本発明の徐放性粒子は、少なくとも3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(以下、「IPBC」と略記する。)およびプロピコナゾールを疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、別途、水と乳化剤とを配合して乳化剤水溶液を調製し、続いて、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化し、その後、重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して少なくともIPBCおよびプロピコナゾールを含有する重合体を生成することにより得られる。
IPBCは、ヨウ素系の抗生物活性化合物(例えば、防かび剤)である。
IPBCは、ミニエマルション重合におけるハイドロホーブ(コスタビライザー)として作用し、具体的には、ミニエマルション重合におけるミニエマルション(後述)の安定化に寄与することにより、オストワルド熟成を防止して、ミニエマルション粒子の肥大化(粒子径の増大)を抑制する。
IPBCは、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温の溶解度が、質量基準で、0.015質量部/水100質量部(150ppm)である。
また、IPBCは、Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,IPBCが、3.23であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,IPBCが、7.83である。
溶解度パラメータδの双極子間力項δp,IPBCおよび水素結合力項δh,IPBCは、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出され、具体的な内容は後述する。なお、これらの溶解度パラメータδの双極子間力項δpおよび水素結合力項δhの定義および算出方法は、後述するプロピコナゾール、第1モノマー、第2モノマーおよび重合体の溶解度パラメータδの双極子間力項δpおよび水素結合力項δhに対しても同様である。
各項δ(δpおよびδh)の添字IPBCは、IPBCを示し、後述する各項δ(δpおよびδh)の添字PROP、1st monomer unit(s)、2nd monomer unit(s)、および、polymerも同様に、それぞれ、プロピコナゾール、第1モノマーのモノマー単位(モノマーユニット)、第2モノマーのモノマー単位(モノマーユニット)、および、重合体を示す。
プロピコナゾール(1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール)は、トリアゾール系の抗生物活性化合物(例えば、防腐剤)である。
プロピコナゾールは、IPBCとともに、ミニエマルション重合におけるハイドロホーブ(コスタビライザー)として作用し、具体的には、ミニエマルション重合におけるミニエマルション(後述)の安定化に寄与することにより、オストワルド熟成を防止して、ミニエマルション粒子の肥大化(粒子径の増大)を抑制する。
プロピコナゾールは、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温の溶解度が、質量基準で、0.011質量部/水100質量部(110ppm)である。
また、プロピコナゾールは、Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,PROPが、6.55[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,PROPが、9.44[(J/cm3)1/2]である。
重合性ビニルモノマーは、例えば、重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ分子内に有する重合性モノマーであって、重合により得られる重合体の双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが所望の範囲となるように選択される。
重合性ビニルモノマーとしては、例えば、第1モノマーが挙げられる。
第1モノマーは、それから得られる重合体を構成するモノマー単位(後述)の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,1st monomer unit(s)が、例えば、5.6〜6.0[(J/cm3)1/2]、好ましくは、5.7〜6.0[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,1st monomer unit(s)が、例えば、9.2〜9.9[(J/cm3)1/2]、好ましくは、9.2〜9.8[(J/cm3)1/2]である。
なお、第1モノマーから得られる重合体を構成するモノマー単位の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,1st monomer unit(s)および水素結合力項δh,1st monomer unit(s)を、以下、単に「第1モノマーに基づくモノマー単位の双極子間力項δp,1st monomer unit(s)および水素結合力項δh,1st monomer unit(s)」とそれぞれいう場合がある。第1モノマーに基づくモノマー単位については、後述する。
第1モノマーは、重合性ビニルモノマーに主成分として含有される主モノマーであり、例えば、得られる重合体のIPBCおよびプロピコナゾールに対する相溶性が高くなるように選択される相溶性モノマーが挙げられる。第1モノマーとして、具体的には、メタクリル酸メチル(MMA)、エチレングリコールジメタクレート(EGDMA)などが挙げられ、さらに好ましくは、MMAが挙げられる。
具体的には、第1モノマーは、好ましくは、少なくともMMAを必須成分として含有する。
第1モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、MMAの単独使用、MMAおよびEGDMAの併用が挙げられ、さらに好ましくは、MMAおよびEGDMAの併用が挙げられる。
第1モノマーとしてMMAおよびEGDMAのみが併用されて使用される場合におけるMMAの配合割合は、第1モノマーに対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上が好ましく、また、例えば、100質量%未満、好ましくは、95質量%以下でもある。また、第1モノマーとしてMMAおよびEGDMAのみが併用されて使用される場合におけるEGDMAの配合割合は、第1モノマーに対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、30質量%以下、さらに好ましくは、25質量%以下、とりわけ好ましくは、20質量%以下であり、また、例えば、0質量%超、好ましくは、2質量%以上、より好ましくは、5質量%以上でもある。
ミニエマルション粒子の表面積(界面面積)のミニエマルション粒子体積に対する比(表面積/体積)は、平均粒子径に反比例し、かつ、ミニエマルション粒子の平均粒子径が1μm未満(後述)であることから、IPBCおよびプロピコナゾールは水相へ漏出し易くなる傾向にある。特に、IPBCおよびプロピコナゾールに重合体が相溶状態であっても、得られる重合体の架橋などにより単位体積における重合体密度が高い場合には、重合体に対してIPBCおよびプロピコナゾールが相溶する量(割合)が低下し、ミニエマルション重合後の冷却中、あるいは、冷却後数日から数ケ月以内にIPBCの結晶が一部析出する場合がある。
次に、第1モノマーに基づくモノマー単位の双極子間力項δp,1st monomer unit(s)および水素結合力項δh,1st monomer unit(s)について、第1モノマーとしてMMAが単独使用される場合、および、第1モノマーとしてMMAおよびEGDMAのみが併用されて使用される場合を例示にとってそれぞれ説明する。
1.双極子間力項δpおよび水素結合力項δhの定義
双極子間力項δpおよび水素結合力項δhの定義は、特開2011−79816号公報に記載の通りであり、具体的には、下記式(1)および(2)でそれぞれ示される。
(式中、Fpは、分子間力の双極子間力要素(ポーラー・コンポーネント・オブ・ザ・モーラー・アトラクション・ファンクション(polar component of the molar attraction function)、Vはモル体積である。)
(式中、Ehは、分子間力の水素結合力の要素(コントリビューション・オブ・ザ・ハイドロジェン・ボンディング・フォーセズ・ツー・ザ・コーヘシヴ・エナジー(contribution of the hydrogen bonding forces to the cohesive energy)、Vはモル体積である。)
2.第1モノマーとしてMMAが単独使用される場合
(1)ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の構造式
MMAの重合体であるPMMAは、下記式(3)で表される。
(式中、nは、重合度を示す。)
(2)双極子間力項δp,monomer unit (=双極子間力項δp,MMA unit)
上記式(3)のモノマー単位(−CH2−C(CH3)COOCH3−)において、各原子団に対応するFpおよびVを以下に記載する。
−CH3 Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:33.5(cm3・mol)
−CH2− Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:16.1(cm3・mol)
>C< Fp:0(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:−19.2(cm3・mol)
−COO− Fp:490(J1/2・cm3/2・mol−1)
V:18(cm3・mol)
従って、モノマー単位の双極子間力項δp,monomer unit(双極子間力項δp,MMA unit)は、下記式(4)に示すように、5.98[(J/cm3)1/2]と算出される。
なお、上記したモノマー単位の双極子間力項δp,MMA unitは、モノマー単位の繰り返し構造であるポリメタクリル酸メチルの双極子間力項δp,PMMAと同値である。
(3)水素結合力項δh,monomer unit(水素結合力項δh,MMA unit)
上記式(3)のモノマー単位(−CH2−C(CH3)COOCH3−)において、各原子団に対応するEhを以下に記載する。
−CH3 Eh:0(J・mol−1)
−CH2− Eh:0(J・mol−1)
>C< Eh:0(J・mol−1)
−COO− Eh:7000(J・mol−1)
従って、モノマー単位の水素結合力項δh,monomer unit(水素結合力項δh,MMA unit)は、下記式(5)に示すように、9.25[(J/cm3)1/2]と算出される。
上記したモノマー単位の水素結合力項δh,MMA unitは、モノマー単位の繰り返し構造であるPMMAの水素結合力項δh,PMMAと同値である。
3.第1モノマーとしてMMAおよびEGDMAのみが併用されて使用される場合
第1モノマーが複数種類のモノマーが併用されて使用される場合には、各モノマーに基づくモノマー単位の双極子間力項δp,1st monomer unitに、各モノマーの質量比を乗じて、それらを足し合わせること(相加平均)により、第1モノマー全体から得られる共重合体を構成するモノマー単位の双極子間力項δp,1st monomer unitsを算出する。
また、各モノマーに基づくモノマー単位の水素結合力項δh,1st monomer unitに、モノマーの質量比を乗じて、それらを足し合わせること(相加平均)により、第1モノマー全体から得られる共重合体を構成するモノマー単位の水素結合力項δh,monomer unitsを算出する。
次に、共重合体の一例として、MMAおよびEGDMAを、質量比で94:6で含む第1モノマーの共重合体であるポリ(メタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート)(P(MMA−EGDMA))を挙げて、モノマー単位の溶解度パラメータδの双極子間力項δp,1st monomer unitsおよび水素結合力項δh,1st monomer unitsを算出する方法を説明する。
(1)双極子間力項δp,1st monomer units
MMAのモノマー単位の双極子間力項δp,MMA unitは、上記で算出したように、5.98[(J/cm3)1/2]である。
また、EGDMAのモノマー単位の双極子間力項δp,EDGMA unitは、上記と同様に算出することにより、5.37[(J/cm3)1/2]である。
そして、これら第1モノマーに基づくモノマー単位の双極子間力項δp,1st monomer unitsは、下記式(6)のように算出される。
δp,1st monomer units=(94/100)δp、MMA unit+(6/100)δp、EGDMA unit
=(94/100)×5.98+(6/100)×5.37
=5.95[(J/cm3)1/2] (6)
なお、この値は、ポリ(メタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート)の双極子間力項δp,P(MMA−EGDMA)と同値である。
(2)水素結合力項δh,1st monomer units
MMAのモノマー単位の水素結合力項δh,MMA unitは、9.25[(J/cm3)1/2]である。
また、EGDMAのモノマー単位の水素結合力項δh,EGDMA unitは、10.42[(J/cm3)1/2]である。
そして、この第1モノマーの水素結合力項δh,1st monomer unitsは、下記式(7)のように算出される。
δh,1st monomer units=(94/100)δh,MMA unit+(6/100)δh,EGDMA unit
=(94/100)×9.25+(6/100)×10.42
=9.32[(J/cm3)1/2] (7)
なお、この値は、共重合体であるポリメタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレートの水素結合力項δh,PMMA−EGDMAと同値である。
なお、第1モノマーに基づくモノマー単位の双極子間力項δp,1st monomer unit(s)および水素結合力項δh,1st monomer unit(s)の算出方法は、特開2011−79816号公報に詳述されている。
上記から、第1モノマーの溶解度パラメータδ(双極子間力項δp,1st monomer unitsおよび水素結合力項δh,1st monomer units)は、異なる種類が併用される場合には、第1モノマー全体(つまり、異なる種類の混合物)として算出される値である。
そして、第1モノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマーに対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、さらに好ましくは、75質量%以上、とりわけ好ましくは、80質量%以上、さらには、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上が好ましく、また、100質量部%以下でもある。
また、重合性ビニルモノマーは、第2モノマーを含有することもできる。
第2モノマーは、第1モノマーとともに併用され、重合性ビニルモノマーに任意的に含有される副モノマーであり、具体的には、第1モノマーと共重合可能な共重合性モノマーであり、第1モノマーとの共重合体の双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが所望の範囲となるように選択される。
第2モノマーとしては、例えば、MMAを除く(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族系ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、窒素含有ビニルモノマー、EGDMAを除く架橋性モノマー、重合反応性乳化剤などが挙げられる。
第2モノマーを重合性ビニルモノマーに配合することにより、第1モノマーとの共重合によって生成する共重合体のガラス転移温度を低下させる場合には、そのような共重合体は、架橋密度を、第1モノマーの単独重合によって生成する単独重合体に比べて、高めることが可能である。すなわち、第1モノマーおよび第2モノマーが併用されて使用され、かつ、第1モノマーのMMAおよびEGDMAが併用されて使用される場合におけるEGDMAの配合割合は、重合性ビニルモノマーに対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上、とりわけ好ましくは、25質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、40質量%以下でもある。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エステル(MMAを除く)および/アクリル酸エステルであって、具体的には、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸iso−ノニル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル(ラウリル)、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル(ステアリル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのアルキル部分が直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜20のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(MMAを除く)や、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(MMAを除く)が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、さらに好ましくは、炭素数2以上のアルキル部分を有するアクリル酸アルキルエステル、とりわけ好ましくは、アクリル酸エチル、また、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピルなどのアクリル酸プロピル、さらには、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸tert−ブチルなどのアクリル酸ブチルなどが挙げられる。また、メタクリル酸アルキルエステルとして、さらに好ましくは、炭素数4以上のアルキル部分を有するメタクリル酸アルキルエステル、とりわけ好ましくは、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタクリル酸tert−ブチルなどのメタクリル酸ブチルが挙げられる。
また、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルは、IPBCの熱や紫外線による変色を抑える働きがあり、この効果を得るために第2モノマーに必要により配合される。エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが挙げられ、好ましくは、メタクリル酸グリシジルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸エステル系モノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ビニルピリジンなどが挙げられる。
架橋性モノマー(EGDMAを除く)としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(EGDMAを除く)、例えば、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、アリル(メタ)メタクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレートなどのアリル系モノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル系モノマーなどが挙げられる。
重合反応性乳化剤は、重合性の炭素−炭素二重結合を分子内に有する乳化剤であり、乳化剤であると同時に、重合性モノマーでもある。重合反応性乳化剤は、乳化機能を発現する親水性基を分子内に有しており、そのような親水性基としては、例えば、スルホネート基、カルボキシレート基などのアニオン性の親水基、例えば、ポリオキシエチレン基などのノニオン性の親水基などが挙げられる。重合反応性乳化剤としては、好ましくは、アニオン性の親水基およびノニオン性の親水基の両方を含むもの、アニオン性の親水基のみを含むもの、ノニオン性の親水基のみを含むものが挙げられ、特に好ましくは、アニオン性の親水基およびノニオン性の親水基の両方を含むものが挙げられ、そのようなアニオン性の親水基およびノニオン性の親水基の両方を含むものとして、具体的には、CH2=C(CH3)−COO(AO)nSO3Na(式中AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを示す。)、CH2=C(CH3)−C6H4(CnH2n+1)−(AO)mSO3NH4(式中AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを示す。)などが挙げられる。また、ノニオン性の親水性基のみを有するものとして、具体的には、CH2=C(CH3)−COO(AO)nR(式中AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド、Rはアルキル基を示す。)や、CH2=C(CH3)−C6H4(CnH2n+1)−(AO)mH(式中AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを示す。)などが挙げられる。重合反応性乳化剤は、例えば、市販品を用いることもでき、例えば、エレミノールシリーズ(三洋化成社製)、サンモリンシリーズ(三洋化成工業社製)、キャリボンシリーズ(三洋化成工業社製)、エマルミンシリーズ(三洋化成工業社製)、ナロアクティーシリーズ(三洋化成工業社製)、アクアロンシリーズ(第一工業製薬社製)、ラテムルシリーズ(花王ケミカル社製)、リアソープシリーズ(ADEKA社製)、アントックスシリーズ(日本乳化剤社製)、ブレンマーシリーズ(日油社製)などが用いられる。
第2モノマーとして、好ましくは、MMAを除く(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー、重合反応性乳化剤が挙げられる。
第2モノマーがMMAを除く(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(具体的には、n−BAなど)を含有する場合には、共重合体のガラス転移温度を低下させることができる。
第2モノマーが(メタ)アクリル酸系モノマーを含有する場合には、(メタ)アクリル酸系モノマーのカルボキシル基および/またはカルボキシレート基が、徐放性粒子表面に分布して、徐放性粒子乳濁液中でのコロイド安定性を向上させることができる。
第2モノマーが重合反応性乳化剤を含有する場合には、特に希釈された徐放性粒子乳濁液中においても、コロイド安定性を維持することができ、機械的な剪断力が負荷されても、徐放性粒子の凝集・破壊を防ぐことができる。
第2モノマーとして、より好ましくは、(メタ)アクリル酸系モノマーが挙げられる。
第2モノマーは、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,2nd monomer unit(s)が、例えば、3.0〜6.0[(J/cm3)1/2]、好ましくは、3.5〜6.0[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,2nd monomer unit(s)が、例えば、7.0〜10.0[(J/cm3)1/2]、好ましくは、7.2〜9.5[(J/cm3)1/2]である。
なお、第2モノマーの溶解度パラメータδ(双極子間力項δp,2nd monomer unitsおよび水素結合力項δh,2nd monomer units)は、異なる種類が併用される場合には、第2モノマー全体(つまり、異なる種類の混合物)として算出される値である。そのような算出方法は、上記した第1モノマー全体と同様である。
第2モノマーの配合割合は、重合体の溶解度パラメータδ(双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymer)が、第1モノマーの溶解度パラメータδ、その配合割合、第2モノマーの溶解度パラメータδおよびその配合割合から算出される(特開2011−79816号公報参照)ことから、適宜設定され、具体的には、重合性ビニルモノマーに対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、38質量%以下、さらには、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下が好ましく、また、0質量%を超過する。
第2モノマーの配合割合が上記した上限を超える場合には、共重合体とIPBC/プロピコナゾールとの相溶性が低下することがあり、その場合には、ミニエマルション重合中、重合後の冷却中、あるいは、冷却後数日から数か月以内にIPBCの結晶が一部析出する場合がある。
また、重合性ビニルモノマーは、例えば、アルキル部分の炭素数6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、さらには、アルキル部分の炭素数7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを任意成分として含有することもできる。
アルキル部分の炭素数6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル部分の炭素数は、例えば、1以上であり、また、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下、さらに好ましくは、2以下である。アルキル部分の炭素数が上記上限以下であれば、重合速度の低下が少なく、IPBCおよびプロピコナゾールと相溶する重合体を容易に得ることができる。アルキル部分の炭素数6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸短鎖アルキルエステルであって、上記した第1モノマーであるMMAを含み、さらに、第2モノマーの一部を含む。アルキル部分の炭素数6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸短鎖アルキルエステルとして、好ましくは、第1モノマーであるMMAが挙げられる。
アルキル部分の炭素数7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルである。アルキル部分の炭素数7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、上記した第2モノマーにおける(メタ)アクリル酸アルキルエステルの残部であって、例えば、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル(ラウリル)、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル(ステアリル)などの直鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸iso−ノニルなどの分岐状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。なお、アルキル部分の炭素数10以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ミニエマルション重合におけるハイドロホーブとしての効果を示す一方、炭素数10以上(メタ)アクリル酸アルキルエステルが配合されると、ミニエマルションを調製する時に、1μm未満、さらには、500nm未満の粒子径に到達するのに、より大きな機械的剪断力が必要となる。
(メタ)アクリル酸短鎖アルキルエステルの配合割合は、全重合性ビニルモノマー量に対して、例えば、75質量%以上、好ましくは、80質量%以上、より好ましくは、85質量%以上、さらに好ましくは、90質量%以上である。換言すれば、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルの配合割合は、全重合性ビニルモノマー量に対して、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。
(メタ)アクリル酸短鎖アルキルエステルの配合割合が上記下限に満たず、あるいは、(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルの配合割合が上記上限を超える場合には、ミニエマルション重合の重合速度が低下するとともに、IPBCおよびプロピコナゾールと重合性ビニルモノマーとの相溶性が低下し、IPBCおよび/またはプロピコナゾールが重合性ビニルモノマーに十分溶解しないか、あるいは、たとえIPBCおよびプロピコナゾールが重合性ビニルモノマーに溶解しても、IPBCおよび/またはプロピコナゾールが重合中に粒子外で漏出して針状結晶が生成する。つまり、IPBCおよびプロピコナゾールと重合体との均一相(後述するが、具体的には、IPBCおよびプロピコナゾールと重合体との仕込み組成比と同様の組成比である均一相)を構成することができない。
上記した重合性ビニルモノマーは、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温における溶解度が、例えば、8質量部/水100質量部以下、好ましくは、5質量部/水100質量部以下、さらに好ましくは、3質量部/水100質量部以下である。なお、重合性ビニルモノマーは、異なる種類が併用される場合(例えば、第1モノマーおよび第2モノマーが併用される場合や、例えば、異なる種類の第1モノマーが併用される場合、あるいは、(メタ)アクリル酸短鎖アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸長鎖アルキルエステルが併用される場合)には、重合性ビニルモノマー全体(つまり、異なる種類の重合性ビニルモノマーの混合物)として実質的に疎水性である。
そして、ミニエマルション重合により得られる重合体に関し、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが、5.0〜7.0[(J/cm3)1/2]、好ましくは、5.0〜6.5[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが、8.0〜10.0[(J/cm3)1/2]、好ましくは、9.0〜10.0[(J/cm3)1/2]である。
重合体の双極子間力項δp,polymerおよび/または水素結合力項δh,polymerが上記範囲に満たないと、重合体の疎水性が過度に高くなり、IPBCおよびプロピコナゾールとの十分な相溶性を得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができた場合でも、IPBCおよびプロピコナゾールがミニエマルション重合中に徐放性粒子外へ漏出して、IPBCおよびプロピコナゾールを十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
一方、重合体の双極子間力項δp,polymerおよび/または水素結合力項δh,polymerが上記範囲を超えると、重合体の親水性が過度に高くなり、IPBCおよびプロピコナゾールとの十分な相溶性が得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができたとしても、ミニエマルション重合における水相との界面自由エネルギーが低くなり、IPBCおよびプロピコナゾールがミニエマルション重合中に徐放性粒子外へ漏出して、IPBCおよびプロピコナゾールを十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
重合体の双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが上記した範囲内であれば、IPBCおよびプロピコナゾールは、ミニエマルション重合中、徐放性粒子から漏出せずに重合体と相溶していると定義される。つまり、徐放性粒子は、IPBCおよびプロピコナゾールと重合体との均一相からなる。具体的には、徐放性粒子は、IPBC、プロピコナゾールおよび重合性ビニルモノマーの仕込み組成と同様の、IPBC、プロピコナゾールおよび重合体の組成比を有する均一相からなる。
乳化剤は、ミニエマルション重合で通常用いられる乳化剤が挙げられ、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル燐酸エステルアンモニウム塩などのアニオン系乳化剤が挙げられる。
また、乳化剤として、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー、ポリオキシアルキレンアリールエーテルなどのノニオン系乳化剤が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(例えば、ノイゲンEA−177(第一工業製薬社製))などが挙げられる。
ポリオキシアルキレンブロックコポリマーとしては、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアリールエーテルなどが挙げられる。
ノニオン系乳化剤のHLBは、例えば、11〜20、好ましくは、12〜19、さらに好ましくは、13〜18である。
なお、HLBは、下記式(1)で示されるグリフィンの式によって計算される。
HLB=20×(親水部の式量の総和/分子量) (1)
ノニオン系乳化剤としては、好ましくは、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテルが挙げられる。
乳化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、アニオン系乳化剤の単独使用が挙げられ、さらに好ましくは、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの単独使用、あるいは、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの単独使用が挙げられる。
アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤が併用される場合には、アニオン系乳化剤の配合割合が、乳化剤に対して、例えば、10〜60質量%、好ましくは、15〜50質量%であり、ノニオン系乳化剤の配合割合が、乳化剤に対して、例えば、40〜90質量%、好ましくは、50〜85質量%である。
なお、乳化剤は、予め水に適宜の割合で配合して溶解させ、乳化剤含有水溶液として調製することもできる。乳化剤含有水溶液における乳化剤の配合割合は、例えば、10〜90質量%、好ましくは、20〜80質量%である。
重合開始剤は、ミニエマルション重合で通常用いられる重合開始剤が挙げられ、例えば、油溶性重合開始剤、水溶性重合開始剤などが挙げられる。
油溶性重合開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシドなどの油溶性有機過酸化物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの油溶性アゾ化合物などが挙げられる。
水溶性重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物などの水溶性アゾ化合物、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩化合物、例えば、過酸化水素などの水溶性無機過酸化物、例えば、tert−ブチルパーオキサイド、クメンパーオキサイドなどの水溶性有機過酸化物などが挙げられる。さらに、水溶性重合開始剤として、例えば、水溶性アゾ化合物を除く水溶性重合開始剤と、アスコルビン酸、次亜硫酸水素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトルム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム(ロンガリット)、二酸化チオ尿素、チオ硫酸ナトリウム、2価鉄塩、1価銅塩、アミン類などの水溶性還元剤とを組み合わせたレドックス系水溶性重合開始剤なども挙げられる。
重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
好ましくは、油溶性重合開始剤、さらに好ましくは、油溶性有機過酸化物が挙げられる。
そして、本発明の徐放性粒子の製造方法では、まず、IPBCおよびプロピコナゾールを疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製する。
すなわち、IPBC、プロピコナゾールおよび重合性ビニルモノマーを配合して、それらを均一に攪拌することにより、疎水性溶液を得る。
なお、疎水性溶液は、例えば、溶剤(ヘキサン、トルエン、酢酸エチルなどの疎水性の有機溶剤)、および/または、ハイドロホーブ(ヘキサデカン、セチルアルコールなどのコスタビライザー)を配合することなく、調製される。これにより、環境負荷を低減することができる。
重合性ビニルモノマーに対するIPBCおよびプロピコナゾールの配合割合は、質量基準(つまり、IPBCおよびプロピコナゾールの合計の質量部/重合性ビニルモノマーの質量部)で、例えば、0.25以上、好ましくは、0.6以上であり、また、例えば、9.0以下、好ましくは、4.0以下でもある。
IPBC、プロピコナゾールおよび重合性ビニルモノマーの総量100質量部に対するIPBCおよびプロピコナゾールの総量の配合割合(つまり、IPBCおよびプロピコナゾールの合計の質量部/IPBC、プロピコナゾールおよび重合性ビニルモノマーの合計の質量部)は、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上、より好ましくは、45質量部以上、さらに好ましくは、50質量部以上、とりわけ好ましくは、55質量部以上、さらには、60質量部以上、最も好ましくは、70質量部以上であり、また、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下でもある。
IPBC、プロピコナゾールおよび重合性ビニルモノマーの総量100質量部に対するIPBCの配合割合(つまり、IPBCの質量部/IPBC、プロピコナゾールおよび重合性ビニルモノマーの合計の質量部)は、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、25質量部以下であり、また、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上でもある。
プロピコナゾールに対するIPBCの配合割合は、質量基準(つまり、IPBCの質量部/プロピコナゾールの質量部)で、例えば、90/10〜1/99、好ましくは、70/30〜10/90、より好ましくは、65/35〜10/90、さらに好ましくは、50/50〜10/90である。IPBCがこの配合割合であれば、IPBCがプロピコナゾールと共存することにより、IPBCの徐放性粒子外への漏出が有効に制御される。
疎水性溶液の調製は、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、IPBCおよびプロピコナゾールの重合性ビニルモノマーに対する溶解速度を高めるため、さらには、常温ではIPBCおよびプロピコナゾールの溶解度が十分でない場合に、溶解度を上げるためには、加熱して実施することもできる。
加熱温度は、例えば、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。
また、疎水性溶液の調製において、重合開始剤として油溶性重合開始剤が用いられる場合には、IPBC、プロピコナゾールおよび重合性ビニルモノマーとともに、油溶性重合開始剤を配合する。油溶性重合開始剤の配合は、好ましくは、常温で実施する。IPBC、プロピコナゾールおよび重合性ビニルモノマーを配合して、それらを加熱して、IPBCおよびプロピコナゾールを重合性ビニルモノマーに溶解させる場合には、溶解後の溶液を室温に冷却するか、あるいは溶解しているIPBCが析出しない温度より高い温度まで冷却し、その後、油溶性重合開始剤を配合する。
油溶性重合開始剤の配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下でもある。
油溶性重合開始剤の配合割合が上記上限を超える場合には、重合体の分子量が過度に低下する場合があり、上記下限に満たない場合には、転化率が十分に向上せず、未反応の重合性ビニルモノマーが残存する場合がある。
また、本発明の徐放性粒子の製造方法では、別途、水と乳化剤とを配合して乳化剤水溶液を調製する。
具体的には、水と乳化剤とを配合して、それらを均一に攪拌することにより、乳化剤水溶液を得る。
乳化剤の配合割合は、乳化剤が疎水性溶液乳化液滴の全表面に吸着されるに十分な量であり、過剰な乳化剤の存在によりIPBCおよびプロピコナゾールを含まない新しい重合性ビニルモノマーの乳化重合粒子の発生を抑制する量が選ばれ、乳化剤の種類により異なるが、疎水性溶液に対して、例えば、乳化剤の有効成分(AI:Active Ingredient)量として、例えば、0.1〜20質量%、好ましくは、0.2〜10質量%である。
乳化剤水溶液の調製は、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、必要に応じて、加熱して実施することもできる。
加熱温度は、例えば、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。
なお、乳化剤水溶液の調製において、重合開始剤として水溶性重合開始剤が用いられる場合には、水および乳化剤とともに、水溶性重合開始剤を配合することができる。水溶性重合開始剤の配合は、好ましくは、常温で実施する。水および乳化剤を配合して、それらを加熱して、乳化剤を水に溶解させる場合は、その水溶液を室温に冷却し、その後、水溶性重合開始剤を配合する。
また、重合開始剤として水溶性重合開始剤が用いられる場合には、後述するミニエマルション重合のための加熱前、加熱途中、重合温度到達時のいずれの時点で、ミニエマルションに直接添加してもよい。
水溶性重合開始剤の配合割合は、水100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下でもある。
水溶性重合開始剤の配合割合が上記上限を超える場合には、重合体の分子量が過度に低下する場合があり、上記下限に満たない場合には、転化率が十分に向上せず、未反応の重合性ビニルモノマーが残存する場合がある。
また、乳化剤水溶液は、好ましくは、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記する。)を配合することができる。
PVAは、ミニエマルションの保護コロイドを形成するために、水相に配合される分散剤であり、例えば、酢酸ビニルを主成分とするビニルモノマーを適宜の方法で重合して得られるポリ酢酸ビニル系重合体をけん化させることにより、得ることができる。
PVAを乳化剤水溶液に配合することにより、PVAの保護コロイドによって、安定な水和層を形成し、粒子間の衝突による凝集が起こりにくくさせる。その結果、例えば、乳化剤量が少ない処方においても、ミニエマルション重合中の凝集物量を低下させたり、残存モノマー量を低減するために重合末期に添加される重合開始剤(還元剤を含む)による、ミニエマルション重合粒子の不安定化を防止することができるなど、重合安定性を向上せることができる。また、長期間貯蔵中の徐放性粒子の凝集やケーキングを防止したり、徐放性粒子を木部処理剤として使用するに際して、水で希釈して、高剪断力のポンプやノズルを通過させる場合にも、徐放性粒子の凝集を防止することができるなど、コロイド安定性を向上させることができる。
PVAのけん化度は、例えば、70%以上、好ましくは、80%以上であり、また、例えば、99%以下、好ましくは、90%以下である。
PVAの平均重合度は、例えば、300以上、好ましくは、500以上であり、また、例えば、4000以下、好ましくは、2500以下である。
PVAは、4%水溶液の20℃における粘度が、例えば、3mPa・sec以上、好ましくは、5mPa・sec以上であり、また、例えば、100mPa・sec以下、好ましくは、50mPa・sec以下である。
PVAの粘度は、20℃において、その4%水溶液をB型粘度計を用いて測定することができる。
PVAを配合する場合、その配合割合は、PVAが疎水性溶液乳化液滴の全表面に吸着されるのに十分な量が選ばれ、PVAの種類により異なるが、疎水性溶液に対して、例えば、PVAの有効成分量として、例えば、0.5〜10質量%、好ましくは、1〜8質量%である。
PVA水溶液の調製は、例えば、25℃以下の冷水に撹拌下にPVAを投入して分散させ、そのまま60〜90℃に昇温して溶解させる。PVAが完全に水に溶解したことを確認後、室温に冷却することにより実施することができる。
また、乳化剤水溶液は、PVA以外の分散剤を含有することもできる。
分散剤としては、例えば、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物、ポリカルボン酸型オリゴマーなどが挙げられ、好ましくは、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられる。
芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物としては、例えば、β−ナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩などが挙げられる。
これら分散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
分散剤の配合割合は、例えば、疎水性溶液に対して、例えば、0.001質量%以上、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、例えば、0.5質量%以下、好ましくは、0.3質量%以下、より好ましくは、0.2質量%以下である。
本発明の徐放性粒子の製造方法では、次いで、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化する。
具体的には、疎水性溶液を乳化剤水溶液に配合し、それらに高い剪断力を与えることにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製する。
疎水性溶液の乳化では、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入乳化機などの乳化機が用いられ、好ましくは、ホモミキサーが用いられる。
攪拌条件は、適宜設定され、ホモミキサーを用いる場合には、その回転数を、例えば、6000rpm以上、好ましくは、8000rpm以上、さらに好ましくは、10000rpm以上に、例えば、30000rpm以下に設定する。
回転数が上記下限に満たない場合には、粒子径1μm未満のミニエマルション粒子が形成されない場合がある。
攪拌時間は、例えば、1分間以上、好ましくは、2分間以上であり、また、1時間以下でもある。
また、ミニエマルションの調製は、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、加熱して実施することもできる。また、乳化時に、加熱することもできる。加熱温度は、例えば、上記した疎水性溶液および/または乳化剤水溶液の調製時の加熱温度以上であり、具体的には、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。
疎水性溶液の配合割合は、乳化剤水溶液100質量部に対して、例えば、10〜150質量部、好ましくは、25〜90質量部である。
上記の方法により、疎水性溶液のミニエマルションを調製する。なお、疎水性溶液のミニエマルションは、乳化剤が、ミニエマルション粒子(疎水性溶液乳化液滴)に吸着しており、水媒体中に、平均粒子径1μm未満の疎水性溶液のミニエマルション粒子が形成されている。
ミニエマルション粒子の平均粒子径(メジアン径、後述)は、例えば、1μm未満、好ましくは、750nm以下、より好ましくは、600nm、さらに好ましくは、500nm以下、とりわけ好ましくは、400nm以下に、また、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上、より好ましくは、200nm以上に調節される。
なお、このミニエマルション粒子の表面には、乳化剤が吸着されており、それによって、ミニエマルションが安定化されている。
そのため、攪拌により調製されたミニエマルションを、調製後、静置した後、次のミニエマルション重合に供することもできる。その場合には、静置時間を、例えば、24時間以上にすることもできる。
ミニエマルション粒子の平均粒子径は、経時的に実質的に変化しないか、あるいは、変化率が極めて小さい。
具体的には、ミニエマルションの調製から20分経過(室温にて静置)後の平均粒子径に対する、調製から24時間経過(室温にて静置)後の平均粒子径の比(調製から24時間経過後の平均粒子径/調製から20分経過後の平均粒子径)が、例えば、0.9〜1.1、好ましくは、0.95〜1.05である。
本発明では、その後、乳化された疎水性溶液の重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して、重合体を生成する。
このミニエマルション重合は、原料となる重合性ビニルモノマーがすべてミニエマルション粒子(疎水性液相)のみにあることから、インサイチュ(in situ)重合である。
すなわち、ミニエマルション重合は、ミニエマルションを攪拌しながら加熱することにより、重合性ビニルモノマーがそのまま、ミニエマルション粒子中で重合を開始し、重合体が生成する。
攪拌は、例えば、攪拌羽根を有する攪拌器によって実施でき、ミニエマルションへの均一な熱伝導、ミニエマルション粒子の器壁固着、ミニエマルション表面でのミニエマルションの滞留膜張りを制御するに十分なかき混ぜ効果が実現できればよく、過剰な攪拌はミニエマルション粒子の凝集の原因となる。攪拌速度は、攪拌羽根の周速が、例えば、10m/分以上、好ましくは、20m/分以上であり、また、400m/分以下、好ましくは200m/分以下でもある。
加熱条件は、重合開始剤の種類などによって適宜選択され、加熱温度が、例えば、IPBCおよびプロピコナゾールの融点以上であり、具体的には、30〜100℃、好ましくは、50〜100℃であり、加熱時間が、例えば、2〜24時間、好ましくは、3〜12時間である。さらに、所定温度に加熱後、その温度を所定時間維持し、その後、加熱および温度維持を繰り返すことにより、段階的に加熱することもできる。
また、ミニエマルション重合時における圧力は、特に限定されず、例えば、常圧である。
なお、上記した説明では、ミニエマルション重合を常圧で実施しているが、例えば、高圧下で実施することもできる。これにより、100℃を超過する温度でミニエマルション重合を実施することもできる。
そして、ミニエマルション重合は、上記したように、重合プロセスがインサイチュ重合である点で、重合プロセスが、インサイチュ重合でなく、重合性ビニルモノマーが物質移動して重合する乳化重合と、明らかに相違する。
具体的に、乳化重合は、水相中で、乳化剤、重合性ビニルモノマーおよび重合開始剤(ラジカル重合開始剤)の存在下、攪拌を行い、ラジカル重合開始剤が分解して生成したラジカルにより重合を開始させる。このとき、重合性ビニルモノマーは、以下の3つの状態で存在する。つまり、(1)乳化剤のミセル中に可溶化された状態(平均粒子径数十nm未満の状態)、(2)水相中に溶解した状態、(3)油滴として存在する状態(粒子径数μm以上)の3つの状態で重合性ビニルモノマーが存在する。
そして、ラジカル重合開始剤の分解により生成したラジカルは、この3つ状態の重合性ビニルモノマーに衝突・侵入し、重合性ビニルモノマーに付加して重合を開始させる可能性があるが、上記した(1)重合性ビニルモノマーを可溶化した乳化剤のミセルは、上記した(3)重合性ビニルモノマーの油滴より、粒子の数が圧倒的に多く、そのため、表面積が大きくて、ラジカルの侵入確率が高いため、(1)乳化剤のミセルの中で重合が開始して、重合体粒子を形成する。なお、重合性ビニルモノマーとして水溶性の高い重合性ビニルモノマーを使用する場合には、上記した(2)水相中に溶解したビニルモノマーへのラジカル付加が起こり、生成した重合体が水相に溶解できず析出した時点で乳化剤により安定化され、重合体粒子が生成する。このような開始反応も乳化重合のプロセスで観察される。
そして、乳化重合が開始すると、(3)重合性ビニルモノマーの油滴から水相中に重合性ビニルモノマーが溶解し、次いで、重合性ビニルモノマーが重合体粒子に移動し、重合が進行する。すなわち、重合の場は、重合体粒子であり、重合性ビニルモノマーの油滴は、重合性ビニルモノマーの供給源としての役割を担うのみであり、その場で重合、つまり、インサイチュ重合は起こらない。
これに対して、ミニエマルション重合は、乳化剤およびハイドロホーブ(コスタビライザー)の存在下、ホモミキサー(ホモミクサー)、高圧ホモジナイザー、超音波照射などによって水相中の重合性ビニルモノマーの油滴に高剪断力を与えることによって粒子径1μm未満、好ましくは、0.5μm未満に微小化し、重合開始剤(ラジカル重合開始剤)が油溶性である場合には、その微小でかつ安定な重合性ビニルモノマーの油滴内で、重合開始剤が分解して生成したラジカルにより、あるいは、重合開始剤が水溶性である場合には、ラジカルが油滴に侵入して、侵入したラジカルにより、重合が開始し、ラジカル重合が進行する重合法である。
詳しくは、微小な重合性ビニルモノマーの油滴は、例えば、乳化剤としてアニオン系乳化剤を採用することにより、安定に存在する。同時に、微小な重合性ビニルモノマーの油滴は、ハイドロホーブ(コスタビライザー)を用いることにより、水相を介してより小さな(微小な)重合性ビニルモノマーの油滴からより大きな重合性ビニルモノマーの油滴への重合性ビニルモノマーの移動による肥大化(オストワルド熟成)を制御することにより、安定に存在する。
一方、本発明においては、ミニエマルション粒子(IPBC、プロピコナゾールおよび重合性ビニルモノマーからなる微小な油滴)中で重合性ビニルモノマーが重合(ラジカル重合)するミニエマルション重合が進行する。ミニエマルション重合中、重合性ビニルモノマーの重合体は、好ましくは、IPBCおよびプロピコナゾールに対して相溶している。つまり、重合体がIPBCおよびプロピコナゾールに溶解されて、重合体の抗生物活性化合物溶液とされており、その抗生物活性化合物溶液が、水中で乳化されている。
また、重合性ビニルモノマーは、上記したミニエマルション重合中の重合温度(加熱温度)において、好ましくは、上記したように重合性ビニルモノマーの重合体とIPBCおよびプロピコナゾールとが相溶するような組み合わせが選択されていることから、ミニエマルション重合中に相分離が生じることを防止して、重合体(反応途中の重合体)がIPBCおよびプロピコナゾールに溶解し、あるいは、重合体(反応途中の重合体)がIPBCおよびプロピコナゾールに対して膨潤した状態で反応が進行し、均一相が形成された徐放性粒子を得ることができる。
また、IPBCは、プロピコナゾールに対して相溶性が高い。そのため、IPBC単独であれば、重合後の乳濁液中に針状結晶が析出される高い濃度(例えば、徐放性粒子におけるIPBC濃度が30質量%以上)を有する徐放性粒子であっても、IPBCとプロピコナゾールとが共存するように製造すれば、IPBCが高い濃度で含有されていても重合後の乳濁液中における針状結晶の析出を抑制することができる。
さらには、徐放性粒子中におけるIPBCおよびプロピコナゾールの合計の濃度を高くしても、針状結晶として重合後の乳濁液中に針状結晶が析出されない徐放性粒子を得ることができる。すなわち、IPBCおよびプロピコナゾールの合計の濃度が高い徐放性粒子を得ることができる。
これにより、高い希釈率で使用することができる、徐放性粒子の乳濁液を得ることができる。
さらには、IPBCとプロピコナゾールとを含有する徐放性粒子は、IPBCのみを含有する徐放性粒子、および、プロピコナゾールのみを含有する徐放性粒子よりも、徐放速度をより遅くすることができ、より長期的に徐放性を発揮する徐放性粒子を得ることができる。
一方、ミニエマルション粒子の平均粒子径が、1μm未満と小さいことから、重合性ビニルモノマーが水相中に分子拡散し易いところ、本発明のミニエマルション重合では、IPBCおよびプロピコナゾールがハイドロホーブとして作用することができるので、上記した分子拡散を有効に防止する結果、オストワルド熟成を防止して、ミニエマルション粒子の肥大化(粒子径の増大)を抑制することができる。
その後、重合後の乳濁液を、例えば、放冷などによって冷却する。
冷却温度は、例えば、室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)である。
徐放性粒子が粉剤(後述)または粒剤(後述)として製剤化される場合には、徐放性粒子が互いに融着することを防止すべく、好ましくは、室温において、硬質のガラス状態とされるように、重合性ビニルモノマーが選択される。
このようにして得られる徐放性粒子(重合体)の平均粒子径は、メジアン径で、1μm未満、好ましくは、750nm以下、より好ましくは、600nm以下、さらに好ましくは、500nm以下、とりわけ好ましくは、400nm以下であり、また、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上、より好ましくは、200nm以上でもある。
徐放性粒子におけるIPBCおよびプロピコナゾールの合計の含有割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは、45質量%以上、さらに好ましくは、50質量%以上、とりわけ好ましくは、55質量%以上、さらには、60質量%以上、最も好ましくは、70質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下でもある。
乳濁液中における徐放性粒子の含有割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上、さらに好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下でもある。
乳濁液中におけるIPBCおよびプロピコナゾールの合計の含有割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下でもある。
本発明の徐放性粒子は、特に木部処理剤として、シロアリ、ヒラタキクイムシなどの木部害虫の被害を防ぐために、IPBCおよびプロピコナゾールに加えて、殺虫剤、防虫剤、有害生物忌避剤など(まとめて「殺虫剤等」と略称する)を含有することができる。殺虫剤等は、IPBCおよびプロピコナゾールと同様に、本発明でミニエマルション重合で生成する重合体に相溶する化合物を選択することにより、少なくともIPBCおよびプロピコナゾールを含有する本発明の徐放性粒子の優れた性能を損なうことなく、本発明の徐放性粒子に含有することができる。
殺虫剤等としては、例えば、分子量が150〜500、融点が100℃以下の疎水性有機化合物が挙げられる。なお、殺虫剤等は、例えば、製造工程中に、融点が上記範囲外である不純物を適宜の割合で含有していてもよい。具体的には、シフルトリンの異性体I(融点:57℃)と異性体II(融点:74℃)と異性体III(融点:66℃)との混合物は、例えば、不純物である異性体IV(融点102℃)を含有している。殺虫剤等は、好ましくは、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,INSECが2〜8[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,INSECが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]である化合物が選択される。殺虫剤等としては、具体的には、シフルトリン、ペルメトリン、ディート、エトフェンプロックスなどが挙げられる。
徐放性粒子の製造においては、殺虫剤等は、プロピコナゾールおよびIPBCと同様の手順で配合され、ミニエマルション重合において、ハイドロホーブとしての役割を果たす。
殺虫剤等の配合割合は、プロピコナゾールおよびIPBCの合計量に対して、例えば、2〜100質量%、好ましくは、5〜80%質量である。殺虫剤等を配合する場合は、上記のすべての文中において、プロピコナゾールおよびIPBCの合計をプロピコナゾール、IPBCおよび殺虫剤等の合計と読み替えることとする。
そして、徐放性粒子を含む乳濁液に、必要により、その他の分散剤、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、微生物増殖抑制剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合する。
このようにして得られた徐放性粒子は、そのままの状態(乳濁液)、つまり、乳濁剤として用いてもよく、また、スプレードライ、または、凍結・融解や、塩析などにより凝集させた後、遠心分離・洗浄・乾燥などによって固液分離を行い、例えば、粉剤または粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いてもよい。また、とりわけ、第2モノマーとして(メタ)アクリル酸アルキルエステル(具体的には、例えば、n−BAなどの炭素数2以上のアルキル部分を有するアクリル酸エステル、例えば、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数5以上のアルキル部分を有するメタクリル酸エステル)を含む徐放性粒子は、ガラス転移温度が低いので、最低造膜温度(MFT)が低い。そのため、造膜性に優れ、そのため、造膜用途に好適に用いられる。
徐放性粒子を含む乳濁剤を木部処理剤として用いる場合、質量基準で、例えば、18倍以上、好ましくは、22倍以上、さらに好ましくは、25倍以上であり、また、例えば、60倍以下の希釈率にて希釈して使用することができる。
そして、本発明の徐放性粒子の製造方法は、乳化された疎水性溶液の重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して、平均粒子径1μm未満の重合体を生成することにより、本発明の徐放性粒子を得るので、徐放性粒子は、分散性に優れ
る。
具体的には、徐放性粒子は、平均粒子径が1μm未満であるので、重力に基づく沈降が生じにくく、徐放性粒子のブラウン運動によって、乳濁液中に均一に分散しており、この乳濁液を各種水系媒体中に添加すると、液中に均一に分散させることができ、沈降を抑制できる。
そのため、本発明の徐放性粒子は、添加された媒体中で平均粒子径1μm未満(サブミクロンサイズ)で均質(均一)に分散することにより、優れた徐放性は元より、優れた分散性を有する徐放性粒子として、種々の用途に用いることができる。
さらに、本発明の徐放性粒子は、平均粒子径1μm未満であることにより、木部処理時に、木材の道管、あるいは仮道管の中まで徐放性粒子が入り込み、木部の防腐および防かび効果に優れた木部処理剤とすることができる。
具体的には、徐放性粒子は、木部処理剤の他にも、各種の工業製品に適用することができ、例えば、屋内外の塗料、ゴム、繊維、樹脂、プラスチック、接着剤、目地剤、シーリング剤、建材、コーキング剤、土壌処理剤、製紙工程における白水、顔料、印刷版用処理液、冷却用水、インキ、切削油、化粧用品、不織布、紡糸油、皮革などに、防かび性および防腐性を発現する添加剤として添加することができる。なお、これらの工業製品に対する徐放性粒子中のIPBCおよびプロピコナゾールの合計の添加量は、例えば、10mg/kg〜100g/kg(製品質量)である。
また、本発明の徐放性粒子では、ミニエマルション重合により得られる重合体は、Hansenで定義され、van Krevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが5.0〜7.0[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが8.0〜10.0[(J/cm3)1/2]であるので、その徐放性粒子内に、相溶性が優れたIPBCおよびプロピコナゾールを含有する。そのため、徐放性粒子内の抗生物活性化合物の総濃度を高くすることができる。このため、水による希釈倍率が高い本発明の木部処理剤とすることができる。
徐放性粒子を木部処理剤として使用する場合、徐放性粒子を含有していればよく、例えば、上記の徐放性粒子を含む乳濁液(原乳濁液)、および、乳濁液が上記の希釈倍率などで希釈された希釈液を木部処理剤として使用できる。
木部処理剤における徐放性粒子の含有量は、木部処理剤が原乳濁液である場合では、例えば、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下でもあり、一方、木部処理剤が希釈液である場合では、例えば、0.2質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下でもある。
木部処理剤におけるIPBCおよびプロピコナゾールの合計濃度は、原乳濁液の場合では、例えば、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下でもあり、一方、希釈液の場合では、例えば、0.03質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下でもある。
徐放性粒子が木部処理剤として使用される場合における、プロピコナゾールに対するIPBCの配合割合は、質量基準(つまり、IPBCの質量部/プロピコナゾールの質量部)で、例えば、90/10〜1/99、好ましくは、70/30〜10/90、より好ましくは、65/35〜10/90、さらに好ましくは、50/50〜10/90である。
木部処理剤は、例えば、分散剤、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、殺虫剤、防虫剤、有害生物忌避剤、微生物増殖抑制剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
この木部処理剤は、IPBCおよびプロピコナゾールを高濃度で含むことが可能であるため、水によって高い希釈倍率で希釈して使用することができる。よって、生産効率、輸送効率および貯蔵効率に優れる。また、木部処理剤に含まれる徐放性粒子は、コロイド分散性に優れているため、機械耐性に優れている。すなわち、木部処理剤を、高圧力で塗布機または噴霧機を用いて、木部に対して塗布または噴霧する場合であっても、木部処理剤の塗布機または噴霧機におけるゲル化を抑制し、塗工性に優れる。また、この木部処理剤は、徐放性粒子の平均粒子径が、1μm未満と小さいことから、水で希釈後の木部処理剤を、そのまま放置しても、徐放性粒子が沈降しにくく、長期間支障なく使用することができる。すなわち、水希釈液の貯蔵安定性に優れる。
また、この徐放性粒子は、乳化剤水溶液に配合される乳化剤と共通する乳化剤が用いられる水性塗料に好適に配合することができる。水性塗料は、屋内外に用いられる水性塗料であって、具体的には、例えば、アクリル系、アクリル−スチレン系、スチレン系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系、ウレタン系、アルキッド系、フッ素系の樹脂のエマルションまたは水性樹脂およびこれらの混合物などをビヒクルとする塗料が挙げられ、なかでも、ゼロVOC塗料に配合すれば、環境に優しく、かつ、徐放性粒子の安定性を良好に維持して、効力持続性の向上を、より一層図ることができる。
また、疎水性のIPBCおよびプロピコナゾールがミニエマルション重合におけるハイドロホーブを兼用することができるので、別途、ハイドロホーブを配合することなく、簡易に、平均粒子径1μm未満の徐放性粒子を生成することができる。
また、徐放性粒子の平均粒子径が、750nm以下100nm以上であれば、徐放性粒子の屈折率と媒体の屈折率との間に、例えば、0.2以上の差がある場合には、徐放性粒子と媒体との界面で、光(可視光線、波長360〜760nm)の反射が大きく、媒体に配合された徐放性粒子は、目視で白色に見えるようになる。
さらに、徐放性粒子の平均粒子径が、100nm未満であれば、媒体によらず光(可視光線、波長360〜760nm)は徐放性粒子を透過する割合が高くなり、透明感が強くなる。
従って、適当な媒体に配合された本発明の徐放性粒子は、IPBCおよびプロピコナゾールが、実質的に変色しても、目視では変色が抑えられるので、塗料の添加剤として好適に用いることができる。
各実施例および各比較例で用いる原料の詳細を次に記載する。
IPBC:商品名「ファンギトロール400」、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、分子量281、融点:60℃、水への溶解度:150ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,IPBC:3.23[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,IPBC:7.83[(J/cm3)1/2]、インターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社製
プロピコナゾール:1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、分子量342、融点20℃未満、水への溶解度110ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,PROP:6.55[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,PROP:9.44[(J/cm3)1/2]、八幸通商社製
シフルトリン:商品名「プリベントールHS12」(「プリベントール」は登録商標)、(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル−(1RS,3RS)−(1RS,3RS)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、分子量434、水への溶解度:1〜2ppb、異性体I(融点57℃)と異性体II(融点74℃)と異性体III(融点66℃)と異性体IV(融点102℃)との混合物、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,INSEC:3.46[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,INSEC:6.09[(J/cm3)1/2]、ランクセス社製
エトフェンプロックス:商品名「トレボン殺虫剤原体」、2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジルエーテル、分子量377、融点:36〜38℃、水への溶解度:22.5ppb、δp,INSEC:2.27[(J/cm3)1/2]、δh,INSEC:5.33[(J/cm3)1/2]、三井化学アグロ社製
ペルメトリン:商品名「プリベントールHS75」、3−フェノキシベンジル(1RS,3RS;1RS,3SR)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、分子量391、融点:34〜35℃、水への溶解度:6ppb、δp,INSEC:3.63[(J/cm3)1/2]、δh,INSEC:6.22[(J/cm3)1/2]、ランクセス社製
エポキシコナゾール:cis−1−[[3−(2−クロロフェニル)−2−(4−フルオロフェニル)オキシラニル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、分子量330、融点136〜137℃、水への溶解度:6.6ppm、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp:5.82[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh:7.10[(J/cm3)1/2]、LKT ラボラトリーズ社製
トリチコナゾール:5−[(4−クロロフェニル)メチレン]−2,2−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンタノール、分子量318、融点:139〜141℃、水への溶解度:9.3ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp:5.27[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh:10.81[(J/cm3)1/2]、LKT ラボラトリーズ社製
MMA:メタクリル酸メチル、商品名「アクリエステルM」(アクリエステルは登録商標)、水への溶解度:1.6質量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,MMA unit:5.98[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,MMA unit:9.25[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン社製
MAA:メタクリル酸、水への溶解度:8.9質量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,2nd monomer unit:7.13[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,2nd monomer unit:13.03[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン社製
n−BA:アクリル酸n−ブチル、水への溶解度:0.2質量%、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,2nd monomer unit:4.26[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,2nd monomer unit:7.81[(J/cm3)1/2]、日本触媒社製
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、商品名「ライトエステルEG」(ライトエステルは登録商標)、水への溶解度:5.37ppm、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,EGDMA unit:5.37[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,EGDMA unit:10.42[(J/cm3)1/2]、共栄社化学社製
ステアリルアクリレート:モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,2nd monomer unit:1.44[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,2nd monomer unit:4.54[(J/cm3)1/2]、和光純薬工業社製
PETA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,2nd monomer unit:3.79(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,2nd monomer unit:10.41[(J/cm3)1/2]、アルドリッチ社製
アクアロンKH−10:ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム、重合反応性乳化剤(ノニオン性親水基を有するアニオン系乳化剤)、第一工業製薬社製
アクアロンBC−10:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、重合反応性乳化剤(ノニオン性親水基を有するアニオン系乳化剤)、第一工業製薬社製
エレミノールRS−3000:メタクリロイルオキシポリオキシプロピレン硫酸エステルナトリウム塩50%水溶液、重合反応性乳化剤(ノニオン性親水基を有するアニオン系乳化剤)、三洋化成工業製
パーロイルL:商品名(「パーロイル」は登録商標)、ジラウロイルパーオキシド、油溶性重合開始剤、日油社製
ペレックスSS−L:商品名、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(アニオン系乳化剤)の50質量%水溶液、花王ケミカル社製
ネオコールSW−C:商品名、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系乳化剤)の70質量%イソプロパノール溶液、第一工業製薬社製
ノイゲンEA−177:商品名、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(ノニオン系乳化剤、HLB:15.6)、第一工業製薬社製
デモールNL:商品名、β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩の41質量%水溶液、分散剤、花王ケミカル社製
プロノン208:商品名、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ノニオン系乳化剤)、日油社製
PVA−217:商品名「クラレポバール217」、部分鹸化ポリビニルアルコールの10質量%水溶液、保護コロイド、クラレ社製
SPS:過硫酸ナトリウム、水溶性重合開始剤、和光純薬工業社製
実施例1
(ミニエマルション重合による、プロピコナゾールおよびIPBCを含有する徐放性粒子の製造)
200mLの容器に、IPBC12g、プロピコナゾール28g、MMA56.4g、EGDMA3.6gおよびパーロイルL0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水107.86g、ペレックスSS−L1.4g、PVA217(10%)水溶液40gおよびデモールNL0.24gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液を調製した。
次いで、500mLビーカーの乳化剤水溶液に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数12000rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製した。
その後、調製したミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により回転数200rpm(周速37.7m/分)で攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスにより、昇温して、ミニエマルション重合を実施した。
ミニエマルション重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、62±2℃で3時間、70±2℃で2時間、連続して実施した。
続いて、ウォーターバスを昇温して、反応液の温度を80±2℃に昇温し、2時間熟成した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、IPBCおよびプロピコナゾールを含有する徐放性粒子の乳濁液を得た。
実施例2〜21
表1〜表4に準拠して、各成分の配合処方および条件を変更した以外は、実施例1と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
比較例1
(懸濁重合による、プロピコナゾールおよびIPBCを含有する徐放性粒子の製造)
200mLの容器に、プロピコナゾール12g、IPBC28g、MMA56.4g、EGDMA3.6gおよびパーロイルL 0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水108.5g、プロノン208(1%)水溶液1.0g、PVA217(10%)水溶液40gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を調製した。
次いで、500mLビーカーの水溶液に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を水溶液中に分散させて、仕込み分散液を調製した。
その後、調製した分散液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により回転数200rpm(周速37.7m/分)で攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスにより、昇温して、懸濁重合を実施した。
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、62±2℃で3時間、70±2℃で2時間、連続して実施した。
続いて、ウォーターバスを昇温して、反応液の温度を80±2℃に昇温し、2時間熟成した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、IPBCおよびプロピコナゾールを含有する徐放性粒子の懸濁液を得た。
比較例2
表5に準拠して、各成分の配合処方および条件を変更した以外は、実施例1と同様に処理して、IPBCを含有する徐放性粒子の乳濁液を得た。
比較例3
(乳化重合による、IPBCおよびプロピコナゾールを含有する徐放性粒子の製造)
攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコに脱イオン水47.3g、ペレックスSSL 0.56g、PVA217(10%)水溶液4gおよびデモールNL 0.24gを仕込み、室温で撹拌することにより、均一な乳化剤水溶液とした。
200mLの容器に、MMA56.4g、およびEGDMA3.6gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一なモノマー混合液を調製した。
該モノマー混合液の0.6gを2mLの密栓つきガラスビンに小分けした。残りのモノマー混合液にIPBC12gおよびプロピコナゾール28gを添加し、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水36.76gペレックスSSL 5.04gおよびPVA217(10%)水溶液36gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液を得た。
次いで、500mLビーカーの乳化剤水溶液に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモディスパー2.5型(プライミクス社製)により回転数500rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に水分散させて、IPBC/プロピコナゾールモノマー混合液のエマルションを調製した。
乳化剤水溶液52.1gを仕込んだ攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコを6cm径の攪拌器により回転数125rpm(周速23.6m/分)で攪拌しながら、窒素気流下、昇温した。50℃到達時に、小分けしていたモノマー混合液0.6gを添加し、70℃到達時に過硫酸ナトリウム(SPS)0.1gを添加して、乳化重合シード粒子の合成を開始した。
20分間、70±2℃でシード粒子の調製を行った後、同温度でIPBC/プロピコナゾールモノマー混合液のエマルション(撹拌を継続してエマルション状態を維持したもの)、および、過硫酸ナトリウム(SPS)(2%)水溶液20gを4時間でフィードを行い、乳化重合を行った。エマルションフィード終了後、80℃に昇温した。過硫酸ナトリウム(SPS)(5%)水溶液2gを1時間にわたってフィードし、昇温時間を含め、80±2℃で熟成反応を行った。
反応はエマルションフィードが約30%進行した頃より、凝集が顕著となり、エマルションフィード終了時には、かゆ状(ミルクにいれて加熱したオートミールのように凝集物が液状となり不均一な高粘度物)の反応物を生成した。顕微鏡観察すると、プロピコナゾールとIPBCがポリマー粒子とは別の不定形分散体を形成していた。
比較例4〜7
表6に準拠して、各成分の配合処方および条件を変更した以外は、実施例1と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
参考例1
表5に準拠して、各成分の配合処方および条件を変更した以外は、実施例1と同様に処理して、IPBCを含有する徐放性粒子の乳濁液を得た。
参考例2
表5に準拠して、各成分の配合処方および条件を変更した以外は、実施例1と同様に処理して、プロピコナゾールを含有する徐放性粒子の乳濁液を得た。
比較例8
参考例1の乳濁液90gおよび参考例2の乳濁液105gを混合し、IPBC9gおよびプロピコナゾール21gを含む乳濁液を得た。
比較例9
後述するが、木材の防腐防かび剤を使用しない条件で<防腐試験>を行ったものを比較例9とした。
比較例10
(IPBCのフロアブル剤の製剤化)
IPBC(プリベントールMP−100、バイエル社製)30g、ショ糖脂肪酸エステル(DKエステルF−160、第一工業製薬社製)1.5g、メチルセルロース(メトローズ90SH−100、粘度100mPa・s(20℃、2重量%水溶液)、信越化学工業社製)2g、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.6g、鉱油・疎水性シリカ混合物0.2gを水65.7gに加えて攪拌して混合した後、さらにビーズミル(ダイノーミル、Typ KDL A、ガラスビーズ径0.5mm)で湿式粉砕することにより、IPBC30%のフロアブル剤を製剤化した。
(木部処理剤の調製)
上記で製剤化したIPBC30%のフロアブル剤200g、プロピコナゾール140g、ノニオン性界面活性剤140g、懸濁助剤(アクリル・シリコーン系樹脂、モビニールLDM7159、ニチゴーモビニール社製)99g、アニオン性界面活性剤(ジアルキルスルホコハク酸金属塩、サンヒビターOMA−10、三洋化成工業社製)20g、脱イオン水270g、鉱油・疎水性シリカ混合物5gを順次投入し、さらにホモデイスパーで数分間攪拌した。これにより、プロピコナゾールを乳剤として製剤化するとともに、IPBCのフロアブル剤およびプロピコナゾールの乳剤を含有する木部処理剤を製剤化した。
(配合処方)
実施例1〜21、比較例1〜7および参考例1、2における配合処方を表1〜表6に記載する。
また、実施例1〜21、比較例1、比較例2、参考例1、参考例2、比較例6、比較例7の乳濁液について、徐放性粒子中における抗生物活性化合物(IPBCおよびプロピコナゾール)の含有割合、乳濁液(あるいは懸濁液)中における徐放性粒子の含有割合、および、乳濁液(あるいは懸濁液)中における抗生物活性化合物の含有割合を、質量基準として、表1〜表6に記載する。
なお、表中、「%」は、特に断りがない限り、「質量%」を示す。
(100目濾布残存量(重合安定性))
各実施例および各比較例の乳濁液を100目の濾布で濾過し、濾布上の残存物を風乾した量(質量%)を、徐放性粒子を基準にして算出した。
その結果を表1〜表6に示す。
(徐放性粒子の粒子径の測定)
各実施例および各比較例の乳濁液を100目の濾布で濾過した濾液について、粒径アナライザー(FPAR−1000、大塚電子株式会社)を用いる動的光散乱法により、体積基準のメジアン径として、徐放性粒子の粒子径を測定した。
その結果を表1〜表6に示す。
(1μm以上の徐放性粒子の含有量)
上記「徐放性粒子の粒子径の測定」を実施すると同時に、得られる「散乱強度分布、頻度分布表」より、粒子径が1μm未満の累計頻度をX%とし、(100−X)%を1μm以上の徐放性粒子の含有量とした。
その結果を表1〜表6に示す。
(貯蔵安定性)
下記の測定方法により、貯蔵安定性を評価した。
密栓付ガラスビンに所定の乳濁液を量りこみ、40℃の恒温室に静置した。静置開始1日後、4日後、14日経過後に100目濾布で濾過を行い、濾布上の残存物を風乾した量(質量%)を、徐放性粒子を基準にして、算出するとともに、光学顕微鏡により濾布上の残存物を観察した。
その結果を表1〜表5に示す。
[木部処理剤の評価]
<防腐試験>
実施例1〜21、比較例1および比較例8の乳濁液に水を添加し、プロピコナゾールの含有割合が0.6質量%となる希釈液を調製し、これを木部処理剤として調製した。これらの木部処理剤を用いて、社団法人日本木材保存協会が定める「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法および性能基準(JWPS−FW−S.1)」に準拠して、防腐試験を実施した。防腐試験において試験に供する腐朽菌を、オオウズラタケ、カワラタケとし、試験3か月後の木材の質量減少率(%)を測定した。また、防腐試験をコントロールとして、木材の防腐防かび剤を使用しない条件で防腐試験を行ったものを比較例9とした。実施例1〜21、比較例1、比較例8および比較例9の結果を表7および表8に示す。なお、質量減少率3%以下が、木部処理剤合格の規定値とされている。なお、実施例12〜21、比較例1および比較例8に関しては、有効成分の溶脱性能を確認するため、試験6か月まで延長し試験実施した。実施例1〜21、比較例1、比較例8および比較例9の結果を表8に示す。
<防かび試験>
実施例1〜21、比較例1および比較例8の乳濁液に水を添加し、IPBCの含有割合が0.2質量%となる希釈液を調製し、これを木部処理剤として調製した。社団法人日本木材保存協会規格第2号に準拠して、防かび試験を実施した。また、木部処理剤を使用しない防かび試験(コントロール)についても、比較例9として実施した。この防かび試験では、試験対象としてのかびを、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)およびペニシリウム フニクロサム(Penicillium funiculosum)とした。防かび試験の評価は、下記のとおりとした。実施例1〜21、比較例1、比較例8および比較例9の結果を表7および表8に示す。
0 試験体(木材)にかびの発育が全く認められない。
1 試験体の側面のみにかびの発育が認められる。
2 試験体の上面の面積の1/3未満にかびの発育が認められる。
3 試験体の上面の面積の1/3以上にかびの発育が認められる。
<殺虫試験>
実施例9、19および20の乳濁液に水を添加し、殺虫剤の含有割合が0.3質量%となる希釈液を調製し、3L/m2の割合でシャーレ内に敷き詰めたケイ砂に対して散布した。シャーレの中にイエシロアリ職蟻10頭を投入して、その挙動を経時的に観察し、健全なシロアリの頭数を測定した。なお、コントロールとして、薬液で処理しないケイ砂についても同様の試験を行った。実施例9、19および20の結果を表9に示す。
<機械循環試験>
実施例9、12〜20、比較例8および比較例10の乳濁液に、表10に記載の倍率の通りに水を添加し、希釈液を調製して、木部処理剤を調製した。希釈液2Lに対し動噴ポンプ(ポータブル動噴:丸山製作所製)を用いて3時間通水作業を実施した。機械循環試験の評価は下記の通りとした。実施例9、12〜20、比較例8および比較例10の結果を表10に示す。
0 通水作業後の希釈液に凝集物が全く認められない。
1 通水作業後の希釈液の一部にのみ凝集物が認められる。
2 通水作業後の希釈液の半面に凝集物が認められる。
3 通水作業後の希釈液の全面に凝集物が認められる。
(TEM(透過型電子顕微鏡、Transmission Electron Microscope)観察)
実施例8の乳濁液を自然乾燥し、ビスフェノール型液状エポキシ樹脂に分散して、アミンで硬化させた。これをウルトラミクロトームで切断することにより断面を出し、四酸化ルテニウムで染色し、これをウルトラミクロトームで超薄切片に切り出して、サンプルを調製した。調製したサンプルを、透過型電子顕微鏡(型番「H−7100」、日立製作所社製)で、TEM観察した。
実施例8のTEM写真の画像処理図を、図1および図2に示す。