JP2021091882A - フタロシアニン系化合物およびこれを含む熱線吸収材 - Google Patents

フタロシアニン系化合物およびこれを含む熱線吸収材 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な熱線吸収能および可視光透過率を有すると共に、耐光性に優れるフタロシアニン系化合物を提供する。【解決手段】下記式(1)で示されるフタロシアニン系化合物。【選択図】なし

Description

本発明は、フタロシアニン系化合物およびこれを含む熱線吸収材に関する。
太陽エネルギーの熱線遮蔽を目的として、建物や乗り物の窓などにおいて、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、熱線反射ガラス等が使用されている。一般に、太陽光のスペクトルは、紫外−可視−赤外領域に広く分布しており、上記熱線遮蔽効果を十分に得るためには、670nm以上の範囲の波長の熱線を選択的に吸収することが必要である。加えて、建物や乗り物といった用途においては、良好な視認性もまた求められることから、熱線遮蔽能を維持しつつ、十分な透明性(可視光透過率)が確保される必要がある。
従来、熱線吸収/遮蔽ガラスとしては、板ガラスの表面に反射率の高い金属酸化物の膜をコーティングしたものが知られている。この熱線吸収/遮蔽ガラスは、通常のガラス原料に微量の鉄、ニッケル、コバルト等の金属を加えて着色し、波長による光の選択透過性を付与したものである。しかしながら、従来の熱線吸収/遮蔽材として使用されている金属酸化物には、670〜850nmの範囲の近赤外領域を選択的に吸収できるものはなく、当該波長域の光を十分吸収するためには、添加量を増やす必要がある。しかし、このような場合には、ガラスの透明性の低下を引き起こす場合があり、また、コスト的にも好ましくない。また、金属酸化物を用いて大面積の薄膜層の表面を均一に被覆する技術が十分開発されるには至っていないため、従来の金属酸化物の被覆(塗布)方法では、大面積の対象物の表面に均一な塗布面を形成することが困難であった。
一方で、特定の波長域の光を選択的に吸収する近赤外吸収色素が種々開発されている。特に、フタロシアニン化合物は、可視光透過率が高く、近赤外光線の吸収効率が高く、かつ近赤外域の選択吸収能に優れ、かつ溶媒溶解性に優れ、樹脂との相溶性に優れ、かつ耐熱性、耐光性、耐候性にも優れるなど、諸特性に優れている。例えば、特許文献1には、基本骨格の四方のうち一方にナフタレン骨格を有するナフタロシアニン化合物に、置換または無置換のフェノキシ基を導入したナフタロシアニン化合物および当該ナフタロシアニン化合物を熱線吸収材に使用することが開示される。
特開2014−122205号公報
しかしながら、熱線吸収材のさらなる高機能化を目的として、良好な熱線吸収能を維持しつつ、耐久性(耐光性)に優れる熱線吸収材が求められている。
したがって、本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な熱線吸収能を有すると共に、耐光性に優れるフタロシアニン系化合物を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、フタロシアニン骨格をベンゼン環を介して2個連結することによって、上記課題を解決できることを見出し、上記知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、上記目的は、下記式(1)で示されるフタロシアニン系化合物によって達成される。
Figure 2021091882
〜A24は、それぞれ独立して、*で表される各結合部位のいずれかに結合し、
Xは、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表わし、
D、EおよびGは、それぞれ独立して、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)を表わし、この際、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わし、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表わし、
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、−COOR、−CONHR、−CONR、フェニル基または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし、この際、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表わし、Mは、それぞれ独立して、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わし、
mは、0〜9であり、
nは、0〜9であり、
oは、6〜24であり、
pは、0〜18であり、
qは、0〜5であり、
q’は、それぞれ独立して、0〜5であり、ならびに
m、n、oおよびpは、下記関係を満たす。
Figure 2021091882
本発明に係るフタロシアニン系化合物は、耐光性に優れる。したがって、本発明に係るフタロシアニン系化合物を含む熱線吸収材は、優れた耐光性を発揮できる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の構成要件および実施の形態等について以下に詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。なお、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
本発明の一形態は、下記式(1)で示されるフタロシアニン系化合物(フタロシアニン2量体、2核フタロシアニン)に関する。なお、本明細書では、上記フタロシアニン系化合物を、単に「フタロシアニン系化合物」または「本発明に係るフタロシアニン系化合物」とも称する。
Figure 2021091882
〜A24は、それぞれ独立して、*で表される各結合部位のいずれかに結合し、
Xは、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表わし、
D、EおよびGは、それぞれ独立して、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)を表わし、この際、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わし、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表わし、
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、−COOR、−CONHR、−CONR、フェニル基または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし、この際、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表わし、Mは、それぞれ独立して、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わし、
mは、0〜9であり、
nは、0〜9であり、
oは、6〜24であり、
pは、0〜18であり、
qは、0〜5であり、
q’は、それぞれ独立して、0〜5であり、ならびに
m、n、oおよびpは、下記関係を満たす。
Figure 2021091882
本発明の一形態に係るフタロシアニン系化合物は、2個のフタロシアニン骨格がベンゼン環を介して連結されてなる(フタロシアニン2量体または2核フタロシアニン)。当該構成を有するフタロシアニン系化合物は、優れた耐光性を発揮する。また、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、良好な熱線吸収能および可視光透過率を有する。さらに、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、樹脂と混合した場合であっても、可視光透過率が非常に高い。すなわち、樹脂と混合した場合であっても、高い透明性を有する。さらに、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、耐熱性にも優れ、光照射後の黄変もまた抑制される。
上記のように本発明に係るフタロシアニン系化合物が良好な熱線吸収能および可視光透過率を低下させることなく、高い耐光性を示す理由は不明であるが、下記のように推測される。なお、本発明は、下記推測に限定されない。
フタロシアニン化合物は、一般的に、太陽光(特に紫外線)照射により分解し、その効果が低下する(耐光性に劣る)。フタロシアニン化合物は、高い透明性(高い可視光透過率)、優れた熱線吸収能を有する。しかし、当該特性をもってしても、フタロシアニン化合物は、長期間にわたり太陽光を浴びている間に紫外線により分解してしまい、やはり熱線吸収能等の効果が低下してしまう。一方、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、上記式(1)に示されるように2個のフタロシアニン系骨格がベンゼン環を介して連結されてなる。このような構造を有するフタロシアニン系化合物は、平面的な広がりが大きく(同一平面内でフタロシアニン骨格が並んだ状態を維持し(平面型フタロシアニン2量体または平面型2核フタロシアニン)、高い平面性を保持した状態で各分子が互いに積層しやすい。このため、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、平面性が高い状態で複数の分子が互いに積層する。その結果、フタロシアニン系化合物積層体の内側(最表層フタロシアニン分子に挟まれた内部のフタロシアニン分子)は太陽光照射による影響を受けにくい。また、本発明に係る構造では共役系が拡張し、分子内における電子的な安定性が増す。このため、熱線吸収材に樹脂等の媒体を使用した場合、紫外線の照射に起因する活性酸素、ラジカルなどによるフタロシアニン系化合物への攻撃が抑制できる。その結果、フタロシアニン系化合物の太陽光(特に紫外線)による分解を有効に抑制・防止できる。よって、このようなフタロシアニン系化合物を用いた熱線吸収材では、過酷な条件であっても耐光性をさらに向上できる。加えて、上記のような共役系の拡張により、フタロシアニン系化合物の最大吸収波長(λmax)は長波長側へシフトする。その結果、良好な熱線吸収能を維持しつつ、可視光透過率をさらに向上できる。
また、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、700nm以上に最大吸収波長(λmax)を有する。したがって、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、太陽光の熱線吸収能に大きく関与する波長領域(670〜850nm)の吸収が大きいことから、良好な熱線吸収能が得られる。
加えて、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、透明性に優れる(高い可視光透過率を有する)。
上述したように、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、太陽光(特に紫外線)による分解の効果を受けにくい。このため、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、本来の特性を長期間にわたって維持できる。ゆえに、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、長期間太陽光を照射された状態でも、良好な熱線吸収能および透明性(高い可視光透過率)を維持できる。
[フタロシアニン系化合物]
本発明に係るフタロシアニン系化合物(フタロシアニン2量体、2核フタロシアニン)は、下記式(1)で示される構造を有する。当該構成により、フタロシアニン系化合物は、熱線吸収能および紫外線吸収能をあわせもち、過酷な条件下でも耐久性(耐光性)に優れる。
Figure 2021091882
本明細書において、「フタロシアニン骨格」および「フタロシアニン系骨格」とは、それぞれ、下記式で表される構造を核として有する構造をいう。なお、本明細書で使用される「フタロシアニン骨格」及び「フタロシアニン系骨格」は、下記構造の無金属フタロシアニンに加えて、金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物等を中心に有する構造を包含する。
Figure 2021091882
また、本明細書において、「フタロシアニン系化合物」は、フタロシアニン化合物に加え、上記式で表されるフタロシアニン骨格の一部がナフタロシアニン骨格に置換された(下記構造(b)がフタロシアニン骨格の隣接する2つの部位に導入された)ナフタロシアニン化合物および下記構造(c)がフタロシアニン骨格の隣接する2つの部位に導入されるフタロシアニン化合物も含みうる。
Figure 2021091882
上記構造(b)および(c)中、*は、前記式(1)中のA〜A、A〜A、A〜A12、A13〜A16、A17〜A20、A21〜A24の隣接する2つの置換基として結合する部位を表す。本明細書では、上記構造(b)を有する置換基を、「置換基(b)」とも称する。同様にして、上記構造(c)を有する置換基を、「置換基(c)」とも称する。同様にして、以下の式(a)で表される置換基を、「置換基(a)」とも称する。
Figure 2021091882
本明細書では、フタロシアニン系化合物を略称にて記載することがある。すなわち、フタロシアニン系化合物の略称において、β位の置換基、α位の置換基、(含まれる場合には構造(b)(ナフタレン骨格)、構造(c))、中心金属、の順序で略号を記載する。略称中、Phはフェニル基、フェニレン基または三価のベンゼン環を、Meはメチル基を、Pcはフタロシアニン核を、Npは構造(b)(ナフタレン骨格)を、2,2’−PhOPhOは構造(c)の一例(上記構造(c)中、D,E=酸素原子(−O−)、q=0)を、それぞれ表わす。Pcの直前の記載は中心金属を示す。なお、構造(b)(ナフタレン骨格)および構造(c)はフタロシアニン核の一部を占めるものであり、厳密にはフタロシアニン核に構造(b)(ナフタレン骨格)や構造(c)が別途結合したものではないが、構造(b)(ナフタレン骨格)や構造(c)が含まれていることを示すために、便宜上、Npおよび2,2’−PhOPhOとして記載する。なお、本明細書中、上記式(1)中、A、A、A、A、A、A12、A13、A16、A17、A20、A21およびA24の置換基を単に「α位の置換基」とも称する、またはA、A、A、A、A、A12、A13、A16、A17、A20、A21およびA24を総称して「α位」とも称する。また、同様にして、上記式(1)中、A、A、A、A、A10、A11、A14、A15、A18、A19、A22およびA23の置換基を単に「β位の置換基」とも称する、またはA、A、A、A、A10、A11、A14、A15、A18、A19、A22およびA23を総称して「β位」とも称する。
上記式(1)中、A〜A24は、それぞれ独立して、各置換基の「*」で表される結合部位のいずれかに結合する。
また、一分子中に含まれる2個のフタロシアニン骨格において、置換される置換基の種類およびこれらの数は、互いに同じであっても異なっていてもよい。例えば、下記実施例1のフタロシアニン系化合物(1)のように、式(1)で表されるフタロシアニン系化合物(フタロシアニン二量体)において、一方のフタロシアニン骨格上に、構造(b)が1個導入される一方で、他方のフタロシアニン骨格上には構造(b)が導入されない左右で非対称な形態であってもよい。または、下記実施例2のフタロシアニン系化合物(2)のように、式(1)で表されるフタロシアニン系化合物(フタロシアニン二量体)が、左右対称な形態であってもよい。
以下、フタロシアニン系骨格上に置換する置換基(a)、置換基(b)、置換基(c)、「X」で表される置換基および「M」で表される中心金属についてそれぞれ説明する。
(置換基「X」)
上記式(1)中、Xは、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表わす。なお、Xが複数存在する(pが2以上である)場合には、各Xは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子がある。これらのうち、耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子であることが好ましく、水素原子、フッ素原子であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
pは、置換基「X」がフタロシアニン系骨格に導入される数であり、0〜18である。耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、pは、好ましくは0〜12、より好ましくは1〜8であり、さらにより好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。
(置換基(a))
上記式(1)中、置換基(a)は、下記式(a)で示される、置換または無置換のフェノキシ基(G=−O−)、置換または無置換のフェニルチオ基(ベンゼンスルフェニル基)(G=−S−)または無置換もしくは置換アニリノ基(G=−N(R)−または−N(R)−R−)である。
Figure 2021091882
上記式(a)中、Gは、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)を表わす。なお、置換基(a)が複数存在する(oが2以上である)場合には、各Gは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。これらのうち、より高い耐光性、熱線吸収能および可視光透過率などの観点から、Gは、酸素原子、窒素原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。また、Gが窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)である際の、Rは、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わす。また、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表わす。ここで、炭素原子数1〜20の炭化水素基は、水素原子及び炭素原子から構成される基であれば特に制限されない。具体的には、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数3〜20のアルキニル基、炭素原子数6〜20のアリール基がある。ここで、炭素原子数1〜20のアルキル基は、特に制限されず、炭素原子数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基でありうる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基(ラウリル基)、2−エチルヘキシル基、オクタデシル基などが挙げられる。炭素原子数2〜20のアルケニル基は、特に制限されず、炭素原子数2〜20の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基でありうる。具体的には、ビニル基、プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、イソプロペニル基、ブタ−1−エン−1−イル基、ブタ−2−エン−1−イル基、ブタ−3−エン−1−イル基、2−メチルプロパ−2−エン−1−イル基、1−メチルプロパ−2−エン−1−イル基、ペンタ−1−エン−1−イル基、ペンタ−2−エン−1−イル基、ペンタ−3−エン−1−イル基、ペンタ−4−エン−1−イル基、3−メチルブタ−2−エン−1−イル基、3−メチルブタ−3−エン−1−イル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基などが挙げられる。炭素原子数3〜20のアルキニル基は、特に制限されず、炭素原子数3〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキニル基でありうる。具体的には、2−ブチニル基、3−ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、デシニル基等が挙げられる。炭素原子数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等が挙げられる。なお、Rとしての炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基は、上記例示から1つ水素原子を抜いた基が同様して例示できる。置換基(a)が複数存在する(oが2以上である)場合には、各Rは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。同様にして、置換基(a)が複数存在する(oが2以上である)場合には、各Rは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。これらのうち、より高い耐光性、熱線吸収能および可視光透過率などの観点から、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。より高い耐光性、熱線吸収能および可視光透過率などの観点から、Rは、エチリデン基(−CH(CH)−)、メチレン基(−CH−)であることが好ましく、エチリデン基であることがより好ましい。
上記式(a)中、Rは、−G−Ph(Ph=フェニル基)中に存在しえる置換基であり、それぞれ独立して、ハロゲン原子、−COOR、−CONHR、−CONR、フェニル基または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わす。ここで、Rが複数存在する(q’が2以上である)場合には、各Rは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。
がアルキル基またはフェニル基である場合には、導入による共役系の拡張や、電子供与性に起因して、フタロシアニン系化合物の最大吸収波長(λmax)が長波長側へシフトする。その結果、良好な熱線吸収能を維持しつつ、可視光透過率が向上する。さらに、上記のような共役系の拡張により、分子内における電子的な安定性が増す。これにより、熱線吸収材に樹脂等の媒体を使用した場合、紫外線の照射に起因する媒体とフタロシアニン系化合物との相互作用が抑制でき、その結果、フタロシアニン系化合物の分解を有効に抑制・防止できる。よって、このようなフタロシアニン系化合物を用いた熱線吸収材は耐光性がさらに向上する。また、Rがハロゲン原子、エステル基(−C(=O)OR)である場合には、電気吸引性や立体障害が大きくなることなどに起因して吸収スペクトル(吸収帯)がシャープになり、可視光透過率が向上する。加えて、溶剤や樹脂への相溶性が向上する。
としての、ハロゲン原子は、特に制限されず、上記と同様の説明であるため、ここでは説明を省略する。炭素原子数1〜4のアルキル基は、特に制限されず、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基がある。また、「−COOR」、「−CONHR」、「−CONR」中のR、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表わす。「−CONR」中のRおよびRは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。炭素原子数1〜12の炭化水素基は、水素原子及び炭素原子から構成される基であれば特に制限されない。具体的には、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、炭素原子数2〜12のアルキニル基があり、より具体例は、上記したのと同様であるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、Rは、好ましくはハロゲン原子、フェニル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基であり、より好ましくは塩素原子、メチル基、エチル基であり、さらに好ましくは塩素原子、メチル基であり、特に好ましくはメチル基である。q’は、置換基「R」が−G−Ph(Ph=フェニル基)のフェニル基に導入される数であり、それぞれ独立して、0〜5である。これらのうち、耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、q’は、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2である。ここで、Rのフェニル基への導入位置は特に制限されない。例えば、q’が1である場合には、Rは、2位、3位、4位のいずれでもよいが、耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、2位、4位が好ましく、2位がより好ましい。また、q’が2である場合には、Rは、2,6位、2,5位、2,4位、3,4位、3,5位などに存在できる。これらのうち、耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、2,5位、2,6位が好ましい。q’が3である場合には、Rは、2,4,6位、2,5,6位などに存在できる。
oは、置換基(a)がフタロシアニン系骨格に導入される数であり、6〜24である。耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、oは、好ましくは6〜15であり、より好ましくは6〜22であり、特に好ましくは8〜20である。
上記構造(−G−Ph:Ph=1以上の置換基Rを有していてもよいフェニル基)がフタロシアニン系骨格に導入される位置は、特に制限されず、α位、β位またはα位とβ位との混在のいずれでもよい。耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、上記構造は、フタロシアニン系骨格の少なくともα位に存在することが好ましい。
(置換基(b))
上記式(1)中、置換基(b)は、下記構造(b)を有する。
Figure 2021091882
置換基(b)は、上記式(1)中のA〜A、A〜A、A〜A12、A13〜A16、A17〜A20、A21〜A24の隣接する2つの部位に結合し、フタロシアニン系骨格のβ位−β位またはα位−β位にわたって導入されてもよい。なお、本明細書中、「隣接する2つの部位」とは、1つのベンゼン環上において、ある部位を基準として、オルト位(2位)に存在する部位を意味する。例えば、「隣接する2つの部位」としては、AとA、AとA、AとA等である。耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、β位−β位(例えば、AとA)にわたって導入されることが好ましい。この際、同一の構成単位(A〜A、A〜A、A〜A12、A13〜A16、A17〜A20、A21〜A24)中の残りの置換基がXであることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。すなわち、フタロシアニン系骨格が下記構造を有することが特に好ましい。
Figure 2021091882
nは、置換基(b)がフタロシアニン系骨格に導入される数であり、0〜9である。耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、nは、好ましくは0〜4であり、より好ましくは1〜3であり、より好ましくは1または2である。当該構造をフタロシアニン系骨格に導入することにより、より高い平面性を有する分子を形成することができるため、平面性が高い状態で各分子が互いに積層しやすくなる。その結果、高い耐光性を発揮できるフタロシアニン系化合物が得られる。また、当該構造の導入による共役系の拡張により、分子内における電子的な安定性が増す。これにより、熱線吸収材に樹脂等の媒体を使用した場合、紫外線の照射に起因する活性酸素、ラジカルなどによるフタロシアニン系化合物への攻撃が抑制でき、その結果、フタロシアニン系化合物の分解を有効に抑制・防止できる。よって、このようなフタロシアニン系化合物を用いた熱線吸収材では耐光性をさらに向上できる。さらに、上記のような共役系の拡張により、フタロシアニン系化合物の最大吸収波長(λmax)は長波長側へシフトする。その結果、良好な熱線吸収能を維持しつつ、可視光透過率をさらに向上できる。
(置換基(c))
上記式(1)中、置換基(c)は、下記構造(c)を有する。
Figure 2021091882
上記構造(c)中、DおよびEは、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)を表わす。なお、DおよびEは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。また、置換基(c)が複数存在する(mが2以上である)場合には、各構造(c)は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。これらのうち、より高い耐光性、熱線吸収能および可視光透過率などの観点から、DおよびEは、酸素原子であることが好ましい。また、DおよびEが窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)である際の、Rは、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わし、この際のRは上記置換基(a)での説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、DおよびEが窒素原子(−N(R)−R−)である際の、Rは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表わし、この際のRは上記置換基(a)での説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
qは、置換基(c)において、−D−Ph(Ph=フェニル基)と−E−Ph(Ph=フェニル基)とを連結するアルキレン基の炭素原子数を表わし、0〜5である。耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、qは、好ましくは0〜3であり、特に好ましくは0である。−D−Ph(Ph=フェニル基)と−E−Ph(Ph=フェニル基)とを連結する位置は、特に制限されない。具体的には、−D−Phの2位と−E−Phの2位と、−D−Phの3位と−E−Phの3位とが連結することが好ましく、−D−Phの2位と−E−Phの2位とが連結することが特に好ましい。すなわち、上記構造は、下記構造であることが好ましい。
Figure 2021091882
また、下記構造(c):
Figure 2021091882
は、上記式(1)中のA〜A、A〜A、A〜A12、A13〜A16、A17〜A20、A21〜A24の隣接する2つの部位に結合し、フタロシアニン系骨格のβ位−β位(例えば、AとA)またはα位−β位(例えば、AとA、AとA)にわたって導入されてもよい。耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、上記構造は、下記:
Figure 2021091882
のようにβ位−β位にわたって導入されることが好ましく、フタロシアニン系骨格が下記構造:
Figure 2021091882
を有することが特に好ましい。なお、上記構造において、α位には、他の置換基が導入される。
mは、置換基(c)がフタロシアニン系骨格に導入される数であり、0〜9である。耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、mは、好ましくは0〜7であり、より好ましくは0〜5である。
なお、上記式(1)中、m、n、o及びpは、下記関係を満たす。
Figure 2021091882
(中心金属「M」)
Mは、中心金属であり、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす。ここで、各フタロシアニン骨格におけるM(中心金属)は、同じであってもまたは異なるものであってもよい。金属としては、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、錫等が挙げられる。金属酸化物としては、チタニル、バナジル(VO)等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては、塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化ゲルマニウム、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、塩化珪素、塩化バナジウム等が挙げられる。耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、中心金属Mは、好ましくは亜鉛、銅、バナジウムならびにこれらの金属酸化物およびハロゲン化物から選択される。すなわち、本発明の好ましい形態では、Mは、それぞれ独立して、亜鉛、銅およびバナジウムならびにこれらの酸化物およびハロゲン化物からなる群より選択される(本発明に係るフタロシアニン系化合物は、亜鉛、銅およびバナジウムならびにこれらの酸化物およびハロゲン化物からなる群より選択される中心金属を有する)。なお、特に良好な可視光透過率が得られるという観点から、中心金属Mは、銅、亜鉛およびバナジルから選択されることがより好ましい。これらからMを選択することにより、吸収スペクトル(吸収帯)をよりシャープにし、可視光透過率をさらに向上させることができる。また、耐光性をさらに向上させるという観点からは、中心金属Mは、銅またはバナジルであると好ましく、銅であるとより好ましい。特に、銅は、他の原子を伴うことなく(例えば、バナジルであればV以外に酸素原子を伴うため、平面性は低下する)、二価イオンとしてフタロシアニン系骨格内に存在できることから、高い平面性を有するフタロシアニン系化合物を得ることができる。そのことにより銅は複数の分子が積層しやすく、色素分子が安定化しやすい。このような観点からも耐光性の向上に寄与していると考えられる。一方で、可視光透過率を向上させ、また、溶媒等に対する溶解性を向上させるといった観点からは、中心金属Mは、亜鉛またはバナジルであると好ましく、亜鉛であるとより好ましい。
本発明に係るフタロシアニン系化合物は、700nm以上の最大吸収波長(λmax)を示す。ゆえに、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、熱線吸収能に優れる。なお、本明細書中、「最大吸収波長(λmax)」は、後述の実施例に記載の方法で測定された値をいう。
より具体的には、本発明に係るフタロシアニン系化合物の最大吸収波長(λmax)は、700nm以上といった長波長領域に存在し、好ましくは710〜850nm、より好ましくは720〜830nm、特に好ましくは725〜800nmの波長域に存在する。よって、かような範囲に最大吸収波長が存在することから、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、良好な熱線吸収能を有する。このため、本発明に係るフタロシアニン系化合物を含む熱線吸収材は、好ましくは710〜850nm、より好ましくは720〜830nm、特に好ましくは725〜800nmの波長域の光を選択的に吸収することができる。また、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、大きな最大吸収波長(λmax)の半値幅を有する。具体的には、本発明に係るフタロシアニン系化合物の半値幅は、好ましくは30〜80nm、より好ましくは50〜75nmであり、50〜65nmである。なお、本明細書中、「半値幅」は、後述の実施例に記載の方法で測定された値をいう。このように大きな半値幅を有するフタロシアニン系化合物を含む熱線吸収材は、広範な波長域の光を選択的に吸収することができる。ゆえに、本発明に係るフタロシアニン系化合物または本発明に係るフタロシアニン系化合物を含む熱線吸収材は、例えば、乗り物(例えば、自動車、バス、電車等)や建物の窓などの熱線吸収合わせガラス(合わせガラス遮熱中間膜)、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、熱線反射ガラスに使用すると、車内や室内の温度の上昇を有効に抑制することができる。
また、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、上記最大吸収波長(λmax)に加えて、850nmを超える波長域において吸収(本明細書では、「第2の吸収[λmax(850up)]」とも称する)を示す。上記第2の吸収は、フタロシアニン骨格を1つのみ有するフタロシアニン化合物では観察されない。このため、この第2の吸収[λmax(850up)]はフタロシアニン骨格を2個有する場合に特有に観察されるものであり、このような第2の吸収[λmax(850up)]を有するフタロシアニン化合物は本発明に係るフタロシアニン系化合物である。なお、第2の吸収は、分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製:U−2910)を用いてテトラヒドロフラン中で最大吸収波長(λmax)の透過率が5%になるように調整して測定した際の透過スペクトル測定において、850nmを超える領域での透過率が85%未満(好ましくは80%以下)であり、また850nmを超える領域で波長5nmあたりの変化率が±0.8%以上である極小値を有するものである。
加えて、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、透明性に優れる(高い可視光透過率を有する)。特に、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、可視光領域のうち、400〜650nmにおける透過率が高く、特に510nm付近において高い透過率を有する。具体的には、本発明に係るフタロシアニン系化合物の510nmでの透過率は、70%以上であり、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90.5%以上(上限:100%)である。このように、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、特に人間の目の視感度の高い510nm付近の緑色の光の透過率に優れることから、熱線吸収合わせガラス等に用いた際、良好な視認性が得られる。より具体的な例としては、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、特に510nm付近の波長の光(青色光〜緑色光)を透過させやすいことから、青緑色光〜緑色光を発するLEDランプの視認性を向上させることができる。よって、例えば、LEDを用いたヘッドライトや外灯の視認性が向上するため、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、乗り物のフロントガラス(熱線吸収合わせガラス)の中間膜に好適に使用できる。また、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、460nm付近においても高い透過率を有する。このように、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、特に暗所での人間の目の視感度の高い460nm付近の青色の光の透過率に優れることから、熱線吸収合わせガラス等に用いた際、暗所での良好な視認性が得られる。より具体的な例としては、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、特に460nm付近の波長の光(青色光)を透過させやすいことから、青色光を発するLEDランプの視認性を向上させることができる。よって、例えば、LEDを用いたヘッドライトや外灯の視認性が向上するため、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、乗り物のフロントガラス(熱線吸収合わせガラス)の中間膜に好適に使用できる。具体的には、本発明に係るフタロシアニン系化合物の460nmでの透過率は、70%以上であり、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上(上限:100%)である。さらに、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、610nm付近においても高い透過率を有する。具体的には、本発明に係るフタロシアニン系化合物の610nmでの透過率は、70%以上であり、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上(上限:100%)である。なお、上記460nm、510nm及び610nmでの透過率は、下記方法により測定される値(透過率の補正値)を採用する。
(透過率の補正値の算出)
フタロシアニン系化合物を、樹脂の固形分に対して含有量が1.6重量%になるようにポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製:エスレック(登録商標)BL−S、重量平均分子量 約23,000)に加えた。さらに可塑剤としてトリエチレングリコールジ−2−エチルヘサノエートを前記ブチラール樹脂に対し25重量%添加し、最後に溶剤としてテトラヒドロフランを加えて固形分濃度が20重量%となるように調節し、溶解することで塗料溶液を得た。得られた塗料溶液を、60番のバーコーターを用いてガラス板に塗布し(膜厚:90μm)、室温で乾燥させた。その後、さらに100℃で10分間乾燥させ、フタロシアニン系化合物含有ブチラール塗膜(乾燥膜厚:約20μm)を形成した。
上記にて得られたフタロシアニン系化合物含有ブチラール塗膜の吸光度を分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製:U−2910)を用いて測定し、最大吸収波長(λmax)、ならびに最大吸収波長(λmax)、460nm、510nm及び610nmにおける透過率を求める。また、以下の式(1)を用いて最大吸収波長(λmax)の透過率を0%に換算した際の460nm、510nm及び610nmにおける透過率を補正値(%)として求める。
Figure 2021091882
本発明に係るフタロシアニン系化合物の好ましい具体例としては、下記表1に示されるよう構造を有する化合物が挙げられる。なお、下記表1中、Bαは、式(1)の左側のフタロシアニン骨格のα位(式(1)中のA13、A16、A17、A20、A21およびA24)に結合している置換基を表す。Bβは、式(1)の左側のフタロシアニン骨格のβ位(式(1)中のA14、A15、A18、A19、A22およびA23)に結合している置換基を表す。Cαは、式(1)の右側のフタロシアニン骨格のα位(式(1)中のA、A、A、A、AおよびA12)に結合している置換基を表す。Cβは、式(1)の右側のフタロシアニン骨格のβ位(式(1)中のA、A、A、A、A10およびA11)に結合している置換基を表す。また、Bα、Bβ、CαおよびCβとしての置換基は、それぞれ独立して、以下に示すR−1〜R−10のいずれかを表す。なお、これら置換基は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
Figure 2021091882
Figure 2021091882
上記表1に記載されるフタロシアニン系化合物は、下記構造を有することを意味する。なお、フタロシアニン化合物(1)については、略称で示される化合物のうち、代表的な化合物を構造式として例示するが、以下の略称に示した化合物は、置換位置の異なる異性体がいくつか存在する。すなわち、フタロシアニン系化合物の各置換基の数が同数であれば、その置換位置はα、β位以外は限定されるものではない。なお、以下の化合物番号は、実施例の項における化合物に関しても共通である。
Figure 2021091882
[フタロシアニン系化合物の製造方法]
本発明に係るフタロシアニン系化合物の製造方法は、特に制限されず、例えば、特開2000−26748号公報、特開2001−106689号公報、特開2005−220060号公報に記載の方法などの従来公知の方法を適宜修飾して適用することができる。例えば、フタロシアニン2量体(2核フタロシアニン)は、溶融状態または有機溶媒中で、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン等の4官能出発材料と、所望の置換基が導入されたフタロニトリル化合物と、ならびに置換基(b)を有する場合に必要であれば、ジシアノナフタレン誘導体(ナフタロニトリル化合物)と、中心金属を形成できる金属含有化合物と、を反応させることにより製造できる。
すなわち、本発明は、下記式(A−1)、(A−2)、(A−3)または(A−4):
Figure 2021091882
で示される化合物(A)と、
下記式(B−1)、(B−2)または(B−3):
Figure 2021091882
上記式(B−1)〜(B−3)中、Z〜Z12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭化水素基もしくは炭化水素鎖を含む有機基である、
で示される化合物(B)と、
必要に応じて(置換基(b)を有する場合には)ジシアノナフタレン誘導体(ナフタロニトリル化合物)と、
金属、金属酸化物、金属アルコキシド、金属カルボニル、金属ハロゲン化物または有機酸金属と、
を反応させることを含む、フタロシアニン系化合物(フタロシアニン2量体、2核フタロシアニン)の製造方法をも提供する。上記式(B−1)〜(B−3)中、Z〜Z12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭化水素基もしくは炭化水素鎖を含む有機基である。ここで、Z〜Z12は、所望の構造に応じて適宜選択できる。例えば、本発明に係るフタロシアニン系化合物を得る場合には、下記式(A−1)、(A−2)、(A−3)または(A−4):
Figure 2021091882
で示される化合物(A)と、
下記式(B−1)、(B−2)または(B−3):
Figure 2021091882
上記式(B−1)〜(B−3)中、Z〜Z12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、下記式(a):
Figure 2021091882
上記式(a)中、Gは、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)を表わし、この際、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わし、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表わし、
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、−COOR、−CONHR、−CONR、フェニル基または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし、この際、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表わし、q’は、0〜5である、
で示される置換基(a)、下記式(b):
Figure 2021091882
上記式(b)中、*は、前記式(B−1)中のZ〜Z、前記式(B−2)中のZ〜Zまたは前記式(B−3)中のZ〜Z12の隣接する2つの部位を表わし、
で示される置換基(b)、または下記式(c):
Figure 2021091882
上記式(c)中、*は、前記式(B−1)中のZ〜Z、前記式(B−2)中のZ〜Zまたは前記式(B−3)中のZ〜Z12の隣接する2つの部位を表わし、
DおよびEは、それぞれ独立して、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)を表わし、この際、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わし、
qは、0〜5である、
で示される置換基(c)である、
で示される化合物(B)と、
必要に応じて(置換基(b)を有する場合には)ジシアノナフタレン誘導体(ナフタロニトリル化合物)と、
金属、金属酸化物、金属アルコキシド、金属カルボニル、金属ハロゲン化物または有機酸金属と、
を反応させることを含む、フタロシアニン系化合物の製造方法が好適に使用できる。
以下では、本発明の製造方法の好ましい形態を説明する。しかしながら、本発明は、下記形態に制限されるものではない。
出発原料である上記式(A−1)〜(A−4)で示される化合物(A)は、いずれの化合物を使用してもよいが、入手しやすさ、化合物(B)および/または金属化合物との反応性などを考慮すると、上記式(A−1)で示される1,2,4,5−テトラシアノベンゼンが好ましく使用される。
出発原料である上記式(B−1)〜(B−3)で示される化合物(B)は、特開昭64−45474号公報、特開2009−242791号公報、特開2011−12167号公報、特開2002−302477号公報等に開示されている従来既知の方法、または当該方法を適宜修飾した方法により合成でき、また、市販品を用いることもできる。例えば、置換基(a)を有する式(B−1)のフタロニトリル化合物は、ハロゲン化フタロニトリル化合物と、下記式(a’):
Figure 2021091882
で表される化合物とを適宜反応させることによって得られる。なお、上記式(a’)中のG、Rおよびq’は、上記[フタロシアニン系化合物]の項において説明した置換基(a)に係る定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。
上記ハロゲン化フタロニトリル化合物としては、以下に制限されないが、テトラフルオロフタロニトリル、テトラクロロフタロニトリル等が挙げられる。なかでも、置換基の位置選択性を考慮すると、テトラフルオロフタロニトリルが好ましい。
また、上記フタロニトリル化合物として、ナフタロニトリル化合物(2,3−ジシアノナフタレンまたはその誘導体)またはジヒドロキシビフェニル化合物(2,2’−ジヒドロキシビフェニルまたはその誘導体)を用いる場合には、従来既知の方法によって合成してもよいし、また、市販品を用いてもよい。
なお、所望のフタロシアニン系化合物が置換基(b)を有する場合には、ジシアノナフタレン誘導体(ナフタロニトリル化合物)(例えば、2,3−ジシアノナフタレン)を化合物(B)の合成を目的として使用してもよい、または環化反応に出発原料としてさらに使用してもよい。
上記環化反応において用いられる金属化合物としては、特に制限されないが、上記式(1)中のM(中心金属)として例示された金属;これら金属の金属酸化物;これら金属のアルコキシド;これら金属の金属カルボニル;これら金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化物;これら金属の有機酸金属;これら金属の錯体化合物等が挙げられる。
具体的には、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、錫等の金属;一酸化バナジウム、三酸化バナジウム、四酸化バナジウム、五酸化バナジウム、二酸化チタン、一酸化鉄、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化マンガン、一酸化ニッケル、一酸化コバルト、三二酸化コバルト、二酸化コバルト、酸化第一銅、酸化第二銅、三二酸化銅、酸化バナジウム、酸化亜鉛、一酸化ゲルマニウム、及び二酸化ゲルマニウム等の金属酸化物;メトキシインジウム等の金属アルコキシド;コバルトカルボニル、鉄カルボニル、ニッケルカルボニル等の金属カルボニル;塩化バナジウム(三塩化バナジウム)、塩化チタン、塩化銅、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化鉄、塩化インジウム、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化ガリウム、塩化ゲルマニウム、塩化マグネシウム、ヨウ化銅、ヨウ化亜鉛、ヨウ化コバルト、ヨウ化インジウム、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化ガリウム、臭化銅、臭化亜鉛、臭化コバルト、臭化アルミニウム、臭化ガリウム等の金属ハロゲン化物;酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、安息香酸銅、安息香酸亜鉛等の有機酸金属;上記金属のアセチルアセトナート錯体等の錯体化合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは金属、金属酸化物および金属ハロゲン化物であり、より好ましくは金属ハロゲン化物であり、さらに好ましくは、塩化バナジウム、ヨウ化バナジウム、塩化銅、ヨウ化銅、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛であり、より好ましくは、塩化バナジウム、塩化銅およびヨウ化亜鉛である。
また、環化反応は、無溶媒中でも行なえるが、有機溶媒を使用して行なうのが好ましい。有機溶媒は、出発原料としてのフタロニトリル化合物およびナフタロニトリル化合物との反応性の低い、好ましくは反応性を示さない不活性な溶媒であればいずれでもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、o−クロロトルエン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、ベンゾニトリル等の不活性溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、1−オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール;ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、1−オクタノール、ジクロロベンゼン、ベンゾニトリルが、より好ましくは、1−オクタノール、ベンゾニトリルが使用される。これらの溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。有機溶媒を使用する際の有機溶媒の使用量は、特に制限されないが、出発原料(化合物(A)、化合物(B)、(置換基(b)を有する場合には)ナフタロニトリル化合物(2,3−ジシアノナフタレンまたはその誘導体)、金属化合物)の濃度(総量)が、2〜80重量%となる量であると好ましく、10〜70重量%となる量であるとより好ましく、15〜60重量%となる量であると特に好ましい。
反応(環化反応)条件は、当該反応が進行する条件であれば特に制限されるものではない。例えば、反応温度は、100〜240℃であると好ましく、130〜200℃であるとより好ましい。反応時間も特に制限はないが、1〜72時間であると好ましく、3〜48時間であるとより好ましく、5〜30時間であると特に好ましい。また、添加される金属化合物の量は特に制限されないが、化合物(A)および化合物(B)ならびに、添加される場合には、ナフタロニトリル化合物(2,3−ジシアノナフタレンまたはその誘導体)の合計4モルに対して0.8〜2モルであると好ましく、1.0〜1.5モルであるとより好ましい。
また、上記反応は、大気雰囲気中で行なってもよいが、金属化合物の種類により、不活性ガスまたは酸素含有ガス雰囲気(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、または酸素/窒素混合ガスなどの流通下)で、行なわれることが好ましい。
上記環化反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、ろ過、洗浄、乾燥を行なってもよい。このような操作により、フタロシアニン系化合物を効率よく得ることができる。また、用いる出発原料(化合物(A)、化合物(B)、(置換基(b)を有する場合には、ナフタロニトリル化合物(2,3−ジシアノナフタレンまたはその誘導体))の種類に応じて、置換基の位置や導入数が異なる副生成物が生じるが、所望のフタロシアニン系化合物と、それ以外のフタロシアニン系化合物とを分離する操作を行ってもよい。かような分離手段として、例えば、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。
上記方法によって、フタロシアニン系化合物は、混合物の形態で製造されることもある。このため、本発明に係る方法によって製造されるフタロシアニン系化合物は、下記式(1)で示されるフタロシアニン系化合物を含む:
Figure 2021091882
〜A24は、それぞれ独立して、*で表される各結合部位のいずれかに結合し、
Xは、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表わし、
D、EおよびGは、それぞれ独立して、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)を表わし、この際、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わし、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表わし、
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、−COOR、−CONHR、−CONR、フェニル基または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし、この際、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表わし、Mは、それぞれ独立して、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わし、
mは、0〜9であり、
nは、0〜9であり、
oは、6〜24であり、
pは、0〜18であり、
qは、0〜5であり、
q’は、それぞれ独立して、0〜5であり、ならびに
m、n、oおよびpは、下記関係を満たす。
Figure 2021091882
上記方法によって製造されるフタロシアニン系化合物(単一または混合物形態を含む)および副生成物を含む混合物(本明細書中、単に「フタロシアニン系化合物の混合物」または「混合物」とも称することがある)は、吸収スペクトル(吸収帯)の重ね合わせによって、混合物の吸収スペクトルの吸収帯の幅が広くなる。よって、上記方法によって製造されるフタロシアニン系化合物の混合物は、熱線吸収効果がさらに向上すると推測される。
上述したように、フタロシアニン系化合物は、上記方法によって、1種単独の状態で製造される場合に加え、2種以上の混合物(本明細書中、単に「フタロシアニン系化合物の混合物」または「混合物」とも称することがある)の形態で製造されることもある。
前者の場合には、各フタロシアニン系化合物における各置換基の数は整数である。
一方、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、原料(化合物(A)、化合物(B)および必要であればナフタロニトリル化合物)を所望の割合において混合することによって製造する。この際、製造されたフタロシアニン系化合物は、各置換基が異なる位置に導入される場合があるため、後者の場合のように、様々な構造を有する混合物の形態となりうる。この場合には、フタロシアニン系化合物(混合物)の各置換基の数は、これらの平均値として記載されるため、小数となりうる。また、このような混合物の場合には、吸収スペクトル(吸収帯)の重ね合わせによって、混合物の吸収スペクトルの吸収帯の幅が広くなる。よって、上記方法によって製造されるフタロシアニン系化合物の混合物は、熱線吸収効果がさらに向上すると推測される。
[熱線吸収材]
本発明に係るフタロシアニン系化合物は、高い耐光性を有する。また、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、良好な熱線吸収能および可視光透過率を有する。すなわち、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、光強度の高い近赤外域の光を選択的に吸収し、可視光波長域での透過率を高くして(即ち、透明性を確保しつつ)、太陽光からの熱の吸収/遮断を効果的に行うという作用効果に優れることに加え、当該作用効果の持続性に優れる。また、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、耐熱性にも優れ、光照射後の黄変もまた抑制される。
さらに、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、従来のフタロシアニン系化合物と比較して、樹脂と併用した際、特に高い可視光透過率を示す。また、850nm以上にも第2の吸収を持つことから高い近赤外吸収能を有する。さらに、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、樹脂との相溶性に優れ、かつ耐光性、耐熱性、耐候性に優れ、その特性を損なうことなく熱線吸収材として優れた作用効果を奏する。
したがって、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、上記作用効果を熱線吸収材に付与することができる。よって、本発明の他の形態として、本発明に係るフタロシアニン系化合物を含む、熱線吸収材が提供される。なお、上記式(1)で表されるフタロシアニン系化合物は、熱線吸収材中、単独で含まれていてもよいし、2種以上の混合物の形態で含まれていてもよい。
本発明に係る熱線吸収材は、良好な熱線吸収能および透明性を維持しながら、高い耐光性を有する。ゆえに、本発明の熱線吸収材は、乗り物(例えば、自動車、バス、電車等)や建物の窓などの熱線吸収合わせガラス(合わせガラス遮熱中間膜)、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、熱線反射ガラスに好適に用いることができる。例えば、自動車や建物の窓などの熱線吸収ガラスに使用すると、車内や室内の温度の上昇を有効に抑制することができると共に、良好な視界が確保できる。本発明に係る熱線吸収材は、400〜600nmにおける透過率が高く、特に、460nmおよび510nm付近の波長の光(青色光〜緑色光)を透過させやすい。ゆえに、青色光〜緑色光を発するLEDランプの視認性を向上させることができる。よって、例えば、LEDを用いたヘッドライトの視認性が向上するため、本発明に係る熱線吸収材は、乗り物のフロントガラス(熱線吸収合わせガラス)の中間膜に好適に使用できる。
本発明に係る熱線吸収材は、本発明に係るフタロシアニン系化合物を含む。したがって、当該フタロシアニン系化合物を使用する以外は、本発明に係る熱線吸収材は、従来と同様の熱線吸収材として適用できる。
本発明に係る熱線吸収材の形態は、特に制限されず、公知のいずれの形態であってもよいが、用途を考慮すると、通常の形態として、本発明に係るフタロシアニン系化合物に加えて、樹脂を含む。よって、本発明に係る熱線吸収材は、本発明に係るフタロシアニン系化合物に加え、樹脂をさらに含んでいると好ましい。以下、フタロシアニン系化合物および樹脂を含む組成物を「樹脂組成物」とも称することがある。
特に、上記式(1)のフタロシアニン系化合物は、従来技術によるフタロシアニン系化合物と比較して、樹脂と混合した場合であっても、可視光透過率が非常に高いことが判明した。この詳細な理由は不明であるが、以下のように考察される。従来のフタロシアニン系化合物は、樹脂中において吸収スペクトル(吸収帯)がブロード化することにより、可視光透過率が低下する傾向にある。しかしながら、上記式(1)のフタロシアニン系化合物は、ベンゼン環を介して2個のフタロシアニン骨格が連結されてなるため、吸収スペクトル(吸収帯)のブロード化を抑制し、良好な可視光透過率を達成できると推測される。
さらに、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、溶媒溶解性や樹脂との相溶性に優れ、耐光性、耐熱性、耐候性等の諸特性に優れる。このため、プラスチックフィルムなどへの塗布性に優れ、工業的に大面積への塗布(大量生産)が可能である。また同じく、樹脂に直接練り込むこともできることから、大型成形(大量生産)も可能である。
熱線吸収材におけるフタロシアニン系化合物の含有量は、用途または樹脂の厚みによって適宜選択されるが、樹脂の固形分100重量部に対して、0.0005〜20重量部であると好ましく、0.001〜10重量部であるとより好ましい。このような範囲とすることにより、用途にあった熱線吸収能および可視光透過率を有すると共に、優れた耐光性を有する熱線吸収材を得ることができる。
本発明に係る熱線吸収材は、耐光性に優れる。ここで、本発明に係る熱線吸収材の好ましい耐光性(8時間照射前後の最大吸収波長での吸光度の維持率)としては、50%を超え、より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは60.0%を超え、特に好ましくは65%を超える(上限:100%)。なお、当該耐光性は、実施例に記載の方法により測定される値を採用する。
また、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、最大吸収波長(λmax)が700nm以上であり、太陽光の熱線吸収能に大きく関与する波長領域(670〜850nm)の吸収が大きい。ゆえに、上記フタロシアニン化合物を含む本発明に係る熱線吸収材は、熱線吸収能に優れる。より具体的には、本発明に係るフタロシアニン系化合物を含む熱線吸収材は、好ましくは710〜850nm、より好ましくは720〜830nm、特に好ましくは725〜800nmの波長域の光を選択的に吸収することができる。本発明に係るフタロシアニン系化合物または本発明に係るフタロシアニン系化合物を含む熱線吸収材は、例えば、乗り物(例えば、自動車、バス、電車等)や建物の窓などの熱線吸収合わせガラス(合わせガラス遮熱中間膜)、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、熱線反射ガラスに使用すると、車内や室内の温度の上昇を有効に抑制することができる。
また、本発明に係る熱線吸収材は、透明性に優れる(高い可視光透過率を有する)。ここで、本発明に係る熱線吸収材の好ましい可視光透過率(510nmでの透過率)としては、70%以上であり、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上(上限:100%)ある。また、本発明に係る熱線吸収材の好ましい可視光透過率(460nmでの透過率)としては、70%以上であり、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上(上限:100%)である。本発明に係る熱線吸収材の好ましい可視光透過率(610nmでの透過率)としては、70%以上であり、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上(上限:100%)である。なお、上記460nm、510nm及び610nmでの透過率は、実施例に記載の方法により測定される値を採用する。
熱線吸収材に含まれる樹脂としては、一般に光学材料に使用しうるものであれば特に制限されないが、透明性の高いものが好ましく、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;(メタ)アクリル酸エステル樹脂;酢酸ビニル樹脂;ハロゲン化ビニル樹脂;ポリビニルアルコール等のビニル樹脂;ナイロン等のポリアミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアリレート(PAR)等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;エポキシ樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン等のポリアリールエーテル樹脂;ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。上記樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、溶融または溶液化が可能であるものが好ましく使用される。この際、溶融が可能な樹脂を使用し、フタロシアニン系化合物を練りこむことで成形加工が可能な樹脂組成物が得られる。ここで、本発明に係るフタロシアニン系化合物は耐熱性にも優れるため、熱可塑性樹脂を用いて、射出成形、押出成形等の生産性に優れた成形方法を採用することができる。
なかでも、本発明に係る熱線吸収材に含まれる樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリールエーテル樹脂;ポリビニルアセタール樹脂から選択される少なくとも一種を含むと好ましい。さらに、本発明に係るフタロシアニン系化合物との相溶性に優れ、また、特に高い可視光透過率が得られることから、熱線吸収材に含まれる樹脂は、エーテル結合を有すると好ましい。さらに同様の観点から、熱線吸収材に含まれる樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂を含むと特に好ましい。すなわち、本発明の熱線吸収材は、ポリビニルアセタール樹脂をさらに含むことが好ましい。特に、熱線吸収材がD、E及びGが酸素原子である上記式(1)で表されるフタロシアニン系化合物を含む場合、ポリビニルアセタール樹脂に含まれるエーテル結合や水酸基が、フタロシアニン系化合物中のフェノキシ基等と相互作用しやすいため、上記効果がより効果的に得られると推測される。
また、溶液化が可能な樹脂にフタロシアニン系化合物を溶液化することで、コーティング可能な樹脂組成物を得ることができる。このような樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
上記樹脂の分子量は特に制限されないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1万以上であると好ましく、2万以上であるとより好ましい。他方、分子量の上限は特に制限されないが、50万以下程度であると好ましい。
上記樹脂のポリマー構造に制限はなく、直鎖型または分岐型であってもよいが、直鎖型よりも分岐型の方が樹脂は割れにくくなり耐久性が高くなるため好ましい。分岐構造にすると高分子量化した場合でも樹脂の粘度が低く、取り扱いが容易になる。分岐型の樹脂を得るためにはマクロモノマー、多官能モノマー、多官能開始剤、多官能連鎖移動剤が使用できる。
また、上記樹脂は、粘着剤もしくは接着剤、またはこれらの混合物であってもよい。粘着剤や接着剤を用いた場合、他の機能性フィルムと貼りあわせることができるため、簡便かつ経済的に熱線吸収材を製造することができる。
上記の粘着剤として好適な樹脂としては、アクリル系、シリコン系、SBR系等が挙げられる。特に好ましくはエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等を主成分として重合したポリマーであり、具体的にはアクリセット(登録商標)AST((株)日本触媒製)等が挙げられる。さらに、好適な粘着剤は、シクロヘキシル基、イソボルニル基等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合したアクリル樹脂である。また、カルボキシル基等の酸性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合することも可能である。
上記の接着剤として好適な樹脂としては、一般的なシリコン系、ウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等のポリオレフィン系が挙げられる。
熱線吸収材は、さらに溶剤を含んでいてもよい。かような溶剤としては、本発明に係るフタロシアニン系化合物および樹脂を溶解または分散できる溶剤であれば限定されない。例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系;トルエン、キシレン等の芳香族系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;アセトニトリル等のニトリル系;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール等のアルコール系;テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系;ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系:トリエチレングリコールジ−(2−エチル)ブチレート、トリエチレングリコールジ−(2−エチル)ヘキサノエート等のエーテルエステル系;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系が挙げられる。これらは、単独で使用されても、または混合して使用されてもよい。耐久性を向上させるためには、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等の沸点が100℃以下の溶媒が好適である。また、コーティング時の塗膜外観を向上させるためには、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル等の沸点が100〜150℃の溶媒が好適である。塗膜の耐クラック性を向上させるためには、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の沸点が150〜200℃の溶媒が好適である。
本発明に係る熱線吸収材は、可視光吸収色素、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤(以下、一括して、「他の吸収剤」とも称する)をさらに含んでいてもよい。このように他の吸収剤をさらに使用することによって、本発明に係るフタロシアニン系化合物が吸収できない、または吸収が十分でない波長域の光を吸収できる。なかでも、熱線吸収効率を向上させるため、近赤外線吸収剤を含むとより好ましい。
ここで、可視光吸収色素としては、特に制限されず、シアニン系、テトラアザポルフィリン系、アズレニウム系、スクアリリウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯塩系、ビスアゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、インダンスロン系、ニトロソ系、金属チオール錯体系、インジコ系、アゾメチン系、キサンテン系、オキサノール系、インドアニリン系、キノリン系等従来公知の色素を広く使用することができる。例えば、アデカアークルズ(登録商標、以下同じ)TW−1367、アデカアークルズSG−1574、アデカアークルズTW1317、アデカアークルズFD−3351、アデカアークルズY944(いずれも(株)ADEKA製)、NK−5451、NK−5532、NK−5450(いずれも林原生物化学研究所製)等が挙げられる。可視光吸収色素は溶媒に溶解する染料であってもよいし、ヘイズが問題にならない程度に微粒化した顔料であってもよい。
また、近赤外線吸収剤としては、特に制限されず、用途に応じて公知の近赤外線吸収剤が適宜選択されうる。近赤外線吸収剤を別途添加することによって、熱線吸収能(最大吸収波長(λmax)、半値幅など)、透明性(可視光透過率(400〜650nm、特に460nm、510nm、610nm)など)および耐光性、ならびにこれらのバランスなどを適切に制御できる。ここで、別途添加される近赤外線吸収剤は、所望の効果(熱線吸収能、透明性および耐光性、ならびにこれらのバランスなど)に応じて適宜選択できる。具体的には、特願2019−111117号明細書、特願2019−079505号明細書、特開2019−127549号公報、特開2019−6747号公報、特開2018−053135号公報、特開2017−031397号公報、特開2016−218167号公報、特開2016−204536号公報、特開2016−153473号公報、特開2016−108431号公報、特開2016−108431号公報、特開2016−053617号公報、WO 2014/208484号パンフレット、特開2014−208819号公報、特開2014−122205号公報、特開2014−024763号公報、特開2014−019754号公報、特開2014−015542号公報、特開2013−241563号公報、特開2013−185098号公報、特開2011−116918号公報に記載されるフタロシアニン化合物やナフタロシアニン化合物などが挙げられる。
または、下記式(10)の構造を有するフタロシアニン化合物(以下、「式(10)のフタロシアニン化合物」とも称する)が好ましく使用される。
Figure 2021091882
上記式(10)中、Z〜Z16は、それぞれ独立して、*で表される各結合部位のいずれかに結合する。
X’は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表わす。ここで、ハロゲン原子は、特に制限されず、上記式(1)中の置換基「X」と同様の説明であるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、溶解性や吸収波長などの観点から、X’は、水素原子、塩素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。p’は、置換基「X’」がフタロシアニン骨格に導入される数であり、0〜6である。溶解性や吸収波長などの観点から、p’は、好ましくは0〜4、より好ましくは0〜2である。
また、式(10)のフタロシアニン化合物は、下記構造の置換基(「置換基(a’)」とも称する)を有し得る。置換基(a’)は、置換もしくは無置換のフェノキシ基(G’=−O−)、置換もしくは無置換のフェニルチオ基(ベンゼンスルフェニル基)(G’=−S−)または無置換もしくは置換アニリノ基(G’=−N(R4’)−または−N(R4’)−(R5’)−)である。
Figure 2021091882
ここで、置換基(a’)中において、G’は、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R4’)−または−N(R4’)−(R5’)−)を表わす。なお、置換基(a’)が複数存在する(o’が2以上である)場合には、各G’は、同じであってもまたは異なるものであってもよい。これらのうち、溶解性や吸収波長などの観点から、G’は、酸素原子、窒素原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。また、Gが窒素原子(−N(R4’)−または−N(R4’)−(R5’)−)である際の、R4’は、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わす。ここで、R4’は、上記式(1)中の置換基「R」と同様の説明であるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、溶解性や吸収波長などの観点から、R4’は、メチル基、エチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。R5’は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表わす。ここで、R5’は、上記式(1)中の置換基「R」と同様の説明であるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、R5’は、エチリデン基(−CH(CH)−)、メチレン基(−CH−)であることが好ましく、エチリデン基であることがより好ましい。上記置換基(a’)中、R10は、−G’−Ph(Ph=フェニル基)中に存在しえる置換基であり、それぞれ独立して、ハロゲン原子、−COOR、−CONHR、−CONR、フェニル基または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わす。ここで、R10が複数存在する(r’が2以上である)場合には、各R10は、同じであってもまたは異なるものであってもよい。ここで、R10は、上記式(1)中の置換基「R」と同様の説明であるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、溶解性や吸収波長などの観点から、R10は、好ましくはフェニル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。r’は、置換基「R10」が−G’−Ph(Ph=フェニル基)のフェニル基に導入される数であり、それぞれ独立して、0〜5である。これらのうち、溶解性や吸収波長などの観点から、r’は、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2である。ここで、R10のフェニル基への導入位置は特に制限されない。例えば、r’が1である場合には、R10は、2位、3位、4位のいずれでもよいが、耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、2位、4位が好ましく、2位がより好ましい。また、r’が2である場合には、R10は、2,6位、2,5位、2,4位、3,4位、3,5位などに存在できる。これらのうち、耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、2,5位、2,6位が好ましい。r’が3である場合には、R10は、2,4,6位、2,5,6位などに存在できる。o’は、置換基(a’)がフタロシアニン骨格に導入される数であり、0〜16である。溶解性や吸収波長などの観点から、o’は、好ましくは6〜16である。フタロシアニン骨格に16個の置換基(a’)が導入される(o’=16)式(10)のフタロシアニン化合物は、吸収波長が長波長側にシフトする。このため、吸収波長が長波長である熱線吸収材を得ようとする場合には、フタロシアニン骨格に16個の置換基(a’)が導入される(o’=16)式(10)のフタロシアニン化合物を使用することが好ましい。なお、置換基(a’)(−G’−Ph:Ph=1以上の置換基R10を有していてもよいフェニル基)がフタロシアニン骨格に導入される位置は、特に制限されず、α位、β位またはα位とβ位との混在のいずれでもよい。溶解性や吸収波長などの観点から、置換基(a’)は、フタロシアニン骨格の少なくともα位に存在することが好ましい。
また、式(10)のフタロシアニン化合物は、下記構造の置換基(「置換基(b’)」とも称する)を有し得る(フタロシアニン骨格の一部にナフタレン骨格が導入されてもよい)。
Figure 2021091882
置換基(b’)は、上記式(1)中のZ〜Z、Z〜Z、Z〜Z12、Z13〜Z16の隣接する2つの部位に結合し、フタロシアニン骨格のβ位−β位またはα位−β位にわたって導入されてもよい。なお、本明細書中、「隣接する2つの部位」とは、1つのベンゼン環上において、ある部位を基準として、オルト位(2位)に存在する部位を意味する。例えば、「隣接する2つの部位」としては、ZとZ、ZとZ、ZとZ等である溶解性や吸収波長などの観点から、β位−β位(例えば、ZとZ)にわたって導入されることが好ましい。この際、同一の構成単位(Z〜Z、Z〜Z、Z〜Z12、Z13〜Z16)中の残りの置換基がX’であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。すなわち、フタロシアニン骨格が下記構造を有することが特に好ましい。
Figure 2021091882
n’は、置換基(b’)がフタロシアニン骨格に導入される数であり、0〜8である。溶解性や吸収波長などの観点から、n’は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、より好ましくは0または1である。置換基(b’)をフタロシアニン骨格に導入することにより、より高い平面性を有する分子を形成することができるため、平面性が高い状態で各分子が互いに積層しやすくなる。その結果、このような構造の式(10)のフタロシアニン化合物をさらに使用することにより、熱線吸収材により高い耐光性を付与できる。また、当該構造の導入による共役系の拡張により、分子内における電子的な安定性が増す。これにより、熱線吸収材に樹脂等の媒体を使用した場合、紫外線の照射に起因する活性酸素、ラジカルなどによるフタロシアニン化合物への攻撃が抑制でき、その結果、フタロシアニン化合物の分解を有効に抑制・防止できる。よって、このような構造の式(10)のフタロシアニン化合物をさらに用いた熱線吸収材では耐光性をさらに向上できる。さらに、上記のような共役系の拡張により、フタロシアニン化合物の最大吸収波長(λmax)は長波長側へシフトする。その結果、このような構造の式(10)のフタロシアニン化合物をさらに含む熱線吸収材は、良好な熱線吸収能を維持しつつ、可視光透過率をさらに向上できる。このため、式(10)のフタロシアニン化合物のうち、少なくとも1つは、置換基(b’)を有することが好ましい。
また、式(10)のフタロシアニン化合物は、下記構造の置換基(「置換基(c’)」とも称する)を有し得る。
Figure 2021091882
上記置換基(c’)中、D’およびE’は、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R4’)−または−N(R4’)−(R5’)−)を表わす。なお、D’およびE’は、同じであってもまたは異なるものであってもよい。また、置換基(c’)が複数存在する(m’が2以上である)場合には、各置換基(c’)は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。これらのうち、溶解性や吸収波長などの観点から、D’およびE’は、酸素原子であることが好ましい。また、D’およびE’が窒素原子(−N(R4’)−または−N(R4’)−(R5’)−)である際の、R4’は、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わし、この際のR4’は上記式(1)中の置換基(a)での説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。R5’は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表わす。ここで、R5’は、上記式(1)中の置換基(a)での説明と同様の説明であるため、ここでは説明を省略する。rは、置換基(c’)において、−D’−Ph(Ph=フェニル基)と−E’−Ph(Ph=フェニル基)とを連結するアルキレン基の炭素原子数を表わし、0〜5である。溶解性や吸収波長などの観点から、rは、好ましくは0〜3であり、特に好ましくは0である。−D’−Ph(Ph=フェニル基)と−E’−Ph(Ph=フェニル基)とを連結する位置は、特に制限されない。具体的には、−D’−Phの2位と−E’−Phの2位と、−D’−Phの3位と−E’−Phの3位とが連結することが好ましく、−D’−Phの2位と−E’−Phの2位とが連結することが特に好ましい。すなわち、上記構造は、下記構造であることが好ましい。
Figure 2021091882
また、置換基(c’)は、上記式(10)中のZ〜Z、Z〜Z、Z〜Z12、Z13〜Z16の隣接する2つの部位に結合し、フタロシアニン骨格のβ位−β位(例えば、ZとZ)またはα位−β位(例えば、ZとZ、ZとZ)にわたって導入されてもよい。溶解性や吸収波長などの観点から、上記構造は、下記:
Figure 2021091882
のようにβ位−β位にわたって導入されることが好ましく、フタロシアニン骨格が下記構造:
Figure 2021091882
を有することが特に好ましい。なお、上記構造において、α位には、他の置換基が導入される。また、m’は、置換基(c’)がフタロシアニン骨格に導入される数であり、0〜8である。溶解性や吸収波長などの観点から、m’は、好ましくは0〜6であり、より好ましくは0〜4である。
なお、上記式(10)中、m’、n’、o’及びp’は、下記関係を満たす。
Figure 2021091882
Mは、中心金属であり、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす。ここで、各フタロシアニン骨格におけるM(中心金属)は、同じであってもまたは異なるものであってもよい。ここで、Mは、特に制限されず、上記式(1)中の中心金属「M」と同様の説明であるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、耐光性、熱線吸収能および可視光透過率の向上効果などの観点から、中心金属Mは、好ましくは亜鉛、銅、バナジウムならびにこれらの金属酸化物およびハロゲン化物から選択される。なお、特に良好な可視光透過率が得られるという観点から、中心金属Mは、銅、亜鉛およびバナジルから選択されることがより好ましい。これらからMを選択することにより、吸収スペクトル(吸収帯)をよりシャープにし、可視光透過率をさらに向上させることができる。また、耐光性をさらに向上させるという観点からは、中心金属Mは、銅またはバナジルであると好ましく、銅であるとより好ましい。特に、銅は、他の原子を伴うことなく(例えば、バナジルであればV以外に酸素原子を伴うため、平面性は低下する)、二価イオンとしてフタロシアニン骨格内に存在できることから、高い平面性を有するフタロシアニン化合物を得ることができる。そのことにより銅は複数の分子が積層しやすく、色素分子が安定化しやすい。このような観点からも耐光性の向上に寄与していると考えられる。一方で、可視光透過率を向上させ、また、溶媒等に対する溶解性を向上させるといった観点からは、中心金属Mは、亜鉛またはバナジルであると好ましく、亜鉛であるとより好ましい。
上記に加えてまたは上記に変えて、最大吸収波長が好ましくは750nm以上、より好ましくは800nm以上である近赤外線吸収剤を使用してもよい。ここで、最大吸収波長の最大値は特に制限されないが、1500nm以下であると好ましく、1000nm以下であると特に好ましい。当該波長域の光を吸収する近赤外線吸収剤を使用することによって、本発明に係るフタロシアニン系化合物が吸収できない、または吸収が十分でない波長域の光を吸収できるため、熱線遮蔽効果をさらに向上できる。なお、他の吸収剤としての近赤外線吸収剤は、本発明に係るフタロシアニン系化合物とは異なる色素である。このような他の吸収剤としての近赤外線吸収色素としては、特に制限されず、所望の吸収スペクトルが得られるように適宜選択できる。より具体的には、特開2000−26748号公報、特開2001−106689号公報、特開2004−018561号公報、特開2007−56105号公報、特開2011−116918号公報等に記載されるフタロシアニン化合物を用いてなる近赤外吸収色素などが挙げられる。また、他の吸収剤としての近赤外線吸収色素は、市販品を用いてもよい。市販品としては、IR−915、IR−12、IR−14、IR−20、HA−1(いずれも、株式会社日本触媒製のフタロシアニン化合物)等が挙げられる。
また、紫外線吸収剤としては、特に制限されず、公知の紫外線吸収剤が使用できる。具体的には、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、シアノアクリレート系の化合物が好適に使用される。特にヒンダードアミン系が好ましい。
上記他の吸収剤は単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を混合して使用してもよく、用途によって適宜選択することが出来る。好ましくは、本発明に係る熱線吸収材は、近赤外吸収色素をさらに含むことが好ましく、800nm以上の最大吸収波長を有する近赤外吸収色素をさらに含むことがより好ましい。
熱線吸収材中における上記他の吸収剤の含有量は特に制限されず、用途により要求される吸収波長域、可視光透過率および日射透過率が異なるため、一概には決定することはできない。上記他の吸収剤の含有量の一例としては、樹脂の固形分100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.005〜8重量部である。また、本発明に係るフタロシアニン系化合物との混合比もまた、特に制限されないが、本発明に係るフタロシアニン系化合物100重量部に対して、他の吸収剤は1〜1000重量部含まれていると好ましく、10〜500重量部含まれているとより好ましい。または、他の吸収剤が、本発明に係るフタロシアニン系化合物 1モルに対して、0.2〜3モル、より好ましくは0.5〜2モルの割合で含まれると好ましい。なお、他の吸収剤が2種以上含まれる場合には、上記他の吸収剤の量は、これらの合計量を意味する。かような範囲であれば、可視光線の透過率に影響することなく、日射透過率を下げることができる。好ましい可視光線の透過率としては、70%以上であり、より好ましくは80%以上である。
また、本発明に係る熱線吸収材は、800nm以上に最大吸収波長を有する熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)をさらに含んでいてもよい。このように熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)を使用することによって、本発明に係るフタロシアニン系化合物による吸収能力の低い近赤外領域での熱線吸収能力を向上できる。すなわち、上記熱線吸収材において、800nm以上に最大吸収波長を有する熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)をさらに含む形態も本発明の好ましい形態の一つである。また、熱線吸収材が800nm以上の最大吸収波長を有する近赤外吸収色素および800nm以上に最大吸収波長を有する熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)の少なくとも一方をさらに含む形態も本発明の好ましい形態の一つである。
上記熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)としては、熱線吸収能または紫外線吸収能を有するものが好ましい。具体的には、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、セシウムドープ酸化タングステン(CsWO)等のアルカリ金属ドープ酸化タングステン、酸化アンチモン、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アンチモン酸亜鉛、六ホウ化ランタン等が挙げられる。熱線吸収能を有する熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)は本発明に係るフタロシアニン系化合物や有機色素では吸収することのできない波長域である900nm以上、好ましくは1100nm以上、より好ましくは1200nm以上を吸収することができ、可視光透過率を維持したまま日射透過率を下げることができる。より好ましくは、アルカリ金属ドープ酸化タングステン、酸化インジウムスズまたはアンチモンドープ酸化スズである。具体的には、アルカリ金属ドープ酸化タングステンとしては、SG−IRC90SPM(Sukgyung社製)等がある。酸化インジウムスズとしては、PI−3(三菱マテリアル製)等がある。アンチモンドープ酸化スズとしては、SNS−10M、SNS−10T、SN100P、SN−100D、FS−10P、FS−10D(いずれも石原産業製)等がある。これらは微粒子状であり、平均分散粒子径は0.001〜0.2μmであると好ましく、0.005〜0.15μmであるとより好ましい。かような範囲であると透明性を損なわないので好ましい。
熱線吸収材中における上記熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)の含有量は特に制限されず、用途により要求される吸収波長域、可視光透過率および日射透過率が異なるため、一概には決定することができない。上記熱線吸収無機化合物(無機系熱線吸収材料)の含有量の一例としては、本発明に係るフタロシアニン系化合物100重量部に対して、好ましくは1〜1000重量部、より好ましくは10〜500重量部である。かような範囲であれば、可視光線の透過率に影響することなく、日射透過率を下げることができる。
さらに、熱線吸収材には、その性能を失わない範囲でイソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、UV硬化剤等の樹脂硬化剤を使用してもよい。ただし、硬化剤を使用しない樹脂組成物の方が、コーティング液のポットライフが長くエージングが不要になるため、より好ましい。
さらにまた、熱線吸収材にはフィルムやコーティング剤等に使用される公知の添加剤を用いることができ、該添加材としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤、つや消し剤、粘着付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定化剤、消光剤、硬化剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、滑り剤等が挙げられる。
本発明に係る熱線吸収材の使用形態は、特に限定されず、公知のいずれの形態であってもよい。具体的には、熱線を吸収/遮蔽することが好ましい対象物(透明基材)上に、フタロシアニン系化合物を含む塗膜またはフィルムが形成されてなる形態(形態(a));2枚の対象物(透明基材)の間にフタロシアニン系化合物含有中間層を設けてなる積層体の形態(形態(b));上記対象物中にフタロシアニン系化合物を含有してなる形態(形態(c))などが挙げられる。これらのうち、上記形態(a)および(b)が好ましく、上記形態(b)が特に好ましい。さらに上記形態(b)としては、樹脂組成物で2枚の透明基材を接着してなる形態が好ましい。
本発明に係る熱線吸収材の厚みについて、特に制限はなく、目的、用途に応じて適宜決定される。熱線吸収材の厚み(乾燥膜厚)は、好ましくは0.1μmから10mmである。また熱線吸収材に含まれるフタロシアニン系化合物の含有量も目的、用途に応じて、適宜決定される。熱線吸収材の厚みに関係なく、フタロシアニン系化合物の含有量を表示するとすれば、上方からの投影面積中の質量と考えて、0.01〜2.0g/mの配合量であると好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.0g/mである。かような範囲とすることにより、可視光線の透過率が高く、また、十分な熱線吸収効果が得られる。可視光透過率は用途により異なるが、好ましい可視光線の透過率としては、70%以上である。より好ましくは80%以上である。
熱線を吸収/遮蔽することが好ましい対象物(透明基材)は、一般に光学材に使用しうるものであって、実質的に透明であれば特に制限はない。具体的な例としては、ガラス、シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系エステル樹脂、ポリスチレン等のビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PETやPAR等のポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリールエーテル樹脂等が挙げられる。透明基材として、ガラス等の無機基材を使用する場合にはアルカリ成分が少ないものが色素の耐久性の観点から好ましい。
透明基材として樹脂系材料を使用する場合には、樹脂に公知の添加剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防止剤等を配合することができ、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶融させてキャスティングする方法等で所望の形状に成形される。かかる透明基材は、必要に応じて延伸したり、他の樹脂と積層したりしてもよい。また、透明基材は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施してもよい。
上記樹脂組成物を透明基材に塗布する際には公知の塗工機が使用できる。例えばコンマコーター等のナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、マイクログラビアコーター等のキスコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等のロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーター、スピンコーターが挙げられる。塗布前にコロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法で基材の表面処理を行ってもよい。乾燥、硬化方法としは熱風、遠赤外線、UV硬化等公知の方法が使用できる。乾燥、硬化後は公知の保護フィルムとともに巻き取ってもよい。
樹脂組成物を塗布する場合、その塗膜の厚みに制限はないが、目的に応じて適宜決定される。好ましくは0.2μmから20mmである。
上記形態(a)において、本発明に係る熱線吸収材がフィルム形態である場合、透明基材としてはPETフィルムが好ましく、特に易接着処理をしたPETフィルムが好適である。具体的にはコスモシャイン(登録商標)A4300(東洋紡績製)、ルミラーU34(東レ製)、メリネックス705(帝人デュポン製)等が挙げられる。
上記フィルム形態である場合は、熱線吸収材に使用する樹脂は粘着剤樹脂またはUV硬化樹脂であると好ましい。粘着剤樹脂またはUV硬化樹脂を使用した場合、塗膜はフィルムの片面に形成してもよいし、両面に形成してもよいが、好ましくは片面に塗布する。フィルムに塗膜を形成する場合は、樹脂組成物の塗工液を透明基材上に直接塗布してもよいし、離型性のある基材上に塗布した樹脂組成物の塗膜を透明基材上に転写してもよい。また、フィルムの反対面にUV硬化性の塗膜を形成してもよい。その場合は、上記フタロシアニン系化合物、UV硬化性モノマーまたはオリゴマー、光重合開始剤を含む塗工液を透明基材上に塗布するのがよい。また、フィルムの反対面に粘着剤を塗布してもよい。
上記形態(b)において、熱線吸収材が、上記樹脂組成物で2枚の透明基材を接着させてなる形態である場合、透明基材としてはガラス、PETフィルムが好ましい。2枚のガラス基材を接着する際の樹脂組成物に含まれる樹脂としては、接着性の観点から、ポリビニルアセタール樹脂(特にポリビニルブチラール樹脂)を使用すると好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂(特にポリビニルブチラール樹脂)は、上記のように、可視光透過率を向上させるという観点からも好ましい。
熱線吸収材を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、(1)樹脂組成物を混練、加熱成形する方法、(2)フタロシアニン系化合物と、硬化性モノマーあるいはオリゴマーおよび重合開始剤とともに型枠の中で重合し、成形する方法等が利用できる。
樹脂組成物を混練、加熱成形する際の成形条件は樹脂の種類により異なるが、通常、フタロシアニン系化合物を熱可塑性樹脂の粉体に溶融し混練後にペレット化してフタロシアニン系化合物濃度の高いマスターバッチとする。このマスターバッチをさらに該熱可塑性樹脂で希釈、溶融、混練、成形する方法が挙げられる。
本発明に係る熱線吸収材に用いられるフタロシアニン系化合物は、従来の赤外線吸収剤と比較して、耐熱性に優れているため、熱可塑性樹脂を用いて、射出成形、押出成形といった、樹脂温度が200〜350℃という高温まで上昇する成形方法を採用することが可能であり、透明性に優れ、熱線遮蔽性能に優れた成形品を得ることができる。
上記熱可塑性樹脂としては、シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン等のビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PETやPAR等のポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリールエーテル樹脂等が挙げられる。
また、フタロシアニン系化合物と、硬化性モノマーあるいはオリゴマー、および重合開始剤とともに型枠の中で重合し成形する方法(上記(2)の方法)で用いられる硬化性モノマーあるいはオリゴマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド等を生成するモノマーまたはオリゴマー等が挙げられる。重合開始剤はモノマーやオリゴマーに応じて好適なものが使用できる。
樹脂組成物を成形する際、上記熱線吸収材は形状に制限はなく、用途に応じて適宜形成できる。平板状、フィルム状、波板状、球面状、ドーム状等様々な形状のものが含有される。厚みは、特に制限されないが、0.05〜20mmが好ましい。このような範囲であれば、熱線吸収材として十分な強度や安全性が得られる。
本発明に係る熱線吸収材は、建築物や車輌用のウインドーフィルム、熱線吸収合わせガラス(合わせガラス遮熱中間膜)、熱線吸収樹脂グレージング、採光建材等に好適である。フィルム状の透明基材上に本発明に係る樹脂組成物の塗膜を形成してなる熱線吸収材は、ウインドーフィルムとして使用できる。ウインドーフィルムは建築物の内側に貼っても外側に貼ってもよい。ウインドーフィルムとして使用する場合は上記フタロシアニン系化合物を含む層の日射側に紫外線吸収層を設けることが好ましい。また、採光建材等のシート状の成形体として使用する場合は、多層押し出し方式により最外層に紫外線吸収材を添加し、内部層に本発明に係る熱線吸収材を使用するのが好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。下記において、特記しない限り、室温は、25℃を意味する。
<合成例1−1:フタロニトリル中間体(a)の合成>
以下のようにして、下記構造を有するフタロニトリル中間体(a)を合成した。
Figure 2021091882
50mlの反応容器に、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリル1.6g、2,2’−ジヒドロキシビフェニル1.49g、およびアセトニトリル20gを投入し、5℃に保持した状態で炭酸カリウム2.32gを逐次投入した。次いで、60℃で1時間反応後、2,6−ジメチルフェノール0.98g、2,5−ジメチルフェノール0.98g、および炭酸カリウム2.32gを投入し、80℃に昇温して、約6時間反応させた。その後、反応液を熱時濾過し、無機成分を除去後、濾液から溶媒を減圧留去した。その後、クロロホルムを溶媒としてカラム精製(充填剤:シリカゲル60N、関東化学株式会社製)を行い、目的とするフタロニトリル中間体(a)3.85g(収率87.4モル%)を得た。
<合成例1−2:フタロニトリル中間体(b)の合成>
以下のようにして、下記構造を有するフタロニトリル中間体(b)を合成した。
Figure 2021091882
合成例1−1において、2,2’−ジヒドロキシビフェニルのかわりに、2,5−ジメチルフェノール1.96gを使用した以外は、合成例1−1と同様に操作し、目的とするフタロニトリル中間体(b)4.87g(収率80.0モル%)を得た。
<合成例1−3:フタロニトリル中間体(c)の合成>
下記構造を有するフタロニトリル中間体(c)を合成した。
Figure 2021091882
50mlの反応容器に、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリル1.6g、フッ化カリウム1.12gおよびアセトン20gを投入し、攪拌した。次いで、2,5−ジクロロルフェノール2.61gをアセトン5gに溶解した溶液を5℃に保持した状態で滴下して、1時間攪拌反応させた。さらに、60℃で約3時間反応させた。その後、反応液を熱時濾過し、無機成分を除去後、濾液から溶媒を減圧留去した。その後、合成例1−1と同様にカラム精製を行い、目的とするフタロニトリル中間体(c)2.43g(収率79.1モル%)を得た。
<合成例2−1:フタロシアニン化合物(a)[(2,2’−PhOPhO)(2,6−MePhO)(2,5−MePhO)(Np)CuPc]の合成>
以下のようにして、主として下記構造を有するフタロシアニン化合物(a)を合成した。
Figure 2021091882
50ml反応器に、上記合成例1−1で得られたフタロニトリル中間体(a)2.75g、2,3−ジシアノナフタレン0.297g、塩化銅(I)0.182g、ベンゾニトリル4gおよび1−オクタノール1gを投入し、窒素ガス雰囲気下190℃で8時間撹拌した。混合物を25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により粗生成物を得た。その後、クロロホルムを溶媒としてカラム精製(充填剤:シリカゲル60N、関東化学株式会社製)を行い、フタロシアニン化合物(a)1.97g(中間体(a)に基づく収率62.4モル%)を得た。
<合成例2−2:フタロシアニン化合物(b)[(2,2’−PhOPhO)(2,6−MePhO)(2,5−MePhO)CuPc]の合成>
以下のようにして、主として下記構造を有するフタロシアニン化合物(b)を合成した。
Figure 2021091882
合成例2−1において、2,3−ジシアノナフタレンは加えず、塩化銅(I)の量を0.136gにかえた以外は、合成例2−1と同様に操作し、フタロシアニン化合物(b)1.63g(中間体(a)に基づく収率57.5モル%)を得た。
<合成例2−3:フタロシアニン化合物(c)[(2,5−MePhO)(2,6−MePhO)(2,5−MePhO)(Np)CuPc]の合成>
以下のようにして、主として下記構造を有するフタロシアニン化合物(c)を合成した。
Figure 2021091882
合成例2−1においてフタロニトリル中間体(a)のかわりに、フタロニトリル中間体(b)3.04gを使用した以外は、合成例2−1と同様に操作し、フタロシアニン化合物(c)2.44g(中間体(b)に基づく収率70.8モル%)を得た。
<合成例2−4:フタロシアニン化合物(d)[(2,5−MePhO)(2,6−MePhO)(2,5−MePhO)CuPc]の合成>
以下のようにして、主として下記構造を有するフタロシアニン化合物(d)を合成した。
Figure 2021091882
合成例2−3において2,3−ジシアノナフタレンは加えず、塩化銅(I)の量を0.136gにかえた以外は、合成例2−1と同様に操作し、フタロシアニン化合物(d)2.13g(中間体(b)に基づく収率68.2モル%)を得た。
<実施例1:フタロシアニン系化合物(1)[(2,2’−PhOPhO)(2,6−MePhO)(2,5−MePhO)(Np)(CuPc)]の合成>
以下のようにして、主として下記構造を有するフタロシアニン系化合物(1)を合成した。
Figure 2021091882
50ml反応器に、上記合成例1−1で得られたフタロニトリル中間体(a)2.2g、2,3−ジシアノナフタレン0.143g、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン0.143g、塩化銅(I)0.174g、ベンゾニトリル4gおよび1−オクタノール1gを投入し、窒素ガス雰囲気下190℃で8時間撹拌した。混合物を25℃に冷却後、反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により粗生成物を得た。その後、クロロホルムを溶媒としてカラム精製(充填剤:シリカゲル60N、関東化学株式会社製)を行い、フタロシアニン系化合物(1)1.29g(中間体(a)に基づく収率49.9モル%)を得た。
(850nm以上の波長域の最大吸収波長λmax(850up)の測定)
得られたフタロシアニン系化合物(1)の吸収波長を分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製:U−2910)を用いてテトラヒドロフラン(THF)溶媒中で測定した。その結果、フタロシアニン系化合物(1)は、最大吸収波長(730nm)よりも更に長波長の波長域(特に850nmより長波長域)に波長の山(第2の吸収)が観察された。この吸収ピーク(850nm以上の最大吸収波長を「λmax(850up)」とも称する)は、880nm[λmax(850up)=880nm]であった。
<実施例2:フタロシアニン系化合物(2)[(2,2’−PhOPhO)(2,6−MePhO)(2,5−MePhO)(Np)(CuPc)]の合成>
実施例1において、2,3−ジシアノナフタレンの量を0.356gに、1,2,4,5−テトラシアノベンゼンの量を0.178gに、および塩化銅(I)の量を0.218gに、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様に操作し、フタロシアニン系化合物(2)1.58g(中間体(a)に基づく収率55.2モル%)を得た。なお、このようにして得られたフタロシアニン系化合物(2)は、主として下記構造を有する。
Figure 2021091882
(850nm以上の波長域の最大吸収波長λmax(850up)の測定)
得られたフタロシアニン系化合物(2)について、実施例1と同様にして、吸収波長を測定したところ、第2の吸収がλmax(850up)=889nmで観察された。
<実施例3:フタロシアニン系化合物(3)[(2,5−MePhO)10(2,6−MePhO)(2,5−MePhO)(Np)(CuPc)]の合成>
実施例1において、フタロニトリル中間体(a)のかわりに、合成例1−2で得られたフタロニトリル中間体(b)2.43gを使用した以外は、実施例1と同様に操作し、フタロシアニン系化合物(3)1.47g(中間体(b)に基づく収率53.1モル%)を得た。なお、このようにして得られたフタロシアニン系化合物(3)は、主として下記構造を有する。
Figure 2021091882
(850nm以上の波長域の最大吸収波長λmax(850up)の測定)
得られたフタロシアニン系化合物(3)について、実施例1と同様にして、吸収波長を測定したところ、第2の吸収がλmax(850up)=891nmで観察された。
フタロシアニン系化合物(1)〜(3)で観察された850nmより長波長域での第2の吸収は、フタロシアニン骨格を1つのみ有するフタロシアニン化合物では観察されない。このため、この第2の吸収[λmax(850up)]はフタロシアニン骨格を2個ベンゼン環を介して有する場合に特有に観察されるものであり、このような第2の吸収[λmax(850up)]を有するフタロシアニン化合物は本発明に係るフタロシアニン系化合物であると特定できると考察される。
<実施例4:最大吸収波長(λmax)、可視光透過率および耐光性の評価>
上記実施例1で得られたフタロシアニン系化合物(1)について、下記方法に従って、最大吸収波長(λmax)、青色(460nm)の透過率(補正値)(可視光透過率)、近赤外吸収の半値幅および耐光性残存率(8時間後)(耐光性)を測定した。これらの結果を下記表2に示す。なお、測定は、以下のように行った。
(塗料溶液の調製と塗膜の作製)
フタロシアニン系化合物(1)を、樹脂の固形分に対して含有量が1.6重量%になるようにポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製:エスレック(登録商標)BL−S、重量平均分子量 約23,000)に加えた。さらに可塑剤としてトリエチレングリコールジ−2−エチルヘサノエートを前記ポリブチラール樹脂に対し25重量%添加し、最後に溶剤としてテトラヒドロフランを加えて固形分濃度が20重量%となるように調節し、溶解することで塗料溶液を得た。得られた塗料溶液を、60番のバーコーターを用いてガラス板に塗布し(膜厚:90μm)、室温で乾燥させた。その後、さらに100℃で10分間乾燥させ、フタロシアニン系化合物含有ブチラール塗膜(乾燥膜厚:約20μm)を形成した。
(最大吸収波長(λmax)、半値幅および吸光度の測定、ならびに透過率(補正値)の算出)
上記にて得られたフタロシアニン系化合物含有ブチラール塗膜の吸光度を分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製:U−2910)を用いて測定し、最大吸収波長(λmax)およびその際の吸収の半値幅を求めた。また、以下の式(1)を用いて最大吸収波長(λmax)の透過率を0%に換算した際の460nmにおける透過率を補正値(%)として求めた。結果を下記表2に示す。
Figure 2021091882
(耐光性の評価)
上記(塗料溶液の調製と塗膜の作製)と同様にして得られたフタロシアニン系化合物含有ブチラール塗膜が形成されたガラス板を形成した。このガラス板を、耐光性試験機(スガ試験機株式会社製:メタリングウエザーメーター M6T)を用いて、光源との距離を約100mmに設定し、放射照度0.75kW/mの光を塗膜面から照射して、耐光性を評価した。耐光性の評価は、最大吸収波長(λmax)における初期吸光度(λmax0hr)と8時間照射後の吸光度(8時間後の吸光度(λmax8hr))をそれぞれ測定し、初期吸光度に対する8時間後の吸光度の残存率(%)(=(λmax8hr/λmax0hr)×100)で評価した。結果を下記表2に示す。なお、本評価で使用されるメタリングウエザーメーターでの照射光の強度は、通常耐光性の評価で使用されるキセノンウェーザーメーターに比して10倍程度高い(即ち、本耐光性の評価は、非常に厳しい条件下での評価である)。
<実施例5>
実施例1で得られたフタロシアニン系化合物(1)と、合成例2−1で得られたフタロシアニン化合物(a)と、合成例2−2で得られたフタロシアニン化合物(b)とを、2:1:1のモル比で混合して、混合物(1)を調製した。
上記で得られた混合物(1)について、上記実施例4と同様にして、最大吸収波長(λmax)、青色(460nm)の透過率(補正値)(可視光透過率)、近赤外吸収の半値幅および耐光性残存率(8時間後)(耐光性)を測定した。結果を下記表2に示す。
<実施例6>
実施例2で得られたフタロシアニン系化合物(2)と、合成例2−1で得られたフタロシアニン化合物(a)とを、1:1のモル比で混合して、混合物(2)を調製した。
上記で得られた混合物(2)について、上記実施例4と同様にして、最大吸収波長(λmax)、青色(460nm)の透過率(補正値)(可視光透過率)、近赤外吸収の半値幅および耐光性残存率(8時間後)(耐光性)を測定した。結果を下記表2に示す。
<実施例7>
実施例3で得られたフタロシアニン系化合物(3)と、合成例2−3で得られたフタロシアニン化合物(c)と、合成例2−4で得られたフタロシアニン化合物(d)とを、2:1:1のモル比で混合して、混合物(3)を調製した。
上記で得られた混合物(3)について、上記実施例4と同様にして、最大吸収波長(λmax)、青色(460nm)の透過率(補正値)(可視光透過率)、近赤外吸収の半値幅および耐光性残存率(8時間後)(耐光性)を測定した。結果を下記表2に示す。
<比較例1:比較フタロシアニン化合物(i)[(2−PhPhO)(2−PhPhO)NpCuPc]の合成>
特開2014−122205号公報の実施例15に記載の方法に従って得られた、以下の構造を有するフタロシアニン化合物を比較フタロシアニン化合物(i)とした。
Figure 2021091882
上記で得られた比較フタロシアニン化合物(i)について、上記実施例4と同様にして、最大吸収波長(λmax)、青色(460nm)の透過率(補正値)(可視光透過率)、近赤外吸収の半値幅および耐光性残存率(8時間後)(耐光性)を測定した。結果を下記表2に示す。
Figure 2021091882
上記表2より、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、良好な可視光透過率を維持しながら、優れた耐光性を有することが示された。また、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、長波長領域(具体的には、730nm以上)に最大吸収波長および大きな半値幅を有することから、良好な熱線吸収能を発揮できると考察される。これに対して、比較例1の比較フタロシアニン化合物(i)は、可視光透過率及び熱線吸収能には優れるものの、耐光性の点で劣ることがわかる。
したがって、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、熱線吸収合わせガラス(中間膜)等に好適に利用できる。例えば、自動車のフロントガラス用の中間膜に用いた場合には、高い透明性(可視光透過率)を確保しながら、太陽光の熱線を効果的に遮蔽し、冷房効率を向上できる。また、この際、耐光性も高いことから、長期間に亘り安定的に熱線遮蔽効果を維持できると考察される。
<実施例8:フタロシアニン系化合物(6)[(2,5−ClPhO)1212(ZnPc)]の合成>
実施例1において、フタロニトリル中間体(a)及び2,3−ジシアノナフタレンのかわりに合成例1−3で得られたフタロニトリル中間体(c)2.38gを使用し、塩化銅(I)のかわりにヨウ化亜鉛0.574gを使用した以外は、実施例1と同様に操作し、フタロシアニン系化合物(4)1.24g(中間体(c)に基づく収率47.1モル%)を得た。なお、このようにして得られたフタロシアニン系化合物(6)は、主として下記構造を有する。
Figure 2021091882
得られたフタロシアニン系化合物(6)について、実施例4と同様にして、最大吸収波長(λmax)、青色(460nm)の透過率(補正値)(可視光透過率)、近赤外吸収の半値幅および耐光性残存率(8時間後)(耐光性)を測定した。結果を下記表3に示す。
<実施例9:フタロシアニン系化合物(7)[(2,5−ClPhO)1212(VOPc)]の合成>
実施例1において、フタロニトリル中間体(a)及び2,3−ジシアノナフタレンのかわりに合成例1−3で得られたフタロニトリル中間体(c)2.38gを使用し、塩化銅(I)のかわりに三塩化バナジウム0.283gを使用した以外は、実施例1と同様に操作し、フタロシアニン系化合物(7)1.32g(中間体(c)に基づく収率50.1モル%)を得た。なお、このようにして得られたフタロシアニン系化合物(7)は、主として下記構造を有する。
Figure 2021091882
得られたフタロシアニン系化合物(7)について、実施例4と同様にして、最大吸収波長(λmax)、青色(460nm)の透過率(補正値)(可視光透過率)、近赤外吸収の半値幅および耐光性残存率(8時間後)(耐光性)を測定した。結果を下記表3に示す。
<実施例10:フタロシアニン系化合物(8)[(2,5−ClPhO)12{PhCH(CH)NH12}(ZnPc)]の合成>
50mlの三ツ口フラスコに実施例5で得られたフタロシアニン系化合物(7)2.58gおよびD,L−1−フェニルエチルアミン15.0gを投入し、攪拌しながら110℃で約3時間反応した。その後、25℃に冷却し反応液をメタノールに滴下して晶析を行った。析出物を濾取後、減圧乾燥により粗生成物を得た。その後、クロロホルムを溶媒としてカラム精製(充填剤:シリカゲル60N、関東化学株式会社製)を行い、フタロシアニン系化合物(8)1.75g(収率49.3モル%)を得た。なお、このようにして得られたフタロシアニン系化合物(8)は、主として下記構造を有する。
Figure 2021091882
得られたフタロシアニン系化合物(8)について、実施例4と同様にして、最大吸収波長(λmax)を測定したところ、810nmであった。
Figure 2021091882
上記表3より、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、良好な可視光透過率を維持しながら、優れた耐光性を有することが示された。
したがって、本発明に係るフタロシアニン系化合物は、熱線吸収合わせガラス(中間膜)等に好適に利用できる。例えば、自動車のフロントガラス用の中間膜に用いた場合には、高い透明性(可視光透過率)を確保しながら、太陽光の熱線を効果的に遮蔽し、冷房効率を向上できる。また、この際、耐光性も高いことから、長期間に亘り安定的に熱線遮蔽効果を維持できると考察される。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で示されるフタロシアニン系化合物:
    Figure 2021091882


    〜A24は、それぞれ独立して、*で表される各結合部位のいずれかに結合し、
    Xは、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表わし、
    D、EおよびGは、それぞれ独立して、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)を表わし、この際、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わし、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表わし、
    は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、−COOR、−CONHR、−CONR、フェニル基または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし、この際、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表わし、Mは、それぞれ独立して、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わし、
    mは、0〜9であり、
    nは、0〜9であり、
    oは、6〜24であり、
    pは、0〜18であり、
    qは、0〜5であり、
    q’は、それぞれ独立して、0〜5であり、ならびに
    m、n、oおよびpは、下記関係を満たす。
    Figure 2021091882
  2. Mは、それぞれ独立して、亜鉛、銅およびバナジウムならびにこれらの酸化物およびハロゲン化物からなる群より選択される、請求項1に記載のフタロシアニン系化合物。
  3. 下記式(A−1)、(A−2)、(A−3)または(A−4):
    Figure 2021091882

    で示される化合物(A)と、
    下記式(B−1)、(B−2)または(B−3):
    Figure 2021091882

    上記式(B−1)〜(B−3)中、Z〜Z12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭化水素基もしくは炭化水素鎖を含む有機基である、
    で示される化合物(B)と、
    金属、金属酸化物、金属アルコキシド、金属カルボニル、金属ハロゲン化物または有機酸金属と、
    を反応させることを含む、フタロシアニン系化合物の製造方法。
  4. 前記フタロシアニン系化合物は下記式(1)で示されるフタロシアニン系化合物を含む、請求項3に記載の製造方法:
    Figure 2021091882

    〜A24は、それぞれ独立して、*で表される各結合部位のいずれかに結合し、
    Xは、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表わし、
    D、EおよびGは、それぞれ独立して、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または窒素原子(−N(R)−または−N(R)−R−)を表わし、この際、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わし、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表わし、
    は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、−COOR、−CONHR、−CONR、フェニル基または炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし、この際、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表わし、Mは、それぞれ独立して、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わし、
    mは、0〜9であり、
    nは、0〜9であり、
    oは、6〜24であり、
    pは、0〜18であり、
    qは、0〜5であり、
    q’は、それぞれ独立して、0〜5であり、ならびに
    m、n、oおよびpは、下記関係を満たす。
    Figure 2021091882
  5. 請求項1または2に記載のフタロシアニン系化合物を含む、熱線吸収材。
  6. ブチラール樹脂をさらに含む、請求項5に記載の熱線吸収材。
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