以下、実施形態に係る工作機械、データ収集システム及び工作機械の機械本体について図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、工作機械、データ収集システム及び工作機械の機械本体は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率を忠実に表してはいない。
実施形態の説明では、複数の切削工具を例示する。複数の切削工具は、便宜上、互いに区別されずに「切削工具3」と呼称される場合と、互いに区別されて「切削工具3A」及び「切削工具3B」のように大文字のアルファベットを付して呼称される場合とがある。他の部材についても同様である。
第2実施形態以降の説明においては、基本的に先に説明された実施形態との相違部分についてのみ述べる。特に言及しない事項については、先に説明された実施形態と同様とされたり、類推されたりしてよい。複数の実施形態において互いに対応する構成については、具体的な構成が異なる場合においても、便宜上、同じ符号を付すことがある。
<第1実施形態>
(工作機械の全体構成)
図1は、実施形態に係る工作機械1の要部を示す斜視図である。図1には、便宜上、A1軸、A2軸及びA3軸からなる直交座標系を付している。この座標系は、実質的に絶対座標系であるものとし、また、この座標系と、鉛直方向及び水平方向との相対関係は任意であるものとする。
工作機械1は、例えば、ターニングセンタ(旋盤の一種)として構成されている。工作機械1は、例えば、A1軸に平行な軸回りに回転する被削材101に対して、切削工具3としての旋削工具(バイト等)を当接させることによって被削材101を切削する。このような切削工具3としては、例えば、外径加工用工具、内径加工用工具、溝入れ工具及び突っ切り工具などが挙げられる。特に図示しないが、工作機械1は、被削材の回転を停止した状態で、切削工具3としての転削工具(ドリル又はエンドミル等)を回転させて被削材101を切削可能であってもよい。
工作機械1は、上記の切削工具3と、切削工具3が着脱される機械本体5と、機械本体5に着脱されるバッテリ7とを有している。切削工具3は、一般的な切削工具とは異なり、電力を消費する構成とされてよい。バッテリ7は、例えば、切削工具3に電力を供給することに寄与する。機械本体5は、例えば、一般的な構成に加え、バッテリ7と切削工具3とを電気的に接続する構成を備えてよい。
(機械本体の基本構成)
機械本体5は、例えば、上記のように、一般的な構成を備えていてよい。ここでいう一般的な構成は、例えば、切削工具3(電力を消費しない一般的な切削工具を含む)によって被削材101を切削するための基本的な構成を指し、バッテリ7及び切削工具3の機械本体5に対する電気的接続に係る構成を含まない。当該基本的な構成は、例えば、公知の種々の構成と同様とされて構わない。以下では、その一例を示す。
機械本体5は、被削材101を保持するスピンドル9と、切削工具3を保持するタレット11(工具保持具の一例)と、を有している。
スピンドル9は、例えば、A1軸に平行な方向において同軸状に被削材101を保持し、A1軸に平行な中心軸回りに回転する。工作機械1は、1つのスピンドル9を有するものであってもよいし、2以上のスピンドル9を有するものであってもよい。また、スピンドル9は、平行移動可能であってもよい。
タレット11は、概略、円盤状の部材であり、その外周に沿って複数の切削工具3を保持可能である。図1では、2つの切削工具3(3A及び3B)のみを例示している。また、タレット11は、例えば、A1-A3平面内で平行移動可能である。タレット11の平行移動によって、タレット11の所定位置にある切削工具3(図示の例では-A3側の切削工具3A)が被削材101に当接し、被削材101の切削が行われる。なお、タレット11は、A2方向においても平行移動可能とされてよい。
タレット11は、例えば、スピンドル9の回転軸から偏心している回転軸R1回りに回転可能である。これにより、例えば、被削材101の切削に供される切削工具3(換言すれば-A側に位置する切削工具3)が交換される。その結果、例えば、切削に供される切削工具3の種類及び/又は向きを短時間で変更することができ、多様な加工を効率的に行うことができる。タレット11が同時に保持可能な切削工具3の数は任意である。図示の例では、タレット11は、12個の切削工具3を同時に保持可能である。
タレット11は、直接的に切削工具3を保持可能であってもよいし(図1の例)、タレット11に取り付けられるツールブロック(後述)等を介して間接的に切削工具3を保持可能であってもよいし、双方が可能であってもよい。なお、本開示において、切削工具3のタレット11に対する着脱に関する説明は、適宜にツールブロック等のタレット11に対する着脱に援用されてよい。
タレット11が切削工具3を保持する位置は、タレット11の前面(回転軸R1に直交する面、+A1側の面)であってもよいし(図1の例)、後述するようにタレット11の外周面(回転軸R1周りの面)であってもよいし、双方が可能であってもよい。直接的な保持及び間接的な保持と、前面における保持及び外周面における保持との組み合わせも任意である。
本実施形態の説明では、主として、タレット11の前面に対して直接的に切削工具3が着脱される態様を例に取る。
タレット11は、それぞれ切削工具3が着脱される複数の取付部12を有している。複数の取付部12は、タレット11の外周に沿って配列されている。そのピッチは、例えば、一定である。複数の取付部12は、互いに同一の構成であってもよいし(図示の例)、少なくとも1つの取付部12が他の取付部12とは異なる構成であってもよい。取付部12の構成は、公知の構造も含め、適宜な構造とされてよい。図示の例では、取付部12は、凹部13を含んで構成されている。
凹部13は、例えば、タレット11の前面に位置している。図示の例の凹部13は、切削工具3のシャンクを収容しつつ切削工具3の刃部側部分をタレット11の外周へ突出させるように構成されている。具体的には、凹部13は、タレット11の前面においてタレット11の径方向に延びる溝状に形成されている。溝は、タレット11の外周面に到達している。溝の形状及び寸法は適宜に設定されてよく、図示の例では、切削工具3のシャンクの幅よりも広い幅で延びる直方体状とされている。
なお、本開示において直方体又は直方体状というとき、特に断りが無い限り、厳密な直方体だけでなく、直方体の角部が面取りされた形状及び直方体に比較的小さな凹凸が形成された形状等も含まれてよい。矩形又は多角形等の他の形状を示す用語についても同様である。
切削工具3の凹部13に対する固定は、適宜な方法によってなされてよい。図示の例では、切削工具3とともに補助部材15が凹部13に収容されている。補助部材15は、例えば、不図示のねじがタレット11に対してねじ込まれることによって凹部13に押し込まれ、切削工具3を凹部13の内面に押し付ける。補助部材15は、楔形状を有していてもよい。また、図示の例とは異なり、切削工具3に挿通された不図示のねじがタレット11に螺合されることによって切削工具3が凹部13に固定されてもよい。
既述のように、工作機械1は、旋削工具だけでなく、転削工具による切削が可能であってもよい。この場合、タレット11は、転削工具によって構成された切削工具3を回転させる駆動源(電動機等)を有していてもよいし、タレット11の外部からの回転を切削工具3に伝達する伝達機構を有していてもよい。
(バッテリと切削工具との接続の概要)
切削工具3は、電力を消費する切削工具3も含め、上記のようにタレット11に保持される。また、バッテリ7もタレット11に保持される。少なくとも1つの切削工具3とバッテリ7とは配線17(17A及び17B)によって接続されている。これにより、例えば、バッテリ7から切削工具3へ電力を供給可能となっている。
バッテリ7のタレット11に対する着脱は、例えば、切削工具3と同様になされてよい。具体的には、図示の例では、バッテリ7は、その少なくとも一部が凹部13に収容されて補助部材15によって凹部13の内面に押し付けられる。ただし、図示の例とは異なり、バッテリ7の着脱機構は、切削工具3の着脱機構と異なっていてもよい。
換言すれば、タレット11において、切削工具3を保持するための構成と、バッテリ7を保持するための構成とは、同様又は類似のものとされてよい。従って、例えば、タレット11は、全ての凹部13に切削工具3を装着可能である。そして、その少なくとも1つの凹部13において、切削工具3に代えて、バッテリ7が装着されてよい。
タレット11に同時に装着される(又は装着可能な)バッテリ7の数は適宜に設定されてよい。例えば、タレット11に同時に装着されるバッテリ7の数は、1つのみであってもよいし(図示の例)、2以上であってもよい。また、タレット11に同時に装着されるバッテリ7の数の、タレット11が切削工具3を同時に装着可能な数(凹部13の数)に対する割合は、5割未満であってもよいし、5割でもよいし、5割超であってもよい。換言すれば、同時に装着されるバッテリ7の数は、同時に装着される切削工具3の数に対して、少なくてもよいし、同等でもよいし、多くてもよい。
タレット11に同時に装着されている切削工具3及びバッテリ7において、互いに接続される(又は接続可能な)切削工具3及びバッテリ7の数の比は任意である。例えば、1つのバッテリ7に接続される切削工具3の数は、1つのみであってもよいし、複数であってもよく、また、タレット11に装着されている複数の切削工具3の一部であってもよいし、全部であってもよい。また、複数のバッテリ7が装着されている場合において、1つの切削工具3に接続されるバッテリ7は、1つのみであってもよいし、複数であってもよく、また、複数のバッテリ7の一部であってもよいし、全部であってもよい。
実施形態の説明では、便宜上、主として、1つのバッテリ7のみがタレット11に装着され、1つのバッテリ7と複数の切削工具3とが接続されている態様を例に取る。当該態様において複数の切削工具3の数は任意であるが、便宜上、2つのみについて図示及び説明を行う。
バッテリ7の外形及び大きさは任意である。例えば、バッテリ7は、その全体が凹部13に収まる大きさであってもよいし(図示の例)、凹部13からタレット11の前側(+A1側)にはみ出す部分、及び/又は凹部13からタレット11の外周側へはみ出す部分を有していてもよい。
また、例えば、バッテリ7のうち凹部13に収容される部分の形状は、切削工具3のシャンクの形状と同様又は類似していてもよいし(図示の例)、シャンクの形状とは全く異なっていてもよい。例えば、図示の例の切削工具3との対比においては、同様の形状としては、棒状かつ直方体状の形状を挙げることができる。類似する形状としては、長方形の短辺を弧状にした横断面を有する棒状を挙げることができる。全く異なる形状としては、切削工具3のシャンクと補助部材15とを足し合わせたような形状を挙げることができる。
なお、棒状は、例えば、直交する3方向のうち1方向の長さが他の2方向の長さに対して比較的長い形状である。このとき、例えば、1方向の長さは、他の2方向の長さの2倍以上、3倍以上又は5倍以上とされてよい。以下において棒状という場合も同様とする。
配線17は、図示の例では、点線で示されているように、タレット11の内部に配置されている。そして、後述するように、切削工具3がタレット11に装着されると、切削工具3の端子がタレット11の端子に接続される。このタレット11の端子は、配線17の一端に接続されている。同様に、バッテリ7がタレット11に装着されると、バッテリ7の端子がタレット11の端子に接続される。このタレット11の端子は、配線17の他端に接続されている。このような構成により、バッテリ7と切削工具3とが電気的に接続される。
ただし、図示の例とは異なり、配線17は、タレット11の外部に配置されていても構わない。この場合、例えば、切削工具3のタレット11に対する着脱とは別に、配線17の一端に設けられた端子が切削工具3の端子に接続されてよい。及び/又は、バッテリ7のタレット11に対する着脱とは別に、配線17の他端に設けられた端子が切削工具3の端子に接続されてよい。
(データ収集システムの全体構成)
図2は、工作機械1を含むデータ収集システム91の信号処理系の構成を示すブロック図である。ただし、この図は、電力及び信号の流れの理解を容易にするための概念図であり、実際のハードウェア構成とは必ずしも一致していない。この図において、白抜きの矢印は電力の経路を示し、黒線の矢印は信号の経路を示している。
データ収集システム91は、工作機械1に加えて、工作機械1との間で通信を行う情報処理装置81を有している。工作機械1は、既述のように、タレット11と、当該タレット11に装着されている切削工具3及びバッテリ7と、を有している。
切削工具3は、電力を消費する要素を含んでよい。実施形態の説明では、そのような要素として、切削工具3に係る物理量を検出するセンサ19を例に取る。センサ19以外の電力を消費する要素としては、例えば、特に図示しないが、転削工具における電動機を挙げることができる。また、図示の例とは異なり、センサ19は、電力を消費する要素として、情報処理装置81と直接に(バッテリ7を介さずに)通信を行う通信部を有していてもよい。
バッテリ7は、例えば、蓄電に直接的に寄与しているバッテリ本体21と、バッテリ本体21における電気エネルギー(電力量ということもある。)の残量を検知する残量検知部23と、情報処理装置81と通信を行う通信部25とを有している。本実施形態では、既述のように、バッテリ7は、複数の切削工具3に共用されており、バッテリ本体21は、複数の切削工具3に電力を供給している。また、通信部25も複数の切削工具3(センサ19)に共用されている。ただし、バッテリ本体21及び通信部25の一方のみが複数の切削工具3に許容されてもよい。
タレット11は、既述のように配線17を有している。配線17は、例えば、バッテリ本体21からセンサ19への電力供給に寄与する。すなわち、配線17は、バッテリ本体21からセンサ19への電気の流れを許容している。また、タレット11は、センサ19が検出した物理量の情報を含む検出信号をバッテリ7の通信部25に伝達する配線を有していてよい。
なお、センサ19の構成等によっては、検出信号を伝達するための配線は、センサ19への電力供給のための配線と同一のものであることがある。また、電力供給のための配線と、検出信号のための配線とが別個である場合においても、両者の組み合わせが配線17として概念されて構わない。本実施形態の説明では、配線17の語は、電力供給のための配線を指す場合と、検出信号のための配線を指す場合と、両配線の組み合わせを指す場合とがある。また、切削工具3とバッテリ7との間には、適宜な電子部品が介在していてもよい。この場合において、配線17は、上記電子部品を含んで概念されてもよいし、上記電子部品を除いて概念されてもよい。本実施形態の説明では、そのような電子部品が設けられていない態様を例に取る。
情報処理装置81は、例えば、バッテリ7の通信部25と通信を行う通信部83と、通信部83がバッテリ7から受信した情報に基づく処理を実行する情報処理部85と、上記情報の少なくとも一部を記憶する記憶部87とを有している。記憶部87に記憶される情報は、例えば、センサ19によって検出された物理量の情報である。
(切削工具)
図3は、切削工具3の外観斜視図である。図4は、図3のIV-IV線における断面図である。これらの図には、便宜上、切削工具3に対して固定的なB1軸、B2軸及びB3軸からなる直交座標系を付している。また、これらの図には、図示の切削工具3が図1において切削に供されている切削工具3Aであると仮定した場合における直交座標系A1-A2-A3の向きも示されている。
切削工具3は、例えば、概略棒状の形状を有しており、ひいては、第1端3a及び第2端3bを有している。切削工具3は、第1端3aの側(例えば長さの中央よりも第1端3aの側)に切刃29aを有している。切削工具3は、切刃29aよりも第2端3bの側の一部がタレット11に保持され、切刃29aが回転している被削材101に当接される。これにより、被削材101が旋削される。
切削工具3は、例えば、刃先を交換可能なスローアウェイバイトとして構成されている。具体的には、例えば、切削工具3は、タレット11に着脱される概略棒状のホルダ27と、ホルダ27の先端側に着脱されるインサート29とを有している。インサート29は、上述の切刃29aを有している。
ホルダ27は、例えば、インサート29を保持する保持体31を有している。保持体31は、インサート29のホルダ27に対する着脱、及びホルダ27のタレット11に対する着脱に寄与する。また、ホルダ27は、切削工具3の多機能化に寄与する種々の要素を有している。例えば、ホルダ27は、既述のセンサ19(図4)と、切削工具3をタレット11に電気的に接続するための端子33と、センサ19と端子33とを電気的に接続する内部配線35(図4)とを有している。
(保持体)
保持体31の形状は、例えば、第1端3aから第2端3bに向かって延びている棒状である。保持体31の横断面(長さ方向に直交する断面)の形状は適宜な形状とされてよい。図示の例では、保持体31の横断面の形状は矩形状である。換言すれば、保持体31は、概略、四角柱形状である。矩形の縦横比は適宜に設定されてよい。なお、図示とは異なり、保持体31の横断面の形状は、外縁に曲線を含む形状等の他の形状であってもよい。また、保持体31は、先端側に屈曲部分を有していてもよい。
保持体31の大きさは特に限定されない。一例を以下に挙げる。第1端3aから第2端3bまでの長さは、50mm以上200mm以下とされてよい。保持体31の、その長手方向に交差する方向(B2方向又はB3方向)の長さは、それぞれ5mm以上30mm以下とされてよい。
保持体31において、インサート29、センサ19、内部配線35及び端子33等の各種の部材を保持するための形状は適宜な形状とされてよい。これらの形状については、後の各種の部材の説明において一例を挙げる。
(インサート)
インサート29は、スローアウェイチップとも呼ばれる。インサート29は、その一部又は全部によって、切削に直接に寄与する刃部を構成する。インサート29は、上述の切刃29aと、切刃29aを稜線として互いに交差するすくい面29b及び逃げ面29cとを有している。切刃29aは、被削材101の切削に直接に寄与する。すくい面29bも切削に直接寄与し得る部分であり、また、切屑が流れる領域を有している。逃げ面29cは、インサート29と被削材101との不必要な接触をさけることに寄与する。
インサート29の形状は、加工の種類等に応じて種々のものとされてよい。図示の例では、インサート29の形状は、四角板形状とされている。この他にも、インサート29の形状としては、三角板形状及び六角板形状等の種々のものを挙げることができる。
インサート29の大きさは特に限定されない。寸法の一例を挙げると、例えば、すくい面29bの一辺の長さは、3mm以上20mm以下とされてよい。また、例えば、すくい面29bに直交する方向で示されるインサート29の高さは、5mm以上20mm以下とされてよい。インサート29の材料も特に限定されない。例えば、インサート29の材料としては、超硬合金及びサーメットなどが挙げられる。
インサート29をホルダ27に機械的に着脱するための構成も種々のものとされてよい。図示の例では、保持体31は、インサート29の少なくとも一部が収容される凹部31rを有している。このような凹部31rは、一般的には、ポケットと呼ばれる。また、図示の例では、ホルダ27は、保持体31(凹部31rの内面)とでインサート29を挟み込むクランプ37と、クランプ37に挿通され、保持体31に螺合されるねじ39とを有している。ねじ39が保持体31にねじ込まれることにより、インサート29は保持体31とクランプ37とに締め付けられて、保持体31に固定される。図示の例以外の構成としては、例えば、インサート29に挿通されたねじを保持体31に螺合する構成が挙げられる。
(センサ)
センサ19は、例えば、切削加工時における切削工具3(その任意の部位)の状態を測定することが可能な部品である。切削工具3の状態としては、例えば、温度、加速度、振動、ひずみ、内部応力及び損耗などの物理量が挙げられる。切削工具3の状態を測定するとは、切削工具3における上記に代表される物理量の少なくともいずれか1つの情報を測定することを意味する。また、測定の対象は、静的な状態での情報に限定されず、動的な状態での情報、すなわち、状態の変化であってもよい。
例えば、測定対象の情報を温度とする。また、切削加工前の切削工具3の温度が20°であって、切削加工時に切削工具3の温度が80°に上昇したとする。このとき、切削加工前の切削工具3の温度である20°が、温度に関する静的な状態での情報である。また、20°から80°への切削工具3の温度の上昇が、温度に関する動的な状態での情報である。これらの情報のいずれか一方が測定されてもよく、また、両方が測定されてもよい。
例えば、ホルダ27がセンサ19として熱電対を有している場合には、保持体31の温度を測定することが可能である。ホルダ27がピエゾ素子を用いた圧電センサを有している場合にも、加速度、振動、ひずみ及び内部応力などを測定することが可能である。また、ホルダ27がセンサ19として機能する配線回路を有していてもよい。具体的には、保持体31の損耗に伴って配線回路が損耗し、この回路の抵抗値が変化した場合に、この抵抗値の変化によって保持体31の損耗状態を測定してもよい。
なお、センサ19で測定され得る切削工具3の状態は上記の物性値に限定されない。また、センサ19は上記の具体例に限定されるものではなく、上に例示した物性値を測定できる特に記載していない他の素子を用いてもよい。例えば、カメラ及びマイクが挙げられる。また、上記の説明から理解されるように、センサ19の形状は任意である。図では、センサ19を薄型の直方体状に示しているが、そのような形状に限定されない。
センサ19は、物理量を電気信号に変換するトランスデューサーの部分だけであってもよいし(狭義のセンサであってもよいし)、トランスデューサーに加えて増幅器等を含んでいてもよい。また、センサ19は、例えば、測定された物理量に対してエッジ処理を行うことが可能なマイクロコンピューターを含んでもよい。
センサ19の切削工具3における位置は、物理量の検出の目的等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、センサ19は、切削工具3の長さ方向の中央に対して、第1端3a側に位置していてもよいし、第2端3b側に位置していてもよいし、前記中央に重なりつつ第1端3a側又は第2端3b側に偏っていてもよいし、そのように偏らずに前記中央に位置していてもよい。また、例えば、センサ19は、切削工具3の横断面において、中心線(不図示)から離れていてもよいし(図示の例)、中心線と重なっていてもよい。図示の例では、センサ19は、切刃29aよりも第2端3bの近くに位置している。また、図示の例では、センサ19は、保持体31の中心線(不図示)から離れている。
センサ19は、例えば、保持体31に固定されている。図示の例とは異なり、センサ19は、インサート29に固定されていてもよい。ただし、この場合も、センサ19は、保持体31に(間接的に)固定されていると捉えられてよい。
センサ19の保持体31に対する固定方法は、センサ19の種類等に応じて適宜なものとされてよい。例えば、当該固定は、接着剤によってなされてもよいし、粘着テープによってなされてもよいし、センサ19を保持体31に直接的に接合することによってなされてもよいし、ねじによってなされてもよいし、爪(係合)によってなされてもよいし、他の部材(例えばセンサ19が収容されている凹部を塞ぐ蓋体)によって押さえ付けられることによってなされてもよい。
図示の例では、保持体31は、センサ19を収容するための凹部31aを有している。そして、凹部31aに封止材41(例えば樹脂)が充填されることによって、センサ19は保持体31に固定されている。凹部31aは、保持体31の複数の側面のいずれに開口するものであってもよく、また、図示の例とは異なり端面(-B1側に面する面)に開口するものであってもよい。凹部31aの大きさ及び形状も任意である。
(切削工具の端子)
端子33は、保持体31に保持されており、切削工具3の外部に露出している。そして、切削工具3がタレット11に装着されると、端子33は、タレット11に設けられている端子43(図4)に当接して電気的に接続される。その結果、例えば、切削工具3とバッテリ7とが電気的に接続される。
切削工具3の端子33(及び端子43)の位置、形状、大きさ及び接続態様等は適宜なものとされてよい。
例えば、端子33は、切削工具3(保持体31)の側面及び端面のいずれにおいて露出していてもよい。また、端子33は、切削工具3の長さ方向の中央に対して、第1端3a側に位置していてもよいし、第2端3b側に位置していてもよいし、中央に重なるように位置していてもよい。また、端子33は、切削工具3の長手方向等において、切削工具3に対する位置を適宜に調整可能であってもよい。端子33と、切削工具3の他の要素(例えばセンサ19)との位置関係も任意である。図示の例では、端子33は、センサ19よりも第2端3bの側に位置している。より詳細には、端子33は、第2端3bに位置している。
また、例えば、端子33及び端子43は、概ね剛体と捉えられる接点を含む構成であってもよいし、ばね接点を含む構成であってもよいし、端子33及び端子43の近接及び離反の方向に互いに当接する接点を含む構成であってもよいし、端子33及び端子43の近接及び離反によって互いに摺動する接点を含む構成であってもよい。また、端子33及び端子43は、互いに嵌合するハウジングを有していることなどによって、互いの離反を抑制する機構を有していてもよいし、保持体31がタレット11に固定されることによってのみ互いの離反が抑制されてもよい。図示の例では、端子33は、ピン状の接点(符号省略)を有しており、端子43は、前記ピン状の接点が挿入される筒状の接点を有している。また、端子33は、特に符号を付さないが、上記のピン状の接点を収容している凹部を有しており、当該凹部に端子43が嵌合する。
(内部配線)
内部配線35の構成は、例えば、公知の構成も含め、適宜なものとされてよい。例えば、内部配線35は、導電体を絶縁膜で覆ったものとされてよい。より詳細には、内部配線35は、1本の線状の導電体(狭義の電線)を絶縁膜で被覆したもの(絶縁電線)であってもよいし、1本又は複数本の絶縁電線を絶縁性の外皮(シース)によって覆ったもの(ケーブルと呼ばれることもある。)であってもよいし、同軸ケーブルであってもよいし、FPC(Flexible printed circuits)によって構成されたFFC(Flexible Flat Cable)であってもよい。内部配線35の本数、長さ及び位置は任意である。図示の例では、3本の配線が1本に纏められて構成された内部配線35が保持体31の内部を保持体31の長さ方向に延びている。
(バッテリ)
図5は、バッテリ7の断面を示す図である。これらの図には、便宜上、切削工具3と同様に、バッテリ7に対して固定的なB1軸、B2軸及びB3軸からなる直交座標系を付している。また、これらの図には、バッテリ7が図1に示すように最も+A3側に位置していると仮定した場合における直交座標系A1-A2-A3の向きも示されている。これらの直交座標系から理解されるように、図5は、図4の断面図と同様に、タレット11の径方向に平行で、かつタレット11の前面(+A1側に面する面)に直交する断面を示している。
バッテリ7の外形は、既述のように、少なくとも一部が凹部13に収容される形状とされてよい。ここでは、バッテリ7の外形として、切削工具3と概略同等の形状及び大きさを有する態様、又は切削工具3のうち凹部13に収容される部分と概略同等の形状及び大きさを有する態様を例示している。すなわち、バッテリ7の外形は、第1端7aから第2端7bに延びる棒状とされており、また、直方体状とされている。
バッテリ7は、例えば、既述のバッテリ本体21と、バッテリ本体21に接続されている回路部45と、回路部45と接続されている端子47と、これらを保持しているハウジング49とを有している。回路部45は、例えば、既述の残量検知部23及び通信部25を構成している。
(ハウジング)
ハウジング49の外形は、概略、バッテリ7の外形を構成しており、これまでのバッテリ7の外形の説明は、ハウジング49の外形の説明に適用されてよい。ハウジング49は、バッテリ本体21等を収容する内部空間(符号省略)を有している。当該内部空間の形状及び大きさは適宜に設定されてよい。ハウジング49の材料も任意である。例えば、ハウジング49の材料は、導電材料(例えば金属)であってもよいし、絶縁材料(例えば樹脂)であってもよい。
バッテリ本体21、回路部45及び端子47をハウジング49に対して固定する方法も適宜なものとされてよい。例えば、固定は、接着剤によってなされてもよいし、粘着テープによってなされてもよいし、各部材をハウジング49に直接的に接合することによってなされてもよいし、ねじによってなされてもよいし、爪(係合)によってなされてもよいし、他の部材によって押さえ付けられることによってなされてもよい。
図示の例では、ハウジング49は、バッテリ本体21(及び回路部45)を収容する箱体49aと、箱体49aの凹部を塞ぐ蓋体49bを有している。蓋体49bは、バッテリ本体21を押さえ付けつつ箱体49aに固定されることによって、バッテリ本体21のハウジング49に対する固定に寄与してよい。このような構造において、蓋体49b及びバッテリ本体21は、箱体49aに対して着脱可能(別の観点ではバッテリ本体21を交換可能)であってもよいし、着脱不可能であってもよい。図示の例とは異なり、蓋体49bを設けず、箱体49aに封止材(例えば樹脂)が充填され、バッテリ本体21が箱体49aに固定されてもよい。
(バッテリ本体)
バッテリ本体21は、例えば、充電を行うことによって繰り返し使用可能な二次電池(狭義のバッテリ)によって構成されている。ただし、バッテリ本体21は使い捨て用の一次電池であっても構わない。
バッテリ本体21は、特に図示しないが、例えば、電極と、電解質と、セパレータと、これらを気密に収容している容器とを有している。なお、上記容器は、ハウジング49の一部であっても構わない。すなわち、本実施形態の説明では、バッテリ本体21とハウジング49とを別個のものとして説明するが、バッテリ7は、バッテリ本体21とハウジング49とを区別不可能な構成であってもよい。バッテリ本体21の各種の構成要素の具体的な構造及び材料等は適宜なものとされてよい。例えば、バッテリ本体21は、公知のリチウムイオン電池の構造及び材料によって構成されてよい。
バッテリ本体21の形状、大きさ及び蓄電可能な電力量等は適宜に設定されてよい。図示の例では、バッテリ本体21は、バッテリ7の長さ方向を長さ方向とする棒状とされている。その横断面の形状は、例えば、ハウジング49(別の観点では切削工具3)の外形と類似した形状であり、図示の例では矩形状である。また、バッテリ本体21の体積(又は上記の容器の容積)は、バッテリ7の外形の体積に対して比較的大きくされてよく、例えば、前者は後者の40%以上、50%以上、又は60%以上を占めてよい。バッテリ本体21が蓄電可能な電力量は、バッテリ本体21から電力が供給される要素(ここではセンサ19、残量検知部23及び通信部25)を駆動可能な時間に換算して、1時間未満であってもよいし、1時間以上であってもよいし、1日以上であってもよいし、1週間以上であってもよい。
(回路部)
回路部45は、特に図示しないが、例えば、回路基板にIC(Integrated Circuit)及びアンテナ等の電子部品が実装されて構成されている。ここでは、一つの回路部45によって残量検知部23及び通信部25等の複数の機能部が構成されている態様を例示しているが、複数の回路部45が設けられていても構わない。
回路部45の位置、形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、回路部45は、概略板状であり、バッテリ本体21に対して第2端7b側(別の観点では端子47側)において、バッテリ7の長さ方向に直交する向きで配置されている。図示の例とは異なり、回路部45は、例えば、バッテリ本体21に対してB2方向又はB3方向において重なっていてもよい。
回路部45は、バッテリ本体21と端子47との間に介在している。回路部45は、バッテリ本体21の電圧を適宜な電圧の交流電力又は直流電力(別の観点では電気信号)に変換して端子47に出力する電源回路(別の観点ではドライバ)を含んでいてもよい。ただし、図示の例とは異なり、バッテリ本体21と端子47とが直接に接続されていても構わない。
回路部45とバッテリ本体21との接続は、バッテリ本体21の端子が回路部45に設けられた端子に当接することによって実現されてもよいし(図示の例)、両者を接続する配線が設けられて実現されてもよい。同様に、回路部45と端子47との接続は、端子47の接点が回路部45に設けられた端子に当接することによって実現されてもよいし、両者を接続する配線が設けられて実現されてもよい(図示の例)。
(残量検知部)
残量検知部23(図2)は、例えば、回路部45に含まれるIC(不図示)によって構成されている。残量検知部23がバッテリ本体21の電気エネルギーの残量を検出する方法は、公知の方法も含め、種々のものとされてよい。例えば、検出方法は、バッテリ本体21の端子電圧を測定するものであってもよいし、バッテリ本体21に流入した電流及びバッテリ本体21から流出した電流を測定し、その測定値の積算によって残量を推定するものであってもよい。
(通信部)
通信部25(図2)は、既述のように情報処理装置81と通信を行う。この通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。無線通信としては、例えば、電波を用いるもの、及び赤外線を用いるものを挙げることができる。また、通信は、情報処理装置81へ送信を行うことができるだけであってもよいし、情報処理装置81から受信を行うことができるだけであってもよいし、情報処理装置81と送受信を行うことができるものであってもよい。また、通信によって送信及び/又は受信される情報も適宜なものとされてよい。
本実施形態では、電波を用いた無線通信によって通信部25から情報処理装置81へ情報を送信する態様を例に取って説明する。通信部25から情報処理装置81へ送信される情報は、例えば、センサ19によって検出された物理量の情報、及び/又は残量検知部23によって検出された電気エネルギーの残量の情報である。
通信部25は、例えば、回路部45に含まれるIC及びアンテナ(いずれも不図示)によって構成されている。通信部25は、例えば、送信すべき情報を含む電気信号(別の観点ではセンサ19及び/又は残量検知部23からの電気信号)に対して変調及び周波数の引き上げ(搬送波周波数を有する高周波信号への変換)を行い、その後、アンテナによって高周波信号を電波に変換して送信する。
通信部25が送信する無線信号が届く範囲(通信部25が直接に無線通信を行う範囲)は、狭くてもよいし、広くてもよい。例えば、上記範囲は、1つの工作機械の周囲をカバーできる範囲であってもよいし、1つの工場(建屋)をカバーできる範囲であってもよいし、複数の工場が建てられている1つの敷地をカバーできる範囲であってもよいし、市町村等の地域をカバーできる範囲であってもよいし、それよりも広い範囲であってもよい。
センサ19と通信部25との通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。また、有線通信は、電気信号を伝達させるものであってもよいし、光信号を伝達させるものであってもよい。本実施形態の説明では、センサ19が検出した物理量の情報を含む電気信号が配線17によって通信部25へ伝達される態様を例に取る。また、残量検知部23と通信部25との通信は、例えば、回路部45が含む不図示の回路基板を介してなされる。
(バッテリの端子)
バッテリ7の端子47は、例えば、切削工具3の端子33と同様のものとされてよい。従って、端子33についての説明は、端子47に援用されてよい。同一のタレット11に着脱されるバッテリ7及び切削工具3において、端子47及び33は、互いに同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。別の観点では、タレット11の同一の端子43に対して、端子47及び33を選択的に接続可能であってもよいし、端子47及び33のうち一方のみに接続可能な端子43と、他方にのみ接続可能な端子43とが設けられていてもよい。後者の場合において、端子47に接続される端子43と、端子33に接続される端子43とは、互いに異なる凹部13に設けられていてもよいし、互いに同一の凹部13の互いに異なる位置に設けられていてもよい。
(配線の位置の例)
バッテリ7と切削工具3とを接続している配線17は、タレット11内の適宜な位置に配置されてよい。例えば、タレット11は、切削液(切削剤、研削液、クーラント又は切削油と呼ばれることもある。)が流れる流路を有している。切削液は、例えば、油であり、切削工具3及び被削材101が互いに接触する位置等における潤滑、冷却及び/又は切屑除去に寄与する。配線17の少なくとも一部は、この切削液が流れる流路の少なくとも一部に沿って位置していてよい(流路に沿って延びていてよい。)。以下に、そのような態様の具体例を2つ示す。
図6(a)は、図1のVI-VI線における模式的な断面図の例である。
この例では、切削液は、タレット11の中心側部分を回転可能に支持する軸部材51からタレット11へ供給される。具体的には、切削液は、軸部材51に設けられた流路51aと、タレット11に設けられた流路11aと、切削工具3に設けられた流路3dとを順に流れ、切削工具3と被削材101とが当接している位置及び/又はその周囲に向けて吐出される。
軸部材51の流路51aは、-A1側が切削液の供給源(不図示)に接続されている。流路51aは、-A1側から+A1側へ延びた後、軸部材51の径方向に延びて軸部材51の外周面において開口している。タレット11の流路11aは、例えば、切削工具3を収容する凹部13毎に設けられている。複数の流路11aは、軸部材51が挿入される孔(符号省略)の内面から凹部13の内面へ、概略放射状に延びている。タレット11が軸部材51に対して回転されると、流路51aは、複数の流路11aのうち、切削に供される位置(図示の例では最も-A3側の位置)にある切削工具3に対応する流路11aに選択的に接続される。ひいては、切削液が複数の切削工具3のうち切削に供される切削工具3からのみ吐出される。流路51a、11a及び3dのより具体的な経路は適宜に設定されてよい。例えば、流路11aと流路3dとは、切削工具3の側面において接続されていてもよいし(図示の例)、切削工具3の端面(図3の-B1側の面)において接続されていてもよい。
図6(b)は、図6(a)とは異なる例を示す、図6(a)と同様の断面図である。
この例では、切削液は、タレット11の後面(-A1側の面)側からタレット11へ供給される。具体的には、切削液は、タレット11の後面に設けられた中継部53と、タレット11に設けられた流路11aと、切削工具3に設けられた流路3dとを順に流れ、切削工具3と被削材101とが当接している位置及び/又はその周囲に向けて吐出される。
中継部53及びタレット11の流路11aは、凹部13毎に設けられている。中継部53は、例えば、切削液の供給源(不図示)と流路11aの-A1側の端部との間に介在しており、供給源から流路11aへの流れを許容及び禁止する。流路11aは、例えば、概略、-A1側から+A1側へタレット11を貫通しており、+A1側の端部は凹部13の内面にて開口している。流路11a及び3dのより具体的な経路は、図6(a)と同様に、適宜に設定されてよく、例えば、流路11aと流路3dとは、切削工具3の側面において接続されていてもよいし(図示の例)、切削工具3の端面において接続されていてもよい。
図6(a)及び図6(b)のいずれにおいても、タレット11には、配線17の少なくとも一部を収容している配線用孔55が設けられている。この配線用孔55の少なくとも一部は、流路11aに沿って位置している。例えば、配線用孔55は、流路11aの一部と互いに並列(例えば平行)に延びている部分を有している。この互いに並列に延びている部分同士の距離は、例えば、タレット11の厚さ(例えばA1方向の最大長さ)の1/2以下又は1/3以下とされてよく、及び/又は配線用孔55の径(横断面が円形でない場合は例えば最大径)の10倍以下、5倍以下又は3倍以下とされてよい。図6(a)及び図6(b)から理解されるように、配線17の一部が流路11aの一部に沿って位置している場合において、その延びる向きは、タレット11の径方向であってもよいし、タレット11の軸方向であってもよい。
(情報処理装置)
図2に戻る。情報処理装置81は、工作機械1に対して比較的近くに配置されてもよいし、比較的遠くに配置されてもよい。また、情報処理装置81は、複数の場所に分散して配置された複数のハードウェアによって構成されていてもよい。例えば、情報処理装置81の一部又は全部は、工作機械1に隣接して配置されていてもよいし、工作機械1が配置されている工場(建屋)内で工作機械1から離れて配置されていてもよいし、上記の工場が建てられている敷地と同一の敷地内の別の建物に配置されていてもよいし、上記の敷地がある地域と同一の地域内の別の地域に配置されていてもよいし、上記の地域とは異なる地域又は国に配置されていてもよい。
また、情報処理装置81は、工作機械1(その通信部25)からの無線信号を直接に受信することなどによりバッテリ7と通信を行ってもよいし、バッテリ7からの無線信号を受信した他の機器及び/又は通信網を介してバッテリ7と通信を行ってもよい。通信網としては、例えば、インターネットを挙げることができる。なお、上記のように、分散して配置された複数のハードウェアを情報処理装置81と捉える場合においては、上記の他の機器及び/又は通信網は、情報処理装置81の一部として捉えられてもよい。
情報処理装置81は、例えば、コンピュータを含んで構成されている。特に図示しないが、コンピュータは、CPU、RAM、ROM及び外部記憶装置を含む。そして、CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記録されているプログラムを実行することによって、種々の処理を実行する種々の機能部が構築される。図示の例では、機能部として、既述の通信部83及び情報処理部85が示されている。また、RAM及び/又は外部記憶装置は、既述の記憶部87として機能する。
既述の説明から理解されるように、通信部83は、バッテリ7の通信部25からの無線信号を直接に受信するものであってもよいし、他の機器及び/又は通信網を介して通信部25からの信号を受信するものであってもよい。通信部83の構成は、上記の受信態様に応じて適宜なものとされてよい。例えば、通信部83は、無線信号としての電波を受信するアンテナを有していてもよいし、入力された高周波信号を復調する復調装置を有していてもよい。
工作機械1からの情報に基づいて情報処理部85が実行する処理は、適宜なものとされてよい。例えば、情報処理部85は、センサ19が検出した物理量の情報を記憶部87に蓄積する処理を行ってよい。より詳細には、例えば、工作機械1から順次送信される物理量の情報が順次記憶部87に記憶されて、時系列データが生成されてよい。
また、例えば、情報処理部85は、センサ19からリアルタイムで取得した物理量の情報及び/又は記憶部87に蓄積した情報に基づいて、切削工具3の状態を評価する処理を行ってもよい。また、例えば、情報処理部85は、上記の評価結果に基づいて、工作機械1に対して加工条件の変更を指示する信号を出力したり、工作機械1又は情報処理装置81が有する不図示のディスプレイに評価結果に基づく画像を表示させたりしてもよい。
また、例えば、情報処理部85は、残量検知部23が検出した電気エネルギーの残量に基づいて、工作機械1又は情報処理装置81が有する不図示のディスプレイに所定の画像を表示させてもよい。
なお、上記の説明では、情報処理装置81は、工作機械1が有している制御装置とはハードウェア的に別個の装置として説明された。ただし、情報処理装置81の少なくとも一部は、工作機械1が有している制御装置に含まれていてもよい。また、情報処理装置81の少なくとも一部は、ハードウェア的に工作機械1の制御装置とは別個に設けられていても、タレット11等を含む機械本体5に隣接して設けられている場合等において、工作機械1の一部とみなされても構わない。
既述のように、本実施形態では、バッテリ7の通信部25は、複数の切削工具3(センサ19)に共用されており、情報処理装置81は、1つのバッテリ7から複数の(例えば全ての)センサ19が検出した物理量の情報を取得する。ただし、図示の例とは異なり、複数のバッテリ7(通信部25)が設けられてもよいし、通信部25を有する切削工具3が設けられてもよい。すなわち、情報処理装置81は、バッテリ7及び/又は切削工具3が有する複数の通信部25と通信を行ってもよい。さらに、情報処理装置81は、複数の工作機械1と通信を行ってもよい。
以上のとおり、本実施形態では、工作機械1は、工具保持具(タレット11)と、第1切削工具(例えば切削工具3A)と、バッテリ7とを有している。タレット11は、それぞれ切削工具3を取り付け可能な複数の取付部12を有している。切削工具3Aは、複数の取付部12のうちの第1取付部(例えば図1の-A3側の取付部12)に取り付けられている。バッテリ7は、複数の取付部12のうちの第2取付部(例えば図1の+A3側の取付部12)に取り付けられている。
従って、例えば、切削工具3を着脱可能な取付部12にバッテリ7を取り付けることから、バッテリ7の着脱を切削工具3の着脱と同様に行うことができ、作業効率が向上する。また、例えば、バッテリ7の着脱に係るタレット11の設計変更も低減することができる。また、例えば、工作機械1がバッテリ7の電力を必要としない場合においては、全ての取付部12に切削工具3が取り付けられる運用を行うことが可能である。
また、本実施形態では、切削工具3Aが取り付けられた取付部12は、切削工具3Aの少なくとも一部を収容している第1凹部(例えば図1の-A3側の凹部13)を有する。バッテリ7が取り付けられた取付部12は、バッテリ7の少なくとも一部を収容している第2凹部(例えば図1の+A3側の凹部13)を有する。
この場合、例えば、切削工具3の一部を収容可能な凹部13にバッテリ7の少なくとも一部が収容されることになるから、バッテリ7のタレット11から食み出す体積を低減しつつ、バッテリ7全体の体積を確保することが容易化される。その結果、例えば、バッテリ7が空間的に加工に干渉する蓋然性を低減しつつ、バッテリ7の蓄電量を大きくすることが容易化される。取付部12として、凹部13を有する態様は一般的であり、種々の工作機械において上記作用を得ることができる。
また、本実施形態では、工作機械1は、バッテリ7及び切削工具3Aを電気的に接続する第1配線(例えば配線17A)をさらに有する。
この場合、複数の取付部12のうちいずれかに対して切削工具3に代えて装着されたバッテリ7から、他の取付部12に装着された切削工具3Aに電力が供給される。従って、電力を要する切削工具3A内にバッテリを設ける場合に比較して、バッテリ7(バッテリ本体21)を大きくすることが容易である。その結果、例えば、蓄電量を大きくし、バッテリの交換又は充電の頻度を低くし、作業効率を向上させることができる。また、例えば、切削工具3A内にバッテリを設ける場合とは異なり、切削工具3Aの寿命と、バッテリ7の寿命との独立性が向上する。換言すれば、切削工具3A及びバッテリ7の一方の寿命に応じて双方を交換する必要はない。その結果、コストを削減することができる。また、例えば、切削工具3Aにバッテリを設ける場合に比較して、切削工具3Aの保持体31の体積を確保して保持体31の強度を向上させることが容易である。
また、本実施形態では、複数の取付部12は、第3取付部(例えば図1の+A2側の取付部12)をさらに含む。工作機械1は、上記第3取付部に取り付けられた第2切削工具(例えば切削工具3B)と、バッテリ7及び第2切削工具を電気的に接続する第2配線(例えば配線17B)と、をさらに有する。
すなわち、バッテリ7は、複数の切削工具3に共用される。その結果、例えば、バッテリ7の数と電力を消費する切削工具3の数とが同数(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)に比較して、タレット11に同時に装着される切削工具3の数の減少を低減することができる。ひいては、加工の多様性が低下する蓋然性を低減できる。また、例えば、バッテリ7から電力が供給される切削工具3と、バッテリを有している切削工具3とが混在してタレット11に装着される態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)において、バッテリを有している切削工具3の数を減らしたり、無くしたりすることができる。通常、バッテリを有している切削工具3は、バッテリを有さない切削工具3よりもコストが高くなると考えられるから、バッテリを有している切削工具3の低減によってコスト削減を図ることができる。
また、本実施形態では、切削工具3は、第1端3aから第2端3bにかけて延びた棒形状である。また、切削工具3は、第1端3aの側に位置する切刃29aと、切刃29aよりも第2端3bの近くに位置するセンサ19と、センサ19よりも第2端3bの近くに位置する端子33と、センサ19及び端子33を電気的に接続する内部配線35と、を有する。バッテリ7と切削工具3とを接続するための配線17は、端子33に接続されている。
従って、例えば、配線17よりも切刃29aに近いセンサ19によって、切刃29a付近の物理量を精度よく検出することができる。その一方で、センサ19よりも切刃29aから離れている端子33に配線17が接続されていることによって、例えば、切削に伴う振動によって端子33の接触不良が生じる蓋然性を低減したり、切屑又は切削液が端子33に付着する蓋然性を低減したりすることができる。
また、本実施形態では、端子33は、切削工具3の第2端3bに位置する。
この場合、例えば、端子33を切刃29aから極力離して、上記の効果を向上させることができる。また、切削工具3が被削材101から受ける力においては、通常、すくい面29bに交差する方向(B3方向)における成分(いわゆる背分力)が大きい。端子33が切削工具3の第2端3bの端面(-B1側の面)から露出している場合においては、この背分力を受ける体積又は面積が端子33の配置によって減少される蓋然性を低減できる。
また、本実施形態では、バッテリ7は、センサ19が検出した情報を含む無線信号を送信する第1通信部(通信部25)を有する。
この場合、例えば、切削工具3に通信部25を設ける必要性を低減できる。その結果、例えば、切削工具3の保持体31の体積を確保して切削工具3の強度を向上させることが容易である。また、例えば、バッテリ7の通信部25が複数の切削工具3に共用されている場合においては、通信部25を有する切削工具3の数を低減したり、又は無くしたりして、コストを削減することができる。また、切削工具3に通信部25が設けられている場合、切削に供されている切削工具3の通信部25と被削材101との距離が短く、被削材101が無線通信に影響を及ぼす可能性がある。しかし、バッテリ7に通信部25が設けられている場合、バッテリ7が被削材101の近くに位置する蓋然性は低いから、上記のような影響が生じる蓋然性が低減される。
また、本実施形態では、バッテリ7は、電気エネルギーの残存量の情報を含む無線信号を送信する第2通信部(通信部25)を有する。
この場合、例えば、バッテリ7の交換又は充電の要否の把握を容易化することができる。上記のように通信部25がセンサ19の検出した情報を送信する場合においては、この通信部25が残存量の情報の送信に兼用されることになり、構成が簡素である。
また、本実施形態では、工作機械1は、切削液が流れる流路11aをさらに有する。バッテリ7と切削工具3とを接続するための配線17の少なくとも一部が、流路11aに沿って位置する。
この場合、例えば、流路11aと、配線17(別の観点では配線用孔55)とが少なくとも一部において纏められるから、タレット11の構成が簡素化される。また、例えば、流路11aと同様に配線用孔55を形成できるから、タレット11の製造方法も簡素化される。
<第2実施形態>
(工作機械の全体構成)
図7は、第2実施形態に係る工作機械201の要部を示す斜視図である。
本実施形態における第1実施形態との相違点としては、切削工具3(3A及び3C)及びバッテリ207が、タレット211の前面ではなく、外周面に着脱される点が挙げられる。また、切削工具3が、タレット211に直接的に保持されずに、ツールブロック57(57A及び57C)を介して間接的に保持される点が挙げられる。
なお、切削工具3と同様に、バッテリもツールブロック57を介して間接的にタレット211に保持されてよい(後述する図12参照)。また、第1実施形態でも言及したように、タレットの前面に装着された切削工具及び/又はバッテリ、タレットの外周面に装着された切削工具及び/又はバッテリ、タレットに直接的に装着された切削工具及び/又はバッテリ、タレットに間接的に装着された切削工具及び/又はバッテリが適宜に組み合わされてタレットに配置されてよい。例えば、タレット211は、その外周面にツールブロック57を着脱可能なだけでなく、タレット211の前面にもツールブロック57を着脱可能であってもよい。
第1実施形態と同様に、工作機械201の機械本体205において、切削工具3(電力を消費しない一般的な切削工具を含む)によって被削材101を切削するための基本的な構成は、公知の種々の構成と同様とされてよい。従って、切削工具3をタレット211の外周面に保持するための構成、及び/又は切削工具3を間接的に保持するための構成も、バッテリ207及び切削工具3の電気的接続等に係る部分を除いては、公知の種々の構成と同様とされてよい。図7は、その一例を示している。
図7の例では、タレット211は、その外周面に複数の取付部212を有している。複数の取付部212は、タレット211の軸回りに配列されている。各取付部212は、切削工具3又はツールブロック57を選択的に着脱可能である。ただし、各取付部212は、切削工具3のみ又はツールブロック57のみを着脱可能であってもよい。以下の説明では、便宜上、ツールブロック57を取付部212に取り付けた態様についてのみ説明する。各取付部212は、例えば、凹部213と、複数の雌ねじ214とを有している。ツールブロック57は、凹部213に少なくとも一部が収容されることによって、及び/又はツールブロック57に挿通された雄ねじ59が雌ねじ214に螺合されることによって、取付部212に装着される。なお、図7に示す取付部212の構成は、タレット211の前面に設けられる取付部(ここでは不図示)にも適用可能である。
バッテリ207は、複数の取付部212のうちいずれかに対して、ツールブロック57に代えて、タレット211に装着される。バッテリ207の取付部212に対する固定方法は、ツールブロック57のタレット211に対する固定方法と同様とされてよい。すなわち、本実施形態では、バッテリ207は、凹部213に少なくとも一部が収容されることによって(図示の例)、及び/又はバッテリ207に挿通された雄ねじ59が雌ねじ214に螺合されることによって、取付部212に装着されてよい。第1実施形態で述べたように、バッテリ207は、その全部が凹部213に収まってもよいし、一部のみが凹部213に収まってもよく、図7は、後者の例となっている。なお、図示の例とは異なり、バッテリ207が雄ねじ59及び雌ねじ214によって取付部212に装着されるものである場合においては、バッテリ207は、凹部213に収容される部分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
図8は、工作機械201の信号処理系の構成を示すブロック図である。
この図に示すように、バッテリ207からセンサ19への電力供給は、タレット211の配線17(17A及び17C)だけでなく、ツールブロック57の配線61(61A及び61C)を介してなされる。センサ19から通信部25への信号の伝達についても同様である。なお、この図にも示すように、本実施形態においては、タレット211及び少なくとも1つ(図示の例では2つ)のツールブロック57の組み合わせによって、複数の切削工具3を保持可能な工具保持具が構成されている。
(ツールブロック)
工作機械201がツールブロック57を有している態様において、タレット211に同時に装着されている(又は装着可能な)ツールブロック57の数は、適宜に設定されてよい。例えば、ツールブロック57の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、ツールブロック57の数がタレット211の取付部212の数に占める割合は、50%未満であってもよいし、50%以上であってもよいし、全部であってもよい。タレット211に同時に装着されている複数のツールブロック57は、互いに同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。
ツールブロック57は、1つの切削工具3のみを同時に保持可能なものであってもよいし(図7の例)、2以上の切削工具3を同時に保持可能なものであってもよい(後述の図12参照)。1つのツールブロック57に同時に保持される2以上の切削工具3は、タレット211の軸方向(R1軸参照)に並んでもよいし(図12参照)、タレット211の軸回りに並んでもよい(不図示)。2以上の切削工具3を同時に保持可能なツールブロック57にバッテリを保持させる場合、1つのバッテリのみが保持されてもよいし、2以上のバッテリが保持されてもよい。
ツールブロック57は、切削工具3の軸方向(長さ方向)がタレット211の軸方向(R1軸参照)に沿うように切削工具3を保持するものであってもよいし(図7の切削工具3Cを参照)、切削工具3の軸方向がタレット11の径方向に沿うように切削工具3を保持するものであってもよい(図7の切削工具3A及び図12参照)。ツールブロック57の形状及び大きさは任意である。
既述のように、機械本体205の切削に係る基本的構成(例えばバッテリ207及び切削工具3の電気的接続等に係る部分を除いた構成)は、例えば、公知の種々の構成と同様とされてよい。このことは、機械本体205に含まれるツールブロック57についても同様である。従って、ツールブロック57に切削工具3を着脱するための構造、及びツールブロック57をタレット211に着脱するための構造は、例えば、公知の構成と同様とされてよい。そして、適宜に、切削工具3とツールブロック57とを電気的に接続するための構成、及びツールブロック57とタレット211とを電気的に接続する構成が設けられてよい。以下では、そのいくつかの例を示す。
図9は、図7のIX-IX線における断面図である。すなわち、図7において-A3側に位置する切削工具3A及びツールブロック57Aの断面図である。
切削工具3Aは、第1実施形態で説明した切削工具3Aと同様に、棒状かつ直方体状のホルダ27(保持体31)を有する構成である。ツールブロック57は、基体63と、ねじ67とを有している。切削工具3Aのホルダ27は、基体63の凹部65(取付部64)に収容される。ねじ67は、基体63の雌ねじ(符号省略)に螺合されてホルダ27を凹部65の内面に押し付ける。これにより、切削工具3Aは、ツールブロック57に保持される。
ツールブロック57は、図8を参照して説明した配線61と接続されている端子69を有している。切削工具3Aが凹部65に装着されると、切削工具3Aの端子33と端子69とが当接する。端子33及び端子69は、適宜な構成で適宜な位置に設けられてよく、第1実施形態で述べた切削工具3の端子33及びタレット11の端子43の説明は、適宜に本実施形態の端子33及び端子69に援用されてよい。図9の例では、端子33は、図3に示した構成とは異なり、保持体31の側面において露出している。また、図9の例では、端子33及び端子69の接点(符号省略)は、模式的に、端子33及び端子69の対向方向において当接する態様で示されている。
ツールブロック57は、切削液が流れる流路63aを有していてよい。流路63aは、例えば、切削工具3Aの流路3d(図6(a)及び図6(b))に接続されて、流路3dに切削液を供給することに寄与してよい。また、流路63aは、切削工具3Aを介さずに直接に加工位置及び/又はその周囲へ切削液を吐出してもよい。流路63aは、例えば、タレット211の流路11a(図6(a)及び図6(b))に接続されて流路11aから切削液が供給されてよい。また、流路63aは、タレット211を介さずに切削液が供給されてもよい。
上記のようにツールブロック57が流路63aを有している場合において、配線61(別の観点では配線61が収容されている配線用孔63b)の少なくとも一部は、流路63aの少なくとも一部に沿って位置してよい。図示の例では、配線61(配線用孔63b)は、流路63aのB1方向に沿っている部分に沿って延びている部分を有している。
なお、第1実施形態との比較から理解されるように、図9に示すツールブロック57の構成と同様又は類似の構成によって、第1実施形態のバッテリ7が着脱されるツールブロック57を実現することが可能である。
次に、図7において+A2側に位置する切削工具3Cをツールブロック57Cに着脱する機構の例を示す。
切削工具3Cは、その被取付部79がツールブロック57Cの凹部65(取付部64)に挿入されることによってツールブロック57Cに取り付けられる。これまでの説明から理解されるように、凹部65の開口方向は、タレット211の軸方向であってもよいし(図示の例)、タレット211の径方向であってもよい(後述する図12参照)。
図10(a)及び図10(b)は、それぞれ切削工具3Cのツールブロック57Cに対する着脱機構の例を示す模式的な断面図である。これらの図において、紙面左右方向は、凹部65の開口方向(図7の例ではタレット211の軸方向)である。
図10(a)では、ねじ93を用いた構成が例示されている。具体的には、例えば、ねじ93は、ツールブロック57Cに形成された貫通孔状の雌ねじ部(符号省略)に螺合されている。一方、切削工具3Cの被取付部79の側面には、ねじ93の先端が差し込まれる穴(符号省略)が形成されている。この穴及びねじ93の先端は、被取付部79の内側ほど径が小さくなるテーパ面を有している。ねじ93がねじ込まれると、両テーパ面の間の接触圧が増大する。これにより、被取付部79が凹部65の開口方向において位置決めされる。また、被取付部79が凹部65の内面のねじ93とは反対側の領域に押し付けられて、凹部65の径方向においても位置決めされる。
図10(b)では、チャックを用いた構成が例示されている。図示の例では、チャックは、コレットチャックの一種であり、コレット94と、ナット95と、を有している。コレット94は、切削工具3Cの被取付部79の外周に位置しているとともに、径方向において収縮可能に分割されている。ナット95は、ツールブロック57Cに形成された雄ねじ部(符号省略)に螺合されており、螺合に伴う軸方向の移動によって、コレット94の外面のテーパ面を介してコレット94を径方向内側に押圧する。これにより、コレット94と被取付部79の外周面との接触圧が増大し、被取付部79が保持される。
そして、図10(a)及び図10(b)それぞれにおいて模式的に示すように、切削工具3Cの被取付部79がツールブロック57Cの凹部65に対して固定されたとき、切削工具3Cの端子33とツールブロック57Cの端子69とが互いに当接して接続されてよい。図9の説明でも述べたように、端子33及び端子69は、適宜な構成で適宜な位置に設けられてよい。図示の例では、被取付部79の端面において端子33が露出しているが、被取付部79の側面に端子33が露出していてもよい。
図10(a)及び図10(b)の説明は、バッテリの着脱に援用されてよい。すなわち、バッテリに被取付部79を設けて、バッテリをツールブロック57Cに着脱してもよい。この場合において、バッテリ(バッテリ本体)は、その少なくとも一部がツールブロック57Cの凹部65に収容されてよい。
次に、ツールブロック57(57A及び57C)をタレット211の凹部213に着脱する機構の例を示す。
なお、図1に示した切削工具3Aをタレット11の凹部13に着脱する機構、図9に示した切削工具3Aをツールブロック57Aの凹部65に着脱する機構、及び図10(a)及び図10(b)に例示した切削工具3Cをツールブロック57Cの凹部65に着脱する機構は、ツールブロック57を凹部213に着脱する機構に利用可能である。逆に、以下に説明するツールブロック57を凹部213に着脱する機構は、切削工具3Cをツールブロック57Cの凹部65に着脱する機構に利用可能である。
図11(a)及び図11(b)は、それぞれ、ツールブロック57をタレット211の凹部213に着脱するための構成の例を示す断面図である。これらの図において、紙面左右方向は、凹部213の開口方向(図7の例ではタレット211の径方向)である。
図11(a)では、いわゆるVDI方式の構成が例示されている。この例では、ツールブロック57は、タレット211の凹部213に概ね嵌合する被取付部71を有している。そして、被取付部71は、タレット211の基体211aに挿通されたピン73によって凹部213の内面に押し付けられて固定される。ピン73は、例えば、図11(a)の紙面に直交する方向に傾斜する方向に延びている部材であり、ピン73の長手方向に挿通されているねじ74の基体211aに対する螺合によって被取付部71に押し当てられる。ピン73と被取付部71との互いに当接する面には、互いに噛み合う複数の歯が形成されていてよい。
図11(b)では、いわゆるテーパシャンクを用いた構成が例示されている。この例では、タレット211の凹部213は、奥側ほど径が縮小するテーパ状とされている。また、ツールブロック57は、凹部213に概ね嵌合する被取付部71を有している。被取付部71は、先端側(凹部213の奥側)ほど径が小さくなるテーパ状とされている。そして、被取付部71は、タレット211に設けられたクランプ機構77によって凹部213内に引き込まれる。なお、クランプ機構77の構成は適宜なものとされてよい。図示の例では、クランプ機構77は、被取付部71の内部に対して係合しているが、被取付部71の外部(プルスタッド等)に係合してもよい。図示の例では、被取付部71は、テーパ面の軸方向における長さが比較的短い(例えばテーパ面の最大径の1.5倍以下)のショートシャンクとされている。
そして、図11(a)及び図11(b)それぞれにおいて模式的に示すように、被取付部71が凹部213に対して固定されたとき、ツールブロック57の端子75と、タレット211の端子43とが互いに当接して接続されてよい。端子75は、ツールブロック57の配線61を介してツールブロック57の端子69と接続されている端子である。端子69は、既述のように、切削工具3の端子33(又は第1実施形態のバッテリ7の端子47)と接続される端子である。このようにして、切削工具3(又はバッテリ7)は、ツールブロック57を介してタレット211に電気的に接続される。
ツールブロック57の端子75及びタレット211の端子43は、適宜な構成で適宜な位置に設けられてよく、第1実施形態で述べた切削工具3の端子33及びタレット11の端子43の説明は、適宜に本実施形態の端子75及び端子43に援用されてよい。図11(a)及び図11(b)に示すように、端子75は、被取付部79の側面に露出していてもよいし、被取付部79の端面に露出していてもよい。
以上のツールブロック57のタレット211に対する着脱の説明は、図11(a)及び図11(b)においてバッテリ207の符号及びバッテリ207の端子47の符号を括弧内に示すように、バッテリ207のタレット211に対する着脱に援用されてよい。バッテリ207は、これまでの説明からも理解されるように、その一部又は全部が被取付部71に位置してよい。
以上のとおり、本実施形態においても、工作機械201の工具保持具(タレット211及びツールブロック57)は、それぞれ切削工具3を取り付け可能な複数の取付部212及び/又は64を有している。また、工作機械201は、いずれかの取付部212又は64(図示の例では取付部64)に取り付けられた第1切削工具(例えば切削工具3A又は3C)と、いずれかの取付部212及び/又は64(図示の例では取付部212)に取り付けられたバッテリ207と、を有する。従って、例えば、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、バッテリ207の着脱を切削工具3又はツールブロック57の着脱と同様に行うことができ、作業効率が向上する。
<第3実施形態>
図12は、第3実施形態に係る工作機械301の要部を示す斜視図である。図13は、工作機械301の信号処理系の構成を示すブロック図である。
第2実施形態の説明において、ツールブロック57は、複数の切削工具3(又はバッテリ)を保持可能でよいことを述べた。図12では、そのような複数(図示の例では2つ)の切削工具3を保持可能なツールブロック357が示されている。そして、ツールブロック357は、例えば、少なくとも1つの切削工具3と、少なくとも1つのバッテリ307とを同時に保持している。
本実施形態において、第2実施形態との相違点としては、図13に示すように、同一のツールブロック357に同時に保持されている切削工具3とバッテリ307とが機械本体305のタレット311を介さずに、ツールブロック357のみを介して電気的に接続されている点が挙げられる。例えば、ツールブロック357が有している配線61は、その一端が一の取付部64に位置する端子69(図10(a)、図10(b)等参照)に接続され、他端が他の取付部64に位置する端子69に接続されている。
また、タレット311は、互いに異なる取付部212同士を電気的に接続する配線17を有していない。ただし、タレット311は、第2実施形態のタレット211と同様に、互いに異なる取付部212同士を電気的に接続する配線17を有していてもよい。これにより、例えば、バッテリ307は、バッテリ307と共にツールブロック357に保持されている切削工具3に加えて、他の切削工具3と電気的に接続されてもよい。
以上のとおり、本実施形態においても、工作機械301の工具保持具(ツールブロック357)は、それぞれ切削工具3を取り付け可能な複数の取付部64を有している。また、工作機械301は、いずれかの取付部64に取り付けられた第1切削工具(切削工具3)と、いずれかの取付部64に取り付けられたバッテリ307と、を有する。従って、例えば、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、バッテリ307の着脱を切削工具3の着脱と同様に行うことができ、作業効率が向上する。
なお、第1実施形態におけるタレット11、第2実施形態におけるタレット211とツールブロック57との組み合わせ、及び第3実施形態におけるツールブロック357は、それぞれ工具保持具の一例である。第1実施形態において、取付部12(凹部13)は、第1、第2又は第3取付部(第1、第2又は第3凹部)の一例である。第2実施形態において、取付部64(凹部65)は、第1又は第3取付部(第1又は第3凹部)の一例であり、取付部212(凹部213)は第2取付部(第2凹部)の一例である。第3実施形態において、取付部64(凹部65)は、第1取付部及び第2取付部(第1凹部又は第2凹部)の一例である。第1実施形態における配線17、第2実施形態における配線17と配線61との組み合わせ、及び第3実施形態における配線61は、それぞれ第1又は第2配線の一例である。第1実施形態における配線17、及び第2実施形態における配線17と配線61との組み合わせは第3配線の一例でもある。通信部25は、第1通信部及び第2通信部の一例である。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
切削工具は、工具本体と、アーバ又はチャックとを含んで構成されていてもよい。そして、アーバ又はチャックがタレット又はツールブロックに保持されてよい。
ツールブロックは、電力を消費する要素(例えばセンサ及び/又は通信部)を有していてもよい。この場合において、工具保持具の第2取付部に取り付けられたバッテリからツールブロックへ電力が供給されてよい。このように、第2取付部に取り付けられたバッテリの電力は、種々の用途に利用可能である。別の観点では、第1取付部に取り付けられた切削工具は、電力を消費しないものであってもよい。
バッテリは、残量検知部及び通信部を有さず、単に電力を供給するだけのものであってもよい。例えば、バッテリは、バッテリ本体のみから構成されてもよい。