<第1実施形態>
以下、本発明における過給機付きエンジンの制御装置を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図1に、この実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置(EGR装置)を含むエンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムは、レシプロタイプのエンジン1を備える。エンジン1の吸気ポート2には、吸気通路3が接続され、排気ポート4には、排気通路5が接続される。吸気通路3の入口には、エアクリーナ6が設けられる。エアクリーナ6より下流の吸気通路3には、排気通路5との間に、吸気通路3における吸気を昇圧させるための過給機7が設けられる。
過給機7は、吸気通路3に配置されたコンプレッサ8と、排気通路5に配置されたタービン9と、コンプレッサ8とタービン9を一体回転可能に連結する回転軸10とを含む。過給機7は、排気通路5を流れる排気によりタービン9を回転させて回転軸10を介してコンプレッサ8を一体的に回転させることにより、吸気通路3における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
過給機7に隣接して排気通路5には、タービン9を迂回する排気バイパス通路11が設けられる。この排気バイパス通路11には、ウェイストゲートバルブ12が設けられる。ウェイストゲートバルブ12により排気バイパス通路11を流れる排気が調節されることにより、タービン9に供給される排気流量が調節され、タービン9及びコンプレッサ8の回転速度が調節され、過給機7による過給圧が調節されるようになっている。
吸気通路3において、過給機7のコンプレッサ8とエンジン1との間には、インタークーラ13が設けられる。このインタークーラ13は、コンプレッサ8により昇圧されて高温となった吸気を適温に冷却するためのものである。インタークーラ13とエンジン1との間の吸気通路3には、サージタンク3aが設けられる。また、インタークーラ13より下流であってサージタンク3aより上流の吸気通路3には、電動式のスロットル弁である電子スロットル装置14が設けられる。本発明の吸気量調節弁に相当する電子スロットル装置14は、吸気通路3に配置されるバタフライ形のスロットル弁21と、そのスロットル弁21を開閉駆動するためのステップモータ22と、スロットル弁21の開度(スロットル開度)TAを検出するためのスロットルセンサ23とを備える。電子スロットル装置14は、運転者によるアクセルペダル26の操作に応じてスロットル弁21がステップモータ22により開閉駆動されることにより、スロットル弁21の開度が調節されるように構成される。電子スロットル装置14の構成として、例えば、特開2011−252482号公報の図1及び図2に記載される「スロットル装置」の基本構成を採用することができる。また、タービン9より下流の排気通路5には、排気を浄化するための排気触媒としての触媒コンバータ15が設けられる。
エンジン1には、燃焼室16に燃料を噴射供給するためのインジェクタ25が設けられる。インジェクタ25には、燃料タンク(図示略)から燃料が供給されるようになっている。また、エンジン1には、各気筒に対応して点火プラグ29が設けられる。各点火プラグ29は、イグナイタ30から出力される高電圧を受けて点火動作する。各点火プラグ29の点火時期は、イグナイタ30による高電圧の出力タイミングにより決定される。点火プラグ29とイグナイタ30により点火装置が構成される。
この実施形態において、大量EGRを実現するためのEGR装置は、エンジン1の燃焼室16から排気通路5へ排出される排気の一部をEGRガスとして吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させる排気還流通路(EGR通路)17と、EGR通路17におけるEGRガスの流れを調節するためにEGR通路17に設けられた排気還流弁(EGR弁)18とを備える。EGR通路17は、触媒コンバータ15より下流の排気通路5と、コンプレッサ8より上流の吸気通路3との間に設けられる。すなわち、排気通路5を流れる排気の一部をEGRガスとしてEGR通路17を通じて吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させるために、EGR通路17の出口17aは、コンプレッサ8より上流の吸気通路3に接続される。また、EGR通路17の入口17bは、触媒コンバータ15より下流の排気通路5に接続される。
EGR通路17には、同通路17を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ20が設けられる。この実施形態で、EGR弁18は、EGRクーラ20より下流のEGR通路17に配置される。
図2に、EGR通路17の一部であってEGR弁18が設けられる部分を拡大して断面図により示す。図1、図2に示すように、EGR弁18は、ポペット弁により、かつ、電動弁により構成される。すなわち、EGR弁18は、ステップモータ31により駆動される弁体32を備える。弁体32は、略円錐形状をなし、EGR通路17に設けられた弁座33に着座可能に設けられる。ステップモータ31は直進的に往復運動(ストローク運動)可能に構成された出力軸34を備え、その出力軸34の先端に弁体32が固定される。出力軸34は軸受35を介してEGR通路17を構成するハウジングに支持される。そして、ステップモータ31の出力軸34をストローク運動させることにより、弁座33に対する弁体32の開度が調節されるようになっている。EGR弁18の出力軸34は、弁体32が弁座33に着座する全閉状態から、弁体32が軸受35に当接する全開状態までの間で所定のストロークL1だけストローク運動可能に設けられる。この実施形態では、大量EGRを実現するために、従前の技術に比べて弁座33の開口面積が拡大されている。それに合わせて、弁体32が大型化されている。このEGR弁18の構成として、例えば、特開2010−275941号公報の図1に記載された「EGRバルブ」の基本構成を採用することができる。
この実施形態では、エンジン1の運転状態に応じて燃料噴射制御、点火時期制御、吸気量制御及びEGR制御等をそれぞれ実行するために、インジェクタ25、イグナイタ30、電子スロットル装置14のステップモータ22及びEGR弁18のステップモータ31が、それぞれエンジン1の運転状態に応じて電子制御装置(ECU)50により制御されるようになっている。ECU50は、中央処理装置(CPU)と、所定の制御プログラム等を予め記憶したり、CPUの演算結果等を一時的に記憶したりする各種メモリと、これら各部と接続される外部入力回路及び外部出力回路とを備える。ECU50は、本発明の制御手段に相当する。外部出力回路には、イグナイタ30、インジェクタ25及び各ステップモータ22,34が接続される。外部入力回路には、スロットルセンサ23をはじめエンジン1の運転状態を検出するための本発明の運転状態検出手段に相当する各種センサ27,51〜55が接続され、各種エンジン信号が入力されるようになっている。
ここで、各種センサとして、スロットルセンサ23の他に、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28、吸気圧センサ51、回転速度センサ52、水温センサ53、エアフローメータ54及び空燃比センサ55が設けられる。アクセルセンサ27は、アクセルペダル26の操作量であるアクセル開度ACCを検出する。アクセルペダル26は、エンジン1の動作を操作するための操作手段に相当する。ブレーキセンサ28は、ブレーキペダル36が踏み込み操作されたことを検出する本発明のブレーキ検出手段に相当する。エンジン1は、車両に駆動源として搭載されており、ブレーキペダル36は、その車両を停止させるために運転者により踏み込み操作されるようになっている。吸気圧センサ51は、サージタンク3aにおける吸気圧PMを検出する。すなわち、吸気圧センサ51は、EGR通路17から吸気通路3へEGRガスが流れ込む位置より下流の吸気通路3(サージタンク3a)における吸気圧PMを検出するようになっている。回転速度センサ52は、エンジン1のクラックシャフト1aの回転角(クランク角)を検出するとともに、そのクランク角の変化をエンジン1の回転速度(エンジン回転速度)NEとして検出する。水温センサ53は、エンジン1の冷却水温THWを検出する。エアフローメータ54は、エアクリーナ6の直下流の吸気通路3を流れる吸気量Gaを検出する。空燃比センサ55は、触媒コンバータ15の直上流の排気通路5に設けられ、排気中の空燃比A/Fを検出する。
また、この実施形態では、エンジン1を搭載する車両(図示略)に車速センサ56が設けられ、その車速センサ56がECU50の外部入力回路に接続される。車速センサ56は、車両の車速SPDを検出するためのものである。
この実施形態で、ECU50は、エンジン1の全運転領域において、エンジン1の運転状態に応じてEGRを制御するためにEGR弁18を制御するようになっている。また、ECU50は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時に検出される運転状態に基づきEGR弁18を開弁制御し、エンジン1の停止時又は減速運転時にEGR弁18を閉弁制御するようになっている。
この実施形態で、ECU50は、運転者の要求に応じてエンジン1を運転するために、アクセル開度ACCに基づいて電子スロットル装置14を制御するようになっている。また、ECU50は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時にはアクセル開度ACCに基づき電子スロットル装置14を開弁制御し、エンジン1の停止時又は減速運転時には電子スロットル装置14を閉弁制御するようになっている。これにより、スロットル弁21は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時には開弁され、エンジン1の停止時又は減速運転時には閉弁されるようになっている。
この実施形態における過給機7を備えたエンジン1では、コンプレッサ8より上流の吸気通路3にEGR通路17の出口17aを設けてEGRガスを吸気通路3へ導入するようになっている。また、EGR通路17の出口17aから電子スロットル装置14までの吸気通路3の経路は比較的長いことから、出口17aから吸気通路3へ流れ出たEGRガスが電子スロットル装置14(スロットル弁21)を通過するまでに多少のタイムラグが生じことがある。また、エンジン1の減速運転時には、電子スロットル装置14を閉弁制御することで、スロットル弁21より上流の吸気通路3にEGRガスが滞留又は残留し、EGRガスの減衰遅れが発生することがある。一方、過給機7による過給からEGRカット(EGRガスの供給を遮断すること。)を伴うエンジン1の減速直後には、EGR通路17の出口17aより上流のエアクリーナ6の近くまでEGRガスが逆流することがある。従って、その状態から、エンジン1の加速運転が開始されてEGRが再開されると、逆流したEGRガスや残留したEGRガスの分だけEGRガスが過剰になることがある。そして、過剰となったEGRガスが燃焼室16に到達すると、燃料の燃焼が一瞬低下してエンジン1のトルクが低下することがある。そこで、この実施形態では、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときには、スロットル弁21より上流の吸気通路3におけるEGRガスの残留状態に応じてEGR弁18を制御するために、ECU50が以下の各種制御を実行するようになっている。
図3に、エンジン1の急減速初期に電子スロットル装置14(スロットル弁21)より上流の吸気通路3に残留したEGRガスを含む吸気量(減速初期における残留EGRガス含有吸気量)egrinを算出するための処理内容の一例をフローチャートにより示す。
処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ100で、ECU50は、吸気圧センサ51及び回転速度センサ52等の検出値に基づき、エンジン回転速度NE、エンジン負荷KL及びEGR率Pegrを取り込む。ここで、ECU50は、エンジン負荷KLを、エンジン回転速度NEと吸気圧PMに基づいて求めることができる。
次に、ステップ110で、ECU50は、EGRオン域(EGRの実行域)からのエンジン1の急減速であるか否かを判断する。ECU50は、この判断を、アクセル開度ACC及びエンジン回転速度NE等に基づき行う。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、そのまま処理を一旦終了し、処理をステップ100へ戻す。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ120へ移行する。
ステップ120で、ECU50は、エンジン1の急減速直前におけるエンジン負荷KLを「KL1」としてメモリに記憶する。
次に、ステップ130で、ECU50は、エンジン1の急減速直前におけるEGR率Pegrを「Pegr1」としてメモリに記憶する。
次に、ステップ140で、ECU50は、急減速初期にスロットル弁21より上流の吸気通路3に残留したEGRガスを含有する吸気量(減速初期における残留EGRガス含有吸気量)egrinを急減速直前におけるエンジン負荷KL1に応じて算出する。この残留EGRガス含有吸気量egrinは、急減速初期にスロットル弁21より上流の吸気通路3に残留するEGRガスの量(残留EGRガス量)の代用量に相当する。ECU50は、この残留EGRガス含有吸気量egrinを、例えば、図4に示すようなマップを参照することにより求めることができる。このマップでは、急減速直前のエンジン負荷KL1に対する残留EGRガス含有吸気量egrinの関係が予め設定されている。図4からわかるように、EGRオフ(EGRを実行しない)となる場合には、破線で示すように、残留EGRガス含有吸気量egrinが、急減速直前におけるエンジン負荷KL1の大きさにかかわらず「0」となる。これに対し、EGRオン(EGR実行)となる場合には、図4に太線で示すように、残留EGRガス含有吸気量egrinが、所定値A以上の値となる。ここで、過給が行われないエンジン負荷KL1の領域(非過給域)では、残留EGRガス含有吸気量egrinが、所定値Aで一定となる。過給が行われるエンジン負荷KL1の領域(過給域)では、残留EGRガス含有吸気量egrinが、エンジン負荷KL1の増加に伴い所定値Aから直線的に増加する。
次に、ステップ150で、ECU50は、EGRガス残留フラグXegrinを「1」に設定する。このフラグXegrinは、エンジン1の減速後にスロットル弁21より上流の吸気通路3にEGRガスが残留する場合に「1」に、EGRガスが残留しない場合に「0」に設定されるようになっている。
次に、ECU50は、ステップ160で、EGRオン許可フラグXegronを「0」に設定し、その後、処理をステップ100へ戻す。このフラグXegronは、エンジン1の減速後にスロットル弁21より上流の吸気通路3にEGRガスが残留する場合に、EGRオンを禁止するために「0」に、EGRガスが残留しない場合に、EGRオンを許可するために「1」に設定されるようになっている。
図5に、エンジン1の急減速後に電子スロットル装置14(スロットル弁21)より上流の吸気通路3に残留するEGRガスを含む吸気量(減速後における残留EGRガス含有吸気量)egrin(i)を算出するための処理内容の一例をフローチャートにより示す。この残留EGRガス含有吸気量egrin(i)は、減速後における残留EGRガス量の代用量に相当するものである。
処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ200で、ECU50は、EGRガス残留フラグXegrinが「1」であるか否か、すなわち、EGRガスが残留するか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、そのまま処理を一旦終了し、処理をステップ200へ戻す。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ201へ移行する。
ステップ201で、ECU50は、既に算出されている減速初期における残留EGRガス含有吸気量egrinを取り込む。
次に、ステップ202で、ECU50は、減速初期における残留EGRガス含有吸気量egrinを、減速後における残留EGRガス含有吸気量egrin(i)として設定する。
次に、ステップ203で、ECU50は、EGRオン許可フラグXegronが「1」であるか否か、すなわち、EGRオン許可であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ210へ移行する。一方、この判断結果が肯定となる場合は、ECU50は、処理をステップ204へ移行する。
ステップ203から移行してステップ210では、ECU50は、残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が所定値A以下であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をそのままステップ204へ移行する。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、ステップ211で、EGRオン許可フラグXegronを「1」に設定した後、処理をステップ204へ移行する。
ステップ203、ステップ210又はステップ211から移行してステップ204では、ECU50は、今回の残留EGRガス含有吸気量egrin(i)を前回の残留EGRガス含有吸気量egrin(i-1)として設定する。
次に、ステップ205で、ECU50は、回転速度センサ52及びスロットルセンサ23の検出値に基づき、エンジン回転速度NE及びスロットル開度TAを取り込む。
次に、ステップ206で、ECU50は、エンジン回転速度NE及びスロットル開度TAに応じてスロットル弁通過吸気量gataを算出する。ECU50は、このスロットル弁通過吸気量gataを、例えば、図6に示すマップを参照することにより求めることができる。このマップは、エンジン回転速度NE及びスロットル開度TAの値に対するスロットル弁通過吸気量gataの値が予め設定されている。例えば、図6からわかるように、スロットル開度TAが「3°」となる場合、スロットル弁通過吸気量gataは、エンジン回転速度NEの増加に対して極めて緩やかに増加する。これに対し、スロットル開度TAが「24°」となる場合、スロットル弁通過吸気量gataは、エンジン回転速度NEの増加に対して極めて急激に増加する。
次に、ステップ207で、ECU50は、前回の残留EGRガス含有吸気量egrin(i-1)からスロットル弁通過吸気量gataを減算することにより、今回の新たな残留EGRガス含有吸気量egrin(i)を算出する。すなわち、ECU50は、エンジン1の運転に伴って減少してゆく残留EGRガス含有吸気量egrin(i)を算出するのである。
次に、ステップ208で、ECU50は、今回の減速後における残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が「0」以下であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ203へ移行し、ステップ203〜ステップ208、ステップ210及びステップ211の処理を繰り返す。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、ステップ209で、EGRガス残留フラグXegrinを「0」に設定した後、処理をステップ200へ戻す。
上記制御によれば、エンジン1の急減速後にエンジン1が加速された場合は、スロットル弁21より上流の吸気通路3に残留する残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が算出され、その残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が所定値A以下となるまでEGRの実行が禁止され(Xegron=0)、所定値A以下となったときにEGRの実行を許可(Xegron=1)するようになっている。すなわち、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行する場合に残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が所定値A以下となるまでEGRの再開を遅延させるようになっている。
次に、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときのEGRオン開始制御について説明する。図7に、このEGRオン開始制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ300で、ECU50は、吸気圧センサ51、回転速度センサ52及び水温センサ53の検出値に基づき、エンジン回転速度NE、エンジン負荷KL及び冷却水温THW等をそれぞれ取り込む。ここで、ECU50は、エンジン負荷KLを、エンジン回転速度NEと吸気圧PMに基づいて求めることができる。
次に、ステップ310で、ECU50は、EGRオン条件が成立したか否かを判断する。すなわち、ECU50は、エンジン1の運転状態がEGRを実行できる条件であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ350へ移行する。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ320へ移行する。
ステップ310から移行してステップ350では、ECU50は、EGR弁18の目標開度Tegrを「0」に設定した後、処理をステップ340へ移行する。
一方、ステップ310から移行してステップ320では、ECU50は、EGRオン許可フラグXegronが「1」であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、上記と同様にステップ350の処理を実行する。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ330へ移行する。
ステップ330では、ECU50は、エンジン回転速度NE、エンジン負荷KL及び冷却水温THW等に応じたEGR弁18の目標開度Tegrを算出する。ECU50は、この目標開度Tegrを、所定のマップを参照することにより求めることができる。
そして、ステップ330又はステップ350から移行してステップ340では、ECU50は、目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御した後、処理をステップ300へ戻す。
上記EGRオン開始制御によれば、スロットル弁21より上流の吸気通路3にEGRガスが残留している間は、EGRオン許可フラグXegronが「0」となり、EGRオン条件が成立していてもEGRオンを許可することなく、EGR弁18の目標開度Tegrが強制的に「0」に設定される。これにより、EGRオンタイミングが遅延されるようになっている。
上記した各種制御によれば、ECU50は、エンジン1の減速運転時に、EGR弁18が閉弁したときのスロットル弁21より上流の吸気通路3に残留するEGRガスの量(残留EGRガス量)の代用量に相当する残留EGRガス含有吸気量egrinを減速運転直前の運転状態に基づき算出すると共に、その後に減少する残留EGRガス含有吸気量egrin(i)を算出し、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するとき、エンジン1のトルクダウンを防止するために、残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が所定値Aに減少するまでEGR弁18の開弁を遅延させるようにしている。
ここで、図8に上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。図8において、エンジン1が定常運転のときに、同図(d)に示すように、時刻t1からスロットル弁21の開度(スロットル開度TA)が減少すると、すなわち、エンジン1が減速すると、EGR弁18も所定の開度から減少して全閉となる。これに伴い、図8(b)に示すように吸気量Gaが減少し、同図(c)に示すように点火時期が遅角され、同図(a)に示すようにエンジン1のトルクが低下する。このとき、図8(e),(f)に示すように、EGR通路17の出口17a及び燃焼室16それぞれのEGR率Pegrは所定の一定値を維持する。
その後、図8(d)に示すように、時刻t2から時刻t3にかけてスロットル弁21の開度が増加すると、すなわち、エンジン1が加速すると、同図(b)に示すように吸気量Gaが増加し、同時(c)に示すように点火時期が進角され、同図(a)に示すようにエンジン1のトルクが上昇する。このとき、図8(d)に示すように、EGR弁18の開度は、時刻t2より遅れて時刻t3で増加し始める。すなわち、EGR弁18の開弁が遅延される。このため、図8(e)に太線で示すように、エンジン1の加速時にEGR通路17の出口17aにおけるEGR率Pegrが上昇することがなく(従前は同図(e)に2点鎖線で示すように増加していた。)、その結果、同図(f)に太線で示すように、エンジン1の加速完了時に燃焼室16におけるEGR率Pegrが上昇することがない(従前は同図(f)に2点鎖線で示すように増加していた。)。
以上説明したこの実施形態の過給機付きエンジンの制御装置によれば、EGR通路17の入口17bがタービン9より下流の排気通路5に接続され、EGR通路17の出口17aがコンプレッサ8より上流の吸気通路3に接続されることから、吸気通路3に設けられるスロットル弁21が閉弁されるエンジン1の減速運転時には、EGR通路17から吸気通路3へ流れ出たEGRガスが、スロットル弁21より上流の吸気通路3に残留することがある。また、エンジン1の加速運転時又は定常運転時には、エンジン1の運転状態に基づきEGR弁18がECU50により開弁制御され、エンジン1の停止時又は減速運転時には、EGR弁18がECU50により閉弁制御される。このため、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときに、スロットル弁21が開弁され、EGR弁18が単に開弁制御されるだけでは、吸気通路3へ新たに流れ出るEGRガスと、吸気通路3に残留していたEGRガスとが燃焼室16へ供給されることとなり、残留EGRガスの分だけEGRガスが過剰に燃焼室16へ供給されることとなる。
そこで、この実施形態では、エンジン1の減速運転時に、EGR弁18が閉弁したときのスロットル弁21より上流の吸気通路3における残留EGRガス含有吸気量egrinが、減速運転直前のエンジン1の運転状態に基づきECU50により算出されると共に、その後に減少する残留EGRガス含有吸気量egrin(i)がECU50により算出される。そして、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときには、エンジン1のトルクダウンを防止するために、残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が所定値Aに減少するまでEGR弁18の開弁がECU50により遅延される。従って、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときには、吸気通路3に残留していたEGRガスがある程度減少してから、新たなEGRガスがEGR通路17から吸気通路3へ流れ出ることになり、EGRガスが過剰に燃焼室16へ供給されることがない。このため、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行し、EGR弁18を開いてEGRを再開する場合に、吸気通路3に残留するEGRガスの影響によるEGR率の変動を抑えることができ、その残留EGRガスの状態に応じてエンジン1のトルク変動(出力変動)を抑えることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの制御装置を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に説明する各実施形態において前記第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
この実施形態では、エンジン1の急減速後に電子スロットル装置14(スロットル弁21)より上流の吸気通路3に残留するEGRガスを含む吸気量(減速後における残留EGRガス含有吸気量)egrin(i)を算出するための処理内容の点で第1実施形態と異なる。図9に、この処理内容の一例をフローチャートにより示す。図9のフローチャートでは、ステップ200〜ステップ209及びステップ211の処理の点で図5のフローチャートと共通し、ステップ220の処理の点で図5のフローチャートと異なる。
この実施形態では、ステップ203から移行してステップ220で、ECU50は、読み込まれた残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が「0」以下であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をそのままステップ230へ移行する。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、ステップ211で、EGRオン許可フラグXegronを「1」に設定した後、処理をステップ204へ移行する。
上記した制御によれば、エンジン1の急減速後にエンジン1が加速された場合は、スロットル弁21より上流の吸気通路3に残留する残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が算出され、その残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が「0」以下となるまでEGRの実行が禁止され(Xegron=0)、残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が「0」以下となったときにEGRの実行を許可(Xegron=1)するようになっている。すなわち、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するとき、残留EGRガス含有吸気量egrin(i)がなくなるまでEGRの再開を遅延させるようになっている。
従って、この実施形態でも、前記第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
<第3実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの制御装置を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態で、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときに、電子スロットル装置14(スロットル弁21)より上流の吸気通路3にEGRガスが残留している状態からEGRが再開されることがある。その場合、残留EGRガスの分だけ燃焼室16のEGR率Pegrが過剰となり、エンジン1にトルクダウンが起きるおそれがある。そこで、この実施形態では、そのトルクダウンを防止するために、エンジン1の出力を調節するための出力調節手段を制御するようになっている。この実施形態では、出力調節手段として、点火プラグ29とイグナイタ30より構成される点火装置が使用される。そして、ECU50は、エンジン1のトルクダウンを防止するために、点火装置による点火時期を所定の目標点火時期AOPよりも進角側に制御する点火時期制御を実行するようになっている。図10に、この点火時期制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ500で、ECU50は、EGRガス残留フラグXegrinが「1」であるか否か、すなわち、スロットル弁21より上流の吸気通路3にEGRガスが残留するか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ540へ移行する。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ501へ移行する。
ステップ500から移行してステップ540では、EGRガスが残留していないことから、ECU50は、EGRオフ時(EGRを実行しないとき)の通常の目標点火時期AOPを算出する。すなわち、ECU50は、基本値abaseに進角値aegrを加算することにより通常の目標点火時期AOPを算出する。
次に、ステップ541で、ECU50は、進角補正フラグXegraopbを「0」に設定する。このフラグXegraopbは、EGR率Pegrが過剰なために、目標点火時期AOPを進角補正するときに「1」に、進角補正をしないときに「0」に設定するようになっている。
次に、ステップ542で、ECU50は、遅角補正フラグXegraoprを「0」に設定する。このフラグXegraoprは、過少なEGRのために目標点火時期AOPを遅角補正するときに「1」に、遅角補正をしないときに「0」に設定するようになっている。
その後、ステップ515で、ECU50は、目標点火時期AOPに基づき点火装置を制御する。すなわち、ECU50は、目標点火時期AOPに基づきイグナイタ30を駆動して点火プラグ29を制御することにより、燃焼室16における混合気の点火時期を制御する。この場合、EGR率が過少でもなく過剰でもないことから、点火時期は進角補正も遅角補正もされないこととなる。
一方、ステップ500から移行してステップ501では、ECU50は、前回算出された減速後における残留EGRガス含有吸気量egrin(i-1)を取り込む。
次に、ステップ502で、ECU50は、回転速度センサ52及びスロットルセンサ23の検出値に基づきエンジン回転速度NEとスロットル開度TAを取り込む。
次に、ステップ503で、ECU50は、エンジン回転速度NEとスロットル開度TAに応じてスロットル弁通過吸気量gataを算出する。ECU50は、例えば、図6に示すマップを参照することにより、このスロットル弁通過吸気量gataを算出することができる。
次に、ステップ504で、ECU50は、エンジン1の減速後における今回の残留EGRガス含有吸気量egrin(i)を算出する。すなわち、ECU50は、前回の残留EGRガス含有吸気量egrin(i-1)からスロットル弁通過吸気量gataを減算することにより、今回の残留EGRガス含有吸気量egrin(i)を求める。
次に、ステップ505で、ECU50は、EGR開始フラグXEGRSが「0」であるか否かを判断する。このフラグXEGRSは、EGRが開始されたときに「1」に、EGRが停止しているときに「0」に設定されるものである。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ510へジャンプする。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ506へ移行する。
ステップ506で、ECU50は、EGRがオンか否か、すなわち、EGRが実行されているか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ520へ移行する。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ507へ移行する。
ステップ506から移行してステップ520では、ECU50は、EGRオフであることからEGR開始フラグXEGRSを「0」に設定する。
次に、ステップ521で、ECU50は、EGRオフ時の目標点火時期AOPを算出する。すなわち、ECU50は、基本値abaseを目標点火時期AOPとして算出する。
次に、ECU50は、ステップ522で、進角補正フラグXegraopbを「0」に設定し、ステップ523で、遅角補正フラグXegraoprを「0」に設定する。
その後、ステップ515で、ECU50は、目標点火時期AOPに基づき点火装置を制御する。この場合、EGR率Pegrが過少でもなく過剰でもないことから、点火時期は進角補正も遅角補正もされないこととなる。
一方、ステップ506から移行してステップ507では、ECU50は、EGRを開始したことから、EGR開始フラグXEGRS及びEGRガス残留フラグXegrinをそれぞれ「1」に設定する。
次に、ステップ508で、ECU50は、今回求められた減速後における残留EGRガス含有吸気量egrin(i)が所定値A以上であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、吸気中のEGRガス含有量が少ないことから、ECU50は、処理をステップ540へ移行し、上記と同様にステップ540〜542,515の処理を実行する。一方、この判断結果が肯定となる場合は、ECU50は、処理をステップ509へ移行する。
ステップ509で、ECU50は、今回求められた残留EGRガス含有吸気量egrin(i)を、EGR開始時の残留EGRガス含有吸気量EGRin(i)として記憶する。
次に、ステップ505又はステップ509から移行してステップ510で、ECU50は、EGR開始後のEGRガスを含有したスロットル弁通過吸気量egronin(i)を求める。すなわち、ECU50は、前回算出されたスロットル弁通過吸気量egronin(i-1)にスロットル弁通過吸気量gataを加算することにより今回のEGR開始後のEGRガスを含有したスロットル弁通過吸気量egronin(i)を算出する。ここで、前回のスロットル弁通過吸気量egronin(i-1)の初期値は「0」である。
次に、ステップ511で、ECU50は、EGR開始後のEGRガスを含有したスロットル弁通過吸気量egronin(i)が所定値A以上であるか否かを判断する。ここで、所定値Aは、例えば、スロットル弁21より上流の吸気通路3の空間容量に相当する。この判断結果が否定となる場合、EGR通路17の出口17aより上流の吸気通路3へ吹き返されたEGRガスがスロットル弁21に未だ到達していないものとして、ECU50は、処理をステップ540へ移行し、上記と同様にステップ540〜542,515の処理を実行する。一方、この判断結果が肯定となる場合、上記した吸気通路3へ吹き返されたEGRガスがスロットル弁21に到達したものとして、ECU50は、処理をステップ512へ移行する。
ステップ512で、ECU50は、EGR開始後のEGRガスを含有したスロットル弁通過吸気量egronin(i)がEGR開始時の残留EGRガス含有吸気量EGRinよりも少ないか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、残留EGRガスを含有した吸気量が少ないことから、ECU50は、処理をステップ540へ移行し、上記と同様にステップ540〜542,515の処理を実行する。一方、この判断結果が肯定となる場合、残留EGRガスを含有した吸気量が少なくないことから、ECU50は、処理をステップ513へ移行する。
ステップ513で、ECU50は、進角補正した目標点火時期AOPを算出する。すなわち、ECU50は、進角値aegrに所定の補正係数Cを乗算した結果を基本値abaseに加算することにより、目標点火時期AOPを算出する。
次に、ステップ514で、ECU50は、進角補正フラグXegraopbを「1」に設定する。
そして、ステップ515で、ECU50は、目標点火時期AOPに基づき点火装置を制御した後、処理をステップ500へ戻す。この場合、EGR率が過剰であることから、点火時期を進角補正することになる。
上記した点火時期制御によれば、ECU50は、エンジン1の減速運転時に、EGR弁18が閉弁したときのスロットル弁21より上流の吸気通路3に残留するEGRガスの量の代用量に相当する残留EGRガス含有吸気量egrinを減速運転直前のエンジン1の運転状態に基づき算出すると共に、その後に減少する残留EGRガス含有吸気量egrin(i)を算出し、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときに、エンジン1のトルクダウンを防止するために、EGR弁18が開弁してから残留EGRガス含有吸気量egrin(i)がなくなるまで出力調整手段である点火装置を制御する。すなわち、ECU50は、点火装置による点火時期を所定の目標点火時期AOPよりも進角側に制御するようにしている。
ここで、図11に上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。図11において、エンジン1の定常運転状態において、同図(d)に示すように、時刻t1からスロットル弁21の開度(スロットル開度TA)が減少すると、すなわち、エンジン1が減速すると、EGR弁18も所定の開度から減少して全閉となる。これに伴い、図11(b)に示すように吸気量Gaが減少し、同図(c)に示すように点火時期が遅角され、同図(a)に示すようにエンジン1のトルクが低下する。このとき、図11(e),(f)に示すように、EGR通路17の出口17a及び燃焼室16それぞれのEGR率Pegrは所定の一定値を維持する。
その後、図11(d)に示すように、時刻t2から時刻t3にかけて、スロットル弁21の開度が増加すると、すなわち、エンジン1が加速すると、EGR弁18が開弁して開度が増加し、同図(b)に示すように吸気量Gaが増加し、同図(c)に示すように点火時期が進角され、同図(a)に示すようにエンジン1のトルクが上昇する。このとき、図11(e)に示すように、EGR通路17の出口17aのEGR率Pegrが一旦急増する。
その後、図11(d)に示すように、時刻t3から時刻t4にかけて、スロットル弁21及びEGR弁18の開度がそれぞれ一定となるときに、同図(f)に示すように、燃焼室16のEGR率Pegrが遅れて一旦急増し、同図(b)に示すように、EGRガスを含まない吸気量Gaが一旦減少する。このとき、図11(c)に太線で示すように、点火時期は、通常の目標点火時期(2点鎖線で示す。)よりも進角されるので、同図(a)に太線で示すように、エンジン1のトルクは、2点鎖線で示すように落ち込むことなく増加することになる。
以上説明したこの実施形態の過給機付きエンジンの制御装置によれば、エンジン1の減速運転時には、EGR弁18が閉弁したときのスロットル弁21より上流の吸気通路3における残留EGRガス量の代用量に相当する残留EGRガス含有吸気量egrinが減速運転直前のエンジン1の運転状態に基づきECU50により算出されると共に、その後に減少する残留EGRガス含有吸気量egrin(i)がECU50により算出される。そして、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときには、エンジン1のトルクダウンを防止するために、EGR弁18が開弁してから残留EGRガス含有吸気量egrin(i)がなくなるまで点火装置がECU50により制御される。すなわち、イグナイタ30が制御されて点火プラグ29による点火時期が所定の目標点火時期AOPよりも進角側に補正される。従って、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときには、過剰なEGRガスに対応して進角補正された目標点火時期AOPによってエンジン1の出力が調整され、エンジン1のトルクダウンが抑えられる。この結果、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行し、EGR弁18を開いてEGRを再開する場合に、吸気通路3に残留するEGRガスの影響によるEGR率の変動を抑えることができ、その残留EGRガスの状態に応じてエンジン1のトルク変動(出力変動)を抑えることができる。
ここで、エンジン1の過給域でEGRが行われているときにエンジン1が減速運転となったときは、スロットル弁21より上流の吸気通路3に残留するEGRガスが、EGR通路17の出口17aより上流の吸気通路3へ吹き返されることがある。この吹き返されたEGRガスが、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときスロットル弁21に到達すると、燃焼室16へ取り込まれる吸気中のEGR率Pegrが過剰となり、エンジン1のトルクが低下するおそれがある。そこで、この実施形態では、EGR通路17の出口17aより上流へ吹き返された残留EGRガスがスロットル弁21に到達するタイミングで目標点火時期AOPを進角補正することで、エンジン1の出力低下、すなわちトルクダウンを抑えることができるようになっている。
<第4実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの制御装置を具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図12に、この実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置(EGR装置)を含むエンジンシステムを概略構成図により示す。この実施形態では、以下の点で図1に示すエンジンシステムと構成が異なる。すなわち、この実施形態では、電子スロットル装置14(スロットル弁21)より下流のサージタンク3aへ新気を導入する新気導入通路41が設けられる。新気導入通路41は、その入口41aが、エアクリーナ6より下流であってEGR通路17の出口17aより上流の吸気通路3に接続され、その出口41bがスロットル弁21より下流の吸気通路3に接続される。新気導入通路41の途中には、本発明の新気流量調節弁に相当する電動式の新気制御弁42が設けられる。新気制御弁42は、ソレノイドにより弁体を駆動することで弁座に対する弁体の開度を制御するように構成される。この新気制御弁42の開度が制御されることにより、新気導入通路41からサージタンク3aへ流れる新気流量が調節される。
この実施形態では、前記第3実施形態と異なり、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときに、エンジン1のトルクダウンを防止するために、出力調節手段として、新気導入通路41と新気制御弁42から構成される新気導入装置が使用されるようになっている。そして、ECU50は、エンジン1のトルクダウンを防止するためにサージタンク3aへ新気を導入するように新気制御弁42を制御するようになっている。図13に、その新気導入制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図13のフローチャートでは、図10のステップ500〜ステップ512及びステップ520と同様の処理が設けられ、図10のステップ513〜ステップ515に代えてステップ550〜ステップ552の処理が設けられ、図10のステップ521〜ステップ523の処理に代えてステップ560〜ステップ562の処理が設けられ、更に、図10のステップ540〜ステップ542の処理に代えてステップ570〜ステップ572の処理が設けられる点で図10のフローチャートと異なる。
ステップ500〜ステップ512の処理を実行し、ステップ512から移行してステップ550では、ECU50は、増量補正した新気導入量iscstepを算出する。すなわち、ECU50は、所定の増量値Eを基本値iscbaseに加算することにより、増量補正した新気導入量iscstepを算出する。
次に、ステップ551で、ECU50は、増量補正フラグXegriscuを「1」に設定する。この増量補正フラグXegriscuは、新気導入量iscstepを増量補正したときに「1」に設定し、増量補正しないときに「0」に設定するようになっている。
そして、ステップ552で、ECU50は、新気導入量iscstepに基づき新気導入弁42を制御した後、処理をステップ500へ戻す。これにより、増量補正された新気が、新気導入通路41からサージタンク3aへ導入され、サージタンク3aへ流れてきた過剰なEGRガスが新気により適度に希釈されることになる。
一方、ステップ506から移行してステップ520では、ECU50は、EGRオフであることからEGR開始フラグXEGRSを「0」に設定する。
次に、ステップ560で、ECU50は、EGRオフ時の新気導入量iscstepを算出する。すなわち、ECU50は、基本値iscbaseを新気導入量iscstepとして算出する。
次に、ECU50は、ステップ561で、増量補正フラグXegriscuを「0」に設定し、ステップ562で、減量補正フラグXegriscdを「0」に設定する。ここで、この減量補正フラグXegriscdは、新気導入量iscstepを減量補正したときに「1」に設定し、減量補正しないときに「0」に設定するようになっている。
その後、ステップ552で、ECU50は、新気導入量iscstepに基づき新気導入弁42を制御した後、処理をステップ500へ戻す。これにより、増量補正されない通常量の新気が新気導入通路41からサージタンク3aへ導入され、EGRガスが新気により適度に希釈されることになる。
一方、ステップ500、ステップ508、ステップ511又はステップ512から移行してステップ570では、EGRオフ時の新気導入量iscstepを算出する。すなわち、ECU50は、基本値iscbaseを新気導入量iscstepとして算出する。
次に、ECU50は、ステップ571で、増量補正フラグXegriscuを「0」に設定し、ステップ572で、減量補正フラグXegriscdを「0」に設定する。
その後、ステップ552で、ECU50は、新気導入量iscstepに基づき新気導入弁42を制御した後、処理をステップ500へ戻る。これにより、増量補正されない通常量の新気が新気導入通路41からサージタンク3aへ導入され、吸気に合流することになる。
上記した新気導入制御によれば、ECU50は、エンジン1の減速運転時に、EGR弁18が閉弁したときのスロットル弁21より上流の吸気通路3における残留EGRガス量の代用量に相当する残留EGRガス含有吸気量egrinを減速運転直前のエンジン1の運転状態に基づき算出すると共に、その後に減少する残留EGRガス含有吸気量egrin(i)を算出し、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときに、エンジン1のトルクダウンを防止するために、EGR弁18が開弁してから残留EGRガス含有吸気量egrin(i)がなくなるまでサージタンク3aへ新気を多目に導入するように新気導入装置を制御するようにしている。
以上説明したこの実施形態の過給機付きエンジンの制御装置によれば、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときには、エンジン1のトルクダウンを防止するために、EGR弁18が開弁してから残留EGRガス含有吸気量egrin(i)がなくなるまで新気制御弁42がECU50により制御される。すなわち、増量補正された新気をサージタンク3aへ導入するように新気制御弁42が開弁制御される。従って、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行するときには、過剰なEGRガスに対応して増量補正された新気導入量iscstepによってエンジン1の出力が調整されてエンジン1のトルクダウンが抑えられる。このため、エンジン1が減速運転後に加速運転へ移行し、EGR弁18を開いてEGRを再開する場合に、吸気通路3に残留するEGRガスの影響によるEGR率の変動を抑えることができ、その残留EGRガスの状態に応じてエンジン1のトルク変動(出力変動)を抑えることができる。
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することができる。
例えば、前記第3実施形態では、出力調節手段として点火装置を使用してエンジン1のトルクダウンを防止するようにし、前記第4実施形態では、出力調節手段として新気導入装置を使用してエンジン1のトルクダウンを防止するようにした。これに対し、出力調節手段として点火装置と新気導入装置の両方を使用してエンジンのトルクダウンを防止するようにすることもできる。