本発明の防藻性粒子、その製造方法および防藻性塗料の一実施形態を順に説明する。
この防藻性粒子は、防藻成分と、ポリマーとを含有する。
防藻成分は、ポリマーに分散している。詳しくは、防藻成分は、ポリマーからなるマトリクスに孤立状に分散するドメインを形成する。つまり、この場合には、マトリクスとドメインとは、互いに非相溶であって、かかるマトリクスとドメインとからなる粒子が、マルチドメイン構造あるいは海島構造(または多核構造)を有する。
あるいは、防藻成分は、ポリマーに相溶して均一相を形成してもよい。
防藻成分は、シブトリンおよびテルブトリンからなる群から選択される少なくとも1種のトリアジン系化合物である。
シブトリンは、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンの別称である。シブトリンのHansenで定義される溶解度パラメータδの水素結合力項δhが、8.77[(J/cm3)1/2]である。
テルブトリンは、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−エチルアミノ−s−トリアジンの別称である。テルブトリンのHansenで定義される溶解度パラメータδの水素結合力項δhが、7.1[(J/cm3)1/2]である。
なお、溶解度パラメータδの詳細および定義は、例えば、特開2011−079816号公報などに詳説されている。
トリアジン系化合物は、上記公報に記載されるような疎水性を示す範囲、つまり、低極性を示す範囲、具体的には、水素結合力項δhが5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]の範囲内にある。
しかし、このトリアジン系化合物は、驚くべきことに、高い極性を有する(親水性を有する)アニオン性基含有ビニルモノマー(例えば、溶解度パラメータδの水素結合力項δhが13.03[(J/cm3)1/2]であるメタクリル酸など)に対する相溶性(溶解性)を有する。
なお、トリアジン系化合物は、後述するアニオン性基不含ビニルモノマー(メタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレートなど)については、不溶性を有する。
防藻成分は、シブトリンの単独使用、テルブトリンの単独使用が挙げられ、あるいは、シブトリンおよびテルブトリンの併用が挙げられる。好ましくは、シブトリンの単独使用が挙げられる。
防藻成分は、ハイドロホーブ(後述)と同様の作用を奏することから、防藻性およびミニエマルションの安定性の両方を確保する成分である。
防藻成分の防藻性粒子における含有割合は、例えば、12質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
防藻成分の防藻性粒子における含有割合が上記した下限以上であれば、防藻性粒子が十分な防藻性を発現することができる。
一方、防藻成分の防藻性粒子における含有割合が上記した上限以下であれば、後述する防藻性粒子の製造において、防藻成分がポリマーからなる粒子の外に漏出(析出)することを抑制することができる。
ポリマーは、防藻成分を分散しており、例えば、マトリクスを構成する。ポリマーは、ビニルモノマー成分を重合してなる。ビニルモノマー成分は、アニオン性基ビニルモノマーを含有する。
アニオン性基含有ビニルモノマーは、アニオン性基を分子中に含有する。アニオン性基含有ビニルモノマーは、トリアジン系化合物に対する溶解性(相溶性)を向上させるためにビニルモノマー成分に配合される。
アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。アニオン性基含有ビニルモノマー1分子中に含有されるアニオン性基の数としては、例えば、1、2、3以上などが挙げられ、好ましくは、1である。
具体的には、アニオン性基含有ビニルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有ビニルモノマー、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(具体的には、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなど)、スルホン酸基含有ビニルモノマー、リン酸基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(具体的には、メタクリル酸および/またはアクリル酸)、クロトン酸、ケイ皮酸などの、カルボキシル基を分子中に1つ有するモノカルボン酸、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの、カルボキシル基を分子中に2つ有するジカルボン酸、例えば、無水フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのジカルボン酸無水物などが挙げられる。また、モノカルボン酸として、例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸などのジカルボン酸モノエステルなども挙げられる。カルボキシル基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、モノカルボン酸、より好ましくは、(メタ)アクリル酸、さらに好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
アニオン性基含有ビニルモノマーのビニルモノマー成分における含有割合は、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、より好ましくは、3質量%以上、さらに好ましくは、5質量%以上、とりわけ好ましくは、10質量%以上、最も好ましくは、12質量%以上であり、また、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、30質量%以下、さらに好ましくは、25質量%以下、とりわけ好ましくは、20質量%以下、最も好ましくは、15質量%以下である。
アニオン性基含有ビニルモノマーの含有割合が上記した下限を下回ると、ビニルモノマー成分全体の防藻成分に対する溶解性を十分に向上させることができず、そのため、防藻成分の防藻性粒子における含有割合が低下し、防藻性粒子の防藻性が過度に低くなる。つまり、防藻性粒子は、十分な防藻性を有しない。
一方、アニオン性基含有ビニルモノマーの含有割合が上記した上限を上回ると、後述する防藻性粒子の製造において、ポリマーを安定して調製することができない。
アニオン性基含有ビニルモノマーは、親水性(水溶性)を有することが許容される。しかし、アニオン性基含有ビニルモノマーとともに配合されるアニオン性基不含ビニルモノマー(後述)が疎水性を有し、かつ、アニオン性基不含ビニルモノマーが所定の割合で配合されるため、ビニルモノマー成分は、疎水性溶液を形成でき、かつ、疎水性溶液におけるビニルモノマー成分を安定して重合できる程度の疎水性を有する。
ビニルモノマー成分は、アニオン性基含有ビニルモノマー以外に、例えば、アニオン性基を含有しないアニオン性基不含ビニルモノマーを含有することができる。好ましくは、ビニルモノマー成分は、アニオン性基含有ビニルモノマーとアニオン性基不含ビニルモノマーとを含み、さらに好ましくは、アニオン性基含有ビニルモノマーとアニオン性基不含ビニルモノマーとのみからなる。
アニオン性基不含ビニルモノマーは、アニオン性基含有ビニルモノマーとともに、ビニルモノマー成分を構成して、ポリマーを形成する成分(モノマー成分)である。また、アニオン性基不含ビニルモノマーは、疎水性を有する。
アニオン性基不含ビニルモノマーとしては、例えば、アニオン性基を分子内に含有しない一方、重合性の炭素−炭素二重結合を分子内に1つ含有するアニオン性基不含第1モノマー、例えば、アニオン性基を分子内に含有しない一方、重合性の炭素−炭素二重結合を分子内に2つ以上含有するアニオン性基不含第2モノマーなどが挙げられる。
これらは、単独使用または併用することができる。好ましくは、アニオン性基不含第1モノマーとアニオン性基不含第2モノマーとの併用が挙げられる。
アニオン性基不含第1モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、芳香族ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、メタクリル酸エステルおよび/アクリル酸エステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸iso−ノニル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル(ラウリル)、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル(ステアリル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのアルキル部分が直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜20のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸エステル系モノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
アニオン性基不含第1モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
アニオン性基不含第1モノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、より好ましくは、メタクリル酸メチルが挙げられる。
アニオン性基不含第2モノマーは、アニオン性基不含第1モノマーと共重合可能な架橋性モノマーである。架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、アリル(メタ)メタクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレートなどのアリル系モノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル系モノマーなどが挙げられる。
アニオン性基不含第2モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
アニオン性基不含第2モノマーとして、好ましくは、モノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、より好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
アニオン性基不含ビニルモノマーのビニルモノマー成分における含有割合は、例えば、アニオン性基含有ビニルモノマーの含有割合の残部であり、具体的には、例えば、99質量%以下、好ましくは、98質量%以下、より好ましくは、97質量%以下、さらに好ましくは、95質量%以下、とりわけ好ましくは、90質量%以下、最も好ましくは、88質量%以下であり、また、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上、さらに好ましくは、75質量%以上、とりわけ好ましくは、80質量%以上、最も好ましくは、85質量%以上である。
アニオン性基不含ビニルモノマーの含有割合が上記した下限以上であれば、後述する防藻性粒子の製造において、ポリマーを安定して調製することができる。
一方、アニオン性基不含ビニルモノマーの含有割合が上記した上限以下であれば、ビニルモノマー成分全体の防藻成分に対する溶解性を十分に向上させることができ、そのため、防藻成分の防藻性粒子における含有割合が低下を抑制し、防藻性粒子は、防藻性を確保できる。つまり、防藻性粒子は、十分な防藻性を有する。
アニオン性基不含第1モノマーおよびアニオン性基不含第2モノマーが併用される場合には、アニオン性基不含第1モノマーのアニオン性基不含モノマーにおける含有割合が、例えば、75質量%以上、好ましくは、90質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、93質量%以下である。アニオン性基不含第2モノマーのアニオン性基不含第1モノマー100質量部に対する配合部数は、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、7質量部以上であり、また、例えば、25質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
アニオン性基不含モノマーの20℃の水に対する溶解度は、例えば、5容量部/水100容量部(80g/L)以下、好ましくは、3容量部/水100容量部(50g/L)以下、さらに好ましくは、1.5容量部/水100容量部(30g/L)以下である。
また、ビニルモノマー成分は、実質的に疎水性(全体で疎水性)である。詳しくは、具体的には、アニオン性基含有ビニルモノマーが親水性(水溶性)であっても、アニオン性基含有ビニルモノマーと併用されるアニオン性基不含ビニルモノマーが疎水性(具体的には、上記した水に対する溶解度)を有し、かつ、上記した割合で配合されるので、ビニルモノマー成分は、全体として、疎水性を有する。
次に、防藻性粒子の製造方法を説明する。
この防藻性粒子の製造方法は、ビニルモノマー成分および防藻成分を含有する疎水性溶液を水分散させる工程、および、ビニルモノマー成分を重合して、ポリマーを調製する工程を備える。
具体的には、例えば、まず、防藻成分およびビニルモノマー成分を含有する疎水性溶液を調製し、続いて、疎水性溶液を水分散させて、その後、ビニルモノマー成分を重合させる。
好ましくは、溶剤の不存在下において、防藻成分をビニルモノマー成分で溶解することにより、疎水性溶液を調製し、別途、水と乳化剤とを配合して水溶液を調製し、疎水性溶液を水溶液中に乳化し、ビニルモノマー成分を、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合してポリマーを生成する。
乳化剤は、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤が挙げられる。
また、乳化剤として、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなど)ポリオキシアルキレンアリールエーテルなどのノニオン系乳化剤も挙げられる。
乳化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
乳化剤として、好ましくは、アニオン系乳化剤、より好ましくは、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、油溶性重合開始剤が挙げられる。
油溶性重合開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシドなどの油溶性有機過酸化物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの油溶性アゾ化合物などが挙げられる。重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。油溶性重合開始剤として、好ましくは、油溶性有機過酸化物、より好ましくは、ジラウロイルパーオキシドが挙げられる。
そして、この方法では、まず、防藻成分をビニルモノマー成分で溶解することにより、疎水性溶液を調製する。すなわち、防藻成分およびビニルモノマー成分を配合して、それらを均一に攪拌することにより、疎水性溶液を得る。
疎水性溶液は、例えば、有機溶剤(ヘキサン、トルエン、酢酸エチルなどの疎水性の有機溶剤)を配合することなく、調製される。これにより、環境負荷を低減することができる。さらに、この方法では、ミニエマルション重合に必要とされる専用のハイドロホーブ(例えば、ヘキサデカンなどの、炭素数12以上、24以下の直鎖状アルカン、例えば、セチルアルコールなどの、炭素数12以上、24以下の直鎖状高級アルコールなどの、コスタビライザー)を配合することなく、疎水性溶液を調製することもできる。
疎水性溶液の調製において、ビニルモノマー成分がアニオン性基含有ビニルモノマーを1質量%以上含有するので、防藻成分をビニルモノマー成分に確実に溶解できる。
防藻成分のビニルモノマー成分100質量部に対する配合部数は、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、また、例えば、75質量部以下、好ましくは、50質量部以下である。
防藻成分の、アニオン性基含有ビニルモノマーのアニオン性基1モルに対するモル比は、例えば、0.40以上、好ましくは、0.70以上であり、また、例えば、5.0以下、好ましくは、3.0以下、より好ましくは、1.5以下、さらに好ましくは、1.0以下である。また、防藻成分のアニオン性基含有ビニルモノマー100質量部に対する配合部数は、例えば、100質量部以上、好ましくは、200質量部以上であり、また、例えば、1500質量部以下、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下である。
防藻成分の上記したモル比および/または配合部数が上記した下限以上であれば、防藻性粒子が防藻性を十分に発現することができる。防藻成分の上記したモル比および/または配合部数上記した上限以下であれば、防藻性粒子が防藻成分を、外部に析出させることなく、安定して包含することができる。
また、疎水性溶液の調製において、重合開始剤として油溶性重合開始剤が用いられる場合には、防藻成分およびビニルモノマー成分とともに、油溶性重合開始剤を配合する。
油溶性重合開始剤のビニルモノマー成分100質量部に対する配合部数は、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.3質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下、より好ましくは、1質量部以下である。
また、この方法では、別途、水と乳化剤とを配合して乳化剤を含有する水溶液を調製する。具体的には、水と乳化剤とを配合して、それらを均一に攪拌することにより、乳化剤を含有する水溶液を得る。乳化剤の疎水性溶液100質量部に対する配合部数は、乳化剤の有効成分量として、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
水溶液は、さらに、分散剤を含有することもできる。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記する。)、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物の塩、ポリカルボン酸型オリゴマーなどが挙げられ、好ましくは、PVA、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物の塩が挙げられる。
PVAは、ミニエマルションの保護コロイドを形成するために、水溶液に配合される分散剤であり、例えば、酢酸ビニルを主成分とするビニルモノマーを適宜の方法で重合して得られるポリ酢酸ビニル系重合体をけん化させることにより、得ることができる。
PVAの疎水性溶液100質量部に対する配合部数は、PVAの有効成分量として、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下である。
芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物の塩としては、例えば、βナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩などが挙げられる。
芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物の塩の疎水性溶液100質量部に対する配合部数は、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、また、例えば、0.5質量部以下、好ましくは、0.3質量部以下、より好ましくは、0.25質量部以下である。
これら分散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
この方法では、次いで、疎水性溶液を水溶液中に乳化する。具体的には、疎水性溶液を、乳化剤を含有する水溶液に配合し、それらに高い剪断力を与えることにより、疎水性溶液を水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製する。
疎水性溶液の乳化では、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入乳化機などの乳化機が用いられ、好ましくは、ホモミキサーが用いられる。
攪拌条件は、ホモミキサーを用いる場合には、その回転数を、例えば、6,000rpm以上、好ましくは、8,000rpm以上、さらに好ましくは、10,000rpm以上に、例えば、30,000rpm以下に設定する。回転数が上記下限以上であれば、平均粒子径1μm未満のミニエマルション粒子を形成できる。
攪拌時間は、例えば、1分間以上、好ましくは、2分間以上であり、また、1時間以下である。
疎水性溶液の水溶液100質量部に対する配合部数は、例えば、10質量部以上、好ましくは、25質量部以上であり、また、例えば、150質量部以下、好ましくは、90質量部以下である。
上記の方法により、疎水性溶液のミニエマルションを調製する。なお、疎水性溶液のミニエマルションでは、水媒体中に、平均粒子径1μm未満の疎水性溶液のミニエマルション粒子が形成される。
ミニエマルション粒子の平均粒子径は、特に限定されず、例えば、後述する防藻性粒子の平均粒子径に対応して調整される。なお、ミニエマルション粒子の平均粒子径は、例えば、メジアン径として算出され、例えば、1μm未満、好ましくは、800nm以下、より好ましくは、700nm以下、さらに好ましくは、600nm以下であり、また、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上、より好ましくは、400nm以上である。
ミニエマルションの調製において、ビニルモノマー成分がアニオン性基含有ビニルモノマーを50質量%以下含有するので、ミニエマルションの安定性が良好である。
その後、乳化された疎水性溶液のビニルモノマー成分を、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して、ポリマーを生成する。
このミニエマルション重合は、原料となるビニルモノマー成分がすべてミニエマルション粒子(疎水性液相)のみにあることから、インサイチュ(in situ)重合である。
すなわち、ミニエマルション重合は、ミニエマルションを攪拌しながら加熱することにより、ビニルモノマー成分がそのまま、ミニエマルション粒子中で重合を開始し、ポリマーが生成される。
攪拌は、例えば、攪拌羽根を有する攪拌機によって実施でき、攪拌羽根の先端の周速を、例えば、10m/分以上、好ましくは、20m/分以上であり、また、400m/分以下、好ましくは200m/分以下に調整する。
加熱条件は、重合開始剤の種類によって適宜選択され、加熱温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、また、例えば、100℃以下であり、加熱時間が、例えば、2時間以上、好ましくは、3時間以上であり、また、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。さらに、所定温度に加熱後、その温度を所定時間維持し、その後、加熱および温度維持を繰り返すことにより、段階的に加熱することもできる。
なお、ミニエマルション重合は、上記したように、重合プロセスがインサイチュ重合である点で、重合プロセスが、インサイチュ重合でなく、ビニルモノマー成分が物質移動して重合する乳化重合と相違する。
なお、ミニエマルション重合および乳化重合の重合プロセスの相違については、例えば、特開2013−136534号公報などに詳細に記載されている。
ポリマーの形成(ミニエマルション重合)において、ビニルモノマー成分がアニオン性基含有ビニルモノマーを1質量%以上含有するので、ポリマーに分散する防藻成分を、外側に漏出することなく、確実に包含する防藻性粒子を製造することができる。
また、ビニルモノマー成分がアニオン性基含有ビニルモノマーを50質量%以下含有するので、ミニエマルションの安定性が良好であり、さらには、凝集(物)の発生を抑制して、ミニエマルション重合を安定して実施することができる。
その後、重合後の乳濁液を、例えば、放冷などによって冷却する。
このようにして得られる防藻性粒子の平均粒子径は、例えば、メジアン径として算出され、1μm未満、好ましくは、800nm以下、より好ましくは、600nm以下であり、また、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上、より好ましくは、400nm以上である。
これにより、防藻成分がポリマーに分散する防藻性粒子が水に乳濁された乳濁液を得ることができる。つまり、防藻性粒子は、上記した平均粒子径を有する粒子からなる。
乳濁液における防藻成分の含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。また、乳濁液における防藻性粒子の含有割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
また、このようにして得られた防藻性粒子は、そのままの状態(乳濁液)、つまり、乳濁剤として用いてもよく、また、スプレードライ、または、凍結・融解や、塩析などにより凝集させた後、遠心分離・洗浄・乾燥などによって固液分離を行い、例えば、粉剤または粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いてもよい。
あるいは、遠心分離、フィルタープレスなどで固液分離し、必要に応じ、洗浄後、例えば、流動乾燥、棚乾燥などにより、乾燥し、必要に応じ、アトマイザー、フェザーミルなどで解砕、振動篩などで分級して、防藻性粒子を粉剤または粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いることもできる。
また、防藻性粒子を粒剤に製剤化するには、例えば、固体担体に防藻性粒子の乳濁液を配合して混合し、その後、それらを乾燥させる(粒剤化)。
固体担体としては、例えば、軽石、ベントナイト、クレー、カオリン、タルク、酸性白土、ゼオライト、バーミキュライト、パーライト、炭酸カルシウム、珪砂などが挙げられる。固体担体として、好ましくは、軽石が挙げられる。固体担体は、市販品を用いることができ、具体的には、カガライトシリーズ(天然軽石の細粒、カガライト工業社製)などが用いられる。固体担体の平均粒子径は、例えば、100μm以上、好ましくは、300μm以上であり、また、例えば、5.00mm以下、好ましくは、2.00mm以下である。
防藻性粒子の乳濁液の配合割合は、得られる粒剤(固体担体および防藻性粒子)における防藻成分の濃度が、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.05質量%以上、例えば、2質量%以下、好ましくは、1質量%以下となるように、調整される。具体的には、防藻性粒子の乳濁液(水を含む)の配合割合は、固体担体100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上、さらに好ましくは、0.2質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
このような防藻性粒子は、各種の工業製品に適用することができ、例えば、塗料、ゴム、繊維、樹脂(プラスチックを含む)、接着剤、目地剤、シーリング剤、建材、コーキング剤、木材処理剤、土壌処理剤、製紙工程における白水、顔料、印刷版用処理液、冷却用水、インキ、切削油、化粧用品、不織布、紡糸油、皮革などに、添加することができる。なお、これらの工業製品に対する防藻性粒子中の防藻成分の添加量は、例えば、10mg/kg〜100g/kg(製品質量)である。
次に、防藻性粒子から製剤化された粉剤を熱可塑性樹脂と配合する態様について説明する。
この方法では、まず、防藻性粒子の乳濁液を乾燥させて、粉剤に製剤化する。
次いで、粉剤および熱可塑性樹脂を溶融混練して、混練物を調製する。
混練物を調製するには、例えば、具体的には、押出機、バンバリーミキサーが用いられる。押出機としては、例えば、二軸押出機、単軸押出機が用いられる。混練物は、成形品を成形するための成形材料であって、具体的には、一旦、冷却してペレット状成形材料(混練物ペレット、あるいは、バッチ)として調製する。一方、混練物を、固体の成形材料として取り出さず、そのまま連続して溶融状態のまま(溶融混練物)後述の成形に供することも可能である。
粉剤の防藻成分の含有割合が、熱可塑性樹脂に対して、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上となり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、3質量%以下となるように、粉剤を熱可塑性樹脂に配合する。ただし、マスターバッチとして、混練物を調製する場合は、この限りではなく、具体的には、防藻成分の含有割合が、熱可塑性樹脂に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上となり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下となるように、粉剤を熱可塑性樹脂に配合してマスタ−バッチとする。
熱可塑性樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、あるいは、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂(ABS樹脂)などの、スチレン系、および/またはアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂、6−ナイロンなどのポリアミド系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂などのハロゲン化ビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、熱可塑性ポリウレタンなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独使用または併用することができる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、より好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、さらに好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。
続いて、混練物ペレット、あるいは、溶融混練物から成形品に成形する。
成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、引抜成形、圧縮成形などが採用される。
これによって、所定形状に成形された、粉剤(防藻性粒子)が添加された成形品(防藻性成形品)が得られる。
上記説明では、防藻性粒子から製剤化された粉剤を、熱可塑性樹脂に添加しているが、樹脂であれば特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂に添加することもできる。
特に、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの液状樹脂に粉剤を好適に混合することができる。
このような成形品は、各種用途に用いられ、例えば、建材、例えば、電線ケーブル材、および、その電線ケーブルの被覆材、例えば、ガスなどの導管、および、その導管の被覆材、例えば、衣類、蚊帳などの繊維製品として使用される。
また、防藻性粒子を1mm〜20mmの径のビーズ状とし、流体(気体、液体)の流通経路に敷設・常備・固定することで通過流体に防藻効果を定常的に付与することができる。
次に、防藻性粒子を含有する防藻性塗料について説明する。
防藻性塗料は、防藻性粒子と、塗膜形成成分とを含有する。
防藻性粒子の防藻性塗料における含有割合は、例えば、10質量%以下、好ましくは、8質量%以下、より好ましくは、5質量%以下、さらに好ましくは、3質量%以下、とりわけ好ましくは、1質量%以下であり、また、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上である。また、防藻性粒子の塗膜形成成分(固形分)100質量部に対する配合部数は、例えば、33質量部以下、好ましくは、25質量部以下、より好ましくは、17質量部以下であり、また、例えば、0.2質量部以上、好ましくは、1質量部以上である。
防藻性粒子の含有割合および/または配合部数が上記した上限以下であれば、塗膜形成成分の防藻性塗料における含有割合を高めることができ、そのため、塗膜物性に優れる。一方で、防藻性粒子の防藻性塗料における含有割合および/または配合部数が、上記した下限と、下限よりわずかに高い値との間の領域であっても、防藻成分の防藻性粒子における含有割合が上記したように、比較的高い(例えば、12質量%以上)ので、防藻成分の含有割合および/または配合部数を、塗膜が防藻性を十分に発現できる範囲に高く設定することができる。具体的には、防藻成分の防藻性塗料における含有割合は、例えば、0.001質量%以上、好ましくは、0.01質量%以上、より好ましくは、0.025質量%以上であり、また、例えば、1質量%以下である。
塗膜形成成分は、防藻性塗料が塗膜を形成する際に、塗膜物性を発現できる成分であって、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキッド系樹脂、フッ素系樹脂などの樹脂のエマルションまたは水性樹脂などのビヒクルが挙げられる。
防藻性粒子の、塗膜形成成分(固形分)100質量部に対する配合部数は、例えば、33質量部以下、好ましくは、25質量部以下、より好ましくは、17質量部以下であり、また、例えば、0.2質量部以上、好ましくは、1質量部以上である。
防藻性塗料を得るには、防藻性粒子と、上記した塗膜形成成分とを配合して、均一に混合する。
その後、防藻性塗料を、防藻性を発現する必要がある被塗物に塗布し、乾燥させた後、塗膜を得る。
そして、この防藻性粒子では、ポリマーが、アニオン性基含有ビニルモノマーを1質量%以上50質量%以下含有するビニルモノマー成分を重合してなる。しかし、上記したように、トリアジン系化合物は、極性が低いにも拘わらず、高い極性を有するアニオン性基含有ビニルモノマーとの良好な相溶性(溶解性)を示す。従って、防藻性粒子は、防藻成分を高い含有割合で含有することができる。
また、防藻性粒子の製造方法によれば、ビニルモノマー成分を含有する疎水性溶液を、安定して水分散させることができる。そのため、疎水性溶液におけるビニルモノマー成分を安定して重合することができる。その結果、防藻成分を高い含有割合で分散するポリマーを含む防藻性粒子を安定して製造することができる。
さらに、防藻性塗料は、上記した防藻性粒子と、塗膜形成成分とを含有するので、防藻成分および塗膜形成成分の両方をバランスよく含有することができる。従って、この防藻性塗料は、防藻性および塗膜物性の両方に優れる。
<変形例>
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の成分および工程については、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏する。
一実施形態では、ビニルモノマー成分をミニエマルション重合して、平均粒子径が1μm未満の防藻性粒子を製造しているが、例えば、ビニルモノマー成分を懸濁重合して、平均粒子径が1μm以上の防藻性粒子を製造することもできる。
すなわち、この方法では、溶剤の不存在下において、防藻成分をビニルモノマー成分中に溶解させることにより、疎水性溶液を調製し、疎水性液を水分散して水分散液を調製し、ビニルモノマー成分を懸濁重合して、平均粒子径1μm以上のポリマーを生成する。これによって、徐放性粒子からなる防藻性粒子が得られる。
懸濁重合により徐放性粒子を得る方法は、特開2011−79816号公報などに詳細に記載されている。
得られる防藻性粒子の平均粒子径は、例えば、1μm以上で、また、例えば、1000以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、50μm以下、さらに好ましくは、30μm以下である。
そうすると、上記した一実施形態および変形例を総括すると、防藻性粒子の平均粒子径は、例えば、1000μm以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、50μm以下、さらに好ましくは、30μm以下、さらには、1μm未満、さらには、800nm以下、さらには、600nm以下が好適である。また、防藻性粒子の平均粒子径は、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上、より好ましくは、400nm以上である。
防藻性粒子の平均粒子径が上記した上限以下であれば、防藻性粒子を含有する防藻性塗料の取扱性(塗布性など)の低下を抑制することができる。
以下の記載において用いられる配合部数(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合部数(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
また、%などの単位については、特段の記載がない限り、質量%を意味する。
まず、実施例および比較例で用いる略号の詳細を次に記載する。
シブトリン:商品名「イルガガードD1071」、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン(トリアジン系化合物、防藻成分)、Hansenで定義される溶解度パラメータδの水素結合力項δh:8.77[(J/cm3)1/2]、チバスペシャルティ・ケミカルズ社製
テルブトリン:2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−エチルアミノ−s−トリアジン(トリアジン系化合物、防藻成分)、Hansenで定義される溶解度パラメータδの水素結合力項δh:7.1[(J/cm3)1/2]、和光純薬工業社製
メタクリル酸メチル:商品名「アクリエステルM」、水への溶解度:1.6質量%(16g/L)(20℃)、三菱ケミカル社製
エチレングリコールジメタクリレート:商品名「ライトエステルEG」、水への溶解度:0.58g/L(20℃)、共栄社化学社製
メタクリル酸:溶解度パラメータδの水素結合力項δh:13.03[(J/cm3)1/2]、三菱ケミカル社製
パーロイルL:商品名、ジラウロイルパーオキシド、日油社製
ネオコールSW−C:商品名、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系乳化剤)の70質量%イソプロパノール溶液、第一工業製薬社製
プロノン208:商品名、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ノニオン系乳化剤、日油社製
PVA−217:商品名「クラレポバール217」、PVA(分散剤)、クラレ社製
デモールNL:商品名、βナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩(分散剤)の41%水溶液、花王社製
実施例1
ビーカーに、シブトリン25.0g、メタクリル酸10.0g、メタクリル酸メチル60.0g、エチレングリコールジメタクリレート5.0g、パーロイルL0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、ビーカーに、脱イオン水108.47g、PVA−217の10%水溶液40.0g、ネオコールSW−C 0.8g、および、デモールNL 0.2gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
次いで、水溶液に、疎水性溶液を加え、ホモミキサーにより回転数10,000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製した。
その後、ミニエマルションを、6cm径の攪拌羽根を有する攪拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した4口フラスコに移し、窒素気流下、攪拌機により回転数200rpm(攪拌羽根の先端周速:37.7m/分)で攪拌しながら昇温して、ミニエマルション重合を実施した。
ミニエマルション重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で3時間、70±2℃で2時間、連続して実施した。続いて、反応液の温度を80±2℃に昇温し、2時間熟成した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、メタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびエチレングリコールジメタクリレートのポリマーと、ポリマーに分散するシブトリンとを含有する防藻性粒子の乳濁液を得た。防藻性粒子の乳濁液における含有割合は、40質量%であった。
防藻性粒子のメジアン径を、動的光散乱法粒径アナライザー(FPAR−1000、大塚電子株式会社)により測定したところ、525nmであった。
実施例2〜6および比較例1〜4
配合処方および重合方法を表1〜表2に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、防藻性粒子の乳濁液または懸濁液を得た。
なお、懸濁液における防藻性粒子のメジアン径は、レーザー回析散乱式粒子径分布測定装置(LA−920、堀場製作所社製)により測定した。
[評価]
防藻性粒子について、以下の項目を評価した。
<重合安定性>
重合を実施して、防藻性粒子を得ることができたものを「○」と評価し、重合途中に凝集してしまい、防藻性粒子を得ることができなかったものを「×」と評価した。
<シブトリンまたはテルブトリンの析出の観察>
実施例および比較例の乳濁液および懸濁液のそれぞれを試料台に滴下し、その後、水を留去した後、得られた防藻性粒子を、走査型電子顕微鏡日立TM−100(日立ハイテクノロジーズ社製)で、SEM観察して、シブトリンまたはテルブトリンの析出の有無を観察した。
<塗膜物性>
実施例および比較例の乳濁液および懸濁液のそれぞれを、防藻性塗料におけるシブトリンまたはテルブトリン濃度が0.1%となるように、アクリル−スチレン系樹脂のエマルション(商品名「ウルトラゾールC−63」、アイカ工業社製)に配合して、続いて、ホモディスパー2.5型(プライミクス社製)で回転数600〜800rpmで1時間撹拌し、防藻性塗料を調製した。なお、防藻性塗料における防藻性粒子の割合などを、表1〜表2に示す。
その後、防藻性塗料を、塗膜の厚みが250μmとなるように、アプリケーターでアルミニウム板の表面に塗布し、このときの塗膜の物性を、以下の基準で、評価した。
○:塗膜中に白濁が観察されず、粗大粒子も観察されなかった。
△:塗膜中に白濁が観察されず、一方、粗大粒子が観察された。
×:塗膜中に白濁が観察され、粗大粒子も観察された。
<塗膜の防藻性>
実施例1〜6および比較例1、3、4のそれぞれをアクリルスチレンエマルション(商品名ウルトラゾールC−63アイカ工業社製)に、防藻性塗料中のシブトリンまたはテルブトリン濃度(具体的には、シブトリンまたはテルブトリンの防藻性塗料における含有割合)が0.01%となるように、添加して、防藻性塗料を調製した。その後、防藻性塗料を、ホモディスパー2.5型(プライミクス社製)で回転数600〜800rpmで1時間撹拌した。撹拌後、防藻性塗料を、150×150×0.3(mm)のアルミニウム板上にアプリケーターを用いて塗布厚250μmとなるように塗布し、一晩乾燥して、塗膜を調製した。その後、塗膜およびアルミニウム板を大きさ200×500×150(mm)のバット中に配置し、アルミニウム板の上から、水道水1.5L/分を供給することにより、塗膜を水に浸漬した。なお、水道水は、バットから常に溢れ出るようにバットに供給した。そして、塗膜を水に浸漬してから2週間経過後取り出し、塗膜を30×30(mm)に切断し、防藻試験片とした。防藻試験は、それぞれアレン改変培地(pH8.0)に添加した。藻類の種類として、一般建築物によく発生が見られるクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)とオシラトリア・ラエテヴィレンズ(Osillatoria laetevirens)との2種を含有する藻類懸濁液を、防藻試験片に接種して、照度2500Lxで、1日当たり16時間の照射条件下、23℃で30日間培養した。その後、培養後の藻類の発育を観察して、そして、塗膜の防藻性を以下の基準で、評価した。
○:藻類の発育が全く認められなかった。
△:藻類の発育が一部認められ、発育部分の面積は防藻試験片の全面積の1/3以下であった。
×:藻類の発育が認められ、発育部分の面積は防藻試験片の全面積の1/3を超えた。