JP2014119398A - 原子炉用部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】原子炉の運転条件、装置に改良を加えるのではなく、中性子に直接曝されても、スウェリング、クリープ変形などすることなく安定して使用できる原子炉用部材を提供する。
【解決手段】黒鉛の粒子状物質の集合体からなるコア部と、コア部を覆うセラミックの緻密体からなる被覆層とからなる原子力用部材。
中性子照射によって影響を受ける黒鉛は粒子状物質の集合体の状態で用いられ、互いに結合していないのでスウェリング、クリープ変形などが起きても原子炉用部材の形状、寸法に影響を与えることはない。また、本発明の原子炉用部材はコア部を覆うセラミックの緻密体からなる被覆層を有している。緻密体からなる被覆層は、中性子の照射に対して黒鉛よりも耐久性があるので原子炉用部材の形状、寸法に与えにくい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、沸騰水型、加圧水型等の軽水炉、重水炉、高温ガス炉、超高温ガス炉等のガス冷却炉、溶融金属冷却炉、高速増殖炉等の原子炉用部材に関し、特には中性子減速用部材及び遮蔽体に関する。
黒鉛材料は、中性子の吸収が少なく中性子の減速能力も比較的大きいため、原子炉の減速材として広く使用されているほか、遮蔽体としても用いられている。
黒鉛材料の減速材は、黒鉛減速原子炉の他、研究開発が進められている高温ガス炉などで使用されている。さらに、黒鉛材料の遮蔽体は高速炉などの分野で使われている。
しかしながら、黒鉛のバルク体は照射によって収縮し、ターンアラウンド(TA)と呼ばれる極小値を迎えた後、膨張に転じる挙動(以下「スウェリング」)を示す。黒鉛構造物のライフエンドは照射寸法変化のTA照射量を越えないように設計されている。さらに、中性子照射下でクリープ変形(以下「クリープ変形」)が発生し、このクリープ変形が原子炉の運転にともない増加し、黒鉛構造物の機能に支障をきたすことも知られている。
また、黒鉛材料は、メーカー、グレード毎にそのクリープ変形及びスウェリングの挙動は異なっているため、黒鉛材料のグレード毎に中性子線照射を行い、クリープ変形及びスウェリングについてデータ収集されデータベース化し原子力用材料の設計に反映されている。
特許文献1ではクリープ変形の発生を抑えるための原子炉の運転方法が記載されている。具体的には原子炉の運転モードを変えることにより原子炉内の黒鉛構造物の温度を変化させ、これにより引張応力の発生している部分に反対の圧縮応力を、また圧縮応力の発生している部分には反対の引張応力を発生させ、これにより反転したクリープ変形をさせることにより黒鉛構造物に発生している残留応力を減少させ、黒鉛構造物を長寿命化させる方法が記載されている。
特開2001−194481号公報
しかしながら、前記記載された方法は、黒鉛構造物(黒鉛材料)そのもののクリープ変形を抑えるのではなく、運転方法によって黒鉛構造物を長寿命化しようとする方法である。
原子炉の運転方法を制約するので、原子炉の能力を十分に発揮できないばかりでなく、頻繁に原子炉の出力を変えながら運転することは、原子炉の安定性を維持する上では、好ましいことではない。
また、黒鉛材料の材質を改良し、クリープ変形ならびにスウェリングに強い材料を開発することは原子力用黒鉛材料の長寿命化の一つのアプローチ方法ではあるが、実際の原子炉に使用できるようにするためには、新たに黒鉛材料に中性子線照射試験を行い、スウェリング、クリープ変形に関するデータをとらなければならない。中性子線照射を行った黒鉛材料は、黒鉛中に1%強含まれるC−13が中性子により放射化され、半減期5,730年の放射性C−14が含まれるようになるほか、様々な物質が生成するようになるので、これらの材料から放射線の発生が収まるまで待つか、あるいは完全に放射線を遮蔽した環境下で分析を行う配慮が必要となる。このため、黒鉛材料の材質を改良しクリープ変形に強い材料を開発することは、手間と時間がかかることが課題となっている。
本発明では、原子炉の運転条件、装置に改良を加えるのではなく、既存の黒鉛材料を用いながら、中性子に直接曝されても、スウェリング、クリープ変形なく安定して使用できる原子炉用部材を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための本発明の原子力部材は、
(1) 黒鉛の粒子状物質の集合体からなるコア部と、コア部を覆うセラミックの緻密体からなる被覆層とからなる。
さらに以下の態様が好ましい。
(2)前記粒子状物質は、互いに結合していない。
(3)前記粒子状物質は、天然黒鉛または、人造黒鉛からなる。
(4)前記被覆層は、気相蒸着層である。
(5)前記被覆層は、熱分解炭素、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化タンタルから選ばれる1または2以上の被覆層からなる。
(6)前記記載の原子炉用部材を用いた中性子減速用部材及び遮蔽体。
本発明の原子炉用部材は、黒鉛の粒子状物質の集合体からなるコア部と、コア部を覆うセラミックの緻密体からなる被覆層とからなる。中性子照射によって影響を受ける黒鉛は粒子状物質の集合体の状態で用いられているので、粒子状物質が互いに結合しておらず、クリープ現象、膨張、収縮などが起きても原子炉用部材の形状、寸法に影響を与えることはない。また、黒鉛の粒子状物質の集合体は、特にその材質は限定されないので、既に中性子線照射時のスウェシング、クリープ変形のデータを有する汎用の黒鉛材料を使用することができる。このため、新たにこれらのデータを収集する必要はなく、手間と時間をかけることなく原子力用部材として採用することができる。本発明の原子炉用部材はコア部を覆うセラミックの緻密体からなる被覆層を有している。緻密体からなる被覆層は、中性子の照射に対して黒鉛よりも耐久性があるので原子炉用部材の形状、寸法に与える影響が小さい。このため、本発明の原子炉用部材によれば、中性子に直接曝されてもクリープ変形などすることなく安定して使用できる原子炉用部材を提供することができる。
本発明の実施例1の原子力用部材の断面図。 本発明の実施例2の原子力用部材の断面図。
本発明の原子炉用部材は、黒鉛の粒子状物質の集合体からなるコア部と、コア部を覆うセラミックの緻密体からなる被覆層とからなることを特徴とする。
本発明の原子炉用部材の黒鉛とは、どのようなものでもよく特に限定されない。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛などどのようなものでも良い。特に、既に中性子線照射によるスウェリング、クリープ変形のデータベースを有する汎用の黒鉛材料を使用できるので、原子炉用部材として容易に採用することができる。スウェリング、クリープ変形のデータベースを有する汎用の黒鉛材料としては、例えばイビデン(株)製ET−10などがあるが、スウェリング、クリープ変形のデータベースを有していれば、特にメーカー、グレードは限定されない。
本発明のコア部は、黒鉛の粒子状物質の集合体からなる。黒鉛の粒子状物質の集合体からなるので、個々の粒子状物質がクリープあるいは変形しても全体の形状を維持する被覆層に影響を与えることがないので、中性子に直接曝されても、スウェリング、クリープ変形なく安定して使用できる原子炉用部材を提供することができる。
また、中性子減速用部材として使用する場合、黒鉛の粒子状物質の集合体は、高純度の材料を用いることが好ましい。黒鉛の粒子状物質の集合体の望ましい灰分含有量は、20重量ppm以下である。20重量ppmを超えると、不純物が中性子を吸収し、原子炉の出力を上げにくくなる。さらに。黒鉛の粒子状物質の集合体の望ましいホウ素含有量は、1.0重量ppm以下である。ホウ素は中性子を吸収し易いので、1.0重量%を超えてホウ素を含有すると、特に原子炉の出力を上げにくくなる。
なお、本発明の原子力用部材を制御部材(例えば、制御棒、緊急時遮蔽材)として使用する場合には、ホウ素、BC等の粉体あるいは粒体を形態で黒鉛の粒子状物質の集合体に添加しても良い。
本発明において粒子状物質とは、粉体、粒体及びそれらの混合物を含む。黒鉛の粒子状物質の粒子径は特に限定されない。例えば50%体積粒子径が、0.1μm〜1mmの粉体あるいは粒体を利用することができる。また、粒子状物質の集合体は、異なる粒子径分布の粉体あるいは粒体を粒度配合して用いても良い。異なる粒子径分布の粉体あるいは粒体を粒度配合して用いると、粗い粒子の隙間に細かな粒子が挿入され、粒子状物質の集合体全体としてかさ密度を高めることができる。黒鉛の粒子状物質の集合体の望ましい見かけ密度は、1.0〜2.0g・cm‐3である。見かけ密度が1.0g・cm‐3未満であると、空隙が多くなるので中性子を減速する能力が低下する。見かけ密度が2.0g・cm‐3を超えると、気相蒸着により成膜する過程で、CVDガスの浸入により固められた粒子状物質の集合体の表面が膨張するスプリングバック現象が起き、成膜途中の薄い被覆層に力が加わり、皮膜層が割れやすくなるため、目的の形状の原子力用部材が得られにくくなる。
黒鉛の粒子状物質の集合体の50%体積粒子径は、レーザー回折式粒度分布計で測定することができる。なお、粒子径2mmを超える粗い粒子を含有している場合、レーザー回折式粒度分布径の回折強度が十分に得られないので、2mmを超える領域を、補助的に試験用篩を用いて測定することによって全体の50%体積粒子径を得ることができる。
黒鉛の粒子状物質の集合体の見かけ密度とは、黒鉛の粒子状物質の集合体間の空隙を含んだまま測定した密度である。原子炉用部材の形状が複雑な形状であり、見かけ密度の測定が困難な場合は、原子炉用部材の体積、質量を測定した後に、破壊してコア部を除去し再度体積、質量を測定する。コア部の質量はそれぞれの差を算出することによって得ることができる。原子炉用部材全体及びコア部の体積は、水置換法により測定することにより、不定形な形状でも容易に測定することができる。
コア部を覆うセラミックの緻密体からなる被覆層は、どのようなものでも特に限定されない。例えば、焼結体を殻状に形成し、内部空間に黒鉛の粒子状物質の集合体を充填したもの、黒鉛の粒子状物質の集合体をプレス成形し、目的の形状を得た後、表面に硬いセラミック膜を蒸着させるなどの方法がある。セラミック膜の蒸着方法は、化学気相成長(CVD)、物理気相成長(PVD)などの方法が利用できる。中でも化学気相成長は、原料ガスを熱分解することによりセラミックを得ているので、本発明の原子炉用部材の緻密体からなる被覆層を容易に得ることができる。
コア部を覆うセラミックの緻密体からなる被覆層は、コア部全体を覆っていることが好ましい。コア部全体を覆っていると、黒鉛の粒子状物質の集合体が原子力部材の外部に流出しにくいからである。
化学気相成長としては、熱CVD、光CVD、レーザーCVD、プラズマCVDなどの方法が利用できる。黒鉛の粒子状物質の集合体は、プレスすることにより、一定の形状を付与することができる。プレスの方法は、CIP(Cold Isostatic Press)、HIP(Hot Isostatic Press)、一軸プレスなどどのようなものでも利用することができる。
さらに黒鉛の粒子状物質に希薄なバインダを加え、被覆層が形成されるまで形状を維持できるようにしても良い。バインダとしては、有機バインダ、無機バインダなどが利用でき特に限定されないが、有機バインダを用いることが好ましい。有機バインダであれば、加熱することによって炭化するかあるいは熱分解し揮散する。
有機バインダが炭化した場合には、炭素となってコア部に残留し、有機バインダが熱分解し完全に揮散した場合にはコア部には何も残ることなく、使用した黒鉛の粒子状物質の集合体のみでコア部を形成することができる。
また、コア部を黒鉛の粒子状物質に溶媒を加え、湿式で成形しても良い。例えば、黒鉛の粒子状物質にアルコールを加えケーキ状にした後、プレス成形によって目的の形状を付与した後乾燥し、コア部を得ることができる。また、黒鉛の粒子状物質にアルコールを加えたスラリーを、表面が網状の型に流し込み溶媒を除去した後、乾燥しコア部を得ることができる。
黒鉛は、細かく粉砕すると空気を巻き込んでかさ密度を高めにくくなるので、高い圧力をかけてプレスする必要があるが、湿式でコア部を形成した場合、流体の作用で黒鉛の粒子が移動しやすくなり、大きな粒子の隙間に細かな粒子が充填されやすくなる。このためかさ密度を高めやすくなり、高密度のコア部を容易に得ることができる。
本発明の被覆層の材質は、特に限定されない。炭化物系セラミックス、酸化物系セラミックス、窒化物系セラミックス、炭素質材料等が挙げられる。例えば熱分解炭素、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタン等が挙げられる。中でも、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタンは、酸素、水に対し耐食性を有しているので、長期間使用しても原子炉内に存在する水、酸素による消耗を受けにくく好適に利用できる。またこれらの被覆層は、中性子の照射に対して黒鉛よりも耐久性があるので原子炉用部材の形状、寸法に与える影響が小さくすることができる。
被覆層は、単層であっても良いが、複数層で構成されていても良い。複数層で構成する場合は、異なる種類の被覆層であっても同一の種類の被覆層でも良く、炭化物、窒化物などの化合物である場合には、その元素比が異なっていても良い。たとえば、炭化タンタルの場合Ta、TaC、TaCの組み合わせなどが挙げられる。
被覆層の厚さは、特に限定されないが、10μm以上、5mm以下であることが望ましい。被覆層の厚さが、10μm以上であれば、消耗、衝撃等によって被覆層に穴が空きにくく、内部の黒鉛の粒子状物質が外部に流出しにくくすることができる。被覆層の厚さが、5mm以下であると成膜速度の差による厚みのバラツキが生じにくく、寸法精度の高い原子炉用部材を得ることができる。
さらに望ましい被覆層の厚さは、20μm〜3mmである。被覆層の厚さが20μm以上であれば、被覆層が高い機械的強度を有しているので、原子炉内で破損しにくくすることができる。被覆層の厚さが3mm以下であれば、成膜速度の差による厚みのバラツキの影響を小さくすることができる。
被覆層の厚さの測定方法は、原子力用部材を切断し、被覆層の断面を露出させる。断面をSEM(走査電子顕微鏡)、工具顕微鏡などで測定することによって得ることができる。
被覆された黒鉛成型体は超音波装置を用いて内部の黒鉛粉を均等に分散させ、均一性を図ることができる。
原子炉用部材としては、形状、大きさ、用途は特に限定されない。内部に黒鉛を有していることから中性子を減速する能力が大きく、特に中性子減速用部材として有用である。減速材としては、黒鉛炉、高温ガス炉などで好適に利用できる。ほかに、放射線を漏れることを防ぐための遮蔽体にも利用できる。
中性子減速用部材の形状は特に限定されない。例えば、高温ガス炉では直径30〜100mmの球状の中性子減速用部材、黒鉛炉では、一辺20cmの六角形の底面を有する高さ80cmの六角柱形状の中性子減速用部材などが好適に利用できる。なお、中性子減速用部材は、炉の構造、使用条件に合わせ、形状、大きさを適宜変更して利用することができる。
以下に本発明に係る実施例1について説明する。本発明の実施例1の原子力用部材の断面図である。実施例1は、ペレット状のコア部の表面が炭化珪素(SiC)の被覆層で覆われた構造である。
<コア部成形>
50%体積粒子径が3.65μmの黒鉛の粒子状物質である黒鉛粉3.1gをφ25mmの開口を有する金型に充填し、19MPaで加圧した。金型から、黒鉛粉が成形されたコア部を取り出した。φ25×6mmの脆く崩れやすい平板状のコア部が形成された。
黒鉛粉は、イビデン(株)製等方性黒鉛材ET−10を粗粉砕後、ジェットミルによって粉砕することによって得た。
コア部のかさ密度は、1.05g・cm‐3であった。
<被覆材形成工程>
前記工程で得られたコア部を崩れないように注意しながらCVD炉の中に入れ、熱CVD法でSiC層を形成した。具体的には、常圧のCVD炉中に前記工程で得られたコア部を入れ、1200℃に加熱した後、メチルトリクロロシランを原料ガス、水素をキャリアガスとした混合ガスを導入し、5時間気相蒸着を継続した後、混合ガス及び加熱を止め冷却することによりコア部の表面に、SiCの被覆層を形成させた。
形成されたSiC層の厚さは、40μmであった。
得られた原子炉用部材のSiC層を破壊し、内部を確認すると、黒鉛の粒子状物質の集合体は、結合して一体化することなく、粉状あるいは粒状を維持していた。このため、黒鉛の粒子状物質の集合体に中性子が照射され膨張、収縮しても、全体形状は被覆層によって維持され、粉状あるいは粒状のコア部が原子炉用部材を破損させることがなく、中性子に直接曝されても、スウェリング、クリープ変形などすることなく安定して使用できる原子炉用部材を得ることができる。
以下に本発明に係る実施例2について説明する。本発明の実施例2の原子力用部材の断面図である。実施例2は、ペレット状のコア部の表面が熱分解炭素の被覆層で覆われ、さらに炭化珪素(SiC)の被覆層で覆われた構造である。
<コア部成形>
50%体積粒子径が3.65μmの黒鉛の粒子状物質の集合体である黒鉛粉3.1gをφ25mmの開口を有する金型に充填し、19MPaで加圧した。金型から、黒鉛粉が成形されたコア部を取り出した。φ25×6mmの脆く崩れやすい平板状のコア部が形成された。
黒鉛粉は、イビデン(株)製等方性黒鉛材ET−10を粗粉砕後、ジェットミルによって粉砕することによって得た。
コア部のかさ密度は、1.05g・cm‐3であった。
<被覆材形成工程>
本実施例では、実施例1とは異なり、まず熱分解炭素層を形成し、その後SiC層を形成した。
前記工程で得られたコア部を崩れないように注意しながらCVD炉の中に入れ、熱CVD法で熱分解炭素層を形成した。具体的には、CVD炉中に前記工程で得られたコア部を入れ、1500℃に加熱した後、メタンを原材料として導入し、5時間気相蒸着を継続した後、原料ガス及び加熱を止め冷却することによりコア部の表面に、熱分解炭素の被覆層を形成させた。
形成されたSiC層の厚さは、40μmであった。
次に、別のCVD炉に熱分解炭素の被覆されたコア部を入れ、熱CVD法でSiC層を形成した。具体的には、常圧のCVD炉中に前記工程で得られたコア部を入れ、1200℃に加熱した後、メチルトリクロロシランを原料ガス、水素をキャリアガスとした混合ガスを導入し、5時間気相蒸着を継続した後、混合ガス及び加熱を止め冷却することによりコア部の表面に、SiCの被覆層を形成させた。
形成されたSiC層の厚さは、40μmであった。
得られた原子炉用部材の被覆層(熱分解炭素層とSiC層)を破壊し、内部を確認すると、黒鉛の粒子状物質の集合体は、結合して一体化することなく粉状あるいは粒状を維持していた。このため、黒鉛の粒子状物質の集合体に中性子が照射され膨張、収縮しても、全体形状は被覆層によって維持され、粉状あるいは粒状のコア部が原子炉用部材を破損させることがなく、中性子に直接曝されてもクリープ変形などすることなく安定して使用できる原子炉用部材を得ることができる。
本実施例で得られた原子力用部材はペレット状であるが、原子炉の形状、形式によって適宜原子力用部材の形状を変更することができる。また、複雑な形状の場合には、希薄なバインダを黒鉛の粒子状物質の集合体に添加し、気相蒸着が開始されるまで形状を保持することができ、どのような形の原子力用部材にも対応することができる。
1 コア部
2、21、22 被覆層
10 原子力用部材

Claims (6)

  1. 黒鉛の粒子状物質の集合体からなるコア部と、コア部を覆うセラミックの緻密体からなる被覆層と、からなることを特徴とする原子炉用部材。
  2. 前記粒子状物質は、互いに結合していないことを特徴とする請求項1に記載の原子力用部材。
  3. 前記粒子状物質は、天然黒鉛または、人造黒鉛からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の原子力用部材。
  4. 前記被覆層は、気相蒸着層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の原子炉用部材。
  5. 前記被覆層は、熱分解炭素、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタンから選ばれる1または2以上の被覆層からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の原子炉用部材。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の原子炉用部材を用いた中性子減速用部材及び遮蔽体
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