JP2014141671A - 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】ゴム強化芳香族ビニル系樹脂とポリカーボネート樹脂とをアロイ化した熱可塑性樹脂組成物であって、成形品に軋み音が生じるのを低減したものを提供する。
【解決手段】ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)5〜85質量%、ポリカーボネート樹脂(B)15〜95質量%、及び、所望により難燃剤(C)3〜25質量%を含む樹脂組成物(X)(ただし、上記成分(A)、(B)及び(C)の合計は100質量%)であって、前記成分(A)のゴム成分はジエン系ゴムからなり、さらに、前記樹脂組成物(X)100質量部に対して、シリコーンオイル(D)0.1〜15質量部、及び、重量平均分子量が10000以下のポリオレフィン系樹脂(E)0.1〜15質量部を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。少なくとも2個の互いに接触する部品を含む物品において、部品の少なくとも1つを上記熱可塑性樹脂組成物からなる成形品にするとよい。
【選択図】図13

Description

本発明は、ゴム成分としてジエン系ゴムを用いたゴム強化芳香族ビニル系樹脂とポリカーボネート樹脂とのアロイからなる熱可塑性樹脂組成物であって、軋み音の発生が低減された成形品を提供するものに関し、さらには、少なくとも2個の互いに接触する部品を含む物品であって、前記部品の少なくとも1つを上記本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品とすることにより、当該部品同士が接触して擦れ合うことにより発生する軋み音が大幅に低減されたものに関する。
ABS樹脂で代表されるゴム強化芳香族ビニル系樹脂とポリカーボネート(PC)樹脂とをアロイ化することにより難燃性を向上させた熱可塑性樹脂組成物は、電気・電子機器、OA機器、家電製品、車輌部品、サニタリー用品等の難燃性が要求される成形品の成形材料として幅広く使用されている。
しかし、上述のような所謂ABS/PCアロイからなる部品同士、または該部品とポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の他の樹脂からなる部品とを互いに接触して擦れ合うようにして用いると、軋み音(擦れ音)が発生することがある。たとえば、ビデオカメラのハウジングをABS/PCアロイで成形して組み立てた場合、ハウジングを手でホールドして使用する際に、部品が微妙に変形して互いに擦れあい、軋み音が発生するという問題があった。この軋み音は、2つの物体が擦れ合う時に発生するスティックスリップ現象に起因して生じる異音として知られており、樹脂の摺動性とは異なる性質である。
ABS/PCアロイのABS樹脂成分の全部又は一部を、Tm(融点)が0℃以上のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体をゴム成分として用いたAES樹脂で代替するとともに、必要に応じてシリコーンオイル又はポリオレフィン系ワックスを添加することにより軋み音を低減できることは従来公知である(特許文献1)が、AES樹脂が必須成分として要求され、また、シリコーンオイル及びポリオレフィン系ワックスの両者を併用した例については何ら具体的に開示されておらず、また、難燃剤を含有する系についても何ら具体的に開示されていない。
また、ABS/PCアロイに低分子量ポリオレフィン又はシリコーンオイルの何れかを配合した樹脂組成物(特許文献2)は従来公知であるが、この組成物では、低分子量ポリオレフィン又はシリコーンオイルは摺動性を改善する目的で添加されているに過ぎず、低分子量ポリオレフィン及びシリコーンオイルの両者を併用することは具体的に開示されておらず、ましてや、軋み音の発生を低減させるという課題については何ら開示されていない。なお、上述の通り、軋み音はスティックスリップ現象によって発生するものであり、摺動性とは異なる性質である。
また、低分子量酸化ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン又はポリテトラフルオロエチレンをAES樹脂に配合することによって軋み音が低減した自動車内装部品(特許文献3)は従来公知であるが、低分子量ポリオレフィン及びシリコーンオイルの両者を併用することは具体的に開示されておらず、ましてや、難燃性が求められるABS/PCアロイにおいても同様の効果が得られることは何ら示唆していない。
特開2012−046669号公報 特開平10−101920号公報 特開2011−137066号公報
かかる実情に鑑み、本発明は、ゴム成分としてジエン系ゴムを用いたゴム強化芳香族ビニル系樹脂とポリカーボネート(PC)樹脂とをアロイ化した熱可塑性樹脂組成物であって、成形品に上記のような軋み音が生じるのを低減したものを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、上記のアロイ化した熱可塑性樹脂組成物において、シリコーンオイル及び低分子量のポリオレフィン系樹脂を特定の配合割合で併用することにより、成形品の軋み音の発生が顕著に低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明の一局面によれば、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)5〜85質量%及びポリカーボネート樹脂(B)15〜95質量%を含む樹脂組成物(X)(ただし、上記成分(A)及び(B)の合計は100質量%)であって、前記成分(A)のゴム成分はジエン系ゴムからなり、さらに、前記樹脂組成物(X)100質量部に対して、シリコーンオイル(D)0.1〜15質量部、及び、重量平均分子量が10000以下のポリオレフィン系樹脂(E)0.1〜15質量部を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が提供される。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記樹脂組成物(X)は、さらに、難燃剤(C)3〜25質量%を含んでなる(ただし、上記成分(A)、(B)及び(C)の合計は100質量%)。
本発明のさらに好ましい他の実施形態によれば、前記熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体(a)を、前記樹脂組成物(X)100質量%に対して、3〜40質量%含むことができる。
本発明のさらに好ましい他の実施形態によれば、前記成分(A)は、ジエン系ゴムからなるゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b1)を重合して得られたゴム強化芳香族ビニル系樹脂、又は、該ゴム強化芳香族ビニル系樹脂とビニル系単量体(b2)の共重合体との混合物であってよい。
本発明のさらに好ましい他の実施形態によれば、前記熱可塑性樹脂組成物は、ジグラー(ZIEGLER)社のスティックスリップ測定装置SSP−02を使用して測定した異音リスク指数が、以下の測定条件において3以下である。
測定条件:縦60mm、横100mm、厚さ4mmの大試験片、及び、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの小試験片を用意し、温度23℃、湿度50%R.H.、荷重100N、速度10mm/秒、振幅20mmの条件下で、これら大小2枚の試験片を3回擦り合わせる時の異音リスク指数を測定。
本発明の他の局面によれば、上記本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品が提供される。
本発明のさらに他の局面によれば、少なくとも2個の互いに接触する部品を含む物品であって、前記部品の少なくとも1つが上記本発明の成形品からなることを特徴とする物品が提供される。該物品の代表例としては、カメラ等の電気若しくは電子機器、光学機器、照明機器などが例示できる。
本発明によれば、ゴム成分としてジエン系ゴムを用いたゴム強化芳香族ビニル系樹脂とポリカーボネート樹脂とをアロイ化した熱可塑性樹脂組成物において、シリコーンオイル及び低分子量のポリオレフィン系樹脂を特定の配合割合で併用することとしたので、軋み音の発生が顕著に低減された成形品が提供される。
図1(a)は、実施例に記載した剥離試験に使用した試験片の底面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。 本発明の物品の接触部の一態様を示す断面図である。 本発明の物品の接触部の他の一態様を示す断面図である。 本発明の物品の接触部の他の一態様を示す断面図である。 本発明の物品の接触部の他の一態様を示す断面図である。 本発明の物品の接触部の他の一態様を示す断面図である。 本発明の物品の接触部の他の一態様を示す断面図である。 図9の物品の部品20を示す概略斜視図である。 (A)は互いに嵌合する部品10及び部品20からなる本発明の物品の一例を示す上面図であり、(B)は(A)の右側面図であり、(C)は(A)のA−A´断面図である。 図9に示す本発明の物品の変形例を示す図9と同様の図である。 図9に示す本発明の物品の他の変形例を示す図9と同様の図であり、図中に示す寸法の単位はmmである。 図13に示す本発明の物品の部品18を示す概略斜視図である。 (A)は、部品18と、これを軸19回りに回転可能に支持するフレーム状の部品28とからなる本発明の物品の一例を示す上面図であり、(B)は(A)の右側面図であり、(C)は(A)のA−A´断面図である。
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び/又は共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
1.ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)(本明細書中「成分(A)」ともいう。):
本発明で使用するゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、芳香族ビニル系樹脂のマトリックス中にゴム質重合体が分散した海島構造を備えた樹脂組成物を意味する。上記海島構造は、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)等で観察することができる。
該ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、ゴム成分としてジエン系ゴムを用いたものであり、ジエン系ゴムからなるゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b1)を重合して製造することができる。なお、ゴムとは、室温でゴム弾性を示すものをいう。
したがって、該ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、通常、ビニル系単量体(b1)同士の(共)重合体がゴム質重合体(a)にグラフト重合したグラフト重合体(A1)(本明細書中「成分(A1)」ともいう。)と、ゴム質重合体(a)にグラフト重合していないビニル系単量体(b1)同士の(共)重合体(A2)(本明細書中「成分(A2)」ともいう。)との混合物からなり、場合により、該(共)重合体がグラフト重合していないゴム質重合体(a)をさらに含むこともある。
該ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、ゴム質重合体(a)の不存在下に、ビニル系単量体(b2)を重合して得られたビニル系単量体(b2)同士の(共)重合体(A3)が添加された所謂グラフトブレンド型の組成物であってもよい。この成分(A3)は上記成分(A2)と同じ(共)重合体であっても異なる(共)重合体であってもよい。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)のゴム成分を構成する上記ゴム質重合体(a)は、25℃でゴム弾性を示すジエン系ゴムであれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、このゴム質重合体(a)は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ゴム質重合体(a)として用いられるジエン系ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体ゴム;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体ゴム;天然ゴム等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。また、これらの共重合体は水素添加されたもの(但し、水素添加率は50%未満のもの)であってもよい。上記ジエン系ゴムは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ビニル系単量体(b1)としては、芳香族ビニル化合物が必須成分として使用され、好ましくは、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物から選ばれた少なくとも1種が追加的に使用され、さらに必要に応じて、これらの化合物と共重合可能な他のビニル系単量体を追加的に使用することができる。かかる他のビニル系単量体としては、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられ、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
上記シアン化ビニル化合物の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記マレイミド系化合物の具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記不飽和酸無水物の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物の具体例としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ビニル化合物の含有量の下限値は、上記ビニル系単量体(b1)全量を100質量%とした場合に、好ましくは40質量%、より好ましくは50質量%、更に好ましくは60質量%である。尚、上限値は、通常、100質量%である。
また、上記ビニル系単量体(b1)が、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む場合、両者の含有量は、両者の合計を100質量%とした場合に、成形性、並びに、成形品の耐熱性、耐薬品性及び機械的強度の観点から、それぞれ、通常40〜90質量%及び10〜60質量%、好ましくは55〜85質量%及び15〜45質量%である。
成分(A)を製造する方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、又は、これらを組み合わせた重合法とすることができる。これらの重合方法において、適宜、適切な重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤等を使用することができる。
成分(A)のグラフト率は、通常10〜150質量%、好ましくは15〜120質量%、より好ましくは20〜100質量%、特に好ましくは30〜80質量%である。成分(A)のグラフト率が前記範囲にあると、樹脂組成物の耐衝撃性、成形性が良好となり好ましい。
グラフト率は、下記数式(1)により求めることができる。
グラフト率(質量%)=((S−T)/T)×100 …(1)
上記式中、Sは成分(A)1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tは成分(A)1グラムに含まれるゴム質重合体(a)の質量(g)である。このゴム質重合体(a)の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)、熱分解ガスクロマトグラフィー、CHN元素分析等により求める方法等により得ることができる。
尚、グラフト率は、例えば成分(A)の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
成分(A)のアセトン可溶分の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃)は、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.15〜1.2dl/g、より好ましくは0.15〜1.0dl/gである。成分(A)の上記極限粘度が前記範囲にあると、樹脂組成物の耐衝撃性、成形性が良好となり好ましい。
成分(A)のアセトン可溶分の極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、成分(A)のアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
尚、極限粘度[η]は、例えば成分(A)の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。また、異なる極限粘度[η]を持つ成分(A3)を、適宜選択して配合することにより調整することができる。
上記グラフトブレンド型の組成物を調製するのに使用される成分(A3)は、ビニル系単量体(b2)の(共)重合体であり、上述のとおり、ゴム質重合体(a)の不存在下に、ビニル系単量体(b2)を重合して得られる。重合方法としては、上記ビニル系単量体(b1)について上記した方法を使用することができる。
また、ビニル系単量体(b2)は、ビニル系単量体(b1)として上記したものを全て使用することができる。ビニル系単量体(b2)は、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物から選ばれた少なくとも何れか一種からなることが好ましい。
上記成分(A3)は、1種単独であっても、2種以上の成分を混合したものであってもよい。
また、上記ビニル系単量体(b2)が、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む場合、両者の含有量は、両者の合計を100質量%とした場合に、成形性、並びに、成形品の耐熱性、耐薬品性及び機械的強度の観点から、それぞれ、通常40〜90質量%及び10〜60質量%、好ましくは55〜85質量%及び15〜45質量%である。
上記成分(A3)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、成形加工性及び耐衝撃性の観点から、好ましくは0.2〜0.9dl/g、より好ましくは0.25〜0.85dl/g、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
上記成分(A3)の極限粘度[η]の測定は、成分(A)のアセトン可溶分の極限粘度[η]の上記測定と同様の方法で行うことができる。尚、上記成分(A3)の極限粘度[η]は、上記成分(A)と同様の方法で調整することができる。また、異なる極限粘度[η]を持つ2種以上の成分(A3)を適宜選択して混合することにより調整することができる。
本発明において、成分(A3)は成分(A1)及び成分(A2)と混合して成分(A)を構成するが、成分(A3)の配合量は、成分(A)に付与したい性質に応じて適宜選択することができる。成分(A3)を使用するか否かに拘わらず、成分(A)は、ゴム質重合体(a)の含有量が、成分(A)、(B)及び(C)の合計を100質量%(すなわち、樹脂組成物(X)100質量%)に対して、好ましくは3〜40質量%となるように配合され、さらに好ましくは3〜30質量%となるように配合される。ゴム質重合体(a)の含有量が前記範囲にあると、本発明の樹脂組成物からなる成形品の機械的強度、耐熱性及び軋み音の低減効果がさらに十分となり好ましい。また、ゴム質重合体(a)の含有量が3質量%未満の場合、軋み音の低減効果が不十分になる可能性があり、40質量%を超える場合、耐熱性または難燃性が低下するおそれがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における成分(A)の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計を100質量%とした場合、5〜85質量%であり、10〜60質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましい。成分(A)が5質量%未満の場合、異音リスク指数が高くなり、軋み音が発生し易くなり、85質量%を超える場合、難燃性が不十分となる。
2.ポリカーボネート樹脂(B)(本明細書中「成分(B)」ともいう。):
本発明で使用するポリカーボネート樹脂(B)は特に制限されるものではないが、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂である。上記芳香族ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融によりエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよく、ヒドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環に含まれる水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのうち、特に、ビスフェノールAが好ましい。
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量は、好ましくは15,000〜40,000、より好ましくは17,000〜30,000、特に好ましくは18,000〜28,000である。この粘度平均分子量が高いほど、耐衝撃性が高くなる一方、流動性が十分でなく、成形加工性に劣る傾向にある。尚、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における成分(B)の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計を100質量%とした場合、15〜95質量%であり、40〜90質量%であることが好ましく、50〜85質量%であることがより好ましい。成分(B)が15質量%未満の場合、難燃性が不十分となり、95質量%を超える場合、異音リスク指数が高くなり、軋み音が発生し易くなる。
3.難燃剤(C)(本明細書中「成分(C)」ともいう。):
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃性を高めるために、必要に応じて難燃剤(C)を含有することができる。難燃剤(C)は、樹脂組成物に添加した際に充分な難燃性を付与できる化合物であればよく、例えば、有機ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤の他、赤リン、ホウ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ等の無機系難燃剤等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、環境面から、有機リン系難燃剤が好ましく使用される。
有機リン系難燃剤としては、リン酸エステル系化合物が用いられ、その具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)-2,3- ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、ビスフェノールAテトラクレジルジホスフェート、ビスフェノールAテトラキシリルジホスフェート、ヒドロキノンテトラフェニルジホスフェート、ヒドロキノンテトラクレジルジホスフェート、ヒドロキノンテトラキシリルジホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート、その他のポリホスフェート類、特開平7−11119号公報に記載の芳香族ホスフェート類などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における成分(C)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計を100質量%とした場合、0〜25質量%であり、3〜20質量%であることがより好ましく、5〜18質量%であることがさらにより好ましい。成分(C)は、成分(A)及び成分(B)のみでは十分な難燃性が不十分な場合に添加して使用することができ、成分(C)の含有量が3質量%未満の場合、難燃性向上効果が十分得られない可能性があり、25質量%を超える場合、ペレット化が困難となり、満足な成形品が得られなくなり、また、耐熱性が劣る可能性がある。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、本発明の成分(C)は、本発明の成分(A)又は成分(B)のそれぞれの製造工程中及び/又は製造工程後に成分(A)又は成分(B)のそれぞれに予め添加されたものであってもよい。
4.シリコーンオイル(D)(本明細書中「成分(D)」ともいう。):
本発明で使用するシリコーンオイル(D)は、ポリオルガノシロキサン構造を持つものであれば特に制限されるものではないが、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等の未変性シリコーンオイルの他、ポリオルガノシロキサン構造中の側鎖の一部及び/又はポリオルガノシロキサン構造の片末端部分、又は、ポリオルガノシロキサン構造の両末端部分に各種有機基が導入された変性シリコーンオイルなどが挙げられる。上記変性シリコーンオイルとしては、アルキル変性シリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル等を使用することができる。これらの中で、メチルフェニルシリコーンオイルが好ましい。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられるメチルフェニルシリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖の一部がフェニル基である、非反応性のストレートシリコーンオイルである。
また、本発明で使用するシリコーンオイル(D)の25℃における動粘度は、通常、10〜100,000cSt、好ましくは、10〜50,000cSt、より好ましくは15〜50,000cSt、特に好ましくは20〜30,000cStである。該シリコーンオイル(D)の25℃における動粘度が10cSt未満では、軋み音の低減効果が不十分になる傾向があり、一方、動粘度が100,000cStを超えると、樹脂組成物(X)における該シリコーンオイル(D)の分散性が悪くなり、耐衝撃性、軋み音低減効果が安定して発現せず、溶融混練時の押出加工性も低下する傾向がある。
シリコーンオイルの動粘度の測定は、ASTM D445−46T(JIS 8803でも可)によるウベローデ粘度計により行った。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における成分(D)の含有量は、上記樹脂組成物(X)(即ち、成分(A)、(B)及び(C)の合計)100質量部に対して、0.1〜15質量部であり、好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。成分(D)の含有量が0.1質量部未満の場合、異音リスク指数が高くなり、軋み音が発生し易くなり、15質量部を超える場合、成形品の表面外観を損なう可能性がある。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、本発明の成分(D)は、本発明の成分(A)又は成分(B)のそれぞれの製造工程中及び/又は製造工程後に成分(A)又は成分(B)のそれぞれに予め添加されたものであってもよい。
5.重量平均分子量が10000以下のポリオレフィン系樹脂(E)(本明細書中「成分(E)」ともいう。):
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂(E)は、オレフィンの単独重合体及び共重合体のうち、重量平均分子量が10000以下のものであれば特に限定されない。かかるオレフィンの単独重合体及び共重合体の具体例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、オレフィン共重合体ワックス(例えば、エチレン共重合体ワックス)等が挙げられ、これらの部分酸化物又はこれらの混合物も含まれる。尚、ポリオレフィン樹脂(E)の構造は、線状構造であってもよいし、分岐構造であってもよい。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記オレフィンの共重合体には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、4−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のオレフィンの2種以上を用いてなる共重合体、これらのオレフィンと、共重合可能な単量体、例えば、不飽和カルボン酸及びその酸無水物[(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸等]、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等]等の重合性単量体との共重合体等が挙げられる。また、これらの共重合体には、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体が含まれる。
上記ポリオレフィン系樹脂の好ましい重量平均分子量は、300〜6,000であり、より好ましくは500〜5,000である。重量平均分子量がこの範囲にあると、離型性及び成形品の外観に特に優れる。また、重量平均分子量が10000を超えると、軋み音が発生しやすくなり、層状剥離が発生する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における成分(E)の含有量は、上記樹脂組成物(X)(即ち、成分(A)、(B)及び(C)の合計)100質量部に対して、0.1〜15質量部であり、好ましくは0.2〜12質量部、より好ましくは0.3〜5質量部である。成分(E)の含有量が0.1質量部未満の場合、異音リスク指数が高くなり、軋み音が発生し易くなり、15質量部を超える場合、成形品に層状剥離が発生する。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、本発明の成分(E)は、本発明の成分(A)又は成分(B)のそれぞれの製造工程中及び/又は製造工程後に成分(A)又は成分(B)のそれぞれに予め添加されたものであってもよい。
6.フッ素樹脂(F)(本明細書中「成分(F)」ともいう。):
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分(D)及び成分(E)の添加により成形品に生じる糸引き現象を抑制するために、必要に応じてフッ素樹脂(F)を含有することができる。該フッ素樹脂(F)は、フルオロエチレン構造を含む重合体または共重合体であれば特に限定されず、例えば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体などが挙げられる。これらのうち、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、500,000〜50,000,000が特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における成分(F)の含有量は、上記樹脂組成物(X)(即ち、成分(A)、(B)及び(C)の合計)100質量部に対して、0.05〜3質量部であり、好ましくは0.05〜2質量部、より好ましくは0.1〜0.45質量部である。成分(F)の含有量が0.05質量部未満の場合、成形品の糸引き現象が発生する可能性があり、3質量部を超える場合、成形品の表面外観が不十分になる可能性がある。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、本発明の成分(F)は、本発明の成分(A)又は成分(B)のそれぞれの製造工程中及び/又は製造工程後に成分(A)又は成分(B)のそれぞれに予め添加されたものであってもよい。
7.熱可塑性樹脂組成物:
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記成分(A)、成分(B)、成分(D)、成分(E)及び所望により上記成分(C)または上記成分(F)を所定の配合比率で混合し、溶融混練することにより得られる。また、成分(C)、成分(D)、成分(E)及び成分(F)は、何れも、成分(A)又は成分(B)を製造する際に予め成分(A)又は成分(B)に加えられたものに由来するものであってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、充填剤、造核剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、着色剤等の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、他の樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各成分を所定の配合比で、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混合機を用いて、適当な条件下で溶融混練して製造することができる。好ましい混練機は、二軸押出機である。さらに、それぞれの成分を混練するに際しては、それぞれの成分を一括して混練しても、多段、分割配合して混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、押出機によりペレット化することもできる。また、充填材のうち繊維状のものは、混練中での切断を防止するためにサイドフィーダーにより押出機の途中から供給する方が好ましい。溶融混練温度は、通常200〜300℃、好ましくは220〜280℃である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ジグラー(ZIEGLER)社製のスティックスリップ試験機SSP−02を用いて後述する実施例に記載の方法で測定される試験において、同じ熱可塑性樹脂組成物からなる接触用部品同士を用いて温度23℃、湿度50%R.H.、荷重100N、速度10mm/秒の条件で測定される異音リスク指数が5以下であることが好ましく、3以下であることがさらに好ましい。ドイツ自動車工業会の基準(VDA203−260)によれば、異音リスク指数が3以下なら合格である。かかる好ましい異音リスク指数は、本願の成分(A)〜(E)の配合量を適宜調整することにより充足することができる。
8.成形品
本発明の熱可塑性樹脂組成物で成形された成形品は、少なくとも2個の互いに接触する部品を含む物品の少なくとの1つの部品として使用することにより、当該物品に軋み音が発生するのを抑制することができる。したがって、本発明によれば、少なくとも2個の互いに接触する部品を含む物品であって、前記部品の少なくとも1つが本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品であることを特徴とする物品が提供され、2個以上の部品が本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品であることが好ましく、全ての部品が本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品であることが特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物から上記成形品または部品を製造する方法には何等制限はなく、例えば、射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト成形、プレス成形、ブロー成形、異形押出成形の他、カレンダー成形やTダイ押出成形に代表されるフィルム及びシート成形等の公知の方法が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記物品の部品のうち少なくとも2個の部品が常に又は間欠的に接触し、振動、ねじれ、衝撃等の外力が物品に加わった時に両部品の接触部が互いに僅かに移動又は衝突するような物品の成形材料として好適である。かかる接触部の接触態様は、面接触、線接触、点接触等の何れであっても良く、部分的に接着されていてもよい。具体的には、図2に示されるように部品10の一面と部品20の一面が互いに突き合わされた状態で接触している物品、図3〜7に示されるように、部品10の一部が部品20に形成された凹部に嵌合した状態で接触している物品などが挙げられる。
部品同士が嵌合した状態で接触している物品の具体例としては、図3に示されるように、部品10の一端が部品20に形成された相補的な凹部にぴったり嵌合した状態で接触している物品、図4に示されるように、部品20のコーナー部に形成された2つの相補的な凹部のそれぞれに部品10の各端部がぴったり嵌合した状態で接触している物品、図5に示されるように、略平行に配置された2つの部品10のそれぞれに形成された相補的な凹部に部品20の各端部がぴったり嵌合した状態で接触している物品、図6に示されるように、部品10の内側面寸法と同寸法の外側面寸法を備える部品20を、部品10の中に入れ子状に挿入し、両者の内側面と外側面がぴったり嵌合した状態で接触している物品などが挙げられる。
また、本発明の物品における2つの部品は、互いにぴったり嵌合している必要はなく、図7に示されるように、ある程度の空隙や遊びをもって互いに嵌合しており、振動、ねじれ、衝撃等の外力が物品に加わった時に、互いに接触及び非接触を繰り返すような物品であってもよい。
上述のような接触部を複合的に備えた物品として、図9に示されるような物品が挙げられる。図9の物品において、部品10は底面が全て開口した直方体からなる升状の部品であり、部品20は部品10と同様の形状を備えるとともに上面の中央部に矩形の開口が形成された成形品である。そして、図9に示すように、部品20は部品10の中に嵌合させることができ、部品20の外周面と部品10の内周面は互いに接触し、両者は振動等の外力を受けると僅かに変形して接触及び非接触を繰り返す。図8に良く示されるように、部品20は対向する外側面に突起30を備え、図9に示されるように、部品10は対向する2つの側面に部品20の突起30を収容する穴を備えている。そして、部品10を部品20に嵌合させた時、該穴に突起30がスナップフィットすることにより両部品の嵌合が容易に外れないようにしている。部品10及び部品20の少なくとも1つを本発明の熱可塑性樹脂で成形することにより、例えば、外力が図9(C)の矢印の方向にかけられた場合でも、軋み音の発生を防止することができる。なお、外力の方向は、図9(C)の方向に限定されるものではなく、他の方向から外力が加えられた場合でも、部品10及び部品20の少なくとも1つを本発明の熱可塑性樹脂で成形した場合には、軋み音の発生は防止される。なお、図9の突起30の断面形状及び部品10の穴の形状を変更して、両部品をプレスフィットする構成に変更することもできる。
図10は、部品10及び部品20がそれぞれ突起30及びそれにスナップフィットする穴の代わりに、部品10及び部品の20の内側面と外側面の一部を接着剤31を用いてで接着した以外図9の物品と同様の態様を示すものである。また、接着剤31の代わりに、部品10及び部品20を互いにレーザー溶着等により溶着することもでき、この方法は、両部品が熱可塑性樹脂成形品である場合に好都合である。特にレーザー溶着ではレーザー光を透過する透明の熱可塑性樹脂と、レーザー光を吸収する熱可塑性樹脂からなる部品を組み合わせることが好ましく、具体的な製品としては、車載速度計などの計器類、照明灯等があげられる。
図11の例は、部品10と部品20の対向する側面の対向する位置に穴が開けられており、この2つの穴を通じてボルトとナットで締結して両部品を固定するように構成されている以外図9の物品と同様の態様を示すものである。ボルトナットの代わりに、ネジ、ピン、ビス、リベット、ブッシュ、ブラケット、ヒンジ、釘等を用いて、部品10及び部品20を固定してもよい。
また、図12に示すように、長方形の板状の本体の両端から長手方向外方に円筒状の軸19が突出した形状の部品18と、この部品18の軸19を挿入させて部品18を軸19回りに回転可能に支持するフレーム状の部品28とを備える図13に示されるような物品も、本発明の熱可塑性樹脂組成物で成形するのに好適である。部品18及び部品28の少なくとも一方を本発明の熱可塑性樹脂組成物で成形することにより、部品18を軸19回りに回転させた場合や、物品に振動等の外力が加わった場合に、軋み音が発生するのを抑制することができる。
図13に示されるように、フレーム状の部品28が複数の開口部29を備える場合には、該物品は、部品18の角度によって空気の流れる量や向きを調節する装置として好適に使用できる。かかる装置としては、家庭用及び車載用のエアコン、空気清浄機、送風機等の吹き出し口が挙げられる。
上記の物品において、部品10,18及び部品20,28の少なくとも何れか一方を上記本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品にすることで、軋み音の発生を著しく低減させることができるが、他方の物品も、上記本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品としてもよい。
本発明の物品において、本発明の熱可塑性樹脂組成物で成形された成形品からなる部品以外の部品を構成する素材は特に制限はなく、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、有機質材料、無機質材料、金属材料等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、EVA、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリ乳酸、PA/ABS樹脂、PA/AES樹脂等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上の組み合わせで使用できる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ゴムとしては、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、SEBS、SBS、SIS等の各種合成ゴム、天然ゴム等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
有機質材料としては、例えば、インシュレーションボード、MDF(中質繊維板)、ハードボード、パーティクルボード、ランバーコア、LVL(単板積層材)、OSB(配向性ボード)、PSL(パララム)、WB(ウェハーボード)、硬質繊維板、軟質繊維板、ランバーコア合板、ボードコア合板、特殊コア−合板、ベニアコア−ベニヤ板、タップ樹脂を含浸させた紙の積層シート・板、(古)紙等を砕いた細かい小片・線状体に接着剤を混合して加熱圧縮したボード、各種の木材等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
無機質材料としては、例えば、ケイ酸カルシウムボード、フレキシブルボード、ホモセメントボード、石膏ボード、シージング石膏ボード、強化石膏ボード、石膏ラスボード、化粧石膏ボード、複合石膏ボード、各種セラミック、ガラス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
更に、金属材料としては、鉄、アルミニウム、銅、各種の合金等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明の物品としては、互いに接触する部品を含む物品、例えば、電気若しくは電子機器、光学機器、照明機器、事務用機器、または家電製品の部品、自動車内装用部品、住宅内装用部品等が挙げられる。
電気若しくは電子機器及び光学機器の部品としては、デジタルビデオカメラ、スチルカメラ等のカメラのハウジング、ハンドヘルドコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末等のハウジング等が挙げられる。
照明機器の部品としては、シーリングライトのパネル、カバー、コネクタ等が挙げられる。
事務機器用の部品としては、ケース、ハウジング等の外装部品、内装部品、スイッチまわりの部品、可動部の部品、デスクロック部品、デスク引き出し、複写機の用紙トレイ等が挙げられる。
家電製品の部品としては、ケース、ハウジング等の外装部品、内装部品、スイッチまわりの部品、可動部の部品等が挙げられる。
自動車内装用部品としては、例えば、ドアトリム、ドアライニング、ピラーガーニッシュ、コンソール、コンソールボックス、センターパネル、ドアポケット、ベンチレータ、ダクト、エアコン、メーターバイザー、インパネアッパーガーニッシュ、インパネロアガーニッシュ、A/T インジケーター、オンオフスイッチ類(スライド部、スライドプレート)、スイッチベゼル、グリルフロントデフロスター、グリルサイドデフロスター、リッドクラスター、カバーインストロアー、マスク類(マスクスイッチ、マスクラジオなど)、グローブボックス、ポケット類(ポケットデッキ、ポケットカードなど)、ステアリングホイールホーンパッド、スイッチ部品、カーナビゲーション用外装部品等が挙げられる。
住宅内装用部品としては、シェルフ扉、チェアダンパー、テーブル折りたたみ脚可動部品、扉開閉ダンパー、引き戸レール、カーテンレール等が挙げられる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例中、部および%は特に断らない限り質量基準である。
(1)評価方法:
(1−1)軋み音評価(異音リスク指数):
表1又は表2に記載の熱可塑性樹脂組成物を、東芝機械製の射出成形機「IS−170FA」(商品名)を用いて、シリンダー温度260℃、射出圧力80MPa、金型温度60℃の条件で射出成形することにより得た、縦150mm、横100mm、厚さ4mmの成形品から、縦60mm、横100mm、厚さ4mm、及び、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片をディスクソーで切り出した。次に、番手#100のサンドペーパーで試験片の端部を面取りした後、細かなバリをカッターナイフで除去し、大小2枚の軋み音評価用試験片を得た。
上記評価用試験片を75℃±5℃に調整したオーブンで60時間熱老化させ、25℃で24時間冷却した後、大小2枚の成形品をジグラー(ZIEGLER)社製スティックスリップ試験機SSP−02にセットし、温度23℃、湿度50%R.H.、荷重100N、速度10mm/秒の条件で、振幅20mmで3回擦り合わせた時の異音リスク指数を測定した。異音リスク指数が大きい程、軋み音が発生しやすくなる。なお、この試験法は、熱老化させて評価を行うため、軋み音低減効果の持続性も評価することができる。
(1−2)剥離試験
東芝機械製の射出成形機「IS−170FA」(商品名)を用いて、表1または表2に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる試験片を射出成形した。射出成形時のシリンダー温度は260℃、射出圧力は80MPa、金型温度は60℃であった。
図1(a)は上記の試験片の底面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。各図中の寸法は次の通りである。すなわち、L=150mm、W=70mm、T=3mm、L1=45mm、L0=6mm、W1=3mm、T0=2mmである。
剥離試験は、試験片(1)のゲート(2)の左右2箇所に切り込み(3)を入れ(切り込みの長さは2mm)、ゲート(2)をペンチで挟み、図1(b)の矢示する方向へ引っ張り、その際、試験片(1)の表面に剥離が生じるか否かを観察し、以下の評価基準に基づいて判定した。
<剥離の評価基準>
○:ゲート近傍に剥離は発生しなかった。
△:ゲートから成形品に向かって剥離が発生した。剥離の長さはゲートから5mm以下であった。
×:ゲートから成形品に向かって剥離が発生した。剥離の長さはゲートから5mmを超えた。
(2)使用原料
(2−1)ゴム強化ビニル系樹脂(A1)
撹拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、窒素気流中、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンゴムラテックス(数平均粒子径;3,500Å、ゲル含率;85%)39部(固形分)、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を投入し、撹拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加え、更に攪拌した。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。
1時間重合させた後、更にイオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン31部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加した。
1時間重合を継続し、2、2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加し反応を完結させた。重合転化率は98%であった。反応生成物であるラテックスから、樹脂成分を硫酸水溶液により凝固、水洗した後、乾燥してゴム強化ビニル系樹脂(A1)を得た。
得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)において、ポリブタジエンゴム(PBD)の含有量は40%(熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて測定)、グラフト率は68%、アセトン可溶分の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.45dl/gであった。
(2−2)共重合体(A3)
テクノポリマー社製のAS樹脂「SAN−H」(商品名)を用いた。
(2−3)ポリカーボネート樹脂(B)
Bayer社製のポリカーボネート樹脂「Makrolon 2800」(商品名)を用いた。
(2−4)難燃剤(C)
大八化学工業株式会社製の芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤「PX−200」(商品名)を用いた。
(2−5)シリコーンオイル(D)
D−1:信越化学工業株式会社製のメチルフェニルシリコーンオイル「KF−54」(商品名)。ASTM D445−46Tによる25℃で測定した動粘度は400cSt。
D−2:信越化学工業株式会社製のジメチルシリコーンオイル「KF−96−100cs」(商品名)。ASTM D445−46Tによる25℃で測定した動粘度は100cSt。
(2−6)ポリオレフィン系樹脂(E)
E−1:三洋化成工業株式会社製の低分子量ポリエチレン「サンワックス 171−P」(商品名)。GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は1600。
E−2:ヤスハラケミカル株式会社製の低分子量ポリエチレン「ネオワックスACL」(商品名)。GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は800。
E−3(対照):日本ポリプロ株式会社製のポリプロピレン樹脂「ノバテック MA1B」(商品名)。高温GPCで測定した重量平均分子量300,000、融点165℃。
(2−7)フッ素樹脂(F)
F−1:ダイキン工業株式会社製の高分子量PTFE(4フッ化エチレン樹脂)「ポリフロンTM MPA−500C」(商品名)。
実施例1〜13及び比較例1〜5
表1又は表2に記載の成分を同表に記載の配合割合でヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44α、バレル設定温度260℃)で溶融混練し、ペレット化することにより樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を上記した評価方法で評価した。評価結果を表1及び表2に示した。
Figure 2014141671
Figure 2014141671
表1から以下のことがわかる。
実施例1は、難燃剤(C)を含有しない本発明の熱可塑性樹脂組成物の系に関するものであるが、成分(A)、(B)、(D)及び(E)の配合量が本願の範囲内であるため、異音リスク指数が1で、層状剥離が生じない優れた成形品が得られた。
実施例2は、難燃剤(C)を含有する本発明の熱可塑性樹脂組成物の系に関するものであるが、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の配合量が本願の範囲内であるため、異音リスク指数が1で、層状剥離が生じない優れた成形品が得られた。しかし、実施例2では、成形時に射出成形機のノズルから金型内への糸引きが発生した。
実施例3は、実施例2の系に成分(F)を加えたものであるが、成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)の配合量が本願の範囲内であるため、異音リスク指数が1で、層状剥離が生じない優れた成形品が得られた。さらに、実施例3では、実施例2に比べ、成形時に射出成形機のノズルから金型内への糸引きが発生しにくかった。
実施例4は、成分(B)の配合量を増加させた以外実施例3と同様の系に関するものであるが、異音リスク指数が2で若干劣った以外、実施例3と同様の優れた結果が得られた。
実施例5は、成分(B)の配合量を減少させた以外実施例3と同様の系に関するものであるが、実施例3と同様の優れた結果が得られた。
実施例6は、成分(D)の配合量を減少させた以外実施例3と同様の系に関するものであるが、異音リスク指数が3で若干劣った以外、実施例3と同様の優れた結果が得られた。
実施例7は、成分(D)の配合量を増加させた以外実施例3と同様の系に関するものであるが、実施例3と同様の優れた結果が得られた。ただし、実施例7では、成形品の表面にシリコーンオイルのブリードアウトが見られた。
実施例8は、成分(E)の配合量を減少させた以外実施例3と同様の系に関するものであるが、異音リスク指数が2で若干劣った以外、実施例3と同様の優れた結果が得られた。
実施例9は、成分(E)の配合量を増加させた以外実施例3と同様の系に関するものであるが、層状剥離が若干見られた以外、実施例3と同様の優れた結果が得られた。
実施例10は、成分(F)の配合量を若干増加させた以外実施例3と同様の系に関するものであるが、実施例3と同様の優れた結果が得られた。
実施例11は、成分(A)の配合量を若干増加させ、成分(B)の配合量を減少させた以外実施例3と同様の系に関するものであるが、実施例3と同様の優れた結果が得られた。
実施例12は、成分(D)の種類を変更した以外実施例3と同様の系に関するものであるが、異音リスク指数が3で若干劣った以外、実施例3と同様の優れた結果が得られた。
実施例13は、成分(E)の種類を変更した以外実施例3と同様の系に関するものであるが、実施例3と同様の優れた結果が得られた。
難燃剤を配合した実施例2〜13の樹脂組成物は、UL94規格によるHBグレード又はV−2グレードに合格する難燃性を示した。尚、水平燃焼試験時(HBグレード)の試験片の肉厚は0.45mm、垂直燃焼試験時(V−2グレード)の試験片の肉厚は0.8mmであった。
なお、実施例3の熱可塑性樹脂を用いて図11の部品10を成形し、比較例1の熱可塑性樹脂を用いて図11の部品20を成形し、75℃±5℃に調整したオーブンで60時間熱老化させ、その後25℃で24時間冷却した。両者を図11に示されるように嵌め込んでボルトナットで締結して組み立てた後、図11の矢印の方向に繰り返し荷重をかけたところ、軋み音は発生しなかった。
表2から以下のことがわかる。
比較例1は、成分(A)を配合しない以外実施例3と同様の系に関するものであるが、異音リスク指数が10で大幅に劣った。
比較例2は、成分(E)を配合しない以外実施例3と同様の系に関するものであるが、異音リスク指数が10で大幅に劣った。
比較例3は、成分(D)を配合しない以外実施例3と同様の系に関するものであるが、異音リスク指数が10で大幅に劣った。
比較例4は、成分(D)、成分(E)及び成分(F)を配合しない以外実施例3と同様の系に関するものであるが、異音リスク指数が10で大幅に劣った。
比較例5は、成分(E)として分子量が本発明の範囲を超えるポリプロピレン樹脂を使用した以外実施例3と同様の系に関するものであるが、異音リスク指数が10で大幅に劣るだけでなく、層状剥離が発生した。
以上から明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分(A)及び成分(B)からなる熱可塑性樹脂(X)に所定量の成分(D)及び成分(E)を併用して配合することにより、成形品に層状剥離等の不具合を生じさせることなく、軋み音の発生を抑制することができ、少なくとも2個の互いに接触する部品を含む物品の部品の成形材料として好適であることがわかる。また、難燃剤(C)を配合した場合でも同様の技術的効果を達成することができるので、難燃性が要求される上記物品の成形材料としても好適である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、軋み音の発生の抑制が要求される成形品の成形材料として好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)5〜85質量%及びポリカーボネート樹脂(B)15〜95質量%を含む樹脂組成物(X)(ただし、上記成分(A)及び(B)の合計は100質量%)であって、前記成分(A)のゴム成分はジエン系ゴムからなり、さらに、前記樹脂組成物(X)100質量部に対して、シリコーンオイル(D)0.1〜15質量部、及び、重量平均分子量が10000以下のポリオレフィン系樹脂(E)0.1〜15質量部を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記樹脂組成物(X)は、さらに、難燃剤(C)3〜25質量%を含んでなる(ただし、上記成分(A)、(B)及び(C)の合計は100質量%)、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. ゴム質重合体(a)を、前記樹脂組成物(X)100質量%に対して、3〜40質量%含む、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記成分(A)が、ジエン系ゴムからなるゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b1)を重合して得られたゴム強化芳香族ビニル系樹脂、又は、該ゴム強化芳香族ビニル系樹脂とビニル系単量体(b2)の共重合体との混合物である、請求項1乃至3の何れか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ジグラー(ZIEGLER)社のスティックスリップ測定装置SSP−02を使用して測定した異音リスク指数が、以下の測定条件において3以下である、請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    測定条件:縦60mm、横100mm、厚さ4mmの大試験片、及び、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの小試験片を用意し、温度23℃、湿度50%R.H.、荷重100N、速度10mm/秒、振幅20mmの条件下で、これら大小2枚の試験片を3回擦り合わせる時の異音リスク指数を測定。
  6. 請求項1乃至5の何れか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
  7. 少なくとも2個の互いに接触する部品を含む物品であって、前記部品の少なくとも1つが請求項6に記載の成形品からなることを特徴とする物品。
  8. 電気若しくは電子機器、光学機器又は照明機器である、請求項7に記載の物品。
  9. カメラである、請求項7または8に記載の物品。
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