JP2014136814A - 高強度焼結部品の製造方法と連続焼結炉 - Google Patents

高強度焼結部品の製造方法と連続焼結炉 Download PDF

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Abstract

【課題】連続焼結炉を使用するシンターハードニングにおいて、焼結ゾーンの長尺化を招かずに加熱後の冷却速度を十分に高めて品質の安定した高強度焼結部品を製造できるようにすることを課題としている。
【解決手段】ワークを収容したトレイTを脱ガスゾーン1、予熱ゾーン2、加熱ゾーン3、冷却ゾーン4に順番に導いて焼結と焼入れを連続的に行う。また、加熱ゾーン3と冷却ゾーン4との間に扉9を設置して加熱ゾーンから冷却ゾーンへの熱の流れをその扉で遮り、さらに、トレイTの搬送を送りローラ7を設けて行って冷却ゾーン4におけるトレイの搬送速度を加熱ゾーン3における搬送速度よりも大、かつ、3℃/sec以上の冷却速度が得られる速さにして焼結と焼入れを行うようにした。
【選択図】図1

Description

この発明は、品質の安定した高強度焼結部品を焼結と焼入れを連続的に行って製造する高強度焼結部品の製造方法とその方法を実施する連続焼結炉に関する。
高強度焼結部品の製造法のひとつに、高温で焼結した後に浸炭焼入れを実施する方法がある。また、他のひとつにシンターハードニングと言う技術がある。
前者は一般的に採用されている方法であるが、この方法は加熱工程を2回経るため、歪の増加による製品の寸法精度の悪化や製造コストの上昇が避けられない。これに対し、後者のシンターハードニングは、焼結と焼入れを一行程で連続的に行うものであり、従って、加熱が1回で済み、2回加熱を行うことによって生じる前者の方法の問題が解消される。
なお、シンターハードニングは、ワーク(被処理品)を収納したトレイをシリンダアクチュエータで押して移動させるプッシャー炉や下記特許文献が開示しているような連続焼結炉を使用して実施することができる。
特許第4576331号公報
シンターハードニングによる焼結部品の製造は、上述したように、焼結と焼入れを2回に分けて行う方法で問題になる製品の寸法精度の悪化や製造コスト上昇の問題が解消されるが、一方で以下の難点を有していた。
即ち、プッシャー炉を使用してシンターハードニングを実施する方法は、設備の構造上、加熱室と冷却室を分離して設けることができないため、マルテンサイト変態を生じさせるための冷却速度が不十分になり、ワークに冷却ムラが生じて目的とする材料特性が得られていない。
また、連続焼結炉では、炉内に送りローラを設けてその送りローラでワークを収容したトレイを搬送するが、冷却速度を高めようとすると送りローラによる搬送速度を早める必要があり、搬送速度を速めるとワークを1100℃〜1300℃の焼結温度まで加熱する
必要上、焼結ゾーンの長さが長くなって設備の大型化が避けられなくなる不具合があった。
この発明は、連続焼結炉を使用するシンターハードニングにおいて、焼結ゾーンの長尺化を招かずに加熱後の冷却速度を十分に高めて品質の安定した高強度焼結部品を製造できるようにすることを課題としている。
上記の課題を解決するため、この発明においては、ワークを収容したトレイを脱ガスゾーン、予熱ゾーン、焼結室を有する加熱ゾーン、冷却ゾーンに順番に導いて焼結と焼入れを連続的に行う高強度焼結部品の製造方法に以下の特徴を付与した。即ち、前記加熱ゾーンと冷却ゾーンとの間に扉を設置して加熱ゾーンから冷却ゾーンへの熱の流れをその扉で遮り、さらに、前記トレイの搬送を送りローラを設けて行って前記冷却ゾーンにおけるトレイの搬送速度を加熱ゾーンにおける搬送速度よりも大、かつ、3℃/sec以上の冷却速度が得られる速さにして焼結と焼入れを行うようにした。
この方法では、前記加熱ゾーンに、焼結室と冷却ゾーン間に配置される徐冷室を含ませてその徐冷室の入口と出口に扉を設置し、さらに、前記冷却ゾーンに急冷室とその急冷室の後方に配置される冷却室を含ませて前記急冷室の入口と出口にもそれぞれ扉を設置し、前記焼結室を通過したトレイを、出入り口の扉が閉じられた前記徐冷室においてワークの変態点(A点)以上、900℃以下の温度を保持しながら急冷室による処理の順番が来るまで待機させると好ましい。
また、前記冷却ゾーンのうち、前記徐冷室から前記急冷室に至る区間ではワークの収容されたトレイを急冷室内での搬送速度よりも高速で搬送して当該区間でのワークの温度変化を小さく抑えるのが好ましい。
この発明では、上記の方法を実施する連続焼結炉も併せて提供する。その連続焼結炉は、ワークを収容したトレイを順番に送り込む脱ガスゾーン、予熱ゾーン、焼結室を有する加熱ゾーン、冷却ゾーンの各々と、各ゾーンの内部に設けるトレイ搬送用の送りローラと、前記加熱ゾーンと冷却ゾーンとの間に設置されて加熱ゾーンから冷却ゾーンへの熱の流れを遮る扉を備える。
そしてさらに、前記冷却ゾーン内での送りローラによる搬送速度が加熱ゾーンにおける送りローラの搬送速度よりも大、かつ、3℃/sec以上の冷却速度が得られる速さに設定された炉である。
この連続焼結炉は、前記加熱ゾーンに、焼結室と冷却ゾーン間に配置される徐冷室を含ませて前記扉をその徐冷室の入口と出口に設置し、さらに、前記冷却ゾーンに急冷室とその急冷室の後方に配置される冷却室を含ませて前記急冷室の入口と出口にもそれぞれ扉を設置し、前記焼結室を通過したトレイを、出入り口の扉が閉じられた前記徐冷室においてワークの変態点以上、900℃以下の温度を保持しながら急冷室による処理の順番が来るまで待機させるものにすると好ましい。
この発明による焼結部品の製造は、冷却ゾーンでのトレイの搬送速度を3℃/sec以上の冷却速度が得られる速さにして焼結と焼入れを行うので、ワークの冷却が十分になされる。また、加熱ゾーンと冷却ゾーンとの間に両ゾーン間を開閉可能に仕切る扉をもうけたことによって加熱ゾーンから冷却ゾーンへの温熱の流れが阻止されて冷却ゾーン内で温度ムラが小さくなり、これにより、高速で安定した冷却がなされて製造される焼結部品の材料特性が満足できるものになる。
また、加熱ゾーンと冷却ゾーンにおける搬送速度を異ならせたので、加熱ゾーンでの搬送速度を遅くして長さの短い焼結室によってワークを安定した焼結に必要な温度に加熱することができ、設備の大型化を招かない。
この発明の方法の実施に用いるこの発明の連続焼結炉の断面図 図1の連続焼結炉の平面図 炉内各部でのワーク温度の変動状況とワーク搬送速度の変動状況を示す図
以下、この発明の高強度焼結部品の製造方法とそれを実行する連続焼結炉の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1、図2は、この発明の方法を実施する連続焼結炉の具体例を示している。この連続焼結炉は、脱ガスゾーン1、予熱ゾーン2、加熱ゾーン3、冷却ゾーン4を順番に連ならせて構成されている。5は排ガス燃焼炉であり、脱ガスゾーン1において発生した排ガスがこの排ガス燃焼炉5に導入されて処理される。
加熱ゾーン3は、焼結室3aとその焼結室3aの後方に配置された徐冷室3bとからなる。
また、冷却ゾーン4は、急冷室4a、冷却室4bを組み合わせたものになっている。急冷室4aと冷却室4bにおける冷却は窒素ガスを用いて行われる。
設備の最後段の6は、窒素ガスと大気を置換する置換室である。この置換室6は、炉内に大気が流入するのを防止する目的で設けられている。
各ゾーンの内部には、動力駆動の送りローラ7が設けられており、その送りローラ7によってワークを収容したトレイTが炉の上流から下流に向けて搬送される。
徐冷室3bの入口と出口には、焼結室3aとの間及び冷却ゾーン4との間を開閉可能に仕切る扉8、9がそれぞれ設けられている。また、急冷室4aの入口と出口にも出入り口を開閉する扉10,11が設けられ、さらに、置換室6の入口部と出口部にも出入り口を開閉する扉12,13が設けられている。
冷却室4bの入口は急冷室4aの出口に、また、冷却室4bの出口は置換室6の入口にそれぞれ連なっており、従って、冷却室4bの出入り口も、急冷室4aの出口の扉11と置換室6の入口の扉12によって開閉されるようになっている。
焼結炉の内部に設けた送りローラ7は、速度調整が可能な可変ローラである。冷却ゾーン4の内部に設けられた送りローラ7の搬送速度は、加熱ゾーン3における搬送速度よりも大、かつ、3℃/sec以上の冷却速度が得られる速さに設定されている。
図1の14はヒータ、図2の15は急冷室用の冷却ファン、図1の16はガスクーラ、17は冷却室用の冷却ファン、18は搬送コンベヤである。
例示の連続焼結炉は、図1に示した各部の長さを以下の通りに設定している。
・全長L:19m
・排ガス燃焼炉5の長さa:1.8m
・脱ガスゾーン1の長さb:1.72m
・隣接ゾーン間の各仕切り壁長さc,e,g:0.4m
・予熱ゾーン2の長さd:1.52m
・焼結室3aの長さf:5.04m
・徐冷室3bの長さh:1.52m
・扉9から扉10に至る区間の長さi:0.75m
・急冷室4aの長さj:1.2m
・冷却室4bの長さk:2.25m
・置換室6の長さl:0.9m
・搬送コンベヤ18の長さm:1.1m
また、例示の焼結炉では、入口から徐冷室3bまでの送りローラ7による搬送速度を0.25m/minとし、徐冷室出口の扉9から急冷室入口の扉10までの区間を1.0m/minと言う高い速度で搬送することでワークの温度低下の抑制と、急冷室の温度上昇の防止を図っている。そして、さらに、3℃/sec以上の冷却速度を得るための急冷室4aから急冷室4a以降の長手方向中間点までの搬送速度を0.4m/minに設定している。
なお、3℃/sec以上の冷却速度を得るのに必要な搬送速度の上記数値0.4m/minは一例に過ぎない。その速度は、徐冷室3bや急冷室4aの長さ、徐冷室3bと急冷室4a間の長さ、急冷室4aにおける冷却能力などによって変動する。
排ガス燃焼炉5の入口から徐冷室3bまでの区間に設けられる送りローラ7の搬送速度は、同一に設定されている。
この発明の方法は、以上の通りに構成された連続焼結炉を用いて高強度部品を製造する。
処理対象のワークを収容したトレイTを搬送ローラ7に載せて連続焼結炉内に導入し、脱ガスゾーン1での脱ガス処理後に予熱ゾーン2を通過させてここでワークを700℃〜1000℃程度に加熱する。
その後、トレイTを焼結室3aに導入してここでワークを1100℃〜1300℃の焼結温度になるまで加熱し、その温度を所定時間保持して焼結を進める。
焼結を終えたワークはトレイTとともに徐冷室3bに導入してここで徐徐に温度を下げて急冷室4aの入口の扉10が開かれるまで、A点以上の焼入れ温度(変態点以上、900℃以下の温度)に保持して待機させる。このとき、扉8、9は閉じられている。そのために、焼結室3aから徐冷室3bへの温熱の流れが阻止され、徐冷室3b内での温度ムラが小さく抑えられ、変態点以上、900℃以下の温度が安定して維持される。待機中の温度を900℃以下にすることで、焼入れの冷却における品質低下を避けることができる。
また、扉9を設置したことで加熱ゾーン3から冷却ゾーン4への温熱の流れも阻止され、急冷室4a内の温度ムラも小さく抑えられる。
先行するトレイTが急冷室4aでの冷却処理を終えて冷却室4bに送り出されると、扉11が閉じられ、扉9,10が開かれて徐冷室3bから急冷室4aにトレイTが送り込まれる。徐冷室3bから急冷室4aにトレイTを移動させる送りローラ7は、例示の炉の場合、扉9,10間では1.0m/minの搬送速度で駆動され、徐令室3bを出たワークは、急冷室4aに導入されるまでの温度低下が0〜−5%程度に抑えられて急冷室4aに入るときの温度がA点以上に保たれるようになっている。
このとき、急冷室4a内ではトレイT内のワークに対して窒素ガスが吹きつけられ、それによって焼結後のワークが急速に冷却されて焼入れされる。その冷却は、3℃/sec以上の速度でなされる。
なお、急冷室4aに吹込む窒素ガスは常温(室温)であり、トレイ導入時の急冷室4aの温度は150℃以下に、また、急冷室4aでの搬送速度は0.4m/minに保つようにしてある。
急冷室4aを通過したワークは、トレイTとともに冷却室4bに移されて300℃を下回る温度になるまで冷却され、さらに、冷却室4bから置換室6に向けて搬送され、その間に酸化が起きない温度(200℃以下、より好ましくは150℃以下)まで冷却されて出炉する。
かかる方法における炉内各部でのワーク温度の変動状況と送りローラによるワーク搬送速度の変動状況を図3に示す。
上述したように、この発明によれば、加熱ゾーン3と冷却ゾーン4との間に扉9を設けたので、急冷室4aの温度が安定し、また、送りローラ7による徐冷室3bから急冷室4aへのワーク移動が高速でなされて急冷室4aでのワークの冷却が急速になされ、これにより、焼入れによるマルテンサイト変態が安定して起こって良好な材料特性が得られる。
また、加熱ゾーン3におけるワークの搬送速度は、冷却ゾーン4における搬送速度の影響を受けず、ワークを低速で移動させながら焼結することができるので、焼結室の長尺化による設備の大型化を招かない。
1 脱ガスゾーン
2 予熱ゾーン
3 加熱ゾーン
3a 焼結室
3b 徐冷室
4 冷却ゾーン
4a 急冷室
4b 冷却室
5 排ガス燃焼炉
6 置換室
7 送りローラ
8〜13 扉
14 ヒータ
15、17 冷却ファン
16 ガスクーラ
18 搬送コンベヤ
T トレイ

Claims (5)

  1. ワークを収容したトレイ(T)を脱ガスゾーン(1)、予熱ゾーン(2)、焼結室(3a)を有する加熱ゾーン(3)、冷却ゾーン(4)に順番に導いて焼結と焼入れを連続的に行う高強度焼結部品の製造方法であって、前記加熱ゾーン(3)と冷却ゾーン(4)との間に扉(9)を設置して加熱ゾーン(3)から冷却ゾーン(4)への熱の流れをその扉で遮り、さらに、前記トレイ(T)の搬送を送りローラ(7)を設けて行って冷却ゾーン(4)におけるトレイの搬送速度を加熱ゾーン(3)における搬送速度よりも大、かつ、3℃/sec以上の冷却速度が得られる速さにして焼結と焼入れを行うようにしたことを特徴とする高強度焼結部品の製造方法。
  2. 前記加熱ゾーン(3)に、前記焼結室(3a)と冷却ゾーン(4)間に配置される徐冷室(3b)を含ませてその徐冷室の入口と出口に扉(8,9)を設置し、さらに、前記冷却ゾーン(4)に急冷室(4a)とその急冷室の後方に配置される冷却室(4b)を含ませて前記急冷室(4a)の入口と出口にもそれぞれ扉(10,11)を設置し、前記焼結室(3a)を通過したトレイを、出入り口の扉(8,9)が閉じられた前記徐冷室(3b)においてワークの変態点(A点)以上、900℃以下の温度を保持しながら急冷室による処理の順番が来るまで待機させるようにした請求項1に記載の高強度焼結部品の製造方法。
  3. 前記冷却ゾーン(4)のうち、徐冷室(3b)から前記急冷室(4a)に至る区間において、ワークの収容されたトレイ(T)を前記急冷室(4a)内での搬送速度よりも高速で搬送するようにした請求項1又は2に記載の高強度焼結部品の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法で高強度焼結部品を製造する連続焼結炉であって、ワークを収容したトレイ(T)を順番に送り込む脱ガスゾーン(1)、予熱ゾーン(2)、焼結室(3a)を有する加熱ゾーン(3)、冷却ゾーン(4)の各々と、各ゾーンの内部に設けるトレイ搬送用の送りローラ(7)と、前記加熱ゾーン(3)と冷却ゾーン(4)との間に設置されて加熱ゾーン(3)から冷却ゾーン(4)への熱の流れを遮る扉(9)を備え、前記冷却ゾーン(4)内の送りローラ(7)による搬送速度が加熱ゾーン(3)における送りローラの搬送速度よりも大、かつ、3℃/sec以上の冷却速度が得られる速さに設定された連続焼結炉。
  5. 前記加熱ゾーン(3)に、前記焼結室(3a)と冷却ゾーン(4)間に配置される徐冷室(3b)を含ませてその徐冷室の入口と出口に扉(8,9)を設置し、さらに、前記冷却ゾーン(4)に急冷室(4a)とその急冷室の後方に配置される冷却室(4b)を含ませて前記急冷室(4a)の入口と出口にもそれぞれ扉(10,11)を設置し、前記焼結室(3a)を通過したトレイを、出入り口の扉(8,9)が閉じられた前記徐冷室(3b)においてワークの変態点(A点)以上、900℃以下の温度を保持しながら急冷室による処理の順番が来るまで待機させるように構成された請求項4に記載の連続焼結炉。
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