JP2014152864A - 機械式自動変速機の初期設定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は湿式クラッチを有する機械式自動変速機の初期設定方法に関し、予め規定された所定期間待機することによって熱分散を実施する工程と、潤滑油温度を検出する工程と、該検出値が所定温度未満である場合に、暖機動作を自動的に実施する工程と、暖機動作完了後に機械式自動変速機の特性について学習を実施する工程とを備えることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
このような自動変速機の初期設定時に行われる学習に関する技術として例えば特許文献1及び2が開示されており、ここでは、クラッチを断接駆動するための油圧値について学習を行うことによって、変速油圧精度を向上させ、変速ショックの低減を図っている。
この態様では、熱分散工程における待機期間を利用して他の制御を実施することで初期設定に要する期間を短縮し、効率化を図ることができる。特に、他の制御として機械式自動変速機に対して熱的影響を与えない制御を実施することによって、熱分散工程に続いて実施される暖機動作の精度を低下させることなく、初期設定制御に要する期間を効果的に短縮することができる。
熱分散制御の最中に実施可能な他の制御として、例えばこれらの制御を実施するとよい。
この態様では、エンジン回転数をアイドル回転数に比べて高くなるように制御することで、エンジンに連動して作動するオイルポンプの回転数を上昇させ、潤滑油の循環を促進する。これにより、潤滑油の循環量増加によって短期間でエンジンの暖機を完了させることができ、初期設定制御に要する期間を短縮し、より一層効率化を図ることができる。
車両1には走行用動力源としてディーゼルエンジン(以下、適宜「エンジン」と称する)2が搭載されており、圧縮着火燃焼により発生させた動力を出力する。エンジン2の出力動力はクランクシャフト3で回転運動に変換後、出力軸4から出力される。該出力軸4はデュアルクラッチトランスミッション5の入力軸に連結されている。
尚、ギヤシフト部19は変速機8内の各変速段に対応する図示されないシフトフォークを作動させる複数の油圧シリンダと、該油圧シリンダを作動させる図示されない複数の電磁弁を内蔵している。電磁弁は、変速機8の変速段を選択するチェンジレバー18の切換操作に応じて対応する変速段の油圧シリンダを作動させ、シフトフォークが操作される。
デュアルクラッチトランスミッション5は、奇数変速段と偶数変速段とを相互に独立した動力伝達系を有しており、いずれか一方で動力伝達しているときに他方を次に予測される変速段に予め切り換えておくことで、動力伝達を中断することなく、変速動作を完了するシステムである。
また油圧回路10にはオイルクーラ13が設けられており、クラッチ7で昇温された潤滑油を放熱して、潤滑油温度を適切な温度範囲に保持可能に構成されている。潤滑油の温度は、潤滑油回路10に設けられた潤滑油温度センサ14によって監視されており、その検出値は後述するECU20において各種制御に利用される。
冷却水回路15のうちサーモスタット16の上流側(エンジン2の内部側)には、冷却水温度を監視するための冷却水温度センサ17が設置されており、その検出値は後述するECU20において各種制御に利用される。
初期設定制御を開始する際には、ECU20によって所定の開始条件が成立したか否かが判定される(ステップS101)。開始条件が成立した場合(ステップS101:YES)、ECU20はメモリ等の記憶部に予め記憶したプログラムを実行することによりによって自動シーケンス制御を開始することによって、以下の各種処理を実施する(ステップS102)。
まずステップS201では、車両1の運転モードを通常状態から、初期設定を実施するための初期設定モード待機状態に移行するための条件が判定される。ここではオペレータによって以下の条件(a)〜(h)が順次実施された場合に、当該条件を満足したものと判定される。
(a)車両が平滑路で停車状態にあること。
(b)始動キーがON操作されたこと。
(c)エンジンが停止状態にあること。
(d)エアコン、架装物負荷(冷凍機用コンプレッサーなど)及び排気ブレーキスイッチがOFF状態にあること。
(e)アクセルペダルがON操作されていること。
(f)フットブレーキがON操作されていること。
(g)チェンジレバーがDレンジ(走行レンジ)に所定期間保持された後にA/Mレンジ(変速ギヤ段が維持されるマニュアルレンジ)に保持されていること。
(h)パーキングブレーキが所定期間ON操作された後に所定期間OFF操作され、更に強めにON操作されること。
このような条件(a)〜(h)を判定することで、後述する暖機動作を実施した際に車両1が停車状態を安全に確保することができ、特に条件(d)ではエンジン出力の一部がこれらの機器で消費されることを防止することで、エンジン1の出力をデュアルクラッチトランスミッション5側に確実に伝達し、エンジントルク情報の精度を確保できる(すなわち、ECU20がエンジン1の出力トルクとして取得する値と、実際にデュアルクラッチトランスミッション5に伝達されるトルク値との間の誤差を小さくすることができる)。
(i)アクセルペダルをOFF操作すること。
(j)チェンジレバーをPレンジに操作すること。
操作(i)(j)が確認されると(ステップS203:YES)、ECU20はエンジン2を自動始動し(ステップS204)、自動シーケンス制御を実施することにより初期設定制御を開始する(ステップS102)。このように操作(i)(j)を判定することで、オペレータが初期設定モード待機状態から実際に以下の制御を実行する意思を有しているか否かを確認することができる。
尚、ステップS204におけるエンジン始動は作業者の手動によって実施し、ECU20がエンジン始動を検知することによって自動シーケンス制御を開始するようにしてもよい。
このように熱分散制御での待機期間を利用して他の制御を実施することで、初期設定制御を効率的に実施できる。
暖機動作量=単位時間当たりの暖機エネルギー源の出力×暖機動作の実施期間
に基づいて暖機動作量Qを算出することができる。この場合、暖機動作を実施するための制御ロジックを簡略化できる点で有利である。この場合に対応するマップ21の一例を図7に示す。
尚、ステップS106では、ECU20はエンジン2の回転数を上昇することで潤滑油の撹拌抵抗を発生させつつ(例えば、エンジン回転数をアイドル回転数650rpmから1750rpm程度まで上昇させる)、クラッチ7にスリップによる摩擦熱が発生するように半クラッチ制御を行うことにより、暖機動作を実施する。
尚、クラッチ温度TCをセンサによって直接計測することが困難である場合には、例えばエンジン2からクラッチ7までの入力系の回転数と、クラッチ7から駆動輪までの出力系の回転数との差を算出した回転数差と、エンジン2の軸トルクとの積からクラッチ7の発熱量を算出することにより、クラッチ温度を推定して用いるとよい。
一方、ステップS107で潤滑油またはクラッチ7に過剰な昇温が確認された場合(ステップS107:NO)、仮に暖機動作を継続すると潤滑油やクラッチ7が更に昇温されて損傷するおそれがあるため、供給されたエネルギー積算値が暖機動作量Qに到達するのを待たずに、暖機動作を途中で中断する(ステップS109)。
またマップ21に基づいて算出した暖機動作量Qに従って暖機動作を実施することで、加熱速度が急速な暖機動作の実施が可能となる。仮に潤滑油温度センサ14の検出値に基づいてフィードバック的に暖機動作を行うとタイムラグに起因した検出誤差が生じるため、加熱速度を低くせざるを得ないが、本実施例では、マップ21に基づいて必要な暖機動作量Qを精度よく求めることができるので、加熱速度を急速に設定することが可能になる。その結果、暖機完了までに要する時間を短縮でき、初期設定制御を効率化できる。
このようにエンジン2の暖機が不十分な場合に学習を実施すると、学習結果にも相応の誤差が含まれることとなり、品質低下につながるおそれがある。特にデュアルクラッチトランスミッション5では、学習精度が低下すると変速ショックの増大や、意図しない吹け上がりの発生などの悪影響が生じるため、問題となる。
2 エンジン
3 クランクシャフト
4 出力軸
5 デュアルクラッチトランスミッション
6 入力軸
7 クラッチ
8 変速機
10 油圧回路
11 リニアソレノイドバルブ
12 ラジエータ
13 オイルクーラ
14 潤滑油温度センサ
15 冷却水回路
16 サーモスタット
17 冷却水温度センサ
19 ギヤシフト部
20 ECU
21 マップ
22 オイルポンプ
Claims (4)
- 潤滑油を介してエンジン動力を接断可能な湿式クラッチを有する機械式自動変速機の初期設定方法であって、
予め規定された所定期間待機することによって、前記湿式クラッチの熱分散を実施する熱分散工程と、
前記潤滑油の温度を潤滑油温度検出手段によって検出する潤滑油温度検出工程と、
前記潤滑油温度検出手段の検出値が所定値未満である場合に、暖機動作を自動的に実施する暖機工程と、
前記暖機工程を実施した後、前記機械式自動変速機の特性について学習を実施する学習工程と
を備えたことを特徴とする機械式自動変速機の初期設定方法。 - 前記熱分散工程では、前記所定期間内に完了可能、且つ、前記機械式自動変速機に対して熱的影響を与えない他の制御を実施することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の機械式自動変速機の初期設定方法。
- 前記他の制御は、前記機械式自動変速機のシフト位置に関する学習制御、又は、前記湿式クラッチの作動油充填制御であることを特徴とする請求項2に記載の機械式自動変速機の初期設定方法。
- 前記熱分散工程では、前記エンジンの回転数を増加させることによって、前記潤滑油の循環を促進させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の機械式自動変速機の初期設定方法。
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