JP2014122205A - フタロシアニン化合物、フタロシアニン化合物の混合物、およびこれを用いる熱線吸収材 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱線吸収能が向上した(低い日射透過率を有する)フタロシアニン化合物を提供する。
【解決手段】Z1〜Z12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、またはアリールオキシ基を表わし、これらのうち、7〜12個がアリールオキシ基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基であるか、または、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基のうち、少なくとも一組が−Q1−Ar−Q2−を表し、この際、Z1〜Z12のうち、5〜10個は、それぞれ独立して、アリールオキシ基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基であり、Z13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、炭素原子数2〜21のエステル基、アミノ基、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基、−COO(X5"O)r−X6"、またはアリールオキシ基(b)であり、Mは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物である、フタロシアニン化合物。
【選択図】なし
【解決手段】Z1〜Z12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、またはアリールオキシ基を表わし、これらのうち、7〜12個がアリールオキシ基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基であるか、または、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基のうち、少なくとも一組が−Q1−Ar−Q2−を表し、この際、Z1〜Z12のうち、5〜10個は、それぞれ独立して、アリールオキシ基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基であり、Z13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、炭素原子数2〜21のエステル基、アミノ基、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基、−COO(X5"O)r−X6"、またはアリールオキシ基(b)であり、Mは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物である、フタロシアニン化合物。
【選択図】なし
Description
本発明は、フタロシアニン化合物、フタロシアニン化合物の混合物、およびこれを用いる熱線吸収材に関する。特に、本発明は、低い日射透過率(優れた熱線吸収能)及び高い可視光透過率(優れた透明性)を有するフタロシアニン化合物、フタロシアニン化合物の混合物、およびこれを用いる熱線吸収材に関する。
したがって、本発明の熱線吸収材は、乗り物(例えば、自動車、バス、電車等)や建物の熱線吸収合わせガラス、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、熱線反射ガラスなどに用いる際に優れた効果を発揮するものである。
太陽エネルギーの熱線遮蔽用として建物や自動車の窓などに使用する場合には、大面積への適用が必要であり、また、十分な透明性が確保される必要がある。太陽光のスペクトルは、紫外−可視−赤外領域に広く分布する。上記用途では、ガラスのような透明性を確保しつつ、熱線を効果的に遮蔽する上で670nm以上、特に750nm超〜830nmの範囲の波長の熱線を選択的に吸収することが重要である。
従来、熱線吸収/遮蔽ガラスとしては、板ガラスの表面に反射率の高い金属酸化物の膜をコーティングしたものが知られている。この熱線吸収/遮蔽ガラスは、通常のガラス原料に微量の鉄、ニッケル、コバルト等の金属を加えて着色し、波長による光の選択透過性を持たせたものである。しかしながら、従来の熱線吸収/遮蔽剤として使用されている金属酸化物には、670〜850nm、特に750nm超〜830nmの範囲の近赤外域を選択的に吸収できるものはなく、当該波長域の光を十分吸収するためには、添加量を増やす必要がある。しかし、このような場合には、ガラスの透明性の低下を引き起こす場合があり、また、コスト的にも好ましくない。また、金属酸化物を用いて大面積の金属薄膜層の表面を均一に被覆する技術が十分開発されるにはいたっていないため、従来の金属酸化物の被覆(塗布)方法では、大面積の表面に均一な塗布面を形成することが困難であった。
一方で、特定の波長域の光を選択的に吸収する近赤外吸収色素が種々開発されている。特に、フタロシアニン化合物は、可視光透過率が高く、近赤外光線の吸収効率が高く、かつ近赤外域の選択吸収能に優れ、かつ溶媒溶解性に優れ、樹脂との相溶性に優れ、かつ耐熱性、耐光性、耐候性にも優れるなど、諸特性に優れている。例えば、特許文献1には、その四方にベンゼン環をそれぞれ有するフタロシアニン骨格において、α位に4〜8個の置換または無置換のフェノキシ基および4〜0個のハロゲン原子を、β位に8個の置換または無置換のフェノキシ基を導入したフタロシアニン化合物、および上記フタロシアニン化合物を熱線吸収材に使用することが開示される。
しかしながら、特許文献1に記載されるようなフタロシアニン化合物であっても、熱線吸収能が十分であるとは必ずしもいえず、より優れた熱線吸収能が求められていた。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、熱線吸収能が向上したフタロシアニン化合物、およびフタロシアニン化合物の混合物を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、透明性(高い可視光透過率)を低下させることなく、優れた熱線吸収能を有するフタロシアニン化合物、およびフタロシアニン化合物の混合物を提供することである。
本発明の別の目的は、上記したようなフタロシアニン化合物、またはフタロシアニン化合物の混合物を含む熱線吸収材を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、フタロシアニン骨格の一部がナフタレン構造に置換され、かつ、フタロシアニン骨格上の置換基のうち、7〜12個がアリールオキシ基を有するフタロシアニン化合物、または、フタロシアニン骨格上の置換基であって、隣接する二つの置換基のうち、少なくとも一組が連結されるとともに、5〜10個がアリールオキシ基を有するフタロシアニン化合物は、日射透過率が低く、かつ可視光透過率が高いことを見出した。このため、当該フタロシアニン化合物、または、フタロシアニン化合物の混合物を含む熱線吸収材は、優れた熱線吸収能、特に優れた熱線吸収能および透明性を発揮できることを見出し、上記知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、上記目的は、下記式(1):
上記式(1)中、Z1〜Z12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または下記式(2)もしくは(2'):
上記式(2)及び(2')中、Rは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基(−O−X1、この際、X1は、炭素原子数6〜30のアリール基を表わす)、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2または−OC(=O)X2、この際、X2は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3)2、この際、X3は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4、この際、X4は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、または−COO(X5O)p−X6[この際、X5は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;pは、1〜5の整数である]を表わし;kは、0〜5の整数であり、lは0〜7の整数である、
で示される置換基(a)であり、
この際、Z1〜Z12のうち、7〜12個は、それぞれ独立して、置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基であり、
Z13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2'または−OC(=O)X2'、この際、X2'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3')2、この際、X3'は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4'、この際、X4'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、−COO(X5'O)q−X6'[この際、X5'は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6'は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;qは、1〜5の整数である]、または下記式(3)もしくは(3'):
で示される置換基(a)であり、
この際、Z1〜Z12のうち、7〜12個は、それぞれ独立して、置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基であり、
Z13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2'または−OC(=O)X2'、この際、X2'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3')2、この際、X3'は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4'、この際、X4'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、−COO(X5'O)q−X6'[この際、X5'は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6'は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;qは、1〜5の整数である]、または下記式(3)もしくは(3'):
上記式(3)及び(3')中、R'は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基(−O−X1"、この際、X1"は、炭素原子数6〜30のアリール基を表わす)、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2"または−OC(=O)X2"、この際、X2"は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3")2、この際、X3"は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4"、この際、X4"は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、または−COO(X5"O)r−X6"[この際、X5"は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6"は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;rは、1〜5の整数である]を表わし;mは、0〜5の整数であり、nは0〜7の整数である、
で示される置換基(b)であり、
Mは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物である;または、
Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基のうち、少なくとも一組が−Q1−Ar−Q2−(この際、Q1、Q2はそれぞれ独立して、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表し、Arは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の、o−フェニレン基、o−ナフチレン基、またはo−アントリレン基を表す)を表し、
この際、Z1〜Z12のうち、5〜10個は、それぞれ独立して、上記式(2)もしくは(2')で表される上記置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基であり、
Z13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2'または−OC(=O)X2'、この際、X2'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3')2、この際、X3'は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4'、この際、X4'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、−COO(X5'O)q−X6'[この際、X5'は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6'は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;qは、1〜5の整数である]、または上記式(3)もしくは(3')で表される上記置換基(b)であり、
Mは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物である;
で示されるフタロシアニン化合物によって達成される。
で示される置換基(b)であり、
Mは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物である;または、
Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基のうち、少なくとも一組が−Q1−Ar−Q2−(この際、Q1、Q2はそれぞれ独立して、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表し、Arは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の、o−フェニレン基、o−ナフチレン基、またはo−アントリレン基を表す)を表し、
この際、Z1〜Z12のうち、5〜10個は、それぞれ独立して、上記式(2)もしくは(2')で表される上記置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基であり、
Z13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2'または−OC(=O)X2'、この際、X2'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3')2、この際、X3'は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4'、この際、X4'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、−COO(X5'O)q−X6'[この際、X5'は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6'は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;qは、1〜5の整数である]、または上記式(3)もしくは(3')で表される上記置換基(b)であり、
Mは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物である;
で示されるフタロシアニン化合物によって達成される。
本発明のフタロシアニン化合物、およびフタロシアニン化合物の混合物は、優れた熱線吸収能、特に優れた熱線吸収能(低い日射透過率)および透明性(高い可視光透過率)を有する。ゆえに、本発明のフタロシアニン化合物、またはフタロシアニン化合物の混合物を含む熱線吸収材は、優れた熱線吸収能および透明性を発揮できるため、乗り物(例えば、自動車、バス、電車等)や建物の熱線吸収合わせガラス、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、熱線反射ガラスなどに好適に使用できる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の構成要件及び実施の形態等について以下に詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。
本発明の第一は、上記式(1)で示されるフタロシアニン化合物に関する。なお、上記式(1)で示される化合物は、本明細書では、上記式(1)で示されるフタロシアニン化合物を、単に「フタロシアニン化合物」あるいは「本発明に係るフタロシアニン化合物」とも称する。また、本明細書中、上記式(1)における、Z2、Z3、Z6、Z7、Z10及びZ11の置換基を単に「β位の置換基」とも称する、またはZ2、Z3、Z6、Z7、Z10及びZ11を総称して「β位」とも称する。同様にして、上記式(1)中、Z1、Z4、Z5、Z8、Z9及びZ12の置換基を単に「α位の置換基」とも称する、またはZ1、Z4、Z5、Z8、Z9及びZ12を総称して「α位」とも称する。
また、本明細書中、便宜上、上記式(1)における、Z15およびZ16の置換基を単に「β位の置換基」とも称する、またはZ15およびZ16を総称して「β位」とも称する。同様にして、Z13及びZ18の置換基を便宜上、「α1位の置換基」とも称する、または、Z13及びZ18を総称して「α1位」とも称する。さらに同様に、Z14及びZ17の置換基を便宜上、「α2位の置換基」とも称する、または、Z14及びZ17を総称して「α2位」とも称する。
本発明の式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、フタロシアニン骨格の一部がナフタレン構造に導入された構造を有する。
本発明のフタロシアニン化合物の第一形態では、フタロシアニン骨格上の置換基のうち、7〜12個が式(2)もしくは(2')で表される置換基(a)である。または、本発明のフタロシアニン化合物の第二形態では、フタロシアニン骨格上の置換基のうち、隣接する二つの置換基の少なくとも一組が−Q1−Ar−Q2−(すなわち、酸素原子および/または硫黄原子、ならびにアリーレン基)を介して架橋しており、置換基の5〜10個が式(2)もしくは(2')で表される置換基(a)である。これにより、得られるフタロシアニン化合物は、可視光透過率は高く維持したまま、日射透過率をより低減できることが判明した。このように本発明のフタロシアニン化合物が高い可視光透過率及び低い日射透過率を示す理由は不明であるが、下記のように推測される。なお、本発明は、下記推測に限定されない。すなわち、本発明のフタロシアニン化合物は、フタロシアニン骨格においてナフタレン構造を有することに起因して、共役系が拡張する。また、アリールオキシ基を7〜12個、もしくはフタロシアニン骨格上の置換基が−Q1−Ar−Q2−で架橋された場合には、アリールオキシ基を5〜10個有しているため、これらの立体障害により、近傍の置換基(例えば、フェノキシ基がα位に置換基として存在する場合には、隣接β位のフェノキシ基や近傍α位のフェノキシ基)は衝突を回避するために角度をもって重なり合う(例えば、一方はフタロシアニン化合物面に対して平行に配置し、他方はフタロシアニン化合物面に対して垂直に配置するなど)。このため、フタロシアニン化合物全体としてみると、平面部分が大きくなり、共役系が拡張する。
また、特に、中心金属をバナジウム化合物、スズ化合物、銅化合物またはガリウム化合物とし、嵩高い置換基である置換または無置換のフェノキシ基とを組み合わせることにより、フタロシアニン化合物構造は歪の大きい構造となり、共役系がより拡張する。
このように、本発明のフタロシアニン化合物は、式(1)の構造を有することによって共役系が拡張する結果、吸収波長が長波長化するため、得られるフタロシアニン化合物は高い可視光透過性を発揮すると共に、熱線の吸収能が高くなる。より具体的には、フタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)が長波長化し、最大吸収波長(λmax)が、750nmを超えて900nm以下、好ましくは、760〜860nm、特に765〜850nmの波長域に存在する。このため、本発明のフタロシアニン化合物を含む熱線吸収材は、750nmを超えて900nm以下、好ましくは、760〜860nm、特に765〜850nmの波長域の光を選択的に吸収することができ、熱線吸収能に優れる。
また、このような構造を有する本発明のフタロシアニン化合物は、可視光波長域の内、特に500〜600nmでの透過率が高い。また最大吸収波長(λmax)が、750nmを超えて900nm以下の波長域に存在する。JIS R3106(1998)の可視光透過率の算出において、500〜650nmの重価係数は大きく、700〜780nmの重価係数は小さいため、本発明のフタロシアニン化合物の可視光透過率(Tv)は高い。このため、本発明のフタロシアニン化合物を用いた熱線吸収材は、非常に透明性に優れるため、建物や自動車の窓などの熱線吸収ガラスに使用されても、十分な視認性を確保できる。
加えて、本発明のフタロシアニン化合物は、溶媒溶解性や樹脂との相溶性に優れ、耐熱性、耐光性、耐候性等の諸特性に優れる。このため、プラスチックフィルムなどへの成型性に優れ、工業的に大面積への塗布(大量生産)が可能であると共に、また、窓などの熱線吸収ガラスに使用されても、耐久性に優れる。
したがって、本発明の式(1)で表されるフタロシアニン化合物、およびフタロシアニン化合物の混合物は、優れた熱線吸収能、特に優れた熱線吸収能および透明性を有する。ゆえに、本発明の式(1)で表されるフタロシアニン化合物、またはフタロシアニン化合物の混合物を含む熱線吸収材は、優れた熱線吸収能および透明性を発揮できるため、乗り物(例えば、自動車、バス、電車等)や建物の熱線吸収合わせガラス、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、熱線反射ガラスなどに好適に使用できる。
本発明のフタロシアニン化合物は、下記式(1):
で示される。
以下で詳説するように、本発明のフタロシアニン化合物は、Z1〜Z18の種類によって、第一形態および第二形態に大別されるが、いずれの形態においても、上記式(1)中、中心金属を表すMは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物であり、好ましくは、バナジル(VO)、スズ化合物(Sn(L)2、この際、Lは、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メトキシ基、エトキシ基またはアセトキシ基である)、銅(Cu)またはガリウム化合物(Ga(L)、この際、Lは上記と同様である)である。中心金属を上記金属とすることによって、フタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)が、750nmを超えて900nm以下、好ましくは、760〜860nm、特に好ましくは765〜850nmに存在できる。ゆえに、本発明のフタロシアニン化合物は、上記した特定の波長域の光を選択的に吸収することができる。このため、本発明のフタロシアニン化合物を含む熱線吸収材は優れた熱線吸収性(熱線遮蔽性)を発揮できる。Mは、バナジル(VO)、スズのハロゲン化物、銅(Cu)、ガリウムのハロゲン化物であることが好ましく、バナジル、塩化スズ(SnCl2)、臭化スズ(SnBr2)、ヨウ化スズ(SnI2)、銅、塩化ガリウム(GaCl)、臭化ガリウム(GaBr)、ヨウ化ガリウム(GaI)であることがより好ましく、バナジル、塩化スズ、銅、塩化ガリウムであることが特に好ましい。
本発明のフタロシアニン化合物の第一形態は、上記式(1)において、Z1〜Z12が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または下記式(2)もしくは(2'):
で示される置換基(a)(以下、単に「置換基(a)」とも称する)であり、Z1〜Z12のうち、7〜12個は、置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基である。
また、本発明のフタロシアニン化合物の第二形態は、上記式(1)において、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基のうち、少なくとも一組が−Q1−Ar−Q2−(この際、Q1、Q2はそれぞれ独立して、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表し、Arは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の、o−フェニレン基、o−ナフチレン基、またはo−アントリレン基を表す)であり、Z1〜Z12のうち、5〜10個は、上記置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基である。
なお、本明細書中、「置換もしくは(または)非置換の」における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数4〜10のヘテロアリール基等が挙げられる。
また、本発明のフタロシアニン化合物の第一形態および第二形態において、Z13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2'または−OC(=O)X2'、この際、X2'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3')2、この際、X3'は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4'、この際、X4'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、−COO(X5'O)q−X6'[この際、X5'は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6'は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;qは、1〜5の整数である]、または下記式(3)もしくは(3'):
で示される置換基(b)(以下、単に「置換基(b)」とも称する)である。ここで、Z1〜Z12およびZ13〜Z18は、それぞれ同一であってもあるいは異なるものであってもよい。このように、フタロシアニン骨格の一部にナフタレン構造を有し、上記置換基を有することによって、可視光波長域の内、特に500〜600nmでの透過率を高めることができる。このため、フタロシアニン化合物を含む熱線吸収材は、優れた透明性を発揮できる。また、このような基本骨格および置換基の配置をとることによって、フタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)が、750nmを超えて900nm以下に存在できる。ゆえに、本発明のフタロシアニン化合物は、上記した特定の波長域の光を選択的に吸収することができ、優れた熱線遮蔽効果を発揮できる。また、このような置換基を有するフタロシアニン化合物は、耐熱性、耐光性、耐候性に優れるため、建物や自動車などの熱線吸収材に使用されても、優れた耐久性を発揮する。
さらに本発明のフタロシアニン化合物の第一形態において、Z1〜Z12のうち、9〜12個は、それぞれ独立して、置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基であると好ましい。かような構造とすることにより、フタロシアニン化合物の共役系がより拡張し、熱線遮蔽効果をさらに高めることができる。
また、本発明のフタロシアニン化合物の第二形態において、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基のうち、二組以上が−Q1−Ar−Q2−であり、Z1〜Z12のうち、6〜8個は、上記置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基であると好ましい。かような構造とすることにより、フタロシアニン化合物の共役系がより拡張し、熱線遮蔽効果をさらに高めることができる。
本発明において、Z1〜Z12への置換基(a)の導入位置や種類は、均一であっても不均一であってもよいが、置換基(a)がα位またはβ位に均一に導入されることが好ましい。このため、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12を含む各構成単位を、それぞれ、構成単位A、BおよびCとすると、各構成単位A、BおよびCは、それぞれ、同じ組み合わせの置換基(a)で構成されることが好ましい。
また、Z13〜Z18への置換基(b)の導入位置や種類もまた、均一であっても不均一であってもよいが、置換基(b)がα1位、α2位またはβ位にそれぞれ均一に導入されることが好ましい。
上記式(1)において、フタロシアニン骨格上に置換されたZ1〜Z12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または上記式(2)で表される置換基(a)である。
Z1〜Z12に置換されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、耐熱性、耐久性等を考慮すると、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
Z1〜Z12に置換される炭素原子数1〜20のアルキル基としては、特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、2−テトラオクチル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ヘプタデシル基、1−オクチルノニル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基などの直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の環状のアルキル基などが挙げられる。これらのうち、最大吸収波長の特定波長領域における存在や耐久性等を考慮すると、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
Z1〜Z12に置換される炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、特に制限はないが、炭素原子数1〜20の直鎖または分岐鎖アルコキシ基が挙げられる。より具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、1−イソプロピルプロポキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−ヘキシルデシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、最大吸収波長の特定波長領域における存在や耐久性等を考慮すると、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐のアルコキシ基、特にメトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
Z1〜Z12に置換され、上記式(2)もしくは(2')によって示される置換基(a)のRは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基(−O−X1、この際、X1は、炭素原子数6〜30のアリール基を表わす)、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2または−OC(=O)X2、この際、X2は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3)2、この際、X3は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4、この際、X4は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、または−COO(X5O)p−X6[この際、X5は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;pは、1〜5の整数である]を表わす。ここで、Rが同一のフェノキシ基もしくはナフタロキシ基中に複数存在する(nが2〜5の整数である)場合に、各Rは、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。なお、「ナフタロキシ基」とは、ナフタレン環に酸素原子(−O−)が置換したものを意味する。
これらのうち、透明性や溶解性などを考慮すると、Rは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数2〜21のエステル基であることが好ましい。また、上記波長域での選択的な吸収性[最大吸収波長(λmax)の上記特定波長域での存在]を考慮すると、Rは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数2〜9のエステル基(−C(=O)OX2または−OC(=O)X2、この際、X2は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表わす)であることが好ましい。
耐久性を考慮すると、Rは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数2〜21のエステル基、−COO(X5O)p−X6であることが好ましい。
これらの置換基をフェノキシ基もしくはナフタロキシ基に導入すると、この導入による共役系の拡張により、フタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)を長波長域にシフトできる。また、分子内における電子的な安定性が増す。このため、熱線吸収材に媒体を使用した場合であっても、媒体からの攻撃を受けにくく、フタロシアニン化合物の紫外線による分解を有効に抑制・防止できる。このため、このようなフタロシアニン化合物を用いた熱線吸収材は耐光性に優れる。
上記効果は、置換基(a)が、各構成単位中に同数でかつ異なる軸で共存すると、より顕著に発揮できる。かような傾向は、特に上記第一形態において顕著である。このため、置換基(a)は、それぞれ、α位およびβ位に1個超〜2個、より好ましくは、2個ずつ導入されることが好ましい。なお、上記は、推測であり、本発明を限定するものではない。
また、上記式(2)において、kは、0〜5の整数であり、上記式(2')において、lは、0〜7の整数であり、特に制限されないが、kは0〜3の整数、lは0〜3の整数であると好ましい。上記式(2)において、Rのフェノキシ基への結合位置もまた特に制限されない。例えば、kが1である場合には、特定波長域への選択的な吸収、溶解性などを考慮すると、2位、4位が好ましく、2位がより好ましい。kが2である場合には、可視光透過率などを考慮すると、2,5位、2,6位、2,4位が好ましく、2,5位、2,6位がより好ましい。
上記式(2')において、フタロシアニン骨格に結合する酸素原子(−O−)及びRは、ナフタレン環のいずれの水素原子と置換されても良い。式(2')において、フタロシアニン骨格に結合する酸素原子(−O−)のナフタレン環への結合位置は、特に制限されず、1−ナフトールまたは2−ナフトール由来のいずれでもよい。好ましくは、2−ナフトール由来である。同様にRのナフタレン環への結合位置は、特に制限されない。ここでRが酸素原子と隣接する場合には、吸収波長域が長波長化したり溶解性が向上する傾向にあるため、好ましい。1−ナフトール由来である場合には、Rが2,3,7,8位であることが好ましく、2,8位がより好ましい。2−ナフトール由来である場合には、Rが1,3,4,8位であることが好ましく、1,3位がより好ましい。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、耐熱性、耐久性等を考慮すると、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
炭素原子数1〜20のアルキル基としては、特に制限はなく、上記と同様のアルキル基が使用できるため、ここでは詳細な説明を省略するが、最大吸収波長の特定波長領域における存在や耐久性等を考慮すると、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。これらの中でも、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましく、特に、メチル基、イソプロピル基がより好ましい。
炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基としては、特に制限はなく、炭素原子数1〜20の直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基の一部がハロゲン化されたものが挙げられる。より具体的には、クロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基、クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、ブロモプロピル基などが挙げられる。これらのうち、最大吸収波長の特定波長領域における存在や耐久性等を考慮すると、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐のハロゲン化アルキル基、特にクロロメチル基、ブロモメチル基およびトリフルオロメチル基が好ましい。
炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、特に制限はなく、上記と同様のアルコキシ基が使用できるため、ここでは詳細な説明を省略するが、最大吸収波長の特定波長領域における存在や耐久性等を考慮すると、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐のアルコキシ基、特にメトキシ基及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
炭素原子数6〜30のアリール基としては、特に制限はないが、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基が挙げられる。これらのうち、最大吸収波長の特定波長領域における存在や耐久性等を考慮すると、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
炭素原子数6〜30のアリールオキシ基としては、特に制限はなく、式:−O−X1で表される。この際、X1は、炭素原子数6〜30のアリール基を表わす。ここで、炭素原子数6〜30のアリール基は、特に制限されず、上記と同様のアリール基が使用できるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、最大吸収波長の特定波長領域における存在や耐久性等を考慮すると、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
炭素原子数2〜21のエステル基としては、特に制限はなく、式:−C(=O)OX2または−OC(=O)X2で表される。この際、X2は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす。ここで、炭素原子数1〜20のアルキル基は、特に制限されず、上記と同様のアルキル基が使用できるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、最大吸収波長の特定波長領域における存在や耐久性等を考慮すると、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基、特にメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
アミノ基としては、特に制限はなく、式:−N(X3)2で表される。この際、X3は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす。ここで、X3は、同じであっても異なるものであってもよい。また、炭素原子数1〜20のアルキル基は、特に制限されず、上記と同様のアルキル基が使用できるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、最大吸収波長の特定波長領域における存在や耐久性等を考慮すると、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基、特にメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基としては、特に制限はなく、式:−S−X4で表される。この際、X4は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす。ここで、炭素原子数1〜20のアルキル基は、特に制限されず、上記と同様のアルキル基が使用できるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、最大吸収波長の特定波長領域における存在や耐久性等を考慮すると、炭素原子数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基、特にメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
式:−COO(X5O)p−X6の置換基としては、特に制限はない。上記式中、X5は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わす。ここで、炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基がある。これらのうち、耐久性等を考慮すると、X5は、エチレン基またはプロピレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。また、pは、オキシアルキレン基(X5O)の繰り返し単位数を表わし、1〜5の整数である。耐久性等を考慮すると、pは、1〜3の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。さらに、X6は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わす。ここで、炭素原子数1〜6のアルキル基としては、特に制限されず、炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。より具体的には、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。これらのうち、耐久性や溶解性等を考慮すると、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基、特にメチル基、エチル基が好ましく、フタロシアニン化合物の結晶性などを考慮すると、メチル基がより好ましい。
本発明のフタロシアニン化合物の第一形態では、Z1〜Z12のうち、7〜12個は、上記置換基(a)である。このとき、残りの5〜0個の置換基は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基である。ここで、置換基(a)および残部は、それぞれ同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、本第一形態のフタロシアニン化合物では、Z1〜Z12のうち、9〜12個が上記置換基(a)であると好ましく、さらに、12個すべてが置換基(a)であると特に好ましい。このとき、フタロシアニン化合物の吸収波長域や、製造時のコスト等の点を考慮すると、残部がすべてハロゲン原子であると好ましい。
ここで、上記置換基(a)は、7〜12個がフタロシアニン骨格に導入される限り、Z1〜Z12のいずれの位置に配置されてもよいが、これらのうち、少なくとも1個以上の置換または無置換の2−フェニルフェノキシ基であると好ましく、さらに、置換または無置換の2−フェニルフェノキシ基は、3個以上であると好ましく、6個以上であるとより好ましい。さらに好ましくは、少なくとも、Z1、Z4、Z5、Z8、Z9及びZ12(α位)に置換または無置換の2−フェニルフェノキシ基が導入されることが好ましい。このような構造のフタロシアニン化合物では、可視光透過率をより高めることができ、当該フタロシアニン化合物を含む熱線吸収材は、優れた透明性を発揮できる。
本発明のフタロシアニン化合物の第二形態では、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基のうち、少なくとも一組が−Q1−Ar−Q2−で架橋されていると共に、Z1〜Z12のうち、5〜10個は、それぞれ独立して、上記置換基(a)である。このとき、残りの5〜0個の置換基は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基である。よって、−Q1−Ar−Q2−で架橋された置換基の上限は、3.5組である。なお、フタロシアニン化合物は、混合物の形態で存在しうるため、置換基数または置換基の組数が整数でないものも存在しうる。
ここで、置換基(a)および残部は、それぞれ同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、本第二形態のフタロシアニン化合物では、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12のそれぞれにおいて少なくとも一組が架橋されていると好ましい。すなわち、Z1〜Z12において、隣接する二つの置換基の三組以上が−Q1−Ar−Q2−で架橋されていると好ましい。このとき、Z1〜Z12のうち、5〜6個が上記置換基(a)であると好ましく、さらに、残部である6個すべてが置換基(a)であると特に好ましい。
ここで、上記置換基(a)は、5〜10個がフタロシアニン骨格に導入される限り、Z1〜Z12のいずれの位置に配置されてもよいが、これらのうち、少なくとも1個以上の置換または無置換の2−フェニルフェノキシ基であると好ましく、さらに、置換または無置換の2−フェニルフェノキシ基は、3個以上であると好ましく、6個以上であるとより好ましい。さらに好ましくは、少なくとも、Z1、Z4、Z5、Z8、Z9及びZ12(α位)に置換または無置換の2−フェニルフェノキシ基が導入されることが好ましい。このような構造のフタロシアニン化合物では、可視光透過率をより高めることができ、当該フタロシアニン化合物を含む熱線吸収材は、優れた透明性を発揮できる。
さらに、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基を架橋する−Q1−Ar−Q2−において、Q1およびQ2は、いずれかが酸素原子(−O−)であると好ましく、であるとより好ましい。さらにまた、−Q1−Ar−Q2−において、Arは、置換もしくは非置換の、o−フェニレン基、o−ナフチレン基であると好ましく、o−フェニレン基であると特に好ましい。
第一形態および第二形態のフタロシアニン化合物について、上記式(1)中、ナフタレン構造上に置換されたZ13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2'または−OC(=O)X2'、この際、X2'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3')2、この際、X3'は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4'、この際、X4'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、−COO(X5'O)q−X6'[この際、X5'は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6'は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;qは、1〜5の整数である]、または上記式(3)もしくは(3')で表される置換基(b)である。
Z13〜Z18に置換されるハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数2〜21のエステル基、アミノ基、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基、または−COO(X5'O)q−X6'、は、上記と同様のものが使用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、Z13〜Z18は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
Z13〜Z18に置換される置換基(b)のR'は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基(−O−X1"、この際、X1"は、炭素原子数6〜30のアリール基を表わす)、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2"または−OC(=O)X2"、この際、X2"は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3")2、この際、X3"は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4"、この際、X4"は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、または−COO(X5"O)r−X6"[この際、X5"は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6"は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;rは、1〜5の整数である]を表わす。
また、上記式(3)において、mは0〜5の整数であり、上記式(3')において、nは、0〜7の整数であり、特に制限されない。mは0〜3の整数、nは0〜3の整数であると好ましい。ここで、R'が同一のアリールオキシ基中に複数存在する場合に、各R'は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。置換基(b)のR'は、上記Rと同様のものが使用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
最大吸収波長の特定波長領域における存在、耐久性や吸収帯の幅を広げさせるという観点から、Z13〜Z18は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、アミノ基(−N(R3')2、この際、R3'は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基、置換基(b)であると好ましく、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、アミノ基(−N(R3')2、この際、R3'は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜8のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜8のチオアルコキシ基、置換基(b)であるとより好ましい。
したがって、本発明に係るフタロシアニン化合物の好ましい例としては、下記化合物がある。なお、本明細書において、3,6位は、フタロシアニン核のα位(Z1、Z4、Z5、Z8、Z9、Z12の置換位置)に置換したものであり、4,5位はフタロシアニン核のβ位(Z2、Z3、Z6、Z7、Z10、Z11の置換位置)に置換したものである。なお、以下において、それぞれのフタロシアニン化合物について化学式は一種類を記載するが、一つのベンゼン環上にある二か所のα位(またはβ位)にそれぞれ異なる置換基が置換した場合(たとえば、フタロシアニン化合物(3)の場合)、ナフタレン環に近い側のα位(またはβ位)と、遠い側のα位(またはβ位)の置換基が、互いに入れ替わったものであってもよい。
また、フタロシアニン化合物の略称において、Phはフェニル基を示し、Pcはフタロシアニン核、Npはナフタレン環を表わし、先にベンゼン環上のβ位に置換する置換基および数を記載し、その後にα位に置換する置換基および数を記載する。さらに、−Q1−Ar−Q2−のうち、α位およびβ位を架橋するものがある場合は、β位の置換基、−Q1−Ar−Q2−、α位の置換基の順に記載する。Pcの直前は中心金属を示す。なお、ナフタレン環はフタロシアニン核の一部を占めるものであり、厳密にはフタロシアニン核にナフタレン環が別途結合したものではないが、ナフタレン環が含まれていることを示すために、便宜上、中心金属の直前にNpとして記載する。
以下、式(1)で表される好ましいフタロシアニン化合物の略称を記載する。
本発明のフタロシアニン化合物の製造方法は、特に制限されず、例えば、特開2000−26748号公報、特開2001−106689号公報、特開2005−220060号公報に記載の方法などの従来公知の方法を適宜修飾して適用することができる。すなわち、本発明のフタロシアニン化合物の製造方法は、溶融状態または有機溶媒中で、フタロニトリル化合物、2,3−ジシアノナフタレン誘導体(ナフタロニトリル化合物)および金属化合物を環化反応させる方法が好ましく使用できる。以下、本発明のフタロシアニン化合物の好ましい製造方法を記載する。
すなわち、本発明の第二は、
下記式(4):
下記式(4):
で示されるフタロニトリル化合物(A)と、
下記式(5):
下記式(5):
で示されるフタロニトリル化合物(B)と、
下記式(6):
下記式(6):
で示されるフタロニトリル化合物(C)と、
下記式(7):
下記式(7):
で示されるナフタロニトリル化合物(D;ジシアノナフタレン誘導体)と、
金属、金属酸化物、金属アルコキシド、金属カルボニル、金属ハロゲン化物または有機酸金属(例えば、バナジルの場合には、酸化バナジウム、三塩化バナジウム等のバナジウムのハロゲン化物、カルボニルバナジウム、またはバナジウムの有機酸/塩;スズの場合には、塩化第一スズ、塩化第二スズ等のスズのハロゲン化物、スズメトキシド、スズエトキシド等のスズアルコキシド、二酢酸スズ、四酢酸スズ等の有機酸スズ;銅の場合には、塩化第一銅(I)、塩化第二銅(II)等のハロゲン化物;ガリウムの場合には、塩化ガリウム(III)、臭化ガリウム(III)、ヨウ化ガリウム(III)等のガリウムのハロゲン化物)(本明細書中では、一括して「金属化合物」とも称する)と、の環化反応によって得られる、フタロシアニン化合物の混合物である。
金属、金属酸化物、金属アルコキシド、金属カルボニル、金属ハロゲン化物または有機酸金属(例えば、バナジルの場合には、酸化バナジウム、三塩化バナジウム等のバナジウムのハロゲン化物、カルボニルバナジウム、またはバナジウムの有機酸/塩;スズの場合には、塩化第一スズ、塩化第二スズ等のスズのハロゲン化物、スズメトキシド、スズエトキシド等のスズアルコキシド、二酢酸スズ、四酢酸スズ等の有機酸スズ;銅の場合には、塩化第一銅(I)、塩化第二銅(II)等のハロゲン化物;ガリウムの場合には、塩化ガリウム(III)、臭化ガリウム(III)、ヨウ化ガリウム(III)等のガリウムのハロゲン化物)(本明細書中では、一括して「金属化合物」とも称する)と、の環化反応によって得られる、フタロシアニン化合物の混合物である。
上記式(4)〜(6)は、それぞれ同一であっても、または異なっていてもよい。
上記第一形態のフタロシアニン化合物を製造する場合、式中、Z1〜Z4、Z5〜Z8およびZ9〜Z12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または下記式(8)もしくは(8'):
で示される置換基(a)であり、Z1〜Z12のうち、7〜12個は、置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基である。また、上記第二形態のフタロシアニン化合物を製造する場合、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基のうち、少なくとも一組が−Q1−Ar−Q2−(この際、Q1、Q2、Arは、上記式(1)と同様である)を表し、この際、Z1〜Z12のうち、5〜10個は、それぞれ独立して、置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基である。
なお、上記式(4)〜(6)中のZ1〜Z12は、上記式(1)中のZ1〜Z12と同様であるため、その説明を省略する。また、上記式(8)および(8')中のR、kおよびlは、上記式(2)および(2')のR、kおよびlとそれぞれ同様であるため、その説明を省略する。
また、上記第一形態および第二形態のフタロシアニン化合物を製造する場合において、上記式(7)中、Z13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜21のエステル基、アミノ基、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基、−COO(X5'O)q−X6'、または下記式(9)もしくは(9'):
で示される置換基(b)である。なお、上記式(7)中のZ13〜Z18は、上記式(1)中のZ13〜Z18と同様であるため、その説明を省略する。また、上記式(9)および(9')中のR'、mおよびnは、上記式(3)および(3')のR'、mおよびnとそれぞれ同様であるため、その説明を省略する。
ここで、出発原料である式(4)〜(6)のフタロニトリル化合物は、特開昭64−45474号公報に開示されている方法などの、従来既知の方法により合成でき、また、市販品を用いることもできるが、好ましくは、ハロゲン化フタロニトリル誘導体を、A1−L2(この際、A1は炭素原子数1〜20のアルキル基を表わし;L2は、ヒドロキシル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である)および/または下記式(10)もしくは(10'):
の化合物と、反応させることによって得られる。上記A1−L2において、A1によって示されるアルキル基は、上記式(1)中の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、上記式(10)および(10')中、R、k及びlは、上記式(2)および(2')の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。ここで、ハロゲン化フタロニトリル誘導体としては、以下に制限されないが、テトラフルオロフタロニトリル、テトラクロロフタロニトリル等が挙げられる。これらのうち、テトラフルオロフタロニトリルが好ましく使用される。テトラフルオロフタロニトリルを出発原料として使用する場合には、A1−L2または上記式(10)もしくは(10')の化合物が、テトラフルオロフタロニトリルの4,5位のフッ素原子と優先的に反応する。このため、テトラフルオロフタロニトリルを出発原料として使用することにより、上述した置換基が、フタロシアニン骨格のβ位に選択的に導入できる。このため、得られるフタロシアニン化合物は、置換基が均一に導入される構造をとりやすい。また、2種以上の置換基をフタロシアニン骨格に導入する場合には、ハロゲン化フタロニトリル誘導体(好ましくはテトラフルオロフタロニトリル)を、まず、β位に導入するための置換基を有するA1−L2または式(10)もしくは(10')の化合物と反応させた後、α位に導入するための置換基を有するA1−L2または式(10)もしくは(10')の化合物と反応させることによって、所望のフタロニトリル化合物を製造できる。
また、上記第二形態のフタロシアニン化合物の製造のために用いられる、少なくとも一組の置換基が−Q1−Ar−Q2−で架橋された式(4)〜(6)のフタロニトリル化合物は、特開2009−242791号公報、特開2011−12167号公報に開示されている方法などの、従来既知の方法により合成できる。
また、出発原料である式(7)のナフタロニトリル化合物(2,3−ジシアノナフタレン誘導体)は、特開2009−132623号公報に開示されている方法や、上述のフタロニトリル化合物と同様のハロゲン置換反応等の従来既知の方法により合成でき、また、市販品を用いることもできる。
また、上記態様において、環化反応は、無溶媒中でも行なえるが、有機溶媒を使用して行なうのが好ましい。有機溶媒は、出発原料としてのフタロニトリル化合物およびナフタロニトリル化合物との反応性の低い、好ましくは反応性を示さない不活性な溶媒であればいずれでもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、o−クロロトルエン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、エチレングリコール、およびベンゾニトリル等の不活性溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、1−オクタノール等のアルコール;ならびにピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、1−オクタノール、ベンゾニトリルが、より好ましくは、1−オクタノール、ジクロロベンゼン、ベンゾニトリルが使用される。これらの溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。有機溶媒を使用する際の有機溶媒の使用量は、特に制限されないが、式(4)〜(6)のフタロニトリル化合物の濃度が、式(4)〜(6)のフタロニトリル化合物の総量で、通常、2〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは30〜68重量%となるような量である。
式(4)〜(6)のフタロニトリル化合物、式(7)で示されるジシアノナフタレン誘導体および金属化合物との反応条件は、当該反応が進行する条件であれば特に制限されるものではない。例えば、反応温度は、通常、100〜240℃、好ましくは130〜200℃である。反応時間も特に制限はないが、1〜72時間、好ましくは3〜48時間、更に好ましくは5〜30時間である。また、金属化合物を式(4)〜(6)のフタロニトリル化合物の総量3モルに対して、好ましくは0.9〜2モル、より好ましくは1〜1.9モル、更に好ましくは1.1〜1.8モルの範囲で仕込む。また、置換または無置換のジシアノナフタレン誘導体は式(4)〜(6)のフタロニトリル化合物の総量3モルに対して、0.3〜3モル、より好ましくは0.5〜2、更に好ましくは0.6〜1.5モル、特に好ましくは0.7〜1.3の範囲で仕込む。
また、上記反応は、大気雰囲気中で行なってもよいが、金属化合物の種類により、不活性ガスまたは酸素含有ガス雰囲気(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、または酸素/窒素混合ガスなどの流通下)で、行なわれることが好ましい。
上記環化反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、ろ過、洗浄、乾燥を行なってもよい。このような操作により、フタロシアニン化合物を効率よく得ることができる。
上記方法によって本発明のフタロシアニン化合物を合成した場合、ナフタロニトリル化合物が反応しないで、フタロニトリル化合物のみで環化したフタロシアニン化合物(以下、式(1)のフタロシアニン化合物と区別するため、「ナフタレン環を含まないフタロシアニン化合物」と称することもある)や、ごく微量ではあるが、ナフタレン環が2個以上導入されたフタロシアニン化合物も副生成物として得ることができる(これらを総称して「副生成物」と称することもある)。換言すると、上記方法によってフタロシアニン化合物を合成することにより、本発明の式(1)のフタロシアニン化合物と、上記副生成物とを含む混合物が得られる。したがって、式(1)のフタロシアニン化合物を単独で得る場合、カラムや晶析等により、式(1)のフタロシアニン化合物と、副生成物であるフタロシアニン化合物とを分離する操作を行ってもよい。特に、カラムを用いることにより式(1)のフタロシアニン化合物を容易に得ることができるので好ましい。
上記ナフタレン環を含まないフタロシアニン化合物は、下記式(I)で示される。
上記式(I)において、中心金属を表すM'は、上記式(1)のMと同様に、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物(好ましくは、バナジル(VO)、スズ化合物(Sn(L)2、この際、Lは、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メトキシ基、エトキシ基またはアセトキシ基である)、銅(Cu)またはガリウム化合物(Ga(L)、この際、Lは上記と同様である))である。また、Z1'〜Z16'が示す置換基は、上記式(1)のZ1〜Z12が示す置換基とそれぞれ同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
上記式(I)のフタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)は、750nmを超えて850nm以下、好ましくは、760〜810nm、特に765〜800nmの範囲にあると好ましい。
上記方法によって製造される本発明のフタロシアニン化合物および上記副生成物を含む混合物(本明細書中、単に「フタロシアニン化合物の混合物」または「混合物」とも称することがある)は、日射透過率(Te)が低い。これは、以下のように考察される。すなわち、式(1)のフタロシアニン化合物と、上記の副生成物は、それぞれ異なる最大吸収波長(λmax)を有しており、上記式(1)のフタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)は、750nmを超えて900nm以下、好ましくは、760〜860nm、特に765〜850nmの範囲にあると好ましく、また、ナフタレン環を含まないフタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)は、750nmを超えて850nm以下、好ましくは、760〜810nm、特に765〜800nmの範囲にあると好ましい。吸収波長が互いに異なる化合物を含むことで、これらの吸収帯の重ね合わせによって、混合物の吸収スペクトルの吸収帯の幅が広くなる。したがって、本発明のフタロシアニン化合物の混合物は、極めて高い熱線吸収効果を発現することができると推測される。
また、本発明に係る上記式(1)のフタロシアニン化合物または上記方法によって製造されるフタロシアニン化合物の混合物は、上記波長域の光を選択的に吸収できるため、フタロシアニン化合物または混合物を含む熱線吸収材は、熱線吸収/遮蔽効果に非常に優れる。なお、本明細書において、フタロシアニン化合物の「最大吸収波長(λmax)(nm)」は、下記実施例の方法に従って測定した値を意味する。
本発明に係るフタロシアニン化合物および混合物は、熱線吸収(遮蔽)効果を鑑みると、可視光透過率(Tv)が高く、かつ日射透過率(Te)が低いことが好ましい。具体的には、可視光透過率(Tv)が95%のとき、日射透過率(Te)が92%以下であることが好ましく、88%以下であることがより好ましく、86%以下であることがさらに好ましく、85%以下であることがさらにより好ましく、84%以下であることが特に好ましい。また、可視光透過率(Tv)が90%のとき、86%以下であることが好ましく、83%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましく、78%以下であることがさらにより好ましく、77%以下であることがさらにより好ましく、76%以下であることが特に好ましい。なお、本明細書において、フタロシアニン化合物および混合物の「日射透過率(Te)(%)」および「可視光透過率(Tv)(%)」は、JIS R3106(1998)の規格に準じて算出したが、具体的には、下記実施例の方法に従って測定した値を意味する。
このように、本発明のフタロシアニン化合物および混合物は、低い日射透過率を維持しつつ、良好な可視光透過率を有するため、上述のような種々の分野で熱線吸収材として使用することができる。
また、本発明のフタロシアニン化合物および混合物は、上記利点に加え、樹脂との相溶性に優れ、かつ耐熱性、耐光性、耐候性に優れた特性を有し、その特性を損なうことなく熱線吸収材として優れた作用効果を奏する。
このため、本発明のフタロシアニン化合物および混合物を含む熱線吸収材は、熱線吸収能は維持しつつ非常に透明性に優れる。すなわち、本発明の第三は、本発明のフタロシアニン化合物または当該フタロシアニン化合物の混合物を含む熱線吸収材に関する。本発明の熱線吸収材は、熱線吸収能は維持しつつ非常に透明性に優れる。ゆえに、本発明の熱線吸収材は、乗り物や建物の窓などの熱線吸収合わせガラス、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、熱線反射ガラスに好適に用いることができる。例えば、自動車や建物の窓などの熱線吸収ガラスに使用すると、車内や室内の温度の上昇を有効に抑制することができる。
本発明に係る熱線吸収材は、本発明のフタロシアニン化合物および混合物が高い可視光透過率を有するため、可視光波長域での透過率、特に500〜600nmの波長域での透過率が高い。要求される可視光透過率は、用途によって異なるが、本発明の熱線吸収材は、高い熱線吸収効果を維持しつつ、良好な透明性を有している。したがって、例えば、乗り物や建物の窓などの熱線吸収合わせガラス、熱線反射ガラスなどの高い可視光透過率が要求される分野では、熱線吸収材の可視光透過率(Tv)は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上(上限:100%)である。なお、本明細書において、熱線吸収材の「可視光透過率(Tv)(%)」は、JIS R3106(1998)の規格に準じて算出される。
また、本発明に係る熱線吸収材は、熱線吸収効果を鑑みると、日射透過率(Te)が低いことが好ましい。具体的には、本発明の熱線吸収材を乗り物や建物の熱線吸収合わせガラス、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、熱線反射ガラスなどに用いる場合の実用性を考慮すると、本発明に係る熱線吸収材は、日射透過率(Te)が90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらにより好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることが特に好ましい。なお、本明細書において、熱線吸収材の「日射透過率(Te)(%)」は、JIS R3106(1998)の規格に準じて算出される。なお、日射透過率(Te)の算出においては、波長範囲300〜2500nmの数値を用いることとする。
本発明の熱線吸収材は、本発明のフタロシアニン化合物を必須に含む。このため、本発明のフタロシアニン化合物を使用する以外は、本発明の熱線吸収材は、従来と同様の熱線吸収材として適用できる。ここで、本発明に係るフタロシアニン化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。当該フタロシアニン化合物は、特に上記特定範囲の光強度の高い近赤外域の光を選択的に吸収し、可視光波長域での透過率を高くして、太陽光からの熱の吸収/遮断を効果的に行う作用効果を熱線吸収材に与えることができる。また、該フタロシアニン化合物は、耐熱性に優れることにより、凡用の熱可塑性樹脂を用いて、射出成形、押出成形等の生産性に優れた成形方法により作製することのできる、とした多くの優れた特性を発揮することができるものである。
本発明の熱線吸収材の使用形態は、特に限定されず、公知のいずれの形態を使用してもよい。具体的には、熱線を吸収/遮蔽することが好ましい対象物上に塗膜やフィルム等として別途形成される形態;2枚の対象物の間にフタロシアニン化合物含有中間層を設ける積層体などの形態;上記対象物中に含ませた形態などが挙げられる。これらのうち、本発明に係るフタロシアニン化合物を、塗膜やフィルム、ならびに中間層中に混合することが好ましい。ここで、塗膜、フィルムや中間層は、一般的に、本発明に係るフタロシアニン化合物に加えて、樹脂を含む。すなわち、本発明の熱線吸収材は、本発明に係るフタロシアニン化合物および樹脂を含む。以下、フタロシアニン化合物および樹脂を含む組成物を樹脂組成物と呼ぶ場合がある。
上記熱線吸収材におけるフタロシアニン化合物の配合量は、用途または樹脂の厚みによって適宜選択することが出来るが、樹脂の固形分100質量部に対して、0.0005〜20質量部、好ましくは0.001〜10質量部である。このような範囲で配合することにより、用途にあった適度な可視光透過率を有する熱線吸収材とすることができる。
上記樹脂としては、一般に光学材料に使用しうるものであれば特に制限されないが、透明性の高いものが好ましく、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ハロゲン化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアリレート(PAR)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。これらのうち、溶融または溶液化が可能であるものが好ましく使用される。この際、溶融が可能な樹脂を使用し、フタロシアニン化合物を練りこむことで成形加工が可能な樹脂組成物が得られる。このような樹脂として好適なものは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂(例えば、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA))、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、スミペックス(登録商標)(住友化学(株)製)、オプトレッツ(日立化成工業(株)製)が挙げられる。
また、溶液化が可能な樹脂に、フタロシアニン化合物を溶液化することで、コーティング可能な樹脂組成物とすることができる。このような樹脂として好適なものは(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン(株)製)が挙げられる。特に好ましくはメチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、脂環式、多環性脂環式アルキル基を有するメタクリル酸エステルを共重合したポリマーである。これは1種のメタクリル酸エステル単量体からなるポリマーであってもよいし、複数のメタクリル酸エステル単量体からなる共重合体であってもよい。
また、上記のメタクリル酸エステル以外の単量体と共重合したポリマーであってもよい。他の単量体としてはスチレン、メチルスチレン等の芳香族系モノマー、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する単量体等も使用できる。上記の(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体の使用量は50重量%未満、好ましくは30重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満である。具体的には、スミペックス(登録商標)(住友化学(株)製)、オプトレッツ(日立化成工業(株)製)、ハルスハイブリッドIR((株)日本触媒製)等が挙げられる。
上記樹脂の分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量が5万以上、さらに好ましくは10万以上が好ましい。ポリマー構造に制限はなく、直鎖型または分岐型であってもよいが、直鎖型よりも分岐型の方が樹脂は割れにくくなり耐久性が高くなるため好ましい。分岐構造にすると高分子量化した場合でも樹脂の粘度が低く、取り扱いが容易になる。分岐型の樹脂を得るためにはマクロモノマー、多官能モノマー、多官能開始剤、多官能連鎖移動剤が使用できる。マクロモノマーとしては、AA−6、AA−2、AS−6、AB−6、AK−5(いずれも東亜合成(株)製)等が使用できる。多官能モノマーとしては、ライトエスエルEG、ライトエスエル1,4BG、ライトエステルNP、ライトエステルTMP(いずれも共栄社化学(株)製)等が挙げられる。多官能開始剤としては、パーテトラA、BTTB−50(いずれも日本油脂(株)製)、トリゴノックス17−40MB、パーカドックス12−XL25(いずれも化薬アクゾ(株)製)等が挙げられる。多官能連鎖移動剤としてはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)(いずれも堺化学工業(株)製)等が使用できる。分岐構造の樹脂を得るためには多官能開始剤を使用するのが重合が容易で特に好ましい。分岐数が多く、マイルドな温度で反応するパーテトラA、パーカドックス12−XL25が特に好ましい。
一方、上記樹脂は、粘着剤若しくは接着剤、またはこれらの混合物であってもよい。粘着剤や接着剤を用いた場合、他の機能性フィルムと貼りあわせることができるため、簡便かつ経済的に熱線吸収材を製造することができる。
上記の粘着剤として好適な樹脂には、アクリル系、シリコン系、SBR系等が挙げられる。特に好ましくはエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等を主成分として重合したポリマーであり、具体的にはアクリセット(登録商標)AST((株)日本触媒製)等が挙げられる。Tgは−80℃以上0℃以下が好ましい。さらに、好適な粘着剤は、シクロヘキシル基、イソボルニル基等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合したアクリル系樹脂である。脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合する際の当該エステルの使用量は、特に制限されないが、樹脂のTgが−80℃以上0℃以下となるような量であることが好ましい。また、カルボキシル基等の酸性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合することも可能であるが、このような場合には、耐湿性の向上を目的として、(メタ)アクリル酸エステルの共重合量は、樹脂の酸価が好ましくは30以下、より好ましくは15以下、最も好ましくは5以下となるような量であることが好ましい。本明細書において、「酸価」とは、樹脂固形分1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg量をいう。
上記の接着剤として好適な樹脂としては、一般的なシリコン系、ウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等のポリオレフィン系が挙げられる。
熱線吸収材に含んでいてもよい溶剤としては、フタロシアニン化合物および樹脂を溶解または分散できる溶剤であれば限定されない。この際使用できる溶剤としては、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系、トルエン、キシレン等の芳香族系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、アセトニトリル等のニトリル系、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール等のアルコール系、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系、トリエチレングリコールジ−(2−エチル)ブチレート、トリエチレングリコールジ−(2−エチル)ヘキサノエート等のエーテルエステル系、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系が使用できる。これらを単独で使用しても混合して使用してもよい。色素の耐久性を向上させるためにはメチルエチルケトン、酢酸エチル等の沸点が100℃以下の溶媒が好適である。また、コーティング時の塗膜外観を向上させるためにはトルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル等沸点が100〜150℃の溶媒が好適である。塗膜の耐クラック性を向上させるにはブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の沸点が150〜200℃の溶媒が好適である。
本発明に係る樹脂組成物には上記フタロシアニン化合物に加えて、可視光吸収剤、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤(以下、一括して、「他の吸収剤」とも称する)を含んでいると好ましい。このように他の吸収剤をさらに使用することによって、本発明のフタロシアニン化合物が吸収できないまたは吸収が十分でない波長域の光を吸収できる。これらの中でも、熱線吸収効率を向上させるため、近赤外線吸収剤を含むとより好ましい。
ここで、可視光吸収剤としては、シアニン系、テトラアザポルフィリン系、アズレニウム系、スクアリリウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯塩系、ビスアゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、インダンスロン系、ニトロソ系、金属チオール錯体系、インジコ系、アゾメチン系、キサンテン系、オキサノール系、インドアニリン系、キノリン系等従来公知の色素を広く使用することができる。例えば、アデカアークルズTW−1367、アデカアークルズSG−1574、アデカアークルズTW1317、アデカアークルズFD−3351、アデカアークルズY944(いずれも(株)ADEKA製)、NK−5451、NK−5532、NK−5450(いずれも林原生物化学研究所製)等が挙げられる。可視光吸収剤は溶媒に溶解する染料であってもよいし、ヘイズが問題にならない程度に微粒化した顔料であってもよい。
また、近赤外線吸収剤としては、特に制限されず、用途によって所望される最大吸収波長によって公知の近赤外線吸収剤が適宜選択されうる。ここで、近赤外線吸収剤の最大吸収波長は、800nm以上であると好ましい。当該波長域の近赤外線吸収剤を使用することによって、本発明のフタロシアニン化合物が吸収できない、または吸収が十分でない波長域の光を吸収できるため、熱線遮蔽効果をさらに向上できる。なお、他の吸収剤としての近赤外線吸収剤は、本発明のフタロシアニン化合物とは異なる色素である。このような近赤外線吸収剤としては、特に制限されず、所望の吸収スペクトルに調整するよう適宜選択できる。より具体的には、特開2000−26748号公報、特開2001−106689号公報、特開2004−018561号公報、特開2007−56105号公報、特開2011−116918号公報等に記載されるフタロシアニン化合物を用いてなる近赤外吸収色素などが挙げられる。
また、使用されてもよい紫外線吸収剤としては、特に制限されず、公知の紫外線吸収剤が使用できる。具体的には、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系の化合物が好適に使用される。
上記他の吸収剤は単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されても良く、用途によって適宜選択することが出来る。
上記他の吸収剤の配合量は、特に制限されず、用途により要求される吸収波長域、可視光透過率および日射透過率が異なるので一概には決定することはできない。上記他の吸収剤の配合量は、樹脂の固形分100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.005〜8質量部である。また、本発明のフタロシアニン化合物との混合比もまた、特に制限されない。本発明のフタロシアニン化合物と上記他の吸収剤との混合比は、本発明のフタロシアニン化合物 100質量部に対して、1〜1000質量部が好ましく、10〜500質量部がより好ましい。この範囲であれば、可視光線の透過率に影響することなく、日射透過率を下げることができる。好ましい可視光線の透過率としては、55%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、日射透過率は65%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、55%以下が更に好ましい。
更に、熱線吸収材には、その性能を失わない範囲でイソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、UV硬化剤等の樹脂硬化剤を使用してもよい。
また、熱線吸収材にはフィルムやコーティング剤等に使用される公知の添加剤を用いることができ、該添加材としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤、つや消し剤、粘着付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定化剤、消光剤、硬化剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、滑り剤等が挙げられる。
本発明の熱線吸収材は、上記した樹脂組成物からなる塗膜が形成されたものでもよいし、上記樹脂組成物を成形したものでもよい。好ましくは(A)樹脂組成物を透明基材に塗布したもの、(B)樹脂組成物で2枚の透明基材を接着したもの、(C)樹脂組成物を成形したものが挙げられる。
本発明の熱線吸収材の厚みに制限はないが、目的、用途に応じて適宜決定される。好ましくは0.1μmから20mmである。また熱線吸収材に含まれるフタロシアニン化合物の含有量も目的、用途に応じて、適宜決定される。熱線吸収材の厚みに関係なくフタロシアニン化合物の含有量を表示するとすれば、上方からの投影面積中の質量と考えて、0.01〜2.0g/m2の配合量が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.0g/m2である。この範囲であると、可視光の透過率が高く、日射透過率は小さくなり、熱線吸収効果は高くなるので好ましい。可視光透過率は用途により異なるが、好ましくは、55%以上である。より好ましくは60%以上である。また、日射透過率は95%以下が好ましく、90%以下がより好ましい。
透明基材は一般に光学材に使用し得るものであって、実質的に透明であれば特に制限はない。具体的な例としてはガラス、シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系エステル樹脂、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、PETやPAR等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。透明基材として、ガラス等の無機基材を使用する場合にはアルカリ成分が少ないものが色素の耐久性の観点から好ましい。
透明基材として樹脂系材料を使用する場合には、樹脂に公知の添加剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防止剤等を配合することができ、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶融させてキャスティングする方法等で所望の形状に成形される。かかる透明基材は、必要に応じて延伸したり、他の樹脂と積層したりしてもよい。また、透明基材は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施してもよい。
上記樹脂組成物を透明基材に塗布する際には公知の塗工機が使用できる。例えばコンマコーター等のナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、マイクログラビアコーター等のキスコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等のロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーター、スピンコーターが挙げられる。塗布前にコロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法で基材の表面処理を行ってもよい。乾燥、硬化方法としは熱風、遠赤外線、UV硬化等公知の方法が使用できる。乾燥、硬化後は公知の保護フィルムとともに巻き取ってもよい。
樹脂組成物を塗布する場合、その塗膜の厚みに制限はないが、目的に応じて適宜決定される。好ましくは0.1μmから10mmである。
本発明の熱線吸収材がフィルム形態のときには、透明基材としてはPETフィルムが好ましく、特に易接着処理をしたPETフィルムが好適である。具体的にはコスモシャインA4300(東洋紡(株)製)、ルミラーU34(東レ(株)製)、メリネックス705(帝人デュポンフィルム(株)製)等が挙げられる。
上記したフィルム形態である場合は、熱線吸収材に使用する樹脂は粘着剤樹脂またはUV硬化樹脂が好ましい。粘着剤樹脂またはUV硬化樹脂を使用した場合、塗膜はフィルムの片面に形成してもよいし、両面に形成してもよいが、好ましくは片面に塗布する。フィルムに塗膜を形成する場合は、樹脂組成物の塗工液を透明基材上に直接塗布してもよいし、離型性のある基材上に塗布した樹脂組成物の塗膜を透明基材上に転写してもよい。また、フィルムの反対面にUV硬化性の塗膜を形成してもよい。その場合は、上記フタロシアニン化合物、UV硬化性モノマー又はオリゴマー、光重合開始剤を含む塗工液を透明基材上に塗布するのがよい。また、フィルムの反対面に粘着剤を塗布してもよい。
熱線吸収材が、上記樹脂組成物で2枚の透明基材を接着させた熱線吸収材である場合、透明基材としてはガラス、PETフィルムが好ましい。2枚のガラス基材を接着する際の樹脂組成物としては、接着性の観点から樹脂としてポリビニルブチラール樹脂を使用するものが好ましい。
熱線吸収材を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、(ア)樹脂組成物を混練、加熱成形する方法、(イ)フタロシアニン化合物と、硬化性モノマーあるいはオリゴマーおよび重合開始剤とともに型枠の中で重合し、成形する方法が利用できる。
樹脂組成物を混練、加熱成形する際の成形条件は樹脂の種類により異なるが、通常、フタロシアニン化合物を熱可塑性樹脂の粉体に溶融し混練後にペレット化してフタロシアニン化合物濃度の高いマスターバッチとする。このマスターバッチをさらに該熱可塑性樹脂で希釈、溶融、混練、成形する方法が挙げられる。
本発明の熱線吸収材に用いられる上記フタロシアニン化合物は、市販の赤外線吸収剤と比較して、耐熱性に優れているので、射出成形、押出成形のような樹脂温度が200〜350℃という高温まで上昇する成形方法でも成形することが可能であり、透明感が良好で熱線遮蔽性能に優れた成形品を得ることができる。
上記した熱可塑性樹脂としては、シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、PETやPAR等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。
また、フタロシアニン化合物と、硬化性モノマーあるいはオリゴマー、および重合開始剤とともに型枠の中で重合し成形する方法で用いられる硬化性モノマーあるいはオリゴマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド等を生成するモノマー又はオリゴマー等が挙げられる。重合開始剤はモノマーやオリゴマーに応じて好適なものが使用できる。
樹脂組成物を成形する際、上記熱線吸収材は形状に制限はなく、用途に応じて適宜形成できる。平板状、フィルム状、波板状、球面状、ドーム状等様々な形状のものが含有される。厚みは、特に制限されないが、0.05〜20mmが好ましい。このような範囲であれば、熱線吸収材として十分な強度や安全性が得られる。
本発明の熱線吸収材は、透明基材に上記樹脂組成物からなる塗膜が形成されたものでもよいし、上記樹脂組成物を成形したものでもよいが、さらに熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)が含まれていてもよい。このように熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)を使用することによって、本発明のフタロシアニン化合物による吸収能力の低い近赤外領域での熱線吸収能力を向上できる。
熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)は、フタロシアニン化合物を含む樹脂組成物中に添加して成形または塗膜を形成してもよい。また、熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)を含む透明基材を用いて本発明の熱線吸収材と複合化してもよいし、成形または塗布された熱線吸収材の表面に熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)を含む塗料を塗布してもよい。すなわち、上記熱線吸収材にさらに熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)を含むものも本発明の好ましい実施形態の1つである。また、上記熱線吸収材が800nm以上の最大吸収波長を有する近赤外吸収色素および熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)の少なくとも一方をさらに含むことが本発明の好ましい実施形態である。
上記熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)としては、熱線吸収能または紫外線吸収能を有するものが好ましい。具体的には、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、セシウムドープ酸化タングステン(CsWO3)等のアルカリ金属ドープ酸化タングステン、酸化アンチモン、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アンチモン酸亜鉛等が挙げられる。熱線吸収能を有する熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)は上記フタロシアニン化合物や有機色素では吸収することのできない波長域である900nm以上、好ましくは1100nm以上、より好ましくは1200nm以上を吸収することができ、可視光透過率を維持したまま日射透過率を下げることができる。より好ましくは、アルカリ金属ドープ酸化タングステン、酸化インジウムスズまたはアンチモンドープ酸化スズである。具体的には、アルカリ金属ドープ酸化タングステンとしては、SG−IRC90SPM(Sukgyung社製)等がある。酸化インジウムスズとしては、PI−3(三菱マテリアル(株)製)等がある。アンチモンドープ酸化スズとしては、SNS−10M、SNS−10T、SN100P、SN−100D、FS−10P、FS−10D(いずれも石原産業(株)製)等がある。金属酸化物は微粒子状であり、平均分散粒子径は0.001〜0.2μmである。好ましくは0.005〜0.15μmである。この範囲であると透明性を損なわないので好ましい。
上記熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)の配合量は、特に制限されず、用途により要求される吸収波長域、可視光透過率および日射透過率が異なるため一概には決定することができない。具体的には、熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)の配合量は、熱線吸収材中の本発明のフタロシアニン化合物100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、10〜500質量部であることがより好ましい。また、本発明のフタロシアニン化合物との混合比もまた、特に制限されない。本発明のフタロシアニン化合物と上記他の吸収剤との混合比(質量比)は、本発明のフタロシアニン化合物 100質量部に対して、20〜5000質量部であることが好ましく、50〜400質量部がより好ましい。この範囲であれば、可視光線の透過率に影響することなく、日射透過率を下げることができる。好ましい可視光線の透過率としては、55%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、日射透過率は65%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、55%以下が更に好ましい。
本発明の熱線吸収材は建築物や車輌用のウインドーフィルム、熱線吸収合わせガラス、熱線吸収樹脂グレージング、採光建材等に好適である。フィルム状の透明基材上に本発明の樹脂組成物の塗膜を形成させた熱線吸収材はウインドーフィルムとして使用できる。ウインドーフィルムは建築物の内側に貼っても外側に貼ってもよい。ウインドーフィルムとして使用する場合は上記フタロシアニン化合物を含む層の日射側に紫外線吸収層を設けることが好ましい。また、採光建材等のシート状の成形体として使用する場合は、多層押し出し方式により最外層に紫外線吸収材を添加し、内部層に本発明の熱線吸収材を使用するのが好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記において、特記しない限り、室温は、25±5℃を意味する。また、特記しない限り、「Ph」は、フェニル基を表わす。
合成例1:4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 20g、フッ化カリウム 13gおよびアセトン 20gを入れ、5℃で混合した。4−ヒドロキシ安息香酸メチル 31gとアセトン 30gで調整された混液を3時間かけて滴下し、反応温度を25℃まで昇温して、一晩攪拌した。次に、4−メトキシフェノール 25g、フッ化カリウム 13gおよびアセトン 30gを投入し、還流下で2時間撹拌を行った。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により、4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを55g(収率:82%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 20g、フッ化カリウム 13gおよびアセトン 20gを入れ、5℃で混合した。4−ヒドロキシ安息香酸メチル 31gとアセトン 30gで調整された混液を3時間かけて滴下し、反応温度を25℃まで昇温して、一晩攪拌した。次に、4−メトキシフェノール 25g、フッ化カリウム 13gおよびアセトン 30gを投入し、還流下で2時間撹拌を行った。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により、4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを55g(収率:82%)得た。
合成例2:3,4,5,6−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 30g、炭酸カリウム 91g、4−ヒドロキシ安息香酸メチル 92gおよびアセトニトリル 180gを入れ、70℃で7時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,4,5,6−テトラキス(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルを107g(収率:98%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 30g、炭酸カリウム 91g、4−ヒドロキシ安息香酸メチル 92gおよびアセトニトリル 180gを入れ、70℃で7時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,4,5,6−テトラキス(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルを107g(収率:98%)得た。
合成例3:3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−6−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 34g、フッ化カリウム 24gおよびアセトン 75gを入れ、−3℃で混合した。2,5−ジクロロフェノール 55gとアセトン 52gで調整された混液を約2時間かけて滴下し、反応温度を5℃まで昇温して、一晩攪拌した。次に、2,6−キシレノール 23g、フッ化カリウム 12gおよびアセトン 16gを投入し、40℃で一晩攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により、4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−6−フルオロフタロニトリルを37g(収率:58%)得た。
得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−6−フルオロフタロニトリル 24g、炭酸カリウム 7g、4−ヒドロキシ安息香酸メチル 6gおよびアセトニトリル 120gを混合し、70℃で6時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−6−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルを27g(収率:92%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 34g、フッ化カリウム 24gおよびアセトン 75gを入れ、−3℃で混合した。2,5−ジクロロフェノール 55gとアセトン 52gで調整された混液を約2時間かけて滴下し、反応温度を5℃まで昇温して、一晩攪拌した。次に、2,6−キシレノール 23g、フッ化カリウム 12gおよびアセトン 16gを投入し、40℃で一晩攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により、4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−6−フルオロフタロニトリルを37g(収率:58%)得た。
得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−6−フルオロフタロニトリル 24g、炭酸カリウム 7g、4−ヒドロキシ安息香酸メチル 6gおよびアセトニトリル 120gを混合し、70℃で6時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−6−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルを27g(収率:92%)得た。
合成例4:3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリル
200mlのナスフラスコに、 テトラフルオロフタロニトリル 22g、フッ化カリウム 15gおよびアセトン 44gを入れ、0℃で混合した。4−フルオロフェノール 25gとアセトン 25gで調製された混液を滴下し、2時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルを22g(収率:52%)得た。
200mlのナスフラスコに、 テトラフルオロフタロニトリル 22g、フッ化カリウム 15gおよびアセトン 44gを入れ、0℃で混合した。4−フルオロフェノール 25gとアセトン 25gで調製された混液を滴下し、2時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルを22g(収率:52%)得た。
得られた3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリル 3g、炭酸カリウム 3g、2−フェニルフェノール 3gおよびアセトニトリル 9gを混合し、70℃で4時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルを5g(収率:98%)得た。
合成例5:3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリル
200mlのナスフラスコに、 テトラフルオロフタロニトリル 27g、フッ化カリウム 19gおよびアセトン 53gを入れ、5℃で混合した。ペンタフルオロフェノール 49gとアセトン 49gで調製された混液を滴下し、2時間攪拌後15℃に昇温してさらに8時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリルを49g(収率:70%)得た。
200mlのナスフラスコに、 テトラフルオロフタロニトリル 27g、フッ化カリウム 19gおよびアセトン 53gを入れ、5℃で混合した。ペンタフルオロフェノール 49gとアセトン 49gで調製された混液を滴下し、2時間攪拌後15℃に昇温してさらに8時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリルを49g(収率:70%)得た。
得られた3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリル 5g、炭酸カリウム 3g、2−メチルフェノール 2gおよびアセトニトリル 15gを混合し、60℃で5時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリルを5.7g(収率:85%)得た。
合成例6:3,6−ビス(2−イソプロピルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリル
合成例5の2−メチルフェノールを2−イソプロピルフェノールに変更した以外は同様の操作を行い、3,6−ビス(2−イソプロピルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリルを5.5g(収率:76%)得た。
合成例5の2−メチルフェノールを2−イソプロピルフェノールに変更した以外は同様の操作を行い、3,6−ビス(2−イソプロピルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリルを5.5g(収率:76%)得た。
合成例7:3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリル
合成例4の2−フェニルフェノールを2−メチルフェノールに変更した以外は同様の操作を行い、3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルを3.6g(収率:81%)得た。
合成例4の2−フェニルフェノールを2−メチルフェノールに変更した以外は同様の操作を行い、3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルを3.6g(収率:81%)得た。
合成例8:3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(2,4−ジフルオロフェノキシ)フタロニトリル
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 47g、フッ化カリウム 33gおよびアセトン 142gを入れ、0℃で混合した。2,4−ジフルオロフェノール 62gとアセトン 21gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(2,4−ジフルオロフェノキシ)フタロニトリルを49g(収率:49%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 47g、フッ化カリウム 33gおよびアセトン 142gを入れ、0℃で混合した。2,4−ジフルオロフェノール 62gとアセトン 21gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(2,4−ジフルオロフェノキシ)フタロニトリルを49g(収率:49%)得た。
得られた3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(2,4−ジフルオロフェノキシ)フタロニトリル 30g、炭酸カリウム 24g、2−フェニルフェノール 25gおよびアセトニトリル 90gを混合し、70℃で3時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(2,4−ジフルオロフェノキシ)フタロニトリルを49g(収率:94%)得た。
合成例9:3,4,5,6−テトラキス(2−メチルフェノキシ)フタロニトリル
合成例2の4−ヒドロキシ安息香酸メチルを2−メチルフェノールに変更した以外は同様の操作を行い、3,4,5,6−テトラキス(2−メチルフェノキシ)フタロニトリルを78g(収率:95%)得た。
合成例2の4−ヒドロキシ安息香酸メチルを2−メチルフェノールに変更した以外は同様の操作を行い、3,4,5,6−テトラキス(2−メチルフェノキシ)フタロニトリルを78g(収率:95%)得た。
合成例10:3,6−ビス(2−ナフトキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリル
合成例4の2−フェニルフェノールを2−ナフトールに変更した以外は同様の操作を行い、3,6−ビス(2−ナフトキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルを28g(収率:85%)得た。
合成例4の2−フェニルフェノールを2−ナフトールに変更した以外は同様の操作を行い、3,6−ビス(2−ナフトキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルを28g(収率:85%)得た。
合成例11:3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(フェノキシ)フタロニトリル
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 40g、フッ化カリウム 28gおよびアセトン 120gを入れ、0℃で混合した。フェノール 38gとアセトン 38gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(フェノキシ)フタロニトリルを40g (収率:57%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 40g、フッ化カリウム 28gおよびアセトン 120gを入れ、0℃で混合した。フェノール 38gとアセトン 38gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(フェノキシ)フタロニトリルを40g (収率:57%)得た。
得られた3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(フェノキシ)フタロニトリル 20g、炭酸カリウム 10g、2−フェニルフェノール 22gおよびメチルエチルケトン 60gを混合し、70℃で22時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(フェノキシ)フタロニトリルを35g(収率:94%)得た。
合成例12:3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(4−クロロフェノキシ)フタロニトリル
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 30g、フッ化カリウム 21gおよびアセトニトリル 120gを入れ、0℃で混合した。4−クロロフェノール 39gとアセトニトリル 39gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(4−クロロフェノキシ)フタロニトリルを36g(収率:58%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 30g、フッ化カリウム 21gおよびアセトニトリル 120gを入れ、0℃で混合した。4−クロロフェノール 39gとアセトニトリル 39gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(4−クロロフェノキシ)フタロニトリルを36g(収率:58%)得た。
得られた3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(4−クロロフェノキシ)フタロニトリル 30g、炭酸カリウム 12g、2−フェニルフェノール 27gおよびアセトニトリル 90gを混合し、70℃で22時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(4−クロロフェノキシ)フタロニトリルを47g(収率:91%)得た。
合成例13:3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 30g、フッ化カリウム 21gおよびアセトン 120gを入れ、0℃で混合した。2,5−ジクロロフェノール 50gとアセトン 50gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルを45g(収率:61%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 30g、フッ化カリウム 21gおよびアセトン 120gを入れ、0℃で混合した。2,5−ジクロロフェノール 50gとアセトン 50gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルを45g(収率:61%)得た。
得られた3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル 30g、炭酸カリウム 12g、2−フェニルフェノール 27gおよびアセトニトリル 90gを混合し、70℃で4時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルを43g(収率:89%)得た。
合成例14:3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フタロニトリル
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 30g、フッ化カリウム 21gおよびアセトニトリル 120gを入れ、0℃で混合した。3-トリフルオロメチルフェノール 49gとアセトニトリル 49gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フタロニトリルを50g (収率:69%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 30g、フッ化カリウム 21gおよびアセトニトリル 120gを入れ、0℃で混合した。3-トリフルオロメチルフェノール 49gとアセトニトリル 49gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フタロニトリルを50g (収率:69%)得た。
得られた3,6−ジフルオロ−4,5−ビス(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フタロニトリル 30g、炭酸カリウム 12g、2−フェニルフェノール 27gおよびアセトニトリル 90gを混合し、70℃で4時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フタロニトリルを39g(収率:80%)得た。
合成例15:3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリル
合成例2の4−ヒドロキシ安息香酸メチルを2−フェニルフェノールに変更した以外は同様の操作を行い、3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリルを91g(収率:76%)得た。
合成例2の4−ヒドロキシ安息香酸メチルを2−フェニルフェノールに変更した以外は同様の操作を行い、3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリルを91g(収率:76%)得た。
合成例16:3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−(4−t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリル
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 30g、炭酸カリウム 23gおよびアセトニトリル 120gを入れ、0℃で混合した。4-t-ブチルピロカテコール 25gとアセトニトリル 25gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−(4−t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリルを34g(収率:70%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 30g、炭酸カリウム 23gおよびアセトニトリル 120gを入れ、0℃で混合した。4-t-ブチルピロカテコール 25gとアセトニトリル 25gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ジフルオロ−4,5−(4−t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリルを34g(収率:70%)得た。
得られた3,6−ジフルオロ−4,5−(4−t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリル 30g、炭酸カリウム 15g、2−フェニルフェノール 34gおよびアセトニトリル 90gを混合し、70℃で22時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−(4−t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリルを46g(収率:80%)得た。
合成例17:3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(カテコキシ)フタロニトリル
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 45g、フッ化カリウム 16gおよびアセトニトリル 180gを入れ、0℃で混合した。4-クロロフェノール 29gとアセトニトリル 29gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,5,6−トリフルオロ−4−(4−クロロフェノキシ)フタロニトリルを30g(収率:43%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 45g、フッ化カリウム 16gおよびアセトニトリル 180gを入れ、0℃で混合した。4-クロロフェノール 29gとアセトニトリル 29gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,5,6−トリフルオロ−4−(4−クロロフェノキシ)フタロニトリルを30g(収率:43%)得た。
得られた3,5,6−トリフルオロ−4−(4−クロロフェノキシ)フタロニトリル 30g、炭酸カリウム 16g、カテコール 11gおよびアセトニトリル 90gを混合し、70℃で14時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により6−フルオロ−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(カテコシキ)フタロニトリルを20g(収率:54%)得た。
得られた6−フルオロ−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(カテコシキ)フタロニトリル 20g、炭酸カリウム 5g、2−フェニルフェノール 10gおよびアセトニトリル 60gを混合し、70℃で22時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(カテコキシ)フタロニトリルを10g(収率:37%)得た。
合成例18:3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリル
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 45g、フッ化カリウム 16gおよびアセトニトリル 180gを入れ、0℃で混合した。4-クロロフェノール 29gとアセトニトリル 29gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,5,6−トリフルオロ−4−(4−クロロフェノキシ)フタロニトリルを30g(収率:43%)得た。
500mlのナスフラスコに、テトラフルオロフタロニトリル 45g、フッ化カリウム 16gおよびアセトニトリル 180gを入れ、0℃で混合した。4-クロロフェノール 29gとアセトニトリル 29gで調製された混液を滴下し、4時間攪拌した。25℃に昇温後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3,5,6−トリフルオロ−4−(4−クロロフェノキシ)フタロニトリルを30g(収率:43%)得た。
得られた3,5,6−トリフルオロ−4−(4−クロロフェノキシ)フタロニトリル 30g、炭酸カリウム 16g、4-t-ブチルピロカテコール 18gおよびアセトニトリル 90gを混合し、70℃で14時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により6−フルオロ−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコシキ)フタロニトリルを25g(収率:68%)得た。
得られた6−フルオロ−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコシキ)フタロニトリル 20g、炭酸カリウム 5g、2−フェニルフェノール 9gおよびアセトニトリル 60gを混合し、70℃で22時間攪拌した。25℃に冷却後反応液を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去後、メタノールを加えて晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(カテコキシ)フタロニトリルを21g(収率:78%)得た。
実施例1:フタロシアニン化合物(1−1)[[4-(COOCH3)PhO]6[4-(OCH3)PhO]6NpVOPc]の合成
50mlの試験管に、上記合成例1で得られた4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリル 5g、2,3−ジシアノナフタレン 0.4g、塩化バナジウム(III) 0.5g、ベンゾニトリル 7.5gおよび1−オクタノール 0.4gを入れ、窒素ガス雰囲気下185℃で21時間攪拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−1)を4g(収率:79%)得た。
50mlの試験管に、上記合成例1で得られた4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリル 5g、2,3−ジシアノナフタレン 0.4g、塩化バナジウム(III) 0.5g、ベンゾニトリル 7.5gおよび1−オクタノール 0.4gを入れ、窒素ガス雰囲気下185℃で21時間攪拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−1)を4g(収率:79%)得た。
実施例2:フタロシアニン化合物(1−2)[[4-(COOCH3)PhO]6[4-(COOCH3)PhO]6NpSnCl2Pc]の合成
50mlの試験管に、上記合成例2で得られた3,4,5,6−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル 5g、2,3−ジシアノナフタレン 0.4g、塩化スズ(II) 0.5g、ベンゾニトリル 7.5gを入れ、窒素ガス雰囲気下185℃で22時間攪拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−2)を5g(収率:88%)得た。
50mlの試験管に、上記合成例2で得られた3,4,5,6−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル 5g、2,3−ジシアノナフタレン 0.4g、塩化スズ(II) 0.5g、ベンゾニトリル 7.5gを入れ、窒素ガス雰囲気下185℃で22時間攪拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−2)を5g(収率:88%)得た。
実施例3:フタロシアニン化合物(1−3)[[2,5-(Cl2)PhO]6[4-(COOCH3)PhO]3[2,6-(CH3)2PhO]3NpSnCl2Pc]の合成
実施例2の3,4,5,6−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルを、上記合成例3で得られた3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−6−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル 5gに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−3)を4.8g(収率:82%)得た。
実施例2の3,4,5,6−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルを、上記合成例3で得られた3−(2,6−ジメチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−6−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル 5gに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−3)を4.8g(収率:82%)得た。
実施例4:フタロシアニン化合物(1−4)[[4-(F)PhO]6[2-(Ph)PhO]6NpVOPc]の合成
50mlの試験管に、上記合成例4で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリル 2g、2,3−ジシアノナフタレン 0.2g、塩化バナジウム(III) 0.2g、ベンゾニトリル 3gおよび1−オクタノール 0.2gを入れ、窒素ガス雰囲気下185℃で23時間攪拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−4)を2g(収率:80%)得た。
50mlの試験管に、上記合成例4で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリル 2g、2,3−ジシアノナフタレン 0.2g、塩化バナジウム(III) 0.2g、ベンゾニトリル 3gおよび1−オクタノール 0.2gを入れ、窒素ガス雰囲気下185℃で23時間攪拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−4)を2g(収率:80%)得た。
得られたフタロシアニン化合物(1−4)に対して、多波長検出器付液体クロマトグラフィー(LC−DAD;株式会社日立ハイテクノロジーズ製LaChrom Elite)を用いて分析を行ったところ、図1に示す溶出時間で各成分が分離され、3成分の混合物であることがわかった。各成分の構造はピークの保持時間およびλmaxから推測した。なお、図1において、検出波長は300−900nmで行った。
<LC−DAD測定条件>
溶離液:THF70%-水30%、カラム:Inertsil ODS-4(5μm、4.6×250mm)、温度:40℃、流量:1ml/min。
ヒ゜ーク1:保持時間 約9分、λmax:約805nm ベンゾイソインドール環が2つ導入されたフタロシアニン化合物。
ヒ゜ーク2:保持時間 約13分、λmax:約815nm ベンゾイソインドール環が1つ導入されたフタロシアニン化合物、すなわちフタロシアニン化合物(1−4)。
ヒ゜ーク3:保持時間 約20分、λmax:約790nm ベンゾイソインドール環のないフタロシアニン化合物、すなわち上記式(I)に示される、ナフタレン環を含まないフタロシアニン化合物。
溶離液:THF70%-水30%、カラム:Inertsil ODS-4(5μm、4.6×250mm)、温度:40℃、流量:1ml/min。
ヒ゜ーク1:保持時間 約9分、λmax:約805nm ベンゾイソインドール環が2つ導入されたフタロシアニン化合物。
ヒ゜ーク2:保持時間 約13分、λmax:約815nm ベンゾイソインドール環が1つ導入されたフタロシアニン化合物、すなわちフタロシアニン化合物(1−4)。
ヒ゜ーク3:保持時間 約20分、λmax:約790nm ベンゾイソインドール環のないフタロシアニン化合物、すなわち上記式(I)に示される、ナフタレン環を含まないフタロシアニン化合物。
また、図2は、図1で示された各化合物の吸収スペクトルをそれぞれ示したものである。下から順に、上記のピーク1、ピーク2、ピーク3の吸収スペクトルに帰属される。したがって、図2から明らかなように、本発明のフタロシアニン化合物(1−4)の最大吸収波長λmaxは、770nm程度であることが示されている。加えて、フタロシアニン化合物(1−4)は、500〜600nmの範囲の透過率が高いことも示されている。また、図2より、ナフタレン環を含まないフタロシアニン化合物の最大吸収波長λmaxは、790nm程度であることが示された。
実施例5:フタロシアニン化合物(1−5)[[2,3,4,5,6-(F5)PhO]6[2-(Me)PhO]6NpSnCl2Pc]の合成
50mlの試験管に、上記合成例5で得られた3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリル 5.6g、2,3−ジシアノナフタレン 0.5g、塩化スズ(II) 0.8g、ベンゾニトリル 8.5gを入れ、窒素ガス雰囲気下185℃で18時間攪拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−5)を5g(収率:77%)得た。
50mlの試験管に、上記合成例5で得られた3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリル 5.6g、2,3−ジシアノナフタレン 0.5g、塩化スズ(II) 0.8g、ベンゾニトリル 8.5gを入れ、窒素ガス雰囲気下185℃で18時間攪拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−5)を5g(収率:77%)得た。
実施例6:フタロシアニン化合物(1−6)[[2,3,4,5,6-(F5)PhO]6[2-(iPr)PhO]6NpSnCl2Pc]の合成
実施例5の3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリルを、上記合成例6で得られた3,6−ビス(2−イソプロピルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリル 5.6gに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−6)を4.2g(収率:66%)得た。
実施例5の3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリルを、上記合成例6で得られた3,6−ビス(2−イソプロピルフェノキシ)−4,5−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリル 5.6gに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−6)を4.2g(収率:66%)得た。
実施例7:フタロシアニン化合物(1−7)[[4-(F)PhO]6[2-(Me)PhO]6NpVOPc]の合成
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例7で得られた3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−7)を4g(収率:54%)得た。
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例7で得られた3,6−ビス(2−メチルフェノキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−7)を4g(収率:54%)得た。
実施例8:フタロシアニン化合物(1−8)[[2,4-(F)2PhO]6[2-(Ph)PhO]6NpVOPc]の合成
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例8で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(2,4−ジフルオロフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−8)を2g(収率:39%)得た。
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例8で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(2,4−ジフルオロフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−8)を2g(収率:39%)得た。
実施例9:フタロシアニン化合物(1−9)[[2-(Me)PhO]6[2-(Me)PhO]6NpVOPc]の合成
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例9で得られた3,4,5,6−テトラキス(2−メチルフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−9)を3.7g(収率:64%)得た。
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例9で得られた3,4,5,6−テトラキス(2−メチルフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−9)を3.7g(収率:64%)得た。
実施例10:フタロシアニン化合物(1−10)[[4-(F)PhO]6[2-NpO]6NpVOPc]の合成
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例10で得られた3,6−ビス(2−ナフトキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−10)を4.4g(収率:77%)得た。
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例10で得られた3,6−ビス(2−ナフトキシ)−4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−10)を4.4g(収率:77%)得た。
実施例11:フタロシアニン化合物(1−11)[[PhO]6[2-(Ph)PhO]6NpVOPc]の合成
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例11で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(フェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−11)を3.5g(収率:60%)得た。
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例11で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(フェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−11)を3.5g(収率:60%)得た。
実施例12:フタロシアニン化合物(1−12)[[4-(Cl)PhO]6[2-(Ph)PhO]6NpVOPc]の合成
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例12で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(4−クロロフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−12)を4.4g(収率:77%)得た。
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例12で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(4−クロロフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−12)を4.4g(収率:77%)得た。
実施例13:フタロシアニン化合物(1−13)[[2,5-(Cl)2PhO]6[2-(Ph)PhO]6NpVOPc]の合成
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例13で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−13)を3.7g(収率:68%)得た。
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例13で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−13)を3.7g(収率:68%)得た。
実施例14:フタロシアニン化合物(1−14)[[3-(CF3)PhO]6[2-(Ph)PhO]6NpVOPc]の合成
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例14で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−14)を1.7g(収率:34%)得た。
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例14で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−ビス(3−トリフルオロメチルフェノキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(1−14)を1.7g(収率:34%)得た。
実施例15:フタロシアニン化合物(1−15)[[2-(Ph)PhO]6[2-(Ph)PhO]6NpCuPc]の合成
50mlの試験管に、上記合成例15で得られた3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリル 5g、2,3−ジシアノナフタレン 0.4g、塩化銅(I) 0.25g、ジエチレングリコールモノメチルエーテル 7.5gを入れ、窒素ガス雰囲気下170℃で22時間撹拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−15)を2.7g(収率:49%)得た。
50mlの試験管に、上記合成例15で得られた3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリル 5g、2,3−ジシアノナフタレン 0.4g、塩化銅(I) 0.25g、ジエチレングリコールモノメチルエーテル 7.5gを入れ、窒素ガス雰囲気下170℃で22時間撹拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−15)を2.7g(収率:49%)得た。
実施例16:フタロシアニン化合物(1−16)[[2-(Ph)PhO]6[2-(Ph)PhO]6NpGaClPc]の合成
50mlの試験管に、上記合成例15で得られた3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリル 5g、2,3−ジシアノナフタレン 0.4g、塩化ガリウム(III) 0.41g、ジエチレングリコールモノメチルエーテル 7.5gを入れ、窒素ガス雰囲気下185℃で22時間撹拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−16)を1.2g(収率:25%)得た。
50mlの試験管に、上記合成例15で得られた3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリル 5g、2,3−ジシアノナフタレン 0.4g、塩化ガリウム(III) 0.41g、ジエチレングリコールモノメチルエーテル 7.5gを入れ、窒素ガス雰囲気下185℃で22時間撹拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(1−16)を1.2g(収率:25%)得た。
比較例1:比較フタロシアニン化合物(1)[[4-(COOCH3)PhO]8[4-(OCH3)PhO]8VOPc](ナフタレン環を含まないフタロシアニン化合物)の合成
50mlの試験管に、上記合成例1で得られた4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリル 15g、塩化バナジウム(III) 1.1g、ベンゾニトリル 22.5gおよび1−オクタノール 0.9gを入れ、窒素ガス雰囲気下190℃で3時間攪拌した。室温に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により比較フタロシアニン化合物(1)を13.8g(収率:89.9%)得た。
50mlの試験管に、上記合成例1で得られた4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリル 15g、塩化バナジウム(III) 1.1g、ベンゾニトリル 22.5gおよび1−オクタノール 0.9gを入れ、窒素ガス雰囲気下190℃で3時間攪拌した。室温に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により比較フタロシアニン化合物(1)を13.8g(収率:89.9%)得た。
実施例17:フタロシアニン化合物(2−1)[[4-(tBu)OPhO]3[2-(Ph)PhO]6NpCuPc]の合成
実施例15の3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例16で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−(4−t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(2−1)を4.4g(収率:82%)得た。
実施例15の3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例16で得られた3,6−ビス(2−フェニルフェノキシ)−4,5−(4−t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(2−1)を4.4g(収率:82%)得た。
実施例18:フタロシアニン化合物(2−2)[[4-(Cl)PhO]3[OPhO]3[2-(Ph)PhO]3NpCuPc]の合成
実施例15の3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例17で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(カテコキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(2−2)を4.2g(収率:78%)得た。
実施例15の3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例17で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(カテコキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(2−2)を4.2g(収率:78%)得た。
実施例19:フタロシアニン化合物(2−3)[[4-(Cl)PhO]3[4-tBuOPhO]3[2-(Ph)PhO]3NpVOPc]の合成
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例18で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(2−3)を3.7g(収率:69%)得た。
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例18で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(2−3)を3.7g(収率:69%)得た。
実施例20:フタロシアニン化合物(2−4)[[4-(Cl)PhO]3[OPhO]3[2-(Ph)PhO]3NpVOPc]の合成
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例17で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(カテコキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(2−4)を4.6g(収率:85%)得た。
実施例1の4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ビス(4−メトキシフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例17で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(カテコキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(2−4)を4.6g(収率:85%)得た。
実施例21:フタロシアニン化合物(2−5)[[4-(Cl)PhO]3[4-tBuOPhO]3[2-(Ph)PhO]3NpCuPc]の合成
実施例15の3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例18で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(2−5)を3.3g(収率:62%)得た。
実施例15の3,4,5,6−テトラキス(2−フェニルフェノキシ)フタロニトリルを上記合成例18で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリルに変更した以外は同様に合成し、フタロシアニン化合物(2−5)を3.3g(収率:62%)得た。
比較例2:フタロシアニン化合物(2)[[4-(Cl)PhO]4[4-tBuOPhO]4[2-(Ph)PhO]4VOPc]の合成
50mlの試験管に、上記合成例18で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリル 5g、塩化バナジウム(III) 0.4g、ベンゾニトリル 7.5gおよび1−オクタノール 0.4gを入れ、窒素ガス雰囲気中下185℃で21時間撹拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(2)を3.6g(収率:70%)得た。
50mlの試験管に、上記合成例18で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリル 5g、塩化バナジウム(III) 0.4g、ベンゾニトリル 7.5gおよび1−オクタノール 0.4gを入れ、窒素ガス雰囲気中下185℃で21時間撹拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(2)を3.6g(収率:70%)得た。
比較例3:フタロシアニン化合物(3)[[4-(Cl)PhO]4[4-tBuOPhO]4[2-(Ph)PhO]4CuPc]の合成
50mlの試験管に、上記合成例18で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリル 5g、塩化銅(I) 0.25g、ジエチレングリコールモノメチルエーテル 7.5gを入れ、窒素ガス雰囲気下170℃で22時間撹拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(3)を2.3g(収率:45%)得た。
50mlの試験管に、上記合成例18で得られた3−(2−フェニルフェノキシ)−4−(4−クロロフェノキシ)−5,6−(4-t-ブチルピロカテコキシ)フタロニトリル 5g、塩化銅(I) 0.25g、ジエチレングリコールモノメチルエーテル 7.5gを入れ、窒素ガス雰囲気下170℃で22時間撹拌した。25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥によりフタロシアニン化合物(3)を2.3g(収率:45%)得た。
上記実施例1〜21で得られたフタロシアニン化合物(1−1)〜(1−16)、(2−1)〜(2−5)及び比較例1〜3で得られた比較フタロシアニン化合物(1)〜(3)をそれぞれ含む混合物について、下記方法に従って、最大吸収波長(λmax)(nm)、可視光透過率(Tv)(%)及び日射透過率(Te)(%)を測定し、その結果を下記表1および2に示す。また、フタロシアニン化合物(1−1)〜(1−10)および比較フタロシアニン化合物(1)の最大吸収波長(λmax)(nm)、可視光透過率(Tv)(%)及び日射透過率(Te)(%)の測定結果(スペクトル)を図3〜7に示す。また、フタロシアニン化合物(2−5)及び比較フタロシアニン化合物(3)の最大吸収波長(λmax)(nm)を図8に示す。なお、実施例1〜21は、上記以外の精製操作は特に行わず、各種測定は、副生成物(ナフタレン環が含まれないフタロシアニン化合物等)との混合物について行った。したがって、図3〜5および図8には、フタロシアニン化合物(1−1)〜(1−10)および(2−5)をそれぞれ含む混合物の吸収スペクトルを示す。ただし、比較フタロシアニン化合物(1)および(3)については、当該化合物単体の吸収スペクトルを示す。また、図6には、実施例1〜6で得られたフタロシアニン化合物(1−1)〜(1−6)及び比較例1で得られた比較フタロシアニン化合物(1)の、図7には、実施例7〜10で得られたフタロシアニン化合物(1−7)〜(1−10)の、可視光透過率(Tv)と日射透過率(Te)との関係を示す。なお、図6および7において、各プロット(および曲線)が右下の方向にあるほど、可視光透過率が高く、かつ日射透過率が低いこと、即ち、熱線遮蔽材料として優れることを意味する。
<最大吸収波長(λmax)の測定>
最大吸収波長(λmax)(nm)は、各フタロシアニン化合物(の混合物)のクロロホルム中での300〜1100nmの透過率を分光光度計((株)島津製作所製:UV−3100)を用いて測定し、600〜900nmで最低の透過率を示す波長(nm)である。
最大吸収波長(λmax)(nm)は、各フタロシアニン化合物(の混合物)のクロロホルム中での300〜1100nmの透過率を分光光度計((株)島津製作所製:UV−3100)を用いて測定し、600〜900nmで最低の透過率を示す波長(nm)である。
<可視光透過率(Tv)および日射透過率(Te)の測定>
フタロシアニン化合物の「可視光透過率(Tv)(%)」および「日射透過率(Te)(%)」は、JIS R3106(1998年)の規格に準じて算出したが、具体的には、下記方法に従って測定した値である。すなわち、フタロシアニン化合物を1cmの石英セル中で可視光透過率(Tv)の95、90、85、80、75%になるまでクロロホルムで希釈し、その濃度における透過率(%)を分光光度計((株)島津製作所製:UV−3100)を用いて測定した。その測定結果を基に、可視光透過率(Tv)(%)および日射透過率(Te)(%)を算出した。なお、可視光透過率(Tv)(%)および日射透過率(Te)の算出において、波長範囲300〜2500nmの数値を用いた。
フタロシアニン化合物の「可視光透過率(Tv)(%)」および「日射透過率(Te)(%)」は、JIS R3106(1998年)の規格に準じて算出したが、具体的には、下記方法に従って測定した値である。すなわち、フタロシアニン化合物を1cmの石英セル中で可視光透過率(Tv)の95、90、85、80、75%になるまでクロロホルムで希釈し、その濃度における透過率(%)を分光光度計((株)島津製作所製:UV−3100)を用いて測定した。その測定結果を基に、可視光透過率(Tv)(%)および日射透過率(Te)(%)を算出した。なお、可視光透過率(Tv)(%)および日射透過率(Te)の算出において、波長範囲300〜2500nmの数値を用いた。
上記表および図から明らかなように、本発明のフタロシアニン化合物を含む混合物は、可視光透過率(Tv)が等しい場合において、比較フタロシアニン化合物に比して、任意の可視光透過率(Tv)における日射透過率(Te)が有意に低いことがわかる。これから、本発明のフタロシアニン化合物を用いた熱線吸収材は、優れた熱線吸収能を発揮できると、考察される。
したがって、本発明のフタロシアニン化合物を用いた熱線吸収材は、乗り物や建物の熱線吸収合わせガラス、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、熱線反射ガラスなどに好適に使用できると、考察される。また、得られた熱線吸収材(成形体)の外観は良好なので、採光建材や自動車用樹脂グレージングとしての利用も期待できる。
実施例22
上記実施例1で得られたフタロシアニン化合物(1−1)について、以下のようにして、PETフィルムにフタロシアニン化合物含有フィルムを設けてなる熱線吸収材(1)を作製した。
上記実施例1で得られたフタロシアニン化合物(1−1)について、以下のようにして、PETフィルムにフタロシアニン化合物含有フィルムを設けてなる熱線吸収材(1)を作製した。
<樹脂組成物の調製>
フタロシアニン化合物(1−1) 100mg、17重量%CsWO3分散液(Sukgyung社製、SG−IRC90SPM;平均分散粒子径:39.2nm)(熱線吸収無機化合物) 6g、アクリルモノマー(共栄化学(株)製、ライトアクリレート DPE−6A) 2g、光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア369) 125mg、メチルエチルケトン 2gを充分に攪拌混合して、樹脂組成物(1)を得た。
フタロシアニン化合物(1−1) 100mg、17重量%CsWO3分散液(Sukgyung社製、SG−IRC90SPM;平均分散粒子径:39.2nm)(熱線吸収無機化合物) 6g、アクリルモノマー(共栄化学(株)製、ライトアクリレート DPE−6A) 2g、光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア369) 125mg、メチルエチルケトン 2gを充分に攪拌混合して、樹脂組成物(1)を得た。
<熱線吸収材の作製>
上記で得られた樹脂組成物(1)を、PETフィルム(厚さ:0.1mm)上にスピンコーターを用いて塗布し、80℃で2分間乾燥させた後、照射線量 500mJ/cm2で1秒間紫外線を照射することにより、厚さ:0.101mmの樹脂組成物(1)が塗布されたフィルム(熱線吸収材(1))を作製した。
上記で得られた樹脂組成物(1)を、PETフィルム(厚さ:0.1mm)上にスピンコーターを用いて塗布し、80℃で2分間乾燥させた後、照射線量 500mJ/cm2で1秒間紫外線を照射することにより、厚さ:0.101mmの樹脂組成物(1)が塗布されたフィルム(熱線吸収材(1))を作製した。
実施例23
上記実施例1で得られたフタロシアニン化合物(1−1)について、以下のようにして、PETフィルムにフタロシアニン化合物含有フィルムを設けてなる熱線吸収材(2)を作製した。
上記実施例1で得られたフタロシアニン化合物(1−1)について、以下のようにして、PETフィルムにフタロシアニン化合物含有フィルムを設けてなる熱線吸収材(2)を作製した。
<樹脂組成物の調製>
フタロシアニン化合物(1−1) 80mg、29.9重量%アンチモンドープ酸化スズ(ATO)分散液(石原産業(株)製、SNS−10M;平均分散粒子径:0.107μm) 10g、ジペンタエリストールヘキサアクリレート(共栄化学(株)製、ライトアクリレート DPE−6A) 2g、光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア369) 125mgを充分に攪拌混合しして、樹脂組成物(2)を得た。
フタロシアニン化合物(1−1) 80mg、29.9重量%アンチモンドープ酸化スズ(ATO)分散液(石原産業(株)製、SNS−10M;平均分散粒子径:0.107μm) 10g、ジペンタエリストールヘキサアクリレート(共栄化学(株)製、ライトアクリレート DPE−6A) 2g、光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア369) 125mgを充分に攪拌混合しして、樹脂組成物(2)を得た。
<熱線吸収材の作製>
実施例22の樹脂組成物(1)を、上記で得られた樹脂組成物(2)に変更したこと以外は、実施例22と同様にして、樹脂組成物(2)が塗布されたフィルム(熱線吸収材(2))を作製した。
実施例22の樹脂組成物(1)を、上記で得られた樹脂組成物(2)に変更したこと以外は、実施例22と同様にして、樹脂組成物(2)が塗布されたフィルム(熱線吸収材(2))を作製した。
上記実施例22および23で得られた熱線吸収材(1)及び(2)について、300〜2500nmの透過率を分光光度計((株)島津製作所製:UV−3100)を用いて測定した。得られた値を基に可視光透過率(Tv)(%)及び日射透過率(Te)(%)をJIS R3106(1998年)の規格に準じて算出した。その結果を下記表3に示す。また、各熱線吸収材の透過率スペクトルを図9に示す。
上記表3から明らかなように、本発明のフタロシアニン化合物(1−1)を、他の熱線吸収無機化合物と組み合わせることによって、日射透過率(Te)を有意に低減できることがわかる。これは、他の熱線吸収無機化合物が、近赤外域の波長の吸収が十分でないため、本発明のフタロシアニン化合物(1−1)により補っているものと考えられる。
Claims (4)
- 下記式(1):
で示される置換基(a)であり、
この際、Z1〜Z12のうち、7〜12個は、それぞれ独立して、置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基であり、
Z13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2'または−OC(=O)X2'、この際、X2'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3')2、この際、X3'は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4'、この際、X4'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、−COO(X5'O)q−X6'[この際、X5'は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6'は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;qは、1〜5の整数である]、または下記式(3)もしくは(3'):
で示される置換基(b)であり、
Mは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物である;または、
Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基のうち、少なくとも一組が−Q1−Ar−Q2−(この際、Q1、Q2はそれぞれ独立して、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表し、Arは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の、o−フェニレン基、o−ナフチレン基、またはo−アントリレン基を表す)を表し、
この際、Z1〜Z12のうち、5〜10個は、それぞれ独立して、上記式(2)もしくは(2')で表される上記置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基であり、
Z13〜Z18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜21のエステル基(−C(=O)OX2'または−OC(=O)X2'、この際、X2'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、アミノ基(−N(X3')2、この際、X3'は、それぞれ独立して、水素原子または、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、炭素原子数1〜20のチオアルコキシ基(−S−X4'、この際、X4'は、炭素原子数1〜20のアルキル基を表わす)、−COO(X5'O)q−X6'[この際、X5'は、炭素原子数1〜3のアルキレン基を表わし;X6'は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表わし;qは、1〜5の整数である]、または上記式(3)もしくは(3')で表される上記置換基(b)であり、
Mは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物である;
で示されるフタロシアニン化合物。 - 上記式(1)中、Z1〜Z12のうち、9〜12個は、それぞれ独立して、置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基である、請求項1に記載のフタロシアニン化合物。
- 下記式(4):
下記式(5):
下記式(6):
上記式(4)〜(6)中、Z1〜Z12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または下記式(8):
で示される置換基(a)であり、
この際、Z1〜Z12のうち、7〜12個は、それぞれ独立して、置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜20のアルコキシ基である;または、
Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12の隣接する二つの置換基のうち、少なくとも一組が−Q1−Ar−Q2−(この際、Q1、Q2はそれぞれ独立して、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表し、Arは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の、o−フェニレン基、o−ナフチレン基、またはo−アントリレン基を表す)を表し、
この際、Z1〜Z12のうち、5〜10個は、それぞれ独立して、上記式(2)もしくは(2')で表される上記置換基(a)であり、かつ残部はハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基である;
で示されるフタロニトリル化合物と、
下記式(7):
で示される置換基(b)である;
で示されるナフタロニトリル化合物(D)と、
金属、金属酸化物、金属アルコキシド、金属カルボニル、金属ハロゲン化物または有機酸金属と、の環化反応によって得られる、フタロシアニン化合物の混合物。 - 請求項1もしくは2に記載のフタロシアニン化合物、または請求項3に記載のフタロシアニン化合物の混合物を含む熱線吸収材。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013225862A JP2014122205A (ja) | 2012-11-22 | 2013-10-30 | フタロシアニン化合物、フタロシアニン化合物の混合物、およびこれを用いる熱線吸収材 |
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JP2019006747A (ja) * | 2017-06-28 | 2019-01-17 | 株式会社日本触媒 | フタロシアニン系化合物およびこれを含む熱線吸収材 |
JP2020041127A (ja) * | 2018-09-05 | 2020-03-19 | 株式会社日本触媒 | フタロシアニン系化合物およびこれを含む熱線吸収材ならびにフタロシアニン系化合物の製造方法 |
-
2013
- 2013-10-30 JP JP2013225862A patent/JP2014122205A/ja active Pending
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