JP2014131858A - 圧空成形用金型及び立体賦形品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低圧下においても表面外観の優れた立体賦形品を製造することができる圧空成形用金型を提供すること。
【手段】 上記課題は、加圧空気導入穴12を有する上型10と、金型コア22を有する下型20と、フィルムまたはシート32を固定し、前記上型10と前記下型20によって嵌合される固定枠30とを含む圧空成形用金型であって、成形前に前記金型コア22が所望高さ26よりも1〜5mm高い位置まで前進し、前記フィルムまたはシート32を押し上げ、前記加圧空気導入穴12から導入された加圧空気の圧力によって、成形時に該金型コア22が前記所望高さ26まで後退する動作機構28を有することを特徴とする、前記圧空成形用金型によって解決することができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、所望の立体形状に熱成形するための圧空成形用金型およびこれを用いた立体賦形品の製造方法に関し、特に、本発明は加飾成形品の製造に好適に用いられる。
加飾成形品(絵付け成形品)或いはインモールド成形品が、その生産性、デザイン性、機能性などの側面から注目されている。この適用対象物としては、携帯電話の外装部品、自動車関係部品、医療用機械器具、エレクトロニクス製品、家電製品、建材、洗剤や化粧品などの容器、玩具などが挙げられる。
特許文献1は、鏡面や絞面等を有する外観の良好な樹脂成形品を、表面にフィルム層を形成したり塗装を施したりすることなく、また、射出成形法のような高圧に耐える大型の装置を用いることなく成形できるようにするために、成形面を有する型部材の成形面裏面との間に空間を確保した状態で該型部材を支持する支持部材、前記成形面を成形対象のシート状樹脂のビカット軟化温度(T)℃以上まで加熱する加熱手段、及び前記空間に冷却媒体を供給することにより前記成形面を前記シート状樹脂のビカット軟化温度(T)−10℃以下の温度まで冷却する冷却手段を有する真空/圧空成形用金型を開示している。
特許文献2は、開口部2を四角形にすることができ、飾り枠等との嵌合部材を簡単にでき、また、反りを防ぐために冷却時間を長くする等の特殊な作業も必要ない技術を提供するために、開口周緑がすぼまった壷状を呈しかつ該開口周縁が矩形状を呈する角口壷形の圧空成形品を得るための圧空成形用金型において、該金型における前記開口周緑と対応する開口周緑部をそれらの各辺が外向きに膨らむように形成し、その膨らみの程度を成形後の材料冷却にともなう変形によって前記開口周線の各辺が直線状を呈するように定めたことを特徴とする圧空成形用金型を開示している。
ところで、従来の圧空成形法における賦形の一例として、水平配置の金型について要約すると以下の通りである。
(i)シートの保持具にてシートを固定する。
(ii)シートの保持具を加熱ゾーンへ移動させ、上方から赤外線加熱し、シートをそのTgより高温とし軟化させる。
(iii)シートの保持具を金型コア上に移動させ、型締を行い、同時に、加圧空気を導入する。
(iv)シートは金型コアの表面に接触するまで急速に伸び、金型コアの表面に接触すると急激に冷却され、樹脂のTg以下となり、金型コアの表面形状に沿って固定され賦形品となる。
(v)加圧空気など排出した後、賦形品を取り出す。
この方法で、加圧空気の最高圧力が、1MPa程度の低圧の場合で、金型コアの底面に対して略垂直な立ち上がり部を有するものでは、賦形されるシート(フィルム)の底面が緩いRを帯びているために金型インサートズレが発生したり、所定寸法より立ち上がり部が小さくなり意匠性を悪化させていた。賦形性を向上させる為には、低圧の場合、シートの加熱温度を高くして軟化度合いを大きくする必要がある。しかし、高温にし過ぎるとシート表面が溶融する事によって表面外観を悪化させたり、シートが大きく収縮する事による印刷ズレや印刷焼け等の問題が生じていた。
そこで、加圧空気の最高圧力を10MPa程度の高圧としてより高賦形性(底面部Rを小さくする)を得る方法がとられていた。この方法は、高圧が必須であり安全な取り扱い上の課題があり、漏れ防止、耐高圧性を考慮した金型、高額な高圧成形機等の設備面の充実が必須である。また、この高圧の加圧空気による立体賦形品は、無理やり伸ばされる為に応力がシートに残り、使用時にストレスクラックが発生したり、ハードコート層をもつシートを用いたものの場合、立ち上がり底辺近傍にハードコートクラックが発生しやすいものであった。
特開平10−193449号公報 特開2004−142403号公報
本発明者らは、加圧空気の最高圧力を1MPaにおいて、シートの厚みと垂直な立ち上がり部の高さを(シートの厚み0.05〜0.5mm、立ち上がり部の高さ3〜5mmの範囲で)変化させて試験した。その結果、シートの厚みや高さにかかわらず、立ち上がり部の下部の成形状態は、加圧空気の吹き込み開始から3秒以下で賦形がほぼ停止していた。得られた賦形品の立ち上がり部の下部は、半径約2mm程度の1/4円弧状であり、試験した範囲におけるシートの厚み、立ち上がり部の高さによる相違はほとんどないものであった。
賦形時のメカニズムは、加熱されたシートが型締後直ちに圧空によって成形金型コアの頂面及び底面に接触し、加熱されたシートは金型コア底面への接触と加圧空気によって冷却され固定される。
シートの立ち上がり部は、徐々に金型コアと空気に接触して冷却されながらも賦形が進行するが、最終賦形品の立ち上がり部の下部は、冷却がより進行する為に低い圧力では賦形することが不可能になると考えられる。
シートの厚みによる底面Rに差が殆どないことから、該部においては圧力が低い場合は、冷却速度の方が賦形速度より速いと考えられる。
本発明者らは、加圧空気の圧力が低い立体賦形品の製造法として、加圧空気の最高圧力を高くする方法に代わる解決策に関して鋭意検討した結果、本発明を完成した。
即ち、本発明の課題は、以下の手段によって解決することができる。
<1> 加圧空気導入穴を有する上型と、
金型コアを有する下型と、
フィルムまたはシートを固定し、前記上型と前記下型によって嵌合される固定枠とを含む圧空成形用金型であって、
成形前に前記金型コアが所望高さよりも1〜5mm高い位置まで前進し、前記フィルムまたはシートを押し上げ、前記加圧空気導入穴から導入された加圧空気の圧力によって、成形時に該金型コアが前記所望高さまで後退する動作機構を有することを特徴とする、前記圧空成形用金型である。
<2> 前記動作機構が弾性体からなる、上記<1>に記載の圧空成形用金型である。
<3> 前記弾性体が、ゴム、バネ、空気シリンダー、または油圧シリンダーである、上記<2>に記載の圧空成形用金型である。
<4> 前記固定枠の内径と前記金型コアの外径との距離が、前記所望高さの2倍以上である、上記<1>から<3>のいずれかに記載の圧空成形用金型である。
<5> 上記<1>から<4>のいずれかに記載の圧空成形用金型を用いた立体賦形品の製造方法であって、
成形前に金型コアを所望高さよりも1〜5mm高い位置まで前進させ、フィルムまたはシートを押し上げる工程、及び
加圧空気導入穴から導入された加圧空気の圧力によって、成形時に該金型コアを前記所望高さまで後退させ前記フィルムまたはシートを賦形する工程を有する、前記立体賦形品の製造方法である。
<6> 前記加圧空気の圧力が2MPa以下である、上記<5>に記載の立体賦形品の製造方法である。
<7> 前記所望高さまでの後退が、加圧空気の圧力が2MPa以下の設定最高圧に近接することにより開始される、上記<5>に記載の立体賦形品の製造方法である。
本発明によれば、賦形されるシートの立ち上がり部の下部をシャープな形状とすることができるので、インモールド成形品の意匠性を損なわず、また均一な伸びとすることができるので、ハードコートクラックを抑制した立体賦形品を提供することができる。
本発明の圧空成形用金型の一実施形態を示す概略図である。 シート固定枠が上型と下型によって嵌合され、金型コアが所望高さよりも高い位置まで前進し、加熱されたシートが変形し始めている状態を示す概略図である。 加圧空気が導入され、立ち上がり部の下部においてシートが賦形されない状態を示す概略図である。 加圧空気による内圧によってコイルスプリングが沈み、金型コアが所望高さに後退し、シートが金型コアに引き込まれて、立ち上がり部の下部においてもシートが賦形されている状態を示す概略図である。
以下、本発明の圧空成形用金型の一実施形態を図1から4を用いて説明する。
図1は、本発明の圧空成形用金型の一実施形態を示す概略図である。図1で表される圧空成形用金型は、加圧空気導入穴12を有する上型10と、金型コア22を有する下型20と、フィルムまたはシート32を固定し、上型10と下型20によって嵌合される固定枠30とを含み、成形前に金型コア22が所望高さ26よりも1〜5mm高い位置まで前進し、フィルムまたはシート32を押し上げ、加圧空気導入穴12から導入された加圧空気の圧力によって、成形時に金型コア22が所望高さ26まで後退する動作機構28を有している。シート32の格子状部分は、Tg以上の温度であることを示し、シート32の格子状でない部分は、Tg未満の温度であることを示している。図1では、動作機構28としてコイルスプリングを使用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
図2は、図1で表される圧空成形用金型と同じ構成を有しており、シート固定枠30が上型10と下型20によって嵌合され、金型コア22が所望高さ26よりも高い位置まで前進し、加熱されたシート32が変形し始めている状態を示す概略図である。
図3も、図1で表される圧空成形用金型と同じ構成を有しており、加圧空気導入穴12から加圧空気が導入され、立ち上がり部24の下部においてシート32が賦形されない状態を示す概略図である。
図4も、図1で表される圧空成形用金型と同じ構成を有しており、加圧空気による内圧によってコイルスプリング28が沈み、金型コア22が所望高さ26に後退し、シート32が金型コア22に引き込まれて、立ち上がり部24の下部においてもシート32が賦形されている状態を示す概略図である。
本発明の圧空成形用金型は、金型コア22における立ち上がり部24を上下(又は前後)に可動式とすることにより、高圧の空気を用いなくても立ち上がり部24の下部においてシャープな形状を得ることができる。
本発明の圧空成形用金型(以下、本金型と記す)は、金型の底面に対して略垂直な立ち上がり部24を有する金型コア22を有し、この金型コア22が目的の立体賦形品の高さ(所望高さ26)よりも1〜5mm高い位置まで前進し(または、押し上げられ)、典型的には最高圧力未満で設定した圧力以上にて後退を開始し、設定最高圧にまたはこの圧力に近接することにより所望高さ26まで後退する(または、押し下げられる)動作機構(手段)28を有する。好ましくは、加圧空気の圧力が2MPa以下の設定最高圧に近接することにより所望高さ26まで後退し、より好ましい設定最高圧は1〜2MPaである。
金型コア22の立ち上がり部24は、少なくとも一方向は実質的に垂直な壁の立ち上がりを有するものである。そして、立ち上がり部24の高さは、小さな立ち上がり高さ、例えば、1mmでも充分に効果を発揮するが、一般的に用いられる成形品の立ち上がり面高さとして3〜30mmの範囲が好ましく挙げられる。なお、立ち上がり部24の底面断面でみると、従来の金型で成形すると2mmR程度であり、本発明の金型を用いると1mmR以下とする事が可能となる為、打ち抜き時のプレス型へのインサートも容易となるし、精度良く底面まで打ち抜く事が可能になる事によって、インモールド成形時の位置ズレ等の不具合が解消できる。
本発明における金型コア22の所望高さ26に対する前進(または押し上げ)量は、1mm乃至5mmである。好ましくは、1〜3mmである。
例えば、前進前の立ち上がり部24の高さが4mmの場合、前進量2mmとして前進後の立ち上がり部24の高さは6mmとなる。つまり、成形初期段階では6mmの高さの一時賦形が、固定枠30と金型コア22にて金型内で行われることとなる。この一時賦形では、箱型形状であれば立ち上がり面に対応する部位のシート32が2mm高さ分余計に伸ばされたのち、金型コア22に沿って賦形される形となるので部分的な局所伸びが発生しにくい賦形形態となっている。前進量が5mmを超えると金型コア22を前進させて伸ばされたシート32が伸びすぎて、金型コア22を所定位置に戻した際にシワ(余剰な伸び)が発生する。一方、前進量が1mm未満では賦形される効果が小さい。
固定枠30と金型コア22の距離関係については、所望高さ26の2倍以上の距離を設けることが望ましい。より好ましくは、3〜4倍である。固定枠30と金型コア22の距離が所望高さ26の2倍未満であると近すぎるために、シート32の伸び量が大きくなりすぎ、金型コア22の高さが低くてもシート32が破れやすくなったり、ハードコート品であればクラックが発生しやすくなることがある。
金型コア22の立ち上がり部24の高さの調整(前進位置及び後退位置の調整)は、機械的に行うのが望ましい。前進位置方向に押し上げるためには弾性体が良好である。例えばゴムまたはバネを選択するのが、安価で、簡便である。必要によって空気ピストン、空気ばね、空気シリンダー、油圧ピストン、油圧シリンダー等も使用可能である。
後退位置方向に押し下げるためには、圧空成形時のシート32を介して加圧空気の圧力により、バネ等の動作機構28の荷重が負けることによって後退或いは押し下げが開始され、加圧空気の最高圧力の負荷にて或いは負荷までに、後退或いは押し下げが完了するようにする。
動作機構28として弾性体を用いる場合の押し下げ力の設定値は、成形金型面の断面積と負荷される実際の圧力の積で決定される為、この値を元に弾性体の耐力、強度、弾性範囲、その他の必要特性を決定し選択する。
第二に、本発明は、上記本金型を用いる立体賦形品の製造方法である。具体的には、上記圧空成形用金型を用いた立体賦形品の製造方法であって、成形前に金型コアを所望高さよりも1〜5mm高い位置まで前進させ、フィルムまたはシートを押し上げる工程、及び加圧空気導入穴から導入された加圧空気の圧力によって、成形時に該金型コアを前記所望高さまで後退させ前記フィルムまたはシートを賦形する工程を有する、前記立体賦形品の製造方法である。
一方、従来の製造工程は、下記の通りである。
(i)シートの保持具にてシートを保持する。
(ii)シートの保持具とともに加熱ゾーンへ移動させ、上方から赤外線加熱し、シートをそのTgより高温とし軟化させる。
(iii)シートの保持具を上型と下型によって嵌合し型締を行い、加圧空気を導入する。
(iv)シートは金型コアの表面に接触した部分から(樹脂のTg以下となり)固定され、非接触部は急速に伸びて金型コアの表面に接触し固定されて金型コアの表面形状に沿った賦形品とされる。低圧成形の場合、金型コアの立ち上がり部の下部において冷却速度が賦形速度より速い為に2mmR程度の賦形不良が発生する。
(v)加圧空気など排出した後、賦形品を取り出す。
本発明の立体賦形品の製造方法は、上記(i)〜(v)の製造工程と比較して以下の点で異なる。
・金型コアの高さ設定位置が、所望高さより高く設定されている。
・型締時点で保持具(固定枠)と金型コア(高さが高くなっている分)によって立ち上がり部に対応するシートが伸ばされる。
・賦形初期において、金型コアの高さが高い事により、立ち上がり部に対応するシートは金型コアと底面(接触時に密着固定される)によって引っ張られ、所望高さ以上に伸びることとなる。ついで該部のシートは徐々に金型コアに沿って賦形されるが、立ち上がり部の下部は2mmR程度の賦形不具合部が残る。更に継続して導入される加圧空気によって設定最高圧力に近づくことにより、バネ等の弾性体の荷重が負け、金型コアが所望高さまで後退する。その際、賦形されたシートは立ち上がり部の下部へ引き戻されるので、2mmRであった底面の形状は1mmR以下まで形状賦形できる。
本発明の立体賦形品の製造方法は、上記のような新規な圧空成形用金型を用いるものであり、加圧空気の圧力が低圧といえる範囲を用いる以外は、従来の条件を使用することができる。
赤外線加熱は、従来からの通常の近赤外線ヒーターでも、遠赤外線ヒーターでも良い。
前記加圧空気の圧力は、通常、3MPa以下、好ましくは2MPa以下、より好ましくは1〜2MPaである。
金型コアの所望高さまでの後退は、加圧空気の圧力が2MPa以下の設定最高圧にまたはこの圧力に近接することにより完了するように設定することが好ましい。金型コアの立ち上がり部の形状は、空気圧力が0.5MPa程度(計装空気)でも2〜3MPaと見た目には大差のない曲率の1/4円弧状態とすることができる。
以上の本発明に用いる前記フィルム或いはシートの厚さは、0.05〜1.2mmが好ましく、適宜、その表面層として硬質樹脂層及び/またはハードコート層を有するものが好ましく挙げられる。
良好な立体賦形品を得る観点から、金型コアの立ち上がり部の高さ(所望高さ)は、通常、30mm以下から選択される。立ち上がり部の高さは、シートの厚みとも関連し、厚いシートを用いれば10mm以上の高さであっても伸びによる破断がない為、追従可能であるが、薄いシートの場合は薄くなりすぎて破断する為に適宜形状に合わせて調整することが望ましい。本金型を用いる製造方法の場合、立ち上がり部の高さが高くても一般的な方法と比較して局所的な大きな伸びが発生しにくい(伸びによる破断が発生しにくい)ので、相対的に従来工法より立ち上がり部の高いものまで良好な立体賦形品を製造することができる。
また、同じハードコートを用いても従来工法より局所的な伸びが発生しにくいので、より高い形状までクラックなしに使用する事が可能となる。但し、ハードコートの平均的な伸び以下の形状までとなる。例えば40%の伸び率のハードコートであれば、局所的に40%伸びればクラックが発生するが(一般的には4mm高さ)、平均的に40%であれば8mm程度の高さまでクラックの発生しないまま対応可能である。
前記フィルム或いはシートとしては、例えば、(1)透明なプラスチック材料を用いた透明シート、(2)耐衝撃性や適度の耐熱性を持つ樹脂を基材層とし、その片面あるいは両面に硬質樹脂層を形成した透明な多層シート、さらに(3)前記(1)又は(2)のシートの片面或いは両面にハードコート層を形成したシート或いは多層シートが挙げられる。
本発明においては、通常、裏面に適宜、意匠性などを有する印刷層や金属化層が適宜形成されたものを用いることもできる。
本フィルム或いはシートに用いる透明なプラスチック材料としては、芳香族ポリカーボネート、非晶性ポリオレフィン(代表例:脂環式ポリオレフィン)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルフォン、アセチルセルロース、ポリスチレン、非晶性ポリエステル(代表例:脂環式ポリエステル)、透明ポリアミドなど及びこれらの組成物からなる透明樹脂が挙げられる。これらの中で光学用として用いられている樹脂が好ましく、芳香族ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリレート共重合樹脂、水添スチレン−(メタ)アクリレート共重合樹脂(スチレン成分のベンゼン環を水素添加して一部脂環としたもの)、透明ポリアミド、及び芳香族ポリカーボネートと非晶性ポリエステル(代表例:脂環式ポリエステル)との組成物などが例示される。
芳香族ポリカーボネート(PC)としては、耐衝撃性、強度、耐熱性、耐久性あるいは曲げ加工性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンや2,2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジハロゲノフェニル)アルカンで代表されるビスフェノール化合物を用いて周知の方法で製造された重合体が好ましく、その重合体骨格に脂肪酸ジオールに由来する構造単位やエステル結合を持つ構造単位が含まれても良く、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いて製造される芳香族ポリカーボネートが好ましい。
芳香族ポリカーボネートとの組成物として用いる非晶性ポリエステル樹脂は、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸で代表されるジカルボン酸成分と1,4−シクロヘキサンジメタノールで代表されるジオール成分と、必要に応じて他の少量の成分とを、エステル化またはエステル交換反応させ、次いで、適宜、重合触媒を添加し徐々に反応槽内を減圧にし重縮合反応させる公知の方法により得られるものが挙げられる。
脂環式ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体は、具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,7−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、およびそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
本発明に使用されるポリアミド樹脂は、光学用透明ポリアミド樹脂として公知のものが挙げられ、耐熱性の一指標である熱変形温度100〜170℃の範囲であり、芳香族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、並びに、これらの共重合体が挙げられ、機械的強度、耐薬品性、透明性等のバランスから脂環式ポリアミド樹脂は好ましいものであるが、2種以上のポリアミド樹脂を組み合わせてもよい。このようなポリアミド樹脂の例として、GLILAMID TR FE5577、XE 3805(EMS製)、NOVAMID X21(三菱エンジニアリングプラスチックス製)、東洋紡ナイロン T−714E(東洋紡製)があるが、これらに限定されない。
(メタ)アクリル樹脂は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)に代表される各種(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、またはPMMAやMMAと他の1種以上の単量体との共重合体であり、さらにそれらの樹脂の複数種が混合されたものでもよい。これらのなかでも、低複屈折性、低吸湿性、耐熱性に優れた環状アルキル構造を含む(メタ)アクリレートが好ましい。以上のような(メタ)アクリル樹脂の例として、アクリペット(三菱レイヨン製)、デルペット(旭化成ケミカルズ製)、パラペット(クラレ製)があるが、これらに限定されない。
これらの中で、上記(2)の基材層は基礎物性を保持するための層であり、使用する樹脂としては、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリカーボネートと非晶性ポリエステル樹脂との組成物がその高い耐衝撃性から代表例として挙げられる。
この基材層の片面或いは両面に形成する硬質樹脂層としては、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリレート共重合樹脂、水添スチレン−(メタ)アクリレート共重合樹脂(スチレン成分のベンゼン環を水素添加して一部脂環としたもの)、2,2−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)アルカンなどを共重合した芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂に相溶性である芳香環を持つ(メタ)アクリルモノマーを共重合した(メタ)アクリル樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂との組成物などが例示され、(メタ)アクリル系樹脂と水添スチレン−(メタ)アクリレート共重合樹脂(スチレン成分のベンゼン環を水素添加して一部脂環としたもの)が好ましい。
これらは耐候性の改良から通常、紫外線吸収剤を配合した組成物として用いる。
本フィルム或いはシートは、通常、押出法或いは共押出法により製造され、厚みは0.05mm〜1.2mmの範囲から適宜選択されることが好ましい。
多層シートの場合、基材シートの片面或いは両面に形成する硬質樹脂層の厚みは、多層シートの厚みの半分より薄いものであり、好ましくは0.03mm〜0.1mmから選択する。薄すぎると鉛筆硬度などの硬度が低くなり、厚すぎても硬度を高める効果がなくなり、基材シートの特性低下が大きくなり好ましくない。
そして、押し出し工程において、或いは、押し出しされた後に、適宜、ハードコートされる。通常は、耐磨耗性や耐指紋性(指紋ふき取り性)に優れたものが好ましいが、熱成形して所望の三次元形状を付与することが必須であることから、所望の熱成形性を示すハードコートを施したものを選択することが好ましい。
ハードコート層は、アクリル系、シリコン系、メラミン系、ウレタン系、エポキシ系等公知の架橋皮膜を形成する化合物を使用することができる。また、硬化方法も紫外線硬化、熱硬化、電子線硬化等公知の方法を用いることができる。これらの中で、表面側とする面には、鉛筆硬度H以上と出来るものが好ましく、熱賦形性とのバランスからアクリル系が好ましいものとして例示される。
ハードコート層の付与は、通常の方法で良く、ロールコート法などの塗布法、ディプ法、転写法などで形成する。
アクリル系としては、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基(アクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基の意、以下同じ)を有する架橋重合性化合物であって、各(メタ)アクリロイルオキシ基を結合する残基が炭化水素またはその誘導体であり、その分子内にはエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等を含むことができる。また、熱賦形性を付与する成分として分子量が千〜数千の長鎖成分を適宜含むことができる。
本発明で使用される多層シートは、通常、裏面に意匠性の印刷層を有する。
本発明で使用される多層シートは、取り扱い性や裏面への印刷や金属化の適性から裏面にもハードコート層を有するものが好ましい。好適な場合、裏面側は基材樹脂上に、ハードコート層/印刷層を持ち、この上に、射出成形樹脂が乗り、熱融着されたものとなる。この点から、伸びが必要な部分に印刷層がある場合、印刷インキは、ハードコート層に強固に接着し、伸びを持ち、さらに、用いる成形樹脂とも熱融着するものを選択することが好ましい。
次に、本発明に従って所望形状に熱賦形された多層シートを射出成形用の金型に装着し、成形用樹脂材料を射出成形して成形品を製造するができる。
樹脂成形材料は、熱賦形された多層シートと熱融着することが必須である。
そのままで良好に熱融着する場合もあるが、上記したように、通常、多層シートの裏面には印刷による意匠を持ち、適宜、射出成形樹脂との熱融着用の保護層を兼ねたプライマー層を形成したものを用いることができる。
以下、実施例などにより本発明の一例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
成形機として圧空成形機(エヌケイエンタープライズ製)を使用した。
本発明の圧空成形用金型の材質としてアルミを用いた。
金型コアとして50mm角の形状のものを使用し、高さ4〜30mmで位置設定可能なものを使用した。内部に配置するばねとしてコイルスプリング(ミスミ(株)製 SWC、外径φ16、ばね定数5.08kgf/mm、55%撓み時の荷重12.8kgf)を使用し、位置設定に応じ長さの異なるコイルスプリングを4本使用し、押し上げ可能とした。用いたシートとして、140mm角の芳香族ポリカーボネート樹脂の基材層表面にアクリル樹脂層を形成した共押出シート(三菱ガス化学(株)製DF02U 0.5mm)及び、そのアクリル樹脂層上に伸びるハードコートを持つシート(三菱ガス化学(株)製 MRF08U 0.5mm(ハードコート伸び率;40%))を用い、PC面(裏面)に印刷層(帝国インキ製造(株)製 INQ-HF(白)上にIMB006バインダーを積層)の意匠を形成したものを用いた。尚、シートを固定する固定枠は、100mm角のシートが成形できるように窓が空いた固定枠となっている。固定枠と金型コアの間の距離は50mmであった。
(実施例1)
金型コアの最終高さ(所望高さ)設定:5mm、押し上げ時の高さ:7mm(前進量2mm)として固定枠にシートを固定した。金型コアと固定枠との間の距離は50mmであり、金型コアの最終高さ(所望高さ)の10倍である。ついで加熱ゾーンへ該シートを搬送し、IRヒーター(400℃設定)にて加熱し、赤外放射温度計にて190℃に到達するのを確認後、型締ゾーンへ移動させ、型締した。
その際、シートと金型コアが接触して天面が固定冷却され、また固定枠と金型コア間のシートが平均的に伸ばされた。
ついで最高圧力1.3MPaに設定した加圧空気を金型内に導入した。
まず、立ち上がり部の下部にシートが固定(金型コアとは接していない)されたのち、天面側と底面固定部から金型コアを賦形するように徐々に接触、立ち上がり部の下部は2mm程度のRを有していた(圧力を0.5MPa程度として状態を確認)。
圧力を徐々に上げて行き最高圧に達するようにした。
圧力が高くなるにつれコイルスプリングが押し下げられ、押し上げ時の7mmの高さが設定高さ(所望高さ)の5mmまで押し込められる事によってシートも引き込まれ、底面Rが0.8mmRまで賦形されていた。
圧力は低いものの上記DF02U、MRF08Uともに表面欠陥がなく、底面も綺麗に賦形された成形品となっていた。特にMRF08Uはハードコートされており、5mmの高さにも拘わらず、40%以下の伸びとなっている為にクラックが発生していなかった。
ついでプレス金型にて不要な部分を打ち抜いてフォーミング成形品を得た。
また金型材質としてアルミを用いたが、圧力が低かった為、金型の変形による空気漏れ等の不具合も発生しなかった。
(実施例2)
実施例1で得られた成形品をキャビティーが51mm角で肉厚2mmの射出成形金型内にインサートして、射出成形機(日本製鋼所製 J110AD)を用い、PC(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ユーピロンH3000)にて樹脂温度300℃、金型温度80℃、射出圧力100MPaで射出注入し、該成形品と射出材料を一体化させた加飾成形品を得た。
実施例1で打ち抜かれた成形品は、底面のエッジが小さい為に金型内に綺麗にインサートでき、射出成形による不具合等も発生していなかった。
(実施例3)
実施例1で使用した金型を用いて、金型コアの最終高さ(所望高さ)設定:25mm、押し上げ時の高さ:30mm(前進量5mm)として固定枠にシートを固定した。金型コアと固定枠との間の距離は50mmであり、金型コアの最終高さ(所望高さ)の2倍である。シートとして140mm角の芳香族ポリカーボネート樹脂の基材層表面にアクリル樹脂層を形成した共押出シート(三菱ガス化学(株)製D02U 1.0mm)を用いた。
加熱温度を放射温度計で160℃(シートが厚い為に裏面温度が160℃であっても内部は190℃程度となっている)となるまで加熱後、同様に型締、加圧空気を導入して圧空成形を実施した。
シートが厚く、成形圧力が低いにもかかわらず、表面欠陥がなく、底面も綺麗に賦形された成形品(底面部のR 0.9mm)となっていた。ついでプレス金型にて不要な部分を打ち抜いてフォーミング成形品を得た。
また金型材質としてアルミを用いたが、圧力が低かった為、金型の変形による空気漏れ等の不具合も発生しなかった。
(比較例1)
実施例1で用いた金型のコイルスプリングを抜いて金型コアの高さを5mm固定として、実施例1と同様なシートと条件で圧空成形を実施した。
賦形品は底面の賦形が悪く、底面部のシートの形状を測定したところ、約2mmRであった。またMRF08Uに関しては、底面付近が局所的に伸びたためか底面部近傍にクラックが発生していた。同様に打ち抜いたところ立ち上がり部の高さが4mmしかなく、実施例2のような成形を行ったところ、一体化されたものの底面から1mm程度はシートがない為に射出成形材料が露出していた。
(比較例2)
実施例1で用いた金型を用い、金型コアの最終高さ(所望高さ)設定:5mm、押し上げ時の高さ:15mm(前進量10mm)として固定枠にシートを固定した。
実施例1と同じ条件で成形を実施し、成形品を取りだしたところ、押し上げ時の高さが高かったためか立ち上がり部のシートが大きく伸び、成形品の4隅等に皺が発生していた。
本発明によれば、賦形されるシートの立ち上がり部の下部をシャープな形状とすることができるので、インモールド成形品の意匠性を損なわず、また均一な伸びとすることができるので、ハードコートクラックを抑制した立体賦形品を提供することができる。特に、本発明は、加飾成形品(絵付け成形品)或いはインモールド成形品の製造に好適に使用され、携帯電話の外装部品、自動車関係部品、医療用機械器具、エレクトロニクス製品、家電製品、建材、洗剤や化粧品などの容器、玩具などの分野で利用することができる。
10 上型
12 加圧空気導入穴
20 下型
22 金型コア
24 立ち上がり部
26 所望高さ
28 コイルスプリング
30 シート固定枠
32 シートまたはフィルム

Claims (7)

  1. 加圧空気導入穴を有する上型と、
    金型コアを有する下型と、
    フィルムまたはシートを固定し、前記上型と前記下型によって嵌合される固定枠とを含む圧空成形用金型であって、
    成形前に前記金型コアが所望高さよりも1〜5mm高い位置まで前進し、前記フィルムまたはシートを押し上げ、前記加圧空気導入穴から導入された加圧空気の圧力によって、成形時に該金型コアが前記所望高さまで後退する動作機構を有することを特徴とする、前記圧空成形用金型。
  2. 前記動作機構が弾性体からなる、請求項1に記載の圧空成形用金型。
  3. 前記弾性体が、ゴム、バネ、空気シリンダー、または油圧シリンダーである、請求項2に記載の圧空成形用金型。
  4. 前記固定枠の内径と前記金型コアの外径との距離が、前記所望高さの2倍以上である、請求項1から3のいずれかに記載の圧空成形用金型。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の圧空成形用金型を用いた立体賦形品の製造方法であって、
    成形前に金型コアを所望高さよりも1〜5mm高い位置まで前進させ、フィルムまたはシートを押し上げる工程、及び
    加圧空気導入穴から導入された加圧空気の圧力によって、成形時に該金型コアを前記所望高さまで後退させ前記フィルムまたはシートを賦形する工程を有する、前記立体賦形品の製造方法。
  6. 前記加圧空気の圧力が2MPa以下である、請求項5に記載の立体賦形品の製造方法。
  7. 前記所望高さまでの後退が、加圧空気の圧力が2MPa以下の設定最高圧に近接することにより開始される、請求項5に記載の立体賦形品の製造方法。
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