JP4017070B2 - タレット刃物台 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は工作機械のタレット刃物台に関するものであり、詳しくは加工時の刃先熱変位量を少なくしたタレット刃物台である。
【0002】
【従来の技術】
工作機械のタレット刃物台は、加工室内にタレット刃物台の全体が構成されているものとタレットのみが加工室内に設けられ刃物台は機外に露出しているものとがある。いずれの場合も刃物台の旋回中心の穴からタレットのキリ穴と工具ホルダのキリ穴を通りホルダノズルから加工部に切削液を吐出している。
【0003】
図2はタレット101のみがカバー102で仕切られた加工室にあるタレット刃物台である。タレット101の外周面101aに工具ホルダ103が取着されている。ワーク加工時に発生する切粉は主としてタレット101の前面101bに接触または付着し、高温の切粉の熱をタレットに伝達することを示している。
【0004】
従来のタレット101では、切削液は切削液供給源から刃物台104の旋回中心に設けられた導入管105を通りマニホールド106を経てタレット101のキリ穴101cを通って工具ホルダ103に導かれ、図示しないノズルが切削液を吐出する。この場合切削液はほぼ供給源と同じ温度で吐出されている。タレット101のみが加工室に囲まれている場合は切粉熱による温度上昇が著しい。
【0005】
図3はタレット101の熱変形によるバイトの刃先変位の説明図である。
タレット101の前面101bが背面101cに比し径方向の熱膨張eが大きい場合は背面の中心101dを変位の中心としてチャック108に把持されたワークWに対し、バイト107の刃先が矢印方向105aに変位を生ずる。図4は固定されたタレット刃物台104のタレット101のみが加工室109に囲まれた配置図である。このような場合は、特にタレット101の背面に切削液がかかりにくいので、タレット101の前面と背面との温度差が顕著となり加工当初に比し変位が大きくなりやすい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術で述べたタレット刃物台、特にタレットのみを加工室内に露出させて加工機を構成した場合は、切粉がタレットの前面に接触したり付着する機会が多いので、タレットの前面と背面の温度差による工具刃先の変位が大きくなるという問題を生ずる。更に、内径バイトのように工具長が長いものは温度差による影響を受けやすいという問題を有している。特に刃物台が固定され主軸台移動形の加工機械にあっては、刃物台後部への切削液がかかりにくいため、タレットの径方向熱変位が起こりやすいという問題も生じている。
【0007】
本発明は従来技術の有するこのような問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、タレットの前面および背面の少なくとも一面に冷却用流路を形成し、高温となった前面の熱を切削液に吸収させてタレット外へ吐出させ前面に生ずる熱膨張を減少させることにより、タレットの外周に取着した工具の加工初期の刃先位置に比し刃先位置の変位が少ないタレット刃物台を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に記載のタレット刃物台は、工作機械のタレット刃物台において、タレットの前面および背面の少なくとも一面に切削液を工具ホルダのノズルに導く流路の中間にタレット表面の全体の温度を平準化すべく熱源と切削液の接触面積を大きく且つ接触時間を長くするよう形成した冷却用流路と、切削液供給源から刃物台の旋回中心穴を通り前記冷却用流路に切削液を導く導入流路を設け、切粉からタレット表面に伝えられた熱を冷却用流路を循環中の切削液に伝熱させてから吐出させるものである。」
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、切削加工中に切粉との接触・付着によって生ずるタレット表面の温度差、とりわけパレットの前面と背面に生ずる温度差は顕著であり工具刃先の変位に及ぼす影響が大きい。そのために、タレットの表面に冷却用流路を形成し切削液を還流させて熱を切削液に伝熱し温度差を少なくしようとするものである。切削液の供給源からタレット中心穴を経由する導入流路と、冷却用流路を通過した後若干の温度上昇を伴って工具ホルダのノズルに導いて吐出する流路との構成の中間に、本発明では冷却用流路をタレット前面および背面の少なくとも一面に設けたものである。その流路に切削液を還流させることにより、特にタレット前面の温度を下げたり、背面の温度を前面の温度に近づけるようにしてタレット表面全体の温度の平準化を図り工具刃先の位置変位を少なくするものである。
【0010】
請求項2に記載のタレット刃物台は、前記冷却用流路が多条の溝または螺旋溝で形成されてなりタレット外周面から切削液への伝熱の効率を高めたことを特徴とするものである。
請求項2の発明によれば、タレット表面に貯えられた熱エネルギーの多くを切削液に伝達するために熱源と切削液の接触面積を大きく、且つ接触時間を長くするために冷却用流路を多条の溝または螺旋溝で形成したものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1はタレットの前面と背面に冷却用流路を設けたタレット刃物台の断面説明図である。図1において、タレット1はカバー18で仕切られた加工室内に設けられ、中空の支持軸3の軸端部分に嵌装して設けられている。支持軸3は刃物台に構成された軸受ハウジング5の軸受4で支承されている。軸受ハウジング5の蓋6には切削水の流入路となる管接手が取着されている。蓋6に固設され一端がピン7で回り止めされる切削液の導入管8が支持軸3に遊挿されている。
【0012】
導入管8のタレット側の他端外径部は、中継リング10が固着され支持軸3に嵌着した軸受9で支持されている。中継リング10にはマニホールド11が外嵌され、タレット1に孔設された座ぐり面1eに当接する蓋12で固定されている。中継リング10にはマニホールド11の流路11aに向けて切削液の流路10aが設けられている。タレット1に取着された工具ホルダにはそれぞれ切削液ノズルが設けられている。タレット1が切削位置に位置決めされたときにのみ切削液を吐出する流路が形成されるように、マニホールド11には流路11aに加えて工具ホルダと同数の流路11bが放射状に孔設されている。
【0013】
中継リング10には、タレット1が割り出した工具ホルダの一方向にのみ流出する流路10bが孔設されている。図1に示す実施例では導入管8からマニホールド11に導かれた切削液がタレット1の流路1aから流入する溝13aが形成された溝付板13がタレットの背面に設けられている。溝付板13には適宜切欠部を設けて連続するように形成した同心の多条溝または螺旋溝が形成されている。溝付板13はタレット1の外周面に取着される工具ホルダ関連部品との関係で取着が許容される平面に制限がある場合は円板に限られるものでなく適宜その形状は変更される。
【0014】
図1において、タレット1の背面には溝付板14が取着されており溝付板13の溝の終端から流路1bを経由して溝付板14の溝14aに切削液が供給される。溝付板14から出た切削液は流路1cを通りタレット1の前面に取着された溝付板15の溝15aに案内される。外周から中心部に向かって切削液が還流する溝が刻設され中央に近い溝から再び中継リング10に戻り一本の流路10bと連結する流路11b,流路1d,流路16aを経由して工具ホルダ16の吐出ノズルに導かれる。
なお、溝13a〜15aは溝付板13〜15に形成されているが、これに限るものではなく適宜タレット1の表面側に溝を刻設して上面を平板で覆っても良い。
また、冷却用流路としてタレット1に溝付板15のみを設け自ら前面の冷却のみを目的に構成することができる。
【0015】
タレット1の前面に工具ホルダ群が取着されていて溝付板15が取着不能な場合は、タレット1の高温部の熱を吸収させるよう切削液をタレット1の背面の溝付板14に案内して前面と背面の温度上昇を平準化するよう冷却用流路を構成する。ここで使用する切削液はエマルジョンと水の混合液が多用されるが切削油であっても良い。通常使用されるクーラント液でも良い。
【0016】
次に、本発明のタレット刃物台の作用を説明する。
図1において、タレット1が加工に供する所定の工具を割り出して位置決めされると工具ホルダ16の流路16aを経由して図示しない吐出ノズルから切削液が放出される。切削液の導入流路から冷却用流路を経由して吐出ノズルに至る流路は次のとおりである。
【0017】
切削液の供給源から、旋回するタレット1の支持軸3の軸心の中空穴に遊挿され刃物台2に固定される導入管8に切削液は導入される。切削液は導入管8と中継リング10の流路10aを通りタレット1に固定されたマニホールド11の流路11aに送り込まれる。流路11aの切削液をタレット1の前面と背面のいずれの面に導くかの選択がある。
【0018】
すなわち、タレット1の前面の熱を溝付板15により切削液に伝熱して前面の温度を下げ背面との温度バランスを取る場合と、最初に前面の熱を溝付板15を通して切削液に吸収させ、その切削液を背面に設けた溝付板14に案内し熱を切削液から背面に伝熱し、背面の温度を上昇させ前面と背面の温度を平準化させる場合である。ここでは前者の場合の実施例をひきつづき説明する。
【0019】
前面の温度を下げるための流路として二通りの構成が考えられる。切削液をまず低温の背面を通し、続いて高温の前面に導く方法と、背面は通さず前面のみ通過させる方法がある。前者の場合は、流路11aから流路1aを介して先ず背面の溝付板13の流路13aに導入される。流路13aを還流し背面から熱を吸収した切削液は溝付板14が背面に取着されている場合は流路1b,流路14a,流路1cを還流して前面の溝付板15に導かれる。
【0020】
前面に取着された溝付板15に還流可能に形成された溝15aの最も外側の溝15aに流入した切削水はタレット1の旋回中心に向かって流れタレット1の外側の熱を吸収する。流路15bに至った切削液は中継リング10の上部に孔設された流路10bを経由し流路1dにつづく工具ホルダ16の流路16aを通り吐出ノズルへ導かれ加工部に向けて放出される。
後者の場合は高温となった前面のみの冷却を行うものでタレット冷却の目的に良く合致する。この場合は流路1aから流路1cに流路を短絡する必要がある。
【0021】
なお、タレット1の各工具ホルダの流路に対応して設けられている流路1dとマニホールドの流路11bは1:1に対応して設けられているが、中継リング10の流路10a,流路10bはそれぞれ一個ずつ設けられている。従ってタレット1が旋回動作中は、流路10bと放射状に孔設された流路1dとの流路の繋がりは断たれる。
【0022】
以上の実施形態では、切削液が流れる経路がタレット前面と背面に設けられ且つ前面の経路と背面の経路とが連結されたものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、加工の熱を受け易いタレット前面のみに切削液の経路を設けるようにすることもできる。タレット前面と背面の経路それぞれを独立して設け、それぞれの流量を調整して両面の温度差を小さくすることもできる。この他、本発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変形可能である。
【0023】
【発明の効果】
本発明のタレット刃物台は、上述のように構成されているので以下の効果を奏する。
請求項1に記載の発明は、新たにオイルコン等の冷却液供給装置を設置することなく、従来から使用する切削液を利用して循環させた結果、タレット前面と背面の温度差が少なくなるので刃先位置の変化を小さくできる効果がある。
それに伴い刃先位置の補正が容易になるという効果を生ずる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、タレットからタレットを通過する切削液への伝熱を容易するために冷却用流路を溝壁を一部欠いて連通させた多条の円形溝若しくは螺旋溝に形成し接触する面積を長くすることにより伝達の効率を高める効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】タレットの前面と背面に冷却用流路を設けたタレット刃物台の断面説明図である。
【図2】タレットのみをカバーで加工室内に露出するように構成されたタレット刃物台の断面説明図である。
【図3】タレットが熱変形したときのバイトの刃先変位の説明図である。
【図4】タレット刃物台を固定し主軸が位置決め制御される工作機械において、タレットのみがカバーで加工室に露出するように構成された工作機械の構成説明図である。
【符号の説明】
1 タレット 2 刃物台
3 支持軸 4,9 軸受
5 軸受ハウジング 6,12 蓋
7 ピン 8 導入管
10 中継リング 11 マニホールド
13,14,15 溝付板
16,17 工具ホルダ 18 カバー
Claims (2)
- 工作機械のタレット刃物台において、タレットの前面および背面の少なくとも一面に切削液を工具ホルダのノズルに導く流路の中間にタレット表面の全体の温度を平準化すべく熱源と切削液の接触面積を大きく且つ接触時間を長くするよう形成した冷却用流路と、切削液供給源から刃物台の旋回中心穴を通り前記冷却用流路に切削液を導く導入流路を設け、切粉からタレット表面に伝えられた熱を冷却用流路を循環中の切削液に伝熱させてから吐出させることを特徴とするタレット刃物台。
- 前記冷却用流路が多条の溝または螺旋溝で形成されてなりタレット外周面から切削液への伝熱の効率を高めたことを特徴とする請求項1に記載のタレット刃物台。
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