサC1の温度の情報を取得できる。
本実施形態の絶縁状態検出装置10は、地絡抵抗RLp、RLnを計測する機能の他に、補助的に車載直流高圧電源50の電圧(高電圧)を計測する機能も搭載している。
通常、車載直流高圧電源50を搭載した車両においては、正極側電源ライン111、負極側電源ライン112に現れる電源電圧を計測するための専用の計測装置が搭載されている。しかし、このような専用の計測装置が故障する可能性もあるので、故障が生じた場合のバックアップ装置の搭載が望まれている。
絶縁状態検出装置10は、動作モードとして通常計測モードとバックアップモードとを有している。後述するように絶縁状態検出装置10は、バックアップモードを選択している時に電源電圧を計測することができる。この動作モードを指定するために、操作スイッチSWxがマイクロコンピュータ11の入力ポートに接続されている。すなわち、マイクロコンピュータ11は、操作スイッチSWxのオンオフを識別することにより、通常計測モードとバックアップモードとを選択することができる。
なお、外部の装置(車両側のECU等)からの命令により絶縁状態検出装置10の動作モードを切り替えるように変更しても良い。また、地絡抵抗の計測中に特定の条件を満たしたことを検知した時にマイクロコンピュータ11が自動的に通常計測モードとバックアップモードとを切り替えるように変更しても良い。
<地絡抵抗の計測>
<検出用コンデンサ(フライングキャパシタ)C1の充放電の説明>
<切り替えのタイミング>
計測時のスイッチング素子S1〜S4の切り替えタイミングの具体例を図8に示す。すなわち、地絡抵抗RLp及びRLnの計測を実施する際には、図8に示すような基本計測サイクルのスケジュールに従ってマイクロコンピュータ11がスイッチング素子S1〜S4のオンオフを制御し、地絡抵抗の算出に必要な計測値を取得する。
図8に示した基本計測サイクルは、「V0充電」、「計測」、「放電」、「Vc1n充電」、「計測」、「放電」、「V0充電」、「計測」、「放電」、「Vc1p充電」、「計測」、「放電」の各区間の連なりにより構成されている。
時刻t1−t2の「V0充電」区間においては、スイッチング素子S1及びS2がオン(接点閉)になり、他のスイッチング素子はオフ(接点開)になる。時刻t2−t3の「計測」区間においては、スイッチング素子S3、S4がオンになり、他のスイッチング素子はオフになる。
時刻t3−t4の「放電」区間においては、スイッチング素子S3、S4がオンになり、他のスイッチング素子はオフになる。時刻t4−t5の「Vc1p充電」区間においては、スイッチング素子S1、S4がオンになり、他のスイッチング素子はオフになる。
時刻t5−t6の「計測」区間は、時刻t2−t3の「計測」区間と同様である。また、時刻t6−t7の「放電」区間は、時刻t3−t4の「放電」区間と同様である。時刻t7−t8の「V0充電」区間は、時刻t1−t2の「V0充電」区間と同様である。続く時刻t8−t9の「計測」区間は、時刻t2−t3の「計測」区間と同様である。また、時刻t9−t10の「放電」区間は、時刻t3−t4の「放電」区間と同様である。
時刻t10−t11の「Vc1p充電」区間においては、スイッチング素子S2、S3がオンになり、他のスイッチング素子はオフになる。時刻t11−t12の「計測」区間は、時刻t2−t3の「計測」区間と同様である。また、時刻t12−t13の「放電」区間は、時刻t3−t4の「放電」区間と同様である。
<計測サイクルの各区間の通電経路及び動作>
「V0充電」区間:
スイッチング素子S1の接点が閉になるので、正極側電源ライン111から正極側入力端子13、スイッチング素子S1、配線31、ダイオードD1、抵抗器R1を通って検出用コンデンサC1の正極側端子に電流が流れる。また、スイッチング素子S2の接点が閉になるので、検出用コンデンサC1の負極側端子から、配線32、抵抗器R2、スイッチング素子S2、負極側入力端子14、負極側電源ライン112へ電流が流れる。従って、この電流により検出用コンデンサC1に電荷が充電される。
「計測」区間:
スイッチング素子S4の接点が閉になるので、検出用コンデンサC1の負極側端子が、抵抗器R4を介して接地電極15と接続される。また、スイッチング素子S3の接点が閉になるので、検出用コンデンサC1の正極側端子が、ダイオードD3、抵抗器R3、スイッチング素子S3、配線35、入力回路20、配線36を介してマイクロコンピュータ11のアナログ入力ポートと接続される。従って、マイクロコンピュータ11は、検出用コンデンサC1の充電電圧に比例したアナログレベルを検出することができる。
「放電」区間:
スイッチング素子S4の接点が閉になるので、検出用コンデンサC1の負極側端子が、抵抗器R4を介して接地電極15と接続される。また、スイッチング素子S3の接点が閉なので、検出用コンデンサC1の正極側端子が、ダイオードD3、抵抗器R3、スイッチング素子S3、抵抗器R5を介して接地電極15と接続される。従って、検出用コンデンサC1に蓄積された電荷は自然に放電する。
「Vc1n充電」区間:
スイッチング素子S1の接点が閉になるので、正極側電源ライン111から正極側入力端子13、スイッチング素子S1、配線31、ダイオードD1、抵抗器R1を通って検出用コンデンサC1の正極側端子に電流が流れる。また、スイッチング素子S4の接点が閉になるので、検出用コンデンサC1の負極側端子から、スイッチング素子S4、抵抗器R4、接地電極15、接地電極103、地絡抵抗RLnを通って負極側電源ライン112に電流が流れる。この電流により、検出用コンデンサC1に電荷が充電される。この時の充電電圧は、地絡抵抗RLnの影響を反映した結果になる。
「Vc1p充電」区間:
スイッチング素子S3の接点が閉になるので、正極側電源ライン111から地絡抵抗RLp、接地電極103、接地電極15、抵抗器R5、スイッチング素子S3、ダイオードD2を通って、検出用コンデンサC1の正極側端子に電流が流れる。また、スイッチング素子S2の接点が閉になるので、検出用コンデンサC1の負極側端子から、配線32、抵抗器R2、スイッチング素子S2、負極側入力端子14、負極側電源ライン112へ電流が流れる。この電流により、検出用コンデンサC1に電荷が充電される。この時の充電電圧は、地絡抵抗RLpの影響を反映した結果になる。
<基本的な地絡抵抗の計測動作>
図1に示した絶縁状態検出装置10の動作に関しては、基本的には以下の関係式が成立する。
(RLp+RLn)/(RLp×RLn)={(Vc1p)+(Vc1n)}/V0
但し、
V0:車載直流高圧電源50の出力電圧に応じた検出用コンデンサC1の充電電圧
Vc1n:負側の地絡抵抗RLnの影響を受けた検出用コンデンサC1の充電電圧
Vc1p:正側の地絡抵抗RLpの影響を受けた検出用コンデンサC1の充電電圧
RLp,RLn:各地絡抵抗の抵抗値
従って、マイクロコンピュータ11は、各状態でアナログ入力ポート(AD1)に入力される信号レベルから各充電電圧「V0」、「Vc1n」、「Vc1p」を把握し、上記関係式に基づいて地絡抵抗RLp、RLnを算出することが可能である。
<検出用コンデンサC1の温度特性の補償の説明>
コンデンサの印加電圧、充電電荷、および温度の関係の具体例を図5に示す。また、温度変化に対応した補償特性の具体例を図6に示す。
セラミックコンデンサを使用する場合には、温度変化に対して例えば図5に示すように特性が変化する。すなわち、充電時間が一定の場合には、コンデンサ自体の温度(一般的には周囲温度と同等)が通常の温度(例えば20℃)よりも高い温度(80℃)になると静電容量が低下して充電電荷が減少する。また、コンデンサ自体の温度が通常の温度よりも低い温度(−30℃)になると静電容量が増大して充電電荷も増大する。
このように温度に応じて特性が変動するセラミックコンデンサを絶縁状態検出装置10の検出用コンデンサC1として使用する場合には、充電電荷、すなわち電圧の計測値が温度の影響により変化するので、地絡抵抗の計測誤差の要因になる。
そこで、絶縁状態検出装置10は図6中に示すように温度補償の制御を行う。すなわち、温度上昇により静電容量が低下した時には検出用コンデンサC1の充電時間の長さを通常よりも短くなるように変化させ、温度低下により静電容量が増大した時には検出用コンデンサC1の充電時間の長さを通常よりも長くなるように変化させる。
このような制御により、図5に示す特性のセラミックコンデンサを検出用コンデンサC1として使用する場合であっても、図6に示す特性F1のように、理想特性F0に近い状態が得られる。つまり、温度に応じて充電時間の長さを変更することにより、温度の影響を補償することができる。また、検出用コンデンサC1の直流バイアス電圧の違いに応じた別の補償を実施することにより、図6に示す特性F1よりも更に理想特性F0に近い状態を得ることができる。
<検出用コンデンサC1の温度補償に用いる定数テーブルの説明>
温度に応じた補償値を保持する定数テーブルTB1の構成例を図4に示す。図4に示した定数テーブルTB1は、複数の温度範囲のそれぞれに対応付けられた充電時間の長さの定数を保持している。
図4に示した例では、最低の温度範囲(−A℃以下)、・・・、0〜10[℃]、10〜20[℃]、20〜30[℃]、30〜40[℃]、40〜50[℃]、・・・、最高の温度範囲(+B℃以上)のそれぞれに対応付けた充電時間の長さの定数が定数テーブルTB1に保持されている。
また、各温度範囲に対応付けた充電時間の長さの定数は、基準値(t1[sec])に対してそれぞれ所定の係数を乗算した結果として定めてある。例えば、0〜10[℃]の温度範囲の定数は基準値(t1)の1.2倍であり、30〜40[℃]の温度範囲の定数は基準値(t1)の0.9倍である。
つまり、20〜30[℃]の温度範囲を基準の状態に定め、この範囲よりも低い温度では充電時間を基準(t1)よりも長く変更し、高い温度では充電時間を基準よりも短く変更することを意味している。
図1に示した絶縁状態検出装置10においては、図4に示したような構成の定数テーブルTB1が、マイクロコンピュータ11の内部メモリ(ROM又は不揮発性メモリ)に予め保持されている。従って、マイクロコンピュータ11はこの定数テーブルTB1を利用して温度補償のために必要な充電時間長の最適値を簡単に取得できる。
<電源電圧(高電圧)の計測>
図1に示した絶縁状態検出装置10は、地絡抵抗だけでなく、正極側電源ライン111、負極側電源ライン112と接地電極103との間に印加される電源の電圧を計測することもできる。
すなわち、基本的には、地絡抵抗を計測する場合における前述の充電電圧V0を車載直流高圧電源50の出力電圧に対応する電圧として扱うことが可能である。つまり、スイッチング素子S1およびS2の接点を閉じて検出用コンデンサC1を完全に充電した状態であれば、検出用コンデンサC1の端子間の充電電圧V0は車載直流高圧電源50の出力電圧と一致する。
しかし、検出用コンデンサC1を完全に充電するためには時間をかける必要がある。すなわち、抵抗器R1、R2等の抵抗および検出用コンデンサC1の静電容量による時定数の関係から、検出用コンデンサC1の端子間の電圧は指数関数に従って、図3に示す電圧|Vc|のように徐々に上昇し、完全に充電された状態で飽和し一定になる。
検出用コンデンサC1が完全に充電された状態であれば車載直流高圧電源50の出力電圧を絶縁状態検出装置10を用いて正確に計測することは容易である。しかし、車両側に備わっている本来の高電圧計測装置が故障したような状況においては、電圧を短い時間周期で繰り返し計測することが望まれる可能性が高い。
但し、電源電圧を短い時間周期で繰り返し計測するためには、検出用コンデンサC1が完全に充電される前に計測を実施しなければならない。つまり、図3に示す電圧|Vc|のように電圧が徐々に上昇する途中で、この電圧を計測し、この計測値に基づいて電源電圧を推定しなければならない。
更に、検出用コンデンサC1としてセラミックコンデンサを採用している場合には、図3に示す電圧|Vc|の上昇カーブが検出用コンデンサC1の特性変化に伴って変動する。従って、検出用コンデンサC1の端子間電圧の計測値から正確な電源電圧を推定するのは容易ではない。
そこで、絶縁状態検出装置10がバックアップモードで車載直流高圧電源50の出力電圧を計測する場合にも、検出用コンデンサC1の温度を検出し、検出した温度に応じて検出用コンデンサC1の充電時間の長さを自動的に調整する。すなわち、前述の定数テーブルTB1と同等のテーブルを利用して温度補償のために必要な充電時間長を決定する。
また、絶縁状態検出装置10が検出用コンデンサC1の充電電圧の計測値から車載直流高圧電源50の出力電圧を推定する場合には、所定の換算係数を用いて計算を行う。最適な換算係数を取得するために、絶縁状態検出装置10は図7に示すような電圧換算定数テーブルTB2を利用する。この電圧換算定数テーブルTB2は、マイクロコンピュータ11の内部メモリ(ROM又は不揮発性メモリ)上に予め保持されている。
図7に示す電圧換算定数テーブルTB2においては、検出用コンデンサC1の電圧計測値の複数の範囲のそれぞれに対応付けられた換算係数(換算値)が保持されている。この換算係数は、計測時の検出用コンデンサC1の充電率(完全充電の状態に対する比率)と、直流バイアス電圧に応じた特性変化の補償値を含んでいる。
すなわち、検出用コンデンサC1の電圧計測値の「a以下」、・・・、「b〜cの範囲内」、「c〜dの範囲内」、「d〜eの範囲内」、「e以上」のそれぞれに対応する換算係数が電圧換算定数テーブルTB2に保持されている。例えば、検出用コンデンサC1の電圧計測値が「b〜cの範囲内」である時の換算係数は「B」であり、「c〜dの範囲内」である時の換算係数は「C」である。
従って、マイクロコンピュータ11は、計測時の検出用コンデンサC1の充電率(完全充電の状態に対する比率)と、直流バイアス電圧に応じた最適な換算係数を電圧換算定数テーブルTB2から簡単に取得できる。つまり、絶縁状態検出装置10は、検出用コンデンサC1を完全充電の状態にしなくても車載直流高圧電源50の出力電圧を高精度で推定することができ、計測の時間周期を短くすることができる。
<絶縁状態検出装置10における制御動作>
<マイクロコンピュータ11の処理の内容>
図1に示した絶縁状態検出装置10の主要な制御の内容を図2に示す。すなわち、マイクロコンピュータ11が図2の処理を実行する。また、図1に示した絶縁状態検出装置の動作タイミングの具体例を図3に示す。
図2に示した制御の内容について以下に説明する。
マイクロコンピュータ11は絶縁状態検出装置10の電源がオンになるとステップS11で所定の初期化を実行した後、S12の処理に進む。
ステップS12では、マイクロコンピュータ11はサーミスタ25から出力される信号のアナログレベルを配線37を介してアナログ入力ポートAD2から入力し、デジタル情報に変換する。これにより、検出用コンデンサC1の近傍における温度の情報を把握できる。
ステップS13では、マイクロコンピュータ11は、温度計測値に応じた検出用コンデンサC1の充電時間の補正係数を図4に示した定数テーブルTB1から取得し、充電時間を決定する。例えば、温度が35[℃]の場合には定数テーブルTB1から補正係数として(0.9)の値を取得し、充電時間を(t1×0.9)に決定する。
ステップS14では、マイクロコンピュータ11は操作スイッチSWxが接続されている入力ポートの状態を参照して、操作スイッチSWxのオンオフを識別する。すなわち、操作スイッチSWxの状態により通常計測モード/バックアップモードを区別する。通常計測モードの場合はS15に進み、バックアップモードの場合はS21に進む。
ステップS15では、マイクロコンピュータ11は基本計測サイクルのスケジュールを実行し、V0、Vc1n、Vc1pの各計測値を取得する。つまり、図8に示すようにスイッチング素子S1〜S4を制御して、図3に示す通常計測モードの「制御区間」の「V0計測区間」、「Vc1n計測区間」、「V0計測区間」、「Vc1p計測区間」で、V0、Vc1n、Vc1pの各計測値を取得する。
この場合、検出用コンデンサC1の端子間に現れる電圧の絶対値は、例えば図3に示す|Vc|のような波形になる。各区間で検出用コンデンサC1の充電を開始してから電圧を計測するタイミングまでの充電時間長Tcが、ステップS13で決定された充電時間に相当する。従って、実際に各電圧(V0、Vc1n、Vc1p)を計測するタイミングは、検出用コンデンサC1の温度に応じて自動的に調整される。
ステップS16では、マイクロコンピュータ11は検出用コンデンサC1の直流バイアス電圧の影響を補償するために、計測した各電圧(V0、Vc1n、Vc1p)に対応する電圧補償値を「電圧補償値テーブル」から取得する。この「電圧補償値テーブル」については図示しないが、図6に示した特性F1を理想特性F0に近づけるための補償値の一覧を保持しており、マイクロコンピュータ11の内部メモリ上に用意してある。
ステップS17では、マイクロコンピュータ11は、S15で取得した各電圧(V0、Vc1n、Vc1p)と、S16で取得した電圧補償値とに基づいて地絡抵抗の抵抗値RLを算出する。
ステップS18では、マイクロコンピュータ11はS17で取得した地絡抵抗の抵抗値RLを事前に定めた地絡抵抗警報値(下限値)RLrefと比較する。「RL<RLref」の条件を満たす場合はS19に進み、条件を満たさない場合はS20に進む。
ステップS19では、マイクロコンピュータ11は絶縁状態検出装置10が検出した地絡抵抗の抵抗値RLが地絡抵抗警報値RLref未満なので、地絡抵抗の警報を出力端子21に出力する。
ステップS20では、マイクロコンピュータ11はS17で取得した地絡抵抗の抵抗値RLを表す情報を出力端子21に出力する。
ステップS21では、マイクロコンピュータ11は「高電圧計測用計測サイクル」のスケジュールを実行し、各時点のV0と、Vc1n、Vc1pの各計測値を取得する。この「高電圧計測用計測サイクル」は、図3に示すバックアップモードの「制御区間」のように、V0計測周期が短縮化されている。
すなわち、1つの「V0計測区間」の中で複数回の計測を繰り返すように制御しているので、それぞれの計測処理において、検出用コンデンサC1の充電を開始してから電圧を計測するタイミングまでの充電時間長Tc2は、通常計測モードの充電時間長Tcと比べて遙かに短い。また、充電時間長Tcの場合と同様に、充電時間長Tc2についても定数テーブルTB1に基づき、検出用コンデンサC1の温度に応じて自動的に長さを調整する。従って、温度の変動による誤差を減らすことができる。
ステップS22では、マイクロコンピュータ11は、計測値の充電電圧V0を電源電圧(高電圧)の推定値に換算するための電圧換算係数を前述の電圧換算定数テーブルTB2から取得する。すなわち、計測値の充電電圧V0を電源電圧の推定値に換算する際に、検出用コンデンサC1の計測時の充電率および直流バイアス電圧の影響を考慮することにより、短い充電時間長Tc2の周期で充電電圧V0の計測を繰り返しても、正確な電源電圧(高電圧)を推定できる。
ステップS23では、マイクロコンピュータ11は、S21で取得した各計測値の電圧(V0、Vc1n、Vc1p)と、S22で取得した電圧換算係数とに基づいて電源電圧(高電圧)および地絡抵抗の抵抗値RLを算出する。
なお、バックアップモードにおいては「V0計測区間」の充電時間長Tc2が、「Vc1n計測区間」、「Vc1p計測区間」の充電時間長Tcと比べて短いので、V0、Vc1n、Vc1pの計測値を同列に扱うことはできない。しかし、電圧換算定数テーブルTB2の電圧換算係数を用いて換算することにより、通常計測モードの場合と同様に、V0、Vc1n、Vc1pの計測値に基づき地絡抵抗の抵抗値RLを算出することができる。
ステップS24では、マイクロコンピュータ11はS23で取得した地絡抵抗の抵抗値RLを事前に定めた地絡抵抗警報値(下限値)RLrefと比較する。「RL<RLref」の条件を満たす場合はS25に進み、条件を満たさない場合はS26に進む。
ステップS25では、マイクロコンピュータ11は絶縁状態検出装置10が検出した地絡抵抗の抵抗値RLが地絡抵抗警報値RLref未満なので、地絡抵抗の警報を出力端子21に出力する。
ステップS26では、マイクロコンピュータ11はS23で取得した各時点の電源電圧(高電圧)および地絡抵抗の抵抗値RLを表す情報を出力端子21に出力する。
なお、図2には示されていないが、各ステップSS14〜S26を実行している途中で、一定の時間を経過する毎にステップS12、S13を再び実行することもできる。これにより、温度の経時変化の影響も補償できる。
図2に示したような制御を実施することにより、次のような利点が得られる。
(1)検出用コンデンサC1としてセラミックコンデンサを採用した場合であっても、地絡抵抗の検出精度の向上が期待できる。
(2)適切な補正を実施することにより、相対値だけでなく絶対値としての検出精度も向上できる。従って、地絡抵抗だけでなく、電源電圧(高電圧)も高精度で検出できる。
(3)検出用コンデンサC1の充電時間長(Tc、Tc2)を自動調整するので、充電電荷が少なめになる条件下で電荷量を増やすように補正することができる。これにより、より低電圧域、高抵抗域での計測が可能になる。故障判定用の閾値等を引き上げてノイズマージンを向上させることが可能になる。また、充電電荷が多めになる条件下で電荷量を減らすように補正することができる。これにより、抵抗器R3、R4、R5によって構成される分圧回路の分圧比を引き上げ、A/D変換入力のダイナミックレンジをより有効に活用可能になる。
なお、図1に示した絶縁状態検出装置10の詳細な回路構成については、例えば特許文献3に開示されているように、様々な変形が考えられる。細部の回路構成については必要に応じて変更すれば良い。
<補足説明>
(1)図1に示した絶縁状態検出装置(10)は、所定の高圧直流電源(50)出力の正極側電源ライン(111)及び負極側電源ライン(112)とそれぞれ接続される正極側入力端子(13)及び負極側入力端子(14)と、接地電極(15)とを有し、フライングキャパシタ(C1)の充電電圧に基づいて前記正極側電源ライン及び負極側電源ラインと前記接地電極との間の絶縁状態(RLn、RLp)を把握する。また、前記フライングキャパシタの近傍における温度を検出する温度検出部(25)を有する。また、図2に示すように、前記フライングキャパシタの充電電圧を計測する充電電圧計測部(S15)と、前記フライングキャパシタの充電電圧に関する計測値に基づいて、前記正極側電源ライン及び負極側電源ラインと前記接地電極との間の絶縁抵抗値を算出する地絡抵抗値算出部(S17)と、前記温度検出部が検出した温度のパラメータを、前記フライングキャパシタの充電電圧の計測に関連する制御タイミングの変化に反映する計測タイミング制御部(S13)とを備えている。
(2)また、前記計測タイミング制御部(S13)は、前記温度のパラメータを、前記フライングキャパシタを充電する時間の長さ(図3中のTc)の違いに反映する。
(3)また、前記計測タイミング制御部は、複数の温度範囲のそれぞれと、前記フライングキャパシタを充電する時間の長さに相当する係数の情報とを対応付けて保持する定数テーブル(TB1)を有し、前記温度検出部が検出した温度に基づき、前記定数テーブルを利用して、前記フライングキャパシタを充電する時間の長さ(図3中のTc)を自動的に補正する。
(4)また、図2に示すように、前記充電電圧計測部を用いて、前記正極側電源ライン又は負極側電源ラインと前記接地電極との間に現れる電源電圧を検出する電源電圧検出部(S21、S23)を更に備える。この電源電圧検出部は、前記フライングキャパシタの完全充電に要する充電所要時間よりも短い電源電圧計測周期(図3中のTc2)で、前記フライングキャパシタを充電した後で電圧を計測し、計測値から前記電源電圧の推定値を把握すると共に、前記温度検出部が検出した温度のパラメータを前記推定値の補正に利用する。
(5)また、前記電源電圧検出部は、前記温度検出部が検出した温度のパラメータを、電源電圧計測周期内で前記フライングキャパシタを充電する時間の長さ(図3中のTc2)の違いに反映する。
(6)また、前記電源電圧検出部は、電圧の計測値を前記推定値に換算するための複数の換算係数の情報を、電圧計測値の複数の範囲のそれぞれと対応付けて保持する電圧換算定数テーブル(TB2)を有し、前記電圧換算定数テーブルから取得した1つの換算係数に基づいて前記推定値を算出する(S23)。
10 絶縁状態検出装置
11 マイクロコンピュータ
13 正極側入力端子
14 負極側入力端子
15 接地電極
20 入力回路
21 出力端子
25 サーミスタ
31〜37 配線
50 車載直流高圧電源
101,102 Yコンデンサ
103 接地電極
111 正極側電源ライン
112 負極側電源ライン
C1 検出用コンデンサ(フライングキャパシタ)
D1,D2,D3 ダイオード
R1,R2,R3,R4,R5 抵抗器
RLp,RLn 地絡抵抗
S1,S2,S3,S4 スイッチング素子
SWx 操作スイッチ
TB1 定数テーブル
TB2 電圧換算定数テーブル

Claims (4)

  1. 所定の高圧直流電源出力の正極側電源ライン及び負極側電源ラインとそれぞれ接続される正極側入力端子及び負極側入力端子と、接地電極とを有し、フライングキャパシタの充電電圧に基づいて前記正極側電源ライン及び負極側電源ラインと前記接地電極との間の絶縁状態を把握する絶縁状態検出装置であって、
    前記フライングキャパシタの近傍における温度を検出する温度検出部と、
    前記フライングキャパシタの充電電圧を計測する充電電圧計測部と、
    前記フライングキャパシタの充電電圧に関する計測値に基づいて、前記正極側電源ライン及び負極側電源ラインと前記接地電極との間の絶縁抵抗値を算出する地絡抵抗値算出部と、
    前記温度検出部が検出した温度のパラメータを、前記フライングキャパシタの充電電圧の計測に関連する制御タイミングの変化に反映する計測タイミング制御部と
    を備えることを特徴とする絶縁状態検出装置。
  2. 前記計測タイミング制御部は、前記温度のパラメータを、前記フライングキャパシタを充電する時間の長さの違いに反映する
    ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁状態検出装置。
  3. 前記計測タイミング制御部は、複数の温度範囲のそれぞれと、前記フライングキャパシタを充電する時間の長さに相当する係数の情報とを対応付けて保持する定数テーブルを有し、前記温度検出部が検出した温度に基づき、前記定数テーブルを利用して、前記フライングキャパシタを充電する時間の長さを自動的に補正する
    ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁状態検出装置。
  4. 前記充電電圧計測部を用いて、前記正極側電源ライン又は負極側電源ラインと前記接地電極との間に現れる電源電圧を検出する電源電圧検出部を更に備え、
    前記電源電圧検出部は、前記フライングキャパシタの完全充電に要する充電所要時間よりも短い電源電圧計測周期で、前記フライングキャパシタを充電した後で電圧を計測し、計測値から前記電源電圧の推定値を把握すると共に、前記温度検出部が検出した温度のパラメータを前記推定値の補正に利用する
    ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁状態検出装置。
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