JP2014140935A - チャック装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドローバーの小さい移動ストロークでクランプ爪の大きな開閉ストロークを確保する。
【解決手段】本発明は、軸方向Lに沿って進退移動するドローバー20及びアクチュエータ機構30と、クランプ爪50と、これらを連動させるリンク機構40とを備えたチャック装置1に関する。リンク機構40は、支点軸C2を回転軸心とする回転体41と、アクチュエータ機構30と回転体41とを連結する第一駆動連結部D1と、回転体41とクランプ爪50とを連結する第二駆動連結部D2とを有する。ドローバー20の軸方向Lの進退移動に伴って第一駆動連結部D1を介して回転体41が回転し、回転体41の回転に伴って第二駆動連結部D2を介してクランプ爪50が径方向Rに進退移動する。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば旋盤等の工作機器において、複数のクランプ爪でワークを把持するチャック装置に関する。
上記のようなチャック装置として、特開2006−102858号公報(特許文献1)に記載された装置が知られている。この装置を、図18に引用して示す。この装置は、チャック本体の軸方向に沿って進退移動するドローバー〔ドローバ8〕と、ドローバーと共に進退移動するアクチュエータ機構〔アクチュエータフランジ15〕と、ワークを把持するクランプ爪〔把持爪13〕と、アクチュエータ機構とクランプ爪とを連動させるリンク機構〔ジョウアクチュエータ12,22〕と、を備えている。リンク機構は、所定の支点軸〔揺動中心17,27〕を中心に揺動可能に構成されており、ドローバーの軸方向の進退移動をクランプ爪の径方向の進退移動に変換する。そして、ドローバーを引き込むことによってクランプ爪でワークを把持し、かつ、ドローバーを押し出すことによってワークの把持を解除することが可能となっている。
しかし、特許文献1のチャック装置では、リンク機構は、クランプ爪とは反対側の端部に設けられた支持部材の外面〔14a,24a〕とアクチュエータ機構に設けられた支持穴の内面〔15a,25a〕とが摺動することによって姿勢変化する。このため、ドローバーの軸方向の移動量に対するクランプ爪の径方向の移動量が比較的小さく抑えられていた。これにより、ワークを適切に把持及び解除するべくクランプ爪の開閉量をある程度確保しようとすれば、ドローバーのストロークを長く確保する必要があった。その結果、チャック装置の全体が大型化する傾向にあった。
特開2006−102858号公報
そこで、チャック装置の全体を小型化するべく、ドローバーの小さい移動ストロークでクランプ爪の大きな開閉ストロークを確保することが望まれる。
本発明に係る、チャック本体の回転軸心の延びる方向である軸方向に沿って進退移動するドローバーと、前記ドローバーの移動によって前記軸方向に沿って進退移動するアクチュエータ機構と、ワークを把持する複数のクランプ爪と、前記アクチュエータ機構と前記クランプ爪のそれぞれとを連動させる複数のリンク機構と、を備えたチャック装置の特徴構成は、前記リンク機構は、前記軸方向に対して直交する面内において前記チャック本体の径方向に対して直交する方向に沿って配置される支点軸を回転軸心とする回転体と、前記アクチュエータ機構と前記回転体とをトルク伝達可能に連結する第一駆動連結部と、前記回転体と前記クランプ爪とをトルク伝達可能に連結する第二駆動連結部と、を有し、前記第一駆動連結部と前記第二駆動連結部とが、前記支点軸周りの異なる位置に設けられ、前記アクチュエータ機構の前記軸方向の進退移動に伴って前記第一駆動連結部を介して前記回転体が回転し、当該回転体の回転に伴って前記第二駆動連結部を介して前記クランプ爪が前記径方向に進退移動する点にある。
この特徴構成によれば、ドローバーを軸方向の一方側に移動させることによってクランプ爪でワークを把持し、かつ、ドローバーを軸方向の他方側に移動させることによってワークの把持を解除することができる。ここで、リンク機構は所定の支点軸を中心に回転する回転体を有するとともに、アクチュエータ機構と回転体とを連動させる第一駆動連結部と、回転体とクランプ爪とを連動させる第二駆動連結部とが、支点軸(回転体の回転軸心)周りの異なる位置に設けられている。このため、ドローバー及びアクチュエータ機構の軸方向の移動に伴って第一駆動連結部を介して回転体が回転し、当該回転体の回転に伴って第二駆動連結部を介してクランプ爪が径方向に進退移動する。すなわち、本特徴構成による回転体を有するリンク機構を備えることで、ドローバーの軸方向の進退移動が、回転体の回転によって直接的にクランプ爪の径方向の進退移動に変換される。よって、ドローバーの移動ストロークに対するクランプ爪の開閉ストロークを、容易に大きく確保することができる。言い換えれば、一定のクランプ爪の開閉ストロークを確保するためのドローバーの移動ストロークが小さくて済む。従って、チャック装置の全体を軸方向に小型化することができる。
ここで、前記第一駆動連結部は前記支点軸よりも前記径方向の内側に配置され、前記第二駆動連結部は前記支点軸に対して前記軸方向における前記ドローバー側とは反対側に配置されていると好適である。
この構成によれば、ドローバーを軸方向に沿って引き込むことによってクランプ爪を径方向の内側に向かって移動させ、ワークを把持することができる。一般に、押込操作に比べて引込操作の方が大きな力でワークを把持可能である。よって、ワークの把持力を大きく確保することができる。また、この構成によれば、アクチュエータ機構の径方向のサイズを、第一駆動連結部の径方向の位置に応じて小さくすることができる。その結果、チャック装置の全体を径方向にも小型化することが容易である。
また、前記支点軸の方向に見て、前記支点軸と前記第一駆動連結部とを結ぶ方向と、前記支点軸と前記第二駆動連結部とを結ぶ方向と、が実質的に直交するように、前記第一駆動連結部及び前記第二駆動連結部が配置されていると好適である。
この構成によれば、回転体が回転する際の第一駆動連結部の移動方向と第二駆動連結部の移動方向とが、実質的に直交することになる。よって、ドローバーの軸方向の進退移動をクランプ爪の径方向の進退移動に変換する際のストローク比を高めることができる。
なお、この場合において、前記支点軸の方向に見て、前記第一駆動連結部が前記支点軸と同じ前記軸方向の位置を含む所定範囲を移動するように配置され、前記第二駆動連結部が前記支点軸と同じ前記径方向の位置を含む所定範囲を移動するように配置されていると更に好適である。このようにすれば、ドローバーの移動ストロークと実質的に等しい大きさのクランプ爪の開閉ストロークを確保することができる。
また、前記クランプ爪は、前記軸方向に対して直交する面内で相対変位可能に連結された基部と爪部とを有し、前記回転体は、前記支点軸の方向に沿って離間した位置において対向配置された一対の板状部材を含み、前記第二駆動連結部は、一対の前記板状部材のそれぞれの互いに対応する周方向の位置に形成された切欠溝と、当該切欠溝の内面に当接可能な状態で一対の前記切欠溝に掛け渡されたピン部材と、を含み、前記ピン部材と前記基部とを、前記基部が前記軸方向に対して直交する面内で前記ピン部材に対して揺動可能な状態で連結する揺動連結機構をさらに備えると好適である。
この構成によれば、回転体が有する一対の板状部材のそれぞれに形成された切欠溝と、当該一対の切欠溝に掛け渡されたピン部材との間で、ドローバーの軸方向の進退移動に伴うトルクをクランプ爪に適切に伝達することができる。このとき、分割構造のクランプ爪を備えるとともに揺動連結機構を備えることで、軸方向に直交する面内で、ピン部材に対して基部が揺動可能となるとともにクランプ爪の基部と爪部とが相対変位可能となる。よって、一対の板状部材(一対の切欠溝)とピン部材との間の2箇所のトルク伝達部位に偏荷重が生じる可能性があるような場合であっても、それをクランプ爪の分割構造と揺動連結機構とによって吸収することができる。その結果、作用し得る最大荷重を考慮して上記トルク伝達部位の近傍の部品強度を高める必要性が低下するので、チャック装置の全体の大型化を抑制することができる。
また、前記揺動連結機構は、前記基部を前記軸方向に貫通するように当該基部に形成された円形貫通穴と、当該円形貫通穴の内面に摺動可能な状態で収容されるとともに前記ピン部材が挿通された連結部材と、を有すると好適である。
この構成によれば、基部の円形貫通穴に収容される連結部材にピン部材が挿通されるので、その挿通部位により、ピン部材とクランプ爪の基部とをトルク伝達可能に連結することができる。このとき、ピン部材が挿通された連結部材は軸方向に貫通する円形貫通穴の内面に摺動可能であるので、連結部材を介して、軸方向に対して直交する面内でピン部材に対して基部を揺動可能とすることができる。よって、ピン部材とクランプ爪の基部とを、基部が軸方向に対して直交する面内でピン部材に対して揺動可能な状態で連結する構成(揺動連結機構)を、適切に構成することができる。
また、前記アクチュエータ機構は、前記ドローバーに対して着脱可能に形成された円環板状の環状部と、前記環状部から前記径方向に延びるように分岐形成された複数の径方向延在部と、を含む本体部を有し、複数の前記径方向延在部のそれぞれと複数の前記リンク機構のそれぞれの前記第一駆動連結部とがトルク伝達可能に連結され、装着時に回り止め固定される前記ドローバーと前記本体部との間に、前記ドローバーに対する前記径方向延在部の傾きを許容する球面状の摺動面が設けられていると好適である。
この構成によれば、ワークの外形が異形である場合や、円形であったとしてもチャック本体の回転軸心とワーク中心との間にズレが生じている場合でも、複数のクランプ爪でワークを均等に把持できる。
補足すると、本構成では、本体部が有する複数の径方向延在部のそれぞれに、リンク機構を介してクランプ爪が連結される。ドローバーを軸方向に移動させて複数のクランプ爪でワークを把持するとき、上記のズレが生じている場合等には、複数のクランプ爪のそれぞれがワークに当接する時期が完全には一致しない。この場合、ドローバーと本体部とが一体構造の場合には、いずれかのクランプ爪が最初にワークに圧接された時点でドローバーのさらなる軸方向の移動が規制されてしまい、他のクランプ爪によるワークの把持力が弱まる可能性がある。これに対して本構成では、ドローバーと本体部とが分割構造とされるとともに、両者間に球面状の摺動面が設けられる。このため、いずれかのクランプ爪が最初にワークに圧接された後も、摺動面に沿ってそのクランプ爪に対応する径方向延在部が傾いてドローバーのさらなる軸方向の移動が許容される。よって、他のクランプ爪をもワークに圧接させることができるので、複数のクランプ爪でワークを均等に把持できる。
また、前記アクチュエータ機構は、前記ドローバーと前記本体部との間に介在される介在部材をさらに有し、前記介在部材の、前記ドローバー又は前記本体部との当接面が、前記摺動面とされていると好適である。
この構成によれば、互いに着脱可能に構成されるドローバーと本体部との間に介在される別部材としての介在部材に摺動面を形成するので、ドローバー及び本体部のいずれかに摺動面を形成する構成と比較して、加工が容易である。
実施形態に係るチャック装置の断面図 軸方向に見たチャック装置の正面図 ドローバーとアクチュエータ機構との連結部の分解斜視図 ドローバーとアクチュエータ機構との連結部の組立中の状態を示す正面図 ドローバーとアクチュエータ機構との連結部の組立後の状態を示す正面図 支持軸の方向に見たリンク機構の拡大図 クランプ爪の分割構造を示す図 クランプ爪の分割構造を示す図 クランプ爪の分解斜視図 チャック本体及び保持ブロックの斜視図 保持ブロック及びクランプ爪の分解斜視図 チャック装置の動作図 ワーク把持時のアクチュエータ機構の状態の一例を示す図 ワーク把持時のクランプ爪の状態の一例を示す図 リンク機構の別形態を示す模式図 リンク機構の別形態を示す模式図 リンク機構の別形態を示す模式図 従来型のチャック装置の断面図
本発明に係るチャック装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るチャック装置1は、例えば旋盤等の工作機器において、加工対象物であるワークWを把持して固定するための装置である。本実施形態に係るチャック装置1は、ドローバー20を引き込むことによって複数のクランプ爪50でワークWを把持する、いわゆる引込式のチャック装置として構成されている。また、チャック装置1は、複数のクランプ爪50でワークWの外面を外側から把持する、いわゆる外面把持型のチャック装置として構成されている。以下、本実施形態に係るチャック装置1の構成、及びこのチャック装置1によるワークWの把持の形態について、詳細に説明する。
なお、本実施形態では、チャック装置1の本体部であるチャック本体10の回転軸心C1の延びる方向を「軸方向L」と定義する。この軸方向Lは、本実施形態では水平面に沿って配置されている。また、本実施形態では、軸方向Lに沿った「前」及び「後」の用語は、ワークWとチャック本体10との位置関係に基づいて定義する。すなわち、軸方向Lに沿って、相対的にワークW側(図1における右側)を「前」と表し、相対的にチャック本体10側(図1における左側)を「後」と表す。また、チャック本体10の回転軸心C1(軸方向L)に直交して延びる方向を「径方向R」と定義する。
1.チャック装置の全体構成
図1及び図2に示すように、チャック装置1は、チャック本体10と、ドローバー20と、アクチュエータ機構30と、複数(本例では3つ)のリンク機構40と、複数(本例では3つ)のクランプ爪50とを備えている。チャック本体10は、軸方向Lの所定位置において、当該軸方向Lを回転軸心C1として回転可能に配置されている。各リンク機構40は回転体41を備え、この回転体41が自転可能な状態でチャック本体10に固定的に配置されている。ドローバー20、アクチュエータ機構30、及び各クランプ爪50は、チャック本体10に対して相対移動可能に配置されている。ドローバー20、アクチュエータ機構30、リンク機構40、及びクランプ爪50は、記載の順に連動して動作するように構成されている。
チャック本体10は、略円柱状のハウジング11を備えている。ハウジング11は、チャック装置1の各部品を支持可能とするべく、図2に示すように、軸方向Lに見て各部品を全て包含している。図1に示すように、ハウジング11は、径方向Rの外側端部に配置された外周壁11Aと、この外周壁11Aの軸方向Lの両端部にそれぞれ配置された後方壁11B及び前方壁11Cとを備えている。本実施形態では、外周壁11Aと前方壁11Cとが一体的に形成されており、これらとは別体の後方壁11Bが、後方側から外周壁11Aに固定されている。ハウジング11の内部には、外周壁11A、後方壁11B、及び前方壁11Cによって囲まれた空間して、内部空間Sが形成されている。
前方壁11Cには、当該前方壁11Cを軸方向Lに貫通する支持孔12が形成されている。支持孔12は、アクチュエータ機構30が有する複数の連動軸37と同じ数だけ、各連動軸37に対応する位置に形成されている。各支持孔12には、対応する連動軸37が挿通されている。支持孔12と連動軸37との間には、滑り摩擦を低減するためのブッシュ13が配置されている。前方壁11Cの前面には、全体として直方体状に形成された保持ブロック15(図10及び図11を参照)が固定されている。保持ブロック15は、支持孔12と同じ数だけ、各支持孔12に対応する位置に形成されている。この保持ブロック15は、リンク機構40が有する回転体41や、クランプ爪50を保持するために設けられている。
ドローバー20は、後方壁11Bに形成された中心孔に挿通され、後方壁11Bを貫通する状態で内部空間Sに挿入されている。ドローバー20の前方側の先端部は、前方壁11Cに形成された、内部空間S側にのみ開口する中心孔に挿入されている。ドローバー20は、図示が省略された駆動機構に駆動連結されており、駆動機構によって駆動されて軸方向Lに沿って進退移動する。本実施形態では、ドローバー20は、軸方向Lに沿って延びる比較的小径の軸部材21と、この軸部材21よりも大径に形成された円筒状の筒状部材22とを備えている。軸部材21は、その外面が筒状部材22の内面に接する状態で、筒状部材22に固定されている。
図1及び図3等に示すように、筒状部材22は、その筒状部から径方向Rの外側に向かって突出形成されたフランジ部23及び複数(本例では3つ)の係止片24を有する。フランジ部23は、筒状部材22の全周に亘って環状に形成されている。複数の係止片24は、筒状部材22の周方向に等間隔で形成されている。複数の係止片24は、フランジ部23とは異なる軸方向Lの位置に設けられ、本例ではフランジ部23よりも後方側に隙間を隔てて設けられている。なお、軸方向Lにおけるフランジ部23と係止片24との間に、アクチュエータ機構30が有する本体部31の係止片33が配置される。複数の係止片24のうちの1つは、その径方向Rの外側に、ロックピン26の外形に対応した内面形状の凹状のピン受け部25を有する。フランジ部23は、ピン受け部25に対応する位置に、当該フランジ部23を軸方向Lに貫通するピン挿通孔23aを有する。
アクチュエータ機構30は、本体部31と、この本体部31に連結された複数の(本例では3つ)の連動軸37と、各連動軸37に連結された複数の一対のフック部材38とを備えている。アクチュエータ機構30を構成するこれらの本体部31、連動軸37、及びフック部材38は、ドローバー20の移動により、ドローバー20とともに軸方向Lに沿って進退移動する。このとき、本体部31は、ハウジング11内に形成された内部空間Sを進退移動する。
図3等に示すように、本体部31は、円環板状の環状部32と、この環状部32から径方向Rに延びるように分岐形成された複数(本例では3つ)の径方向延在部34とを有する。複数の径方向延在部34は、環状部32の周方向に等間隔で形成されている。各径方向延在部34の先端部(径方向Rの外側の端部)には、径方向Rに沿った切欠溝35が形成されている。
本体部31は、環状部32の内面から径方向Rの内側に向かって突出形成された複数(本例では3つ)の係止片33を有する。各係止片33は、これらと同数の径方向延在部34と同じ周方向の位置に設けられている。互いに隣り合う径方向延在部34どうしの間には、挿通隙間が形成されている。複数の係止片33のうちの1つは、その径方向Rの内側に、ロックピン26が通過可能な切欠部33aを有する。また、環状部32は、径方向延在部34との境界部における表面側に、全周に亘って連続する周溝32aを有する(図13も参照)。この周溝32aの底面は、平坦に形成された平面状摺動面32bとなっている。平面状摺動面32bは、径方向Rの外側に向かうに従って前方側に向かうように傾斜している。
アクチュエータ機構30とドローバー20とは、着脱可能に形成されている。本実施形態では、図4に示すようにアクチュエータ機構30を構成する本体部31の環状部32の、軸方向Lから見た中心孔は、係止片24が形成された部分の筒状部材22の形状に対応させてひとまわり大きく形成されている。このため、筒状部材22の係止片24と環状部32の挿通隙間とを同位相とした状態で、軸方向Lに沿って前方側から筒状部材22の係止片24を環状部32の中心孔に挿入することができる。このとき、筒状部材22の係止片24は、環状部32の係止片33よりも後方側となる位置まで挿入される。なお、この状態で、環状部32の周溝32aと筒状部材22のフランジ部23との間に介在部材36が介在される。このように、本実施形態では、アクチュエータ機構30は、ドローバー20と本体部31との間に介在される介在部材36を有する。本実施形態では、介在部材36の本体部31との当接面は、球面状に形成された球面状摺動面36aとされている。この球面状摺動面36aは、周溝32aの平面状摺動面32b側に向かって凸となる球面状に形成されており、平面状摺動面32bと全面的には接しない状態で摺動可能となっている。
筒状部材22の係止片24を環状部32の中心孔に挿入し、かつ、環状部32の周溝32aと筒状部材22のフランジ部23との間に介在部材36が介在された状態で、図5に示すようにドローバー20と本体部31とを相対回転させる。このとき、ピン挿通孔23a、切欠部33a、及びピン受け部25が互いに同位相となるように、環状部32の複数の係止片24の〔N+0.5(Nは整数を表す)〕ピッチ分だけ相対回転させる。この状態で、軸方向Lにおける前方側からロックピン26をピン挿通孔23aに挿入する。ロックピン26の頭部がフランジ部23に当接した状態で、ロックピン26の先端部にはE形のリング27が係止される。これにより、ロックピン26がピン挿通孔23a、切欠部33a、及びピン受け部25に亘ってそれぞれの内面に当接して、ドローバー20とアクチュエータ機構30とが回り止め固定される。また、筒状部材22の係止片24と環状部32の係止片33とが同位相となるとともに両者が互いに係合して、ドローバー20とアクチュエータ機構30とが一体的に移動可能となるように連結される。
図1に示すように、径方向延在部34の切欠溝35には、軸方向Lに沿って延びる軸部材である連動軸37が連結されている。連動軸37は、当該連動軸37における後方側の部分が切欠溝35に対して抜け止めされた状態で、切欠溝35に連結されている。連動軸37は、前方壁11Cに形成された支持孔12に挿通され、前方壁11Cを貫通する状態でハウジング11から前方に向かって突出している。連動軸37の前方側の端部には、支持部材(図示せず)を介して一対のフック部材38が連結されている。一対のフック部材38は、軸方向Lに対して直交する面(以下、「軸直交面」と称する)内において径方向Rに対して直交する方向に沿って離間して対向配置されている。対向配置された一対のフック部材38の同じ軸方向Lの位置には、径方向Rの外側に向かって開放された切欠溝39が形成されている。対をなす切欠溝39には、リンク機構40を構成する第一ピン部材46が掛け渡されている。すなわち、一対の切欠溝39のそれぞれに両端部が収容された状態で、第一ピン部材46が配置されている。
なお、連動軸37及びそれに連結される一対のフック部材38は、周方向に三組設けられているが、それぞれの構成は同一である。よって、一組分を想定した上記の説明は、特に明記しない限り、全ての組についての説明を兼ねているものとする。この点に関しては、以下に説明するリンク機構40やクランプ爪50に関しても同様である。
リンク機構40は、アクチュエータ機構30とクランプ爪50のそれぞれとを連動させるための機構である。リンク機構40は、径方向延在部34、連動軸37、及び一対のフック部材38の組と同数(本例では3つ)設けられている。図2に示すように、これら複数のリンク機構40は周方向に等間隔で配置されている。リンク機構40は、回転体41と、第一ピン部材46と、第二ピン部材47とを主要部品として備えている。回転体41は、軸直交面内において径方向Rに対して直交する方向に沿って配置される支点軸C2を回転軸心として自転可能に構成されている。回転体41は、支点軸C2に沿って配置される支点ピン42と、この支点ピン42の両端部において対向配置された一対の板状部材43とを備えている。板状部材43は、全体として略円板状に形成されている。なお、以下で説明する機能を損なわない程度に、その一部がカットされた形状とされていても良い。図6に示すように、本例では、支点軸C2の方向(支点軸C2に平行な方向)に見て、円周の一部が直線状にカットされている。
図10及び図11等に示すように、支点ピン42は、保持ブロック15を支点軸C2の方向に貫通するように形成された挿通孔に、その両端部が保持ブロック15から露出するように収容されている。支点ピン42の露出した両端部のそれぞれに、板状部材43が回り止めされた状態で固定されている。支点ピン42と板状部材43との回り止めは、互いに嵌合する凹凸部(例えばスプライン等)や溶接等によって実現される。前者の場合には、支点ピン42の一対の板状部材43よりも外側の先端部には、それぞれ抜け止め用のE形のリング45が係止される。図6に示すように、板状部材43は、支点軸C2の方向に見た場合における基準円(一部がカットされる前の真円を想定した仮想円)の中心で、支点ピン42に固定されている。
保持ブロック15を挟むようにして対向配置された一対の板状部材43の間に、第一ピン部材46と第二ピン部材47とが掛け渡されている。本実施形態では、一対の板状部材43のそれぞれにおける外径側部分に当該板状部材43を支点軸C2の方向に貫通する貫通孔が形成されており、一対の貫通孔に第一ピン部材46が掛け渡されている。すなわち、一対の貫通孔のそれぞれを貫通する状態で、第一ピン部材46が配置されている。第一ピン部材46は、一対の板状部材43に対して、支点軸C2基準での径方向に不動状態で支持されている。なお、一対の貫通孔は、一対の板状部材43のそれぞれの互いに対応する周方向の位置に形成されている。よって、第一ピン部材46は、支点軸C2の方向に平行に配置されている。
第一ピン部材46は、アクチュエータ機構30を構成する一対のフック部材38のそれぞれの切欠溝39に掛け渡されている。第一ピン部材46は、切欠溝39の内面に当接した状態で、フック部材38と回転体41(板状部材43)との間の駆動力(トルクと同義)の伝達を可能とする。本実施形態では、一対のフック部材38のそれぞれの切欠溝39に掛け渡された第一ピン部材46により、アクチュエータ機構30と回転体41とをトルク伝達可能に連結する第一駆動連結部D1が構成されている。
また、一対の板状部材43のそれぞれには、外径側に向かって開放する切欠溝44が形成されており、一対の切欠溝44に第二ピン部材47が掛け渡されている。すなわち、一対の切欠溝44のそれぞれに両端部が収容された状態で、第二ピン部材47が配置されている。第二ピン部材47は、一対の板状部材43に対して、支点軸C2基準での径方向に相対移動可能な状態で支持されている。なお、一対の切欠溝44は、一対の板状部材43のそれぞれの互いに対応する周方向の位置に形成されている。よって、第二ピン部材47は、支点軸C2の方向に平行に配置されている。本実施形態では、第二ピン部材47が本発明における「ピン部材」に相当する。
第二ピン部材47は、クランプ爪50を構成する連結部材54に形成された挿通穴55に挿通されている(図7を参照)。第二ピン部材47は、挿通穴55の内面に当接した状態で、回転体41(板状部材43)とクランプ爪50との間の駆動力の伝達を可能とする。本実施形態では、連結部材54の挿通穴55に挿通されるとともに一対の板状部材43のそれぞれの切欠溝44に掛け渡された第二ピン部材47により、回転体41とクランプ爪50とをトルク伝達可能に連結する第二駆動連結部D2が構成されている。
図6に示すように、第一駆動連結部D1と第二駆動連結部D2とは、支点軸C2基準の周方向の異なる位置に設けられている。本実施形態では、支点軸C2の方向に見て、支点軸C2(支点ピン42の中心)を基準とする第一駆動連結部D1(第一ピン部材46)と第二駆動連結部D2(第二ピン部材47)との中心角θが、約90°に設定されている。すなわち、支点軸C2と第一駆動連結部D1とを結ぶ方向と、支点軸C2と第二駆動連結部D2とを結ぶ方向とが、実質的に直交するように、第一駆動連結部D1と第二駆動連結部D2とが配置されている。なお、「約」や「実質的に」の用語は、製造上許容され得る誤差による差異や、機能上許容され得る設計変更に伴う差異を有する状態をも含む概念として用いている。
また、第一駆動連結部D1は、支点軸C2よりも径方向Rの内側に配置されている。図12に示すように、本実施形態では、ワークWを把持した状態で、支点軸C2の方向に見て、第一駆動連結部D1が支点軸C2と同じ軸方向Lの位置に配置されるように、第一駆動連結部D1の位置が設定されている。ワークWの把持が解除された状態では、第一駆動連結部D1は支点軸C2よりも軸方向Lにおける前方側に配置される。すなわち、第一駆動連結部D1は、支点軸C2と同じ軸方向Lの位置を含み、かつ、支点軸C2よりも軸方向Lにおける前方側の所定範囲を移動するように配置されている。
第二駆動連結部D2は、支点軸C2に対して、軸方向Lにおけるドローバー20側とは反対側となる前方側に配置されている。本実施形態では、ワークWを把持した状態で、支点軸C2の方向に見て、第二駆動連結部D2が支点軸C2と同じ径方向Rの位置に配置されるように、第二駆動連結部D2の位置が設定されている。ワークWの把持が解除された状態では、第二駆動連結部D2は支点軸C2よりも径方向Rの外側に配置される。すなわち、第二駆動連結部D2は、支点軸C2と同じ径方向Rの位置を含み、かつ、支点軸C2よりも径方向Rの外側の所定範囲を移動するように配置されている。
第一駆動連結部D1と第二駆動連結部D2とは、支点軸C2基準の径方向に関して、実質的に同じ径方向の位置に設けられている。本実施形態では、ワークWを把持した状態で、第一駆動連結部D1と第二駆動連結部D2とは同じ径方向の位置に配置される。ワークWの把持が解除された状態では、第二ピン部材47が切欠溝44内を外周側に移動した状態となるため、第二駆動連結部D2は第一駆動連結部D1に対して僅かに径方向の外側の位置に配置される。但し、本実施形態では、その差分は支点軸C2からの距離(半径)に比べると無視できる程度に小さいため、両駆動連結部D1,D2の径方向の位置は同一とみなすことができる。すなわち、支点軸C2を基準とする、第一駆動連結部D1の径方向の位置(離間長さ)をR1、第二駆動連結部D2の径方向の位置(離間長さ)をR2とすると、本実施形態では「R1≒R2」に設定されている。言い換えれば、第一駆動連結部D1の径方向の位置に対する第二駆動連結部D2の径方向の位置の比(R2/R1)が、「約1」に設定されている。
クランプ爪50は、ワークWを把持するべく、チャック本体10の前面側に複数設けられている。クランプ爪50は、アクチュエータ機構30を構成する本体部31の径方向延在部34やリンク機構40、ハウジング11の前方壁11Cに固定された保持ブロック15等と同数(本例では3つ)設けられている。これら複数のクランプ爪50は、周方向に等間隔で配置されている。図7〜図9に示すように、本実施形態のクランプ爪50は、分割構造を有しており、基部51と爪部56とこれらを連結する連結ピン58とを備えている。また、クランプ爪50は、リンク機構40を構成する第二ピン部材47が挿通される連結部材54を備えている。
基部51は、リンク機構40(第二ピン部材47)によって第一義的に駆動される、クランプ爪50の根元部分である。爪部56は、ワークWを把持する把持面56aを有する、クランプ爪50の先端部分である。基部51と爪部56とは、軸方向Lに見て、互いに重複する部分を有している。この重複部分において、軸方向Lに貫通する第一貫通穴52が基部51に形成されるとともに、軸方向Lに貫通する第三貫通穴57が爪部56に形成されている。これらの、軸方向Lに見て円形に形成された第一貫通穴52及び第三貫通穴57に、連結ピン58が軸方向Lに沿って挿入されている。連結ピン58の頭部が爪部56に当接した状態で、連結ピン58の先端部にはE形のリング59が係止されている。これにより、基部51と爪部56とは、連結ピン58を中心として、軸直交面内で相対変位可能に連結されている(図14を参照)。
基部51は、第一貫通穴52とは別に、当該基部51を軸方向Lに貫通する第二貫通穴53を有する。第二貫通穴53は、軸方向Lに見て円形に形成されている。また、第二貫通穴53は、第一貫通穴52よりも径方向Rの外側に形成されている。第二貫通穴53と爪部56とは、軸方向Lに見て重複しないように配置されている。本実施形態では、爪部56の径方向Rの外側端部が、第二貫通穴53の形状に応じて凹状に窪んだ円弧面を有するように形成されることにより、両者は重複していない。第二貫通穴53には、略円柱状の連結部材54が収容されている。連結部材54は、軸方向Lに見た場合に円周の一部によって構成される円弧面54aを、その外面に有する。連結部材54は、円弧面54aが第二貫通穴53の内面に摺動可能な状態で、第二貫通穴53に収容されている。本実施形態では、第二貫通穴53が本発明における「円形貫通穴」に相当する。また、連結部材54は、軸方向Lに直交する方向に当該連結部材54を貫通する挿通穴55を有する。この挿通穴55に、リンク機構40を構成する第二ピン部材47が挿通されている。
このような構成を備えることにより、第二ピン部材47と基部51とは、連結部材54を介して、軸直交面内で基部51が第二ピン部材47に対して揺動可能な状態で連結されている。本実施形態では、基部51の第二貫通穴53の内面に摺動可能な状態で収容されるとともに第二ピン部材47が挿通された連結部材54により、本発明における「揺動連結機構F」が構成されている。
図10に示すように、第二ピン部材47が挿通されたクランプ爪50は、前方壁11Cに固定された保持ブロック15に保持されている。図11に示すように、保持ブロック15は、その前方側の面から凹状に窪むように溝状に形成されたガイド溝16とピン通過溝17とを有する。ガイド溝16は、所定幅を有し、径方向Rに沿って延びるように形成されている。ピン通過溝17は、所定幅を有し、ガイド溝16に直交して支点軸C2に平行に延びるように形成されている。そして、ガイド溝16に、クランプ爪50を構成する基部51及び爪部56が配置されている。また、クランプ爪50の連結部材54に挿通されるとともに一対の板状部材43に掛け渡された第二ピン部材47が、ピン通過溝17に配置されている。これらは、保持ブロック15と、この保持ブロック15に対して前面側から固定される保持カバー18との間に、最大でピン通過溝17の幅分だけ径方向Rに移動可能な状態で保持されている。
なお、基部51及び爪部56とガイド溝16の内壁との間には、予め定められた微小クリアランスが設けられている(図14を参照)。この微小クリアランスによって許容される範囲内で、基部51と爪部56とが実際に相対変位可能となっている。なお、図14では、理解を容易とする目的で、微小クリアランスを強調して大きめに表示している。
図7に示すように、爪部56の把持面56aは、軸方向Lに見て円弧状に形成されている。また、図8に示すように、把持面56aは、軸方向Lに沿って前方側に向かうに従って径方向Rの内側に向かう傾斜状に形成されている。
2.チャック装置によるワークの把持
次に、上述したチャック装置1によるワークWの把持の形態について説明する。本実施形態では、1つのドローバー20に対して、複数(本例では3つ)の径方向延在部34を有するように分岐形成された本体部31が連結され、径方向延在部34のそれぞれが、一対のフック部材38を介して第一ピン部材46に連結されている。すなわち、複数の径方向延在部34のそれぞれと複数のリンク機構40のそれぞれの第一駆動連結部D1とがトルク伝達可能に連結されている。また、それぞれのリンク機構40の板状部材43の切欠溝44を介して、第二ピン部材47がクランプ爪50の連結部材54に連結されている。すなわち、複数のリンク機構40のそれぞれの第二駆動連結部D2と複数のクランプ爪50のそれぞれとがトルク伝達可能に連結されている。
このため、図示が省略された駆動機構によってドローバー20が軸方向Lに沿って後方側に引き込まれると、これとともにアクチュエータ機構30も軸方向Lに沿って後方側に移動する。アクチュエータ機構30は分岐形成されており、アクチュエータ機構30の後方側への移動に伴って、複数のリンク機構40のそれぞれにおいて、同時に、第一駆動連結部D1を介して回転体41が回転する。そして、それぞれの回転体41の回転に伴って、第二駆動連結部D2を介して、複数のクランプ爪50が、同時に、径方向Rの内側に向かって移動する。ドローバー20が軸方向Lに沿って前方側に押し出された場合には、それぞれ上記とは逆方向に移動して、複数のクランプ爪50が同時に径方向Rの外側に向かって移動する。
そこで、図12の上段に示すように、駆動機構によりドローバー20を前方に押し出して複数のクランプ爪50を開かせた状態で、回転軸心C1に中心軸を合わせるようにワークWを仮固定する。この状態で、駆動機構によりドローバー20を後方に引き込む。すると、図12の下段に示すように、複数のクランプ爪50が閉じた状態となってワークWが強固に把持される。このとき、複数のクランプ爪50は同時に閉じるので、求心(センタライジング;centralizing)機能が発揮され、ワークWの中心軸を回転軸心C1に一致させて把持できる。
また、本実施形態では、特徴的なリンク機構40を備えることで、ドローバー20及びアクチュエータ機構30の後方側への軸方向Lの移動が、回転体41の回転によって直接的にクランプ爪50の径方向Rの内側への移動に変換される。つまり、リンク機構40に備えられる回転体41が滑車のように機能して、ドローバー20及びアクチュエータ機構30の軸方向Lの移動がクランプ爪50の径方向Rの移動に変換される。このため、ドローバー20の移動ストロークに対するクランプ爪50の開閉ストロークが、大きく確保されている。言い換えれば、一定のクランプ爪50の開閉ストロークを確保するためのドローバー20の移動ストロークが小さく抑えられている。例えば図18に示される従来型のチャック装置と比較して、クランプ爪50の開閉ストロークに対するドローバー20の移動ストローク(ストローク比)が、1/2倍〜1/3倍程度に短縮できている。これにより、チャック装置1の全体が、軸方向Lに有効に小型化されている。
また、本実施形態では、第一駆動連結部D1が支点軸C2よりも径方向Rの内側に配置され、第二駆動連結部D2が支点軸C2よりも前方側に配置され、支点軸C2を基準とするこれらの中心角が約90°に設定されている。そして、図12に示すように、ワークWの把持時に、第一駆動連結部D1が支点軸C2と同じ軸方向Lの位置に配置され、第二駆動連結部D2が支点軸C2と同じ径方向Rの位置に配置されるように、回転体41の可動範囲が設定されている。これにより、ドローバー20の移動ストロークと実質的に等しい大きさのクランプ爪50の開閉ストロークが確保されている。また、引込操作により、ワークWの把持力が大きく確保される。
ところで、ワークWの一例として例えばディファレンシャル装置に用いられる傘歯車を把持対象とする場合には、その外形が異形である(真円ではない)ことに起因して、複数のクランプ爪50によるワークWの把持が不均等となる可能性がある。この点に関して、本実施形態では、ドローバー20と本体部31とが分割構造とされるとともに、両者間に介在される介在部材36に、球面状の球面状摺動面36aが設けられている。この球面状摺動面36aは、ドローバー20に対する径方向延在部34の傾き(しなり)を許容する。このため、いずれかのクランプ爪50が最初にワークWに圧接された後も、球面状摺動面36aに沿ってそのクランプ爪50に対応する径方向延在部34が傾いてドローバー20のさらなる引き込みが許容される(図13を参照)。よって、他の径方向延在部34に対応するクランプ爪50をさらに径方向Rの内側に向かって移動させてワークWに圧接させることができる。これにより、心補償(コンペセイティング;compensating)機能が発揮され、ワークWの中心軸が回転軸心C1に一致した状態を維持させながら、複数のクランプ爪50でワークWを均等に把持できる。
さらに本実施形態では、分割構造のクランプ爪50の基部51と爪部56とが軸直交面内で相対変位可能に連結されているとともに、第二ピン部材47と基部51とが、軸直交面内で基部51が第二ピン部材47に対して揺動可能な状態で連結されている。これにより、軸直交面内で、第二ピン部材47に対して基部51が揺動可能となるとともにクランプ爪50の基部51と爪部56とが相対変位可能となる(図14を参照)。よって、第二ピン部材47と一対の板状部材43のそれぞれの切欠溝44との間に作用する荷重を均等化させながら、クランプ爪50でワークWを把持することができる。
補足すると、クランプ爪50が分割構造を有さずに例えば一体構造である場合には、ワークWの外形等に起因して、軸直交面内でクランプ爪50が傾く可能性がある。この場合、一対の板状部材43(一対の切欠溝44)と第二ピン部材47との間の2箇所のトルク伝達部位には偏荷重が生じる。このため、当該部位に作用し得る最大荷重を考慮して、その近傍の部品強度を高める必要がある。これに対して、本実施形態の構成によれば、仮に一体構造のクランプ爪50であれば発生するであろう偏荷重を、クランプ爪50の分割構造と揺動連結機構Fとによって吸収することができる。よって、上記トルク伝達部位の近傍の部品強度を高める必要性が相対的に低いので、当該部品を大型化しなくても良い。結果的に、チャック装置1の全体の大型化を抑制することができている。
3.その他の実施形態
最後に、本発明に係るチャック装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態では、第一駆動連結部D1(第一ピン部材46)と第二駆動連結部D2(第二ピン部材47)との中心角θが約90°に設定されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。第一駆動連結部D1と第二駆動連結部D2との中心角θが、例えば30°〜150°のいずれかの角度、中でも45°〜135°のいずれかの角度、さらには60°〜120°のいずれかの角度に設定されても良い(図15には約120°の例を表示)。但し、支点軸C2を中心に回転体41が回転する際の第一駆動連結部D1及び第二駆動連結部D2のそれぞれの移動方向(接線方向)が約90°に近いほど、ドローバー20の移動ストロークに対するクランプ爪50の開閉ストロークを大きく確保できる。このような観点からは、第一駆動連結部D1と第二駆動連結部D2との中心角θは、約75°〜約105°のいずれかの角度に設定されていることが好ましい。
(2)上記の実施形態では、支点軸C2を基準とする、第一駆動連結部D1及び第二駆動連結部D2の径方向の位置(離間長さ)が、ほぼ同一に設定されている(R1≒R2)構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。第一駆動連結部D1の径方向の位置と第二駆動連結部D2の径方向の位置とを異ならせても良い。この場合、第一駆動連結部D1の径方向の位置に対する第二駆動連結部D2の径方向の位置の比(R2/R1)が、例えば0.5〜2のいずれかの値、中でも0.75〜1.33のいずれかの値に設定されても良い(図16には約0.7の例を表示)。上記の比(R2/R1)は、ドローバー20を引き込む際の最大トルクと、ワークWの把持のために必要となる把持力の大きさとのバランスに応じて設定されると良い。なお、R2/R1が小さくなるに従って、クランプ爪50の開閉ストロークが小さくなり、ワークWの把持力が大きくなる。
(3)上記の実施形態では、第一駆動連結部D1が、支点軸C2と同じ軸方向Lの位置を含み、かつ、支点軸C2よりも軸方向Lにおける前方側の所定範囲を移動するように配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、第一駆動連結部D1が支点軸C2と同じ軸方向Lの位置を中心とするその前後の所定範囲を移動するように配置された構成であっても良い。或いは、第一駆動連結部D1が、支点軸C2と同じ軸方向Lの位置を含み、かつ、支点軸C2よりも軸方向Lにおける後方側の所定範囲を移動するように配置された構成であっても良い(図17を参照)。この点に関しては、第二駆動連結部D2についても同様である。例えば第二駆動連結部D2が、支点軸C2と同じ径方向Rの位置を中心とするその内外の所定範囲を移動するように配置された構成であっても良い。或いは、第二駆動連結部D2が、支点軸C2と同じ径方向Rの位置を含み、かつ、支点軸C2よりも径方向Rの内側の所定範囲を移動するように配置された構成であっても良い(図17を参照)。
(4)上記の実施形態では、第一駆動連結部D1が支点軸C2よりも径方向Rの内側に配置され、第二駆動連結部D2が支点軸C2よりも前方側に配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、第一駆動連結部D1が支点軸C2よりも径方向Rの外側に配置された構成であっても良い。この場合、第二駆動連結部D2を支点軸C2よりも後方側に配置することで、上記の実施形態と同様に引込式のチャック装置を構成できる。或いは、第一駆動連結部D1が支点軸C2よりも径方向Rの外側に配置された構成において、第二駆動連結部D2を支点軸C2よりも前方側に配置しても良い。この場合、上記の実施形態とは異なり、押出式のチャック装置が構成され、或いは、引込式でワークWの中心孔の内面を内側から把持する内面把持型のチャック装置が構成される。このように、第一駆動連結部D1と第二駆動連結部D2との位置関係は、ワークWの把持のためのドローバー20の移動方向(引込式/押出式)、及び、ワークWの把持方向(外面把持型/内面把持型)に応じて適宜設定されて良い。
(5)上記の実施形態では、回転体41が有する一対の板状部材43が、全体として略円板状(具体的には、円周の一部が直線状にカットされた円板状)に形成された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。回転体41(板状部材43)は、第一駆動連結部D1及び第二駆動連結部D2が適切な位置に設けられるのであれば任意の形状とすることができる。例えば支点軸C2を中心とする真円、楕円、矩形等、各種の形状を採用することができる。また、これらの一部が直線状又は曲線状等にカットされた形状であっても良い。
(6)上記の実施形態では、第一ピン部材46が一対の板状部材43に固定され、第二ピン部材47が一対の板状部材43に対して径方向に相対移動可能な状態で支持された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、第一ピン部材46が一対の板状部材43に対して径方向に相対移動可能な状態で支持された構成であっても良い。また、第二ピン部材47が一対の板状部材43に固定された構成であっても良い。この場合、回転体41の回転に伴う第二ピン部材47の軸方向Lの移動をクランプ爪50側で吸収するように、クランプ爪50の形状が設定されると良い。
(7)上記の実施形態では、軸直交面内で相対変位可能に連結された基部51と爪部56とを有する分割構造のクランプ爪50を備える構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば一体構造のクランプ爪50が用いられても良い。この場合、一対の板状部材43と第二ピン部材47との間の2箇所のトルク伝達部位に作用し得る最大荷重(偏荷重が生じる可能性がある場合は、その大きい方)を考慮して、その近傍の部品強度を高める等しておくことが好ましい。
(8)上記の実施形態では、クランプ爪50が3つ設けられ、これら3つのクランプ爪50でワークWを把持する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。少なくともクランプ爪50が複数設けられ、これら複数のクランプ爪50でワークWを把持する構成であれば良い。なお、確実強固な把持と求心機能の有効性とを確保する観点からは、クランプ爪50は3つ以上設けられていることが好ましく、上記の実施形態の構成以外にも、4つ、5つ、6つ、・・・設けられても良い。なお、クランプ爪50の個数に応じて、リンク機構40の個数やアクチュエータ機構30を構成する本体部31の分岐数等が設定される。
(9)上記の実施形態では、ドローバー20と本体部31との間に介在される介在部材36が設けられるとともに、介在部材36の本体部31との当接面が球面状摺動面36aとされている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、介在部材36が設けられる場合において、介在部材36のドローバー20(筒状部材22)との当接面が球面状摺動面36aとされても良い。或いは、本体部31と筒状部材22とが介在部材36を介することなく当接するように構成されるとともに、本体部31又は筒状部材22に、球面状摺動面が形成されても良い。これらの各構成によっても、上記の実施形態と同様に、心補償機能を有効に確保できる。なお、高精度な心補償が要求されない場合等には、コスト低減や製造の容易さが優先されて、そのような球面状摺動面が設けられなくても良い。
(10)上記の実施形態では、ワークWの一例として例えばディファレンシャル装置に用いられる傘歯車を把持対象とする場合を想定して説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。形状及びサイズとの関係で把持可能なものであれば、あらゆるものをワークWとして把持対象とすることができる。
(11)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、例えば旋盤等の工作機器において、複数のクランプ爪でワークを把持するチャック装置に利用することができる。
1 :チャック装置
10 :チャック本体
20 :ドローバー
30 :アクチュエータ機構
31 :本体部
32 :環状部
34 :径方向延在部
36 :介在部材
36a :球面状摺動面
40 :リンク機構
41 :回転体
43 :板状部材
44 :切欠溝
46 :第一ピン部材
47 :第二ピン部材(ピン部材)
50 :クランプ爪
51 :基部
53 :第二貫通穴(円形貫通穴)
54 :連結部材
56 :爪部
C1 :チャック本体の回転軸心
C2 :支点軸
D1 :第一駆動連結部
D2 :第二駆動連結部
F :揺動連結機構
L :軸方向
R :径方向
W :ワーク
θ :中心角

Claims (7)

  1. チャック本体の回転軸心の延びる方向である軸方向に沿って進退移動するドローバーと、前記ドローバーの移動によって前記軸方向に沿って進退移動するアクチュエータ機構と、ワークを把持する複数のクランプ爪と、前記アクチュエータ機構と前記クランプ爪のそれぞれとを連動させる複数のリンク機構と、を備えたチャック装置であって、
    前記リンク機構は、前記軸方向に対して直交する面内において前記チャック本体の径方向に対して直交する方向に沿って配置される支点軸を回転軸心とする回転体と、前記アクチュエータ機構と前記回転体とをトルク伝達可能に連結する第一駆動連結部と、前記回転体と前記クランプ爪とをトルク伝達可能に連結する第二駆動連結部と、を有し、
    前記第一駆動連結部と前記第二駆動連結部とが、前記支点軸周りの異なる位置に設けられ、
    前記アクチュエータ機構の前記軸方向の進退移動に伴って前記第一駆動連結部を介して前記回転体が回転し、当該回転体の回転に伴って前記第二駆動連結部を介して前記クランプ爪が前記径方向に進退移動するチャック装置。
  2. 前記第一駆動連結部は前記支点軸よりも前記径方向の内側に配置され、前記第二駆動連結部は前記支点軸に対して前記軸方向における前記ドローバー側とは反対側に配置されている請求項1に記載のチャック装置。
  3. 前記支点軸の方向に見て、前記支点軸と前記第一駆動連結部とを結ぶ方向と、前記支点軸と前記第二駆動連結部とを結ぶ方向と、が実質的に直交するように、前記第一駆動連結部及び前記第二駆動連結部が配置されている請求項1又は2に記載のチャック装置。
  4. 前記クランプ爪は、前記軸方向に対して直交する面内で相対変位可能に連結された基部と爪部とを有し、
    前記回転体は、前記支点軸の方向に沿って離間した位置において対向配置された一対の板状部材を含み、
    前記第二駆動連結部は、一対の前記板状部材のそれぞれの互いに対応する周方向の位置に形成された切欠溝と、当該切欠溝の内面に当接可能な状態で一対の前記切欠溝に掛け渡されたピン部材と、を含み、
    前記ピン部材と前記基部とを、前記基部が前記軸方向に対して直交する面内で前記ピン部材に対して揺動可能な状態で連結する揺動連結機構をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載のチャック装置。
  5. 前記揺動連結機構は、前記基部を前記軸方向に貫通するように当該基部に形成された円形貫通穴と、当該円形貫通穴の内面に摺動可能な状態で収容されるとともに前記ピン部材が挿通された連結部材と、を有する請求項4に記載のチャック装置。
  6. 前記アクチュエータ機構は、前記ドローバーに対して着脱可能に形成された円環板状の環状部と、前記環状部から前記径方向に延びるように分岐形成された複数の径方向延在部と、を含む本体部を有し、
    複数の前記径方向延在部のそれぞれと複数の前記リンク機構のそれぞれの前記第一駆動連結部とがトルク伝達可能に連結され、
    装着時に回り止め固定される前記ドローバーと前記本体部との間に、前記ドローバーに対する前記径方向延在部の傾きを許容する球面状の摺動面が設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載のチャック装置。
  7. 前記アクチュエータ機構は、前記ドローバーと前記本体部との間に介在される介在部材をさらに有し、
    前記介在部材の、前記ドローバー又は前記本体部との当接面が、前記摺動面とされている請求項6に記載のチャック装置。
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