<第1実施形態>
以下、本発明におけるエンジンの制御装置を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図1に、この実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置(EGR装置)を含むガソリンエンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムは、レシプロタイプのエンジン1を備える。エンジン1の吸気ポート2には、吸気通路3が接続され、排気ポート4には、排気通路5が接続される。吸気通路3の入口には、エアクリーナ6が設けられる。エアクリーナ6より下流の吸気通路3には、排気通路5との間に、吸気通路3における吸気を昇圧させるための過給機7が設けられる。
過給機7は、吸気通路3に配置されたコンプレッサ8と、排気通路5に配置されたタービン9と、コンプレッサ8とタービン9を一体回転可能に連結する回転軸10とを含む。過給機7は、排気通路5を流れる排気によりタービン9を回転させて回転軸10を介してコンプレッサ8を一体的に回転させることにより、吸気通路3における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
過給機7に隣接して排気通路5には、タービン9を迂回する排気バイパス通路11が設けられる。この排気バイパス通路11には、ウェイストゲートバルブ12が設けられる。ウェイストゲートバルブ12により排気バイパス通路11を流れる排気が調節されることにより、タービン9に供給される排気流量が調節され、タービン9及びコンプレッサ8の回転速度が調節され、過給機7による過給圧が調節されるようになっている。
吸気通路3において、過給機7のコンプレッサ8とエンジン1との間には、インタークーラ13が設けられる。このインタークーラ13は、コンプレッサ8により昇圧されて高温となった吸気を適温に冷却するためのものである。インタークーラ13とエンジン1との間の吸気通路3には、サージタンク3aが設けられる。また、インタークーラ13より下流であってサージタンク3aより上流の吸気通路3には、本発明の吸気量調節弁の一例に相当し、電動式のスロットル弁である電子スロットル装置14が設けられる。電子スロットル装置14は、吸気通路3に配置されるバタフライ形のスロットル弁21と、そのスロットル弁21を開閉駆動するためのステップモータ22と、スロットル弁21の開度(スロットル開度)TAを検出するためのスロットルセンサ23とを備える。電子スロットル装置14は、運転者によるアクセルペダル26の操作に応じてスロットル弁21がステップモータ22により開閉駆動されることにより、スロットル弁21の開度が調節されるように構成される。電子スロットル装置14の構成として、例えば、特開2011−252482号公報の図1及び図2に記載される「スロットル装置」の基本構成を採用することができる。また、タービン9より下流の排気通路5には、排気を浄化するための排気触媒としての触媒コンバータ15が設けられる。
エンジン1には、燃焼室16に燃料を噴射供給するための、本発明の燃料供給手段の一例に相当するインジェクタ25が設けられる。インジェクタ25には、燃料タンク(図示略)から燃料が供給されるようになっている。また、エンジン1には、各気筒に対応して点火プラグ29が設けられる。各点火プラグ29は、イグナイタ30から出力される高電圧を受けて点火動作する。各点火プラグ29の点火時期は、イグナイタ30による高電圧の出力タイミングにより決定される。点火プラグ29とイグナイタ30により点火装置が構成される。
この実施形態において、大量EGRを実現するためのEGR装置は、低圧ループ式であって、エンジン1の燃焼室16から排気通路5へ排出される排気の一部をEGRガスとして吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させる排気還流通路(EGR通路)17と、EGR通路17におけるEGRガスの流れを調節するためにEGR通路17に設けられた排気還流弁(EGR弁)18とを備える。EGR通路17は、触媒コンバータ15より下流の排気通路5と、コンプレッサ8より上流の吸気通路3との間に設けられる。すなわち、排気通路5を流れる排気の一部をEGRガスとしてEGR通路17を通じて吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させるために、EGR通路17の出口17aは、コンプレッサ8より上流の吸気通路3に接続される。また、EGR通路17の入口17bは、触媒コンバータ15より下流の排気通路5に接続される。
EGR通路17には、同通路17を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ20が設けられる。この実施形態で、EGR弁18は、EGRクーラ20より下流のEGR通路17に配置される。
図2に、EGR通路17の一部であってEGR弁18が設けられる部分を拡大して断面図により示す。図1、図2に示すように、EGR弁18は、ポペット弁として、かつ、電動弁として構成される。すなわち、EGR弁18は、DCモータ31により駆動される弁体32を備える。弁体32は、略円錐形状をなし、EGR通路17に設けられた弁座33に着座可能に設けられる。DCモータ31は直進的に往復運動(ストローク運動)可能に構成された出力軸34を備え、その出力軸34の先端に弁体32が固定される。出力軸34は軸受35を介してEGR通路17を構成するハウジングに支持される。そして、DCモータ31の出力軸34をストローク運動させることにより、弁座33に対する弁体32の開度が調節されるようになっている。EGR弁18の出力軸34は、弁体32が弁座33に着座する全閉状態から、弁体32が軸受35に当接する全開状態までの間で所定のストロークL1だけストローク運動可能に設けられる。この実施形態では、大量EGRを実現するために、従前の技術に比べて弁座33の開口面積が拡大されている。それに合わせて、弁体32が大型化されている。このEGR弁18の構成として、例えば、特開2010−275941号公報の図1に記載された「EGRバルブ」の基本構成を採用することができる。
この実施形態では、エンジン1の運転状態に応じて燃料噴射制御、点火時期制御、吸気量制御及びEGR制御等をそれぞれ実行するために、インジェクタ25、イグナイタ30、電子スロットル装置14のステップモータ22及びEGR弁18のDCモータ31がそれぞれエンジン1の運転状態に応じて電子制御装置(ECU)50により制御されるようになっている。ECU50は、中央処理装置(CPU)と、所定の制御プログラム等を予め記憶したり、CPUの演算結果等を一時的に記憶したりする各種メモリと、これら各部と接続される外部入力回路及び外部出力回路とを備える。ECU50は、本発明の制御手段の一例に相当する。外部出力回路には、イグナイタ30、インジェクタ25、ステップモータ22及びDCモータ31が接続される。外部入力回路には、スロットルセンサ23をはじめエンジン1の運転状態を検出するための本発明の運転状態検出手段の一例に相当する各種センサ等27,51〜56が接続され、各種エンジン信号が入力されるようになっている。
ここで、各種センサとして、スロットルセンサ23の他に、アクセルセンサ27、吸気圧センサ51、回転速度センサ52、水温センサ53、エアフローメータ54及び空燃比センサ55が設けられる。アクセルセンサ27は、アクセルペダル26の操作量であるアクセル開度ACCを検出する。吸気圧センサ51は、サージタンク3aにおける吸気圧PMを検出する。すなわち、吸気圧センサ51は、スロットル弁21より下流のサージタンク3aにおける吸気圧PMを検出するようになっている。回転速度センサ52は、エンジン1のクランクシャフト1aの回転角(クランク角)を検出するとともに、そのクランク角の変化をエンジン1の回転速度(エンジン回転速度)NEとして検出する。水温センサ53は、エンジン1の冷却水温THWを検出する。エアフローメータ54は、エアクリーナ6の直下流の吸気通路3を流れる吸気量Gaを検出する。空燃比センサ55は、触媒コンバータ15の直上流の排気通路5に設けられ、排気中の空燃比A/Fを検出する。運転席に設けられたイグニションスイッチ56は、エンジン1を始動停止させるために運転者により操作され、その操作信号を出力する。
この実施形態で、ECU50は、エンジン1の全運転領域において、エンジン1の運転状態に応じてEGR制御を実行するためにEGR弁18を制御するようになっている。また、ECU50は、通常は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時に検出される運転状態に基づきEGR弁18を開弁制御し、エンジン1の停止時、アイドル運転時又は減速運転時にEGR弁18を閉弁制御するようになっている。
この実施形態で、ECU50は、運転者の要求に応じてエンジン1を運転するために、アクセル開度ACCに基づいて電子スロットル装置14を制御するようになっている。また、ECU50は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時にアクセル開度ACCに基づき電子スロットル装置14を開弁制御し、エンジン1の停止時又は減速運転時に電子スロットル装置14を閉弁制御するようになっている。これにより、スロットル弁21は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時には開弁され、エンジン1の停止時又は減速運転時には閉弁されるようになっている。
ここで、この実施形態における低圧ループ式のEGR装置では、EGR通路17の出口17aからスロットル弁21までの吸気通路3の経路が比較的長いことから、その出口17aから吸気通路3へ流れ出たEGRガスがスロットル弁21を通過するまでに多少のタイムラグが生じる。また、エンジン1の停止時には、電子スロットル装置14が閉弁制御されることでスロットル弁21が閉弁され、スロットル弁21より上流の吸気通路3にEGRガスが滞留又は残留することになる。従って、そのように吸気通路3にEGRガスを残留させた状態からスロットル弁21を開いてエンジン1を再始動させようとすると、残留したEGRガスが燃焼室16に取り込まれて混合気の燃焼性が悪化し、エンジン1の始動性が悪化するおそれがある。そこで、この実施形態では、エンジン1の再始動時におけるエンジン始動性の悪化を防止するために、ECU50が以下のような残留EGRガス処理制御を実行するようになっている。
図3に、残留EGRガス処理制御の一つであるエンジン停止制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ100で、ECU50は、EGRカットであるか否か、すなわちEGRガスの還流が遮断されたか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、ステップ180で、エンジン1の停止を禁止した後、処理をステップ100へ戻す。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ110へ移行する。
ステップ110で、ECU50は、エンジン1の停止要求が有るか否かを判断する。ECU50は、この停止要求をイグニションスイッチ56からの操作信号に基づいて判断することができる。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ180へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ120へ移行する。
ステップ120で、ECU50は、EGRカット後の積算吸気量TGaegroffを取り込む。ここで、ECU50は、EGRカット後に吸気量Gaを逐次加算することにより積算吸気量TGaegroffを算出するようになっている。
次に、ステップ130で、ECU50は、エンジン1の停止を実行する。すなわち、ECU50は、電子スロットル装置14を閉弁制御することでスロットル弁21を一旦閉弁させ、インジェクタ25からの燃料噴射を停止させ、イグナイタ30を制御することで点火プラグ29による火花点火を停止させる。なお、このエンジン1の停止実行と共にEGR弁18が閉弁制御されることになる。
次に、ステップ140で、ECU50は、積算吸気量TGaegroffが所定値A1より少ないか否かを判断する。この判断は、EGRカット後に吸気通路3に残留するEGRガス(残留EGRガス)の量を大まかに推定するものであり、所定値A1は、スロットル弁21より上流の吸気通路3の中の容積の値に相当する。この判断結果が否定となる場合、残留EGRガスが全て掃気されたものとして、ECU50は処理をステップ100へ戻す。この判断結果が肯定となる場合、残留EGRガスが全て掃気されていないものとして、ECU50は処理をステップ150へ移行する。
ステップ150で、ECU50は、エンジン1の停止に合わせてスロットル弁21を強制的に開弁制御する。すなわち、エンジン1の停止により一旦閉弁させたスロットル弁21を、電子スロットル装置14を強制的に開制御することにより開弁させる。これにより、スロットル弁21より上流の吸気通路3に残留していたEGRガスが、スロットル弁21を介して燃焼室16へ取り込まれ、掃気される。
次に、ステップ160で、ECU50は、エンジン1の停止が完了するのを待って、処理をステップ170へ移行する。ECU50は、例えば、エンジン回転速度NEに基づいてエンジン1の停止完了を判断することができる。
そして、ステップ170で、ECU50は、スロットル弁21の開弁制御を解除し、電子スロットル装置14を閉弁制御することで、スロットル弁21を通常の閉弁位置へ戻す。その後、ECU50は処理をステップ100へ戻す。
以上説明したこの実施形態におけるエンジンの制御装置によれば、過給機7を備えたエンジン1において、低圧ループ式のEGR装置は、EGR通路17の入口17bがタービン9より下流の排気通路5に接続され、EGR通路17の出口17aがコンプレッサ8より上流の吸気通路3に接続される。そのため、エンジン1の停止時に、電子スロットル装置14(スロットル弁21)とEGR弁18がECU50により閉弁制御されることにより、その直前にEGR通路18から吸気通路3へ流れ出たEGRガスが、スロットル弁21より上流の吸気通路3に残留することがある。そのため、エンジン1の停止後の再始動時に、ECU50によりスロットル弁21が開弁制御され、インジェクタ25により燃焼室16へ燃料が供給されることにより、吸気通路3に残留していたEGRガスが吸気通路3を介し吸気と共に燃焼室16に取り込まれ、その残留EGRガスの分だけ燃焼室16における空気と燃料との空燃比が過剰リッチになる傾向がある。そこで、この実施形態では、エンジン1の停止時に、エンジン1の停止が完了するまでの間で、ECU50によりスロットル弁21が強制的に開弁制御されるので、スロットル弁21より上流に残留するEGRガスが掃気される。このため、エンジン1の停止時に吸気通路3にEGRガスが残留することがあっても、次にエンジン1が再始動するときには、その残留EGRガスが燃焼室16に取り込まれることがなく、残留EGRガスによるエンジン1の始動性悪化を防止することができる。
この実施形態では、エンジン1の停止時に、EGRカット後に吸気通路3を流れた積算吸気量TGaegroffに基づき、吸気通路3に残留するEGRガスの有無が、ECU50により判断される。そして、その残留EGRガスが無いと判断された場合は、スロットル弁21の強制的な開弁制御が行われない。このため、エンジン1の停止時に、残留EGRガスが無いにもかかわらず、スロットル弁21が無駄に開弁制御されることがなく、電子スロットル装置14の制御の無駄を除くことができる。
<第2実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの制御装置を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に説明する各実施形態において前記第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
この実施形態では、エンジンシステムとエンジン停止制御の処理内容の点で第1実施形態と構成が異なる。図4に、この実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置を含むガソリンエンジンシステムを概略構成図により示す。図4に示すように、この実施形態では、スロットル弁21より下流の吸気通路3へ新気を導入するための新気導入通路41と、新気導入通路41を流れる新気を調節するための新気導入弁42が更に設けられる点で図1のエンジンシステムと異なる。新気導入通路41は、その入口41aがEGR通路17の出口17aより上流の吸気通路3に接続され、その出口41bがスロットル弁21より下流であってサージタンク3aより上流の吸気通路3に接続される。新気導入弁42は、電動弁であって、同通路41を流れる新気を調節するためにECU50により制御されるようになっている。
図5に、この実施形態におけるエンジン停止制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。図5のフローチャートでは、ステップ150の後にステップ155の処理が、ステップ170の後にステップ175の処理がそれぞれ設けられた点で図3のフローチャートと異なる。
すなわち、ECU50は、ステップ150で、エンジン1の停止に合わせてスロットル弁21を強制的に開弁制御した後、ステップ155で、新気導入弁42を閉弁制御する。これにより、スロットル弁21が開弁されるときに、スロットル弁21より下流の吸気通路3への新気の導入が遮断される。
また、ECU50は、ステップ170で、スロットル弁21の閉弁制御を解除し、電子スロットル装置14を開弁制御することで、スロットル弁21を通常の閉弁位置へ戻した後、ステップ175で、新気導入弁42の閉弁制御を解除し、新気導入弁42を制御することで、新気導入弁42を通常の開弁位置へ戻し、処理をステップ100へ戻す。
以上説明したこの実施形態におけるエンジンの制御装置によれば、エンジン1の停止時に、その停止が完了するまでの間で、ECU50により、スロットル弁21が強制的に開弁制御されると共に新気導入弁42が閉弁制御される。また、エンジン1の停止が完了したときに、ECU50により、スロットル弁21の閉弁制御と新気導入弁42の開弁制御が解除される。このため、エンジン1の停止時に吸気通路3にEGRガスが残留することがあっても、次にエンジン1が再始動するときには、その残留EGRガスが燃焼室16に取り込まれることがないので、残留EGRガスによるエンジン1の始動性悪化を防止することができる。
加えて、この実施形態では、新気導入通路41を備えたガソリンエンジンシステムにおいて、エンジン1の停止時に、吸気通路3に残留するEGRガスが掃気されるときは、新気導入弁42が閉弁制御されるので、新気が燃焼室16に導入されることがない。このため、エンジン1の停止時に、吸気通路3から掃気される残留EGRガスの流量が新気により少なくなることを防止することができ、吸気通路3からの残留EGRガスの掃気遅れを防止することができる。この実施形態におけるその他の作用効果は、第1実施形態のそれと同じである。
<第3実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの制御装置を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、残留EGRガス処理制御の内容の点で前記第1実施形態と構成が異なる。特に、この実施形態の残留EGRガス処理制御は、エンジン1の停止時と再始動時の両方で残留EGRガス処理制御を実行するものであり、その点でエンジン1の停止時でのみ残留EGRガス処理制御を実行する前記各実施形態と構成が異なる。この実施形態では、図1のエンジンシステムが提供される。図6に、エンジン1の停止時に実行される残留EGRガス含有吸気量算出の処理内容の一例をフローチャートにより示す。図7に、エンジン1の始動時に実行される始動時燃料噴射制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
エンジン1の停止に際し、処理が図6に示すルーチンへ移行すると、ステップ200で、ECU50は、EGRカットであるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、ステップ250で、エンジン1の運転を継続し、処理をステップ200へ戻す。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ210へ移行する。
ステップ210で、ECU50は、EGRカット後の積算吸気量TGaegroffを取り込む。ここで、ECU50は、EGRカット後に吸気量Gaを逐次加算することによりこの積算吸気量TGaegroffを求めることができる。
次に、ステップ220で、ECU50は、エンジン1の停止要求が有るか否かを判断する。ECU50は、この停止要求をイグニションスイッチ56からの操作信号に基づいて判断することができる。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ250へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ230へ移行する。
ステップ230で、ECU50は、エンジン1が停止した後にスロットル弁21より上流の吸気通路3に残留するEGRガスを含有した吸気量、すなわち「残留EGRガス含有吸気量」Gaegrを求める。ここで、ECU50は、所定値A1からEGRカット後の積算吸気量TGaegroffを減算することにより、この残留EGRガス含有吸気量Gaegrを求めることができる。この残留EGRガス含有吸気量Gaegrは、残留EGRガス量の目安となる値である。
次に、ステップ240で、ECU50は、エンジン1の停止を実行し、処理をステップ200へ戻す。
上記制御によれば、ECU50は、エンジン1の停止に際してEGRカット後に、スロットル弁21より上流の吸気通路3における残留EGRガス含有吸気量Gaegrを求めるようになっている。
一方、エンジン1の始動に際し、処理が図7に示すルーチンへ移行すると、ステップ300で、ECU50は、エンジン1の始動要求が有るか否かを判断する。ECU50は、この始動要求をイグニションスイッチ56からの操作信号に基づいて判断することができる。この判断結果が否定となる場合、ECU50はステップ370でエンジン1の停止を継続し、処理をステップ300へ戻す。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ310へ移行する。
ステップ310で、ECU50は、エンジン1の停止後に求められた残留EGRガス含有吸気量Gaegrを取り込む。
次に、ステップ320で、ECU50は、残留EGRガス含有吸気量Gaegrに応じた始動時噴射補正係数Kstauを求める。ECU50は、例えば、図8に示すようなマップを参照することにより、この始動時噴射補正係数Kstauを求めることができる。このマップでは、残留EGRガス含有吸気量Gaegrが大きくなるに連れて、始動時噴射補正係数Kstauが「1.0」から下限値まで直線的に減少するように設定されている。
次に、ステップ330で、ECU50は、水温センサ53により検出される冷却水温THWを、始動時冷却水温THWsとして取り込む。
次に、ステップ340で、ECU50は、始動時冷却水温THWsに応じた基本始動時噴射量taubsを求める。ECU50は、例えば、図9に示すようなマップを参照することにより、この基本始動時噴射量taubsを求めることができる。このマップでは、始動時冷却水温THWsが高くなるに連れて、基本始動時噴射量taubsが上限値から下限値まで曲線的に減少するように設定されている。
次に、ステップ350で、ECU50は、最終始時動噴射量TAUsを求める。ECU50は、基本始動時噴射量taubsに始動時噴射補正係数Kstauを乗算することにより、この最終始時動噴射量TAUsを求めることができる。従って、残留EGRガス量が多くなる場合は、それに応じて始動時噴射補正係数Kstauが「1.0」より小さくなることから、最終始時動噴射量TAUsは、残留EGRガスがない場合に比べて少なくなる。これは、エンジン1の再始動時に、残留EGRガスの分だけ燃焼室16に取り込まれる空気が減少するので、始動時に空燃比が過剰リッチになるのを避けるために、最終始動時噴射量TAUsを減量するようにしたものである。
そして、ステップ360で、ECU50は、始動時噴射制御を実行する。すなわち、ECU50は、最終始動時噴射量TAUsに基づきインジェクタ25を制御する。その後、ECU50は、処理をステップ300へ戻す。
上記制御によれば、ECU50は、エンジン1の再始動時に、エンジン1の前回の停止時にスロットル弁21より上流の吸気通路3に残留したEGRガスが燃焼室16に取り込まれることに対応して燃焼室16に供給される空気と燃料との空燃比を中庸に調整するために、インジェクタ25の制御を補正するようになっている。
以上説明したこの実施形態のエンジンの制御装置によれば、エンジン1の再始動時に、ECU50により、スロットル弁21が開弁制御されると共に燃焼室16へ燃料を供給するためにインジェクタ25が制御される。このとき、エンジン1の前回の停止時に吸気通路3に残留していたEGRガスが燃焼室16に取り込まれることに対応して燃焼室16に供給される空気と燃料との空燃比を中庸に調整するために、ECU50により、インジェクタ25の制御が補正される。すなわち、インジェクタ25により燃焼室16に供給される燃料量が補正される。従って、エンジン1の再始動時に、吸気通路3に残留していたEGRガスが燃焼室16に取り込まれても、燃焼室16の空燃比が過剰リッチになることがない。このため、燃焼室16における混合気の燃焼を安定させることができ、エンジン1の始動性の悪化を防止することができる。つまり、エンジン1の停止時に吸気通路3にEGRガスが残留することがあっても、エンジン1の再始動時には、その残留EGRガスによるエンジン1の始動性の悪化を防止することができる。
この実施形態では、エンジンの停止時に、エアフローメータ54により検出される吸気量Gaに基づき、EGRカット後の積算吸気量TGaegroffが、ECU50により求められる。また、その積算吸気量TGaegroffに基づき、スロットル弁21より上流の吸気通路3に残留するEGRガスの量が残留EGRガス含有吸気量GaegrとしてECU50により求められる。そして、エンジン1の停止後の再始動時には、ECU50により、求められた残留EGRガス含有吸気量Gaegrに基づいてインジェクタ25の制御が補正され、インジェクタ25により燃焼室16へ供給される燃料量が補正される。従って、エンジン1の再始動時には、燃焼室16の空燃比が、残留EGRガス量の違いに応じて好適に調整される。このため、燃焼室16の空燃比を精度良く中庸に調整することができ、混合気の燃焼安定性を向上させることができ、エンジン1の回転変動と排気エミッションの悪化を抑えることができる。
<第4実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの制御装置を具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、残留EGRガス処理制御の内容の点で前記第3実施形態と構成が異なる。特に、この実施形態では、第3実施形態における始動時燃料噴射制御の代わりに、エンジン1の再始動に際してスロットル開度TAを制御するようになっている。図10に、始動時に実行される始動時制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。この実施形態では、第3実施形態と同様に、エンジン1の停止時に、図6に示す残留EGRガス含有吸気量算出処理が実行されるようになっている。
エンジン1の始動に際し、処理が図10に示すルーチンへ移行すると、ステップ400で、ECU50は、エンジン1の始動要求が有るか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50はステップ480でエンジン1の停止を継続し、処理をステップ400へ戻す。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ410へ移行する。
ステップ410で、ECU50は、エンジン1の停止後に求められた残留EGRガス含有吸気量Gaegrを取り込む。
次に、ステップ420で、ECU50は、残留EGRガス含有吸気量Gaegrに応じた始動時スロットル開度補正係数Kstataを求める。ECU50は、例えば、図11に示すようなマップを参照することにより、始動時スロットル補正係数Kstataを求めることができる。このマップでは、残留EGRガス含有吸気量Gaegrが大きくなるほど、始動時スロットル補正係数Kstataが「1.0」から上限値まで直線的に増加するように設定されている。
次に、ステップ430で、ECU50は、水温センサ53により検出される冷却水温THWを始動時冷却水温THWsとして取り込む。
次に、ステップ440で、ECU50は、始動時冷却水温THWsに応じた基本始動時スロットル開度tatabsを求める。ECU50は、例えば、図12に示すようなマップを参照することにより、この基本始動時スロットル開度tatabsを求めることができる。このマップでは、始動時冷却水温THWsが高くなるに連れて、基本始動時スロットル開度tatabsが上限値から下限値まで曲線的に減少するように設定されている。
次に、ステップ450で、ECU50は、最終始時動スロットル開度TATAsを求める。ECU50は、基本始動時スロットル開度tatabsに始動時スロットル補正係数Kstataを乗算することにより、最終始動時スロットル開度TATAsを求めることができる。従って、残留EGRガス量が多くなる場合は、それに応じて始動時スロットル補正係数Kstataが「1.0」より大きくなることから、最終始動時スロットル開度TATAsは、残留EGRガスがない場合に比べて大きくなる。これは、エンジン1の再始動時に、残留EGRガスの分だけ燃焼室16に供給される空気が減少するので、再始動時に空燃比が過剰リッチになるのを避けるために、最終始動時スロットル開度TATAsを増大させるようにしている。
次に、ステップ460で、ECU50は、始動時スロットル制御を実行する。すなわち、ECU50は、最終始動時スロットル開度TATAsに基づき電子スロットル装置14の制御を補正する。
そして、ステップ470で、ECU50は、エンジン1の始動を実行する。すなわち、ECU50は、エンジン1を始動させるために、インジェクタ25や点火プラグ29を制御する。その後、ECU50は処理をステップ400へ戻す。
上記制御によれば、ECU50は、エンジン1の停止時に、検出される吸気量Gaに基づきスロットル弁21より上流の吸気通路3に残留するEGRガスの量を求め、エンジン1の停止後の再始動時に、求められた残留EGRガス量に基づいて電子スロットル装置14(スロットル弁21)の制御を補正するようになっている。
以上説明したこの実施形態のエンジンの制御装置によれば、エンジン1の再始動時に、ECU50により、スロットル弁21が開弁制御されると共に燃焼室16へ燃料を供給するためにインジェクタ25が制御される。このとき、エンジン1の前回の停止時に吸気通路3に残留していたEGRガスが燃焼室16に取り込まれることに対応して燃焼室16の空燃比を中庸に調整するために、ECU50により、電子スロットル装置14(スロットル弁21)の制御が補正される。すなわち、スロットル弁21の開度が補正されることで燃焼室16に供給される吸気量が補正される。従って、エンジン1の再始動時に、吸気通路3に残留していたEGRガスが燃焼室16に取り込まれても、燃焼室16の空燃比が過剰リッチになることがない。このため、燃焼室16における混合気の燃焼を安定させることができ、エンジン1の始動性の悪化を防止することができる。つまり、エンジン1の停止時に吸気通路3にEGRガスが残留することがあっても、エンジン1の再始動時には、その残留EGRガスによるエンジン1の始動性の悪化を防止することができる。
この実施形態では、エンジン1の停止時に、残留EGRガスが残留EGRガス含有吸気量GaegrとしてECU50により求められる。そして、エンジン1の停止後の再始動時には、ECU50により、求められた残留EGRガス含有吸気量Gaegrに基づいて電子スロットル装置14の制御が補正され、スロットル弁21の開度が補正されて燃焼室16へ供給される吸気量が補正される。従って、エンジン1の再始動時には、燃焼室16の空燃比が、残留EGRガス量の違いに応じて好適に調整される。このため、燃焼室16の空燃比を精度良く中庸に調整することができ、混合気の燃焼安定性を向上させることができ、エンジン1の回転変動と排気エミッションの悪化を抑えることができる。
<第5実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの制御装置を具体化した第5実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、エンジンシステムと残留EGRガス処理制御の内容の点で前記第4実施形態と構成が異なる。この実施形態では、図4に示すエンジンシステムが適用される。図13に、エンジン1の再始動時に実行される始動時制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。図13のフローチャートは、図10のフローチャートのステップ420とステップ430との間にステップ425が設けられ、ステップ440とステップ450との間にステップ445が設けられ、ステップ450とステップ460との間にステップ455が設けられ、ステップ460とステップ470との間にステップ465が設けられる点で図10のフローチャートと異なる。この実施形態でも、第3実施形態と同様
に、エンジン1の停止時に、図6に示す残留EGRガス含有吸気量算出の処理が実行されるようになっている。
エンジン1の始動に際し、処理が図13に示すルーチンへ移行すると、ECU50は、ステップ400〜ステップ410の処理を実行した後、ステップ420で、残留EGRガス含有吸気量Gaegrに応じた始動時スロットル補正係数Kstataを求める。この実施形態では、ECU50は、例えば、図14に示すようなマップを参照することにより、この始動時スロットル補正係数Kstataを求めることができる。このマップでは、残留EGRガス含有吸気量Gaegrが大きくなるに連れて、始動時スロットル補正係数Kstataが上限値の「1.0」から下限値へ向けて直線的に減少するように設定される。
次に、ステップ425で、ECU50は、残留EGRガス含有吸気量Gaegrに応じた始動時新気導入補正値Kstacavを求める。ECU50は、例えば、図15に示すようなマップを参照することにより、この始動時新気導入補正値Kstacavを求めることができる。このマップでは、残留EGRガス含有吸気量Gaegrが大きくなるに連れて、始動時新気導入補正値Kstacavが下限値の「0」から上限値の「1.0」へ向けて直線的に増加するように設定される。
その後、ECU50は、ステップ430の処理を実行した後、ステップ440で、始動時冷却水温THWsに応じた基本始動時スロットル開度tatabsを求める。ECU50は、例えば、図16に示すようなマップを参照することにより、この基本始動時スロットル開度tatabsを求めることができる。このマップでは、始動時冷却水温THWsが高くなるに連れて、基本始動時スロットル開度tatabsが上限値から下限値へ向けて曲線的に減少するように設定される。
次に、ステップ445で、ECU50は、始動時冷却水温THWsに応じた基本始動時新気導入開度tacavbsを求める。ECU50は、例えば、図17に示すようなマップを参照することにより、この基本始動時新気導入開度tacavbsを求めることができる。このマップでは、始動時冷却水温THWsが高くなるに連れて、基本始動時新気導入開度tacavbsが「0」と上限値との間をステップ状に増加するように設定される。
次に、ステップ450で、ECU50は、最終始動時スロットル開度TATAsを求める。ECU50は、基本始動時スロットル開度tatabsに始動時スロットル補正係数Kstataを乗算することにより、この最終始動時スロットル開度TATAsを求めることができる。従って、残留EGRガス量が多くなる場合は、それに応じて始動時スロットル補正係数Kstataが「1.0」から下限値へ向けて小さくなることから、最終始動時スロットル開度TATAsは、残留EGRガスがない場合に比べて小さくなる。これは、後述するように、残留EGRガス含有吸気量Gaegrが大きくなる場合に、燃焼室16への新気の導入量が増えることに合わせたものであり、エンジン1のアイドル回転速度が上昇するのを抑制するために、燃焼室16への吸気の取り込みを抑えたものである。
次に、ステップ455で、ECU50は、最終始時動新気導入開度TACAVsを求める。ECU50は、基本始動時新気導入開度tacavbsに始動時新気導入補正値Kstacavを加算することにより、この最終始動時新気導入開度TACAVsを求めることができる。従って、残留EGRガス量が多くなる場合は、それに応じて始動時新気導入補正値Kstataが「0」から上限値へ向けて大きくなることから、最終始動時新気導入開度TACAVsは、残留EGRガスがない場合に比べて大きくなる。これは、エンジン1の始動時に、残留EGRガスの分だけ燃焼室16に取り込まれる空気が減少するので、始動時に空燃比が過剰リッチになるのを避けるために、最終始動時新気導入開度TACAVsを増大させて新気の導入量を増やすようにしたものである。
そして、ステップ460で、ECU50は、始動時スロットル制御を実行する。すなわち、ECU50は、最終始動時スロットル開度TATAsに基づき電子スロットル装置14を制御してスロットル弁21を開く。ここで、ECU50は、残留EGRガス含有吸気量Gaegrが多くなるほどスロットル弁21を閉じぎみに制御する。閉じぎみとは、スロットル弁21を少ない開度で開くことを意味する。
次に、ステップ465で、ECU50は、始動時新気導入制御を実行する。すなわち、ECU50は、最終始動時新気導入開度TACAVsに基づき新気導入弁42を制御する。ここで、ECU50は、残留EGRガス含有吸気量Gaegrが多いほど新気導入弁42を大きく開くように制御する。その後、ECU50はステップ470の処理を実行した後、処理をステップ400へ戻す。
上記制御によれば、ECU50は、エンジン1の再始動に、求められた残留EGRガス量に基づいて電子スロットル装置14及び新気導入弁42の制御を補正するようになっている。ここで、ECU50は、残留EGRガス量が多くなるにつれてスロットル弁21を閉じぎみに開弁し、燃焼室16に供給される吸気量を減らすようにしている。これに合わせて、ECU50は、残留EGRガス量が多くなる新気導入弁42を大きく開弁し、燃焼室16に導入される新気量を増やすようにしている。
図18に、エンジン1の始動が完了したときの電子スロットル装置14と新気導入弁42の制御の処理内容をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ500で、ECU50は、エンジン1の再始動が完了したか否かを判断する。ECU50は、この判断をエンジン回転速度NEに基づいて行うことができる。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップステップ560へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ510へ移行する。
ステップ560では、ECU50は、前述した始動時スロットル制御及び始動時新気導入制御を継続させ、処理をステップ500へ戻す。
一方、ステップ510では、ECU50は、エンジン1の始動後の積算吸気量TGastaを取り込む。ここで、ECU50は、エンジン1の始動後に吸気量Gaを逐次加算することによりこの積算吸気量TGastaを算出することができる。
次に、ステップ520で、ECU50は、エンジン1の始動後の残留EGRガス含有吸気量Gaegrstaを求める。ECU50は、エンジン1の停止時に求められる残留EGRガス含有吸気量Gaegrから始動後の積算吸気量TGastaを減算することにより、この始動後の残留EGRガス含有吸気量Gaegrstaを求めることができる。
次に、ステップ530で、ECU50は始動後の残留EGRガス含有吸気量Gaegrstaが負の所定値B1よりも小さいか否かを判断する。ここで、所定値B1は任意の値である。この判断結果が否定となる場合、エンジン1の始動前にスロットル弁21より上流の吸気通路3に残留していたEGRガスが残存するものとして、ECU50は処理をステップ560へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、吸気通路3に残留していたEGRガスが残存していないものとして、ECU50は処理をステップ540へ移行する。
ステップ540で、ECU50は、前述した始動時スロットル制御及び始動時新気導入制御を解除する。
そして、ステップ550で、ECU50は、始動時新気導入補正値Kstacavと始動時スロットル補正係数Kstataを、残留EGRガス含有吸気量Gaegrが徐々にゼロになる方向へ戻し、処理をステップ500へ戻す。
上記制御によれば、ECU50は、エンジン1の再始動完了後に、残留EGRガスの全てが燃焼室16へ取り込まれたと、検出される吸気量Gaに基づき判断したとき、電子スロットル装置14及び新気導入弁42の制御の補正を解除するようになっている。
以上説明したようにこの実施形態のエンジンの制御装置によれは、新気導入通路41と新気導入弁42を更に備えたエンジンシステムにおいて、エンジン1の再始動時に、ECU50により、求められた残留EGRガス含有吸気量Gaegrに基づいて電子スロットル装置14及び新気導入弁42の制御が補正されるので、燃焼室16に取り込まれる吸気量と新気量が好適に調節される。従って、エンジン1の再始動時に、吸気通路3に残留するEGRガスが燃焼室16に取り込まれても、吸気と新気が燃焼室16に供給されることで燃焼室16の空燃比が過剰リッチになることがない。このため、エンジン1の停止時に吸気通路3にEGRガスが残留することがあっても、エンジン1の再始動時にその残留EGRガスによるエンジン1の始動性の悪化を防止することができる。
加えて、この実施形態では、エンジン1の再始動完了後には、残留EGRガスの全てが燃焼室16へ取り込まれたことが、ECU50により、検出される吸気量Gaに基づいて判断されたときに、ECU50により、電子スロットル装置14及び新気導入弁42の制御の補正が解除される。従って、吸気と新気が必要以上に燃焼室16へ供給されることがない。このため、エンジン1の再始動完了後における通常の空燃比制御等の制御性を確保することができる。
また、この実施形態では、エンジン1の再始動時に、燃焼室16の空燃比を中庸に調整するために、求められた残留EGRガス含有吸気量Gaegrに応じて新気導入弁42が開弁されるので、燃焼室16に導入される新気量が、残留EGRガス量の違いに応じて好適に調整される。このため、燃焼室16の空燃比を精度良く調整することができ、混合気の燃焼安定性を向上させることができ、エンジン1の回転変動と排気エミッションの悪化を抑えることができる。また、エンジン1の再始動時には、求められた残留EGRガス含有吸気量Gaegrに応じて電子スロットル装置14が閉じぎみに開弁されるので、新気の導入に合わせて燃焼室16に供給される吸気量が好適に抑えられる。このため、エンジン1の再始動時におけるアイドル回転速度の上昇を抑えることができる。
<第6実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの制御装置を具体化した第6実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、残留EGRガス処理制御の内容の点で前記第6実施形態と構成が異なる。図19に、エンジン1の再始動時に実行される始動時制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ600で、ECU50は、エンジン1の始動要求が有るか否かを判断する。この判断結果が否定である場合、ECU50は、ステップ790で、エンジン1の停止を継続し、処理をステップ600へ戻す。この判断結果が肯定である場合、ECU50は処理をステップ610へ移行する。
ステップ610で、ECU50は、エンジン1の始動が未完了であるか否かを判断する。この判断結果が肯定である場合、ECU50は処理をステップ620へ移行する。この判断結果が否定である場合、ECU50は処理をステップ700へ移行する。
ステップ620では、ECU50は、冷却水温THWを始動時冷却水温THWsとして取り込む。
次に、ステップ630で、ECU50は、始動時冷却水温THWsに応じた基本始動時新気導入開度tacavbsを求める。ここで、ECU50は、例えば、図20に示すマップを参照することにより、この基本始動時新気導入開度tacavbsを求めることができる。
次に、ステップ640で、ECU50は、始動時冷却水温THWsに応じた基本始動時スロットル開度tatabsを求める。ここで、ECU50は、例えば、図21に示すマップを参照することにより、この基本始動時スロットル開度tatabsを求めることができる。
次に、ステップ650で、ECU50は、基本始動時新気導入開度tacavbsに所定のα補正係数Kstacavn(α)を乗算することにより、最終始動時新気導入開度TAVACsを求める。ここで、所定のα補正係数Kstacavn(α)は、例えば、図22に示すように回転変動ΔNEに対する始動時新気導入補正値Kstacavnの関係を定めたマップにおける特定の値を意味する。すなわち、図22において、回転変動ΔNEが相対的に大きいαとなるときの補正値Kstacavnの値である「1.0」を当てはめることができる。
次に、ステップ660で、ECU50は、基本始動時スロットル開度tatabsに所定のα補正係数Kstatan(α)を乗算することにより、最終始動時スロットル開度TATAsを求める。ここで、所定のα補正係数Kstatan(α)は、例えば、図23に示すように回転変動ΔNEに対する始動時スロットル補正回数Kstatanの関係を定めたマップにおける特定の値を意味する。すなわち、図23において、回転変動ΔNEが相対的に大きいαとなるときの補正係数Kstatanの値に相とする。
そして、ステップ670で、ECU50は、最終始動時新気導入開度TACAVsに基づき新気導入弁42を開弁することにより、始動時新気導入制御を実行する。
次に、ステップ680で、ECU50は、最終始動時スロットル開度TATAsに基づき電子スロットル装置14のスロットル弁21を開弁することにより、始動時スロットル制御を実行する。
そして、ステップ690で、ECU50は、エンジン1の始動を実行し、処理をステップ600へ戻す。すなわち、ECU50は、エンジン1を始動させるために、インジェクタ25や点火プラグ29を制御する。
一方、エンジン1の始動が完了すると、ステップ700で、ECU50は、エンジン1の始動後の回転変動ΔNEを求める。ECU50は、エンジン回転速度NEの単位時間当たりの変化からこの回転変動ΔNEを求めることができる。この回転変動ΔNEは、燃焼室16における混合気の燃焼変動を反映したものである。
次に、ステップ710で、ECU50は、回転変動ΔNEに応じた始動時新気導入補正係数Kstacavnを求める。ECU50は、例えば、図22に示すようなマップを参照することにより、始動時新気導入補正係数Kstacavnを求めることができる。このマップでは、回転変動ΔNEが大きくなるに連れて、始動時新気導入補正係数Kstacavnが下限値の「0」から上限値の「1.0」へ向けて直線的に増加するように設定される。
次に、ステップ720で、ECU50は、回転変動ΔNEに応じた始動時スロットル補正数Kstatanを求める。ECU50は、例えば、図23に示すようなマップを参照することにより、始動時スロットル補正係数Kstatanを求めることができる。このマップでは、回転変動ΔNEが大きくなるに連れて、始動時スロットル補正係数Kstatanが上限値の「1.0」から下限値へ向けて直線的に減少するように設定される。
次に、ステップ730で、ECU50は、始動時新気導入補正係数Kstacavnをなまし処理する。すなわち、この補正係数Kstacavnを徐々に減少させることにより、なまし処理後の始動時新気導入補正係数Kstacavn(i)を求める。
次に、ステップ740で、ECU50は、始動時スロットル補正係数Kstatanをなまし処理する。すなわち、この補正係数Kstatanを徐々に減少させることにより、なまし処理後の始動時スロットル補正係数Kstatan(i)を求める。
次に、ステップ750で、ECU50は、最終新気導入開度TACAVを求める。ECU50は、基本始動時新気導入開度tacavbsになまし処理後の始動時新気導入補正係数Kstacav(i)を乗算することにより、この最終新気導入開度TACAVを求めることができる。従って、回転変動ΔNEが大きくなる場合には、それに応じて始動時新気導入補正値
Kstacavnが「0」から上限値へ向けて大きくなることから、最終新気導入開度TACA
Vは、残留EGRガスがない場合に比べて多くなる。これは、エンジン1の再始動時に、残留EGRガスの分だけ燃焼室16に導入される空気が減少するので、始動時に空燃比が過剰リッチになるのを避けるために、最終新気導入開度TACAVを増加させて新気の導入量を増やすようにしたものである。
次に、ステップ760で、ECU50は、最終スロットル開度TATAを求める。ECU50は、基本始動時スロットル開度tatabsになまし処理後の始動時スロットル補正係数Kstatan(i)を乗算することにより、この最終スロットル開度TATAを求めることができる。従って、回転変動ΔNEが大きくなる場合には、それに応じて始動時スロットル補正値Kstatanが「1.0」から下限値へ向けて小さくなることから、最終スロットル開度TATAは、残留EGRガスがない場合に比べて小さくなる。これは、上記のように回転変動ΔNEが大きくなる場合に、新気導入量が増えることに合わせたものであり、エンジン1のアイドル回転速度が上昇するのを抑制するために、燃焼室16への吸気の取り込みを抑えたものである。
次に、ステップ770で、ECU50は、求められた最終新気導入開度TACAVに基づき新気導入制御を実行する。すなわち、ECU50は、最終新気導入開度TACAVに基づき新気導入弁42の開弁制御を補正する。
次に、ステップ780で、ECU50は、最終スロットル開度TATAに基づきスロットル制御を実行する。すなわち、ECU50は、最終スロットル開度TACAVに基づきスロットル弁21を開弁する。その後、ECU50は処理をステップ600へ移行する。
以上説明したようにこの実施形態のエンジンの制御装置によれは、エンジン1の再始動時に、吸気S通路3に残留していたEGRガスの量の多少にかかわらず、ECU50により、電子スロットル装置14及び新気導入弁42の制御が補正され、燃焼室16に供給される吸気量と新気量が調節される。従って、エンジン1の再始動時に、残留EGRガス量の多少にかかわらず、燃焼室16に供給される吸気と新気が調整されて燃焼室16の空燃比が調整される。また、この実施形態では、エンジン1の再始動完了後には、ECU50により、検出される回転変動ΔNEに応じて、電子スロットル装置14及び新気導入弁42の制御の補正が減衰されるので、こてによってエンジン1の回転変動が滑らかに収束する。このため、エンジン1の停止時に吸気通路3にEGRガスが残留することがあっても、エンジン1の再始動時にその残留EGRガスによるエンジン1の始動性の悪化を防止することができる。
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもができる。
例えば、前記各実施形態では、本発明のエンジンの制御装置をガソリンエンジンシステムに具体化したが、ディーゼルエンジンに具体化することもできる。