JP6009275B2 - 加飾成形品の製造法及び共押し出しシート - Google Patents
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Description
しかし、4Hを超えるような表面硬度の高いハードコートを施したフィルム或いはシートを用いる方法では、ハードコート膜の性質から、適用可能な成形品は緩やかな曲面を有するものまでであり、ある程度以上の伸びを必要とする曲面には適用できないものであった。
(1)表面に熱成形可能な一次硬化膜を形成し裏面に所定の意匠を有するフィルム或いはシートを用いて所望の曲面に賦形したものをそのまま或いは一次硬化膜を硬化し金型に装着し、インサート成形品を得、適宜、後硬化する方法、
(2)適宜ハードコート用のプライマー層を表面に形成し裏面に所定の意匠を有するフィルム或いはシートを所望の曲面に賦形したものをそのまま或いはハードコートしたものを金型に装着し、インサート成形品を得、適宜、ハードコートを行う方法が考えられ開発改良など行われている。
この両者ともに、賦形された曲面に後処理を施す工程を必須とするものであることから、高歩留まりの工程とすることが困難であるという課題があり、さらに、シートインサート成形法の優れた生産性を生かしきれないという課題がある。
この解決策に関して鋭意検討した結果、本発明を完成した。
<1> フィルム或いはシートの少なくとも表面にハードコートを施し、その裏面に任意に意匠を施した該フィルム或いはシートを赤外線加熱し、前記ハードコート側を外表面として立体形状に熱成形し、前記裏面に熱可塑性樹脂を射出一体化してシートインサート加飾成形品を製造する方法であって、
該フィルム或いはシートが、芳香族ポリカーボネート樹脂層の片面にアクリル系樹脂層を有する共押し出しシートであって、前記芳香族ポリカーボネート樹脂層が赤外線吸収剤(a)を配合してなるもの、または芳香族ポリカーボネート樹脂層面に赤外線吸収剤(a)を配合した層が形成されてなるものであることを特徴とする加飾成形品の製造法である。
<2> 前記共押し出しシートの熱成形が、赤外線加熱によって前記赤外線吸収剤(a)が添加または塗布された層の温度を180〜220℃とし、加圧空気にて賦形するものである上記<1>に記載の加飾成形品の製造法である。
<3> 熱成形前の前記共押し出しシートの厚みが 0.1〜0.6mmであり、前記アクリル系樹脂層の厚みが 30〜80μmである上記<1>または<2>に記載の加飾成形品の製造法である。
<4> 熱成形して加飾フィルムインサート成形品を製造するための共押し出しシートであって、
該共押し出しシートが、芳香族ポリカーボネート樹脂層の片面にアクリル系樹脂層を有し、少なくとも該アクリル系樹脂層上にハードコートを有し、該共押し出しシートの厚みが 0.1〜0.6mmであり、該アクリル系樹脂層の厚みが 30〜80μmであり、該芳香族ポリカーボネート樹脂層が赤外線吸収剤(a)を配合してなるもの、または芳香族ポリカーボネート樹脂層面に赤外線吸収剤(a)を配合した層が形成されてなるものであることを特徴とする共押し出しシートである。
<5> 前記赤外線吸収剤(a)が添加または塗布された共押し出しシートにおける、800nm〜1800nmの近赤外線領域の最小透過率が10〜60%である上記<4>に記載の共押し出しシートである。
<6> 耐擦り傷性試験(ASTM D 2486-79に準拠、豚毛ブラシを用い荷重450gで200往復)において生じる擦り傷が10本以下である上記<4>または<5>に記載の共押し出しシートである。
<7> 前記赤外線吸収剤(a)が、下記一般式(I)
本発明の共押し出しシートは、熱成形して加飾フィルムインサート成形品を製造するために使用されるものであり、芳香族ポリカーボネート樹脂層の片面にアクリル系樹脂層を有し、少なくとも該アクリル系樹脂層上にハードコートを有し、該芳香族ポリカーボネート樹脂層上に適宜意匠が施されたシートである。
本発明は、この共押し出しシートの芳香族ポリカーボネート樹脂層として、赤外線吸収剤(a)を配合したものを用いるか、または、芳香族ポリカーボネート樹脂層面に赤外線吸収剤(a)を配合した印刷やハードコート層を形成したものを用いることを特徴とする。
また、アクリル系樹脂層は、通常、ハードコートを形成する表面のみに形成したものであるが、場合によっては金属蒸着層を設ける目的等で裏面にも用いられる。さらに、本共押し出しシートは、熱成形時の加熱収縮などがより小さいものが、より大きな伸びのある熱成形を可能とする傾向があることから好ましい。
本発明の共押し出しシートは、耐擦り傷性試験(ASTM D 2486-79に準拠、豚毛ブラシを用い荷重450gで200往復)において生じる擦り傷が10本以下であることが好ましく、5本以下であることがより好ましい。
赤外線吸収剤(a)は、これを配合した芳香族ポリカーボネート樹脂層または印刷などによる塗布層を透かして意匠を見ることとなることから、可視光線の透過を可能な限り妨げずかつ着色の少ないもの、意匠を阻害しないもの、意匠の一部を構成するようにしたもの或いは許容可能な着色に止まるように少量使用とすることなどの観点から適宜選択する。また、芳香族ポリカーボネート樹脂層に配合するものとして用いる場合には、通常、芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融混練にてペレットを製造する工程や、このペレットを用いて共押し出しシートを製造する工程において実質的に変質しないものを選択する。
赤外線吸収剤(a)の添加量としては、芳香族ポリカーボネート樹脂層に添加する場合は、肉厚が厚いために添加量が多いと可視光線透過率が低下してしまう為、0.005〜0.2重量%が好ましく、0.01〜0.1重量%がより好ましく、0.02〜0.08重量%が特に好ましく、基材の厚みと透過率によって選定される。
また、使用量は、赤外線遮蔽が目的ではなく、均一加熱や急速加熱にあることから、800nm以上の近赤外線領域、特に1800nm以下において、透過率の最小値が10%以上で、近赤外線領域の透過率として80%以下から選択するのが好ましい。更に、800nm〜1800nmの近赤外線領域の最小透過率が10〜60%であることがより好ましい。
赤外線吸収剤(a)を用いた印刷やハードコート層は膜厚が20μm以下と薄いため、透明になりやすいが効果が劣るので、0.03〜0.2重量%の範囲で添加するのが好ましく、0.05〜0.1重量%の範囲で添加するのがより好ましい。
無色透明なアクリル系樹脂も同様であり、両者とも略同一か又は芳香族ポリカーボネート樹脂層がやや大きいと思われる。
赤外線加熱は、この5%程度の吸収に基づく最小量の加熱に、裏面の意匠による吸収や反射による増加分を加えたものとなる。典型的には、赤外線を完全に遮蔽し吸収して発熱するような黒印刷層と、赤外線を完全に遮蔽し略反射して発熱しない白印刷層と、最小量と記載した先の透明部とである。黒印刷部がPCをまず加熱し、その加熱にてあとからPMMAが加熱されることから最も賦形性に優れた部分となる。均一な意匠層はない。ゆえに、場所に応じて大きな加熱速度の差が発生し、均一良好な成形品を製造することが困難となる。赤外線吸収層は、均一に存在し、この層に基づく発熱量は均一となる。
それを裏付ける現象として、PC層全面に黒印刷を施すことによって、迅速かつ均一に加熱されることから、所望の性能が得られたハードコートであってもクラックを生じることなく、所定の性能まで伸ばす事が可能であるし、賦形性も向上させる事が可能である。
ただ意匠性という意味では、全面黒印刷はあり得ないため、透明であっても黒印刷並みに加熱速度を速めたり、均一に加熱できるような本願記載の基材が有効である。
本成形機の加熱源としては、面状のIRヒーターが多数個取りつけられており、広い面積であっても加熱する事が可能となっている。
IRヒーターとしては、近赤外、中赤外、遠赤外ヒーターなどを用いることができる。透明樹脂の場合、近赤外域において殆どの樹脂は透過率が高く(90%程度)、近赤外を10%程度しか吸収できないために遠赤外域でほぼ吸収を行っている。遠赤外ヒーターが多く使用されているのはこの理由からである。ただ遠赤外ヒーターであってもピークが2500nmにあるだけで近赤外も多く出ているために、本願のように通常吸収されない近赤外域で吸収させて効率良く加熱する事は、均一且つ迅速に加熱する手段としては理想的である。
本発明では、下記一般式(I)
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを、または、これらに少量のポリヒドロキシ化合物、分子量調節剤等を用いて反応させてなる、直鎖または分岐を持っていても良い公知の熱可塑性の芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体であり、溶液法(界面法、ピリジン法など)、溶融法(エステル交換法)など公知の方法によって製造される。
なお、粘度平均分子量[Mv]は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4M0.83、から算出される値を意味する。ここで極限粘度[η]とは、各溶液濃度[c](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、(ηsp/c)の値を濃度Cが0へ外捜して得られる値(濃度Cが0の極限値)である。
本発明において共押し出しシートに用いるアクリル系樹脂は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリメタクリレート(PMA)に代表される各種(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、またはメチルメタクリレート(MMA)やメチルアクリレート(MA)と他の1種以上の単量体との共重合体であり、さらにそれらの樹脂の複数種が混合されたものでもよい。
MMAやMAを主体とした通常2H以上の硬質アクリル系樹脂は、耐擦り傷性の用途として好適である。アルキル基の炭素数が2以上のアルキル(メタ)アクリレートを共重合したもの、好ましくは10モル%以上共重合した軟質アクリル系樹脂は、表面硬度や耐クラック性の改善の程度は劣るが柔軟で接着性などに優れたものであり、内層面用やハードコートなどのコーティング用の前処理層表面として好適に用いられている。
これらのなかでも、脂肪族系の化合物が好ましく、アルキル基の炭素数が2〜18のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。また、スチレンなどを共重合したアクリル系樹脂のベンゼン環を水素添加したものも用いられる。以上のような(メタ)アクリル系樹脂の例として、アクリペット(商標・三菱レイヨン製)、デルペット(商標・旭化成ケミカルズ製)、パラペット(商標・クラレ製)などがある。
酸化防止剤、着色防止剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)、住友化学工業(株)、旭電化工業(株)などのカタログに記載の各種のヒンダードフェノール類などの酸化防止剤、フォスファイト類などの着色防止剤の使用が可能である。
上記共押し出しシートのアクリル系樹脂面にハードコート層(以下、適宜、HC層と記す)を形成して本発明の共押し出しシートとする。
ハードコート層は、共押し出しシートの芳香族ポリカーボネート樹脂(基材)層のガラス転位温度以上において、特に熱成形時において伸びが、30%以上を示すものがより好ましい。
ハードコート層の形成に用いる塗料は、PET用として公知の市販の伸びを示すものから適宜選択したもの、或いはこれをベースとして、本共押し出しシートに適用可能なように副成分、例えば、溶剤系などを変更したものが使用できる。
ハードコート層の厚みの調製は、主にハードコート塗料の固形分濃度を調製することにより行う。
ハードコート層の厚みは、通常0.5〜10μmであり、耐薬品性の向上の点から好ましくは4μm以上を選択する。このハードコート層がアクリル系樹脂層上に形成されることにより、アクリル系樹脂の示す鉛筆硬度以上、例えばH以上を示し、所定レベルの耐擦り傷性や耐薬品性を発揮する。
本発明の共押し出しシートは、そのままでも適宜使用できるが、通常は裏面に、数字、文字、符号、模様、その他の識別符号類や模様の印刷などまたは金属化などの意匠を形成して用いる。なお、意匠を形成した裏面は、射出成形樹脂との接着面となるので、接着性に課題がある場合には、接着用のプライマー層を適宜形成することができる。
なお、伸びを示すハードコートも架橋構造からなるので、架橋結合の開列反応以外では通常は劣化しない。しかし、架橋構造の網の目は、伸びを保持するために緩やかである。有機薬品などは、この網の目の大きさと、自身の大きさとに応じて時間は変化するが、浸透し基材フィルムに到達することが可能である。ゆえに、高温時、長時間後の耐薬品性は、基材フィルム、特にアクリル系樹脂の耐性となるが、ハードコート層が厚ければ、厚さに応じて耐薬品性が向上するので、伸びが保持される限り厚くすることが好ましい。
脂肪族または脂環族のジイソシアネートとしては、炭素数8〜15の脂肪族ジイソシアネートが例示され、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
まず、(メタ)アクリレートとは、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を持つ化合物を意味する。
(メタ)アクリレートは、モノマー、オリゴマー、プレポリマーのいずれでもよい。(メタ)アクリレートは、単官能、2官能性以上の多官能でもよく、極性基を有していてもよいし低極性分子構造でもよい。
極性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基等が例示され、1種以上を複数持つものも好適に使用出来る。例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレート((メタ)アクリルアミド)の水酸基は、イソシアネートとの反応に好適であり、上記の(a)成分の調製に用いられる。
これらの(メタ)アクリレート基が結合する部分の分子構造は、その構造中に、直鎖、分岐鎖、脂環や芳香環を1種以上有するもの、エーテル、エステル、ウレタン、アミドなどの結合構造及びシリコーン鎖などにてオリゴマー化したものが例示される。
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、これらの化合物は、単体または混合して用いられる。
また、光硬化性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することができる。さらに熱重合開始剤を併用することも出来る。
ハードコート層には状況に応じてレベリング剤、消泡剤、防汚剤等の界面活性剤や、表面改質剤等の添加剤や、有機フィラー、無機フィラー等のフィラーを添加することができる。
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂を押し出すメイン押出機と、アクリル系樹脂を押し出すサブ押出機とを用い、各々用いる樹脂の条件にて樹脂を溶融し押し出しダイに導き、ダイ内部で積層しシート状に成形した後或いはシート状に成形し積層した後、鏡面成形ロール(ポリッシングロール)に導き共押し出しシートとする。
芳香族ポリカーボネート樹脂の押出温度条件は、通常、230〜300℃、好ましくは240〜290℃であり、アクリル系樹脂の押出温度条件は通常220〜270℃、好ましくは230〜260℃である。
マルチマニホールドダイの場合は、溶融樹脂をダイ内で積層し、ダイ内部にてシート状に成形した後、鏡面処理された成形ロールに導き、適宜バンク成形し、鏡面成形し、冷却して積層体とする。
ダイの温度としては、通常250〜320℃、好ましくは270〜300℃であり、成形ロール温度としては、通常100〜190℃、好ましくは110〜180℃である。
次に、本発明の共押し出しシートを熱成形して、所望の立体形状とする。
熱成形の典型的方法は、共押し出しシートのハードコート面を上面として金型上にセットし、赤外線加熱にて急速に基材層(芳香族ポリカーボネート樹脂層)における樹脂のガラス転位温度以上の熱成形温度まで加熱し、加圧空気にて、所定の立体形状を形成し、かつ、芳香族ポリカーボネート樹脂のガラス転位温度以下に設定された金型面に押し付けることによる。
本発明では、共押し出しシートの熱成形が、赤外線加熱によって前記赤外線吸収剤(a)が添加または塗布された層の温度を180〜220℃とし、加圧空気にて賦形するものである態様が好ましい。
本発明の共押し出しシートを用いることにより、ハードコートの割れを生じることなく小さな曲率半径を有する熱成形品を得ることが可能である。例えば、3mm以下、2mm以下あるいは1.5mm以下の曲率半径を有する熱成形品をハードコートの割れを生じることなく得ることができる。
本共押し出しシートの装着部の金型温度は、ハードコート層が傷つかない温度であり、ハードコート付着面樹脂のガラス転位温度より低い温度、通常、10℃以上低い温度を選択する。なお、本共押し出しシートの装着部と、射出成形樹脂が直接接触する部分との金型温度は独立に設定可能とすることにより、熱挙動の異なる場合にも安定した形状とすることができる。
射出成形に用いる熱可塑性樹脂は、本共押し出しシートとの接着性があれば、特に限定されない。
実施例及び比較例に用いた原材料などは次の通りである。
<PC-IR: 赤外線吸収剤配合の芳香族ポリカーボネート樹脂>
赤外線吸収剤として、4,5−オクタキス(イソブチルチオ)−3,6−オクタキス(フェニルチオ)フタロシアニン(略称:Pc(isoBuS)8(PhS)8)を、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 E2000)に其々0、0.01、0.05、0.1重量%配合したペレットを準備した。記述上、これらを0PC-IR、0.01PC-IR、0.05PC-IR、0.1PC-IRと記す。
<IRab: 赤外線吸収インク>
赤外線吸収剤として、4,5−オクタキス(ブチルチオ)−3,6−オクタキス(p−フルオロフェニルチオ)フタロシアニン(略称:Pc(BuS)8(p−FPhS)8)を、IPX-HF;帝国インキ製造株式会社製メジウムインキ(透明)に0.1重量%添加した。
<PMMA: 紫外線吸収剤配合のポリメチルメタクリレート>
紫外線吸収剤として、トリアジン系のCGX006(BASF JAPAN LTD)を、メチルメタクリレート/メチルアクリレート=95.6/4.4の共重合体に、0.1重量%配合した。スチレンカラムGPCによるこのアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は8.5万であった。
<E-HC: 伸びるハードコート塗料>
ユニディックEKC-578(DIC株式会社製)を使用した。
上記芳香族ポリカーボネート樹脂の押出機として、バレル直径65mm、スクリュウのL/D=35を用い、シリンダー温度を270℃とした。
上記アクリル樹脂の押出機として、バレル直径32mm、スクリュウのL/D=32を用い、シリンダー温度を250℃とした。
ダイヘッド内温度は260℃とし、ダイ内で積層一体化された樹脂は、鏡面仕上げされた3本のポリッシングロールに導かれ、1番ロール温度を110℃、2番ロール温度を140℃、3番ロール温度を180℃に設定した。
最初に流入するロール間隔にて、バンクを形成した後、2番、3番ロールを通過させる方法にて共押し出しシートを製造した。
また、上記の製法に基づき、芳香族ポリカーボネート樹脂として上記の0 PC-IRを用い、0.5mm厚の共押し出しシート(PMMA層厚み0.04mm)を製造した。得られた共押し出しシートのPMMA面に、上記の伸びるハードコート塗料を用いて塗膜(HC膜)をバーコーターにて塗布し、UV硬化させた(以下、得られたシートをCE1(0%)と記す)。このHC膜は、厚み5μmで、上記HC膜と同じ性能であった。
次に、この共押し出しシートCE1(0%)の一部を使用し、HC膜の反対面である芳香族ポリカーボネート樹脂面に、上記の赤外線吸収インクIRabを用いて、全面に印刷を施して厚み8μmの塗膜を形成した(以下、得られたシートをCE2(赤外インク)と記す)。この膜は、IR吸収剤の吸収ピーク波長において、IR透過率45%であった。
成形機として圧空成形機(有限会社エヌケイエンタープライズ製)を使用した。
IRヒーターとして、上記成形機に付属している遠赤外ヒーター(2500nmにピーク波長)を使用し、360℃に設定した。なお、このヒーターによれば近赤外も発生させることができる。
上記シートの上側を上記IRヒーターにより360℃に加熱した。そして、上記シートの下側に赤外放射温度計(キーエンス社製(商品名)IT2-01)を設置してシート温度を測定し、190℃に達した時間を計測した。
金型として、50mm角、稜線1R、コア高さ4mmの凸型形状のものを使用した。
成形:シート温度が190℃に達したら、型締ゾーンに移動し、型締後、圧空を2MPaで5秒吹き込み、その後型開きして成形品を取りだした。
シート温度が190℃になるまでの到達時間を測定し、HC膜のクラック有無と賦形性を評価した。
HC膜のクラック有無は目視で観察した。クラックがない場合は○、クラックがある場合は×とした。
賦形性は、底面根元のエッジ有無をRゲージにて測定した。1.5mmR以下の場合は○、1.5mmRを超えた場合は×とした。
透過率測定:IR透過率 分光光度計(BIO-RAD社製 FTS-60A)で測定した最小透過率を測定した。
可視光透過率 分光光度計(島津製作所製 UV2000)で測定した最大透過率を測定した。
ついで射出成形金型に上記で打ち抜いたシートをそれぞれインサートして、射出成形材料としてPC(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 ユーピロンH3000)を用いて、樹脂温度290℃、射出圧力100MPa、金型温度60℃にて射出して、上記で打ち抜いたそれぞれのシートと射出成形材料を一体化させた成形品を得た。得られた成形品の肉厚は2mmであった。射出成形機として、日本製鋼所株式会社製 J110ADを使用した。
上記のシートE1(0.01%)、E2(0.05%)、E3(0.1%)及びCE2(赤外インク)を用いて得られた本発明の成形品は、シートと射出成形材料が完全に融着しており、手では剥がす事が出来なかった。また、ハードコートも射出成形によるクラックの発生が生じていなかった。
Claims (7)
- フィルム或いはシートの少なくとも表面にハードコートを施し、その裏面に任意に意匠を施した該フィルム或いはシートを赤外線加熱し、前記ハードコート側を外表面として立体形状に熱成形し、前記裏面に熱可塑性樹脂を射出一体化してシートインサート加飾成形品を製造する方法であって、
該フィルム或いはシートが、芳香族ポリカーボネート樹脂層の片面にアクリル系樹脂層を有する共押し出しシートであって、前記芳香族ポリカーボネート樹脂層が赤外線吸収剤(a)を配合してなるもの、または芳香族ポリカーボネート樹脂層面に赤外線吸収剤(a)を配合した層が形成されてなるものであることを特徴とする加飾成形品の製造法。 - 前記共押し出しシートの熱成形が、赤外線加熱によって前記赤外線吸収剤(a)が添加または塗布された層の温度を180〜220℃とし、加圧空気にて賦形するものである請求項1に記載の加飾成形品の製造法。
- 熱成形前の前記共押し出しシートの厚みが 0.1〜0.6mmであり、前記アクリル系樹脂層の厚みが 30〜80μmである請求項1または2に記載の加飾成形品の製造法。
- 熱成形して加飾フィルムインサート成形品を製造するための共押し出しシートであって、
該共押し出しシートが、芳香族ポリカーボネート樹脂層の片面にアクリル系樹脂層を有し、少なくとも該アクリル系樹脂層上にハードコートを有し、該共押し出しシートの厚みが 0.1〜0.6mmであり、該アクリル系樹脂層の厚みが 30〜80μmであり、該芳香族ポリカーボネート樹脂層が赤外線吸収剤(a)を配合してなるもの、または芳香族ポリカーボネート樹脂層面に赤外線吸収剤(a)を配合した層が形成されてなるものであることを特徴とする共押し出しシート。 - 前記赤外線吸収剤(a)が添加または塗布された共押し出しシートにおける、800nm〜1800nmの近赤外線領域の最小透過率が10〜60%である請求項4に記載の共押し出しシート。
- 耐擦り傷性試験(ASTM D 2486-79に準拠、豚毛ブラシを用い荷重450gで200往復)において生じる擦り傷が10本以下である請求項4または5に記載の共押し出しシート。
- 前記赤外線吸収剤(a)が、下記一般式(I)
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