JP2014122203A - 抗真菌剤およびコーティング剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、真菌類に対して優れた静菌効果を示し、健康・衛生面で抗真菌性が要求される分野で広範囲に利用することができる抗真菌剤を提供することである。また、本発明は、優れた抗真菌性のみならず、抗細菌性をも有する塗膜や被膜を形成することのできるコーティング剤を提供することも目的とする。
【解決手段】本発明に係る抗真菌剤は、ポリ−γ−グルタミン酸とカチオン性殺菌剤から形成されるPGAイオンコンプレックスを含有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、PGAイオンコンプレックスを含む抗真菌剤と、当該抗真菌剤を含むコーティング剤に関する。
現在、衣食住に関わる広範囲の分野において、多様な抗細菌剤や防カビ剤が使用されている。従来より、樹脂成型体、繊維、陶磁器、壁紙、壁用ボード、タイル、セメント、コンクリート、接着剤、塗料等の各種工業用製品類や、化粧品、トイレタリー製品、殺菌消毒剤、防臭剤、洗剤等の日用品に、抗菌性付与、防カビ処理等の目的で、種々の抗菌剤が使用されている。
上述の抗菌剤は、無機系(金属系)、合成有機系および天然有機系に大別される。無機系抗菌剤は、銀、銅、亜鉛等の金属イオンを成分とし、これらの金属イオンを安定化させるために無機材料が通常用いられている。とりわけ抗菌作用に優れた銀系抗菌性化合物として、硝酸銀、カルボン酸塩、酸化銀等を含有する化合物が知られている。これらの抗菌性化合物は、安全性が高く、効果の持続性が高く、耐熱性にも優れているので、プラスチック等に配合する際の成形加工に適しているという利点も備えている。しかしながら、銀系抗菌性化合物は、カビ等の真菌類に対する抗菌性が弱いことが欠点である。
一方、合成有機系抗菌剤は、化学的に合成された抗菌剤であり、医薬品、農薬等から発展して、工業原料として用いられ、有機窒素系、有機イオウ系、有機スズ系、有機リン系、有機塩素系、第四級アンモニウム塩、ビグアニド系、チアベンダゾール等がある。有機系抗菌剤のなかでも、イミダゾール系化合物は、防カビ効果を有し、安全性が高いが、耐熱性が低く、樹脂や繊維への配合が困難であるがために加工に不向きである。また、水に溶けやすいため、塗料、噴霧剤等の形態で用いる場合、抗細菌効果や抗真菌効果が持続し難いという欠点を有する。
また、天然有機系抗菌剤としては、キトサン、ヒノキチオール、ヒバ油、カテキン等がある。これらは、安全性が高いが、合成有機系に比較して高価で、加工に制約があり、効果の持続性等の課題もある。
かかる現状を鑑みると、抗細菌剤および抗真菌剤としては、人体への安全性の高い、低環境負荷の素材が望まれる。
ところで、現在、プラスチックや合成繊維の材料としては、主に石油化学材料が用いられている。石油化学材料は、一般的にアキラルな重合体であるため分子構造の制御が容易であり、製品化に至るまでその特性を維持し易いとの利点を有している。また、決定的に優れた点としては、熱可塑性が挙げられる。この性質は、特に成形加工工程で有利に働き、加熱溶融して成形した後、固化することが可能である。
しかしながら、石油資源には限りがあるため無限に利用し続けることはできない。また、焼却処理により二酸化炭素を排出して温暖化の原因となることから、その他の処理方法が求められているが、石油化学材料は自然界で分解され難く、廃棄時における環境への負荷やコストの問題が存在する。
そこで、バイオポリマーといわれる生物由来の高分子材料に注目が集まっている。多くのバイオポリマーは、生分解性が高いという利点を有している。バイオポリマーとしては、ポリ−γ−グルタミン酸(以下、PGAと記載することもある)の開発が進められている。ポリ−γ−グルタミン酸は、グルタミン酸のα−アミノ基とγ−カルボキシ基がアミド結合で結ばれたポリアミノ酸である。PGAは納豆の糸引きの主成分として知られるようになったが、その魅力的な機能性として、生分解性と高吸水性を兼ね備えている。それらの機能を利用することにより、食品、化粧品、医療品等の多くの分野で、種々の用途が期待されている。
特許文献1においては、ポリ−γ−グルタミン酸と第四級アンモニウムイオン化合物から形成されるイオンコンプレックスが記載されている。当該イオンコンプレックスは、水に不溶性のポリマーであり、新たな用途が期待される。本文献では、当該イオンコンプレックスから直接成形されたフィルムは、細菌に対する静菌性をも有する材料としての有用性が実証されている。
このようなイオンコンプレックスの用途を更に広げるものとして、フィルムのみならず、プラスチック、繊維、液体、ゲル等への種々の形態の素材への適用が期待される。
特開2010−222496号公報
上述のように、抗細菌剤および抗真菌剤としては、抗細菌効果や抗真菌効果の持続性、成形加工特性を有し、人体への安全性の高い、低環境負荷を兼ね備えた素材の開発が望まれる。
本発明の目的は、真菌類に対して優れた静菌効果を示し、健康・衛生面で抗真菌性が要求される分野で広範囲に利用することができる抗真菌剤を提供することである。また、本発明は、優れた抗真菌性のみならず、抗細菌性をも有する塗膜や被膜を形成することのできるコーティング剤を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、ポリ−γ−グルタミン酸のイオンコンプレックスが抗真菌剤として優れた特性を有することを見出し、本発明に至った。即ち、ポリ−γ−グルタミン酸とカチオン性殺菌剤、特に第四級アンモニウム塩もしくはビグアニド系殺菌剤から形成されたイオンコンプレックスが特に真菌に対して優れた静菌作用を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、安全性の高いポリ−γ−グルタミン酸のイオンコンプレックスを含有する抗真菌剤を提供する。
代表的な発明は以下の通りである。
(項1)
ポリ−γ−グルタミン酸とカチオン性殺菌剤から形成されるPGAイオンコンプレックスを含有することを特徴とする抗真菌剤。
(項2)
カチオン性殺菌剤が第四級アンモニウムである、項1に記載の抗真菌剤。
(項3)
カチオン性殺菌剤がビグアニド系殺菌剤である、項1に記載の抗真菌剤。
(項4)
カチオン性殺菌剤が、セチルピリジニウム、ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ベンザルコニウムおよびラウリルピリジニウムからなる群より選択される1種以上である、項1に記載の抗真菌剤。
(項5)
ポリ−γ−グルタミン酸を構成するグルタミン酸のうち、L−グルタミン酸の占める割合が90%以上である、項1〜4のいずれかに記載の抗真菌剤。
(項6)
ポリ−γ−グルタミン酸を構成するグルタミン酸がL−グルタミン酸からなる、項5に記載の抗真菌剤。
(項7)
項1〜6の何れかに記載の抗真菌剤を含むことを特徴とするコーティング剤。
本発明に係る抗真菌剤は、優れた抗真菌性を示す。その上、少なくともその有効成分であるイオンコンプレックスの主骨格であるポリ−γ−グルタミン酸は生分解性であるので、使用後においても環境に与える負荷が小さい。また、成形性が高いため、プラスチック、フィルム、繊維、木材、紙、コンクリート、金属、セラミック、ガラスなどを含む各種材料に適用できる抗真菌剤である。また、本発明に係る抗真菌剤を溶剤に溶解または分散したコーティング剤は、優れた抗真菌性はもちろん、抗細菌性も示す。よって、本発明のコーティング剤は、高い抗菌効果を有する塗膜や被膜を形成できるものとして、非常に有用である。
図1は、本発明に係る抗真菌剤の、真菌であるS.cerevisiaeに対する静菌効果を示すグラフである。 図2は、本発明に係る抗真菌剤の、細菌であるE.coliに対する静菌効果を示すグラフである。 図3は、本発明に係る抗真菌剤の、細菌であるS.typhimuriumに対する静菌効果を示すグラフである。
本発明は、ポリ−γ−グルタミン酸とカチオン性殺菌剤から形成されたイオンコンプレックス(以下、「PGAIC」ともいう。)を含有する抗真菌剤を提供する。
本発明において「抗真菌」とは、真菌の発生、生育、増殖を抑制することをいい、特に製品表面のカビ等の増殖を抑制することをいう。また、「静菌」とは、真菌および細菌を問わず、微生物は生きているが増殖できない状態をいう。さらに「抗細菌」とは、細菌の生育や増殖を抑制することをいう。なお、真菌と細菌をまとめて「菌」という場合がある。
ポリ−γ−グルタミン酸(以下、単に「PGA」ともいう。)とは、グルタミン酸のα−アミノ基とγ−カルボキシ基とがアミド結合したポリアミノ酸である。PGAの種類は、特に制限されない。例えば、L−グルタミン酸のみからなるもの、D−グルタミン酸のみからなるもの、両方を含むものがあるが、何れも用いることができる。但し、一方の割合がより多い方が立体規則性に優れ、強度なども高くなり、また、よく乾燥すれば融点(約150℃)をも示す様になる。この融点は、イオンコンプレックスとすることで、より明確となる。さらに、L−グルタミン酸からなるものの方が生分解性に優れるので、L−グルタミン酸の含有割合が90%以上であるPGAを用いることが好ましく、実質的にL−グルタミン酸のみからなるものがより好ましい。なお、当該割合は、PGAを構成するグルタミン酸に対するL−グルタミン酸のモル%をいうものとする。
使用するPGAの分子サイズも特に制限されないが、平均分子質量で10kD以上のものが好適である。一般的に、分子サイズが大きいほど強度などの性能が高くなる。一方、分子サイズが過剰に大きなPGAは製造コストが大きく、また、製造が技術的に難しい場合もあるので、通常は1,000kD以下とする。
PGAは、市販されているものがあればそれを用いてもよいし、別途製造してもよい。但し、通常の条件でグルタミン酸を重合するとポリ−α−グルタミン酸が得られるので、微生物を使って生合成させることが好ましい。PGAを生産する微生物としては、Bacillus subtilis(納豆菌)、Bacillus subtilis(戦国醤菌)、Bacillus megaterium、Bacillus anthracis、Bacillus halodurans、Natrialba aegyptiaca、Hydraなどがある。分子サイズの大きいPGAを製造できる微生物としては、枯草菌であるBacillus subtilisや超好塩古細菌であるNatrialba aegyptiacaがある。この中でも、L−グルタミン酸のみからなるPGAを生産する微生物であるNatrialba aegyptiacaによって生産されたPGAを用いるのが好ましい。
本発明のイオンコンプレックスに含まれるカチオン性殺菌剤は、PGAのα−カルボキシ基とイオン結合し、コンプレックスを形成する。その種類は特に制限されないが、第四級アンモニウムおよびビグアニド系殺菌剤が好ましい。第四級アンモニウムとしては、例えば、セチルピリジニウム、ベンゼトニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム、ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、ラウリルピリジニウム、ベンザルコニウム、ジデシルジメチルアンモニウム等が挙げられる。ビグアニド系殺菌剤としては、クロルヘキシジン、アレキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニジン等が挙げられる。この中でも、好ましくはセチルピリジニウム、ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ベンザルコニウム、ラウリルピリジニウムが挙げられる。これらのカチオン性殺菌剤は1種のみでイオンコンプレックスを形成してもよいし、2種以上を含むPGAイオンコンプレックスにしてもよい。
本発明に係るPGAイオンコンプレックスとしては、PGAを構成するグルタミン酸とカチオン性殺菌剤とを等モルあるいは任意のモル比で含むものを用いることができるが、過剰な親水性などPGAの有する材料としての欠点を克服するために、カチオン性殺菌剤により十分に改質されているものが好適である。より具体的には、PGAイオンコンプレックスにおけるカチオン性殺菌剤の割合が、PGAを構成するグルタミン酸に対して0.5モル倍以上であることが好ましく、0.6モル倍以上であることがより好ましく、0.7モル倍以上であることがさらに好ましい。特に、PGAを構成するグルタミン酸とカチオン性殺菌剤とを等モルまたは略等モル含むものが好適である。ここで、略等モルとは、両者のモル数がほぼ等しいことを意味するが、具体的にはPGAを構成するグルタミン酸に対するカチオン性殺菌剤が0.8モル倍以上、1.2モル倍以下、特に0.9モル倍以上、1.1モル倍以下であることをいうものとする。
本発明のPGAイオンコンプレックスは、溶媒中、PGAと第四級アンモニウム、ビグアニド系殺菌剤またはそれらの塩などのカチオン性殺菌剤を混合するのみで、極めて容易に製造できる。
ここで使用する溶媒としては、水が好適である。原料であるPGAを良好に溶解できるからであり、また、目的化合物であるPGAイオンコンプレックスは水に対して不溶性であることから、反応後における目的物の単離精製に好都合なためである。但し、カチオン性殺菌剤の水溶性などによっては、反応液に対するそれらの溶解性を高めるために、メタノールやエタノールなどのアルコール;THFなどのエーテル;ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミドなどの水溶性有機溶媒を反応液に添加してもよい。しかし、反応終了後におけるPGAコンプレックスの分離を考慮すれば、溶媒としては水のみを用いることが好ましい。
原料であるPGAとしては、その塩を用いてもよい。当該塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩などを挙げることができる。また、塩を用いる場合であっても全てのカルボキシ基が塩となっている必要はなく、その一部のみが塩となっていてもよい。但し、アルカリ土類金属塩などの多価金属塩は、水に対する溶解性が低い場合があり得るので、好適にはPGAのフリー体またはPGAの一価金属塩を用いる。
第四級アンモニウム塩もしくはビグアニド系殺菌剤は、通常、ハロゲン化物塩として存在する。よって、本発明においては、反応液へ第四級アンモニウム塩もしくはビグアニド系殺菌剤を直接添加、或いは当該塩を水溶媒に溶解した上で添加すればよい。第四級アンモニウム塩もしくはビグアニド系殺菌剤は、PGAを十分に改質するため、PGAに対して十分量用いることが好ましい。
本発明のPGAイオンコンプレックスは水不溶性であることから、水溶媒から容易に分離できるため、反応液における各成分の濃度は特に制限されない。例えば、反応液におけるPGAの濃度を0.5w/v%以上、10w/v%以下程度、カチオン性殺菌剤の濃度を1.0w/v%以上、10w/v%以下程度とすることができる。
反応液は、コンプレックスの形成を促進するために適度に加熱することが好ましい。加熱温度は、例えば40℃以上、80℃以下程度とすることができる。反応時間は適宜調整すればよいが、通常、1時間以上、20時間以下程度とすることができる。
本発明のPGAイオンコンプレックスは水不溶性であることから、濾過や遠心分離などにより水溶媒から容易に分離することができる。また、分離したPGAイオンコンプレックスは、水で洗浄することにより、過剰に用いたPGAまたはカチオン性殺菌剤、その他の塩を除去することも可能である。また、水溶媒は、アセトンなどで洗浄することにより簡便に除去できる。
本発明のPGAイオンコンプレックスは、生分解性を示す上に、保湿性を有しながらも水溶性や過剰な吸水性を示さない。また、明確な融点を有し、且つ融点と熱分解開始点が十分に離れていることから加熱成形が可能である。よって、生分解性のプラスチック材料としても利用することが可能であり、従来の石油由来の材料にとって代わり得るものである。
本発明のPGAイオンコンプレックスは、グラム陽性およびグラム陰性のいずれの細菌類に対しても優れた静菌効果を発揮するのみならず、同時に真菌類に対しても優れた静菌効果を示し、健康・衛生面で抗細菌性や抗真菌性が要求される分野で広範囲に利用することができる抗細菌剤および/または抗真菌剤として利用できる。
本発明のPGAイオンコンプレックスが抗菌効果を示すグラム陽性細菌の例としては、Staphylococcus属、Streptococcus属、Corynebacterium属、Bacillus属、Listeria属、Clostridium属、Lactobacillus属等が挙げられる。
本発明のPGAイオンコンプレックスが抗菌効果を示すグラム陰性細菌の例としては、Escherichia属、Pseudomonas属、Salmonella属、Enterobacter属、Neisseria属、Xanthomonas属、Serratia属、Campylobacter属等が挙げられる。
本発明のPGAイオンコンプレックスが抗菌効果を示す真菌の例としては、Absidia属、Mucor属、Rhizopus属等の接合菌門、Aspergillus属、Neurospora属、Penicillium属、Trichoderma属、Neosartorya属、Candida属、Pichia属、Saccharomyces属等の子嚢菌門、Trametes属、Cryptococcus等の担子菌門、Alternaria属、Fusarium属、Cladosporium属、Curvularia属、Aureobasidium属等の不完全菌類等が挙げられる。
本発明のPGAイオンコンプレックスを抗真菌剤として利用する形態としては、高分子樹脂へ配合することが挙げられる。PGAイオンコンプレックスは生分解性を有するポリマーであることから、安全性の高い、低環境負荷の抗真菌剤として利用できる。なお、本発明のPGAイオンコンプレックスは真菌のみならず細菌にも高い抗細菌効果を示すため、本発明の抗真菌剤も、抗真菌性のみならず抗細菌性も示す。
本発明の抗真菌剤を高分子樹脂に配合した抗真菌性高分子樹脂として使用する場合、高分子樹脂の種類には特に制約はなく、樹脂組成物の用途等に応じて自由に選ぶことができる。使用し得る樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、エチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマー、アミド系ポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン系ポリマー、スチレン系ポリマー、エステル系ポリマー、ナイロン系ポリマー、セルロース誘導体、カーボネート系ポリマー、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルエステル系ポリマー、合成ゴム、天然ゴムなどが挙げられる。樹脂組成物には、必要に応じて、可塑剤、充填剤、着色剤(染料、顔料など)、紫外線吸収剤等を適宜配合してもよい。
上記の樹脂組成物は、その用途等に応じて種々の形態に加工することができる。例えば、本発明の樹脂組成物は、押出成形、射出成形、溶液流延法、紡糸法等それ自体既知の樹脂加工法によって、フィルム状、シート状、板状、繊維状、立体状に成形することができる。例えば、内装材、床材、繊維製品、紙製品、家電製品等に利用することができる。
本発明の抗真菌剤は、溶剤に溶解または分散させることによりコーティンング剤としてもよい。本発明のPGAイオンコンプレックスは接着性を有し、また、水に不溶性である上に、上記のとおり抗真菌性と抗細菌性を示す。よって、本発明のコーティング剤は、基材などに塗布や噴霧することにより、持続的な抗真菌性と抗細菌性の両方を示す塗膜や被膜を形成することが可能になる。
本発明のコーティング剤で用いられる溶媒としては、安全性の観点から、水;エタノール、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類;n−ヘキサン等の炭化水素類の溶媒が好ましく、その他、ケトン類、エステル類、脂肪酸類、シリコーン油等の各種の溶媒も使用することができる。これらの溶媒は、1種のみ単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
本発明のコーティング剤は、PGAイオンコンプレックスと溶媒の他、適宜、顔料、界面活性剤、架橋剤、その他の塗料用添加物を配合してもよい。
本発明のコーティング剤を用いて、工業製品や基材などに抗真菌処理や抗細菌処理を施す際には、刷け塗り、スプレイ法、ディッピング法、浸漬法、コーティング法、プリント法等の方法で処理を行ってもよく、特に限定されない。
この場合、塗布しうる基材として、セラミックス、金属、金属酸化物、プラスチック、ゴム類、鉱石類、木材等を挙げることができる。具体的には、セラミックスの例として、ガラス、陶磁器、セメント、耐火煉瓦、琺瑯等を挙げることができる。金属の例としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、金、銀、クロム、ゲルマニウム、モリブデン、ニッケル、鉛、白金、ケイ素、チタン、トリウム、タングステンのような単体金属や、炭素鋼、ニッケル鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の合金を挙げることができる。金属酸化物の例としては、アルミナ、シリカ、マグネシア、トリア、ジルコニア、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉛等を挙げることができる。プラスチックの例としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール等の汎用プラスチック、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド等のエンジニアプラスチック、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂等を挙げることができる。鉱石類としては、大理石、花崗岩等を挙げることができる。
さらに、本発明のコーティング剤は、抗真菌抗細菌用噴霧剤として使用することができる。具体的には、住居、病院、公共施設等における浴室、流し、衛生機器類等に直接噴霧塗布することにより、菌やカビの発生を防止することができる。
あるいは、プラスチック射出成型機の金型内面に噴霧塗布することにより、成型されたプラスチックの表面に間接的に抗真菌剤を転写させ、長期間、壁面やプラスチック表面の細菌やカビの発生を防止することができる。
本発明の抗真菌剤の抗細菌性もしくは静菌性を確かめる方法としては、フィルム密着法(JIS Z2801)、菌液吸収法(JIS L1902)、シェーク法、ハローテスト(JIS L1902)、MIC測定などがある。ハローテストとは、寒天培地全面に菌を播種し、その上に載せた材料周囲の菌の発育阻止帯(ハロー)の大きさから、定性的に抗菌性を調べる方法である。MIC測定とは、抗菌剤を加えた培地に菌を播種し、発育を阻止する最小濃度MIC(Minimum Inhibitory Concentration)を調べる方法である。
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
実施例1 PGAIC100(PGA/CPC)の製造
超好塩古細菌ナトリアルバ・エジプチアキア(N.aegyptiaca)由来の平均分子量1000kDのポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(40g)を精製水に溶解し、2w/v%の溶液とした。当該溶液へ60℃に保温した塩化セチルピリジニウム(CPC)の0.2M水溶液(1551g)を加えた。原料であるポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩の水溶液から、CPC添加直後に水不溶性材料が形成されることを確認した後、さらに60℃で4時間保温した。得られた水不溶性材料を濾別回収した後、1000mLの精製水で計3回洗浄した。さらにアセトンで洗浄することにより脱水した後、真空乾燥し、粉末としてイオンコンプレックス(93g)を回収した。得られたイオンコンプレックスの1H−NMRの結果から、L−PGAとセチルピリジニウムが100:100のモル比で結合していることが確認された。
実施例2 PGAIC60(PGA/CPC)の製造
超好塩古細菌ナトリアルバ・エジプチアキア(N.aegyptiaca)由来の平均分子量1000kDのポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(80g)を精製水に溶解し、2w/v%の溶液とした。当該溶液へ、2.0Mの塩酸(80g)を加え、pH4に調整した後、塩化セチルピリジニウム(CPC)の0.2M水溶液(668g)を加えた。原料であるポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩の水溶液から、CPC添加直後に水不溶性材料が形成されることを確認した後、60℃で4時間攪拌した。得られた水不溶性材料を濾別回収した後、600mLの精製水で計3回洗浄した。洗浄後、湿体の水不溶性材料を真空乾燥し、粉末としてイオンコンプレックス(67g)を回収した。得られたイオンコンプレックスの1H−NMRの結果から、L−PGAとセチルピリジニウムが100:60のモル比で結合していることが確認された。
実施例3 PGAIC(L−PGA/BAC)の製造
超好塩古細菌ナトリアルバ・エジプチアキア(N.aegyptiaca)由来の平均分子量1000kDのポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(1g)を精製水に溶解し、2w/v%の溶液とした。当該溶液へ塩化ベンザルコニウム(BAC)の0.3M水溶液(26g)を加えた。原料であるポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩の水溶液から、BAC添加直後に水不溶性材料が形成されることを確認した後、さらに25℃で2時間攪拌した。得られた水不溶性材料を濾別回収した後、30mLの精製水で計3回洗浄した。真空乾燥し、イオンコンプレックス(3g)を回収した。得られたイオンコンプレックスの1H−NMRの結果から、L−PGAとベンザルコニウムが100:100のモル比で結合していることが確認された。
実施例4 PGAIC(L−PGA/LPC)の製造
超好塩古細菌ナトリアルバ・エジプチアキア(N.aegyptiaca)由来の平均分子量1000kDのポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(2g)を精製水に溶解し、18w/v%の溶液とした。当該溶液へ塩化ラウリルピリジニウム(LPC)の0.6M水溶液(28g)を加えた。原料であるポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩の水溶液から、LPC添加直後に水不溶性材料が形成されることを確認した後、さらに25℃で2時間攪拌した。得られた水不溶性材料を濾別回収した後、30mLの精製水で計2回洗浄した。真空乾燥し、イオンコンプレックス(4g)を回収した。得られたイオンコンプレックスの1H−NMRの結果から、L−PGAとラウリルピリジニウムが100:100のモル比で結合していることが確認された。
実施例5 PGAIC(L−PGA/BTC)の製造
超好塩古細菌ナトリアルバ・エジプチアキア(N.aegyptiaca)由来の平均分子量1000kDのポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(1g)を精製水に溶解し、18w/v%の溶液とした。塩化ベンゼトニウム(BTC)の0.2M水溶液(32g)を加えた。原料であるポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩の水溶液から、LPC添加直後に水不溶性材料が形成されることを確認した後、さらに25℃で2時間攪拌した。得られた水不溶性材料を濾別回収した後、30mLの精製水で計2回洗浄した。真空乾燥し、イオンコンプレックス(3g)を回収した。得られたイオンコンプレックスの1H−NMRの結果から、L−PGAとベンゼトニウムが100:100のモル比で結合していることが確認された。
実施例6 PGAIC(L−PGA/HDPB)熱可塑成形フィルムの製造
超好塩古細菌ナトリアルバ・エジプチアキア(N.aegyptiaca)由来の平均分子量1000kDのポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(40g)を精製水に溶解し、2w/v%の溶液とした。当該溶液へ60℃に保温したヘキサデシルピリジウムアンモニウムブロマイド(HDPB)の0.2M水溶液(1551g)を加えた。原料であるポリ−γ−L−グルタミン酸ナトリウム塩の水溶液から、HDPB添加直後に水不溶性材料が形成されることを確認した後、さらに60℃で4時間保温した。得られた水不溶性材料を濾別回収した後、1000mLの精製水で計3回洗浄した。さらにアセトンで洗浄することにより脱水した後、真空乾燥し、粉末としてイオンコンプレックス(93g)を回収した。得られたイオンコンプレックスの1H−NMRの結果から、L−PGAとヘキサデシルピリジウムアンモニウムが100:100のモル比で結合していることが確認された。
得られたPGAイオンコンプレックス(L−PGA/HDPB)を熱可塑成形した。具体的には、デジタル式ホットプレート(CORNING社製)上でPGAイオンコンプレックスペレット(20mg)をガラス板で挟み、100℃で加熱した。PGAイオンコンプレックスが十分に軟化し、透明になるまで5分間加熱することにより、フィルム状に成形し、厚さ250μmの熱可塑成形フィルムを得た。
実施例7 PGAIC(L−PGA/HDPB)コーティングフィルムの製造
実施例6で得られたイオンコンプレックス(20g)をエタノールに溶解し、30wt%の溶液とした。得られたエタノール溶液をアプリケータにてPETフィルム上に塗布し、溶剤乾燥させることで、厚さ50μmのPGAICコーティングフィルムを作製した。
実施例8 PGAIC(L−PGA/HDBP)熱可塑成形フィルムの静菌作用
実施例6で作製したPGAIC(L−PGA/HDPB)熱可塑成形フィルムの真菌に対する静菌作用を評価した。具体的には、YPD液体培地に真菌であるSaccharomyces cerevisiae(S.cerevisiae)の菌液を接種した後、実施例6の直径1.3mm円形のフィルムを浸し、30℃にて48時間培養した。また、細菌であるEscherichia coli(E.coli)およびSalmonella.typhimurium(S.typhimurium)についても、培地をLuria−Bertani(LB)液体培地とし、37℃にて24時間同様に培養した。さらに対照として、フィルムを浸していない培地でも菌を培養した。培養開始から、培養液の濁度(A600)を経時的に測定した。真菌であるS.cerevisiaeの結果を図1に、また、細菌であるE.coliとS.typhimuriumの結果をそれぞれ図2と図3に示す。
図1〜3のとおり、本発明に係るフィルムを浸さない培地においては、濁度が経時的に上がり、各菌が増殖していることが分かる。それに対して本発明に係るフィルムを浸した培地においては、いずれの菌の増殖も認められなかった。このことから、本発明フィルムの細菌および真菌に対する静菌作用が示された。
実施例9 PGAIC(L−PGA/HDBP)コーティングフィルムの真菌に対する静菌作用
JIS L 1902に準拠し、実施例7で作製したPGAICコーティングフィルムの真菌に対する静菌作用を評価した。供試菌として、Aspergillus niger(A.niger)およびCandida albicans(C.albicans)を懸濁した寒天培地の表面に実施例7の円形フィルム(直径6mm)を3枚静置し、37℃で24時間静置培養後、フィルム周辺に形成されたハローの幅を測定した。試験サンプルの対照として、未処理のPETフィルムを用いた。その結果、PGAICコーティングフィルムには、これらの真菌類に対する静菌作用が認められた(表1)。
Figure 2014122203
実施例10 PGAIC(L−PGA/HDBP)コーティングフィルムの細菌類に対する静菌作用
JIS L 1902に従い、実施例7で作製したPGAICコーティングフィルムの抗細菌性を評価した。供試菌として、Escherichia coli(E.coli)、Staphylococcus aureus(S.aureus)およびPseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)を懸濁した普通寒天培地の表面に実施例7の円形フィルム(直径6mm)を3枚静置し、37℃で24時間静置培養後、フィルム周辺に形成されたハローの幅を測定した。試験サンプルの対照例として、未処理のPETフィルムを用いた。その結果、PGAICコーティングフィルムには、これらの細菌類に対する静菌作用が認められた(表2)。
Figure 2014122203
実施例11 真菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
一般的なブロス希釈法に従い、前培養した真菌類から、胞子液、菌液をそれぞれ調製した。胞子液または菌液を、段階希釈した薬剤溶液を添加した寒天培地上に塗布し、28℃にて2〜5日間静置培養後、増殖の有無によりMIC値を決定した。供試菌として、Aspergillus niger(A.niger)とCandida albicans(C.albicans)を用いた。試験サンプルとしてPGAイオンコンプレックス(PGA/CPC)を用い、対照としてCPCを用いた。その結果、PGAIC100およびPGAIC60には、CPCと同様に、これらの真菌類に対する静菌作用が認められた(表3)。
Figure 2014122203
実施例12 細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
一般的なブロス希釈法に従い、ニュートリエントブロスを用いて菌懸濁濃度1000000cell/mlに調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤溶液を添加した寒天培地上に塗布し、37℃にて24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値を決定した。供試菌として、Escherichia coli(E.coli)、Staphylococcus aureus(S.aureus)およびPseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)を用いた。試験サンプルとして、PGAイオンコンプレックス(PGA/CPC)を用い、比較例としてCPCを用いた。その結果、PGAIC100およびPGAIC60には、CPCと同様に、これらの細菌類に対する静菌作用が認められた(表4)。
Figure 2014122203
実施例13 PGAイオンコンプレックスのポリプロピレン不織布(PP不織布)への接着性
PGAイオンコンプレックスのPP不織布への接着性を評価するため、ハローテストを行った。L−PGA/CPC、L−PGA/BAC、L−PGA/LPCおよびL−PGA/BTCを50%エタノールにそれぞれ溶解した0.1%溶液をPGAIC試験液として調製した。対照として、CPC、BAC、LPCおよびBTCを50%エタノールにそれぞれ溶解した0.1%溶液を4級アンモニウム塩試験液として調製した。直径10mmの円形に切り抜いたPP不織布にこれらの試験液をスプレー瓶から噴霧した後、風乾し、噴霧後のサンプルとした。次に、噴霧後に乾燥したこれらのPP不織布を蒸留水に浸して洗浄し、風乾し、水洗浄後のサンプルとした。
Streptococcus aureus NBRC13276の懸濁液をSCD液体培地中で37℃にて16時間液体培養した後、50℃に保温したSCD寒天培地に106個/mlとなるように添加し、菌体を含む固形培地を調製した。各試験液で処理したPP不織布を前記固形培地上に3枚置床し、37℃にて24時間培養した後、フィルム周辺に形成されたハローの幅を測定した。結果を表5に示す。
Figure 2014122203
表5に示す結果のとおり、PGAIC溶液を噴霧したPP不織布の周辺部には、噴霧後のみならず、水洗浄後にも明瞭なハローが形成された。一方、4級アンモニウム塩溶液を噴霧したPP不織布の周辺部には、水洗浄後にハローは形成されなかった。これらの結果は、PP不織布へのPGAイオンコンプレックスの接着性が抗菌性と共に水洗浄後も維持されていることを示している。
実施例14 PGAイオンコンプレックスのステンレスへの接着性
PGAイオンコンプレックスのステンレスへの接着性を評価するため、ハローテストを行った。実施例13と同様に、10mm角、厚さ1mmのステンレス片(SUS304)にPGAIC試験液および4級アンモニウム試験液をスプレー瓶から噴霧した後、風乾し、噴霧後のサンプルとした。次に、噴霧後に乾燥したこれらのステンレス片を蒸留水に浸して洗浄し、風乾し、水洗浄後のサンプルとした。実施例13と同様に、Streptococcus aureus NBRC13276の菌体を含む固形培地を調製した。各試験液で処理したステンレス片を前記固形培地上に3枚置床し、37℃にて24時間培養した後、フィルム周辺に形成されたハローの幅を測定した。結果を表6に示す。
Figure 2014122203
表6に示す結果のとおり、PGAIC溶液を噴霧したステンレス片の周辺部には、噴霧後のみならず、水洗浄後にも明瞭なハローが形成された。一方、4級アンモニウム溶液を噴霧したステンレス片の周辺部には、水洗浄後にハローは形成されなかった。これらの結果は、ステンレス片へのPGAイオンコンプレックスの接着性が抗菌性と共に水洗浄後も維持されていることを示している。
実施例15 PGAイオンコンプレックスの陶磁器への接着性
PGAイオンコンプレックスのステンレスへの接着性を評価するため、ハローテストを行った。実施例13と同様に、10mm角、厚さ1mmのタイル片(陶磁器)にPGAIC試験液および4級アンモニウム試験液をスプレー瓶から噴霧した後、風乾し、噴霧後のサンプルとした。次に、噴霧後に乾燥したこれらのタイル片を蒸留水に浸して洗浄し、風乾し、水洗浄後のサンプルとした。実施例13と同様に、Streptococcus aureus NBRC13276の菌体を含む固形培地を調製した。各試験液で処理したタイル片を前記固形培地上に3枚置床し、37℃にて24時間培養した後、フィルム周辺に形成されたハローの幅を測定した。結果を表7に示す。
Figure 2014122203
表7に示す結果のとおり、PGAIC溶液を噴霧したタイル片の周辺部には、噴霧後のみならず、水洗浄後にも明瞭なハローが形成された。一方、4級アンモニウム溶液を噴霧したタイル片の周辺部には、水洗浄後にハローは形成されなかった。これらの結果は、タイル片へのPGAイオンコンプレックスの接着性が抗菌性と共に水洗浄後も維持されていることを示している。
本発明の抗真菌剤は、樹脂組成物などの形態で、抗細菌効果に加えて優れた抗真菌効果を示す。また、本発明のコーティング剤は、塗料や噴霧剤などの形態で、細菌と真菌の両方に対して優れた抗菌効果を示す。よって本発明は、健康面や衛生面で抗細菌性と抗真菌性が要求される分野で広範囲に利用することができる。

Claims (7)

  1. ポリ−γ−グルタミン酸とカチオン性殺菌剤から形成されるPGAイオンコンプレックスを含有することを特徴とする抗真菌剤。
  2. カチオン性殺菌剤が第四級アンモニウムである、請求項1に記載の抗真菌剤。
  3. カチオン性殺菌剤がビグアニド系殺菌剤である、請求項1に記載の抗真菌剤。
  4. カチオン性殺菌剤が、セチルピリジニウム、ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ベンザルコニウムおよびラウリルピリジニウムからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の抗真菌剤。
  5. ポリ−γ−グルタミン酸を構成するグルタミン酸のうち、L−グルタミン酸の占める割合が90%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の抗真菌剤。
  6. ポリ−γ−グルタミン酸を構成するグルタミン酸がL−グルタミン酸からなる、請求項5に記載の抗真菌剤。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の抗真菌剤を含むことを特徴とするコーティング剤。
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