ところで、建物の施工作業の効率アップを図るには、建物ユニットの製造工場にて建物ユニットに浴室ユニットを組み付け、その組み付けた状態で当該建物ユニットを建物の施工現場まで搬送することが考えられる。しかしながら、上記のとおり建物ユニット側の受け金具の上にボルト脚を載置することで浴室ユニットを支持する構成では、建物ユニットを搬送する際においてボルト脚の位置ずれが生じることが懸念される。
また、ボルト脚の位置ずれ防止を図るべく、建物ユニットに対して浴室ユニットを組み付けた時点、すなわち建物ユニットの搬送前に、接着剤等によりボルト脚を受け金具に固定することが考えられる。しかしながら、かかる場合には建物施工現場での建物ユニットの据え付け後において、浴室ユニットの高さのレベル調整を行いにくくなるという不都合の発生が懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、浴室ユニットの好適なる設置を実現することができる浴室ユニットの設置方法、及び浴室用の建物ユニットを提供することを主たる目的とするものである。
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成の符号を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
第1の発明は、建物ユニット(10)に対して浴室ユニット(20)を設置する浴室ユニットの設置方法であって、前記浴室ユニットにはその下方に延び、長さ調整機能を有する複数の脚部材(25)が設けられており、前記建物ユニットの床梁(12,14)には前記脚部材を載置状態で支持する支持部材(15)が複数取り付けられており、建物施工現場への搬送前に、前記浴室ユニットの前記脚部材を前記支持部材の上面に載置させることで、前記浴室ユニットを前記建物ユニットに組み付ける工程と、同じく建物施工現場への搬送前に、前記支持部材の上面において前記脚部材を仮固定具(50)を用いて仮固定する工程と、前記建物施工現場への搬送後に、前記脚部材の長さ調整によるユニット高さのレベル調整を行う工程と、その後、前記支持部材の上面における前記脚部材の載置位置で、当該脚部材を前記支持部材に対して本固定する工程と、を有することを特徴とする。
浴室ユニットを設置した状態で建物ユニットを搬送する場合、その搬送の時点では浴室ユニットは本固定されていない。本固定されていない理由は建物施工現場での建物ユニットの据え付け後に、脚部材を用いて浴室ユニットの高さのレベル調整が行われるためである。それ故に建物ユニットの搬送時には浴室ユニットの位置ずれが懸念されるが、本発明の構成によれば、脚部材が仮固定具により仮固定された状態で建物ユニットが搬送されるため、浴室ユニットの位置ずれを抑制できる。また、建物施工現場への搬送前における脚部材の固定は、仮固定具を用いた「仮固定」にとどめられているため、建物施工現場へのユニット搬送後には浴室ユニットの高さのレベル調整を行うことが可能となっている。その結果、浴室ユニットの好適なる設置を実現できる。
第2の発明の浴室ユニットの設置方法は、前記支持部材は、前記脚部材を載置する載置部(32)と、前記仮固定具に係合可能な係合部(45)とを有しており、前記建物施工現場への搬送前に、前記載置部の上において前記係合部に対して係合可能となる位置に前記仮固定具を取り付ける工程を有していることを特徴とする。
支持部材は載置部と係合部とを有しており、支持部材の載置部の上に仮固定具を取り付けることで載置部の係合部と仮固定具との係合が可能となっている。この場合、仮固定具の取り付けといった簡易な作業にて脚部材の仮固定を実施できる。
第3の発明の浴室ユニットの設置方法は、前記建物ユニットにおいて互いに対向する一対の床梁(12,14)にそれぞれ前記支持部材が取り付けられており、前記一対の床梁に架け渡すようにして前記浴室ユニットを設置する設置方法であって、前記建物施工現場への搬送前において、前記一対の床梁のそれぞれに取り付けられた前記支持部材に対し、前記一対の床梁の離間方向において前記脚部材の各々内側となる位置、又は前記脚部材の各々外側となる位置に前記仮固定具を配置することを特徴とする。
建物ユニットにおいて互いに対向する一対の床梁にそれぞれ支持部材が取り付けられる構成では、それら各支持部材の上に載置される各脚部材について、梁離間方向における内側への移動が規制されるか、外側への移動が規制されるかすれば、浴室ユニットの位置ずれを抑制できる。この点、上記構成によれば、梁離間方向において脚部材の各々内側となる位置、又は脚部材の各々外側となる位置に仮固定具が配置されるため、支持部材ごとの各脚部材について梁離間方向における内側又は外側への移動が規制され、浴室ユニットの位置ずれを好適に抑制できる。この場合、個々の脚部材について梁離間方向の内外両側への移動を規制する必要がないため、仮固定具の構成としての簡素化を図ることもできる。
第4の発明の浴室ユニットの設置方法は、前記建物施工現場への搬送後において、前記ユニット高さのレベル調整の前に前記仮固定具を取り外す工程を有していることを特徴とする。
建物施工現場への搬送後には、ユニット高さのレベル調整の前に、仮固定具が取り外れされるため、レベル調整の作業に際して仮固定具が邪魔になることを抑制できる。また、仮固定具を治具として使い回すことが可能となる。
第5の発明の浴室ユニットの設置方法は、前記支持部材は、前記床梁の側面部に対して固定される縦板部(31)と、その縦板部から前記床梁の長手方向に直交する方向に延びる横板部(32)とを備え、前記横板部が前記載置部となっており、前記横板部において前記縦板部とは反対側の端部に、上方に突出する突出部(45)が前記係合部として設けられるとともに、前記脚部材の長さ調整の作業に用いる工具(W)を挿し入れ可能とする挿し入れ部(SW)が設けられていることを特徴とする。
支持部材の横板部において縦板部とは反対側の端部に突出部が設けられているため、その突出部により、脚部材が横板部の先端部から滑り落ちることを好適に抑制できる。また、脚部材の長さ調整の作業時には、レンチ等の工具が用いられると想定される。この点、横板部において縦板部とは反対側の端部に工具挿し入用の挿し入れ部が設けられているため、長さ調整作業を行う上で好都合な構成となっている。
第6の発明の浴室ユニットの設置方法は、前記仮固定具として、前記脚部材と前記係合部との間となる部分の長さが相違する複数の仮固定具が用意されており、前記載置部の上に前記仮固定具を取り付ける際に、前記複数の仮固定具のうちからいずれかを選択して前記取り付けを実施することを特徴とする。
支持部材の載置部上における脚部材の載置位置は、全ての脚部材について同一ではなく、載置位置が相違するものが含まれると考えられる。この点、脚部材と係合部との間となる部分の長さが相違する複数の仮固定具が用意されており、それらが選択的に用いられるため、脚部材の載置位置が相違するものが含まれていても都度好適な対処が可能となる。この場合、仮固定具を取り付けた状態でのがたつきを極力抑えることが可能となる。
第7の発明の浴室用の建物ユニットは、浴室ユニット(20)が一体化されて設置される浴室用の建物ユニット(10)であって、前記浴室ユニットにはその下方に延び、長さ調整機能を有する複数の脚部材(25)が設けられており、床構造部を構成する床梁(12,14)には前記脚部材を載置状態で支持する支持部材(15)が複数取り付けられており、前記支持部材の上面に前記浴室ユニットの前記脚部材を載置させた状態で、前記脚部材の長さ調整によるユニット高さのレベル調整を行う前において当該脚部材を仮固定するための仮固定部材(50)を備えていることを特徴とする。
上記構成では、仮固定部材によって、支持部材の上面に浴室ユニットの脚部材を載置させた状態で、脚部材の長さ調整によるユニット高さのレベル調整を行う前において当該脚部材が仮固定される。この仮固定によって、建物ユニットにおいてユニット高さのレベル調整前であって、浴室ユニットの位置ずれが生じるおそれがある場合において、その位置ずれを抑制できる。例えば、建物ユニットの搬送時において浴室ユニットの位置ずれを抑制できる。また、仮固定部材は、ユニット高さのレベル調整前に脚部材を「本固定」せず「仮固定」するものであるため、建物施工現場への搬送後において浴室ユニットの高さのレベル調整を行うことが可能となっている。その結果、浴室ユニットの好適なる設置を実現できる。
第8の発明の浴室用の建物ユニットは、前記支持部材は、前記脚部材を載置する載置部(32)と、前記仮固定部材に係合可能な係合部(45)とを有しており、前記仮固定部材は、前記載置部の上において前記係合部に対して係合可能となる位置に取り付けられるものであることを特徴とする。
上記構成では、支持部材が載置部と係合部とを有しており、載置部の上において係合部に対して係合可能となる位置に仮固定部材が取り付けられている。この場合、仮固定部材の取り付けといった簡易な作業にて脚部材の仮固定を実施できる。
第9の発明の浴室用の建物ユニットは、前記建物ユニットにおいて互いに対向する一対の床梁にそれぞれ前記支持部材が取り付けられており、前記一対の床梁に架け渡すようにして前記浴室ユニットが設置される建物ユニットであって、前記仮固定部材は、前記一対の床梁のそれぞれに取り付けられた前記支持部材に対し、前記一対の床梁の離間方向において前記脚部材の各々内側となる位置、又は前記脚部材の各々外側となる位置に配置されるものであることを特徴とする。
建物ユニットにおいて互いに対向する一対の床梁にそれぞれ支持部材が取り付けられる構成では、それら各支持部材の上に載置される各脚部材について、梁離間方向における内側への移動が規制されるか、外側への移動が規制されるかすれば、浴室ユニットの位置ずれを抑制できる。この点、上記構成によれば、梁離間方向において脚部材の各々内側となる位置、又は脚部材の各々外側となる位置に仮固定部材が配置されるため、支持部材ごとの各脚部材について梁離間方向における内側又は外側への移動が規制され、浴室ユニットの位置ずれを好適に抑制できる。この場合、個々の脚部材について梁離間方向の内外両側への移動を規制する必要がないため、仮固定部材の構成としての簡素化を図ることもできる。
なお、梁離間方向において脚部材の各々内側となる位置に仮固定部材が配置される構成では、その仮固定部材の存在により、レベル調整の作業に際して仮固定具が邪魔になることが懸念される。この点、仮固定部材が支持部材からの取り外しが可能となっているとよく、その取り外しにより、レベル調整の作業に際して仮固定具が邪魔になることを抑制できる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、複数の建物ユニットを組み合わせて構築されるユニット式建物においていずれかの建物ユニットに浴室ユニットが設置される構成としている。建物ユニット及びユニット式建物の構成は周知であるため、図示による説明は割愛するが、簡単に説明をしておく。建物ユニットは、四隅の柱と、それら各柱の上端部を連結する天井大梁と、各柱の下端部を連結する床大梁とを有し、全体として直方体状に形成されている。この建物ユニットはユニット製造工場で製作された後、トラック等の搬送手段によって建物施工現場まで搬送される。そして、建物施工現場において建物ユニットがクレーン等の据え付け手段を用いて据え付けられるとともに、隣接する建物ユニットの柱同士が連結部材(ドッキングプレート等)により連結されることで一体の建物本体が構築されるようになっている。
図1は、浴室ユニットの設置対象となる建物ユニット(浴室用の建物ユニット)の床構造部分の構成を示す平面図であり、図2は、建物ユニットに浴室ユニットが設置された状態を示す概略図である。また、図3は、建物ユニットの床構造部分及びユニット架台の分解斜視図である。
図1に示す建物ユニット10において、床構造部は、当該建物ユニット10の四隅となる位置に配置される柱11を有し、その柱11に対して互いに直交する2方向に床大梁12が連結されている。柱11は四角筒状の角形鋼よりなる。また、床大梁12は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして、すなわち溝部をユニット内側に向けるようにして設置されている。
床構造部には、浴室ユニットが組み入れられる浴室スペースS1と、それに隣接して設けられる脱衣所スペースS2とが図示のごとく定められている。脱衣所スペースS2に相当する部位には、各床大梁12のうち長辺側となる一対の床大梁12の間に架け渡した状態で複数の床小梁13が設けられている。床小梁13は、例えば四角筒状の角形鋼よりなる床梁である。
また、浴室スペースS1に相当する部位には、短辺側の床大梁12と床小梁13との間に架け渡した状態で受け小梁14が設けられている。受け小梁14は、例えば四角筒状の角形鋼よりなる床梁である。この場合、浴室スペースS1では、長辺側の床大梁12と受け小梁14とが互いに対向し、それら床大梁12及び受け小梁14にそれぞれ複数の受け金具15が取り付けられている。
そして、図2に示すように、受け金具15により支持された状態で浴室ユニット20が設置されている。浴室ユニット20は、受け金具15により支持されるユニット架台21と、そのユニット架台21の上に設置される浴槽22と、浴室空間SBを形成する壁パネル23及び天井パネル24とを有している。ユニット架台21は浴室ユニット20の下部構造体に相当し、このユニット架台21により上記の浴槽22に加え、洗い場床材等が支持されるようになっている。
ユニット架台21は、その下方に延びる脚部材としての複数のボルト脚25を有しており、そのボルト脚25が各受け金具15の上に載置されることで、建物ユニット10に対して浴室ユニット20が据え付けられるようになっている。この場合、浴室ユニット20は、一対の床梁(床大梁12、受け小梁14)に架け渡すようにして設置される。ボルト脚25は、建物ユニット10の床構造部に対して浴室ユニット20を所定高さに保持する高さ保持機能と、浴室ユニット20の高さのレベル調整(水平調整)を行うためのレベル調整機能(長さ調整機能)とを有している。
図3に示すように、ユニット架台21は、複数のフレーム材(長尺状の角材)が互いに直交する向きに連結されて構成されており、上段部27と下段部28とを有している。上段部27は浴室内において洗い場側となる部位に相当し、下段部28は浴槽側となる部位に相当する。そして、上段部27及び下段部28における各フレーム材には、下方に延びる複数のボルト脚25が取り付けられている。本実施形態では、上段部27に4つのボルト脚25が設けられ、下段部28に2つのボルト脚25が設けられている。なお、上段部27及び下段部28は上下方向に段差状に設けられていることから、それら各部27,28のボルト脚25は長さが相違しており、「上段部27側の脚長さ>下段部28側の脚長さ」となっている。
ユニット架台21の下方には、浴室ユニット20の床下部分を断熱する床下断熱材29が配設されている。床下断熱材29は、ポリエチレンフォーム等の板状断熱材よりなり、洗い場床及び浴槽の下方に配設される。床下断熱材29は複数に分割されて構成されており、建物ユニット10の床構造部に組み付けた状態で受け金具15や排水用配管との干渉避けのための切欠29aが複数箇所に設けられている。
次に、受け金具15に関する構成を図4を用いて説明する。図4において(a)は床大梁12に固定される受け金具15(便宜上、15Aとする)を示し、(b)は受け小梁14に固定される受け金具15(便宜上、15Bとする)を示している。
図4(a)に示すように、受け金具15Aは、互いに直交する向きに配置される縦板部31A及び横板部32Aと、それら各板部31A,32Aに各々連結される2枚の連結板部33Aとを有しており、それらが溶接等により互いに固定されている。連結板部33Aは略三角形状をなしており、この連結板部33Aにより縦板部31A及び横板部32AがL字状に連結されている。
そして、受け金具15Aが中間金具34を介して床大梁12に固定されている。具体的には、中間金具34は、床大梁12に対して固定される上下一対の固定部35と、それら固定部35の間となる側板部36とを有している。中間金具34は、側板部36が鉛直方向に延びるようにして床大梁12に対して固定されている。中間金具34に対する受け金具15Aの固定は、中間金具34の側板部36に取り付けられた上下2カ所の固定ナット37A(ウェルドナット)と、その固定ナット37Aに対してねじ入れられるボルト38Aとを用いて行われる。受け金具15Aを床大梁12に固定した状態(図4(a)の状態)では、受け金具15Aの横板部32Aが水平方向に延びている。この横板部32Aの上面がボルト脚25を載置する載置面となっている。
また、図4(b)に示すように、受け金具15Bは、受け金具15Aと同様の構成を有している。簡単に説明すると、受け金具15Bは、縦板部31Bと横板部32Bと連結板部33Bとを有しており、連結板部33Bにより、縦板部31B及び横板部32BがL字状に連結されている。そして、受け小梁14に対する受け金具15Bの固定は、受け小梁14に取り付けられた上下2カ所の固定ナット37B(ウェルドナット)と、その固定ナット37Bに対してねじ入れられるボルト38Bとを用いて行われる。受け金具15Bを受け小梁14に固定した状態(図4(b)の状態)では、受け金具15Bの横板部32Bが水平方向に延びている。この横板部32Bの上面がボルト脚25を載置する載置面となっている。
なお、受け小梁14の内部に固定ナット37Bを取り付けることを考慮すると、受け小梁14は、四角筒状の角形鋼でなく、溝形鋼に対して後付けで(固定ナット37Bの取り付け後に)溝開放側に板材(図の39)を固定する構成であるとよい。また、受け小梁14は必ずしも受け金具15Bにボルト38B及びナット37Bにより固定する必要はなく、例えば溶接により固定してもよい。
受け金具15A,15Bは、それぞれ建物ユニット10の下端位置である床大梁12の下面位置よりも下方にはみ出ないようにして取り付けられている。これにより、受け金具15がユニット運搬の支障となる事態が生じないようになっている。
図5に示すように、ボルト脚25は、ユニット架台21(フレーム材)の下面に固定された固定ナット41にねじ入れられた状態で取り付けられており、ボルト脚25の下端部には、当該ボルト脚25をレンチ等の工具により回動させるための回動ナット42が一体に取り付けられている。回動ナット42の下面は、横板部32A,32Bの上面に載置される被載置面となっている。
各受け金具15(15A,15B)では、横板部32A,32Bが、床梁(12,14)の長手方向に直交する方向に縦板部31A,31Bから延びるように構成されている。また、各受け金具15(15A,15B)は、図5の左右方向に見てそれぞれ内側に向けて延びるようにして配置されている。
ところで、本実施形態では、建物の施工順序としてユニット製造工場において建物ユニット10に対して浴室ユニット20を組み付け、その状態で当該建物ユニット10を建物施工現場にトラック等で搬送することとしている。かかる場合、建物ユニット10側の受け金具15に対して浴室ユニット20側のボルト脚25を載置した状態でユニット搬送を行うと、ボルト脚25の位置ずれが生じることが懸念される。そこで本実施形態では、建物施工現場への搬送前において、仮固定具としての仮固定プレート50を用い、受け金具15の上面にボルト脚25を仮固定する構成を採用している。
図6は、受け金具15とボルト脚25と仮固定プレート50とを示す斜視図である。図5には受け金具15の上に仮固定プレート50がセットされた状態が示されている。
図5及び図6に示すように、仮固定プレート50は、鋼鉄製の平板材よりなり、各受け金具15において横板部32A,32Bの内側先端部分とボルト脚25との間となる位置に配置されるようになっている。より具体的には、横板部32A,32Bの内側先端部には、上方に突出する突出部45が設けられており、その突出部45とボルト脚25との間に仮固定プレート50がセットされるようになっている。仮固定プレート50がセットされた状態では、その仮固定プレート50が突出部45に係合可能(当接可能)となっている。
突出部45は、横板部32A,32Bの内側先端部(すなわち縦板部31A,31Bとは反対側の端部)において互いに離間した二カ所に設けられており、その2つの突出部45の間が、工具Wを挿し入れるための挿し入れスペースSW(挿し入れ部)となっている。
仮固定プレート50のボルト脚25側の端部には、受け金具15の上面に仮固定プレート50をセットした状態でボルト脚25が入り込む凹部51が形成されている。この凹部51は例えば半円状をなしている。ただし、凹部51が三角状、矩形状をなしていてもよい。
また、仮固定プレート50のボルト脚25側の先端部には、下側が後退した向きの傾斜面52が形成されている。こうして傾斜面52が形成されていることにより、ボルト脚25に対して仮固定プレート50が接触していたとしてもその接触部分の当たりが小さくなり、ひいては仮固定プレート50の取り外しが困難になるという不都合が抑制されるようになっている。なお、傾斜先端部は、仮固定プレート50の上面と同じ高さ位置以外に、仮固定プレート50の厚さ方向の中間位置に設けられていてもよい。要は、仮固定プレート50の傾斜先端部が、ボルト脚25の回動ナット42の側面に当たるように構成されていればよい。
また、仮固定プレート50の傾斜面52はプレート取り外し時の引っ掛け部としても機能する。例えば、建物ユニット10の搬送後に、仮固定プレート50がボルト脚25と突出部45との間で挟み込んでその取り外しが困難となった場合でも、傾斜面52に引っ掛け工具を引っ掛けることで仮固定プレート50を容易に取り外すことが可能となる。なお、仮固定プレート50には、取り外し時の引掛け部として、傾斜面52以外に引掛け孔53(しの孔)が形成されている。
受け金具15の上面におけるボルト脚25の載置位置はボルト脚25ごとに決まっており、そのボルト脚25の載置位置に応じた寸法の仮固定プレート50が適宜使用されるようになっている。すなわち、図5では、受け金具15A用の仮固定プレート50と受け金具15B用の仮固定プレート50とで互いの寸法が相違しており、ボルト脚25と突出部45との間に挟まれる部分の長さが、受け金具15A用では「L1」、受け金具15B用では「L2」となっている。本実施形態では、仮固定プレート50として、ボルト脚25と突出部45との間に挟まれる部分の長さが相違する複数の仮固定プレート50が用意されている。
なお、建物ユニット10に対して浴室ユニット20が据え付けられる際には、ユニット架台21の所定部位が床大梁12に当接するなどすることで、受け金具15の上面におけるボルト脚25の位置が定められるようになっている。
次に、建物ユニット10に対する浴室ユニット20の設置方法について説明する。
まずユニット製造工場において、建物ユニット10を製造する。このとき、図1に示すように、建物ユニット10の主構造となる床大梁12に対して床小梁13を組み付けるとともに、図示のごとく受け小梁14を組み付ける。そして、浴室スペースS1側の床大梁12及び受け小梁14において所定位置に各々受け金具15を取り付ける。
その後、リフタ等の移送手段を用いて浴室ユニット20を建物ユニット10の床構造部に組み付ける。このとき、浴室ユニット20は、ユニット架台21や浴槽22、壁パネル23、天井パネル24が一体化された状態でユニット床構造部に組み付けられる。その組み付け時には、ユニット架台21から下方に延びるボルト脚25が各受け金具15の上面の所定位置に載置される。
その後、受け金具15の上面においてボルト脚25を仮固定プレート50を用いて仮固定する。このとき、作業者は、ボルト脚25と突出部45との間に挟まれる部分の長さが相違する複数の仮固定プレート50の中からいずれかを選択し、その選択した仮固定プレート50を、ボルト脚25と突出部45との間の位置にセットすることで仮固定を実施する。またこのとき、互いに離間する一対の床梁(床大梁12、受け小梁14)の離間方向においてボルト脚25の各々内側となる位置に、ボルト脚25と突出部45との間に挟んで仮固定プレート50をそれぞれ配置する(図5の状態)。なお本実施形態では、各ボルト脚25をそれぞれ仮固定プレート50を用いて仮固定するようにしている。
その後、建物ユニット10を建物施工現場にトラック等により運搬し、据え付けを実施する。そして、仮固定プレート50の取り外しを行う。その後、ボルト脚25の長さ調整によるユニット高さのレベル調整を行う。このとき、レンチ等の工具Wを用い、ボルト脚25の回動ナット42を回動させることでレベル調整を行う(図6参照)。レベル調整に際しては水平器を用いて水平度を確認しながら調整を行う。
その後、受け金具15の上面におけるボルト脚25の載置位置で、受け金具15に対してボルト脚25を本固定する。このとき、図7に示すように、ボルト脚25の回動ナット42(ボルト脚25の根元部分)に対して接着剤や硬化剤を付けて、ボルト脚25の本固定を実施する。
こうした一連のユニット設置作業の後、床下側から床下断熱材29の取り付けを実施する。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
浴室ユニット20を設置した状態で建物ユニット10を搬送する場合、その搬送の時点では浴室ユニット20は本固定されていない。本固定されていない理由は建物施工現場での建物ユニット10の据え付け後に、ボルト脚25を用いて浴室ユニット20の高さのレベル調整が行われるためである。それ故に建物ユニット10の搬送時には浴室ユニット20の位置ずれが懸念されるが、本実施形態の構成によれば、ボルト脚25が仮固定プレート50により仮固定された状態で建物ユニット10が搬送されるため、浴室ユニット20の位置ずれを抑制できる。また、建物施工現場への搬送前におけるボルト脚25の固定は、仮固定プレート50を用いた「仮固定」にとどめられているため、建物施工現場へのユニット搬送後には浴室ユニット20の高さのレベル調整を行うことが可能となっている。その結果、浴室ユニット20の好適なる設置を実現できる。
受け金具15において、ボルト脚25を載置する載置面には突出部45が設けられており、受け金具15の載置面の上に仮固定プレート50を取り付ける際には、載置面上の突出部45を用いて仮固定プレート50を所定位置に取り付けることができる。この場合、ボルト脚25と突出部45との間に挟まれた状態で仮固定プレート50を取り付けることができ、簡易な作業にてボルト脚25の仮固定を実施できる。
建物ユニット10において互いに対向する一対の床梁(12,14)にそれぞれ受け金具15が取り付けられる構成では、それら各受け金具15の上に載置される各ボルト脚25について、梁離間方向における内側への移動が規制されれば、浴室ユニット20の位置ずれを抑制できる。この点、上記構成によれば、梁離間方向においてボルト脚25の各々内側となる位置に、ボルト脚25と突出部45との間に挟んで仮固定プレート50が配置されるため、受け金具15ごとの各ボルト脚25について梁離間方向における内側への移動が規制され、浴室ユニット20の位置ずれを好適に抑制できる。この場合、個々のボルト脚25について梁離間方向の内外両側への移動を規制する必要がないため、仮固定プレート50の構成としての簡素化を図ることもできる。
また、建物施工現場への搬送後には、ユニット高さのレベル調整の前に仮固定プレート50が取り外される。そのため、レベル調整の作業に際して仮固定プレート50が邪魔になることを抑制できる。また、仮固定プレート50を治具として使い回すことが可能となる。
受け金具15の横板部32において縦板部31とは反対側の端部に突出部45が設けられているため、その突出部45により、ボルト脚25が横板部32の先端部から滑り落ちることを好適に抑制できる。
また、横板部32において縦板部31とは反対側の端部に工具挿し入用の挿し入れスペースSWが設けられているため、ボルト脚25の長さ調整作業を行う上で好都合な構成となっている。
ボルト脚25と突出部45との間に挟まれる部分の長さが相違する複数の仮固定プレート50を用意しておき、それらを選択的に用いるようにしたため、ボルト脚25の載置位置が相違するものが含まれていても都度好適な対処が可能となる。つまり、仮固定プレート50を取り付けた状態でのがたつきを極力抑えることが可能となる。
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
・仮固定具(仮固定部材)の構成を以下のように変更することも可能である。図8に示す構成では、受け金具15の横板部32において先端側(縦板部31とは反対側)の位置に孔部61が形成されている。また、仮固定プレート50には、孔部61に挿入される突起部62が形成されている。この場合、仮固定プレート50の突起部62が横板部32の孔部61に挿入されることで、仮固定プレート50(突起部62)が横板部32の孔部壁面に係合可能(当接可能)となっている。なお、建物ユニット10の搬送を考慮すると、突起部62が横板部32の下面から突出しないようにするか、突起部62が床大梁12の下面よりも下方に延びないように受け金具15の取付位置を上方に変更するとよい。また、仮固定プレート50の取り外し時には、突起部62を下方から工具で叩く等して同プレート50を取り外すことができる。
・上記実施形態では、一対の床梁のそれぞれに取り付けられた受け金具15に対し、一対の床梁の離間方向においてボルト脚25の各々内側となる位置に仮固定具(仮固定部材)を配置する構成としたが、これを変更し、一対の床梁の離間方向においてボルト脚25の各々外側となる位置に仮固定具(仮固定部材)を配置する構成としてもよい。具体的には、図9(a)に示すように、受け金具15の横板部32上に、縦板部31に沿うようにして仮固定片65を取り付ける構成とする。図示の構成では、仮固定片65の縦断面が三角形状をなしており、内寄りの頂部分に、ボルト脚25が入り込む凹部66が形成されている。ただし、仮固定片65の形状は任意であり、平板状をなすものであってもよい。上記構成では、受け金具15ごとの各ボルト脚25について梁離間方向における外側への移動が規制され、浴室ユニット20の位置ずれを好適に抑制できる。
仮固定片65は、取り外し可能であるとよい。この場合、建物ユニット10の搬送前に仮固定片65が取り付けられ、搬送後に取り外される。なお、図9(a)の構成では、縦板部31が、仮固定片65に係合可能な係合部に相当する。
また、仮固定片65は、受け金具15に溶接される等して取り外し不能に固定されていてもよい。この場合、受け金具15の横板部32上にボルト脚25を載置することで浴室ユニット20を建物ユニット10に組み付ける際に、ボルト脚25を仮固定片65の凹部66に入り込ませ仮固定することとなる。したがって、この場合、浴室ユニット20の組み付けと同時にボルト脚25の仮固定が行われることとなる。ここで、仮固定片65には、梁離間方向における内側(換言すると凹部66)に向けて下方傾斜する傾斜面65aが形成されているため、ボルト脚25を受け金具15の横板部32上に載置する際、その傾斜面65a上にボルト脚25を沿わせながら当該ボルト脚25を凹部66に導くことができる。これにより、受け金具15上に仮固定片65が固定されている構成においても、比較的容易にボルト脚25を凹部66に入り込ませて仮固定することができる。
また、図9(b)に示すように、受け金具15の横板部32上に、略半円状の仮固定片67を固定する構成としてもよい。この仮固定片67は、ボルト脚25が載置される所定位置に合わせて設けられるものであり、その凹み部分にボルト脚25を入り込ませることで仮固定する構成となっている。
・例えば、受け金具15の横板部32上にて、梁離間方向におけるボルト脚25を挟んだ両側にそれぞれ仮固定具を配置し、それら両仮固定具によりボルト脚25について梁離間方向の両側への移動を規制するようにしてもよい。例えば、仮固定プレート50と仮固定片67(図9(b)参照)とをそれぞれボルト脚25を挟んだ両側に配置してかかる両側規制を行うことが考えられる。この場合、例えば対向する各床梁(床大梁12及び受け小梁14)のうち一方側の床梁に取り付けられた2つの受け金具15上に載置されるボルト脚25を両仮固定具50,67を用いて仮固定するようにしても、浴室ユニット20の位置ずれを抑制することが可能となる。
・上記実施形態では、ボルト脚25を受け金具15上に載置することで浴室ユニット20を建物ユニット10に組み付けた後、ボルト脚25を仮固定プレート50を用いて仮固定するようにしたが、この手順を変更してもよい。例えば、まず仮固定プレート50を受け金具15上の所定位置に載置し、その後ボルト脚25を受け金具15上に載置することで浴室ユニット20を建物ユニット10に組み付けてもよい。この場合、浴室ユニット20の組み付けの際に、各ボルト脚25をそれぞれ仮固定プレート50の凹部51に入り込ませて仮固定を行うこととなる。つまり、この場合、建物ユニット10への浴室ユニット20の組み付けと、ボルト脚25の仮固定とが同時に行われることとなる。
・上記実施形態では、浴室ユニット20の各ボルト脚25をそれぞれ仮固定プレート50を用いて仮固定したが、必ずしもすべてのボルト脚25を仮固定する必要はない。例えば、対向する一対の床梁(床大梁12及び受け小梁14)のそれぞれに取り付けられた受け金具15のうち、互いに対角となる位置関係で配置される2つの受け金具15に載置されるボルト脚25のみを仮固定プレート50で仮固定するようにしてもよい。その場合でも、それら各ボルト脚25について梁離間方向における内側への移動が規制できるため、浴室ユニット20の位置ずれを好適に抑制できる。また、この場合、各ボルト脚25をそれぞれ仮固定プレート50で仮固定する場合と比べ、仮固定作業の工数低減を図ることができる。
・仮固定プレート50を、建物ユニット10の据え付け後において取り付け状態のままとしてもよい。
・上記実施形態では、床大梁12と受け小梁14とを一対の床梁とし、その一対の床梁に架け渡すようにして浴室ユニット20を設置する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、対向する一対の床大梁12に架け渡すようにして浴室ユニット20を設置する構成や、対向する一対の床小梁13に架け渡すようにして浴室ユニット20を設置する構成としてもよい。
・上記実施形態では、浴室ユニット20が下部構造体としてのユニット架台21を有し、そのユニット架台21に下方に延びるボルト脚25を設ける構成としたが、この構成を変更し、浴室ユニット20が下部構造体としての防水パンを有し、その防水パンに下方に延びるボルト脚25を設ける構成としてもよい。