JP2014139261A - ポリエステル組成物およびそれを用いてなるポリエステルフィルム、並びにそれらの製造方法 - Google Patents

ポリエステル組成物およびそれを用いてなるポリエステルフィルム、並びにそれらの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014139261A
JP2014139261A JP2013008069A JP2013008069A JP2014139261A JP 2014139261 A JP2014139261 A JP 2014139261A JP 2013008069 A JP2013008069 A JP 2013008069A JP 2013008069 A JP2013008069 A JP 2013008069A JP 2014139261 A JP2014139261 A JP 2014139261A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polyester composition
mol
polyester
content
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2013008069A
Other languages
English (en)
Inventor
Kentaro Nakatsuji
健太郎 仲辻
Masato Ushijima
正人 牛島
Tadamasa Suzuki
維允 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2013008069A priority Critical patent/JP2014139261A/ja
Publication of JP2014139261A publication Critical patent/JP2014139261A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)

Abstract

【課題】耐湿熱性と耐トラッキング性に優れるポリエステル組成物の提供。
【解決手段】下記(1)から(6)の要件を満たすポリエステル組成物。(1)カーボンブラックの含有量が0.1重量%以上0.5重量%未満。(2)Mn、Caの含有量の和が0.59mol/t以上11.15mol/t以下。(3)リン元素を含有し、かつ、アルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、Mn元素含有量(mol/t)とCa元素含有量(mol/t)の合計をM2(mol/t)、リン元素の含有量をP(mol/t)とするとき、式(i)および(ii)を満たす。(i)M=0.5×M1+M2(ii)0.8≦M/P≦2.0(4)固有粘度が0.65以上。(5)式(iii)の結晶化パラメーターΔTcgが45℃以上70℃以下。(iii)ΔTcg=Tc−Tg、Tc(℃)は冷結晶化温度、Tg(℃)はガラス転移温度。(6)トラッキング電圧が330V以上。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐湿熱性と隠蔽性、電気絶縁性に優れるポリエステル組成物およびそれを用いてなるポリエステルフィルムならびにそれらの製造方法に関する。
ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートなど)樹脂は機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械的特性、電気的特性などから、太陽電池バックシート、給湯器モーター用電気絶縁材料や、ハイブリッド車などに使用されるカーエアコン用モーターや駆動モーター用などの電気絶縁材料、磁気記録材料や、コンデンサ用材料、包装材料、建築材料、写真用途、グラフィック用途、感熱転写用途などの各種工業材料として使用されている。
これらの用途のうち、電気絶縁材料(例えば太陽電池用途など)では、電気的に絶縁する性能(電気絶縁性)が求められる。特に、太陽電池用途の中でも太陽電池バックシートでは、その中でも発電素子と外気を電気的に絶縁する高い電気絶縁性が求められる。また、太陽電池は、長期にわたり過酷な環境下(高温高湿条件下)で使用されることが多い。そのような条件下では、ポリエステル樹脂は加水分解により分子量の低下と結晶化度の増大による脆化が進行し、機械物性や電気絶縁性などが低下する。そのため、長期にわたり過酷な環境下で使用される場合、ポリエステル樹脂には電気絶縁耐久性、耐湿熱性の向上が求められている。
また、太陽電池は、意匠性の観点から、発電素子への配線などが外側から見えないことが好ましい。そのため、太陽電池バックシートには高い隠蔽性も必要とされている。一般的に、フィルムの隠蔽性を向上させるためにはポリエステルフィルムを黒色化することが有効であり、黒色顔料としてポリエステルにカーボンブラックを添加したポリエステルフィルムが考案されている(特許文献1、2、3、4)。
特開平1−98635号公報 特開2008−56871号公報 特開2011−119651号公報 国際公開第2012/055061号パンフレット
しかしながら、ポリエステルにカーボンブラックを添加すると、カーボンブラックが結晶化の核となり、ポリエステルの結晶化速度を速くするため、延伸が困難になるだけでなく、該ポリエステルを用いたフィルムを湿熱雰囲気下に置いた場合、フィルムの結晶化度増大の速度が速く、早期に脆化し、フィルムの耐湿熱性が低下するという問題がある。また、カーボンブラックは電気伝導度が高いため、カーボンブラックを添加することで電気絶縁性の指標である耐トラッキング性が悪化するという問題も発生する。トラッキングとは、固体の表面や内部に、電気的ストレスと汚染物質の両方の影響で、導電経路が形成されることに対する耐性を評価するものである。耐トラッキング性をあらわす指標の一つとしてトラッキング電圧がある。トラッキング電圧の測定方法については後述するが、トラッキング電圧が高いほどトラッキングを起こしにくく、電気絶縁性に優れることをあらわす。
特許文献1では、カーボンブラックを添加することによりトラッキング電圧が低くなる問題がある。特許文献2、3、4では、カーボンブラックを添加することによるフィルムの耐湿熱性低下、トラッキング電圧の低下が問題となる。
また、太陽電池バックシートに用いられるフィルムは、長期間にわたって発電素子と外気を電気的に絶縁する性能を満たすことが必要とされるが、特許文献1〜4のフィルムは、湿熱雰囲気下に置いた場合、トラッキング電圧が大幅に低下するという問題がある。
本発明の課題は、かかる従来技術を鑑み、耐湿熱性を低下させることなく、隠蔽性、電気絶縁性に優れるポリエステル組成物およびそれを用いてなるポリエステルフィルムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
[1]下記(1)から(6)の要件を満たすポリエステル組成物。
(1)前記ポリエステル組成物中のカーボンブラックの含有量が前記ポリエステル組成物全体に対して0.1重量%以上0.5重量%未満であること。
(2)Mn、Caから選ばれる1種類以上の金属元素を含有し、その含有量の和が前記ポリエステル組成物全体に対して0.59mol/t以上11.15mol/t以下であること。
(3)リン元素を含有し、かつ、ポリエステル組成物全体に対するアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、ポリエステル組成物全体に対するMn元素含有量(mol/t)とCa元素含有量(mol/t)の合計をM2(mol/t)、ポリエステル組成物全体に対するリン元素の含有量をP(mol/t)とするとき、下記式(i)式で求められるポリエステル組成物における金属含有量M(mol/t)と、前記リン元素の含有量P(mol/t)が、下記(ii)式を満たすこと。
(i) M=0.5×M1+M2
(ii)0.8≦M/P≦2.0
(4)ポリエステル組成物の固有粘度が0.65以上であること
(5)前記ポリエステル組成物の冷結晶化温度をTc(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)とするとき、下記式(iii)で求められる結晶化パラメーターΔTcgが45℃以上70℃以下であること
(iii)ΔTcg=Tc−Tg
(6)トラッキング電圧が330V以上であること
[2]前記カーボンブラックの平均粒径が0.1〜3.0μmである[1]に記載のポリエステル組成物。
[3]ポリエステル組成物の末端カルボキシル基量が15eq/t(equivalent/ton)以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のポリエステル組成物。
[4]前記ポリエステル組成物中のポリエステルが、カルボン酸基および/または水酸基を3つ以上有する構成成分を、前記ポリエステルの全構成成分に対して0.025mol%以上1.5mol%以下含有する[1]または[2]または〜[3]のいずれかに記載のポリエステル組成物。
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載のポリエステル組成物を用いてなる二軸配向ポリエステルフィルム。
[6]
2以上のカルボン酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するカルボン酸成分a1と、2以上の水酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するアルコール成分a2とを反応させて得られる[1]〜[4]のいずれかに記載のポリエステル組成物の製造方法であって、下記(7)〜(9)の工程をその順で含むポリエステル組成物の製造方法。
(7)前記カルボン酸成分a1と、前記アルコール成分a2に、酢酸Mnおよび/または酢酸Caを添加し、前記カルボン酸成分a1と前記アルコール成分a2を反応させエステル組成物α1を得る工程。
(8)エステル組成物α1に、リン酸またはリン酸アルカリ金属塩を添加した後、重合し、ポリエステル組成物αを得る工程。
(9)ポリエステル組成物αにカーボンブラックを添加せしめて、ポリエステル組成物βを得た後に、該ポリエステル組成物βを用いてポリエステル組成物を得る工程。
[7]
前記カルボン酸成分a1と前記アルコール成分a2の合計に対して、3以上のカルボン酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するカルボン酸成分a11と3以上の水酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するアルコール成分a21の合計が、0.025mol%以上1.5mol%以下である[6]に記載のポリエステル組成物の製造方法。
[8]
リン酸アルカリ金属塩をポリエステル組成物全体に対するアルカリ金属元素の含有量として1.3mol/t以上3.5mol/t以下添加する[6]または[7]に記載のポリエステル組成物の製造方法。
本発明によれば、長期に渡り高い機械特性及び耐トラッキング性を保持するポリエステル組成物やポリエステルフィルムを提供することができる。また、このフィルムを用いることで、太陽電池バックシート用途として好適なフィルムを提供できる。
トラッキング電圧を測定する際のノズルと電極と測定試料の位置関係を模式的に示す図である。
本発明のポリエステル組成物は、ポリエステルの含有率が、ポリエステル組成物全体に対して85重量%以上であることが好ましい。さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。ポリエステルの含有率を上記の範囲とすることによって、ポリエステル組成物の機械特性を向上させることができる。
本発明にて用いられるポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。
かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、芳香族ジオール類等のジオール、上述のジオールが複数個連なったものなどが例としてあげられるがこれらに限定されない。
また、本発明のポリエステルは、機械特性、結晶性、耐湿熱性の観点からテレフタル酸とエチレングリコールを主たる構成成分とするポリエステルであることが好ましい。テレフタル酸とエチレングリコールを主たる構成成分とするポリエステルとは、全ジカルボン酸構成成分中におけるテレフタル酸構成成分の割合が90mol%以上100mol%以下、かつ全ジオール構成成分中のエチレングリコール構成成分の割合が90mol%以上100mol%以下のポリエステルのことをあらわす。全ジカルボン酸構成成分中におけるテレフタル酸構成成分の割合が95mol%以上100mol%以下であり、かつ全ジオール構成成分中におけるエチレングリコール構成成分の割合が95mol%以上100mol%以下であることがより好ましい。全ジカルボン酸構成成分中におけるテレフタル酸構成成分の割合が90mol%に満たない、および/または全ジオール構成成分中のエチレングリコール構成成分の割合が90mol%に満たないと、機械特性が低下したり、結晶性が低下し耐湿熱性が低下する場合がある。
また、本発明のポリエステルは、機械特性、耐湿熱性を向上させる観点から、カルボン酸基および/または水酸基を3つ以上有する構成成分を、ポリエステルの全構成成分に対して0.025〜1.5mol%含有することが好ましい。カルボン酸基および/または水酸基を3つ以上有する構成成分を上記範囲含有すると、ポリエステルの分子鎖同士が架橋し、分子鎖の分子運動性が低下し、耐湿熱性が良好となる。カルボン酸基および/または水酸基を3つ以上有する構成成分としては、トリメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、ブタンテトラカルポン酸、長鎖脂肪族カルポン酸を3量体化したトリマー酸などの多価カルボン酸およびその無水物やエステル、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシヘキサンなどの多価アルコールを挙げることができる。
ポリエステル組成物の電気絶縁性は、ポリエステル組成物中のカーボンブラック含有量が高くなると、カーボンブラックの高い電気伝導度の影響を受けて電気絶縁性は低下する。一方、ポリエステル組成物中のカーボンブラックの含有量が少なくなると、ポリエステル組成物の隠蔽性は低下する。本発明のポリエステル組成物は、上記の相反する特性を有するポリエステル組成物である。本発明のポリエステル組成物は、ポリエステル組成物全体に対してカーボンブラックを0.1重量%以上0.5重量%未満含有する必要がある。カーボンブラックの含有量が0.1重量%に満たないと隠蔽性が十分でない。一方、カーボンブラック含有量が0.5重量%以上になると電気伝導度が高いカーボンブラックを含有することによってポリエステル組成物の電気絶縁性が下がり、耐トラッキング性が悪化する。また、カーボンブラックの含有量が0.5重量%以上になるとポリエステル組成物の結晶化速度が速くなり、耐湿熱性雰囲気下での結晶化による脆化が進行しやすく、耐湿熱性に劣る。特に、ポリエステル組成物の形状がフィルム状であるときは、カーボンブラックの含有量を上記の範囲内とせしめることが、耐湿熱性や耐トラッキング性の点で特に重要である。
本発明のポリエステル組成物に含有するカーボンブラックの平均粒径は、0.1〜3.0μmであると、耐トラッキング性と隠蔽性を良好とすることができるため好ましい。0.1μm未満以下の場合、粒子が細かすぎて十分な隠蔽性が得られないことがある。3.0μmを超えると、カーボンブラックの凝集が大きすぎて耐湿熱性、耐トラッキング性が低下する場合がある。カーボンブラックの平均粒径は0.3〜1.5μmであることが好ましい。本発明において、カーボンブラックの平均粒径とは、ポリエステル樹脂中に存在するカーボンブラックの一次粒子と、カーボンブラックの一次粒子が形成してなるストラクチャー(二次粒子)の大きさを円相当径にしたものをあらわす。平均粒径は、後述する測定方法により求められる。
本発明のポリエステル組成物は、後述する測定方法において測定されるトラッキング電圧が330V以上であることが必要である。トラッキング電圧が330V未満であると、電気絶縁部材として電気絶縁性、トラッキング性が不十分である。トラッキング電圧は、350V以上であるとより好ましく、355V以上であると特に好ましい。トラッキング電圧は高いほど、電気絶縁性が良好であり、上限は特に定められるものではないが、トラッキング電圧が1000Vより高いポリエステル組成物を作成するのは実質的に困難である。また、ポリエステル組成物を、例えば太陽電池用途に用いる場合、太陽電池は屋外で長期にわたって用いられるため、長期間高い温度や高い湿度でさらされた後も高いトラッキング性が維持されることが要求される。そのため、本発明のポリエステル組成物は、長期間高い温度や高い湿度でさらされた後も高いトラッキング性を有することが好ましい。本発明のポリエステル組成物は、後述する耐湿熱性試験後においても、処理前の80%以上のトラッキング電圧を有することが好ましい。
また、本発明のポリエステル組成物は、耐湿熱性向上の観点から、Mn、Caからなる群から選ばれる1種類以上の金属元素を含有する必要がある。本発明における金属元素とは、原子だけではなく、イオン状態でポリエステル組成物中に存在するものも含む。なお、一般的には金属元素はポリエステル組成物中ではイオン状態として存在する。
一般的に、湿熱雰囲気下におけるポリエステル組成物の劣化は、ポリエステル組成物中に含有される水分子による加水分解に起因する。この加水分解を抑制するためには、ポリエステル組成物中に存在する金属イオンによって水分子を安定化させることが効果的である。つまり、水分子を金属に水和せしめることが効果的である。この効果の指標として、金属イオンの水和エンタルピーと金属イオンの半径の積を用いることができる。特に、Mn、Caイオンはこの積が大きいため、より効果的に水分子を安定化させることが可能であり、その結果ポリエステル組成物の耐湿熱性を向上させることができる。Mn、Ca元素の合計の含有量が0.59mol/tに満たないと、水分子を安定化させる効果が充分でない。Mn、Ca元素の合計の含有量が11.15mol/tを超えると、湿熱雰囲気下でのポリエステル組成物に含有される金属元素を触媒とした加水分解反応が優位となり、耐湿熱性が低下する。
一方で、Mn、Ca元素はポリエステル組成物中でイオン状態であるため、導電性を持つカーボンブラックと電気的な相互作用を持つと考えられる。この相互作用により、該イオンの周囲にカーボンブラックが凝集する。カーボンブラックが凝集した結果、粗大な凝集粒子が形成され、該粗大粒子がポリエステルの結晶化を促進するとともに、トラッキング電圧の低下を引き起こす。
なお、ポリエステル組成物の結晶化のしやすさを示す指標として、ΔTcgがある。
ΔTcgとは、示差走査型熱量測定(DSC)で得られる冷結晶化温度(Tc)(℃)とガラス転移温度(Tg)(℃)との差、すなわちΔTcg=Tc−Tgである。Tcは、JIS K7122(1999)に準じて、昇温速度20℃/minでポリエステル組成物を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度25℃から20℃/minの昇温速度で300℃まで昇温を行って得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)における、吸熱ピークである結晶化ピークのピークトップの温度として求められるものであり、Tgは同様の方法で得られるガラス転移温度である。
一般に、ΔTcgの値が小さいほどポリエステル組成物の結晶化速度が速くなり、ポリエステル組成物の耐湿熱性が低下する傾向が見られる。そして、ポリエステル組成物中に、粗大な凝集体がある場合、ΔTcgの値は大きく低下する。
したがって、本発明のポリエステル組成物のΔTcgの値は、45℃以上70℃以下であることが必要である。ΔTcgが45℃に満たないと、結晶化速度が大きいため、湿熱雰囲気下でのポリエステル組成物の結晶化速度が速く、脆化が進行し易くなる。70℃を超えると、結晶化速度が遅く、ポリエステル組成物が機械特性に劣る。
Mn、Ca元素のイオンとカーボンブラックの相互作用を抑制しつつ、ΔTcgを上記の範囲とするためには、Mn、Ca元素のイオンと相互作用する、ポリエステル組成物中で陰イオンとなる化合物を添加する必要がある。本発明では、ポリエステル組成物中で陰イオンとなる化合物は、耐湿熱性の観点からリン酸を含むことが好ましい。
ポリエステル組成物中で陰イオンとして存在するリン酸の負電荷は、Mn、Ca元素の陽イオンの正電荷と相互作用することで、これら陽イオンの正電荷を打ち消すことになる。その結果、カーボンブラックとMn、Ca元素のイオンとの電気的な相互作用が無くなるため、該イオンの周囲にカーボンブラックが凝集することを抑制することが可能となる。
したがって、本発明のポリエステル組成物はリン元素を含むことが必要である。
一方で、リン酸はポリエステル組成物中で陰イオンとして存在するので、ポリエステル組成物中に過剰のリン酸が存在したならば、導電性を持つカーボンブラックと電気的な相互作用を持つと考えられる。この相互作用により、リン酸イオンの周囲にカーボンブラックが凝集する。カーボンブラックが凝集した結果、粗大な凝集粒子が形成され、該粗大粒子がポリエステルの結晶化を促進するとともに、トラッキング電圧の低下を引き起こす。つまり、ポリエステル組成物のΔTcgが大きく低下することになるので、該ポリエステル組成物の耐湿熱性、耐トラッキング性も大きく低下する。
そのため、Mn、Ca元素とリン酸の含有量や含有量比を制御することが非常に重要となる。Mn、Ca元素のイオンとカーボンブラックの相互作用を抑制しつつ、ΔTcgを上記の好ましい範囲とするためには、ポリエステル組成物全体に対するアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、ポリエステル組成物全体に対するMn元素含有量(mol/t)とCa元素含有量(mol/t)の合計をM2(mol/t)、ポリエステル組成物全体に対するリン元素の含有量をP(mol/t)とするとき、下記式(i)式で求められるポリエステル組成物における金属含有量M(mol/t)と、前記リン元素の含有量P(mol/t)が、下記(ii)式を満たすことが必要である。
(i) M=0.5×M1+M2
(ii)0.8≦M/P≦2.0
この式におけるMは、ポリエステル組成物において、リン酸に由来する陰イオンと相互作用する、金属元素の陽イオンの含有量を表すものである。リン酸に由来する陰イオンと相互作用する、金属元素の陽イオンとして、Mn、Caだけではなく、電気陰性度が大きいアルカリ金属元素の陽イオンも考慮する必要がある。
ただし、ポリエステル組成物中でリン酸に由来する陰イオンは2価であるので、2価の金属元素の陽イオンと1:1で相互作用する。そのため、ポリエステル組成物中で1価の陽イオンとなる金属元素の含有量M1に対しては係数0.5を乗じる必要がある。
M/Pは、より好ましくは0.8以上1.5以下、さらに好ましくは0.8以上1.1未満である。M/Pが小さい場合は、リン化合物が過剰となる。一方、M/Pが大きい場合は、金属イオンが過剰となる。過剰となった金属イオンあるいはリン化合物とカーボンブラックが相互作用することにより、カーボンブラックが凝集し、ポリエステルの結晶化を促進する結果、ΔTcgが低下して耐湿熱性、耐トラッキング性が低下する。
M/Pを上記の数値範囲内とすることによって、カーボンブラックをポリエステルに含有せしめても、ポリエステルのΔTcgを低下させることが無く、耐湿熱性、隠蔽性、耐トラッキング性を高いレベルで満足するポリエステル組成物とすることが可能となる。
本発明のポリエステル組成物は、金属元素としてMn、Ca元素以外に、アルカリ金属元素(特に、Na元素および/またはK元素)を含んでも良い。これは、本発明のポリエステル組成物にリン酸のアルカリ金属塩(特にリン酸とナトリウムの塩、および/または、リン酸とカリウムの塩)を含有せしめると、耐湿熱性をさらに向上させることができるためである。ただし、アルカリ金属元素をポリエステル組成物に含有せしめる場合は、(ii)式が充足される必要がある。
また、本発明のポリエステル組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で上記以外の金属元素を含んでいても良い。例えば、Sb、Ti、Geなどは、ポリエステルの重合触媒として有用であるので、本発明のポリエステル組成物はSb元素、Ti元素、Ge元素を含んでも良い。
一方で、ポリエステル組成物中に過剰に金属元素が存在したならば、ポリエステル組成物のΔTcgが大きく低下し、ポリエステル組成物の耐湿熱性、耐トラッキング性が著しく低下することがある。したがって、Mn、Caおよびアルカリ金属元素以外の金属元素を含有せしめる場合は、ポリエステル組成物のΔTcgが上述の範囲外とならないことが重要である。つまり、Mn、Caおよびアルカリ金属元素以外の金属元素の含有量は、できるだけ少ないことが好ましく、具体的には1000ppm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、Mn、Ca以外の金属元素の含有量は、は、500ppm以下であることが好ましい。なお、ここでいう金属元素含有量とは、ポリエステル組成物に可溶な金属元素のことをあらわし、酸化チタンや硫酸バリウムなどのポリエステル組成物に不溶な金属化合物に由来する含有量を含めない。
本発明のポリエステル組成物は、固有粘度が0.65以上であることが機械特性、耐熱性、耐湿熱性、耐トラッキング性の点から必要である。より好ましくは、0.65以上1.0以下であり、特に好ましくは0.75以上1.00以下である。固有粘度が0.65未満であると、電圧を印加したときの表面の脆化が激しくトラッキングを起こしやすくなり、耐トラッキング性が低下するものと考えられる。この原因は、現時点明らかではないが、固有粘度が0.65未満であると、電圧が印加したときに低分子量成分やオリゴマー成分が表面に析出し、トラッキングを引き起こしやすくなるものと推定している。また、本発明のポリエステル組成物は、末端カルボキシル基量が15eq/t以下であることが、耐湿熱性の点から好ましい。末端カルボキシル基量が15eq/tを超えると、耐湿熱性が悪く、特に長期間高い温度や湿度でさらされた場合、機械特性の低下してしまう場合がある。
本発明のポリエステル組成物は、必要に応じて本発明の効果が損なわれない範囲で、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機系/無機系の易滑剤、有機系/無機系の微粒子、充填剤、核剤、分散剤、カップリング剤等の添加剤が配合されていてもよい。
次に、本発明のポリエステル組成物の製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
本発明のポリエステル組成物の製造方法は、2以上のカルボン酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するカルボン酸成分a1と、2以上の水酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するアルコール成分a2とを反応させて得られる製造方法であって、下記(7)〜(9)の工程をその順で含むと、本発明の効果をより効率的に発現させる、本発明のポリエステル組成物を効率的に得ることが出来るため好ましい。
(7)前記カルボン酸成分a1と、前記アルコール成分a2に、酢酸Mnおよび/または酢酸Caを添加し、前記カルボン酸成分a1と前記アルコール成分a2を反応させエステル組成物α1を得る工程。
(8)エステル組成物α1に、リン酸またはリン酸アルカリ金属塩を添加した後、重合し、ポリエステル組成物αを得る工程。
(9)ポリエステル組成物αにカーボンブラックを添加せしめて、ポリエステル組成物βを得た後に、該ポリエステル組成物βを用いてポリエステル組成物を得る工程。
本発明で用いるカルボン酸成分は、アルコール成分との反応性や、得られるポリエステル組成物の末端カルボキシル基を低減させる観点から、カルボン酸のメチルエステルであることが好ましい。
本発明における工程(7)の重合の触媒として、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液、三酸化アンチモン、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物などを添加することも好適に行われる。
リン酸、リン酸アルカリ金属塩の添加方法としては、あらかじめエチレングリコールなどに溶解し、混合して添加することが耐湿熱性の点から好ましい。このときの溶媒、分散媒の種類は、本発明のポリエステルに含有される炭素数2〜4の直鎖状アルキレングリコールと同じアルキレングリコールを用いることが耐熱性、耐湿熱性の点から好ましい。異なる種類のアルキレングリコールを使用すると、共重合され、耐熱性が低下することがある。特に、このときの混合液のpHを2.0以上6.0以下の酸性に調整することが異物生成抑制の点から好ましい。さらに好ましくは4.0以上6.0以下である。これらのリン化合物は重合触媒と添加間隔を5分以上あけて添加することが重合反応性の点から好ましく、重合触媒の添加後でも添加前でも構わない。
リン酸とリン酸アルカリ金属塩を添加する場合、それらの添加量は、ポリエステル組成物に対してアルカリ金属元素として1.3mol/t以上3.5mol/t以下とすることが好ましい。リン酸とリン酸アルカリ金属塩を併用する場合は、リン酸とリン酸アルカリ金属塩に対して、モル数で0.4倍以上1.7倍以下添加することが耐湿熱性の点から好ましい。
工程(8)においては、ポリエステル組成物αの固有粘度が0.5以上となるまで重合する事が好ましい。
ここで、ポリエステル組成物αの固有粘度を0.5以上に高める場合においては、末端カルボキシル基量を20等量/t以下の範囲で、さらにより少なくする事ができるという点で、重合反応温度をTm(α)+30℃以下とするのが好ましい。ここでTm(α)はポリエステル組成物αの融点である。
本発明においては、固有粘度を増加させる観点と末端カルボキシル基量低減の観点から、工程(8)においてリンを添加してポリエステル組成物を重合する工程において固有粘度0.5以上0.6以下で一旦チップ化した後、固相重合反応を行うことが好ましい。本発明における固相重合反応は、重合温度をポリエステル組成物αのTm−30℃以下、Tm−60℃以上、真空度0.3Torr以下で行うことが好ましい。
本発明においては、機械特性、耐湿熱性を向上させる観点から、前記カルボン酸成分a1と前記アルコール成分a2の合計に対して、3以上のカルボン酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するカルボン酸成分a11と3以上の水酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するアルコール成分a21の合計が、0.025mol%以上1.5mol%以下であることが好ましい。カルボン酸成分a1の一部がカルボン酸成分a11である場合、またはアルコール成分a2の一部がアルコール成分a21である場合、a11またはa21の部分で分子鎖同士が架橋される。架橋された結果、分子鎖の分子運動性が低下し、加水分解の進行がより抑制されるため好ましい。a11としては、トリメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、長鎖脂肪族カルボン酸を3量体化したトリマー酸などの多価カルボン酸およびその無水物やエステル、a21としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシヘキサンなどの多価アルコールを挙げることができる。
本発明のポリエステル組成物は、その形状を問わない。本発明のポリエステル組成物の具体的な形状として、チップ、ペレット、繊維、フィルム、シートなどを例示することができる。特に、体積に対して表面積が大きい形状であるフィルムでは、一般に耐湿熱性に劣りやすい傾向にあるが、本発明の組成物とすることによって、耐湿熱性を著しく向上させることができる。
次に、本発明のポリエステル組成物の形状がフィルムである場合について、特に詳しく説明する。本発明のポリエステルフィルムは、隠蔽性の観点から光学濃度は0.5以上であることが好ましい。光学濃度が0.5未満であると、発電素子への配線などを隠蔽できず意匠性に劣る場合がある。より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.2以上であると良い。また、耐湿熱性、機械特性の観点から、二軸配向せしめたフィルムであることが好ましい。一般的に、ポリエステルを配向させると、配向させた方向にヤング率が高くなる。二軸配向させることにより、フィルム平面に対して平行な方向の全方向においてヤング率が均等に高くなり、フィルムの機械特性、加工性、耐湿熱性を向上せしめることができる。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは10μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上300μm以下がより好ましい。更に好ましくは、25μm以上250μm以下である。
本発明のポリエステルフィルムは、高い耐湿熱性、隠蔽性、耐トラッキング性を有するものであり、その特長を生かして太陽電池バックシート、給湯器モーター用電気絶縁材料や、コンデンサ用材料、自動車用材料、建築材料を始めとした耐湿熱性と隠蔽性が重視されるような用途に好適に使用することができる。これらの中で、太陽電池用バックシート用フィルムとして好適に用いられる。
次に、本発明のポリエステル組成物を用いてなるフィルムの製造方法について説明する。この場合、前記の組成物の製造工程の次にポリエステル組成物を用いて、フィルムを得る工程を有することが好ましい。この工程を以下に詳しく説明する。
本発明のフィルムが単膜構成の場合、必要に応じて乾燥した原料(ポリエステル組成物など)を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、原料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
また、押出機に投入する原料として、本発明のポリエステル組成物を用いても良いし、ポリエステル組成物βおよびそれとは異なるポリエステルなどを用いても良い。後者の場合、押出機内にてポリエステル組成物βおよびそれとは異なるポリエステルが溶融混練され、該溶融混練体が本発明のポリエステル組成物となる。そして、これを上記の方法で押出すことによって、シート状に成形された本発明のポリエステル組成物を得ることができる。
フィルムを溶融キャスト法により製造する場合、乾燥した原料を、押出機を用いて口金からシート状に溶融押出し、表面温度10℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製する。この未延伸シートを二軸延伸する事により本発明のポリエステルフィルムを得ることができる。
押出機での溶融押出する際は、窒素雰囲気下で溶融させ、押出機へのチップ供給から、口金で押出されるまでの時間は短い程良く、目安としては30分以下、より好ましくは15分以下、更に好ましくは5分以下とすることが、末端カルボキシル基量増加抑制の点で好ましい。
この得られた未延伸シートを、ポリエステル組成物のTg以上の温度にて二軸延伸する。二軸延伸する方法としては、フィルムの長手方向とフィルムの幅方向(フィルムの長手方向に垂直な方向)の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法が挙げられる。
得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、Tg以上Tm未満の温度で1秒間以上30秒間以下の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却することによって、二軸配向せしめたポリエステルフィルムが得られる。
本発明のポリエステルフィルムは、機械特性と耐湿熱性、耐トラッキング性の観点から、 シート状に成形したポリエステル組成物をTg以上Tg+40℃以下の温度で、面積倍率12倍以上に逐次二軸延伸する工程をこの順で含む方法で製造されてなることが好ましい。また、下の式(a)を満たす範囲で熱処理を実施し、ポリエステルフィルムを得る工程を含むことが好ましい。
(a)20℃≦Tm−Th≦90℃
(ここで、Thは熱処理温度(℃)である)。
延伸温度がTg以下である場合、延伸ができない。また、Tg+40℃を超えると、フィルムを配向させることができないため好ましくない。面倍が12倍に満たないと、配向が充分でなく、耐湿熱性に劣る。熱処理温度高が高く、(a)式を外れると、結晶化度が高くなり、湿熱雰囲気下での結晶化が促進され、耐湿熱性に劣る。熱処理温度が低く、(a)式を外れると熱寸法安定性に劣る。このようにして得られたポリエステルフィルムは、耐湿熱性、隠蔽性に優れたものとなる。そのため、本発明のフィルムは、高い耐湿熱性、耐トラッキング性を要求される太陽電池バックシートの用途に特に好適に用いることができる。
[特性の評価方法]
A.ポリエステル組成物の固有粘度IV
オルトクロロフェノール100mlにポリエステル組成物を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/dl)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定する。また、同様に溶媒の粘度を測定する。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(d)により、[η](dl/g)を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とする。
(b)ηsp/C=[η]+K[η]・C
(ここで、ηsp=(溶液粘度(dl/g)/溶媒粘度(dl/g))―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)。
B.ポリエステル組成物のリン元素の含有量、ポリエステル組成物の金属元素(ただし、アルカリ金属元素を除く)の含有量
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて測定する。
C.ポリエステル組成物のアルカリ金属元素の含有量
原子吸光分析法(曰立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80。フレーム:アセチレンー空気)にて測定する。
D.ポリエステル組成物の末端カルボキシル基量
Mauliceの方法によって測定する(文献M.J. Maulice, F. Huizinga, Anal.Chim.Acta,22 363(1960))。
E.ポリエステル組成物の融点(Tm)
JIS K7122(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
サンプルパンにポリエステル組成物を5mg秤量し、試料を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷する。直ちに引き続いて、再度25℃から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って、2ndRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。当該2ndRunの示差走査熱量測定チャートの、発熱ピークである結晶融解ピークにおけるピークトップの温度を求め、これをTm(℃)とする。2以上の結晶融解ピークが観測される場合は、最も温度が低いピークトップの温度をTm(℃)とする。
F.ポリエステル組成物のガラス転移温度(Tg)
JIS K7122(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
サンプルパンにポリエステル組成物を5mg秤量し、試料を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷する。直ちに引き続いて、再度25℃から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って測定を行い、2ndRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。当該2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、ガラス転移の階段状の変化部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点から求める。2以上のガラス転移の階段状の変化部分が観測される場合は、それぞれについて、ガラス転移温度を求め、それらの温度を平均した値をポリエステル組成物のガラス転移温度(Tg)(℃)とする。
G.ポリエステル組成物の冷結晶化温度(Tc)、ポリエステル組成物のΔTcg
JIS K7122(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
サンプルパンにポリエステル組成物を5mg秤量し、試料を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷する。直ちに引き続いて、再度25℃から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行い、2ndRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。当該2ndRUNの示差走査熱量測定チャートから、吸熱ピークである冷結晶化ピークのピークトップの温度として求め、これをTc(℃)とする。2以上の冷結晶化ピークが観測される場合は、それぞれのピークのピークトップ温度から冷結晶化温度を求め、それらの温度を平均した値をポリエステル組成物の冷結晶化温度(Tc)(℃)とする。
前記の方法で求められるTgとTcを用いて、以下の(c)式からΔTcg(℃)を求める。
(c)ΔTcg=Tc−Tg。
H.フィルムの破断伸度測定
ASTM−D882(1997)に基づいて、フィルムを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定する。なお、サンプル数はn=5とし、また、フィルムの長手方向、幅方向のそれぞれについて測定した後、それらの平均値を求め、これをフィルムの破断伸度とする。
I.耐湿熱試験後の機械特性
フィルムの機械特性の耐湿熱性は、フィルムを測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、タバイエスペック(株)製プレッシャークッカーにて、温度140℃、相対湿度80%RHの条件下にて処理を行い、その後上記H.項に従って破断伸度を測定する。なお、測定はn=5とし、また、フィルムの長手方向、幅方向のそれぞれについて測定した後、その平均値を破断伸度E1とする。また、処理を行う前のフィルムについても上記H.項に従って破断伸度E0を測定し、得られた破断伸度E0,E1を用いて、次の(d)式により伸度保持率を算出し、伸度保持率が50%となる処理時間を伸度半減期とする。
(d) 耐熱試験後の伸度保持率(%)=E1/E0×100。
得られた伸度半減期から、フィルムの耐湿熱性を以下のように判定した。
伸度半減期が35時間以上の場合:S
伸度半減期が30時間以上35時間未満の場合:A
伸度半減期が25時間以上30時間未満の場合:B
伸度半減期が20時間以上25時間未満の場合:C
伸度半減期が20時間未満の場合:D
S〜Cが良好であり、その中でもSが最も優れている。
J.フィルムの光学濃度
光学濃度計(マクベス製:TD−904)で透過光束を測定し、式(e)で算出した。同じサンプルについて同様の測定をランダムに場所を変えて5回行い、得られた平均値を光学濃度とする。フィルムの厚みは50μmとし、厚みが50μmではないフィルムは、50μmになるように、薄い場合は重ねて、厚い場合はミクロトームで削って測定する。
光源: 可視光線
分光組成: 色温度 3006°Kのタングステン電球
測定環境: 温度23℃±3℃、湿度65±10%RH
(e) 光学濃度=log10(F0/F)
F:試料の透過光束、 F0 :試料無しの透過光束
K.ポリエステル組成物のカーボンブラック含有量
ポリエステル組成物100gにオルトクロロフェノール1.0リットルを加え120℃で3時間加熱した後、日立工機(株)製遠心分離装置55P−72を用い、30000rpmで40分間遠心分離を行い、得られた粒子を100℃で真空乾燥した後、計量し、含有量とする。
L.トラッキング電圧
ASTM_D3638(2008)に基づき、以下の方法で測定する。
測定試料は、100mm四方で2.5mmの厚さに成形した樹脂を用いる。測定試料がフィルムの場合は、100mm四方に切り出したフィルムを重ねて2.5mmの厚さとしたものを用いる。電極を測定試料上面に接するように4.0mmの間隔で二つ配置する。この二つの電極の中間点の上方35mmの位置にノズルを配置する。電極間に一定電圧をかけながら、ノズルより3.85Ωcmの塩化アンモニウム水溶液を30秒間隔で滴下してトラッキングが発生したときの滴下数を算出する。この時、トラッキングが発生するとは、二つの電極間に0.1A以上の電流が0.5秒以上発生した状態のことを指す。次に電圧を便宜変更し塩化アンモニウム水溶液の滴下数が50滴を超えない二つの電圧、50滴を超える二つの電圧を算出する。それら四つの電圧から3次曲線で電圧と滴下数のグラフを作成し、滴下数が50滴となるときの電圧をトラッキング電圧として求める。
M.フィルムの耐トラッキング性の耐湿熱性
フィルムの耐トラッキング性の耐湿熱性は、100mm四方のサンプルを、タバイエスペック(株)製のプレッシャークッカーにて、温度140℃、相対湿度80%の条件下で30時間処理した後、L項に記載のトラッキング電圧を測定する。そして耐湿熱試験後のトラッキング電圧保持率を以下の式(f)で計算する。
(f)湿熱試験後のトラッキング電圧保持率(%)= 湿熱試験後のトラッキング電圧(V)/初期のトラッキング電圧(V)×100
耐湿熱後のトラッキング電圧保持率が80%以上の場合:A
耐湿熱後のトラッキング電圧保持率が70%以上80%未満の場合:B
耐湿熱後のトラッキング電圧保持率が70%未満の場合:C
A〜Bが良好であり、その中でもAが最も優れている。
N.カーボンブラックの平均粒径
走査型電子顕微鏡S4000(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、樹脂もしくはフィルム表面を1000倍に拡大した表面写真を撮影した。得られた画像を用いて、東洋紡績(株)製イメージアナライザーV10を用いて画像中に存在するカーボンブラックの粒子の面積の和を求め、画像中に存在する粒子の総数から粒子1個辺りの平均面積を求めた。この粒子1個辺りの平均面積と面積が等しくなる正円の直径を算出し、カーボンブラックの平均粒径とした。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
テレフタル酸100質量部、エチレングリコール57.5質量部、酢酸マンガン0.03質量部(Mn金属元素換算で1.35mol/t)、三酸化アンチモン0.03質量部を150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。
エステル交換反応終了後、リン酸0.005質量部(P元素換算で0.52mol/t相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.021質量部(P元素換算で1.3mol/t相当)をエチレングリコール0.5質量部に溶解したエチレングリコール溶液(pH5.0)を添加した。
その後、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.52、カルボキシル基量16eq/tのポリエチレンテレフタラートを得た。
得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させたのち、220℃、真空度0.3Torr、8時間の固相重合を行い、融点255℃、ガラス転移温度Tg82℃のポリエステル組成物α1を得た。
上記のポリエステル組成物50重量部と、カーボンブラック(三菱化学(株)社製カーボンブラック、♯50)50重量部とベントした押出機に投入し、該押出機内で溶融混練せしめ、カーボンブラックを高濃度に含有したポリエステル組成物Bを得た。ポリエステル組成物α1とポリエステル組成物β1をベントした押出機に投入し、該押出機内で溶融混練せしめ、カーボンブラックの含有量が0.49重量%のポリエステル組成物γを得た。
このポリエステル組成物γのΔTcg、カーボンブラックの平均2次粒子径、カーボンブラックの含有量、固有粘度、カルボキシル基量、トラッキング電圧は表1の通りであり、高いトラッキング電圧を有していた。
得られたポリエステル組成物γを180℃の温度で2時間真空乾燥した後に押出機に供給し、窒素雰囲気下、280℃の温度で溶融させ、Tダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融単層シートとし、該溶融単層シートを、表面温度20℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層シートを得た。続いて、このシートを長手方向に延伸温度90℃、延伸倍率3.7倍で延伸したのち、幅方向に延伸温度100℃、4.2倍で延伸し、熱処理を200℃で8秒間行い厚さ50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
このフィルムの伸度保持率、トラッキング電圧保持率、光学濃度を測定した結果表1の通りであり、耐湿熱性、隠蔽性に優れていた。また、トラッキング電圧保持率が高く、過酷な条件下でも高い電気絶縁性を有していた。
(実施例2)
実施例1からリン酸、リン酸水素ナトリウム2水和物の添加量をそれぞれP元素換算で2.00mol/t相当、リン酸水素ナトリウム2水和物をP元素換算で3.00mol/t相当に変更すること以外は実施例1と同様にしてポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例3)
実施例1の固層重合時間を12時間に変更する以外は実施1と同様にしてポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例4)
実施例1の方法から酢酸マンガンの添加量を0.04質量部(Mn金属元素換算で1.74mol/t)に変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例5)
実施例1の方法から酢酸マンガンの添加量を0.06質量部(Mn金属元素換算で2.70mol/t)に変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例6)
実施例1の方法からテレフタル酸の添加量を99.9質量部に変更し、さらにカルボン酸成分a11としてトリメリット酸トリメチルを0.1重量部添加する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例7)
実施例1の方法からテレフタル酸の添加量を99.95質量部に変更し、さらにカルボン酸成分a11としてトリメリット酸トリメチルを0.05重量部添加する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例8)
実施例1の方法からテレフタル酸の添加量を99.7質量部に変更し、さらにカルボン酸成分a11としてトリメリット酸トリメチルを0.3重量部添加する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例9)
実施例1の方法からエチレングリコールの添加量を99.9質量部に変更し、さらにアルコール成分a21としてグリセリン0.1重量部添加する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例10)
実施例1の方法からカルボン酸成分をテレフタル酸ジメチルから2,6ナフタレンジカルボン酸ジメチルに変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例11)
実施例1の方法から酢酸マンガンの添加量を0.02質量部(Mn金属元素換算で0.95mol/t)に変更しさらに、酢酸カルシウムを0.02質量部(Ca金属元素換算で0.95mol/t)を添加する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例12)
実施例1の方法からリン酸の添加量を0.015質量部(P元素換算で1.50mol/t相当)に変更し、リン酸二水素ナトリウム2水和物の添加量を0.056質量部(P元素換算で3.50mol/t相当)に変更する。また、酢酸マンガン0.07質量部(Mn金属元素換算で3.00mol/t相当)に変更し、酢酸カルシウムを0.05質量部(Ca金属元素換算で2.25mol/t相当)添加する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例13)
実施例1の方法からリン酸0.007質量部(P元素換算で0.72mol/t相当)、リン酸二水素ナトリウム2水和物0.017質量部(P元素換算で1.10mol/t相当)、酢酸マンガン0.03質量部(Mn金属元素換算で1.15mol/t相当)添加する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例14)
実施例1の方法からリン酸0.012質量部(P元素換算で0.12mol/t相当)添加する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例15)
実施例1の方法からカーボンブラックの含有量を0.3重量%に変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例16)
実施例1の方法からカーボンブラックの含有量を0.1重量%に変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例17)
実施例1の方法から使用したカーボンブラックの平均粒径を0.1μmに変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例18)
実施例1の方法から使用したカーボンブラックの平均粒径を3.0μmに変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例19)
実施例1の方法から使用したカーボンブラックの平均粒径を6.0μmに変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例20)
実施例1の方法から最終到達温度285℃、真空度0.1Torrでの重合を行った後、固相重合時間を2時間と変更した以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例1)
実施例1の方法からカーボンブラックの添加量を0.8重量%に変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例2)
実施例1の方法から酢酸マンガンを添加しないこと以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、2軸配向フィルムを得た。
(比較例3)
実施例1の方法から酢酸マンガンの添加量を0.31重量部(Mn金属元素換算で14.0mol/t相当)に、リン酸水素ナトリウムの添加量を0.049重量部(P元素換算で3.00mol/t相当)に、リン酸の添加量を0.019重量部(P元素換算で2.00mol/相当)に変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例4)
実施例1の方法から酢酸マンガンの添加量を0.11重量部(Mn金属元素換算で4.99mol/t相当)に変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例5)
実施例1の方法から最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで重合を行った後、固相重合時間を1.5時間と変更した以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例6)
実施例1の方法から酢酸マンガンの添加量を0.10重量部(Mn金属元素換算で4.71mol/t相当)に、リン酸水素ナトリウムの添加量を0.06重量部(P元素換算で4.00mol/t相当)に、リン酸の添加量を0.02重量部(P元素換算で2.10mol/t相当)に変更する以外は実施例1と同様にポリエステル組成物、および二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
実施例2〜20と比較例1〜6の組成物のΔTcg、カーボンブラックの平均2次粒子径、カーボンブラックの含有量、固有粘度、カルボキシル基量、トラッキング電圧は表1の通りとなった。
実施例2〜20と比較例1〜6のフィルムのこのフィルムの伸度保持率、トラッキング電圧保持率、光学濃度を測定した結果表1の通りとなった。
下記(1)〜(5)のいずれかを満たさないポリエステル組成物は、耐トラッキング性に劣るものであった。また、下記(1)〜(5)を満たさないポリエステル組成物から得られる二軸配向ポリエステルフィルムは、耐湿熱性、耐トラッキング電圧保持率、隠蔽性のいずれかに劣るものであった。
(1)前記ポリエステル組成物中のカーボンブラックの含有量が前記ポリエステル組成物全体に対して0.1重量%以上0.5重量%未満であること。
(2)Mn、Caから選ばれる1種類以上の金属元素を含有し、その含有量の和が前記ポリエステル組成物全体に対して0.59mol/t以上11.15mol/t以下であること。
(3)リン元素を含有し、かつ、ポリエステル組成物全体に対するアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、ポリエステル組成物全体に対するMn元素含有量(mol/t)とCa元素含有量(mol/t)の合計をM2(mol/t)、ポリエステル組成物全体に対するリン元素の含有量をP(mol/t)とするとき、下記式(i)式で求められるポリエステル組成物における金属含有量M(mol/t)と、前記リン元素の含有量P(mol/t)が、下記(ii)式を満たすこと。
(i) M=0.5×M1+M2
(ii)0.8≦M/P≦2.0
(4)固有粘度が0.65以上であること
(5)前記ポリエステル組成物の冷結晶化温度をTc(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)とするとき、下記式(iii)で求められる結晶化パラメーターΔTcgが45℃以上70℃以下であること
(iii)ΔTcg=Tc−Tg
各実施例、比較例で得た組成物、フィルムの特性を表に示す。
Figure 2014139261
Figure 2014139261
Figure 2014139261
Figure 2014139261
なお、表中の略号は以下の意味を表す。
COOH末端基量:末端カルボキシル基量
伸度保持率:耐熱試験後の伸度保持率
トラッキング性保持率:湿熱試験後のトラッキング電圧保持率
本発明のポリエステルフィルムは、高い耐湿熱性と隠蔽性を有するものであり、その特長を生かして太陽電池バックシート、給湯器モーター用電気絶縁材料や、コンデンサ用材料、自動車用材料、建築材料を始めとした耐湿熱性と隠蔽性が重視されるような用途に好適に使用することができる。これらの中で、太陽電池用バックシート用フィルムとして好適に用いられる。
1:ノズル
2:電極
3:測定試料

Claims (8)

  1. 下記(1)から(6)の要件を満たすポリエステル組成物。
    (1)前記ポリエステル組成物中のカーボンブラックの含有量が前記ポリエステル組成物全体に対して0.1重量%以上0.5重量%未満であること。
    (2)Mn、Caから選ばれる1種類以上の金属元素を含有し、その含有量の和が前記ポリエステル組成物全体に対して0.59mol/t以上11.15mol/t以下であること。
    (3)リン元素を含有し、かつ、ポリエステル組成物全体に対するアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、ポリエステル組成物全体に対するMn元素含有量(mol/t)とCa元素含有量(mol/t)の合計をM2(mol/t)、ポリエステル組成物全体に対するリン元素の含有量をP(mol/t)とするとき、下記式(i)式で求められるポリエステル組成物における金属含有量M(mol/t)と、前記リン元素の含有量P(mol/t)が、下記(ii)式を満たすこと。
    (i) M=0.5×M1+M2
    (ii)0.8≦M/P≦2.0
    (4)固有粘度が0.65以上であること
    (5)前記ポリエステル組成物の冷結晶化温度をTc(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)とするとき、下記式(iii)で求められる結晶化パラメーターΔTcgが45℃以上70℃以下であること
    (iii)ΔTcg=Tc−Tg
    (6)トラッキング電圧が330V以上であること
  2. 前記カーボンブラックの平均粒径が0.1〜3.0μmである請求項1に記載のポリエステル組成物。
  3. 末端カルボキシル基量が15eq/t以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル組成物。
  4. ポリエステル組成物中のポリエステルが、カルボン酸基および/または水酸基を3つ以上有する構成成分を、前記ポリエステルの全構成成分に対して0.025mol%以上1.5mol%以下含有する請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル組成物を用いてなる二軸配向ポリエステルフィルム。
  6. 2以上のカルボン酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するカルボン酸成分a1と、2以上の水酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するアルコール成分a2とを反応させて得られる請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル組成物の製造方法であって、下記(7)〜(9)の工程をその順で含むポリエステル組成物の製造方法。
    (7)前記カルボン酸成分a1と、前記アルコール成分a2に、酢酸Mnおよび/または酢酸Caを添加し、前記カルボン酸成分a1と前記アルコール成分a2を反応させエステル組成物α1を得る工程。
    (8)エステル組成物α1に、リン酸またはリン酸アルカリ金属塩を添加した後、重合し、ポリエステル組成物αを得る工程。
    (9)ポリエステル組成物αにカーボンブラックを添加せしめて、ポリエステル組成物βを得た後に、該ポリエステル組成物βを用いてポリエステル組成物を得る工程。
  7. 前記カルボン酸成分a1と前記アルコール成分a2の合計に対して、3以上のカルボン酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するカルボン酸成分a11と3以上の水酸基またはそのエステル形成性誘導体を有するアルコール成分a21の合計が、0.025mol%以上1.5mol%以下である請求項6に記載のポリエステル組成物の製造方法。
  8. リン酸アルカリ金属塩をポリエステル組成物全体に対するアルカリ金属元素の含有量として1.3mol/t以上3.5mol/t以下添加する請求項6または7に記載のポリエステル組成物の製造方法。
JP2013008069A 2013-01-21 2013-01-21 ポリエステル組成物およびそれを用いてなるポリエステルフィルム、並びにそれらの製造方法 Pending JP2014139261A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013008069A JP2014139261A (ja) 2013-01-21 2013-01-21 ポリエステル組成物およびそれを用いてなるポリエステルフィルム、並びにそれらの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013008069A JP2014139261A (ja) 2013-01-21 2013-01-21 ポリエステル組成物およびそれを用いてなるポリエステルフィルム、並びにそれらの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014139261A true JP2014139261A (ja) 2014-07-31

Family

ID=51416135

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013008069A Pending JP2014139261A (ja) 2013-01-21 2013-01-21 ポリエステル組成物およびそれを用いてなるポリエステルフィルム、並びにそれらの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014139261A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8637764B2 (en) Biaxially oriented polyester film for sealing back surface of photovoltaics
JP5648629B2 (ja) ポリエチレンテレフタレート組成物、その製造方法およびポリエチレンテレフタレートフィルム
JP5251829B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物、その製造方法、およびフィルム
JP5765639B2 (ja) ポリエステル組成物およびそれを用いたフィルム、シート状構造体、電気絶縁シート、太陽電池バックシート並びにそれらの製造方法
JP5565036B2 (ja) ポリエステルフィルムおよびそれを用いた太陽電池用バックシート、太陽電池
JP6686877B2 (ja) ポリエステルフィルムおよびそれを用いた電気絶縁シート、風力発電機、粘着テープ
JP6040718B2 (ja) ポリエステル組成物、ポリエステルフィルム、並びそれを用いたおよび太陽電池バックシート、ならびに、それらの製造方法
JP2014065882A (ja) ポリエステルフィルムならびにそれを用いた太陽電池バックシートおよび太陽電池
JP5811085B2 (ja) 太陽電池用ポリエステル組成物およびその製造方法
JP2012057021A (ja) ポリエステルフィルムおよびそれを用いた太陽電池用バックシート、太陽電池
KR102131627B1 (ko) 내구성 폴리에스테르 필름과 그 제조방법, 그것을 사용한 태양전지 밀봉용 필름, 및 태양전지
JP2020117700A (ja) 二軸配向ポリエステルフィルム
JP6136810B2 (ja) ポリエチレンテレフタレートフィルムおよびその製造方法
JP5379033B2 (ja) 配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法
JP2014139261A (ja) ポリエステル組成物およびそれを用いてなるポリエステルフィルム、並びにそれらの製造方法
US5256471A (en) Composite polyester film
JP6212981B2 (ja) ポリエステルフィルムの製造方法
JP2014145046A (ja) ポリエステルフィルム
JP5940919B2 (ja) ポリエステルおよびその製造方法
WO2015098432A1 (ja) 二軸配向ポリエステルフィルム
JP2015070021A (ja) 太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムおよびその製造方法
JP2015193799A (ja) 二軸配向ポリエステルフィルム
JP2013049785A (ja) ポリエステルの製造方法
JP2014187263A (ja) 太陽電池裏面保護用ポリエステルフィルム
JP2019143064A (ja) ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびそれからなるフィルム