JP2002303692A - 軽水炉用燃料集合体、軽水炉およびその炉心 - Google Patents

軽水炉用燃料集合体、軽水炉およびその炉心

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JP2002303692A
JP2002303692A JP2001105958A JP2001105958A JP2002303692A JP 2002303692 A JP2002303692 A JP 2002303692A JP 2001105958 A JP2001105958 A JP 2001105958A JP 2001105958 A JP2001105958 A JP 2001105958A JP 2002303692 A JP2002303692 A JP 2002303692A
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fuel
core
light water
water reactor
graphite
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JP2001105958A
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English (en)
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Yoshiharu Akiyama
美映 秋山
Tatsuhiro Yoshizu
達弘 吉津
Hiroshi Tochihara
洋 栃原
Tatsuo Kobayashi
達夫 小林
Kunihiro Ito
邦博 伊藤
Koichi Koyama
好一 小山
Yoichiro Shimazu
洋一郎 島津
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ENGINEERING KAIHATSU KK
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Nuclear Development Corp
Original Assignee
ENGINEERING KAIHATSU KK
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Nuclear Development Corp
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Publication date
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin
    • Y02E30/30Nuclear fission reactors

Abstract

(57)【要約】 【課題】軽水炉用燃料集合体の熱容量およびFP閉じ込
め機能を高めること。 【解決手段】ウランまたはプルトニウムのうち少なくと
もいずれかを核分裂性物質として含む略球形状の燃料核
20の外周を、黒鉛を含む複数の層21〜23で被覆し
てなる燃料粒子13と黒鉛粉末とを装填してなる長尺状
の燃料棒2を、複数本規則的に束ねて構成してなる燃料
集合体を装荷する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軽水炉用燃料集合
体、軽水炉およびその炉心に係り、更に詳しくは、黒鉛
で被覆された燃料粒子と黒鉛粉末とを燃料棒に充填して
なる軽水炉用燃料集合体、その軽水炉用燃料集合体を装
荷してなる軽水炉の炉心、同炉心を備えることによって
安全性の向上を図った軽水炉に関する。
【0002】
【従来の技術】軽水炉には、沸騰水型原子炉と、加圧水
型原子炉とがある。沸騰水型原子炉では、炉心の冷却に
用いられた軽水は、自身は加熱され沸騰する。そして、
この沸騰によって得られた蒸気を用いてタービンを回転
させることによって発電している。一方、加圧水型原子
炉においても、炉心の冷却に用いられた軽水は、自身は
加熱されるが、原子炉圧力容器の内部が加圧されており
沸騰しない。そして、この加熱された軽水を熱源として
熱交換器において蒸気を発生し、この発生した蒸気を用
いてタービンを回転させることによって発電している。
【0003】図8は、このような加圧水型原子炉の原子
炉格納容器の内部構成を示す断面図である。
【0004】加圧水型原子炉の原子炉格納容器30に
は、原子炉圧力容器31が備えられている。原子炉圧力
容器31は、その内部が加圧器33によって加圧されて
おり、更に、多数の燃料集合体(図示せず)が装荷され
てなる炉心32が構成されている。炉心32は、燃料集
合体に含まれる核分裂性物質の核分裂によって発生する
熱によって発熱するが、1次ループ34内をポンプ35
によって循環される軽水である1次冷却水によって冷却
される。
【0005】この1次冷却水は炉心32の熱を奪って自
身は加熱されるが、熱交換器36において、2次ループ
37内を循環する軽水である2次冷却水によって冷却さ
れる。一方、2次冷却水は熱交換器36において1次冷
却水から熱を奪って自身は蒸気となり、図示しないター
ビン設備に、タービン回転用の蒸気として利用される。
【0006】CRDM38は、制御棒駆動機構(Contro
l Rod Drive Mechanism)の略であり、炉心32の出力
を調整する場合には、中性子を吸収する物質を含んでな
る制御棒(図示せず)を、原子炉圧力容器31の上部側
から炉心32に挿入したり、逆に、挿入している制御棒
(図示せず)を上部側へ引抜くための機構である。
【0007】燃料集合体に含まれる核分裂性物質は、ウ
ランの酸化物(UO)又はプルトニウムの酸化物(P
uO)を混合して焼結した燃料ペレットを、ジルカロ
イなどの被覆管の中に多数封入して上下を端栓にて密閉
した燃料棒を、複数本正方格子状に束ねてなる。
【0008】このような燃料集合体は、必ずしも充分な
熱容量をもたないため、仮に1次冷却水の喪失事故など
が生じた場合、外部から緊急に炉心32を冷却するため
の緊急冷却用の水の注入がないと原子炉停止後の崩壊熱
を除去することが出来ず、いずれ燃料ペレット、被覆管
の溶融に至ることも想定される。
【0009】そこで、万が一、1次冷却水の喪失事故な
どで炉心32が1次冷却水から露出した場合のための安
全装置として、炉心に水を供給するための蓄圧注入系3
9と、高圧注入系40と、低圧注入系41とが設けられ
ている。高圧注入系40および低圧注入系41にはポン
プ42が設けられている。そして、1次冷却水の喪失事
故等が発生した場合には、蓄圧注入系39、高圧注入系
40と、低圧注入系41から原子炉圧力容器31に水が
供給され、炉心32が水で覆われる。更に、原子炉格納
容器30には、格納容器スプレー系44が設けられてお
り、ポンプ45によって昇圧された水が、スプレー46
から、原子炉格納容器30の内部へと噴霧されることに
よって原子炉格納容器30の内部が冷却される。これら
によって、万が一、1次冷却水の喪失事故などが生じた
場合であっても、原子炉停止後の崩壊熱が除去され、燃
料ペレットおよび被覆管が溶融することがないような対
策が講じられている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の軽水炉用燃料集合体、軽水炉およびその炉心
では、以下のような問題がある。
【0011】すなわち、燃料集合体の燃料ペレット内
に、UOまたはPuOの形態で含まれる核分裂性物
質からは、核分裂反応によって、放射能を有する核分裂
生成物(以下、「FP」と称する。FPとは「Fission
Products」の略である。)が発生する。このようにして
発生したFPは、仮に被覆管に破損がある場合、1次冷
却水中に漏出してくる。したがって、万が一、1次ルー
プ34が破損するなどといった1次冷却水の圧力バウン
ダリの破損が発生すると、FPが原子炉圧力容器31の
外部に漏出し、放射能汚染をもたらす恐れがあるという
問題がある。
【0012】上述したような場合であっても、燃料棒お
よび燃料ペレット自体の熱容量が高く、溶融に至るまで
の熱的な余裕が十分にあること、また、FPの閉じ込め
機能が高く、FPを1次冷却水はもとより、被覆管の外
部にも漏出させることのないような燃料集合体とするの
であれば、それを装荷してなる炉心32、およびこの炉
心32を備えた軽水炉ともにその安全性が大幅に向上さ
れる。また、これによって、PA(Public Acceptanc
e)上も大幅に有利となり、このような軽水炉を都市に
近接した場所に立地することも可能となるなどその効用
は極めて大きい。
【0013】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、その第1の目的は、略球形状の燃料物質の
外周を、黒鉛を含む複数の層で被覆してなる燃料粒子を
装填してなる長尺状の燃料棒を、複数本規則的に束ねて
構成することによって、熱容量およびFP閉じ込め機能
を高めた軽水炉用燃料集合体を提供することにある。
【0014】また、その第2の目的は、このような軽水
炉用燃料集合体を装荷することによって、余剰反応度を
抑えながら良好な炉心特性を実現する軽水炉の炉心を提
供することにある。
【0015】更に、その第3の目的は、このような軽水
炉の炉心を適用することによって、1次冷却水喪失事象
に対する固有の安全性を高め、もって、1次冷却水喪失
事象対策として備えられている安全装置の構成の簡素化
を図ることが可能な軽水炉を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0017】すなわち、請求項1の発明では、ウランま
たはプルトニウムのうち少なくともいずれかを核分裂性
物質として含む略球形状の燃料物質の外周を、黒鉛を含
む複数の層で被覆してなる燃料粒子、黒鉛粉末を装填し
てなる長尺状の燃料棒を、複数本規則的に束ねて構成す
る。
【0018】請求項2の発明では、請求項1の発明の軽
水炉用燃料集合体において、燃料物質に対する黒鉛の体
積比を5乃至15とする。
【0019】請求項3の発明では、請求項1または請求
項2の発明の軽水炉用燃料集合体において、断面正六角
形状の複数の燃料棒セルを、互いに隣接する燃料棒セル
同士の断面の一辺を共有するように配置し、更に、各燃
料棒セルの中に、長尺状の燃料棒を、その断面中心を、
燃料棒セルの断面中心に一致させて配置する。
【0020】請求項4の発明では、請求項3の発明の軽
水炉用燃料集合体において、隣接する燃料棒同士の表面
間最短距離を0.5から2mmとする。
【0021】請求項5の発明では、請求項1乃至4のう
ちいずれか1項の発明の軽水炉用燃料集合体において、
燃料棒に、燃料粒子、黒鉛粉末に加えて可燃性中性子毒
物を混入する。
【0022】請求項6の発明では、請求項5の発明の軽
水炉用燃料集合体において、可燃性中性子毒物を、ガド
リニア(Gd)あるいはエルビア(Er
とする。
【0023】請求項7の発明では、請求項1乃至6のう
ちいずれか1項の発明の軽水炉用燃料集合体を装荷す
る。
【0024】請求項8の発明では、請求項7の発明の軽
水炉の炉心を冷却する冷却水である軽水の一部または全
部が喪失した場合に、炉心を冷却するための非常用冷却
水を炉心側に重力落下により供給する非常用冷却水供給
手段と、炉心の冷却のため、自身は加熱され自然対流す
る冷却水または非常用冷却水またはそれらの混合水から
熱を取り出し、配管内を上昇し原子炉建屋外に設けた冷
却器を通して炉心の外部に熱を伝え、その後に重力によ
り炉心に戻る熱除去媒体によって炉心から熱を除去する
炉心熱除去手段と、炉心が格納された格納容器内の内部
空気の熱を、密封されたパイプ内の冷却材の相変化によ
り格納容器の外部に取り出すことによって内部空気を冷
却する内部空気冷却手段とを備える。
【0025】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態につ
いて図面を参照しながら説明する。
【0026】本発明の実施の形態を図1から図7を用い
て説明する。
【0027】図1は、本発明の実施の形態に係る燃料集
合体の一例を示す外形図(図1(a))、および図1
(a)中に示すA−A線に沿った断面図(図1(b))
である。
【0028】すなわち、本発明の実施の形態に係る燃料
集合体1は、図1(a)に示す通り、複数の燃料棒2
を、その上端部を上部ノズル3に接続し、その下端部を
下部ノズル4に接続し、更に長尺方向(高さ方向)の所
定の位置を複数の支持格子5で支持してなる。
【0029】また、燃料棒2の断面構成は、図1(b)
に示す通り、断面正六角形状の燃料棒セル7を、互いに
隣接する燃料棒セル7同士の断面の一辺を共有するよう
に配置し、更に、各燃料棒セル7の中に、燃料棒2を、
その断面中心を、燃料棒セル7の断面中心に一致させて
配置してなる。なお、このように構成してなる燃料集合
体1を炉心に装荷する場合、装荷される何体かの燃料集
合体1では、後述するように、一部の燃料棒2(例えば
6本の燃料棒2)の代わりに制御棒を挿入する案内管を
備えている。
【0030】図2は燃料棒の詳細な構成を示す図であっ
て、図2(a)は燃料棒の構成例を示す断面図、図2
(b)は燃料充填部の詳細図(可燃性中性子毒物を混入
しない場合)、図2(c)は可燃性中性子毒物を混入し
た場合の燃料充填部の詳細図、図2(d)は黒鉛被覆燃
料粒子の断面構成図をそれぞれ示す。
【0031】図2(a)に示すように、燃料棒2は、例
えばジルカロイによって製造されてなる長尺円筒状の被
覆管9の下端部を下部端栓10によって栓し、下部端栓
10の上部に形成される燃料充填部11に、図2(b)
に示すように黒鉛被覆燃料粒子13および黒鉛粉末14
を充填する。なお、図2(c)に示すように燃料充填部
11に黒鉛被覆燃料粒子13および黒鉛粉末14に加
え、ガドリニア(Gd)あるいはエルビア(Er
)からなる可燃性中性子毒物微小球15も混入す
る場合がある。
【0032】上述したような燃料充填部11の上端部
を、プレナムスプリング16によって押圧し、更に、こ
のプレナムスプリング16を上部端栓18で押圧し、こ
の上部端栓18が被覆管9の上端部を栓することによっ
て、燃料充填部11を密閉すると共に、プレナム部17
を形成する。このプレナム部17には、通常はヘリウム
ガスなどを封入している。
【0033】黒鉛被覆燃料粒子13は、図2(d)に示
すように、従来技術の軽水炉で適用されていたような燃
料ペレット(UOまたはPuO)のように焼結した
酸化物ではなく、UO、PuO、またはUOとP
uOとの混合酸化物であるMOX(Mixed Oxide)か
らなる微小球である燃料核20の外周を、低密度パイロ
カーボン層21、高密度パイロカーボン層22、SiC
層23など、黒鉛を含む複数の層で何重にも被覆してな
る。
【0034】上述したような黒鉛被覆燃料粒子13を、
黒鉛粉末14、あるいは可燃性中性子毒物微小球15と
ともに、振動充填方法、圧縮充填方法、焼き固め等を採
用することによって燃料充填部11に充填することによ
って、図2(b)あるいは図2(c)に示すような稠密
充填を実現する。
【0035】黒鉛は熱伝導度が高いことから、黒鉛被覆
燃料粒子13の熱伝導度は、従来技術の軽水炉で用いら
れている燃料形態である燃料ペレットよりも高い。した
がって、従来技術の軽水炉では、通常運転時における燃
料ペレットの燃料平均温度は約700℃であったが、黒鉛
被覆燃料粒子13を用いて同様の条件の運転を行った場
合、黒鉛被覆燃料粒子13の燃料平均温度は約300℃ま
で下がる。
【0036】また、黒鉛は熱容量が高い。燃料棒2は、
黒鉛被覆燃料粒子13を、黒鉛粉末14をともに充填し
ていることによって、その単位長さあたりの熱容量は、
従来技術による燃料棒、すなわち、燃料ペレットを装填
してなる燃料棒よりも約5倍大きい。
【0037】上述したような黒鉛被覆燃料粒子13は、
ガス炉で既に使用されており、ガス炉における運転実績
から、燃料核20における核分裂によって生成するガス
状の核分裂生成物(以下、「FPガス」と称する。Fiss
ion Products Gas)が、黒鉛被覆燃料粒子13外に放出
する放出率が10−8程度と極めて小さいことを確認し
ている。ガス炉の運転時においては、黒鉛被覆燃料粒子
13の燃料平均温度が約1,200℃であり、上述した軽水
炉の運転条件における黒鉛被覆燃料粒子13の燃料平均
温度の約300℃に比べて極めて高いことを勘案すれば、
黒鉛被覆燃料粒子13を軽水炉に適用した場合には、F
Pガスの放出率は更に小さくなる。
【0038】1次冷却水の喪失事故等により黒鉛被覆燃
料粒子13の温度が異常に上昇した場合、1,900℃程度
以下であれば黒鉛被覆燃料粒子13は破損しないことが
知られている。従来技術による加圧水型の軽水炉では、
万が一、1次冷却水の喪失事故が生じても、燃料(被覆
管)の温度は1,200℃以下になることが確認されてい
る。
【0039】上述したように、従来技術による加圧水型
の軽水炉では、通常運転時における燃料平均温度が約70
0℃であったのに対し、黒鉛被覆燃料粒子13を用いて
同様の条件の運転を行った場合、黒鉛被覆燃料粒子13
の燃料平均温度は約300℃まで下がることから、万が
一、1次冷却水の喪失事故が生じても、黒鉛被覆燃料粒
子13の温度は1,200℃よりも十分低くなるために、破
損することはない。
【0040】なお、図2(c)に示すように、黒鉛被覆
燃料粒子13および黒鉛粉末14に加え、例えばガドリ
ニア(Gd)からなる可燃性中性子毒物微小球1
5を混入する場合も同様の方法によって稠密充填を行
う。なお、可燃性中性子毒物とは、中性子を吸収する効
果が大きく、かつ、中性子を一旦吸収すると、他の物質
に変換する物質である。このような物質としては、ガド
リニア(Gd)が広く用いられている。
【0041】次に、上述したような燃料集合体1を構成
してなる軽水炉の炉心について説明する。
【0042】図3(a)は、本発明の実施の形態に係る
軽水炉の炉心25の一例を示す燃料集合体1の配置断面
図である。図3(a)に示す例は、図1(b)に示すよ
うにその断面が略正六角形状をなす燃料集合体1を、炉
心断面形状が略円形状になるように85体装荷してなる
炉心25である。このような炉心25に装荷されている
燃料集合体1のうち燃料集合体1(#a)は、図3
(b)に示すように、全ての燃料棒セル7に燃料棒2を
配置してなる。一方、燃料集合体1(#b)は、図3
(c)に示すように、可燃性中性子毒物微小球15を含
む燃料棒2(#b)を12本配置している。
【0043】なお、このような可燃性中性子毒物微小球
15を含む燃料棒2(#b)の本数、配置場所、可燃性
中性子毒物の全重金属重量に対する重量割合は、出力分
布が極端に歪まないこと、後述するように余剰の反応度
を運転期間に亘って適切に制御できるように設定するこ
とができるように決定するものであって、図3(c)に
示す配置場所に限定されるものでもない。
【0044】更に、燃料集合体1(#c)は、図3
(d)に示すように、最外周の6つの燃料棒セル7を除
いた燃料棒セル7には燃料棒を配置しているが、最外周
の6つの燃料棒セル7には、制御棒案内管27を配置し
ている。この制御棒案内管27は、図8に示すようなC
RDM38によって上下に駆動される制御棒を挿入する
ためのものである。なお、図3(d)に示すような燃料
棒案内管27を配置している燃料集合体1(#c)の一
部の燃料棒2に可燃性中性子毒物微小球15を混入して
も良い。
【0045】また、図4は、図3に示すような構成の炉
心25の仕様例をまとめたものである。すなわち、炉心
熱出力は50MWであって、約3年間の継続運転を行
う。燃料棒2の燃料充填部11の高さに相当する炉心有
効長は約1.8m、また、炉心25の等価直径も同様に約
1.8mである。炉心25に装荷される燃料集合体1の体
数は上述したように85体であって、この85体の燃料
集合体1に含まれるウランおよびプルトニウムの合計重
量である重金属装荷量は約2.5ton(約2500kg)である。
また、炉心25を冷却する1次冷却水の平均温度は250
℃である。
【0046】燃料棒2に関連する仕様としては、隣接す
る燃料棒2同士の中心間距離である燃料棒配列ピッチが
30mm、被覆管9の外径が29mmである。すなわち、隣
接する燃料棒2同士の最小間隙は1mmである。なお、
被覆管9の肉厚は1.5mmである。核燃料としては、濃
縮度5.0wt%のウラン(U-235が重量割合で5%まで濃縮さ
れたウラン)の酸化物であるUOを用い、黒鉛被覆燃
料粒子13と黒鉛粉末を含めたUOと黒鉛との体積比
は1:9である。
【0047】被覆管9の材質はジルカロイであり、燃料
棒配列すなわち燃料棒セル7の断面形状は六角である。
燃料集合体1には、制御棒案内管27を備えていない燃
料集合体1(#a)と、6本の制御棒案内管27を備え
た燃料集合体1(#c)とがあり、前者の燃料集合体1
(#a)は37本の燃料棒2を、後者の燃料集合体1
(#b)は31本の燃料棒2を備えている。制御棒案内
管27を備えていない燃料集合体1(#a)、および制
御棒案内管27を備えている燃料集合体1(#b)のう
ちのそれぞれ何体かの一部の燃料棒2に、可燃性中性子
毒物微小球15を混入しても良い。
【0048】なお、図示しない制御棒にはBC(ボロ
ンカーバイド)を中性子吸収材として用いている。B
(ボロン)にはB-10とB-11の2つの同位体があり、うち
B-10が中性子を良く吸収する。天然ボロンにはB-10が重
量比で約20%しか含まれていないので、ここでは、全ボ
ロンに対するB-10の重量比を高めた濃縮ボロンを用いて
いる。
【0049】また、制御棒体数は15本である。すなわ
ち、炉心25には、制御棒案内管27を備えている燃料
集合体1(#b)を15体装荷している。炉心25にお
ける平均線出力密度は9.1kW/m、減速材温度係数、
ボイド係数は十分負となる。
【0050】以上のように構成してなる本実施の形態に
係る軽水炉の炉心25の特性について以下に説明する。
【0051】図5は、黒鉛/UO体積比を変化させた
場合のボイド係数(左縦軸)およびK-inf(無限増倍
率:右縦軸)を示す図である。図5において曲線aは、
炉心25に供給される冷却水のうちのH(水素)の体積
と重金属HM(この場合、ウラン)との原子数の比(H
/HM)が0.5の場合におけるボイド係数である。以
下、曲線bはH/HM=2.0、曲線cはH/HM=4.0、
曲線dはH/HM=6.0の場合におけるボイド係数であ
る。
【0052】増倍率とは、中性子の消滅率に対する中性
子の発生率の比である。無限増倍率とは、特にこの場
合、炉心25の体系が無限に繰り返される無限体系にお
ける増倍率に相当する。したがって、炉心25における
臨界状態を保つ、言い換えれば核分裂連鎖反応を維持す
るためには、少なくとも無限増倍率を1.0以上としなけ
ればならない。
【0053】ボイド係数とは、冷却水にボイドが発生し
た場合における増倍率の変化率を示す係数であって、ボ
イド係数が負の値の場合、冷却水にボイドが発生する
と、増倍率の値は小さくなる。
【0054】また、曲線eはH/HM=0.5の場合にお
ける無限増倍率、同様に、曲線fはH/HM=2.0、曲
線gはH/HM=4.0、曲線hはH/HM=6.0の場合に
おける無限増倍率である。図5において、図4にその仕
様を示す炉心は、H/HM=約10、黒鉛/UO体積
比=約10の場合、すなわちボイド係数の場合は曲線
c、無限増倍率の場合は曲線fにそれぞれほぼ相当す
る。なお、図4に示す仕様においてUO黒鉛体積比=
1:9と記載しているが、これは黒鉛被覆燃料粒子13
と燃料充填部11に混入されている黒鉛粉末14を含め
た場合の値である。図5における黒鉛/UO体積比
も、この黒鉛粉末14も含んでいる。
【0055】図5に示すように、無限増倍率の黒鉛/U
体積比による変化は小さいが、ボイド係数は黒鉛/
UO体積比ともにその値が大きくなる。無限増倍率が
大きくなるということは、炉心25を臨界に保つために
は好ましい特性である。一方、ボイド係数が大きくなる
ということは安全上からは好ましくない。特に、ボイド
係数が正の値となると、仮に炉心25の発熱量が、1次
冷却水によって冷却される冷却能力を超えて、1次冷却
水である水が沸騰しボイドが発生した場合、正の反応度
が炉心25に投入され、炉心25における核分裂がます
ます促進されてしまうからである。ところで、黒鉛/U
体積比が大きくなるということは、黒鉛被覆燃料粒
子13における黒鉛の量を増加すること、あるいは、燃
料充填部11に充填される黒鉛粉末14の量を増加する
ことであり、これは炉心25のサイズの大型化をもたら
し経済的に不利となる。
【0056】この観点から、黒鉛/UO体積比は5乃
至15の範囲が妥当である。この範囲では無限増倍率が
1.0以上であり、ボイド係数も確実に負となる。よっ
て、本発明の実施の形態に係る炉心25では、黒鉛/U
体積比を約10としている。黒鉛/UO体積比が
約10という燃料棒2では、単位長さ当たりのUO
を従来の加圧水型原子炉の燃料棒と等しくする場合、燃
料棒2の体積を約10倍、即ち外径寸法を約3倍にする
必要がある。従来技術による燃料ペレットを被覆管に装
填してなる燃料棒2は、その外径が約10mmあるので、
その約3倍である29mmを、本発明の実施の形態では燃
料棒2の外径としている。
【0057】また、黒鉛/UO体積比が約10という
燃料棒2では、図5に示すように、H/HMが大きい方
が無限増倍率が高い。H/HMを更に大きな値とすれば
無限増倍率もまた高くなるものと予想される。しかしな
がら、無限増倍率は曲線fに示すH/HM=4.0の場合
で既に十分高いこと、また、H/HMを高めると、燃料
棒セル7における燃料棒2以外の領域である冷却水領域
を大きく確保せねばならず、これもまた炉心25のサイ
ズの大型化をもたらし経済的に不利となる。
【0058】したがって、本発明の実施の形態では、H
/HM=約10としている。そして、このH/HM=約
10を達成するために、図1(b)に示すように、その
断面が正六角形状になるように燃料棒2を束ね、更に隣
接する燃料棒2同士の最短間隔が1mmとなるように、
すなわち燃料棒2の配列ピッチが30mmとなるようにし
ている。なお、本発明の実施の形態では、図1(b)に
示すように、その断面が正六角形状になるように燃料棒
2を束ねてなる燃料集合体1を一例として示している
が、炉心25のサイズに余裕があれば、黒鉛/UO
積比が約10であれば、たとえばその断面形状を正方形
とするなど、その他の断面形状をしてなる燃料集合体を
用いても良い。
【0059】図6は、図4に示すような仕様をしてなる
本発明の実施の形態の炉心25における燃焼度と実効増
倍率(K-eff)との関係を示す曲線iと、比較炉心にお
ける燃焼度と実効増倍率(K-eff)との関係を示す曲線
kとをあわせて示した図である。ここで、実効増倍率と
は、炉心25のサイズを考慮した増倍率のことである。
無限増倍率の場合、炉心25は無限体系とみなしている
ので、体系からの中性子の漏れが全くない。しかしなが
ら、現実的には、炉心25は有限体系であるので、炉心
25から漏れ出る中性子もある。実効増倍率とは、この
ように、炉心25のサイズを考慮し、炉心から漏れ出る
中性子も含めて考慮した場合における増倍率のことであ
る。したがって、実効増倍率が1.0以上の場合、炉心2
5の臨界状態を保つことができ、核分裂連鎖反応を維持
することができる。
【0060】本発明の実施の形態の炉心25は、図3
(c)に示すように可燃性中性子毒物微小球15を混在
した12本の燃料棒2を備えている燃料集合体1(#
b)である。曲線iは、このような炉心25の実効増倍
率の特性を示す図である。
【0061】一方、曲線kのような実効増倍率特性を示
す炉心は、図3(c)に示すような可燃性中性子毒物微
小球15が混入された燃料棒2(#b)を含まない燃料
集合体1のみが装荷されてなる炉心である。すなわち、
曲線kのような実効増倍率特性を示す炉心は、どの燃料
集合体1にも、全く可燃性中性子毒物微小球15は含ま
れていない。このような炉心の場合、未燃焼時(0MW
d/t)の実効増倍率が1.25と、臨界の維持に必要な実
効増倍率である1.0に比べて高い。原子力発電所におい
て熱出力を一定に制御するためには、核分裂を一定の割
合で発生させる必要があるが、これは実効増倍率=1.0
の場合に実現される。したがって、余剰反応度(ΔK-e
ff=0.25)を抑えるために多数の制御棒を炉心25に挿
入しなければならず、運転操作の煩雑をもたらす。
【0062】一方、曲線iに示す本発明の実施の形態の
炉心では、可燃性中性子毒物微小球15を混入した燃料
棒2(#b)を備えた燃料集合体1を何体か装荷してい
るために、未燃焼時(0MWd/t)の実効増倍率を1.1
5とし、余剰反応度を低減することを可能としている。
すなわち、余剰反応度(ΔK-eff=0.25)を抑えるため
に必要な制御棒の本数は、曲線iに示す炉心ほど必要で
はなくなるために、運転操作はさほど煩雑ではない。
【0063】未燃焼時である0MWd/tから燃焼ととも
に実効増倍率が減少し、燃焼度が約23,000Wd/tで1.0
となる。この燃焼度は運転期間に換算すると約3年とな
る。
【0064】すなわち、本発明の実施の形態に係る炉心
25は、約3年間の連続運転を可能としている。なお、
可燃性中性子毒物の消費による実効増倍率の変化挙動
は、可燃性中性子毒物の消費と、核分裂性物質の消費と
のバランスによって決定されるものであり、燃料集合体
1における可燃性中性子毒物微小球15を混入した燃料
棒2(#b)の本数、その燃料棒2(#b)の配置場
所、可燃性中性子毒物微小球15を混入した燃料棒2
(#b)を含む燃料集合体1(#b)の体数、および炉
心25における装荷場所によって任意性を持つ。
【0065】次に、本発明の実施の形態の炉心25を適
用してなる軽水炉の構成について図7を用いて説明す
る。図7は、本発明の実施の形態の炉心25を適用して
なる加圧水型の軽水炉の一例を示す構成図である。
【0066】すなわち、本発明の実施の形態の炉心を適
用してなる加圧水型の軽水炉の構成は、図8に示す従来
技術の加圧水型の軽水炉に備えられていた蓄圧注入系3
9、高圧注入系40、低圧注入系41、格納容器スプレ
ー系44およびそれらに付随する機器であるポンプ4
2、ポンプ45、スプレー46を省略する一方、重力注
水タンク50、ヒートパイプ53、二相自然循環伝熱ル
ープ60およびそれらに付随する配管、タンク等を付加
してなる。なお、図7中に示す符号は、図8と同一部分
については同一符号を付している。同一符号を付した機
器については重複説明を避ける。
【0067】従来技術の加圧水型の軽水炉に備えられて
いた蓄圧注入系39、高圧注入系40、低圧注入系4
1、格納容器スプレー系44は、1次冷却水の喪失事故
等が発生した場合に原子炉圧力容器31に水を供給した
り原子炉格納容器の内圧を減少させるための非常用の設
備であり、沸騰水型の軽水炉にも同等の設備が設けられ
ている。本発明の実施の形態に係る加圧水型の軽水炉で
は、1次冷却水の喪失事故等が発生した場合における非
常用の設備として、これら蓄圧注入系39、高圧注入系
40、低圧注入系41、格納容器スプレー系44に代え
て、重力注水タンク50、ヒートパイプ53、二相自然
循環伝熱ループ60を用いる。
【0068】重力注水タンク50は、炉心25を冷却す
るための非常用冷却水を、配管51を介して重力落下に
より炉心25側に供給する。
【0069】1次冷却水の喪失事故等が発生した場合、
原子炉冷却材の原子炉格納容器への放出に伴い、原子炉
格納容器30の内部の温度も上昇する。取出パイプ52
は、密封されたパイプであり、この中の冷却材は格納容
器30からの熱により蒸気に相変化し、原子炉格納容器
30外での凝縮により熱を原子炉格納容器30の外部に
取り出す。凝縮された水は再び取出しパイプを通り原子
炉格納容器30内に戻されるようにしている。
【0070】炉心25の冷却のため、熱交換器55の冷
却材は加熱された自然対流する1次冷却水、または重力
注水タンク50によって供給された非常用冷却水、また
はそれらの混合水から熱を熱交換部55取出し蒸発す
る。熱交換器55で生じた蒸気は、自然循環によって配
管56内を上昇し、気水分離タンク58に到達する。気
水分離タンク58で分離された蒸気は配管59内を上昇
して外部熱交換器60に到達する。外部熱交換器60
は、配管59をスパイラル状に形成してなるものであっ
て、スパイラル状に形成された配管59の内部を蒸気が
流れ、該配管59の外側を空冷する。これによって、該
配管59の内部を流れる蒸気は冷却され凝縮して水に戻
る。凝縮された水は、自然循環によって戻りの配管61
内を下降し、再び炉心25側に戻されるようにしてい
る。
【0071】次に、以上のように構成した本発明の実施
の形態に係る燃料集合体、燃料集合体を装荷してなる軽
水炉の炉心、および軽水炉の作用について説明する。
【0072】本発明の実施の形態に係る燃料集合体1
は、燃料充填部11に、黒鉛被覆燃料粒子13と黒鉛粉
末14とを充填してなる燃料棒2が複数本規則的に束ね
て構成される。また、この黒鉛被覆燃料粒子13は、略
球形状である燃料核20の外周が、低密度パイロカーボ
ン層21、高密度パイロカーボン層22、SiC層23
など、黒鉛を含む複数の層で何重にも被覆される。
【0073】黒鉛は、熱伝導度が高いことから、本発明
の実施の形態に係る燃料集合体1を適用した軽水炉を運
転した場合、黒鉛被覆燃料粒子13の燃料平均温度が約
300℃に抑えられる。すなわち、燃料ペレットを用いた
従来技術による軽水炉を運転した場合における燃料平均
温度である約700℃よりも大幅に燃料平均温度が下がる
ので、熱的安全性が高められる。
【0074】また、黒鉛は、熱容量が高いことから、黒
鉛被覆燃料粒子13を黒鉛粉末14とともに充填してな
る燃料棒2の単位長さあたりの熱容量は、従来技術によ
る燃料棒、すなわち、燃料ペレットを装填してなる燃料
棒よりも約5倍大きくなる。これによって、万が一、1
次冷却水の喪失等によって炉心25の冷却機能が低下し
た場合であっても、黒鉛被覆燃料粒子13の温度上昇
は、従来技術で用いられていた燃料ペレットの場合より
も緩和される。
【0075】更に、黒鉛被覆燃料粒子13はFPガスに
対して高い閉じ込め機能を有していることがガス炉にお
いて確認されているので、黒鉛被覆燃料粒子13を適用
している本発明の実施の形態に係る軽水炉においても、
FPガスに対して高い閉じ込め効果が得られる。ガス炉
における黒鉛被覆燃料粒子13の燃料平均温度である約
1,200℃に対し、本発明の実施の形態に係る軽水炉にお
ける黒鉛被覆燃料粒子13では、上述したように燃料平
均温度が約300℃であることを勘案すると、FPガスに
対する閉じ込め効果は更に高められる。
【0076】上述したような燃料集合体1を装荷してな
る炉心25は、黒鉛/UO体積比が約10、H/HM
が約10になるように仕様が調整されている。このよう
な条件の場合、炉心のサイズが、従来技術による炉心と
同等となり、かつ、ボイド係数も十分な負の値となり、
無限増倍率も1.0より十分に大きな値となり、優れた炉
心性能が得られる。黒鉛/UO体積比を約10とする
ためには、燃料棒2の外径が、従来技術による燃料棒2
の外径よりも約3倍大きくなる。このため、図1(b)
に示すように、互いにハニカム状に配置された多数の燃
料棒セル7の中に燃料棒2を配置してなる燃料集合体1
を、更に、図3(a)に示すようにハニカム状に装荷し
てなる炉心25が適用されている。燃料棒2は、燃料集
合体1においてこのようにハニカム状に配置されること
によって、隣接する燃料棒2同士の最短間隔が1mmと
なるほどに稠密配置がなされ、H/HMが約10に抑え
られる。
【0077】また、この炉心25は、ウラン235(U-
235)の全ウランに対する重量割合が5wt%(重量%)ま
でに濃縮された濃縮ウランを用いて燃料核20を形成
し、炉心熱出力50MWで運転した場合、約3年間の連続
運転が可能となる。上述したような炉心25の仕様にお
いて、ウラン235(U-235)の濃縮度が5wt%(重量
%)までに濃縮された濃縮ウランを用いて燃料核20を
形成した場合、未燃焼時における実効増倍率は1.25とな
り、余剰反応度が極めて大きい。しかしながら、本発明
の実施の形態に係る軽水炉の炉心25では、一部の燃料
集合体1の一部の燃料棒2の燃料充填部11に、例えば
ガドリニアのような可燃性中性子毒物微小球15が混入
されている。これによって、燃焼初期における余剰反応
度が抑えられ、必要とされる制御棒の数を最小とするこ
とができる。
【0078】本発明の実施の形態に係る軽水炉では、1
次冷却水の喪失事故時に炉心25および原子炉圧力容器
31を冷却するために、従来技術の軽水炉で適用されて
いた蓄圧注入系39、高圧注入系40、低圧注入系4
1、格納容器スプレー系44、およびこれらに付随する
機器であるポンプ42、ポンプ45、スプレー46を不
要とし、代わりに、重力注水タンク50、ヒートパイプ
53、二相自然循環伝熱ループ60およびこれらに付随
する配管を適用している。
【0079】重力注水タンク50、ヒートパイプ53、
二相自然循環伝熱ループ60はいずれも動的機器である
ポンプを用いずに、自然循環等の静的作用が利用されて
いる。ポンプを用いていないために、炉心25側に高圧
で非常用冷却水を供給することはできないが、本発明で
は大量の黒鉛を燃料棒2の燃料充填部11内に含有して
いるので、熱容量が大きく、仮に1次冷却水の喪失があ
っても、約3時間以上に亘り、被覆管9の温度は熱損傷
温度以下に保たれる。また、黒鉛被覆燃料粒子13が被
覆管9内に封入されていることから、黒鉛被覆燃料粒子
13は1次冷却水と反応しない。また、黒鉛被覆燃料粒
子13にFPガスが閉じ込められるために、燃料棒2か
らのFPガス漏出もない極めて安全な燃料となっている
ためである。
【0080】このような理由によって、本発明の実施の
形態に係る軽水炉は、1次冷却水の喪失事故時に炉心2
5および原子炉圧力容器31を冷却するための設備とし
て、ポンプ等の動的機器が不要で、構成が簡素な重力注
水タンク50、ヒートパイプ53、二相自然循環伝熱ル
ープ60を適用することが可能となる。これによって、
構成が簡素化されるのみならず、ポンプ等の動的機器に
必要であったメンテナンスや動作確認等も不要となる。
これは、建設費の低減を図ることが可能となるのみなら
ず、固有の安全性を備えて極めた安全な原子炉として都
市近接への立地対応におけるPA上も有利である。さら
に、この軽水炉を熱利用に用いた場合、都市近接立地が
可能であることは、コスト低減の観点からも極めて有利
であり、原子力エネルギーの利用範囲の拡大に資するこ
とも可能となる。
【0081】以上、本発明の好適な実施の形態につい
て、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかか
る構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技
術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更
例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及
び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと
了解される。すなわち、本実施の形態では、加圧水型の
軽水炉を例に説明したが、本発明は軽水炉一般に適用可
能なものであり、加圧水型の原子炉に限らず沸騰水型の
原子炉においても同様に適用可能なものである。
【0082】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
略球形状の燃料物質の外周を、黒鉛を含む複数の層で被
覆してなる燃料粒子を装填してなる長尺状の燃料棒を、
複数本規則的に束ねて構成することによって、熱容量お
よびFP閉じ込め機能を高めた軽水炉用燃料集合体を実
現することが可能となる。
【0083】また、このような軽水炉用燃料集合体を装
荷することによって、余剰反応度を抑えながら良好な炉
心特性を実現する軽水炉の炉心を実現することが可能と
なる。
【0084】更に、このような軽水炉の炉心を適用する
ことによって、1次冷却水喪失事象に対する固有の安全
性を高めることができ、もって、1次冷却水喪失事象対
策のための安全装置の構成の簡素化を図ることが可能な
軽水炉を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る燃料集合体の一例を
示す外形図および断面図
【図2】燃料棒の構成を示す詳細図
【図3】同実施の形態に係る軽水炉の炉心の一例を示す
燃料集合体の配置断面図
【図4】同実施の形態に係る炉心の仕様例
【図5】黒鉛/UO体積比とボイド係数(左縦軸)お
よびK-inf(無限増倍率:右縦軸)との関係を示す図
【図6】炉心における燃焼度と実効増倍率(K-eff)と
の関係を示す図
【図7】同実施の形態の加圧水型原子炉の構成例を示す
断面図
【図8】従来技術による加圧水型原子炉の構成を示す断
面図
【符号の説明】
1…燃料集合体 2…燃料棒 3…上部ノズル 4…下部ノズル 5…支持格子 7…燃料棒セル 9…被覆管 10…下部端栓 11…燃料充填部 13…黒鉛被覆燃料粒子 14…黒鉛粉末 15…可燃性中性子毒物微小球 16…プレナムスプリング 17…プレナム部 18…上部端栓 20…燃料核 21…低密度パイロカーボン層 22…高密度パイロカーボン層 23…SiC層 25、32…炉心 27…制御棒案内管 30…原子炉格納容器 31…原子炉圧力容器 33…加圧器 34…1次ループ 35、42、45…ポンプ 36…熱交換器 37…2次ループ 38…CRDM 39…蓄圧注入系 40…高圧注入系 41…低圧注入系 44…格納容器スプレー系 46…スプレー 50…重力注水タンク 51、56、59、61…配管 52…取出パイプ 53…ヒートパイプ 54…戻りパイプ 55…取出口 58…バッファタンク 60…二相自然循環伝熱ループ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G21C 15/18 G21C 3/30 X T (71)出願人 501137555 島津 洋一郎 北海道札幌市中央区南4条西13丁目1−11 −1006 (72)発明者 秋山 美映 東京都千代田区丸の内二丁目5番1号 三 菱重工業株式会社内 (72)発明者 吉津 達弘 兵庫県神戸市兵庫区和田崎町一丁目1番1 号 三菱重工業株式会社神戸造船所内 (72)発明者 栃原 洋 神奈川県横浜市西区みなとみらい三丁目3 番1号 エンジニアリング開発株式会社内 (72)発明者 小林 達夫 神奈川県横浜市西区みなとみらい三丁目3 番1号 エンジニアリング開発株式会社内 (72)発明者 伊藤 邦博 茨城県那珂郡東海村舟石川622番地12 ニ ュークリア・デベロップメント株式会社内 (72)発明者 小山 好一 茨城県那珂郡東海村舟石川622番地12 ニ ュークリア・デベロップメント株式会社内 (72)発明者 島津 洋一郎 北海道札幌市中央区南4条西13丁目1−11 −1006

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ウランまたはプルトニウムのうち少なく
    ともいずれかを核分裂性物質として含む略球形状の燃料
    物質の外周を、黒鉛を含む複数の層で被覆してなる燃料
    粒子と黒鉛粉末とを装填してなる長尺状の燃料棒を、複
    数本規則的に束ねて構成してなる軽水炉用燃料集合体。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の軽水炉用燃料集合体に
    おいて、 前記燃料物質に対する前記黒鉛の体積比を5乃至15と
    したことを特徴とする軽水炉用燃料集合体。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の軽水炉
    用燃料集合体において、 断面正六角形状の複数の燃料棒セルを、互いに隣接する
    燃料棒セル同士の断面の一辺を共有するように配置し、
    更に、前記各燃料棒セルの中に、前記長尺状の燃料棒
    を、その断面中心を、前記燃料棒セルの断面中心に一致
    させて配置してなることを特徴とする軽水炉用燃料集合
    体。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の軽水炉用燃料集合体に
    おいて、 前記隣接する燃料棒同士の表面間最短距離を0.5から
    2mmとしたことを特徴とする軽水炉用燃料集合体。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のうちいずれか1項に記
    載の軽水炉用燃料集合体において、 前記燃料棒に、前記燃料粒子に加えて可燃性中性子毒物
    を混入したことを特徴とする軽水炉用燃料集合体。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の軽水炉用燃料集合体に
    おいて、 前記可燃性中性子毒物を、ガドリニア(Gd)あ
    るいはエルビア(Er )としたことを特徴とする
    軽水炉用燃料集合体。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6のうちいずれか1項に記
    載の軽水炉用燃料集合体を装荷してなることを特徴とす
    る軽水炉の炉心。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の軽水炉の炉心を冷却す
    る冷却水である軽水の一部または全部が喪失した場合
    に、 前記炉心を冷却するための非常用冷却水を前記炉心側に
    重力落下により供給する非常用冷却水供給手段と、 炉心の冷却のため、自身は加熱され自然対流する前記冷
    却水または前記非常用冷却水またはそれらの混合水から
    熱を取り出し、配管内を上昇し原子炉建屋外に設けた冷
    却器を通して前記炉心の外部に熱を伝えたのち重力によ
    り前記炉心に戻る熱除去媒体によって前記炉心から熱を
    除去する炉心熱除去手段と、 前記炉心が格納された格納容器内の内部空気の熱を、密
    封されたパイプ内の冷却材の相変化により前記格納容器
    の外部に取り出すことによって前記内部空気を冷却する
    内部空気冷却手段とを備えたことを特徴とする軽水炉。
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