以下、一実施形態の金型検出装置、各実施形態の曲げ加工装置、一実施形態の金型について、添付図面を参照して説明する。以下詳述する構成例においては、金型装着部に装着した金型の識別情報を検出し、金型の位置も検出することができる金型情報・位置検出装置を一実施形態の金型検出装置としている。金型情報・位置検出装置を搭載した各実施形態の曲げ加工装置や、金型情報・位置検出装置を搭載したラック装置の構成について説明する。
<曲げ加工装置の第1実施形態>
図1に示す第1実施形態の曲げ加工装置100は、後に詳述するように、金型情報・位置検出装置を搭載している。曲げ加工装置100を説明するのに併せて、金型の具体的構成を説明することとする。
図1において、左右のサイドフレーム1L,1Rには、上部テーブル2と下部テーブル3とが取り付けられている。上部テーブル2は、左右に設けた油圧シリンダ4によって上下動するようになっている。上部テーブル2は、図1に示す位置を上端の位置とし、下部テーブル3の方向へと移動する。上部テーブル2を上下動させる代わりに、下部テーブル3を上下動させてもよい。
上部テーブル2の下端部には、パンチ金型TPを装着するための上部金型ホルダ5が取り付けられている。下部テーブル3の上端部には、ダイ金型TDを装着するための下部金型ホルダ6が取り付けられている。上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6は、パンチ金型TPまたはダイ金型TDを装着する金型装着部の一例である。
上部金型ホルダ5には、上部金型ホルダ5の長手方向に沿って、パンチ金型TPの一部である端部を収納する溝状の凹部51が形成されている。上部金型ホルダ5には、上部金型ホルダ5の長手方向に沿って、スケール52が形成されている。作業者は、スケール52を、パンチ金型TPを上部金型ホルダ5の長手方向のどの位置に装着するかの目安とすることができる。
下部金型ホルダ6には、下部金型ホルダ6の長手方向に沿って、ダイ金型TDの一部である端部を収納する溝状の凹部61が形成されている。下部金型ホルダ6には、下部金型ホルダ6の長手方向に沿って、スケール62が形成されている。作業者は、スケール62を、ダイ金型TDを下部金型ホルダ6の長手方向のどの位置に装着するかの目安とすることができる。
スケール52,62は、例えば、上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6の長手方向の中央を0とし、正面から見て右方向をプラス(+)方向の距離、左方向をマイナス(−)方向の距離とする。上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6の左側端部を0としてもよい。
上部テーブル2及び下部テーブル3の奥側には、板材を曲げ加工する際に板材を突き当てるためのバックゲージ7が設けられている。バックゲージ7は、上部テーブル2及び下部テーブル3の長手方向と直交する方向に装着された突き当て部材71,72を有する。
バックゲージ7は、上部テーブル2及び下部テーブル3に近付く方向及び離れる方向に移動自在となっている。突き当て部材71,72は、上部テーブル2及び下部テーブル3の長手方向に移動自在となっている。板材を曲げ加工する際に、板材を突き当て部材71,72に突き当てることができるよう、後述するNC装置10によってバックゲージ7を移動させるようになっている。
バックゲージ7は、上部金型ホルダ5にパンチ金型TPを装着し、下部金型ホルダ6にダイ金型TDを装着する際に、上部テーブル2及び下部テーブル3の長手方向に対するパンチ金型TP及びダイ金型TDの位置を決めるためにも用いられる。即ち、板材の突き当て部材であるバックゲージ7は、パンチ金型TP及びダイ金型TDの位置決め機構としても利用される。バックゲージ7は、パンチ金型TP及びダイ金型TDの位置決め機構の一例である。
図1は、上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6の双方に、互いに対向するように3つのパンチ金型TPと3つのダイ金型TDを装着している例を示している。パンチ金型TP及びダイ金型TDには幅や形状が異なる複数種類があり、曲げ加工する板材の折り曲げる部分の長さや加工の仕方に応じた種類のパンチ金型TP及びダイ金型TDが選択して使用される。
また、上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6に装着するパンチ金型TP及びダイ金型TDの数と、上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6の長手方向に対するパンチ金型TP及びダイ金型TDの位置は、曲げ加工する板材や加工の仕方に応じて適宜設定される。
曲げ加工装置100は、曲げ加工装置100全体を制御するNC装置10を備える。NC装置10は、各種の情報を表示したり、曲げ加工装置100を操作したりするための操作・表示パネル8を有する。操作・表示パネル8はタッチパネルを有し、作業者はタッチパネルによって各種の操作入力を行うことができるようになっている。NC装置10は、例えばネットワークによって、曲げ加工装置100を設置している場所と離間した場所に設置されている各種のデータベースと接続されている。
図2を用いて、パンチ金型TP及びダイ金型TDの具体的構成を説明する。パンチ金型TP及びダイ金型TDは、金型の一実施形態である。図2では複数種類の形状のうちの1つを例とし、最も幅の狭いパンチ金型TP及びダイ金型TDを示している。
図2の(a)に示すように、パンチ金型TPの先端P00は所定の角度で尖った形状となっている。パンチ金型TPには、上部金型ホルダ5に装着する側の端部の近傍にV字状の凹部P01が形成されている。凹部P01は、対向する2つの面に形成されている。
対向する2つの面の一方を表面、他方を裏面とすると、表面及び裏面の双方に凹部P01を形成しているのは、パンチ金型TPの表面を図1の手前側にして上部金型ホルダ5に装着する場合と、パンチ金型TPの裏面を図1の手前側にして上部金型ホルダ5に装着する場合とがあるからである。
パンチ金型TPは、パンチ金型TPを上部金型ホルダ5に装着したときに落下を防止するための落下防止ピンP02と、落下防止ピンP02を引っ込ませるための操作部P03とを有する。落下防止ピンP02を設けている側を表面とする。
落下防止ピンP02及び操作部P03は、パンチ金型TPから常に突出する方向へ付勢されている。上部金型ホルダ5の凹部51にパンチ金型TPにおける端部を係合させ、落下防止ピンP02を上部金型ホルダ5の凹部51の長手方向全長に設けた溝に係止させることができる。この状態においては、パンチ金型TPを凹部51に沿って長手方向へ移動させることができる。
パンチ金型TPを上部金型ホルダ5に装着すると、上部金型ホルダ5内に設けられたクランパが凹部P01と係合して、上部金型ホルダ5に対してパンチ金型TPを固定するようになっている。
クランパと凹部P01との係合を解除した状態において、付勢力に抗して操作部P03を押圧移動させて、落下防止ピンP02と凹部51の溝との係止状態を解除することができる。すると、パンチ金型TPを凹部51から取り外すことができ、別のパンチ金型TPと交換することができる。
パンチ金型TPには、上部金型ホルダ5に装着する側の端部に、後述する電極が形成されており、絶縁膜Tinsが電極を覆っている。電極及び絶縁膜Tinsは、パンチ金型TPの表面及び裏面の双方に形成されている。電極は、後述する基板上に設けられている。ここでは、絶縁膜Tinsは電極が形成された基板の表面全体を覆っている。
図2の(a)では絶縁膜Tinsで覆われた電極基板に隠れて見えていないが、パンチ金型TPの基板の裏面側には、それぞれのパンチ金型TPを識別するための識別情報(いわゆる金型情報)を発信する識別情報発信回路が実装されている。識別情報発信回路の詳細については後述する。
パンチ金型TPに設けた識別情報は、同じ種類のパンチ金型TPであっても全て識別情報が異なるように、個々のパンチ金型TPに対して1つの識別情報を割り当ててもよいし、パンチ金型TPの種類ごとに1つの識別情報を割り当ててもよい。個々のパンチ金型TPに対して1つの識別情報を割り当てると、個々のパンチ金型TPの使用期間を管理することが可能となる。
図2の(b)に示すように、ダイ金型TDの先端D00は、パンチ金型TPの先端P00の形状に対応して、V字状の凹部となっている。ダイ金型TDには、下部金型ホルダ6に装着する側の端部の近傍に凹部D01が形成されている。凹部D01も表面及び裏面の双方に形成されている。
ダイ金型TDを下部金型ホルダ6に装着すると、下部金型ホルダ6内に設けられたクランパが凹部D01と係合して、下部金型ホルダ6に対してダイ金型TDを固定するようになっている。
ダイ金型TDには、下部金型ホルダ6に装着する側の端部に、後述する電極が形成されており、絶縁膜Tinsが電極を覆っている。電極及び絶縁膜Tinsは、ダイ金型TDの表面及び裏面の双方に形成されている。同様に、電極は、後述する基板上に形成されており、絶縁膜Tinsは電極が形成された基板の表面全体を覆っている。
図2の(b)では絶縁膜Tinsで覆われた電極基板に隠れて見えていないが、ダイ金型TDの基板の裏面側には、それぞれのダイ金型TDを識別するための識別情報を発信する識別情報発信回路が実装されている。識別情報発信回路の詳細については後述する。
ダイ金型TDに設けた識別情報は、同じ種類のダイ金型TDであっても全て識別情報が異なるように、個々のダイ金型TDに対して1つの識別情報を割り当ててもよいし、ダイ金型TDの種類ごとに1つの識別情報を割り当ててもよい。個々のダイ金型TDに対して1つの識別情報を割り当てると、個々のダイ金型TDの使用期間を管理することが可能となる。
図3を用いて、曲げ加工装置100の全体的なシステム構成について説明する。図3において、NC装置10は曲げ加工装置100の全体を制御する。NC装置10は、操作・表示パネル8に後述する段取り情報等の各種の情報を表示する。NC装置10は、作業者によってなされた操作・表示パネル8に対する操作入力に応じた動作をさせるよう、曲げ加工装置100を制御する。
NC装置10には、金型情報・位置検出ユニット11が接続されている。金型情報・位置検出ユニット11は、後に詳述するように、上部金型ホルダ5に装着されたパンチ金型TPの識別情報及び位置と、下部金型ホルダ6に装着されたダイ金型TDの識別情報及び位置とを検出する。パンチ金型TP及びダイ金型TDの位置とは、上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6の長手方向の長さLに対する長手方向の装着位置である。金型情報・位置検出ユニット11によって検出されたパンチ金型TP及びダイ金型TDの位置情報は、NC装置10に入力される。
NC装置10には、保有金型データベース(以下、保有金型DB)21と、金型情報データベース(以下、金型情報DB)22と、段取り情報データベース(以下、段取り情報DB)23と、加工情報データベース(以下、加工情報DB)24とが接続されている。前述のように、これらの保有金型DB21,金型情報DB22,段取り情報DB23,加工情報DB24は、ネットワークによってNC装置10と接続されている。
保有金型DB21には、曲げ加工装置100が保有しているパンチ金型TP及びダイ金型TDの情報が記憶されている。なお、パンチ金型TP及びダイ金型TDは、図1に示す曲げ加工装置100とは別体のラック装置に収納されており、それぞれの曲げ加工で必要とするパンチ金型TP及びダイ金型TDがラック装置から取り出されて上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6に装着される。
従って、曲げ加工装置100が保有しているパンチ金型TP及びダイ金型TDとは、ラック装置に収納されていて、曲げ加工装置100が使用することがあるパンチ金型TP及びダイ金型TDということである。
金型情報DB22には、それぞれのパンチ金型TP及びダイ金型TDがどのような金型であるかを示す識別情報が記憶されている。金型の識別情報とは、パンチ金型TP及びダイ金型TDの幅、パンチ金型TP及びダイ金型TDの長さ、先端P00,D00の角度等である。
段取り情報DB23には、板材に対して所定の曲げ加工をする際に、どのパンチ金型TP及びダイ金型TDを用いるのかを示す選択金型情報と、用いるパンチ金型TP及びダイ金型TDを上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6の長手方向に対してどの位置に装着するのかを示す装着位置情報とを少なくとも含む段取り情報が記憶されている。加工情報DB24には、どのような加工をするのかを示す情報が記憶されている。
図3において、パンチ金型TPが上部金型ホルダ5に装着されるか、ダイ金型TDが下部金型ホルダ6に装着されると、金型情報・位置検出ユニット11はパンチ金型TPまたはダイ金型TDの識別情報及び位置を検出する。まず、図4〜図22を用いて、パンチ金型TPまたはダイ金型TDの識別情報及び位置検出方法について説明する。
図4に示すように、金型情報・位置検出ユニット11は、情報・位置検出演算部111と増幅器114とを有する。情報・位置検出演算部111は、特性情報保持部112とA/D変換器113とを有する。ここでは、情報・位置検出演算部111が特性情報保持部112とA/D変換器113とを内蔵しているが、特性情報保持部112とA/D変換器113とを情報・位置検出演算部111の外部に設けてもよい。情報・位置検出演算部111は、マイクロコンピュータによって構成することができる。
図4を用いて、上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6が備える構成について説明する。上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6は、図4に示すホルダ給電電極31を有する。ホルダ給電電極31は、上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6の長手方向の長さLと同じ長さを有する。また、上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6は、ホルダ給電電極31の近傍に、図4に示す複数のホルダ検出電極32を有する。
長さLは例えば2〜4mであり、ここでは4mであるとする。最も幅の狭いパンチ金型TP及びダイ金型TDの幅が10mmであるとき、上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6には最大で400個のパンチ金型TP及びダイ金型TDが装着されることになる。そこで、長さLが4m、最も幅の狭いパンチ金型TP及びダイ金型TDの幅が10mmの場合、ホルダ検出電極32を400個設ける。
このように、ホルダ検出電極32は、金型装着部に最も幅の狭い金型を装着したときの装着可能な最大数だけ設けることが好ましい。
個々のホルダ検出電極32をホルダ検出電極321〜32400とし、ホルダ検出電極321〜32400のいずれかを特定しない場合をホルダ検出電極32と称することとする。
図4に示すように、ホルダ給電電極31とホルダ検出電極32とはわずかな距離だけ離間しており、互いに絶縁されている。ホルダ給電電極31とホルダ検出電極32のそれぞれを例えばレジストを用いた絶縁膜によって覆って、ホルダ給電電極31とホルダ検出電極32とを絶縁することが好ましい。
ホルダ検出電極32には、電圧情報取り出し部330が接続されている。電圧情報取り出し部330は次のように構成されている。電圧情報取り出し部330は、Dフリップフロップ331〜33400よりなるシフトレジスタSRを有する。Dフリップフロップ331〜33400のいずれかを特定しない場合をDフリップフロップ33と称することとする。
電圧情報取り出し部330は、さらに、ホルダ検出電極321〜32400のそれぞれに接続された増幅器341〜34400と、増幅器341〜34400のそれぞれに接続されたスイッチ351〜35400とを有する。増幅器341〜34400のいずれかを特定しない場合を増幅器34、スイッチ351〜35400のいずれかを特定しない場合をスイッチ35と称することとする。
図4において、情報・位置検出演算部111は交流波形信号を発生し、増幅器114は交流波形信号を増幅して、交流の給電信号Sfacをホルダ給電電極31に供給する。本実施形態においては、給電信号Sfacを矩形波信号とする。給電信号Sfacを正弦波信号としてもよい。金型情報・位置検出ユニット11は、ホルダ給電電極31に交流の給電信号Sfacを供給する給電信号供給部となっている。
給電信号Sfacは、図5の(a)に示すように、一例として、周波数10kHzである信号区間と、周波数50kHzである信号区間とが混在した矩形波信号である。周波数50kHzの信号区間を第1の周波数を有する第1の交流波形区間とし、周波数10kHzの信号区間を第2の周波数を有する第2の交流波形区間とする。
後述するように、周波数50kHzの第1の交流波形区間は、金型情報・位置検出ユニット11によって上部金型ホルダ5に装着されたパンチ金型TPまたは下部金型ホルダ6に装着されたダイ金型TDの識別情報を検出するために用いられる。周波数10kHzの第2の交流波形区間は、金型情報・位置検出ユニット11によって上部金型ホルダ5に装着されたパンチ金型TPまたは下部金型ホルダ6に装着されたダイ金型TDの位置を検出するために用いられる。
周波数50kHzの第1の交流波形区間をID受信区間Tid、周波数10kHzの第2の交流波形区間を位置検出区間Tpと称することとする。図6の(a)に示すように、情報・位置検出演算部111は、ID受信区間Tidの矩形波信号と位置検出区間Tpの矩形波信号とを交互に出力する給電信号Sfacを発生する。
情報・位置検出演算部111は、全てのDフリップフロップ33のクロック(C)端子にハイ(H)とロー(L)とが交互に切り換わる切換制御信号Scswを供給する。情報・位置検出演算部111は、電圧情報取り出し部330のDフリップフロップ331のD端子に対して、初期入力信号Siniを供給する。初期入力信号SiniはHの1パルスであるパルス信号でよい。
Dフリップフロップ331にHの切換制御信号Scswと初期入力信号Siniとが入力されると、Q端子の出力がHとなり、スイッチ351がオンとなる。すると、ホルダ検出電極321からの電圧情報は増幅器341で増幅され、スイッチ351を介して電圧情報信号Siecとして情報・位置検出演算部111へと入力される。ホルダ検出電極32から電圧情報が得られる理由については後述する。
Dフリップフロップ331のQ端子の出力がHとなると、Dフリップフロップ332のD端子にHが入力される。切換制御信号Scswが次にHとなると、同様にして、Dフリップフロップ332のQ端子の出力がHとなり、スイッチ352がオンとなる。すると、ホルダ検出電極322からの電圧情報は増幅器342で増幅され、スイッチ352を介して電圧情報信号Siecとして情報・位置検出演算部111へと入力される。
このようにして、シフトレジスタSRのDフリップフロップ33は、Dフリップフロップ331からDフリップフロップ33400へと、切換制御信号Scswの1クロック毎に順次Q端子の出力がHとなる。Q端子の出力がHとなるDフリップフロップ33に接続されているスイッチ35のみがオンとなるので、スイッチ35は、スイッチ351からスイッチ35400へと順次オンしていく。
従って、ホルダ検出電極321からホルダ検出電極32400までのそれぞれの電圧情報が順次取り出されて、情報・位置検出演算部111に電圧情報信号Siecとして入力される。
Dフリップフロップ33400のQ端子の出力がHとなったら、再びDフリップフロップ331のD端子に初期入力信号Siniを供給して、同じ動作を繰り返す。初期入力信号Siniは、電圧情報取り出し部330が全てのホルダ検出電極32を順次切り換える1周期で1回Hとなるパルス信号とすればよい。
シフトレジスタSRは、電圧情報を取り出す対象とするホルダ検出電極32を、ホルダ検出電極321〜32400のうちから択一的に選択して順次切り換える電極切り換え回路として動作している。
情報・位置検出演算部111に入力された電圧情報信号Siecは、A/D変換器113によってデジタル信号に変換される。情報・位置検出演算部111は、電圧情報信号Siecに含まれる識別情報波形信号を復調することによって、上部金型ホルダ5または下部金型ホルダ6に装着されているパンチ金型TPやダイ金型TDの識別情報を検出する。識別情報の検出方法については後述する。
また、情報・位置検出演算部111は、電圧情報信号Siecがどのホルダ検出電極32から得られたかに基づいて、また、電圧情報信号Siecをデジタル信号に変換した電圧値を参照することによって、上部金型ホルダ5または下部金型ホルダ6に装着されているパンチ金型TPやダイ金型TDの位置を検出する。位置検出の演算方法については後述する。
図7及び図8を用いて、ホルダ給電電極31とホルダ検出電極32と電圧情報取り出し部330が上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6にどのように取り付けられているかについて説明する。
図7及び図8は、図1における凹部51,61の手前側の端部で上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6を切断した切断部分斜視図である。図7に示すように、凹部51,61の側壁には金属板36が取り付けられており、金属板36には回路基板37が取り付けられている。回路基板37は、内部構成として、ホルダ給電電極31とホルダ検出電極32と電圧情報取り出し部330とを有する。回路基板37の表面には、ホルダ給電電極31を覆う絶縁膜31insとホルダ検出電極32を覆う絶縁膜32insとが形成されている。
図8に示すように、凹部51,61の側壁には金属板36を収納する凹部40が形成されている。凹部51,61の側壁は、上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6の内壁である。凹部40には、1つの金属板36を装着する範囲に2つの金属ピン41が埋め込まれている。金属板36には、金属ピン41と対応する孔36aが形成されている。金属ピン41を孔36aに挿入させるよう金属板36を凹部40に収納させれば、金属板36は凹部40に位置決めされる。
凹部40には、1つの金属板36を装着する範囲に、内部にめねじが形成された3つの孔42が形成されている。金属板36には、3つの孔42と対応する孔36bが形成されている。金属板36が凹部40に位置決めされる状態で、孔36bを通しておねじ43を孔42に締め付ければ、金属板36は凹部40に強固に固定される。図8に示す凹部40に対する金属板36の固定方法は単なる一例であり、図8に示す固定方法に限定されるものではない。
図7,図8に示す例では、1つの金属板36に2枚の回路基板37が装着される。金属板36は、図7,図8の上下方向の端部に8つの突部36cを有する。回路基板37の図7,図8の上下方向の端部には、半円状の切り欠き37cが形成されている。切り欠き37cを突部36cに係合させることによって、回路基板37は金属板36に固定される。図8に示す金属板36に対する回路基板37の固定方法は単なる一例であり、図8に示す固定方法に限定されるものではない。
次に、図9〜図13を用いて、パンチ金型TP及びダイ金型TDのさらに詳細な構成について説明する。図2で説明したように、パンチ金型TPとダイ金型TDとは形状が異なるものの、図9,図10では、パンチ金型TP及びダイ金型TDの概略的な形状を示している。
図9に示すように、パンチ金型TP及びダイ金型TDは、金型受電電極T31と金型変位電極T32を有する。金型受電電極T31と金型変位電極T32とは、所定の距離離間している。金型受電電極T31及び金型変位電極T32は図13の(a)に示す基板TS上に設けられ、基板TSの表面全体が例えばレジストを用いた絶縁膜Tinsで覆われている。絶縁膜Tinsを設けることは必須ではないが、設けることが好ましい。
金型受電電極T31の図9の上下方向の長さは、図4で説明したホルダ給電電極31の短手方向の長さと略同一となっている。ホルダ給電電極31の短手方向は、上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6の凹部51,61の奥行き方向である。金型変位電極T32の図9の上下方向の長さは、図4で説明したホルダ検出電極32における凹部51,61の奥行き方向の長さと略同一となっている。
ホルダ検出電極32の幅は、金型変位電極T32の幅と略同一であることが好ましい。ホルダ検出電極32の幅と金型変位電極T32の幅とを完全に一致させることはさらに好ましい。当然のことながら寸法は誤差を含むので、同一とは略同一の状態を含むものとする。
図9に示す例では、金型受電電極T31と金型変位電極T32の幅を同じにしているが、金型受電電極T31の幅を金型変位電極T32の幅よりも広くしてもよい。
図10の(a),(b),(c)は、幅の異なる3種類のパンチ金型TPとダイ金型TDを示している。図10の(a)は、最も幅の狭い幅10mmのパンチ金型TPとダイ金型TDである。金型受電電極T31及び金型変位電極T32は、パンチ金型TPとダイ金型TDがどのような幅であっても、固定の1つの幅で、パンチ金型TPとダイ金型TDの幅方向の中心に設けることが好ましい。最も幅の狭いパンチ金型TP及びダイ金型TDの幅が10mmであるので、金型受電電極T31及び金型変位電極T32の幅を例えば5mmとする。
図11に示すように、金型受電電極T31と金型変位電極T32とに間には、識別情報発信回路45が設けられている。金型受電電極T31と金型変位電極T32とは、識別情報発信回路45を介して間接的に接続されている。識別情報発信回路45は、ダイオードD45と、コンデンサC45と、ワンチップマイクロコンピュータ(以下、ワンチップマイコン)451とを有する。
後述するように、金型受電電極T31からは、図5の(a)に示す給電信号Sfacと等価の矩形波信号Ssqwが出力される。ワンチップマイコン451には、金型受電電極T31から出力された矩形波信Ssqw号をダイオードD45によって整流し、コンデンサC45によって平滑化することによって生成した電圧が電源電圧Vinとして供給される。
図12は、ワンチップマイコン451内部の概念的な構成を示している。図12では、ワンチップマイコン451に入力される電源電圧Vinの図示を省略している。ワンチップマイコン451は、周波数判別部4511,識別情報保持部4512,識別情報波形生成部4513を有する。識別情報保持部4512は、パンチ金型TPまたはダイ金型TDの識別情報を保持している。本実施形態では、識別情報を例えば20ビットとする。
周波数判別部4511は、入力された矩形波信号Ssqwの周波数を判別し、周波数50kHzのID受信区間Tidと周波数10kHzの位置検出区間Tpとのいずれであるかを判別する。識別情報波形生成部4513は、周波数判別部4511によってID受信区間Tidであると判別された期間において、識別情報保持部4512に保持された識別情報に基づいて識別情報波形を含む識別情報波形信号Sidを生成して出力する。
識別情報発信回路45は、ワンチップマイコン451を用いることによって低コストで実現できる。図11に示す識別情報発信回路45の構成によれば、ワンチップマイコン451に電源電圧を供給する電源回路を別途設ける必要がない。この点でも識別情報発信回路45は低コストで実現できる。
図13において、(a)は基板TSの表面側、(b)は基板TSの裏面側を示している。図13の(b)に示すように、識別情報発信回路45は、基板TSの裏面に実装されている。表面に金型受電電極T31及び金型変位電極T32が設けられ、裏面に識別情報発信回路45が実装された基板TSは、金型受電電極T31及び金型変位電極T32が外面側となるようにパンチ金型TP及びダイ金型TDに装着されている。
識別情報発信回路45が基板TSの裏面に実装されているので、識別情報発信回路45に油が付着することはなく、パンチ金型TPまたはダイ金型TDに加わる衝撃が直接的には伝わりにくい。よって、一実施形態のパンチ金型TPまたはダイ金型TDは苛酷な環境に耐え得る構造を有する。
図14の(a)に示すように、パンチ金型TPを金型受電電極T31及び金型変位電極T32が形成されている側から上部金型ホルダ5の凹部51に挿入して、パンチ金型TPを上部金型ホルダ5に装着すると、図14の(b)に示すように、金型受電電極T31がホルダ給電電極31と対向し、金型変位電極T32がホルダ検出電極32と対向する。
同様に、ダイ金型TDを金型受電電極T31及び金型変位電極T32が形成されている側から下部金型ホルダ6の凹部61に装着すると、金型受電電極T31がホルダ給電電極31と対向し、金型変位電極T32がホルダ検出電極32と対向する。
なお、図14では、簡略化のため、上部金型ホルダ5の構成としては、図8で説明した金属板36の図示を省略し、ホルダ給電電極31及びホルダ検出電極32のみを示している。また、図14では、金型受電電極T31及び金型変位電極T32を覆っている絶縁膜Tinsの図示を省略している。
図14の(b)に示すように、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31とが明確に離間していれば、また、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とが明確に離間していれば、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31とが接触することはなく、また、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とが接触することはない。従って、絶縁膜31ins,32ins,Tinsは必ずしも必要はない。
しかしながら、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31との距離、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32との距離が比較的短い場合には、絶縁膜31ins,32ins,Tinsを設けることが必要となる。
ホルダ給電電極31と金型受電電極T31とは、互いに接触することなく近接して対向していればよい。ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とは、互いに接触することなく近接して対向していればよい。絶縁膜31ins,32ins,Tinsを設けた場合には、絶縁膜31ins,32insと絶縁膜Tinsとが接触してもよい。この場合でも、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31とが互いに接触することなく近接して対向し、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とが互いに接触することなく近接して対向していることになる。
図15は、3つのパンチ金型TPを上部金型ホルダ5に装着したときの、ホルダ給電電極31及びホルダ検出電極32と、金型受電電極T31及び金型変位電極T32のみを図示している。ダイ金型TDを下部金型ホルダ6に装着した場合には、上下関係が図15とは逆になる。パンチ金型TPとダイ金型TDは上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6に対して、段取り情報に従った長手方向の位置に装着される。
従って、金型変位電極T32がホルダ検出電極32とちょうど一致するように対向することもあるし、2つのホルダ検出電極32にまたがるように対向することもある。
図15では、ホルダ検出電極32とちょうど一致するように対向する金型変位電極T32と、2つのホルダ検出電極32に均等にまたがるように対向する金型変位電極T32と、2つのホルダ検出電極32の一方側にずれた状態で対向する金型変位電極T32とが存在している例を示している。
図16を用いて、互いに対向するホルダ給電電極31と金型受電電極T31及びホルダ検出電極32と金型変位電極T32の作用について説明する。図16では理解を容易にするために、金型変位電極T32がちょうど1つのホルダ検出電極32に一致して対向しているとする。
図16に示すように、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31とが互いに接触することなく近接して対向していることから、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31との対は、平行平板コンデンサC31を形成することになる。平行平板コンデンサC31は、第1のキャパシタである。
また、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とが互いに接触することなく近接して対向していることから、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32との対は、平行平板コンデンサC32を形成することになる。平行平板コンデンサC32は、第2のキャパシタである。
前述のようにホルダ給電電極31に矩形波信号である給電信号Sfacが供給されると、給電信号Sfacは平行平板コンデンサC31を介して金型受電電極T31へと伝達され、矩形波信号Ssqwとして識別情報発信回路45へと供給される。図5の(b)に示すように、識別情報発信回路45は、識別情報保持部4512に保持された識別情報に基づいて、周波数50kHzのID受信区間Tidにおける矩形波信号を整形して、20ビットの識別情報波形を含む識別情報波形信号Sidを生成する。
識別情報波形生成部4513は、ID受信区間Tidにおける矩形波信号をゲートさせるか否かによって図5の(b)に示すような識別情報波形信号Sidを生成することができる。図5の(b)では、20ビットのうちの部分的なビットを示している。
図5の(b)においては、ID受信区間Tidにおける矩形波信号の2周期区間を1ビットとしているが、何周期区間を1ビットとするかは適宜設定すればよい。例えば、10周期区間を1ビットとすると、1ビットの時間は10/(50×103)より0.2mSとなる。従って、20ビットの識別情報を4mSで表現することができる。位置検出区間Tpを10周期とすると、位置検出区間Tpは1mSとなる。
識別情報発信回路45(識別情報波形生成部4513)は、周波数10kHzの位置検出区間Tpの矩形波信号をそのまま出力する。従って、識別情報発信回路45より出力される識別情報波形信号Sidは、図5の(b)に示すように、位置検出区間Tpの周波数10kHzの矩形波信号と、20ビットの識別情報を示す矩形波信号とが混在した波形となる。位置検出区間Tpの矩形波信号は識別情報としては用いられないため、図5の(b)に示す識別情報波形信号Sidは、実質的に図5の(c)に示す波形と等価である。
図5の(b)に示す識別情報波形信号Sidは、平行平板コンデンサC32を介してホルダ検出電極32より出力される。ホルダ検出電極32から、図5の(b)に示す識別情報波形信号Sidと等価な矩形波信号の電圧情報を取り出すことが可能となる。ホルダ検出電極32より取り出された矩形波信号は、増幅器34で増幅されて電圧情報信号Siecとなる。
パンチ金型TPまたはダイ金型TDがホルダ検出電極32nの位置にあるとする。図6の(b)は、ホルダ検出電極32(n-1)と対応するDフリップフロップ33(n-1)と、ホルダ検出電極32nと対応するDフリップフロップ33nと、ホルダ検出電極32(n+1)と対応するDフリップフロップ33(n+1)それぞれに供給される切換制御信号Scswの1パルスを示している。
ホルダ検出電極32nからは図6の(c)に示す位置検出区間Tpの周波数10kHzの矩形波信号と、ID受信区間Tidの20ビットの識別情報とを含む矩形波信号が取り出される。この矩形波信号が増幅器34で増幅されて電圧情報信号Siecとして情報・位置検出演算部111へと供給される。
情報・位置検出演算部111は、電圧情報信号Siecに含まれる識別情報波形信号を復調して、上部金型ホルダ5に装着されているパンチ金型TPや、下部金型ホルダ6に装着されているダイ金型TDの種類を検出する。情報・位置検出演算部111は、電圧情報信号Siecの矩形波信号の周波数を判別して、周波数10kHzの部分を除く部分を識別情報波形として認識すればよい。
次に、金型情報・位置検出ユニット11による上部金型ホルダ5に装着されたパンチ金型TPの位置と、下部金型ホルダ6に装着されたダイ金型TDの位置の検出方法について説明する。
ホルダ給電電極31と金型受電電極T31とで構成されるコンデンサC31のキャパシタ容量は、金型の位置が変化しても対向する面積は増減しないので変化しない。一方、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とで構成されるコンデンサC32のキャパシタ容量は、金型の位置が変化するのに応じて大きく変化する。
ホルダ給電電極31と金型受電電極T31とで構成されるコンデンサC31と、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とで構成されるコンデンサC32とは、直列のキャパシタ回路を形成している。このキャパシタ回路のキャパシタ容量は、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32との相対的な位置関係に応じて増減する。
図17を用いて、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32との相対的な位置関係の違いによって電圧情報信号Siecがどのように得られるかについて説明する。
図17において、(a)は図10の平面図に相当する。最も左側の金型変位電極T32は、ホルダ検出電極322とちょうど一致するように対向している。左から2番目の金型変位電極T32は、ホルダ検出電極324とホルダ検出電極325とに均等にまたがるように対向している。左から3番目の金型変位電極T32は、ホルダ検出電極327側にずれた状態でホルダ検出電極327,328に対向している。
図17において、(b)は、金型変位電極T32が図17の(a)のように存在しているときにそれぞれのホルダ検出電極32によって検出される電圧情報を示している。図17の(b)における横軸は位置を示している。位置p1,p2,p3…のそれぞれにおいて、順次選択されるホルダ検出電極32から電圧情報が得られる。図17の(b)における縦軸は電圧情報を示しており、位置検出区間Tpにおける電圧情報信号SiecをA/D変換器113によってデジタル信号に変換したデジタル値である。情報・位置検出演算部111は、順次得られる電圧情報を記憶する。
図17の(b)に示すように、金型変位電極T32と対向していないホルダ検出電極32から得られる電圧情報は、上述したコンデンサコンデンサC31とコンデンサC32とが形成されないため、非常に小さなレベルとなる。即ち、金型変位電極T32と対向していないホルダ検出電極32からは、所定レベル以上の電圧情報が出力されない。以下説明する情報・位置検出演算部111によるパンチ金型TPやダイ金型TDの位置検出においては、金型変位電極T32と対向していないホルダ検出電極32から得られる非常に小さなレベルの電圧情報を0とみなすこととする。
ホルダ検出電極324,325においては、金型変位電極T32がそれぞれ部分的に均等に対向しているので、ホルダ検出電極324に接続された増幅器344と、ホルダ検出電極325に接続された増幅器345からは最大の電圧情報信号Siecよりも小さく同じ値の電圧情報信号Siecが得られることになる。従って、位置p4においてホルダ検出電極324に対応して得られる電圧情報と位置p5においてホルダ検出電極325に対応して得られる電圧情報とは同じ値となる。
ホルダ検出電極327,328においては、金型変位電極T32がホルダ検出電極327に対して多く、ホルダ検出電極328に対して少ない状態で不均等に対向しているので、ホルダ検出電極327に接続された増幅器347から得られる電圧情報信号Siecの方が大きい値となり、ホルダ検出電極328に接続された増幅器348から得られる電圧情報信号Siecの方が小さい値となる。増幅器347,348から得られる電圧情報信号Siecはいずれも最大の電圧情報信号Siecよりも小さい値である。
従って、位置p7においてホルダ検出電極327に対応して得られる電圧情報と位置p8においてホルダ検出電極328に対応して得られる電圧情報とは、図17の(b)に示すような関係となる。
情報・位置検出演算部111は、図17の(b)に示すような電圧情報の値に基づいて、または、位置に応じた電圧情報の値の変化に基づいて、パンチ金型TPとダイ金型TDが上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6の長手方向のどの位置に装着されているかを検出する。
情報・位置検出演算部111は、図17の(b)に示す電圧情報の大きさに基づいて、パンチ金型TPまたはダイ金型TDの位置を大まかに把握することができる。そして、以下に説明する位置検出の演算によって、パンチ金型TPまたはダイ金型TDの細かく厳密な位置を求めることができる。一例としてノギスに例えると、前者はノギスの主尺に相当し、後者はノギスの副尺に相当する。
まず、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31との間の間隔、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32との間隔が一定である場合の位置検出方法の例について説明する。凹部51,61の間隔とパンチ金型TP及びダイ金型TDの厚さとに差が少なく、回路基板37とパンチ金型TPまたはダイ金型TDとの間隔がほぼ一定となる場合には、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31との間の間隔、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32との間隔を一定とみなすことができる。
電圧情報信号Siecをデジタル信号に変換したデジタル値である電圧情報は、図18に示すように、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とがちょうど一致して対向している場合に最大値Vmaxとなり、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とのずれ量に応じて順次小さくなっていく特性を有する。金型変位電極T32がホルダ検出電極32に対して図12の(a)における左方向にずれている場合をマイナス(−)のずれ、右方向にずれている場合をプラス(+)のずれとする。
ホルダ給電電極31と金型受電電極T31との間の間隔、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32との間隔が一定であれば、電圧情報の値は、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とのずれ量に応じて絶対的に決まることになる。
特性情報保持部112は、図18に示すずれ量と電圧情報との関係を示す特性を特性情報として保持する。例えば電圧情報として所定の電圧値の最大値Vmaxが得られた場合、情報・位置検出演算部111は、金型変位電極T32がホルダ検出電極32とちょうど一致した位置にあることを検出することができる。
金型変位電極T32がホルダ検出電極327側にずれた状態でホルダ検出電極327,328に対向している場合を例にする。情報・位置検出演算部111は、電圧情報として得られる電圧値V1,V2に基づいて、金型変位電極T32の幅方向の中央とホルダ検出電極327の幅方向の中央とのずれ量L1と、金型変位電極T32の幅方向の中央とホルダ検出電極328の幅方向の中央とのずれ量L2とを求めることができる。
情報・位置検出演算部111は、ずれ量L1,L2によって金型変位電極T32の位置(即ち、パンチ金型TPまたはダイ金型TDの位置)を検出することができる。
次に、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31との間の間隔、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32との間隔が一定とは限らない場合の位置検出方法の例について説明する。回路基板37とパンチ金型TPまたはダイ金型TDとの間隔が一定でない場合には、図18に示す特性は間隔に応じて変化することになる。この場合、電圧情報の値は絶対的には決まらない。
そこで、情報・位置検出演算部111は、次のようにして金型変位電極T32の位置を検出する。情報・位置検出演算部111は、図17の(b)に示す電圧情報の値の変化によって、金型変位電極T32の大まかな位置を検出することができる。位置p1〜p3のように、電圧情報が0,最大値Vmax,0のように変化すれば、情報・位置検出演算部111は、金型変位電極T32はホルダ検出電極322とちょうど一致するように対向していることを検出することができる。
位置p4,p5や位置p7,p8のように、隣り合う2つのホルダ検出電極32において0を超える所定の電圧値が得られた場合、情報・位置検出演算部111は、金型変位電極T32は2つのホルダ検出電極32にまたがっていることを検出することができる。そして情報・位置検出演算部111は、隣り合う2つのホルダ検出電極32に対応した電圧値V1,V2の相対的な関係に基づいて、金型変位電極T32の位置を特定する。
情報・位置検出演算部111は、例えば、次の式(1)
(V1−V2)/(V1+V2) …(1)
を計算することによって、金型変位電極T32が隣り合う2つのホルダ検出電極32にまたがっているときの位置を求めることができる。式(1)の分子は(V2−V1)であってもよい。
最大値Vmaxが10mV、位置p4,p5で得られた電圧値が5mV、位置p7で得られた電圧値が8mV、位置p8で得られた電圧値が2mVであるとする。これらの数値は単なる例である。金型変位電極T32がホルダ検出電極324,325に均等にまたがっている場合、式(1)を用いて、(5−5)/(5+5)より0となる。即ち、式(1)の計算式で計算した値が0であれば、金型変位電極T32は隣り合う2つのホルダ検出電極32に均等にまたがる位置にあるということなる。
金型変位電極T32がホルダ検出電極327側にずれた状態でホルダ検出電極327,328にまたがっている場合、式(1)を用いて、(8−2)/(8+2)より0.6となる。式(1)の計算式では、計算した値が0より大きい正の大きな値ほど、隣り合う2つのホルダ検出電極32のうち、図12の(a)における左側方向にずれていることになる。また、計算した値が0より小さい負の大きな値ほど、隣り合う2つのホルダ検出電極32のうち、図17の(a)における右側方向にずれていることになる。
このようにして、情報・位置検出演算部111は、隣り合う2つのホルダ検出電極32において0を超える所定の電圧値が得られた場合には、式(1)の計算式を用いることによって、金型変位電極T32が隣り合う2つのホルダ検出電極32に対して相対的にどの位置にあるかを検出することができる。
金型変位電極T32が隣り合う2つのホルダ検出電極32に対してどの位置にあるかを検出する方法は、以上説明した演算を用いて検出する方法に限定されない。次のようにして位置を検出してもよい。
図19は、隣接する2つのホルダ検出電極32と金型変位電極T32との位置関係を示している。図19では、理解を容易にするため、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とを上下方向にずらして図示している。2つのホルダ検出電極32のうち、左側のホルダ検出電極32をホルダ検出電極32a、右側のホルダ検出電極32をホルダ検出電極32bと称することとする。
ホルダ検出電極32aと金型変位電極T32とがちょうど対向しているとき、両者のずれ量は0である。金型変位電極T32がホルダ検出電極32b側へと順次ずれていくと、ずれ量はL1,L2,L3,L4,…Lxと増大していく。
図20は、ホルダ検出電極32aに対する金型変位電極T32のずれ量に応じて、ホルダ検出電極32a,32bから得られる電圧値の例を示している。図20に示す電圧値の数値は単なる例である。図20に示すように、ホルダ検出電極32a,32bから得られる電圧値を合計した合計電圧はずれ量にかかわらず一定であり、合計電圧は最大値Vmaxと同じとなる。図15に、ホルダ検出電極32aからの電圧値を最大値Vmaxで除算したVmax比を示している。
図21は、横軸をずれ量、縦軸をVmax比としたときの特性を示している。図21に示すように、Vmax比を求めれば、基準とするホルダ検出電極32(図19ではホルダ検出電極32a)からのずれ量を求めることができる。
回路基板37とパンチ金型TPまたはダイ金型TDとの間隔が一定でなければ、図21に示す特性は変化する。個々の曲げ加工装置で、上部金型ホルダ5とパンチ金型TPとの相対的な関係、下部金型ホルダ6とダイ金型TDとの相対的な関係はほぼ一定に決まる。個々の曲げ加工装置で、Vmax比とずれ量との関係を予め測定しておく。
特性情報保持部112は、図22に示すような、Vmax比とずれ量との関係を示すテーブルを特性情報として保持する。情報・位置検出演算部111は、隣接する2つのホルダ検出電極32からの電圧情報信号Siecをデジタル信号に変換した電圧値に基づいてVmax比を求める。情報・位置検出演算部111は、図22に示すようなテーブルを参照することによってずれ量を求める。
このようにして、情報・位置検出演算部111は、金型変位電極T32((即ち、パンチ金型TPまたはダイ金型TDの位置))が隣り合う2つのホルダ検出電極32に対して相対的にどの位置にあるかを細かく厳密に検出することができる。
特性情報保持部112に、図22に示すようなテーブルの代わりに、図21に示すVmax比とずれ量との関係を表す近似式を保持させてもよい。情報・位置検出演算部111は、近似式に基づいてずれ量を求めてもよい。
以上のようにして、金型情報・位置検出ユニット11が検出した、パンチ金型TP及びダイ金型TDの識別情報と、上部金型ホルダ5と下部金型ホルダ6の長手方向におけるパンチ金型TP及びダイ金型TDの位置情報は、NC装置10に入力される。NC装置10は、段取り情報で指示した正しいパンチ金型TP及びダイ金型TDが、段取り情報で指示した正しい位置に装着されているかを判断することができる。
図23を用いて、操作・表示パネル8に表示される段取り情報を概念的に説明する。図24のフローチャートを用いて、図23に示す段取り情報に基づいてパンチ金型TP及びダイ金型TDを上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6に装着し、板材を曲げ加工処理する際の曲げ加工装置100の動作の例を説明する。
曲げ加工装置100によって板材に対して所定の曲げ加工を施す際、作業者が操作・表示パネル8によって段取り情報を読み出すよう操作すると、NC装置10は段取り情報DB23より段取り情報を読み出す。NC装置10は、操作・表示パネル8の画面に、図23に示すように段取り情報を表示させる。
図23に示すように、段取り情報は、パンチ金型TP及びダイ金型TDのどこにパンチ金型TP及びダイ金型TDを装着するのかを示す画像Im0を含む。画像Im0は、上部金型ホルダ5を示す上部金型ホルダ画像Im5、下部金型ホルダ6を示す下部金型ホルダ画像Im6、パンチ金型TPを示すパンチ金型画像ImTP、ダイ金型TDを示すダイ金型画像ImTDを含む。
図23は、ハッチングを付している1つのダイ金型画像ImTDを選択した状態を示している。選択したダイ金型画像ImTDをダイ金型画像ImTDsとする。段取り情報は、ダイ金型画像ImTDsの型番“D-0001”を示す型番表示画像Im1を含む。型番“D-0001”は単なる例である。型番は、複数のパンチ金型TP及びダイ金型TDそれぞれを識別するものであればよい。
また、段取り情報は、ダイ金型画像ImTDsの金型情報を示す金型情報表示画像Im2と、ダイ金型画像ImTDsをどの位置に装着するかを示す位置情報表示画像Im3とを含む。位置情報表示画像Im3は、ダイ金型画像ImTDsとして表示している最も左側のダイ金型TDを、-450.00(ミリメートル)の位置、即ち、下部金型ホルダ6の長手方向の中央から左側に450ミリメートルの位置に装着することを示している。位置“-450.00”は単なる例である。
それぞれのパンチ金型TPやダイ金型TDを示すパンチ金型画像ImTPやダイ金型画像ImTDを選択すれば、それぞれのパンチ金型TPやダイ金型TDに対応した型番表示画像Im1と金型情報表示画像Im2と位置情報表示画像Im3とが表示される。
図23は、操作・表示パネル8の画面に表示する段取り情報を概念的に示しており、型番表示画像Im1と金型情報表示画像Im2と位置情報表示画像Im3とが1つの画面に同時に表示されていなくてもよい。それぞれの画像を表示する操作がなされたときに、型番表示画像Im1と金型情報表示画像Im2と位置情報表示画像Im3とのうちの1または複数を選択的に表示するようにしてもよい。
作業者またはNC装置10によって制御されるロボット(ATCを含む)は、段取り情報に基づいて、パンチ金型TP及びダイ金型TDをそれぞれ上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6に装着する。
図24に示すフローチャートは基本的にはNC装置10による処理を示しており、部分的に作業者によってなされる作業を含むことがある。図24において、板材を曲げ加工処理するための処理が開始されると、NC装置10は、ステップS101にて、操作・表示パネル8の画面に段取り情報を表示させる。
パンチ金型TP及びダイ金型TDをラック装置より作業者が取り出す場合には、作業者は、ステップS102にて、段取り情報で指示されたパンチ金型TPまたはダイ金型TDをラック装置より取り出す。ロボットを用いる場合には、NC装置10は、ステップS102にて、ロボットによって段取り情報で指示されたパンチ金型TPまたはダイ金型TDをラック装置より取り出す。
作業者は、ステップS103にて、ラック装置より取り出したパンチ金型TPまたはダイ金型TDを上部金型ホルダ5または下部金型ホルダ6に装着する。ロボットを用いる場合、NC装置10は、ステップS103にて、ロボットによって、ラック装置より取り出したパンチ金型TPまたはダイ金型TDを上部金型ホルダ5または下部金型ホルダ6に装着させる。
NC装置10は、ステップS104にて、上述した金型情報・位置検出装置によって、パンチ金型TPまたはダイ金型TDの識別情報と、パンチ金型TPまたはダイ金型TDを装着した長手方向の位置を検出させる。金型情報・位置検出装置は、曲げ加工装置100の電源を投入している状態で常時検出動作を行っている。従って、パンチ金型TPまたはダイ金型TDを装着した位置のホルダ検出電極32からの電圧情報が電圧情報取り出し部330から金型情報・位置検出ユニット11へと入力されれば、装着位置及び識別情報が検出されることになる。
NC装置10は、ステップS105にて、検出した識別情報が示す金型情報と段取り情報で指示されたパンチ金型TPまたはダイ金型TDの金型情報とを照合して、一致するか否かを判定する。NC装置10は、金型情報が一致する場合(ステップS105でYES)、ステップS106にて、金型情報・位置検出ユニット11(情報・位置検出演算部111)が検出したパンチ金型TPまたはダイ金型TDの位置と段取り情報で指示された位置とが一致するか否かを判定する。
位置が一致する場合(ステップS106でYES)、NC装置10は、ステップS107にて、段取り情報で指示された全てのパンチ金型TPとダイ金型TDとを装着したか否かを判定する。全てのパンチ金型TPとダイ金型TDとを装着していなければ(ステップS107でNO)、処理をステップS102に戻す。
段取り情報で指示された順に全てのパンチ金型TPとダイ金型TDとを装着すれば、全てのパンチ金型TPとダイ金型TDとを装着したと判定される(ステップS107でYES)。
NC装置10は、ステップS108にて、クランパによってパンチ金型TP及びダイ金型TDをクランプさせる。
作業者が操作・表示パネル8を操作して、曲げ加工処理を開始する指示をしたら、NC装置10は、ステップS109にて、曲げ加工処理を実行させて終了する。
一方、検出した識別情報が示す金型情報と段取り情報で指示されたパンチ金型TPまたはダイ金型TDの金型情報とが一致しない場合(ステップS105でNO)には、段取り情報で指示されたパンチ金型TPまたはダイ金型TDではない誤った金型を取り出したということである。そこで、NC装置10は、ステップS110にて、所定の警告処理を実行させる。
ステップS110での警告処理は、例えば、段取り情報で指示されたパンチ金型TPまたはダイ金型TDではないことを作業者に知らせ、段取り情報で指示された正しいパンチ金型TPまたはダイ金型TDを改めて取り出すよう通知する処理である。これはステップS102を作業者が行う場合には特に有効である。
作業者は、必要に応じて正しいパンチ金型TPまたはダイ金型TDをラック装置より取り出し、誤ったパンチ金型TPまたはダイ金型TDを取り外して正しいパンチ金型TPまたはダイ金型TDを装着すればよい。
NC装置10は、ステップS111にて、作業継続の指示があったか否かを判定する。例えば、NC装置10は、操作・表示パネル8に“継続”と“中止”とを選択するボタンを表示させ、いずれが選択されたかを判定する。“継続”のボタンが操作されることによって、作業継続の指示がなされたら(ステップS111でYES)、NC装置10は、ステップS112にて、曲げ加工可能か否かを判定する。
曲げ加工可能であると判定されたら(ステップS112でYES)、NC装置10は、段取りを再計算して、ステップS113にて、段取り情報を更新する。段取り情報を更新したら、作業者またはNC装置10は、処理を上記のステップS106に移行させる。
“中止”のボタンが操作されることによって、作業中止の指示がなされたら(ステップS111でNO)、また、曲げ加工可能であると判定されなかったら(ステップS112でNO)、NC装置10は、処理を終了させる。
金型情報・位置検出ユニット11が検出したパンチ金型TPまたはダイ金型TDの位置と段取り情報で指示された位置とが一致しない場合(ステップS106でNO)には、パンチ金型TPまたはダイ金型TDが段取り情報で指示された正しい位置に装着されていないということである。そこで、NC装置10は、ステップS114にて、所定の警告処理を実行させる。
ステップS114での警告処理は、例えば、パンチ金型TPまたはダイ金型TDが段取り情報で指示された正しい位置に装着されていないことを作業者に知らせ、段取り情報で指示された正しい位置となるようパンチ金型TPまたはダイ金型TDの装着位置を修正するよう通知する処理である。これはステップS103を作業者が行う場合には特に有効である。
作業者は、必要に応じてパンチ金型TPまたはダイ金型TDの位置を修正する。
NC装置10は、ステップS111と同様に、ステップS115にて、作業継続の指示があったか否かを判定する。作業継続の指示がなされたら(ステップS115でYES)、NC装置10は、ステップS116にて、曲げ加工可能か否かを判定する。
曲げ加工可能であると判定されたら(ステップS116でYES)、NC装置10は、段取りを再計算して、ステップS117にて、段取り情報を更新する。段取り情報を更新したら、NC装置10は、処理を上記のステップS107に移行させる。
作業中止の指示がなされたら(ステップS115でNO)、また、曲げ加工可能であると判定されなかったら(ステップS116でNO)、NC装置10は、処理を終了させる。
図24より分かるように、本実施形態では、ステップS108にて、パンチ金型TP及びダイ金型TDをクランプさせる前に、正しいパンチ金型TPまたはダイ金型TDが段取り情報で指示された正しい位置に装着されているか否かが判定される。パンチ金型TP及びダイ金型TDがクランパによってクランプされていないので、誤ったパンチ金型TPまたはダイ金型TDを装着した場合には容易に交換可能であり、パンチ金型TPまたはダイ金型TDが正しい位置に装着されていなければ、装着位置を容易に修正可能である。
図24において、ステップS105及びステップS110〜S113と、ステップS106及びステップS114〜S117との順番を逆にしてもよい。
図25,図26を用いて、上記のステップS112で曲げ加工可能と判定されて、ステップS113にて段取り情報が更新される例について説明する。ここでは、識別情報発信回路45によって発信される識別情報には、個々の金型に対して1つの識別情報が割り当てられ、同じ種類の金型であっても互いに識別可能であるとする。
図25の(a)は、段取り情報で指示されているパンチ金型TPである。段取り情報では、“P-0001”なる識別番号を有するパンチ金型TPを左側に、“P-0002”なる識別番号を有するパンチ金型TPを右側に装着するよう指示している。この2つのパンチ金型TPは同じ種類のパンチ金型TPである。
図25の(b)に示すように、“P-0001”なる識別番号を有するパンチ金型TPと“P-0002”なる識別番号を有するパンチ金型TPとの左右の位置を入れ替えることが可能である。このような場合には、上記のステップS112で曲げ加工可能と判定される。
図26の(a)は、段取り情報で指示されているパンチ金型TPである。段取り情報では、“P-0020”なる識別番号を有するパンチ金型TPを装着するよう指示している。
図26の(b)に示す“P-0015”なる識別番号を有するパンチ金型TPと“P-0011”なる識別番号を有するパンチ金型TPと“P-0012”なる識別番号を有するパンチ金型TPは、“P-0020”なる識別番号を有するパンチ金型TPと先端P00の形状が互いに同じであり、幅のみが異なる。
“P-0020”なる識別番号を有するパンチ金型TPの代わりに、“P-0011”,“P-0012”,“P-0015”なる識別番号を有する3つのパンチ金型TPを組み合わせても、曲げ加工が可能である。このような場合には、上記のステップS112で曲げ加工可能と判定される。
図24に示すフローチャートでは、パンチ金型TPまたはダイ金型TDを1つずつ上部金型ホルダ5または下部金型ホルダ6に装着した際に、パンチ金型TPまたはダイ金型TDが発信する識別情報を検出し、パンチ金型TPまたはダイ金型TDの装着位置を検出している。
図27に示すように、全てのパンチ金型TP及びダイ金型TDをそれぞれ上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6に装着した後に、識別情報及び装着位置を検出するようにしてもよい。
図27におけるステップS201,S202,S203,S204は、図26のステップS101,S102,S103,S107と実質的に同じである。図27においては、全てのパンチ金型TP及びダイ金型TDがそれぞれ上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6に装着されれば、全てのパンチ金型TPとダイ金型TDとを装着したと判定される(ステップS204でYES)。
NC装置10は、ステップS205にて、上述した金型情報・位置検出装置によって、全てのパンチ金型TP及びダイ金型TDそれぞれの識別情報及び位置を検出させる。
NC装置10は、ステップS206にて、検出した識別情報が示す金型情報と段取り情報で指示されたパンチ金型TP及びダイ金型TDの金型情報とを照合して、一致するか否かを判定する。
金型情報が一致する場合(ステップS206でYES)、NC装置10は、ステップS207にて、金型情報・位置検出ユニット11が検出したパンチ金型TP及びダイ金型TDそれぞれの位置と段取り情報で指示された位置とが一致するか否かを判定する。ステップS206とステップS207との順番を逆にしてもよい。
位置が一致する場合(ステップS207でYES)、NC装置10は、ステップS208にて、クランパによってパンチ金型TP及びダイ金型TDをクランプさせる。作業者が操作・表示パネル8を操作して、曲げ加工処理を開始する指示をしたら、NC装置10は、ステップS209にて、曲げ加工処理を実行させて終了する。
一方、金型情報が少なくとも一部で一致しない場合(ステップS206でNO)、また、位置が少なくとも一部で一致しない場合(ステップS107でNO)には、NC装置10は、ステップS210にて、図24のステップS110,S114と同様の警告処理を実行させる。
作業者は、必要に応じて正しいパンチ金型TPまたはダイ金型TDをラック装置より取り出し、誤ったパンチ金型TPまたはダイ金型TDを取り外して正しいパンチ金型TPまたはダイ金型TDを装着する。また、作業者は、必要に応じてパンチ金型TPまたはダイ金型TDの位置を修正する。
NC装置10は、ステップS211にて、作業継続の指示があったか否かを判定する。作業継続の指示がなされたら(ステップS211でYES)、NC装置10は、ステップS212にて、曲げ加工可能か否かを判定する。曲げ加工可能であると判定されたら(ステップS212でYES)、NC装置10は、段取りを再計算して、ステップS213にて、段取り情報を更新する。
段取り情報を更新したら、NC装置10は、上記のステップS208に移行させる。
作業中止の指示がなされたら(ステップS211でNO)、また、曲げ加工可能であると判定されなかったら(ステップS212でNO)、NC装置10は、処理を終了させる。
図27においても、ステップS208にて、パンチ金型TP及びダイ金型TDをクランプさせる前に、正しいパンチ金型TP及びダイ金型TDが段取り情報で指示された正しい位置に装着されているか否かが判定される。パンチ金型TP及びダイ金型TDがクランパによってクランプされていないので、誤ったパンチ金型TPまたはダイ金型TDを装着した場合には容易に交換可能であり、パンチ金型TP及びダイ金型TDが正しい位置に装着されていなければ、装着位置を容易に修正可能である。
ところで、パンチ金型TP及びダイ金型TDをラック装置より取り出し、それぞれ上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6に装着し、板材を曲げ加工する一連の動作を全てロボットが行う場合、パンチ金型TPやダイ金型TDの誤選択、誤った位置へのパンチ金型TPやダイ金型TDの装着は、曲げ加工装置の故障を招く可能性がある。図24,図27に示す処理によって、曲げ加工装置の故障を防ぐこともできる。
以上説明した金型情報・位置検出装置は、次のような利点を有する。前述のように、上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6に装着されたパンチ金型TP及びダイ金型TDは、クランパによって固定される。金型情報・位置検出装置は、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31とが非接触の状態、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とが非接触の状態で、金型の識別情報及び位置を検出する。
即ち、金型情報・位置検出装置によれば、上部金型ホルダ5及び下部金型ホルダ6にパンチ金型TP及びダイ金型TDを装着して、クランパによって固定する前に即座にパンチ金型TP及びダイ金型TDの識別情報及び位置が検出されることになる。パンチ金型TPやダイ金型TDの交換や装着位置の修正が必要な場合には、クランパによって固定していないので、容易に交換及び装着位置の修正が可能である。
また、クランパによって固定する前のパンチ金型TP及びダイ金型TDの位置と、クランパによって固定した後のパンチ金型TP及びダイ金型TDの位置とを比較することにより、クランパによって固定する際のパンチ金型TP及びダイ金型TDの微小な位置ずれを検出することも可能である。
従って、ホルダ給電電極31と金型受電電極T31とが非接触の状態、ホルダ検出電極32と金型変位電極T32とが非接触の状態で、金型の位置を検出することができる金型情報・位置検出装置は極めて好ましい検出方法を採用していると言える。構成が簡単であるため、コストアップが最小限に抑えられるという点でも好ましい。
<曲げ加工装置の第2実施形態>
曲げ加工装置は、図1に示す第1実施形態の曲げ加工装置100のように、上部金型ホルダ5が、上部テーブル2の下端部の全長に渡って一体的に取り付けられるタイプ(モジュラータイプ)と、上部テーブル2の下端部の長手方向に分割して取り付けられるタイプ(中間板タイプ)とがある。
図28に示す第2実施形態の曲げ加工装置200は、中間板タイプの曲げ加工装置の場合の構成例である。図28は、上部テーブル2側の一部のみを示している。第1実施形態の曲げ加工装置100と第2実施形態の曲げ加工装置200とは、中間板を用いるか否かの相違点以外は実質的に同じ構成である。従って、曲げ加工装置200における曲げ加工装置100と共通部分の図示及び説明を省略することとする。
図28において、上部テーブル2には、図示していないクランプジョーを介して、複数の中間板55が装着されている。上部テーブル2の長手方向(図23の左右方向)に対する中間板55の装着位置は調整可能である。中間板55の装着位置は曲げ加工する板材や加工の仕方に応じて適宜設定される。一部の中間板55には、パンチ金型TPが装着されている。どの中間板55にパンチ金型TPを装着し、中間板55のどの位置にパンチ金型TPを装着するかは、曲げ加工する板材や加工の仕方に応じて適宜設定される。
第2実施形態の曲げ加工装置200は、上述した金型情報・位置検出装置を搭載している。即ち、それぞれの中間板55は、図4で説明したホルダ給電電極31と同様、内壁に、中間板55の長手方向の長さと同じ長さの給電電極を有する。中間板55は、図4で説明したホルダ検出電極32と同様、給電電極に対して絶縁され、給電電極の長手方向に並べられた複数の検出電極を有する。中間板55は、図4で説明した電圧情報取り出し部330と同様の回路を有する。
図28では図示していないが、下部テーブル3の上端部には下部金型ホルダ6が装着されている。下部金型ホルダ6も、中間板55と同様、給電電極及び複数の検出電極を有する。
第2実施形態の曲げ加工装置200においては、上述した金型情報・位置検出装置による識別情報及び位置検出方法によって、上部テーブル2に装着した中間板55及び下部テーブル3に装着した下部金型ホルダ6にどの金型情報を有するパンチ金型TP及びダイ金型TDが装着されているか、どの位置にパンチ金型TP及びダイ金型TDが装着されているかを検出する。
上部テーブル2に装着した中間板55及び下部テーブル3に装着した下部金型ホルダ6は、パンチ金型TPまたはダイ金型TDを装着する金型装着部の他の一例である。
<ラック装置>
複数のパンチ金型TP及びダイ金型TDを収納するラック装置は、曲げ加工装置100の上部金型ホルダ5と実質的に同一の上部金型ホルダに複数のパンチ金型TPを収納し、下部金型ホルダ6と実質的に同一の下部金型ホルダに複数のダイ金型TDを収納する。そこで、ラック装置にも上述した金型情報・位置検出装置を搭載することが可能である。
図29は、ラック装置の一構成例であるラック装置300を示している。図29に示すように、ラック装置300は、複数の下部金型ホルダ60を備える。それぞれの下部金型ホルダ60には、複数のダイ金型TDが装着されている。曲げ加工装置100,200によって板材を曲げ加工する際に、曲げ加工に使用するダイ金型TDを作業者またはロボットがラック装置300より取り出す。また、曲げ加工終了後に使用したダイ金型TDを作業者またはロボットがラック装置300へと戻す。
図29では図示していないが、ラック装置300は複数の上部金型ホルダを備え、それぞれの上部金型ホルダには、複数のパンチ金型TPが装着されている。曲げ加工装置100,200によって板材を曲げ加工する際に、曲げ加工に使用するパンチ金型TPを作業者またはロボット(ATCを含む)がラック装置300より取り出す。また、曲げ加工終了後に使用したパンチ金型TPを作業者またはロボットがラック装置300へと戻す。
ラック装置300は、上述した金型情報・位置検出装置を搭載している。ラック装置300においては、上述した金型情報・位置検出装置による位置検出方法によって、図示していない上部金型ホルダのどの位置にどの金型情報を有するパンチ金型TPが装着されているか、下部金型ホルダ60のどの位置にどの金型情報を有するダイ金型TDが装着されているかを検出する。
ラック装置300を制御するNC装置は、複数の上部金型ホルダ及び下部金型ホルダ60それぞれに装着するパンチ金型TP及びダイ金型TDの種類を管理している。ラック装置300にパンチ金型TPやダイ金型TDを戻すことによって、パンチ金型TP及びダイ金型TDの種類を識別することができる。
ラック装置300は、複数のパンチ金型TP及びダイ金型TDのそれぞれが、上述した金型情報・位置検出装置による識別情報及び位置検出方法によって、上部金型ホルダまたは下部金型ホルダ60の予め定められた正しい位置に装着されているかを検出することができる。
ラック装置300が、パンチ金型TP及びダイ金型TDを上部金型ホルダ及び下部金型ホルダ60の予め定められた正しい位置に装着していれば、曲げ加工装置100,200によって板材を曲げ加工する際に、パンチ金型TP及びダイ金型TDの種類の選択間違いを防止することができる。
ラック装置300における上部金型ホルダ及び下部金型ホルダ60は、パンチ金型TPまたはダイ金型TDを装着する金型装着部のさらに他の一例である。
本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。本実施形態においては、1つの情報・位置検出演算部111によってパンチ金型TP及びダイ金型TDの識別情報を検出し、パンチ金型TP及びダイ金型TDの位置を検出している。例えば2つのマイクロコンピュータを用いて、パンチ金型TP及びダイ金型TDの識別情報を検出する情報検出演算部と、パンチ金型TP及びダイ金型TDの位置を検出する位置検出演算部とを分けてもよい。