以下、本発明を実施するための形態の一実施例として、マンションなどの集合住宅において実施するに好適な集合住宅の居住者支援機能を有する物品収受装置の構成を例示する。
図1に、本発明を採用した物品収受装置の構成例を示す。
本実施例における物品収受装置100は、いわゆる宅配物の授受に用いる宅配ボックス(宅配ロッカーなどとも呼ばれる)、あるいは郵便受けなどとして構成される。図1において、物品収受装置100はマンションなどの集合住宅(以下、単に「集合住宅」と称する)の宅配業者や郵便配達員がアクセスできる公共側とは反対側、たとえばプライベート側、すなわちオートロックシステムなどにより制御される集合住宅のエントランス扉の内側の面を示してある。
物品収受装置100は、複数の物品収受ボックス101、101…から構成される。物品収受ボックス101のいずれかが郵便受けとして構成される場合には、物品収受ボックス101の公共側の面に投函口(不図示)が設けられ、この投函口と反対側の面のみに郵便物を取り出すための電気錠(あるいは番号キーなど)により開閉される扉が設けられる。
また、物品収受ボックス101、101…が宅配ボックスとして構成される場合には、公共側の面は宅配業者が宅配物を収容するための扉(この扉は居住者が宅配物を取り出すための扉を兼ねていてもよい)として構成され、また、プライベート側の面には居住者が宅配物を取り出すための扉が設けられる。これらの扉の開閉は電気錠(不図示)により制御される。
物品収受ボックス101、101…の郵便物を取り出すための扉、あるいは宅配物を収容し、また取り出すための扉の開閉は、コンソール103での居住者(あるいは宅配業者)操作に応じて制御部200により制御される。
図1の物品収受装置100は、左方にブロック図として示した制御系に関係した図示となっている。図1の図示は概略的であり、物品収受ボックス101のサイズや配置に関する構成は当業者が任意に決定できる設計的な事項である。また、コンソール103の配置位置、物品収受ボックス101の数、列の数などは集合住宅の規模によって任意である。
コンソール103は、ここでは便宜上、プライベート側に配置されたものを図示しているが、郵便配達人、宅配業者などがアクセス可能な公共側(図示した側と反対側)にも同様のハードウェア構成のものを配置することができる。
コンソール103には、LCDパネルないしタッチパネルなどから構成されたディスプレイ104、ファンクションキーやテンキーから成るキーボード105、および認証手段としてのIDカード111の情報を読み取るカードリーダ106が設けられる。
IDカード111は、集合住宅の居住者がそれぞれ保有するもので、集合住宅の特定の居住者に関連づけられた情報、たとえばその居室番号(あるいはそれに対応する情報を特定の手法でエンコードされた情報など)などにより表現されたユーザID(UID:居住者ID)が記録された非接触ICカードから構成する。
IDカード111は、コンソール103のカードセンサ106やエントランス公共側のカードセンサ6021に近接提示することで主に開錠に関する認証を行なうことができる他、後述のようにエントランスプライベート側のカードセンサ6011(中距離センサから構成する)とは中距離無線通信が可能なICカードとする。
なお、当該集合住宅以外のIDカード111を用いたりできないように、IDカード111には、当該集合住宅で用いることができる正規のカードであることを示す特定の鍵情報を格納したり、あるいは居室番号などのID情報を当該集合住宅のみで通用する鍵情報を用いて暗号化して記録したりすることができる。
また、IDカード111は宅配物(あるいは郵便物や郵便小包)を収容するため物品収受ボックス101、101…の公共側の扉を開錠するために用いる特別なカードとして特定の宅配業者(あるいは郵便配達人)に配布することもできる。この場合、当該カードは、たとえば物品収受ボックス101、101…の公共側の扉の開錠のみしか行なえないような機能限定された仕様のものとする。
さらに、本実施例では、IDカード111は、後述のエントランス扉6000(オートロック制御される玄関扉)、居住者個々の居室7001、7002…(ブロック内の3桁の数字101、102、103…はたとえば居室番号を示す)の玄関扉を開閉する鍵として機能するカードキーを兼ねているものとする。
あるいはさらに、IDカード111は物品収受動作に係わる認証のみならず、電気自動車(特定のIDカード111を保有する居住者の車両、あるいはカーシェアリングにより貸与される車両:電動自転車なども含む)を充電する、といった集合住宅で提供される各種のサービスに係る認証手段としても用いることができる。
上記のように特定の居住者と1:1に対応づけられたIDカード111を用いることにより、居住者はそのIDカード111(いわゆるカードキーとして機能する)を用いて宅配物や郵便物の収受に係わる物品収受装置100の扉の開閉、エントランス扉6000の(公共側からの)開錠、自室(居室7001、7002…のいずれか)の玄関扉の開錠/施錠、電気自動車の充電など、集合住宅で提供されるサービスに関する認証操作などを行なうことができ、さらに制御部200では上記の各種の操作に関する情報を必要に応じて取得し、データベース情報として蓄積し、管理することができる。
なお、IDカード111は、上記のように物品収受装置や集合住宅に認証手段を構成するものであるが、IDカード111には非接触ICカードなどで用いられているRFID(Radio Frequency IDentification)インターフェース方式を用い、特に本実施例では、好ましくは、いわゆる中距離無線通信が可能な中距離センサを用いて構成される後述の鍵センサ6011(エントランス扉のもの)との間で通信可能な通信手段を内蔵するものとする。一般に、この種の中距離通信が可能なICカードは、通信部を動作させるための電源として電池などを内蔵し、センサに近接することにより行なわれる給電を必要としない構成である。
また、IDカード111は、上記のICカードなどの他、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末(あるいはノートPC)のように非接触ICカードと同等のRFIDインターフェースを有する情報端末などを用いることもできる。
物品収受装置100の制御部200は、たとえば上記のコンソール103が設けられた筐体内部などに配置される。この制御部200は図3の中央に取り出した形でブロック図示により示してある。
物品収受装置100の制御部200は、コンソール103でのIDカード111の提示やキー操作などに応じて、物品収受装置100の物品収受ボックス101、101…を施錠/開錠する電気錠の開閉制御を行なう。
また、上述のように、本実施例では、IDカード111は物品収受装置100の施錠/開錠操作のほか、集合住宅で提供されるサービス、たとえば居住者が保有する、あるいは使用の権利のある電気自動車に対する充電サービスなどに関する認証に用いることができ、その場合この認証は制御部200によって制御される。
また、制御部200は、上記の電気自動車の充電および電気自動車からの給電のみならず、さらに集合住宅共用部の照明機器の制御や、集合住宅共用部の電気負荷への給電に関するスマートグリッド制御、(IDカード111を用いた)エントランス扉のオートロック制御などを行なうよう構成することもできる。すなわち、制御部200は、物品収受装置100の制御のみならず、このような集合住宅で提供されるサービスを統合的に制御することができる。
特にIDカード111が用いられるサービス、たとえば特定の居住者の電気自動車の充電ないし電気自動車からの給電サービスなどの場合には、IDカード111を保持する居住者の当該サービスの利用行動に係わる情報や居住者が充電サービスを受ける電気自動車に係わる情報などをデータベース情報として蓄積し、該データベース情報を用いて当該サービスの提供形態を制御することができる。
また、本実施例では、IDカード111とカードセンサ6021を用いたエントランス扉6000の(公共側からの)開錠制御、自室(居室7001、7002…のいずれか)の玄関扉の開錠/施錠制御についても、後述の検出制御部301を介して制御部200が行なうものとする。
また、検出制御部301は、居室7001、7002…内に設けられた各種センサの出力状態も検出できるものとする。
たとえば、居室7001、7002…内には上記特許文献に記載されるような公知の火災報知器、ガス漏れ、水漏れセンサ(あるいはガスや水道のコックの状態やメータ位置におけるガスや水の流量を検出するセンサ)室内の人間の動きを監視する人感センサなどが配置される場合がある。
また、近年ではいわゆるホームオートメーション技術によって、居室内の照明や家電器具、ガス器具などを外部から携帯端末などを用いてネットワーク経由でオン/オフしたり、あるいはそれらの器具の状態を検出したりできる場合がある。また、上記人感センサは、ドアや窓などの侵入検知センサとともに警備会社が設置するセキュリティシステムの端末に接続される場合があり、このセキュリティシステム端末は外出などの際、保安モードに切り換えられる。
そこで、制御部200は検出制御部301を介して(あるいは他の適当な検出回路を介して)居室7001、7002…内に設けられた上述の各種センサの検出状態を検出できるものとする。検出制御部301のこれらのセンサの検出方式は任意であり、たとえば上記各センサから検出制御部301へそれぞれ個別に検出信号線が敷設されていても良いし(あるいは上記センサや器具、端末を管理するシステムから必要な検出情報を取得する)、あるいはインターネット(たとえば後述のネットワーク206)を介して上記各センサから検出制御部301へ検出状態を示すパケットが送信されるような構成であってもよい。
制御部200は、主制御部としてのCPU201、後述する制御手順をCPU201のプログラムとして格納するROM202、ワークエリアとして用いられるRAM203、物品収受装置100の電気錠やコンソール103と通信するためのインターフェース209、後述の検出制御部301と通信するためのインターフェース205(たとえば IEEE 802.3 ネットワークインターフェース、シリアルインターフェースなど)などから構成される。
さらに、制御部200には、HDDや不揮発メモリカードから成る外部記憶装置207が接続されており、後述のプログラム(の全部あるいはその一部)、および後述のように検出制御部301を介して検出される居住者の行動に関する情報はデータベース情報として、この外部記憶装置207に格納される。また、制御部200には、居住者の行動に関する情報の一部として記録すべき時刻データの取得などのため、リアルタイムクロック回路などの計時手段が含まれるものとする。
また、制御部200は、ネットワークインターフェース(たとえば IEEE 802.3 ネットワークインターフェースや所定方式の WAN インターフェースなど)204を有し、ネットワーク206(イントラネット、あるいはインターネット)を介して遠隔地のサーバと通信することができる。後述の制御の一部は、制御部200のみならず、ネットワーク206を介して接続されるサーバによって代行することができる。特に後述のデータベース情報の蓄積や管理は、このようにネットワーク206を介して接続されるサーバによって実施するようにしてもよい。
さて、本実施例では、上記特許文献2に例示されるように、居室(7001、7002…)の玄関の施錠/開錠および集合住宅のエントランス扉(6000)の開錠に係るカードキーとして機能するIDカード111を利用して居住者の行動を検出し、記録する。
ただし本実施例の構成で特許文献2と異なる点の1つは、特許文献2においては、集合住宅のエントランス扉については開錠操作の検出手段がエントランス扉の外側にしかなく、したがって居住者が外出から戻り、エントランス扉の開錠を行なう時の操作しか検出していないのに対し、本実施例では、居住者がエントランス扉6000から集合住宅外部に退出する行動を検出する手段(下記のカードセンサ6011)を設け、居住者がエントランス扉6000から集合住宅外部に退出する行動を明確に検出できるようにしたことにある。
図1左下部は、本システムが設置される集合住宅のエントランス扉6000をプライベート側(集合住宅の内側)から示したものであるが、本実施例では、エントランス扉6000のプライベート側(内側)近傍(図1では扉右側の壁面、ないしはエントランス扉を支持する外枠)に、中距離センサから成るカードセンサ6011、およびユーザーインターフェースとしての音声出力手段(あるいはLCDなどの表示手段であってもよい)6012を塔載した制御パネル6010を設けてある。
図2は、図1左下部の検出制御部301廻りの構成を詳細に示している。エントランス内側に配置したカードセンサ6011の検出情報は検出制御部301を介して取得することができる。制御パネル6010上の音声出力手段6012などに対する入出力は検出制御部301を介して行なうか、またはインターフェース205を介して行なわれる。
また、本実施例では、検出制御部301は各居室7001、7002…の玄関扉のカードセンサ(不図示)に対するIDカード111の提示操作ないしはそれによって制御される居室7001、7002…の玄関扉の施錠/開錠状態を検出できるようにしてある。ここで、玄関扉の施錠/開錠に係る認証処理それ自体は制御部200とは別の他のロック制御部(各居室ごとにスタンドアローンな制御部であるか、あるいは集合住宅の各居室玄関の施錠/開錠を統合制御する制御部であるかを問わない)が行なってもよいし、また、制御部200によって行なってもよい。いずれにしても、制御部200は検出制御部301を介して居室7001、7002…の玄関扉の施錠ないし開錠状態を検出することができるものとする。
本実施例の場合、エントランス内側に配置するカードセンサ6011はたとえば数メートル程度の通信可能範囲を有する中距離センサから構成する。また、IDカード111も上記のようにたとえば通信回路のための電池などを塔載し、同じく周囲数メートル程度の中距離範囲で通信が可能なICカードから構成されている。
したがって、本実施例では居住者がIDカード111をエントランス内側に配置したカードセンサ6011に対して近接提示しなくてもカードセンサ6011はIDカード111を検出し、また、IDカード111からユーザID(UID)や認証に必要な鍵情報などを受信することができる。
図1において、エントランス扉6000は、強化ガラス、木材、鋼鈑など任意の材料から構成でき、必要に応じて開閉用の把手6001などがプライベート側ないしは公共側に設けられる。
本実施例においても、エントランス扉6000は、エントランス扉6000を開錠/施錠する電気錠を用いたいわゆるオートロック制御によって開錠/施錠を制御するものとする。一般に、集合住宅におけるエントランス扉のオートロック制御とは:
・エントランス扉が閉成されると電気錠によって自動的にエントランス扉を施錠する
・エントランス扉をプライベート側(集合住宅内側)から開錠するには、居住者のドアハンドルや開錠操作手段の明示的な操作や、プライベート側に配置した人感センサの出力に応じて電気錠を開錠する
・エントランス扉を公共側(集合住宅外側)から開錠するには、鍵(本実施例においてはIDカード111)を用いて開錠操作を行なう
といった制御を意味するが、本実施例においてもエントランス扉6000に関しては上記と同等のオートロック制御を行なうものとする。
上記のオートロック制御に必要な電気錠、プライベート側(集合住宅内側)に配置した人感センサ、などの一般的な構成は従来同様に構成できるため図示を省略するが、本実施例では公共側(集合住宅外側)に配置したカードセンサ6021の位置のみを破線によって示している。外出先から戻った居住者はこの公共側(集合住宅外側)のカードセンサ6021に対してIDカード111を提示(通常は近接提示)することによりエントランス扉6000を開錠(いわゆるオートロック状態の解除)することができる。
この居住者の帰宅時のエントランス扉6000の開錠操作(カードセンサ6021に対するIDカード111の提示)は、検出制御部301によって検出することができ、後述のようにデータベースに記録することができる。なお、本実施例ではIDカード111をカードキーとして用いるため、特許文献2に記載されているような捻りセンサなどの複雑な機構は必要ない。
一方、居住者がプライベート側(集合住宅内側)から外部に外出する際には、公知技術と同様に、開錠操作手段の明示的な操作や、プライベート側に配置した人感センサの出力に応じてエントランス扉6000を開錠(オートロック状態を解除)する。これらプライベート側(集合住宅内側)からの開錠を行なうための方式は公知技術を用いればよく、そのための構成は任意である。
外出時、開錠操作手段の明示的な操作や、プライベート側に配置した人感センサの出力に応じた開錠など、いずれの開錠方式を用いるかは任意であり、それは本発明の一部を構成しない。
ただし、本実施例では、エントランス扉6000から退出する居住者の保持するIDカード111を検出し、どの居室の居住者が集合住宅の内側から公共側(集合住宅外側)に退出(外出)したかを検出し、また、これらの行動を室内の各種センサの出力状態に係る情報と併せてデータベースに記録できる点に大きな特徴がある。
しかも、本実施例においてプライベート側(集合住宅内側)の制御パネル6010に設けたカードセンサ6011は中距離センサから構成されているので、居住者はわざわざIDカード111をカードセンサ6011に対して提示しなくても、IDカード111を携帯して従来通りのエントランス扉6000からの退出と同様の手続を行なうだけで、カードセンサ6011によってIDカード111を検出し、その記録情報を読み取ることができ、たとえばどの居室の居住者が外出しようとしているかを認識することができる。
なお、プライベート側(集合住宅内側)からのエントランス扉6000の開錠に関しては、上に例示した従来方式に替えて、制御パネル6010のカードセンサ6011に対して居住者が明示的にIDカード111を(近接距離で)提示する操作に応じてエントランス扉6000を開錠する方式も考えられる。あるいは、本実施例のカードセンサ6011およびIDカード111は中距離通信が行なえるよう構成してあるため、カードセンサ6011を従来の人感センサの代りに用い、IDカード111を携帯した居住者がカードセンサ6011に近付いたことを検出した時点でエントランス扉6000を開錠する、といった開錠方式とすることもできる。
次に、図3および図4を参照して以上の構成における動作につき説明する。図3および図4は、居住者のエントランスから退出し、また帰宅時にエントランスを開錠する際の行動を検出、記録し、またオプショナルな支援サービスを提供する制御をそれぞれ示しており、図示の制御は制御部200のCPU201、および検出制御部301の連携によって実現される。図示の制御手順はCPU201の制御プログラムとしてROM202、ないしは外部記憶装置207などに格納しておく。
図3は、上記構成により、従来不可能であった居住者がエントランスから退出する行動を検出、記録し、またオプショナルな支援サービスを提供する制御を示している。
本実施例では、エントランス内側(集合住宅内側)の制御パネル6010に中距離センサから成るカードセンサ6011を設けているので、居住者がエントランスから退出する行動を検出することができる。
図3の手順は、エントランス内側(集合住宅内側)の制御パネル6010に設けたカードセンサ6011が、その中距離(周囲数メートルほど)通信範囲内でIDカード111を検出した場合に起動される割り込み処理などとして実装することができ、図3のステップS31は、この割り込み処理の契機となるカードセンサ6011の監視ループを示している。
ステップS31において、カードセンサ6011がIDカード111を検出すると、図3の割り込み処理が開始され、ステップS32においてカードセンサ6011からIDカード111の記録情報を読み取る。
ステップS32においては、IDカード111に記録されている上述の鍵情報などを介してカードセンサ6011により検出したIDカード111が当該集合住宅で用いることができるカードであるか否かを確認した上、IDカード111のユーザID(UID)情報を読み出す。通常、ユーザID(UID)には居室番号などが用いられ、したがって、検出したIDカード111が当該集合住宅における正規のカードであれば、この段階でいずれの居室の居住者が外出しようとしたかを判定できる。
一方、エントランス扉6000は、上述のように人感センサや居住者の明示的な操作により開錠され(あるいは上記のように制御部200の制御でステップS31のカード検出によりエントランス扉6000を開錠してもよい)、居住者は集合住宅から外出することができる。なお、実際にはエントランス内側のホールなどに配置された上記物品収受装置100の郵便受け、物品収受ボックスの確認などのためエントランス扉6000の近傍まで移動したが、実際にはエントランス扉6000から退出しない場合も考えられるため、このタイミングにおいてエントランス扉6000が開かれたか否かを検出し、エントランス扉6000がたとえば所定時間(数秒〜数10秒)の間、エントランス扉6000が開状態とされなかった場合にはステップS33以降を実行しないよう、処理を打ち切ってもよい。
ステップS33では、このユーザ(居住者)の外出情報(外出記録)をデータベース情報として外部記憶装置207などに記録する。ここでは、少なくともステップS32でICカード111から読み取ったユーザID(UID)と、リアルタイムクロックなどで計時した現在時刻情報を外出情報(外出記録)としてデータベース情報として外部記憶装置207(あるいはネットワーク206上のサーバの外部記憶装置)に記録する。外部記憶装置207などを用いて構築するデータベースの構成例については後述する。
続いてステップS34においては、オプショナルな支援サービスを実行する。本実施例では、エントランス内側(集合住宅内側)の制御パネル6010に設けた中距離センサからなるカードセンサ6011により上記のようにして居住者のエントランスからの外出行動を検出できるため、この外出行動の検出に基いてこそ提供できる特有の付加的なサービスを提供することができる。下記のような付加的なサービスの各々は必ずしも全て実施する必要はなく、たとえば居住者の希望に応じて物品収受装置100のコンソール103などを介して行なう登録操作により任意の付加的なサービスを選択的に提供できるようにすればよい。
ステップS34で、提供できるサービスとしては、次のようなものが考えられる。
(1)居室玄関扉の施錠忘れ警告
上述のように検出制御部301は各居室7001、7002…の玄関扉の施錠/開錠状態を検出できるため、ステップS34で居住者がエントランスから外出しようとするタイミングにおいて、制御部200はステップS32において取得したユーザID(UID)に該当する居室7001、7002…の玄関扉を施錠しているか否かを検出制御部301を介して判別することができる。したがって、ステップS34で可能な付加サービスとして、外出しようとしている居住者に居室の玄関扉の施錠忘れを警告することが考えられる。
この施錠忘れ警告には、たとえば、制御パネル6010の音声出力手段6012を用いて「玄関扉の施錠をお忘れではありませんか」などの音声メッセージを出力する手法を用いることができる(あるいは他の手段、たとえば表示出力手段による同様のテキストメッセージの出力によって行なってもよい)。このようにして、居室の状態、特に玄関扉の施錠状態が外出に適切な状態かどうかに関する警告情報を外出しようとする居住者に出力することができる。
(2)居室内の状態に関する警告
各居室7001、7002…には上述のように照明ないし電気器具、ガス、水道、あるいは室内の保安状態に関する情報を検出するセンサが設けられており、制御部200は検出制御部301を介して各居室内のセンサや、ネットワーク化された家電器具(あるいはガス器具、水栓などの器具を含む)、セキュリティ端末などの状態を検出できるようになっている。
したがって、ステップS34の段階では、居室7001、7002…内の(センサ、各種機器、セキュリティ端末などの)状態が居住者が外出するに相応しい状態になっているかどうかを検出することができる。
具体的には、照明器具が点灯しっぱなしではないか、ガス栓や水栓などが開きっぱなしとなっていないか、セキュリティ端末を外出時の「保安(あるいは監視)」状態に切り換えるのを忘れていないか、などを上記の居室内のセンサ、各種機器、セキュリティ端末などを介して検出することができ、必要に応じて上記同様に「ガス栓(水栓)が開いています」、「照明が点きっぱなしです」、「セキュリティ端末が保安(監視)状態ではありません」といった音声メッセージを制御パネル6010の音声出力手段6012から出力することができる。
以上のようにして、エントランス内側(集合住宅内側)に、集合住宅でカードキーないし認証手段として用いられるIDカード111と通信可能な中距離センサからなるカードセンサ6011を設けることによって、従来は検出できなかった居住者のエントランスからの外出行動を検出することができ、確実に居住者の外出行動を把握し、居室番号や時刻情報とともに居住者外出を示すデータベース情報を記録することができ、併せて居室玄関の施錠忘れの有無や居室内のセンサや機器、セキュリティ端末の状態、すなわち居室の状態が外出に適切な状態かどうかに関して必要な警告(ないしは助言)情報を生成、出力し、外出しようとする居住者に伝えることができ、従来のシステムでは得がたい支援サービスを居住者に提供することができる。
図3に示した、エントランスからの退出時の監視制御と類似の制御は図4に示すようにエントランス外側に設けられるカードセンサ6021を用いて実施することができる。図4の制御では、エントランス扉6000の開錠とそれに必要な認証処理も物品収受装置100の制御部200が行なうものとする。
図4の処理は、エントランス外側に設けられるカードセンサ6021に通信互換性のあるIDカードが提示(通常、近接提示とするのが一般的な仕様と考えられる)されると起動される割り込み処理などとして実装することができ、図4のステップS41は、この割り込み処理の契機となるカードセンサ6021の監視ループを示している。
ステップS41において、エントランス外側のカードセンサ6021に通信互換性のあるIDカードが提示されると、図4の割り込み処理が開始され、ステップS42においてカードセンサ6021から提示されたIDカードの記録情報を読み取る。
ステップS42では、制御部200がIDカード111に記録されている上述の鍵情報などを介してカードセンサ6021に提示されたIDカードが当該集合住宅で用いることができるカードであるか否かを確認し、これが確認できた場合、IDカード111からユーザID(UID)情報、あるいはさらにエントランス扉6000の開錠認証に必要な鍵情報などを読み出し、所定の認証演算を行なう。この認証処理が失敗した場合は開錠不可(ステップS43)とし、処理を終了する。
一方、開錠認証が成功した場合、ステップS44において制御部200は、エントランス扉6000を開錠する。この場合、制御部200の他に、エントランス扉6000の開錠に関して別途ロックメーカーなどがオートロック制御部(不図示)を設置している場合には、このオートロック制御部に開錠要求信号を送るなどしてエントランス扉6000を開錠する。
ステップS45では、ステップS42の認証の際、IDカード111から読み出しているユーザID(UID)を取得する。図3の場合と同様にこのユーザID(UID)から居室番号などを検出できるから、この段階でいずれの居室の居住者が帰宅し、エントランス扉6000を開錠したかを識別することができる。
ステップS46では、このユーザ(居住者)の帰宅情報(帰宅記録)をデータベース情報として外部記憶装置207などに記録する。ここでは、少なくともステップS42ないしS45でICカード111から読み取ったユーザID(UID)と、リアルタイムクロックなどで計時した現在時刻情報を帰宅情報(帰宅記録)としてデータベース情報として外部記憶装置207(あるいはネットワーク206上のサーバの外部記憶装置)に記録する。外部記憶装置207などを用いて構築するデータベースの構成例については後述する。
続いてステップS47では、オプショナルな支援サービスを実行する。この帰宅行動に関する付加的なサービスも必ずしも全て実施する必要はなく、たとえば居住者の希望に応じて物品収受装置100のコンソール103などを介して行なう登録操作により任意の付加的なサービスを選択的に提供できるようにすればよい。
ステップS47で行なう付加的な支援サービスとしては、たとえば上述のようにして帰宅時のエントランス扉6000の開錠行動を検出した後、所定時間(〜数分ないし10数分程度)経過しても、エントランス扉6000の開錠を行なった居住者の居室玄関が開錠されない場合、管理会社、警備会社、居住者の家族などのしかるべき宛先に警告情報を送信する(たとえばメール送信などを行なう)、あるいは、エントランス扉6000〜当該居室までの間の照明の照度を調節(あるいは消灯状態であれば点灯させる)、エレベータの篭をエントランス扉6000の設置されている階まで移動しエレベータ扉を開く、などの処理が考えられる。これらのサービスを実行するには、当然、制御部200が当該の動作を実行するために必要な通信手段やドライバ回路などのインターフェース手段を有している必要がある。なお、帰宅時のエントランス扉6000の開錠行動を検出する構成は従来より種々知られているため、ステップS47における帰宅行動を検出して行なう付加的な支援サービスの多くは公知の構成を用いて当業者が任意に実現することができる。
図5および図6に、上記構成において、物品収受装置100の制御部200が物品収受の管理および居住者の行動監視に用いるデータベースのデータ構造の一例を示す。図示のデータベースは、制御部200の外部記憶装置207(あるいはネットワーク206上のサーバの外部記憶装置)などを用いて構築することができる。
図5は制御部200が用いるマスターデータベースの構造を1行1レコードの表形式で示している。図5において符号401〜405は各レコードを構成するフィールドで、フィールド401には居室番号が格納されている。当然ながら、この居室番号401は、上述のIDカード111の識別情報と関連づけられている。
符号402以降のフィールドには下記のようなポインタ情報が格納される。これらのポインタ情報はリレーショナルデータベースとして後述の図6に示すように格納されるサブデータベースへのポインタであり、通常アドレス情報やファイル名の形式で表現される。
各居室に対応するレコードにおいて、フィールド402は、物品収受ボックス101に対する宅配物(あるいは郵便物)の着荷および受け取りに関する情報を記録するサブデータベースへのポインタ情報を格納する(P4021、P4022、P4023…)。
各居室に対応するレコードにおいて、フィールド403は、上述のようにして監視可能な居室玄関の施錠および開錠に関する情報を記録するサブデータベースへのポインタ情報を格納する(P4031、P4032、P4033…)。
各居室に対応するレコードにおいて、フィールド404は、上述のようにして監視可能な集合住宅のエントランスの出入りに関する情報を記録するサブデータベースへのポインタ情報を格納する(P4041、P4042、P4043…)。
また、各居室に対応するレコードにおいて、フィールド405は、上述のように当該居室内に配置された居室内の照明や家電器具、ガス器具の状態、警備システムなどの状態を検出するセンサに関する情報を記録するサブデータベースへのポインタ情報を格納する(P4051、P4052、P4053…)。
図6(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ上記の各ポインタP4021、P4022、P4023…、P4031、P4032、P4033…、P4041、P4042、P4043…、およびP4051、P4052、P4053…によって指し示されるサブデータベースの格納状態の一例を示している。
図6(a)のサブデータベースは、日時情報(表の左側および中央)とともに、物品収受ボックス101に対する宅配物(あるいは郵便物)の着荷ないしは受け取りイベントを示すデータ(表の右側)を記録している。ここでは理解を容易にするため、「着荷」ないし「受取」のような単語によりイベントを識別しているが、実際のデータベースメモリ上では、適当なニーモニックや番号データによって該当のイベントが表現される(以下の各サブデータベースにおいても同様)。
また、物品収受ボックスを居室ごとの専用とせず共用使用する形態では、実際には当該居室宛に着荷が行なわれた場合、その着荷に用いられたボックス番号なども併せて図6(a)のサブデータベースに記録することができる。
図6(b)のサブデータベースは、日時情報(表の左側および中央)とともに、上述のようにして監視可能な居室玄関の施錠および開錠を示すデータ(表の右側)を記録している。
図6(c)のサブデータベースは、日時情報(表の左側および中央)とともに、上述のようにして監視可能な集合住宅のエントランスの出入りを示すデータ(表の右側)を記録している。
また、図6(d)のサブデータベースは、日時情報(表の左側および中央)とともに、上述のようにして監視可能な当該居室内に配置された居室内の照明や家電器具、ガス器具の状態、警備システムなどのセンサの検出状態に関するデータ(表の右側)を記録している。
図6(a)〜(d)のサブデータベースのデータ内容は、ある1日に、ある特定の居室に関連して生成されたもので、制御部200が物品収受、居室玄関の施錠/開錠、エントランスの出入り、および居室内に配置されたセンサの検出情報に基づいて記録したデータの一例を示している。
図6(a)に示すように、この日、10:30にこの居室の居住者に対して、物品収受ボックス101の1つに着荷があり、この居住者は後述の午後の外出の際、14:15に当該の宅配物を取り出している。着荷の際、公共側のコンソールで宅配業者が特定の着荷操作を行なうので、この着荷操作に応じて着荷イベントが発生され、時刻情報とともに図示のようなデータが生成される。また、居住者の受け取りの際は、居住者がIDカード111をプライベート側のコンソール103に提示する認証操作を行なうので、この操作に応じて受取イベントが発生され、時刻情報とともに図示のようなデータが生成される。
また、図6(b)、(c)に示すように、この居住者はこの日の午後外出しており、その際、14:14に玄関扉を施錠(図6(b))し、14:18にエントランスを出ている(図6(c))。その際、エントランスを出る前に14:15に上記の宅配物の受け取り(図6(a))を行なっている。
そして、帰宅の際、図6(c)、(b)に示すように、この居住者は16:19にエントランスを開錠して入館し(図6(c))、16:21に玄関扉を開錠(図6(b))して居室に戻っている。
また、図6(d)は上記の外出、帰宅の際の居室内のセンサ類の検出状態を示しており、外出直前の14:13には警備システムが保安(外出)モードにセットされたことが記録されている。帰宅時にはまず16:23に警備システムの保安(外出)モードが解除されるとともに照明1、照明2の2つが点灯状態とされ、16:24には給湯器がオンとなったことが記録されている。
このように、本実施例によれば、特定の居住者に関し、物品収受装置100の制御部200が、物品収受動作のみならず、その居住者の主に外出や帰宅、室内の行動などを監視し、データベース情報として記録することができ、このデータベース情報を適宜解析することにより、たとえば長時間に渡り外出から戻らない、などの事象を検出した場合に家族や警備会社などに(たとえば電子メールなどの手段による)その旨を通知する情報出力を行なうことができるようになる。
また、以上の実施例によれば、集合住宅において、居住者のエントランスを通っての退出(外出)、帰宅行動などを確実に検出し、時刻情報などとともにデータベース情報として記録することができ、集合住宅内で居住者がIDカードを用いて行なう行動、たとえば居室玄関の施錠/開錠、エントランスからの退出(外出)および帰宅行動などに伴ない、居住者を支援するサービスを種々提供することができる。
そして、エントランスからの退出(外出)および帰宅行動に関し記録されたデータベースを解析することにより、たとえば居住者が日常あり得ないような時刻に外出したり、失踪や徘徊、帰宅不能などが疑われるような長期間に渡る外出、といった異常行動を検出することが可能となり、管理会社、警備会社、居住者の家族などのしかるべき宛先に警告情報を送信する、などの適切な措置を講じることができるようになる。
特に、本実施例においては、エントランス内側(集合住宅内側)に、集合住宅でカードキーないし認証手段として用いられるIDカード111と通信できる中距離センサからなるカードセンサ6011を設けることによって、従来は検出できていなかった居住者のエントランスからの外出行動を検出することができ、確実に居住者の外出行動を把握し、居室番号や時刻情報とともに居住者外出を示すデータベース情報を記録することができる、優れた利点がある。
また、本実施例は、集合住宅にIDカード111を用いて少なくとも開錠可能な物品収受ボックスを含む物品収受装置100を設置する場合、物品収受装置100の物品収受を制御する制御手段(制御部200)がカードセンサ6011、6021を介して居住者の外出、帰宅行動を監視する制御部を兼ねる構成であり、集合住宅に設置する制御システムを簡単安価に構成できる。
さらに、このような構成によれば、居住者の外出、帰宅行動に関するデータベース情報と、居住者の宅配物や郵便物の収受行動に関するデータベース情報を併せて1つの制御部によって管理できるようになり、居住者の外出、帰宅行動に関するデータベース情報と、居住者の宅配物や郵便物の収受行動に関するデータベース情報を併せて解析することによって、あるいは、居住者の居室内に配置された機器の状態を検出するセンサの検出状態を取得し、居住者の居室の状態を監視、記録するとともに、データベースに記録し、あるいはさらに該センサの検出状態に関する情報に応じて火災や事故などに関する警報を発生したり、関係者にしかるべき通知情報を送信したりすることができ、よりきめ細かい居住者の行動監視が可能となる。たとえば、居住者が外出しているのに、宅配物や郵便物の収受が行なわれている、といった事象は明らかに異常であるから、警備会社へ警告情報を送信するなどの措置を講じることが可能となる。