JP2014129512A - ポリエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを原料とし、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とのスラリーを調製するスラリー化工程、得られたスラリーをエステル化反応(エステル交換反応)させオリゴマーを得るエステル化工程、及び得られたオリゴマーを溶融重縮合反応させる重縮合工程を有するポリエステルの製造方法であって、
エステル化工程及び/又は重縮合工程から留出するエチレングリコールを主成分とする液の少なくとも一部を、原料エチレングリコールとして前記スラリー化工程に供給し、かつ前記原料エチレングリコールが下記式(1)〜(3)で表される化合物の少なくとも一つを含み、それらの含有量が下記式(I)を満たすポリエステルの製造方法。
0.01≦r≦60 ・・・(I)
【選択図】なし
Description
[1]ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを原料とし、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とのスラリーを調製するスラリー化工程、得られたスラリーをエステル化反応及び/又はエステル交換反応させオリゴマーを得るエステル化工程、及び得られたオリゴマーを溶融重縮合反応させる重縮合工程を有するポリエステルの製造方法であって、
エステル化工程及び/又は重縮合工程から留出するエチレングリコールを主成分とする液の少なくとも一部を、原料エチレングリコールとして前記スラリー化工程に供給し、かつ前記原料エチレングリコールが下記式(1)〜(3)で表される化合物の少なくとも一つを含み、それらの含有量が下記式(I)を満たすことを特徴とするポリエステルの製造
方法。
但し、r=a+b+2c
a:前記原料エチレングリコールに含まれる純エチレングリコールに対する下記式(1)で表される化合物の含有量(モルppm)
b:前記原料エチレングリコールに含まれる純エチレングリコールに対する下記式(2)で表される化合物の含有量(モルppm)
c:前記原料エチレングリコールに含まれる純エチレングリコールに対する下記式(3)で表される化合物の含有量(モルppm)
原料エチレングリコールとしてエステル化工程に供給する液の質量流量をd(質量部/時)、エステル化工程からの留出物の質量流量をe(質量部/時)としたとき、下記式(II)を満たす[1]に記載のポリエステルの製造方法。
[3]更にエチレングリコールの精製工程を有し、スラリー化工程及び/又はエステル化工程に供給する原料エチレングリコールの一部が前記該精製工程を経由したものである[1]又は[2]に記載のポリエステルの製造方法。
[4]前記重縮合工程が重縮合反応触媒を用いるものであって、該重縮合反応触媒がチタン化合物を含有する[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
[5]前記重縮合反応触媒を、前記エステル化工程で得られるポリエステルオリゴマーを前記重縮合工程へ移送する配管中に添加する[4]に記載のポリステルの製造方法。
[6]前記エステル化工程及び重縮合工程から留出するエチレングリコールを主成分とする液の全量をスラリー化工程に供給する[1]〜[5]のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
尚、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲であることを意味する。
なお、本発明において「エステル化工程」とは、エステル化反応とエステル交換反応の両方を含む工程を指すものとする。
同様に、本発明に用いるジカルボン酸成分において、「テレフタル酸及び/又はテレフタル酸エステルを主成分とする」、若しくは、「ナフタレンジカルボン酸及び/又はナフタレンジカルボン酸エステルを主成分とする」とは、テレフタル酸及び/又はテレフタル酸エステル若しくは、ナフタレンジカルボン酸及び/又はナフタレンジカルボン酸エステルが、全ジカルボン酸成分の85モル%以上を占めることを意味する。
(ジオール成分)
本発明に用いるジオール成分は、エチレングリコールを主成分とするものであって、下記式(1)〜(3)で表される化合物(以下、「アセタール化合物」と称することがある)を含有し、それぞれの該エチレングリコールに対する含有量をa、b、cモルppmとしたとき、a+b+2cから求められる値rが、0.01モルppm以上60モルppm以下である。
本発明に用いるジオール成分は、エチレングリコール以外にその他のジオール化合物を含有していて構わない。その他のジオール化合物としては、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタ
メチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物等のポリエーテル等が挙げられる。これらのその他のジオール化合物は、一種を単独で用いてもよく、複数種のものを併用しても構わない。
本発明に用いるジカルボン酸成分は、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を含有するものである。ここで、前記エステル形成性誘導体としては、ジカルボン酸エステルの他にジカルボン酸無水物、ジカルボン酸塩化物等が挙げられる。本発明に用いるジカルボン酸成分としてより具体的には、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び/又はそれらのエステル形成性誘導体を含有するものであって、脂肪族ジカルボン酸の炭化水素基部分は脂環式構造であっても分岐構造を有していても構わない。
本発明に用いるジカルボン酸成分において、上記のジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体は、一種を単独で用いても複数種のものを併用しても構わない。
おいては、テレフタル酸及び/又はテレフタル酸エステル、若しくは、ナフタレンジカルボン酸及び/又はナフタレンジカルボン酸エステルを主成分とするものが好ましい。ここで「主成分」とは、テレフタル酸及び/又はテレフタル酸エステル、若しくは、ナフタレンジカルボン酸及び/又はナフタレンジカルボン酸エステルが、ジカルボン酸成分中の全ジカルボン酸に対して85モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上を占めることを意味する。
本発明のポリエステルの製造方法により製造するポリエステルは、3官能以上の化合物、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などのポリカルボン酸及びこれらの無水物;トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオール等のポリオール;リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸等を、得られるポリエステルの物性を調整する等の目的により必要に応じて共重合成分として使用してもよい。
本発明者らの知見によれば、前記アセタール化合物の加水分解等により生成するグリコールアルデヒド及び/又はジエチレングリコールアルデヒドが、本発明の製造方法により得られるポリエステルの黄着色要因となる。また、式(1)の化合物1分子からは1分子のグリコールアルデヒドが生成し、式(2)の化合物1分子からは1分子のジエチレングリコールアルデヒドが生成し、式(3)の化合物1分子からは2分子のグリコールアルデヒドが生成する。このため、黄着色への影響度を勘案し、本発明の製造方法においては、ポリエステル製造工程の中で、原料のエチレングリコールが含有するそれぞれのアセタール化合物の量(a、b、c)から算出される値rを、特定の値に制御することにより前記課題を達成することができる。
本発明においては、上記r値が特定範囲にあればよく、それぞれの工程における原料エチレングリコール中の(a+b+2c)値が本願規定の範囲を満たす必要はない。
前記アセタール化合物の含有量a、b、c値は、汎用ガスクロマトグラフィーを用い、例えば、ポリエチレングリコールカラム、検出器温度210℃、フレームイオンディテクター(FID)、感度補正あり、の条件で前記ジオール成分を測定し、純エチレングリコールと前記アセタール化合物を定量して、下記計算式に従ってa、b、c値を求める。
エチレングリコール中のジエチレングリコールの感度に対して、炭素数、および、官能基による感度の補正を施し、ジエチレングリコールに対するFID相対質量感度0.95を用いる。ジエチレングリコールの濃度は標品により定量する。得られる濃度より、式(1)〜(3)の化合物の質量濃度を、現代化学シリーズ11 クロマトグラフィー(第3版)東京化学同人、p111、表7.7 (1981)に記載される、以下の表1のFID相対
質量感度補正を行って算出する。
[式A] a = (式(1)で表される化合物の質量濃度/148.16)/(純エチレングリコールの質量濃度/62.07)
[式B] b = (式(2)で表される化合物の質量濃度/148.16)/(純エチレングリコールの質量濃度/62.07)
[式C] c = (式(3)で表される化合物の質量濃度/120.10)/(純エチレングリコールの質量濃度/62.07)
本発明において、(a+b+2c)から求められる前記r値は、下記式(I)を満たす
。
本発明において、r値の上限は60モルppm以下であり、45ppm以下が好ましく、35ppm以下がより好ましく、30ppm以下が特に好ましい。r値が前記上限値以下の場合、得られるポリエステルの黄着色が抑制されるため好ましい。一方、ポリエステルの黄着色を低減しながら経済性を高めるという観点から、r値の下限は0.01モルppm以上であり、0.5モルppm以上であることが好ましい。r値を0.01モルppm未満とするには、高純度のエチレングリコールを得るための精製設備とエネルギーを必要とし、経済性の面で不利であり製造方法として好ましくない。
なお、ポリエステル重縮合反応触媒液を、エステル化工程で得られるポリエステルオリゴマーを重縮合工程へ移送する配管中に添加する場合、その触媒液に含まれるエチレングリコールは、原料エチレングリコールと称せず、本発明の規定するジオール成分中のエチレングリコールには含めない。
又、エステル化工程又は重縮合工程の留出液であっても、スラリー化工程及びエステル化工程に供給されないエチレングリコールは、原料エチレングリコールと称せず、後述のr値の算出には用いない。
原料エチレングリコールの前記r値を本発明の規定範囲内に制御する方法としては、ポリエステル製造工程から留出した、前記(a+b+2c)の値が本発明のr値の規定上限値より高い、エチレングリコールを主成分とする液(留出液)を、エチレングリコール精製工程を経由して、(a+b+2c)の値が本発明のr値の規定上限値以下にして、原料エチレングリコールの一部として使用する方法が挙げられる。
純エチレングリコールに対し、式(1)の化合物が40モルppmを越えることがあり、式(2)の化合物が10モルppmを越えることがあり、式(3)の化合物が30モルppmを越えることがある。本発明の製造方法においては、前記留出液を原料エチレングリコールとして再利用することにより、前記留出液によって原料エチレングリコール中の前記アセタール化合物の含有量が増加するため、ポリエステルの着色を抑制できないことがある。
又、原料エチレングリコールの前記r値を本発明の規定範囲内に制御する方法としては、前記留出液の一部と、前記(a+b+2c)の値が本発明の規定する上限値以下のエチレングリコールを混合して、原料エチレングリコールとして供給することによりr値を本発明の規定する範囲内となるようにする方法も挙げられる。
上記精製工程を経由したエチレングリコールの一部をエステル化工程に供給する方法が特に好ましい。
)〜(3)で表される化合物の含有量をそれぞれa、b、cモルppmとしたとき、スラリー化工程やエステル化工程の原料エチレングリコールの(a+b+2c)を求め、各工程のエチレングリコール供給量を重みとした加重平均値rが前記特定範囲にあることを満たす限り、上記方法に限らず、エステル化工程及び/又は重縮合工程から留出させた留出物は、そのまま又は凝縮器を経て原料エチレングリコールの一部としてスラリー化工程やエステル化工程などに用いてもよいし、分離塔にて水等の軽沸点成分を除去し、エチレングリコールを主成分とする液としてから原料の一部としてスラリー化工程やエステル化工程などに用いてもよいし、エチレングリコール精製工程を経てエチレングリコール以外の成分を蒸留分離してから、原料の一部として用いても構わない。特に、エチレングリコール精製工程を経由させ、エチレングリコール供給工程で用いることが好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法は、スラリー化工程、エステル化工程、重縮合工程を有する。また、原料として用いるエチレングリコールの供給安定化のため、エチレングリコール供給工程を有することが好ましく、更には本発明におけるr値を制御するためにエチレングリコール精製工程を有することが好ましい。
尚、本発明のポリエステルの製造方法は、反応方式が回分式や半回分式でもよいし、連続式であってもよい。更には、これらを組み合わせた方式であってもよいが、連続式であることが好ましい。
また、図示していないが、本発明の製造方法においては、原料として受け入れたエチレングリコールや、エステル化工程、及び/又は、重縮合工程で留出された留出液から、ろ過、蒸留、吸着等の方法により不純物を分離し、エチレングリコールを精製回収する工程を有していても良い。
エステル化工程は、エステル化反応槽を用いて、ジカルボン酸成分とジオール成分とを原料として、エステル化反応及び/又はエステル交換反応を行う工程である。より具体的には、原料となるジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応槽で減圧下〜加圧下、加熱下で、過剰に仕込んだジオール成分や反応によって生ずる水や炭素数1〜4のアルコールなどを留出させつつエステル化反応させて、ポリエステル低分子量体であるオリ
ゴマーを得る。
本発明において、原料として受け入れたエチレングリコールの(a+b+2c)が一定であれば、エステル化工程からの留出物を原料エチレングリコールとして再利用する割合が少ないほど、即ちdが小さいほど、r値を小さくすることができ、その結果ポリエステルの色調が良好になる傾向がある。dの下限は0である。一方、dの上限はr値の上限で決定されるが、e/3が好ましく、e/4がより好ましく、e/9がさらに好ましく、e/14が特に好ましい。dが高いほど、エステル化工程からの留出物を原料エチレングリ
コールとして再利用する割合が高く経済性がある。
エステル化反応に要する時間は、得られるオリゴマーのエステル化率を測定しその範囲を一定にするように調整されるが、通常1時間以上8時間以下である。エステル化工程を連続式で行う場合、エステル化反応槽での平均滞留時間をエステル化反応に要する時間とみなす。なお、連続式で行う場合の平均滞留時間とは、エステル化反応槽に保有するオリゴマーの質量を、連続的に供給されるオリゴマー質量流量で、除した時間と定義する。また、エステル化率を一定の範囲に調整するために、ジオール成分を、エステル化反応槽へ供給しても良い。
重縮合工程を行う重縮合反応槽は、通常、温度を制御するための熱媒体ジャケットを具備するものを用いるが、温度制御を容易にするため、重縮合反応槽内部に熱媒体コイルを具備してもよい。重縮合反応槽は、通常、鉛直又は水平方向を中心線とする攪拌装置を具備する。攪拌翼としては、鉛直方向を中心線とする攪拌装置の場合、アンカー翼、パドル翼、ファウドラー翼など、水平方向を中心線とする攪拌装置の場合、メガネ翼、車輪翼など、それぞれ、従前知られるものを利用することができる。また、廃棄コスト低減の観点から、重縮合工程の留出液は、凝縮器を経てスラリー化工程に戻して再利用する方法が好ましく用いられる。
本発明のポリエステルの製造方法に用いられる重縮合反応では、反応を促進させるために重縮合反応触媒を用いることが好ましい。この場合用いる重縮合反応触媒としては特に制限されず、公知の触媒を用いることができる。例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等のゲルマニウム化合物、三酸化アンチモン、五酸
化アンチモン、酢酸アンチモン、メトキシアンチモン等のアンチモン化合物、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム等のチタン化合物等が用いられる。これらの化合物は、一種を単独で用いても、複数種のものを併用しても構わない。なかでも、本発明のポリエステルの製造方法においては、チタン化合物を使用することが、重縮合反応活性が高いため好ましい。触媒使用量は、得られるポリエステルに対して、チタン原子として通常1〜400質量ppm、好ましくは1〜150質量ppm、更に好ましくは1〜80質量ppm、より好ましくは1〜20質量ppmである。
本発明のポリエステルの製造方法に用いられる重縮合反応触媒の添加方法としては特に制限されず、例えば、スラリー化工程に添加する方法、エステル化工程に添加する方法、重縮合工程に添加する方法、及び、各工程間の移送配管に添加する方法が用いられる。特に、本発明のポリエステルの製造方法が連続式の場合は、スラリー化工程から重縮合工程の直近手前の移送配管までの間に添加する方法が、好ましく用いられる。また、特に、重縮合触媒としてチタン化合物を用いる場合は、エステル化工程が複数のエステル化反応槽からなる場合には、より下流側のエステル化反応槽に添加する方法が好ましく、更に、エステル化工程で得られるオリゴマーを重縮合工程へ移送する配管中に添加する方法が、特に好ましく用いられる。
本発明のポリエステルの製造方法においては、エチレングリコール供給工程とは、原料として受け入れたエチレングリコール、エステル化工程及び/又は重縮合工程から留出して得られたエチレングリコール、並びに、後述のエチレングリコール精製工程で精製されたエチレングリコールを混合、貯蔵し、スラリー化工程、エステル化工程、及び/又は、重縮合工程に供給する工程である。
また、本発明のポリエステルの製造方法においては、エチレングリコール精製工程を備えることが好ましい。エチレングリコール精製工程とは、原料として受け入れたエチレングリコールや、エステル化工程、及び/又は、重縮合工程で留出された留出液から、ろ過、蒸留、吸着等の方法により不純物を分離し、エチレングリコールを精製回収する工程である。
本発明のポリエステルの製造方法に用いる装置の材質は、原料であるジカルボン酸成分やジオール成分だけでなく、添加する触媒、助剤、安定剤、更には、エステル化反応や熱分解により生成する化合物やこれらの混合物も含めた物質に対する耐食性を考慮して選定することが好ましい。なかでもステンレス鋼が好ましく、モリブデン含有ステンレス鋼が特に好ましい。具体的には例えば、日本工業規格にて規定されているステンレス鋼のうち、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS317L、SUS410、SUS430等が好ましく用いられる。
溶融重縮合反応で得られたポリエステルは、溶融重縮合反応槽に少なくとも配管、ギヤ
ポンプ、フィルターのいずれか又はそれらを組み合わせて接続されたダイヘッドに供給し、ダイの先端に設けられた複数のダイホールから、ストランド状に吐出される。吐出されたポリエステルは、例えばストランドカッターなどで粒子化される。粒子化されたポリエステルは、そのまま、成形材料として用いてもよい。又は、更に、固体状態で熱処理を行い、所定の固有粘度まで固相重縮合した後、成形材料として用いてもよい。
(式(1)〜(3)の化合物の定量)
エチレングリコール供給工程、エステル化工程分離塔の塔底、重縮合工程凝縮器から、エチレングリコール液試料を採取した。この試料をガスクロマトグラフィーを用い、下記条件で純エチレングリコールとアセタール化合物の質量濃度を測定した。
ガスクロマトグラフィー:Agilent technologies 6890N
検出器:フレームイオンディテクター(FID)
分析カラム:Agilent J&W GCカラム DB−WAX
カラム内径:0.25mm
カラム長:30m
カラム膜厚:0.25μm
昇温条件:100℃(2分)→10℃/分→250℃(8分)
注入口温度:270℃
検出器温度:270℃
キャリアーガス:ヘリウム 1mL/分
注入モード:スプリット 10:1
サンプル注入量:1μL
保持時間:
ジエチレングリコール:8.6分
式(1)の化合物:11.7分
式(2)の化合物:11.8分
式(3)の化合物:13.8分
なお、当該保持時間と各アセタール化合物の対応は、GCMSを使用し、電子イオン化法(EI)、及び化学イオン化法(CI)により同定した。
上記の方法で算出された、各アセタール化合物の質量濃度から、前記[式A]、[式B]、[式C]により、前記試料中の、エチレングリコールの含有量に対する各アセタール化合物の含有量のモル比a、b、c(モルppm)を算出した。
粉砕した試料0.5gをビーカーに精秤しベンジルアルコール40mLを加えて撹拌しながら、200℃に加熱して完全に溶解させた。室温まで放冷した後、自動滴定装置(平沼産業 COM−1600)を用いて、0.1Nのメタノール性水酸化カリウム溶液で滴定を行った。その結果をもとに、以下の式(III)に従ってカルボキシル末端量を求めた。
更に、得られたカルボキシル末端量を用いて、以下の式(IV)に従ってエステル化率を計算した。
和に要した0.1Nのメタノール性水酸化カリウム溶液量(mL)
F:0.1Nメタノール性水酸化カリウム溶液の力価
W:試料の重量(g)
エステル化率(%)=(1000−カルボキシル末端量)/100 ・・・(IV)
(固有粘度(IV)の測定)
試料0.25gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合液を溶媒として、濃度(c)を1.0g/dLとして、110℃で30分間溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で測定を行い、溶媒の通過時間(t0)と溶液の通過時間(t)から次式より溶媒との相対粘度(ηrel)を求め、
ηrel = t/t0
相対粘度から次式より比粘度(ηsp)を求めた。
さらに比粘度を濃度(c)で除して、濃度(c)が1.0g/dLにおける還元粘度(ηsp/c)を求めた。
同じく濃度(c)を0.5g/dL、0.2g/dL、0.1g/dLとしたときについてもそれぞれの還元粘度を求め、これらの値より、濃度(c)を0に外挿して固有粘度(IV)(dL/g)を求めた。
試料を、内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測色用セルに充填し、測色色差計(日本電色工業社製「ZE−2000」)を使用し、JIS Z8730の参考例1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式のCo−b値を、反射法により測定セルを90℃ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mLを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込ながら攪拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。又、ブランクとして試料を使用せずに同様の操作を実施し、以下の式(V)によって末端カルボキシル
基量を算出した。
要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL) B:ブラン
クでの滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)
W:試料の量(g)
f:0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価
尚、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、乾燥窒素ガ
スを吹き込みながら、試験管にメタノール5mLを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜 2滴加え、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコー
ル溶液0.4mLで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1Nの塩酸水溶液を標準液として0.2mL採取して加え、再度、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定し、以下の式(VI)によって力価(f)を算出した。
1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL) ・・・(VI)
(ポリエチレンテレフタレートの製造例)
図1に示すポリエステルの製造フローにしたがって、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、ポリエステルの製造を連続的に行った。即ち、エチレングリコール供給工程として、窒素シールされたコーンルーフ型エチレングリコール貯槽1(槽内面の材質はSUS304)を用い、スラリー化工程として、撹拌機、ジカルボン酸仕込み配管及びジオール仕込み配管を具備するスラリー調製槽2と、撹拌機を具備するスラリー貯槽3とを用い、エステル化工程として、撹拌機、分離塔、原料受入れ口、触媒仕込み配管、反応物移送配管を具備する完全混合型第一エステル化反応槽4と、撹拌機、分離塔、原料受入れ口、触媒仕込み配管、反応物移送配管を具備する完全混合型第二エステル化反応槽5を用い、重縮合工程として、撹拌機、凝縮器、オリゴマー受入れ口、触媒仕込み配管を具備する完全混合型第一溶融重縮合反応槽6と、撹拌機、凝縮器、ポリマー受入れ口、ポリマー抜き出し口を具備するプラグフロー型第二融重縮合反応槽7及び第三溶融重縮合反応槽8を用い、ポリエステルの製造を連続的に行った。ここで、エチレングリコール貯槽1、スラリー調製槽2、スラリー貯槽3、第一エステル化反応槽4、第二エステル化反応槽5、第一溶融重縮合反応槽6、第二溶融重縮合反応槽7、第三溶融重縮合反応槽8は、この順に配管で接続されており、各反応槽は熱媒が流れるジャケットを具備するものを用いた。また、反応により得られるポリエステルは、第三溶融重縮合反応槽8から、ポリマーフィルターを経由させてダイプレートからストランド状に取り出し、水冷しながら、ペレタイザーを用いて粒子化した。
第二エステル化反応槽5には、第一エステル化反応槽4で得られたオリゴマーを、配管を経由させて連続的に供給し、また、原料として受け入れたa、b、cが表2に示される
値のエチレングリコール4質量部/時を連続的に供給し、温度260℃、圧力106kPaA、平均滞留時間1.8〜2.2時間にて、エチレングリコール及び水等の副生物を第二エステル化反応槽5から留出させながらエステル化反応を行った。
第二エステル化反応槽10におけるエステル化率は96%であった。
得られたポリエステルの粒子は、透明性に優れ、ほぼ無色であった。
スラリー調製槽2、及び第二エステル化反応槽5に供給されたエチレングリコール中のa,b,c、および(a+b+2c)について各エチレングリコール供給量を重みとした加重平均から求められたr値、得られたポリマーの品質を表2に示す。
原料エチレングリコールを表2に示す純度の高い市販のエチレングリコールに変更し、また、エチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を調製するのに用いるエチレングリコールを、表2記載の原料として受け入れたエチレングリコールに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエステルの粒子を得た。
得られたポリエステル粒子の固有粘度(IV)は0.63dL/g、末端カルボキシル
基量(AV)は25eq/t、Co−b値は1.9であった。得られたポリエステルの粒
子は、透明性に優れ、ほぼ無色であった。また、実施例1で得られるポリエステルの粒子に比べ、黄色みは薄かった。
2つのエステル化反応槽4、5に接続する2つの分離塔9、10の塔底液を留出エチレングリコール液としてスラリー調製槽2に供給するのでなく、2つのエステル化反応槽4、5に全量供給するように変更し、重縮合工程の留出液を反応系外に排出した以外は、実施例1と同様にポリエステルの製造を行った。
第二エステル化反応槽10におけるエステル化率は96%であった。
このポリエステル粒子の固有粘度(IV)は0.63dL/g、末端カルボキシル基量
(AV)は20eq/t、Co−b値は4.5であった。得られたポリエステルの粒子は
、透明性には優れるが、実施例1及び2で得られるポリエステルの粒子に比べ、やや黄色に着色していた。
式(II)を満たす場合、実施例1と同等の効果が得られる。
市販のエチレングリコール(SABIC社製)(以下、精製前EGと略する。)中の各アセタール化合物の含有量を、前記(式(1)〜(3)の化合物の定量)に記載の方法に従い、同定した。得られた分析結果を、表3及び表4に示す。
(1)精製1
90mLスケールの側管付きガラス製試験管に、上記精製前EGを45mL入れ、2本のガラス管を通したゴム栓を接続した。ガラス管のうち一方の先端はエチレングリコールの液面より下へ届くように、長さを調節し、さらに、もう一方のガラス管は、流動パラフィンを入れたトラップ管に接続し、先端を流動パラフィンに浸漬した。その後、エチレングリコールに浸漬させたガラス管の上部から窒素ガスを2L/分になるように流通させ、25℃下で、4時間バブリングした。得られたエチレングリコールを試験管から取り出し、前記(式(1)〜(3)の化合物の定量)に記載の方法に従い、各アセタール化合物の含有量を同定した。得られた分析結果を、表3に示す。
上記精製前EGの単位重量に対し、1重量%となるようにイオン水を添加したこと以外は、上記(1)精製1と同様にして、各アセタール化合物の含有量を同定した。得られた分析結果を、表3に示す。
(3)精製3
バブリングの際、試験管を100℃のオイルバスに浸漬した以外は、上記(1)精製1と同様にして、各アセタール化合物の含有量を求めた。得られた分析結果を、表3に示す。
(1)精製4
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、リービッヒ冷却器を接続した留出管及び減圧用排気口を備えた500mLスケールのガラス容器に上記精製前EGを、180mLを入れ、攪拌しながら、窒素流通下、100℃、533.3〜666.6PaAで、減圧蒸留した。4時間後、留出管から主留分44mL、500mLスケールのガラス容器から釜残分120mLを採取した。主留分及び釜残分の各アセタール化合物の含有量を、上記(1)精製1と同様にして求めた。得られた分析結果を、表4に示す。
上記精製前EGの単位重量に対し、1重量%となるようにイオン水を添加し、加熱装置の温度を170℃、19.6~20.7kPaAで減圧蒸留をとした以外は、(1)精製
4と同様に行った。4時間後、留出管から主留分111mL、500mLスケールのガラス容器から釜残分79mLを採取した。主留分、釜残分の各アセタール化合物の含有量を、上記(1)精製1と同様にして求めた。得られた分析結果を、表4に示す。
1’:留出エチレングリコール液貯槽
2: スラリー調製槽
3: スラリー貯槽
4: 第一エステル化反応槽
5: 第二エステル化反応槽
6: 第一溶融重縮合反応槽
7: 第二溶融重縮合反応槽
8: 第三溶融重縮合反応槽
9: 第一分離塔
10: 第二分離塔
11:第一溶融重縮合反応槽凝縮器
12:第二溶融重縮合反応槽凝縮器
13:第三溶融重縮合反応槽凝縮器
Claims (6)
- ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを原料とし、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とのスラリーを調製するスラリー化工程、得られたスラリーをエステル化反応及び/又はエステル交換反応させオリゴマーを得るエステル化工程、及び得られたオリゴマーを溶融重縮合反応させる重縮合工程を有するポリエステルの製造方法であって、
エステル化工程及び/又は重縮合工程から留出するエチレングリコールを主成分とする液の少なくとも一部を、原料エチレングリコールとして前記スラリー化工程に供給し、かつ前記原料エチレングリコールが下記式(1)〜(3)で表される化合物の少なくとも一つを含み、それらの含有量が下記式(I)を満たすことを特徴とするポリエステルの製造
方法。
0.01≦r≦60 ・・・(I)
但し、r=a+b+2c
a:前記原料エチレングリコールに含まれる純エチレングリコールに対する下記式(1)で表される化合物の含有量 (モルppm)
b:前記原料エチレングリコールに含まれる純エチレングリコールに対する下記式(2)で表される化合物の含有量 (モルppm)
c:前記原料エチレングリコールに含まれる純エチレングリコールに対する下記式(3)で表される化合物の含有量 (モルppm)
- 更に前記エステル化工程から留出するエチレングリコールを主成分とする液の一部を原料エチレングリコールとしてエステル化工程に供給し、
原料エチレングリコールとしてエステル化工程に供給する液の質量流量をd(質量部/時)、エステル化工程からの留出物の質量流量をe(質量部/時)としたとき、下記式(II)を満たす請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
0≦d≦e/2.3 ・・・(II) - 更にエチレングリコールの精製工程を有し、スラリー化工程及び/又はエステル化工程に供給する原料エチレングリコールの一部が該精製工程を経由したものである請求項1又は2に記載のポリエステルの製造方法。
- 前記重縮合工程が重縮合反応触媒を用いるものであって、該重縮合反応触媒がチタン化合物を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
- 前記重縮合反応触媒を、前記エステル化工程で得られるポリエステルオリゴマーを前記重縮合工程へ移送する配管中に添加する請求項4に記載のポリステルの製造方法。
- 前記エステル化工程及び重縮合工程から留出するエチレングリコールを主成分とする液の全量をスラリー化工程に供給する請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
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