JP2014110176A - リチウム複合酸化物およびその製造方法、ならびにそのリチウム複合酸化物を含む二次電池用正極活物質、それを含む二次電池用正極、およびそれを正極として用いるリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウム複合酸化物およびその製造方法、ならびにそのリチウム複合酸化物を含む二次電池用正極活物質、それを含む二次電池用正極、およびそれを正極として用いるリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】正極活物質として用いた場合に、5V級の作動電圧を備え、サイクル特性およびレート特性に優れるリチウムイオン二次電池を得るために用いることができるリチウム複合酸化物の提供。
【解決手段】NiおよびMnを含み特定の式で表される組成を備え、平均二次粒子径が3〜29μmであり、結晶構造は、スピネル型であって、かつ、少なくとも一部の空間群がP4332である、リチウム複合酸化物。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム複合酸化物およびその製造方法、ならびにそのリチウム複合酸化物を含む二次電池用正極活物質、それを含む二次電池用正極、およびそれを正極として用いるリチウムイオン二次電池に関する。
リチウム電池は、他の電池に比べて大きなエネルギー密度を持ち、軽く、長時間使用できるという特徴を有し、携帯電話、PHS、小型コンピューター等の携帯機器類用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源等として用いるために開発が進められている。
このようなリチウム電池は、リチウム含有複合酸化物を含む正極活物質からなる正極と、カーボン等のリチウムを吸蔵・放出することができる材料を活物質とする負極と、非水電解液を含むセパレータまたは固体電解質とを、主要構成成分として備えている。
そして、これら構成要素のうち、正極活物質として検討されているものには、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)等がある。特に、リチウムコバルト複合酸化物を正極に用いた電池については、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発がこれまで数多く行われており、すでに実用化に至っている。
しかし、コバルトが希少資源であるため、リチウムコバルト複合酸化物を正極に用いたリチウムイオン二次電池は高価である。そこで、コバルトよりも安価で高エネルギー密度を実現できる代替材料が求められており、すでにいくつかの提案がなされている。
例えば特許文献1には、特定の式で表されるリチウム遷移金属系化合物を主成分とし、リチウム遷移金属系化合物の原料の焼結を促進する効果を有する元素を有する物質を添加した後、焼成され、細孔分布曲線において、細孔半径800nm以上6000nm以下にメインピークのピークトップおよび細孔半径80nm以上800nm以下にサブピークのピークトップを有することを特徴とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体が記載されている。
例えば特許文献2には、特定の式で示される組成を有するリチウム複合酸化物からなり、金属リチウム負極又は金属リチウム負極換算の3.5Vから5.2Vまでの充放電曲線における3.5V〜4.5Vの領域において電位変曲部または電位プラトーを示さないことを特徴とする、リチウム二次電池用正極活物質材料が記載されている。
例えば特許文献3には、特定の組成式で表され、充放電領域における反応が2相反応であることを特徴とする正極活物質が記載されている。
例えば特許文献4には、特定の式で表されるスピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物であって、立方晶単位格子の格子定数が8.17〜8.18Å、比表面積が0.2〜1.0m2/g、タップ密度が1.52g/cm3以上であり、さらに放電曲線において4.5Vを超える領域が120mAh/g以上あり、かつ、3.5〜4.5Vに電位領域の棚を排除したことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質が記載されている。
特開2012−15105号公報 特開2001−148249号公報 特開2003−323893号公報 特開2004−303710号公報
しかしながら、エネルギー密度が高く、さらにサイクル特性およびレート特性が共に優れるリチウムイオン二次電池は、従来、提案されていなかった。
例えば特許文献1に記載のリチウム二次電池はレート特性が優れていない。また、特許文献2または特許文献3に記載のリチウム二次電池は、サイクル特性が優れていない。
本発明は、上記のような従来のリチウム複合酸化物の問題点を解決するものである。すなわち、それを正極活物質として用いた場合に、5V級の作動電圧を備え、さらにサイクル特性およびレート特性に優れるリチウムイオン二次電池を得ることができるリチウム複合酸化物およびその製造方法を提供することを目的とする。また、このようなリチウム複合酸化物を含む正極活物質を提供することを目的とする。また、この正極活物質を含むリチウムイオン二次電池用正極を提供することを目的とする。さらに、この正極を用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(11)である。
(1)NiおよびMnを含み下記式(I)で表される組成を備え、平均二次粒子径が3〜29μmであり、結晶構造は、スピネル型であって、かつ、少なくとも一部の空間群がP4332である、リチウム複合酸化物。
式(I):Li(1+x)(Ni、Mn、M1(2-x-p)2 p(4-a)
式(I)において、M1はCo、Fe、CrおよびCuからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、M2はB、P、Pb、Sb、Si、Ti、Mg、AlおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、0≦x≦0.2、0≦p≦1.0、0≦a≦1.0である。
(2)上記式(I)が下記式(I−1)で表される、上記(1)に記載のリチウム複合酸化物。
式(I−1):Li(1+x)Ni0.5-0.25x-0.25p(Mn1.5-y1 -0.75x-0.75p2 p(4-a)
式(I−1)において0≦y<0.5である。
(3)平均一次粒子径が0.05〜10μmである、上記(1)または(2)に記載のリチウム複合酸化物。
(4)リチウム源、ニッケル源、マンガン源、M1を含む原料およびM2を含む原料を溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥して前駆体を得る前駆体調整工程と、
前記前駆体を600〜1200℃の範囲内の焼成温度において焼成して焼成体を得る焼成工程と、
を備え、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のリチウム複合酸化物が得られる、リチウム複合酸化物の製造方法。
(5)前記焼成工程における焼成温度が750〜950℃である、上記(4)に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
(6)前記前駆体調整工程が、リチウム源、ニッケル源、マンガン源およびM1を含む原料を溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥して前記前駆体を得る工程であり、
下記式(I−2)で表されるリチウム複合酸化物が得られる、上記(4)または(5)に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
式(I−2):Li(1+x)(Ni、Mn、M1(2-x)(4-a)
(7)前記焼成体を洗浄した後、100〜750℃の範囲内の加熱温度において加熱して、洗浄された焼成体を得る洗浄工程をさらに備える、上記(4)〜(6)のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
(8)上記(4)〜(7)のいずれかに記載の製造方法によって得られるリチウム複合酸化物。
(9)上記(1)、(2)、(3)または(8)に記載のリチウム複合酸化物を含む正極活物質。
(10)上記(9)に記載の正極活物質を含むリチウムイオン二次電池用正極。
(11)上記(10)に記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解液とを有し、5V級の作動電圧を備える、リチウムイオン二次電池。
本発明によれば、それを正極活物質として用いた場合に、5V級の作動電圧を備え、サイクル特性およびレート特性に優れるリチウムイオン二次電池を得ることができるリチウム複合酸化物およびその製造方法を提供することができる。また、このようなリチウム複合酸化物を含む正極活物質を提供することができる。また、この正極活物質を含むリチウムイオン二次電池用正極を提供することができる。さらに、この正極を用いたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明の複合酸化物における二次粒子および一次粒子を説明するための拡大写真である。 本発明の複合酸化物における二次粒子および一次粒子を説明するための別の拡大写真である。 実施例1において得た充放電曲線である。 実施例2において得た充放電曲線である。 実施例3において得た充放電曲線である。 実施例4において得た充放電曲線である。
本発明について説明する。
本発明は、NiおよびMnを含み下記式(I)で表される組成を備え、平均二次粒子径が3〜29μmであり、結晶構造は、スピネル型であって、かつ、少なくとも一部の空間群がP4332である、リチウム複合酸化物である。
式(I):Li(1+x)(Ni、Mn、M1(2-x-p)2 p(4-a)
式(I)において、M1はCo、Fe、CrおよびCuからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、M2はB、P、Pb、Sb、Si、Ti、Mg、AlおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、0≦x≦0.2、0≦p≦1.0、0≦a≦1.0である。
このようなリチウム複合酸化物を、以下では「本発明の複合酸化物」ともいう。
本発明者は鋭意検討し、上記のような本発明の複合酸化物を正極活物質の少なくとも一部として用いると、5V級の作動電圧を備え、さらにサイクル特性およびレート特性に優れるリチウムイオン二次電池を得ることができることを見出した。
<本発明の複合酸化物>
本発明の複合酸化物の組成について説明する。
本発明の複合酸化物は、式(I):Li(1+x)(Ni、Mn、M1(2-x-p)2 p(4-a)で表される組成を備える。
ここで、本発明の複合酸化物はNiおよびMnを必ず含むが、M1および/またはM2は含まない場合もある。したがって、本発明の複合酸化物は、
Li(1+x)(Ni、Mn)(2-x-p)2 p(4-a)
Li(1+x)(Ni、Mn、M1(2-x)(4-a)
Li(1+x)(Ni、Mn)(2-x)(4-a)などで表される組成を備える場合もある。
また、本発明の複合酸化物は、上記の式(I)の下位概念としての式(I−1)で表される組成を備えるものであることが好ましい。
式(I−1):Li(1+x)Ni0.5-0.25x-0.25p(Mn1.5-y1 -0.75x-0.75p2 p(4-a)
式(I−1)において、M1およびM2は、式(I)の場合と同様の元素を意味する。また、x、pおよびaの範囲は式(I)の場合と同様である。
式(I−1)に示す組成は、過剰にLiが存在する場合(x>0の場合)、過剰Li原子の75%(原子数の百分率)がMnおよび/またはM1と置換し、残部の25%(原子数の百分率)がNiと置換することを意味する。また、M2を含む場合、M2原子の75%(原子数の百分率)がMnおよび/またはM1と置換し、残部の25%(原子数の百分率)がNiと置換することを意味する。また、式(I−1)は、MnとM1とが置換することを意味する。このような場合、作動電圧がより高くなり、サイクル特性およびレート特性に優れ、かつエネルギー密度がより優れるリチウムイオン二次電池が得られることを、本発明者は見出した。なお、エネルギー密度が優れるとは、初期充放電容量が高いことを意味する。
式(I−1)に該当する化合物の好適例として、LiNi0.5(Mn1.5-yCo)O4、LiNi0.4975(Mn1.4925-yCo)B0.014が挙げられる。
以下において式(I)についての説明は、式(I−1)についても該当する。
式(I−1)においてyはMnとM1との置換量を意味する。M1が複数種類の元素を意味する場合は、それらの合計の置換量を意味する。
式(I−1)においてyは0≦y<0.5であり、0≦y≦0.2であることが好ましく、y=0であること(すなわち本発明の複合酸化物がM1を含まないこと)がより好ましい。
y=0である場合、本発明の複合酸化物は、式(I−1)の下位概念としての式(I−1−1)で表される。
式(I−1−1):Li(1+x)Ni0.5-0.25x-0.25pMn1.5-0.75x-0.75p2 p(4-a)
式(I−1−1)において、M2は、式(I)の場合と同様の元素を意味する。また、x、pおよびaの範囲は式(I)の場合と同様である。
式(I−1−1)に該当する化合物の好適例として、LiNi0.5Mn1.54、LiNi0.4975Mn1.49250.014が挙げられる。
以下において式(I)についての説明は、式(I−1−1)についても該当する。
式(I)におけるxについて説明する。
xはNi、MnおよびM1からなる群から選ばれる少なくとも一部と置換しているLi量を意味する。
式(I)においてxは0≦x≦0.2の範囲であるが、x≦0.15の範囲であることが好ましい。また、0.05≦xであってもよい。
すなわち、本発明の複合酸化物はNi、MnおよびM1からなる群から選ばれる少なくとも一部がLiと置換してもよい。リチウムイオン電池の正極活物質として用いられるスピネル構造のリチウム複合酸化物の組成式におけるLiの原子数(組成比)の理論値は1であるが、本発明の複合酸化物では理論値より過剰のLiが含まれていてもよく、この過剰のLiに見合う分だけ、Ni、MnおよびM1からなる群から選ばれる少なくとも一部の量を少なくすることにより、LiがNi、MnおよびM1からなる群から選ばれる少なくとも一部と置換した構造をとっていてもよい。
また、式(I−1)に示すように、過剰に存在するLi原子の75%(原子数の百分率)がMnおよび/またはM1と置換し、残部の25%(原子数の百分率)がNiと置換することが好ましい。このような場合、作動電圧がより高くなり、サイクル特性およびレート特性に優れ、かつエネルギー密度がより優れるリチウムイオン二次電池が得られることを、本発明者は見出した。
Liの置換量(x)が多くなると、電池の充放電容量は若干低下するものの、サイクル特性が向上する傾向がある。しかしながら、xが0.2より大きくなってもサイクル特性は大きくは向上し難い傾向がある。また、Li総量(1+x)が1.0未満になると不純物となる異相が生成され、電池の充放電性能が低下する傾向がある。
式(I)におけるM1について説明する。
式(I)において、M1はCo、Fe、CrおよびCuからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。
上記のように、本発明の複合酸化物はM1を含まなくてもよいが、M1を含む場合、M1として好ましい元素はCoである。また、上記のように、M1はMnと置換して存在することが好ましい。
本発明の複合酸化物がM1を含む場合、これを正極活物質として用いて得たリチウムイオン二次電池は、一定の放電容量を確保しやすく、サイクル特性を維持する傾向がある。ただし、M1の存在量が多くなり過ぎると、リチウムイオン二次電池の放電容量が低下してしまう場合がある。
本発明の複合酸化物がM1としてCoを含む場合、本発明の複合酸化物の組成は、例えば、LiNi0.5(Mn1.5-yCo)O4、LiNi0.4975(Mn1.4925-yCo)B0.014と表される。
式(I)におけるM2について説明する。
式(I)において、M2はB、P、Pb、Sb、Si、Ti、Mg、AlおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。
上記のように、本発明の複合酸化物はM2を含まなくてもよいが、M2を含む場合、M2として好ましい元素はBである。
また、式(I−1)に示すように、M2の75%(原子数の百分率)がMnおよび/またはM1と置換し、残部の25%(原子数の百分率)がNiと置換することが好ましい。このような場合、作動電圧がより高くなり、サイクル特性およびレート特性に優れ、かつエネルギー密度がより優れるリチウムイオン二次電池が得られることを、本発明者は見出した。
式(I)においてpはM2と、Ni、MnおよびM1からなる群から選ばれる少なくとも1つとの置換量を意味する。M2が複数種類の元素を意味する場合は、それらの合計の置換量を意味する。
2の置換量(原子数比)であるpは0≦p≦1.0である。また、pは0.0005以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましい。また、pは0.05以下であることがより好ましい。pがこのような範囲内にあると、得られるリチウム複合酸化物を構成する粒子は結晶成長し易い傾向がある。pが低すぎると結晶成長が弱まる傾向があり、逆にpが高すぎると正極活物質として用いたときの電池の放電容量が低下する傾向がある。
本発明の複合酸化物がM2としてBを含む場合、本発明の複合酸化物の組成は、例えば、LiNi0.4975Mn1.49250.014、LiNi0.4975(Mn1.4925-yCo)B0.014と表される。
式(I)において、aはO(酸素)の欠損量を示している。
式(I)においてaは0≦a≦1.0を満たし、a=0であることが好ましい。
酸素欠損量が小さいと(すなわちaが小さいと)充放電試験における4.5V以下容量が小さくなる傾向がある。酸素欠損量が小さいと結晶構造が安定し、サイクル特性が向上する傾向がある。
次に、粒子径について説明する。
本発明の複合酸化物は、二次粒子を構成要素とするものであることが好ましく、二次粒子の集合体であることがより好ましい。
ここで、結晶子(単結晶部)の集合体であり、10000倍のSEM観察において視認できる最少の粒子単位を一次粒子、また一次粒子が焼結してなる、ハンドリングにおいて一粒の粒子として振る舞う粒子を二次粒子と定義する。
図1は本発明の複合酸化物の一態様をSEMを用いて観察して得た拡大写真であり、図1(a)は200倍、図1(b)は1000倍、図1(c)は5000倍、図1(d)は10000倍に拡大して得た写真である。図1(a)は概ね本発明の複合酸化物における二次粒子の態様を示していると考えられる。図1(b)および図1(c)からは、本発明の複合酸化物が、一次粒子が集合している二次粒子であることが理解される。図1(d)から本発明の複合酸化物における一次粒子が観察できる。
図2は本発明の複合酸化物の別の一態様をSEMを用いて観察して得た拡大写真であり、図2(a)は200倍、図2(b)は1000倍、図2(c)は5000倍、図2(d)は10000倍に拡大して得た写真である。図2(a)および図2(b)は概ね本発明の複合酸化物における二次粒子の態様を示していると考えられる。図2(c)からは、本発明の複合酸化物が、一次粒子が集合している二次粒子であることが理解される。図2(d)から本発明の複合酸化物における一次粒子が観察できる。
本発明の複合酸化物は、二次粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)が3〜29μmであり、4〜25μmであることが好ましく、6〜15μmであることがより好ましく、8〜10μmであることがさらに好ましい。平均二次粒子径がこのような範囲であって、上記のような特定組成を備え、さらに後述するような結晶構造であると、作動電圧がより高くなり、サイクル特性およびレート特性がより優れるリチウムイオン二次電池が得られることを、本発明者は見出した。
ここで二次粒子は、前述のように一次粒子が焼結してなるものである。
また、平均二次粒子径とは、二次粒子のメジアン径を意味するものとする。
また、平均二次粒子径は、次の方法で測定した値を意味するものとする。
初めに、室温大気中で、本発明の複合酸化物をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に添加し、超音波分散し撹拌することで分散させてスラリーとする。次に、このスラリーを80〜90%の透過率となるように調節した後、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて積算粒度分布(体積基準)を測定する。このようにして測定した粒度分布から求めたメジアン径を、本発明の複合酸化物における平均二次粒子径とする。
本発明の複合酸化物は、一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)が0.05〜10μmであることが好ましく、0.05〜7μmであることがより好ましく、0.1〜4μmであることがさらに好ましい。
ここで平均一次粒子径とは、前述の一次粒子(結晶子の集合体)のメジアン径を意味するものとする。
また、平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、本発明の複合酸化物を倍率10000倍で写真撮影し、得られた写真から任意に500個を選び、ノギスを用いて各々の投影面積円相当径を測定して積算粒度分布(体積基準)を求め、それより平均粒子径(メジアン径)を算出して求める値とする。
本発明の複合酸化物はBET比表面積が0.1〜10m2/gであることが好ましく、0.4〜8m2/gであることがより好ましく、0.5〜6m2/gであることがさらに好ましい。
比表面積が低すぎるとMn溶解量は減るものの、正極中で正極活物質と導電剤との接触および正極活物質と電解液との接触が不十分となり、レート特性が低下することがある。また、逆に高すぎるとタップ密度が小さくなり、体積当たりの放電容量が小さくなり、また、Mn溶解量の増加によってサイクル特性が低下することがある。
BET比表面積は、連続流動法によるBET1点法測定で求める値とする。具体的には、使用する吸着ガスおよびキャリアガスは共に、窒素、空気およびヘリウムの混合ガスであり、試料を前記混合ガスにより450℃以下の温度で過熱脱気し、次いで液体窒素により冷却して前記混合ガスを吸着させ、室温に戻して吸着された窒素ガスを脱着させ、熱伝導度検出器によって検出し、脱着ピークとしてその量を求め、試料の比表面積として算出する。このようなBET比表面積は、公知のBET式粉体比表面積測定装置を用いて測定することができる。
本発明において、単に「比表面積」と記した場合、「BET比表面積」を意味するものとする。
次に、結晶構造について説明する。
本発明の複合酸化物の結晶構造は、スピネル型であって、かつ、少なくとも一部の空間群がP4332である。
本発明の複合酸化物の結晶構造は少なくとも一部の空間群がP4332であり、全ての空間群がP4332であることが好ましい。結晶構造がスピネル型であって、かつ、少なくとも一部の空間群がP4332であり、上記のような特定範囲の平均二次粒子径を備え、さらに上記のような特定組成を備えるリチウム複合酸化物を用いると、作動電圧がより高くなり、サイクル特性およびレート特性がより優れるリチウムイオン二次電池が得られることを、本発明者は見出した。
なお、結晶構造がスピネル型であることは、本発明の複合酸化物を粉末X線回折測定に供することで確認することができる。
本発明の複合酸化物の結晶構造は少なくとも一部の空間群がP4332であるので、その他の空間群である部分を含んでもよい。例えば、本発明の複合酸化物は結晶構造の空間群がP4332である部分とFd−3mである部分とを含むものであってよい。
本発明の複合酸化物が結晶構造の一部に空間群がP4332を含むか含まないかは、次の方法で測定するものとする。
スライドガラスの上に試料を少量サンプリングし、傾けても落ちない程度にスパチュラ等を用いて押し固め、測定試料を作成する。そして、作成した測定試料についてラマン分光装置(例えばHORIBA社製、顕微レーザーラマン分光装置:Lab RAM ARAMIS)を用いて測定する。ここで測定条件は、レーザー波長:532nm、D2フィルター、50倍レンズ、測定時間:10秒、積算回数:20回、測定範囲:100〜1000cm-1で行う。また、結晶構造の判別として、Fd−3mのみの場合は、ラマンシフト100〜1000cm-1の範囲における、155〜165cm-1、390〜410cm-1、490〜510cm-1、580〜610cm-1、630〜650cm-1付近にピークトップをもつ5本のピークを示すのに対し、P4332を一部含む場合では155〜165cm-1、215〜225cm-1、235〜245cm-1、320〜330cm-1、370〜390cm-1、390〜410cm-1、490〜510cm-1、510〜535cm-1、585〜600cm-1、605〜620cm-1、630〜650cm-1に11本のピークを示す。この違いにより、結晶構造の空間群が一部P4332を含むか含まないか判別する。
また、本発明の複合酸化物が、結晶構造の空間群がP4332である部分とFd−3mである部分とを含む場合、それらの質量比率は、P4332である部分:Fd−3mである部分=1:99〜99:1であることが好ましく、50:50〜99:1であることがより好ましく、70:30〜99:1であることがより好ましく、80:20〜99:1であることがさらに好ましい。これらの比は、ラマン分析や電子線回折分析を行って判断できる。
なお、本発明においては、
を、「空間群Fd−3m」または単にFd−3mと記す。
上記のような本発明の複合酸化物を正極活物質の少なくとも一部として用いてなるリチウムイオン二次電池は、作動電圧が高くなり、サイクル特性およびレート特性が優れる。これらの作動電圧、サイクル特性およびレート特性について以下に説明する。
作動電圧について説明する。
本発明の複合酸化物を正極活物質として用いてなるリチウムイオン二次電池は、作動電圧が高くなり、5V級となる。具体的には、以下の初期充放電容量試験を行って得られた充放電曲線(容量−電圧曲線)において、充電電圧および放電電圧が共に4.5V以上に現れる。このような場合、5V級の作動電圧を備えることを意味するものとする。
初期充放電容量試験は、次のような方法である。
本発明の複合酸化物を85質量%、アセチレンブラックを7.5質量%、ポリフッ化ビニリデンを7.5質量%の割合で秤量し、ノルマルメチルピロリドンに分散させて合剤を得る。そして、得られた合剤を約0.1mmの厚さとなるようにAl箔上に塗布して、約110℃で真空乾燥した後、14mmφのポンチを用いて打ち抜き、正極を作製する。
得られた正極を試験極とし、この試験極とリチウム金属箔(厚さ0.2μm)とをセパレーター(商品名:セルガード)を介してコイン型電池ケース内に積層して配置した後、体積比1:1のエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に1mol/LのLiPF6を溶解した電解液を注入して試験用コインセルを作成する。
このようにして作成した試験用コインセルについて初期充放電容量を測定する。具体的には、充電終止電圧を4.9Vとして、電流密度0.14mA/cm2(0.2C相当)にて定電流・定電圧充電(電圧が4.9Vになった後は、4.9Vの一定電圧にて充電する)を行い、放電終止電圧を3.5Vとして、電流密度0.14mA/cm2(0.2C相当)にて定電流放電を行った際の正極活物質単位質量あたりの初期充電容量(mAh/g)および初期放電容量(mAh/g)を測定する。なお、充電は、充電開始から10時間が経過した時、または、電流が0.05Cになった時に終了とする。
このような方法によって充放電曲線(容量−電圧曲線)を得る。
また、本発明の複合酸化物を正極活物質として用いてなるリチウムイオン二次電池の初期充電容量は、上記試験法で評価した場合、理論容量の147mAh/gを超える場合がある。この原因としては電解液の分解やセパレーターの分解が考えられる。よって、好ましくは170mAh/g以下、より好ましくは165mAh/g以下、さらに好ましくは160mAh/g以下である。
また、本発明の複合酸化物を正極活物質として用いてなるリチウムイオン二次電池の初期放電容量は、130mAh/g以上となり得る。また、好ましくは133mAh/g以上、より好ましくは135mAh/g以上、さらに好ましくは138mAh/g以上となり得る。
ここで初期充電容量および初期放電容量は、上記の初期充放電容量試験によって求めるものとする。
サイクル特性について説明する。
本発明の複合酸化物を正極活物質として用いてなるリチウムイオン二次電池は、サイクル特性に優れる。具体的には、以下のサイクル特性試験を行って求められたサイクル容量維持率が高く、具体的にはサイクル容量維持率が90%以上となり得る。また、好ましくは91%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上となり得る。
サイクル特性試験は、次のような方法である。
上記の初期充放電容量を測定する場合と同様の方法で作成した試験用コインセルを、室温(約30℃)の恒温槽に設置し、上記の初期充放電容量の測定と同様に、充電電位4.9Vまで、放電電位3.5Vまでの電位規制の条件で0.7mA/cm2(1C相当)の定電流・定電圧充電と定電流放電とのサイクルを100回を行い、容量維持率を次式により求める。
サイクル容量維持率(%)=(100回目の放電容量/1回目の放電容量)×100
レート特性について説明する。
本発明の複合酸化物を正極活物質として用いてなるリチウムイオン二次電池は、レート特性に優れる。具体的には、以下のレート特性試験を行って求められたレート容量維持率が高く、具体的にはレート容量維持率が70%以上となり得る。また、好ましくは73%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上となり得る。
レート特性試験は、次のような方法である。
上記の初期充放電容量の測定は0.14mA/cm2の定電流放電で行ったが、これを7mA/cm2の定電流放電とし、その他については上記の初期充放電容量と同一とした試験を行い放電容量を測定する。そして、次式のように、0.14mA/cm2にて定電流放電試験を行った場合の放電容量に対する、7mA/cm2にて定電流放電試験を行った場合の放電容量を測定し、容量維持率を次式により求める。
レート容量維持率(%)=(7mA/cm2にて定電流放電試験を行った場合の放電容量)/0.14mA/cm2にて定電流放電試験を行った場合の放電容量×100
<本発明の複合酸化物の製造方法>
次に、本発明の複合酸化物の製造方法について説明する。
本発明の複合酸化物の製造方法は特に限定されない。例えば、リチウム源、ニッケル源、マンガン源、元素M1を含む原料および元素M2を含む原料を所定の割合で混合し、高温で焼成することで本発明の複合酸化物を得ることができる。
このように本発明の複合酸化物の製造方法は限定されないが、リチウム源、ニッケル源、マンガン源、M1を含む原料およびM2を含む原料を溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥して前駆体を得る前駆体調整工程と、前記前駆体を600〜1200℃の範囲内の焼成温度において焼成して焼成体を得る焼成工程と、を備えるリチウム複合酸化物の製造方法によって製造することが好ましい。
このような製造方法を、以下では本発明の製造方法ともいう。
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
<前駆体調整工程>
本発明の製造方法における前駆体調整工程について説明する。
前駆体調整工程では、初めに、リチウム源、ニッケル源、マンガン源、M1を含む原料およびM2を含む原料を溶媒に含有させる。
リチウム源としては、リチウム原子を含む無機または有機の化合物(すなわち、リチウム化合物)を用いることができる。例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウムを用いることができる。これらの中でも水酸化リチウムおよび/または炭酸リチウムを用いることが好ましい。有害ガスの生成を抑制できるからである。
また、固体の原料であることが好ましい。
ニッケル源としては、ニッケル原子を含む無機または有機の化合物(すなわち、ニッケル化合物)を用いることができる。例えば、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、炭酸ニッケル水和物、オキシ水酸化ニッケルを用いることができる。これらの中でもニッケル源として、酸化ニッケルおよび水酸化ニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。理由は、工業原料として安価に入手できるからである。
また、固体の原料であることが好ましい。
マンガン源としては、マンガン原子を含む無機または有機の化合物(すなわち、マンガン化合物)を用いることができる。例えば、酸化マンガン、炭酸マンガン、炭酸マンガン水和物、水酸化マンガン、オキシ水酸化マンガンを用いることができる。これらの中でも酸化マンガンを用いることが好ましく、MnO2(電解二酸化マンガン・EMD)および/またはMn34を用いることがより好ましい。工業原料として安価に入手でき、さらに、よりサイクル容量維持率が高いリチウムイオン二次電池が得られる傾向があるからである。
また、固体の原料であることが好ましい。
1を含む原料としては、Co、Fe、CrおよびCuからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を用いることができる。例えば、酸化コバルト、酸化鉄、酸化クロム、酸化銅などを用いることができる。これらの中でもCoを含む化合物を用いることが好ましく、酸化コバルトをより好ましく用いることができる。工業原料として入手でき、結晶構造中のMnとの置換が比較的起こりやすく、よりサイクル容量維持率が高いリチウムイオン二次電池が得られる傾向があるからである。
また、固体の原料であることが好ましい。
2を含む原料としては、B、P、Pb、Sb、Si、Ti、Mg、AlおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を用いることができる。元素M2は、Bおよび/またはVであることが好ましい。
例えばM2がBである場合は、ホウ素を含む原料として、ホウ酸(H3BO3)、三酸化二ホウ酸(B23)を用いることができ、ホウ酸(H3BO3)を用いることが好ましい。工業原料として安価に入手できるからである。M2がBであると、後に600〜1200℃で焼結する際の焼結性が高まり、粒子径が成長し、得られるリチウムイオン二次電池の容量維持率の向上に寄与するものと、本発明者は推定している。
2を含む原料としては、P25、PbO、Sb23、SiO2、TiO2、MgO、Al23およびV25などを用いることができる。
また、固体の原料であることが好ましい。
前駆体調整工程では、初めに、リチウム源、ニッケル源、マンガン源およびM1を含む原料を溶媒に含有させることが好ましい。すなわち、M2を含む原料を用いないことが好ましい。この場合、本発明の製造方法によって下記式(I−2)で表されるリチウム複合酸化物が得られる。
式(I−2):Li(1+x)(Ni、Mn、M1(2-x)(4-a)
前駆体調整工程では、上記のようなリチウム源、ニッケル源、マンガン源、M1を含む原料およびM2を含む原料を、原子数が、Li:(Ni+Mn+M1):M2=(1+x):(2−x−p):pの比率となるように溶媒に含有させる。
ここでxおよびpの範囲は、本発明の複合酸化物の説明において、前述したとおりである。
これらの原料を含有させる溶媒は特に限定されず、例えば従来公知の溶媒、例えば水(純水等)、エタノール、アセトンなどを用いることができるが、水を用いることが好ましい。
また、上記の各原料は、溶媒中の固形分濃度が好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜35質量%、さらに好ましくは15〜25質量%となるように含有させる。溶媒中の原料がより均一に分散しやすいからである。
前駆体調整工程では、リチウム源、ニッケル源、マンガン源、M1を含む原料およびM2を含む原料を前記溶媒中に含有させた状態で粉砕混合する。
粉砕混合の方法は特に限定されないものの、ビーズミル等を用いた湿式微粉砕機を用いた湿式粉砕法が好ましい。
また、この粉砕は、固形分の平均粒子径が0.50μm以下であるスラリーが得られるまで行うことが好ましい。平均粒子径が0.50μm以下となるように粉砕混合すると、スラリー中で固形分が均一な状態となり易い。また、平均粒子径は0.10μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましい。粉砕で粒径を小さくし過ぎると以降の工程でのハンドリングが悪くなるからである。平均粒子径は0.40μm以下であることが好ましく、0.30μm以下であることがより好ましい。
なお、ここでスラリー中の固形分の平均粒子径は、室温大気中で、スラリーにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を添加し、超音波分散および撹拌によって分散させ、このスラリーを30〜60%の透過率となるように調節し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて積算粒度分布(体積基準)を測定し、その粒度分布から求めたメジアン径を意味するものとする。
前駆体調整工程では、上記のようにして得られたスラリーを乾燥して前駆体を得る。ここでスラリーの乾燥はバンド乾燥機、棚型乾燥機などを用いた乾燥方法であってよいが、噴霧乾燥であることが好ましい。噴霧乾燥とは、前記スラリーを噴霧し、霧状とした後または霧状としながら、乾燥することである。所望の条件で噴霧乾燥して、得られる前駆体の粒子径を所望の範囲内に調整することができる。
噴霧乾燥の方法は特に制限されず、例えば、二流体ノズルにスラリーを流入させることによってノズル先端からスラリー成分の液滴を吐出させ、適当な乾燥ガス温度や送風量に調節して飛散した液滴を迅速に乾燥させる方法が挙げられる。このときスラリー流量は好ましくは0.5〜700kg/h、より好ましくは1〜600kg/h、さらに好ましくは3〜550kg/hとする。
また、微粉化エアー圧力は0.05〜0.5MPaとすることが好ましく、0.05〜0.4MPaすることがより好ましく、0.1〜0.4MPaとすることがさらに好ましい。
飛散した液滴を迅速に乾燥させるように、適当な温度や送風等の処理が施されるが、乾燥塔上部から下部に向かいダウンフローで乾燥ガスを導入することが好ましい。
噴霧乾燥はスプレードライヤーを用いて行うことが好ましい。また、スプレードライヤーの乾燥用熱風の入口温度を好ましくは60〜500℃、より好ましくは150〜450℃、さらに好ましくは200〜400℃、出口温度を好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは100〜160℃とする。
このような前駆体調整工程によって、前駆体を得ることができる。
<焼成工程>
次に、本発明の製造方法における焼成工程について説明する。
焼成工程では、上記のような前駆体調整工程によって得られた前駆体を600〜1200℃の範囲内の焼成温度で焼成する。
ここで、焼成方法は酸素含有雰囲気中で行われる方法であれば特に限定されず、例えば従来公知の方法、例えばトンネル炉、マッフル炉、ロータリーキルン等を用いる焼成方法が挙げられる。
焼成温度は650℃以上であることが好ましく、700℃以上であることがより好ましく、750℃以上であることがより好ましく、770℃以上であることがさらに好ましい。
焼成温度は890℃以下であることが好ましく、870℃以下であることがより好ましく、850℃以下であることがさらに好ましい。焼成温度が高すぎると結晶構造中から酸素が離脱し、電池性能が低下する傾向がある。
焼成温度は750〜950℃であることが好ましい。
焼成温度が750〜950℃であって、かつ前記前駆体がM2を含まないことがより好ましい。このような場合、本発明の複合酸化物を用いて得られるリチウムイオン二次電池の作動電圧がより高くなり、サイクル特性およびレート特性もより優れるものとなることを本発明者は見出した。この理由は現段階で明らかではないが、結晶性が高く、かつ、平均一次粒子径が小さくなるためと本発明者は推定している。
なお、このように前記前駆体がM2を含まない場合、本発明の製造方法によって、上記式(I−2)で表されるリチウム複合酸化物が得られる。
上記のような焼成温度で前記前駆体を焼成する時間は0.1〜30hであることが好ましく、0.1〜8hであることがより好ましく、0.5〜7hであることがより好ましく、0.5〜4hであることがより好ましく、1.5〜2.5hであることがさらに好ましい。
<洗浄工程>
次に、洗浄工程について説明する。
本発明の製造方法は、次に説明する洗浄工程をさらに備えることが好ましい。
洗浄工程は、前記焼成体を洗浄した後、100〜750℃の範囲内の加熱温度において加熱して、洗浄された焼成体を得る工程である。本発明の複合酸化物を用いて得られるリチウムイオン二次電池の作動電圧がより高くなり、サイクル特性およびレート特性もより優れるものとなることを本発明者は見出した。
前記焼成体の洗浄は、焼成体を水に浸して行うことが好ましい。また、60℃程度の温水を用いて洗浄することが好ましい。例えば、40〜80℃程度の十分量(例えば前記焼成体の2〜3倍の質量)の温水を容器に貯め、ここへ前記焼成体を添加し、数時間程度撹拌することで、焼成体を洗浄することができる。また、例えば、40〜80℃程度の十分量(例えば焼成体の5〜10倍の質量)の温水を焼成体にかけて洗浄することもできる。
焼成体を洗浄した後は、90〜150℃(好ましくは110〜130℃)程度の雰囲気に1〜10時間(好ましくは3〜6時間)程度保持して乾燥することが好ましい。
このように洗浄し、好ましくはさらに乾燥した後、加熱する。
ここで、加熱する方法は酸素含有雰囲気中で行われる方法であれば特に限定されず、例えば従来公知の方法、例えばトンネル炉、マッフル炉、ロータリーキルン等を用いる加熱方法が挙げられる。
加熱温度は100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。
加熱温度は750℃以下であることが好ましく、550℃以下であることがより好ましく、400℃以下であることがさらに好ましい。
また、このような加熱温度で加熱する時間は0.5〜10hであることが好ましく、1〜5hであることがより好ましく、2〜4であることがさらに好ましい。
このような本発明の製造方法によって、本発明の複合酸化物を得ることができる。
<本発明の正極活物質>
本発明の正極活物質について説明する。
本発明の正極活物質は、本発明の複合酸化物を含み、本発明の複合酸化物を用いた非水系電解質二次電池用正極活物質であることが好ましい。
本発明の正極活物質は、本発明の複合酸化物を80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、実質的に100質量%含む、すなわち本発明の複合酸化物から実質的になることがさらに好ましい。
本発明の正極活物質は、本発明の複合酸化物の他に、LTO(Li4Ti512)、LMO(LiMn24)、LNO(LiNiO2)、NMC(LiNi1/3Mn1/3Co1/32)、NCA(Li[NiAlCo]O2)、後述する固体電解質、その他リチウムを含まない酸化物を含むことができる。また、これらに代表される物質を本発明の複合酸化物の表面に塗布したものを、本発明の正極活物質として用いることもできる。
<本発明の正極およびその製造方法>
本発明の正極は、本発明の正極活物質を含むものである。本発明の正極は、本発明の正極活物質を用いてなるものであれば、その他は、例えば従来公知の正極と同様の態様であってよい。例えば、本発明の正極活物質に必要に応じて導電助剤、結着剤などを添加し混合したものからなる層を集電体上に形成してなるものが挙げられる。具体的には、本発明の正極活物質に導電助剤、結着剤およびN−メチルピロリドンなどの有機溶媒を混練してインク(スラリー)を調製し、このインクを集電体のアルミ箔に塗布し乾燥した後、ローラープレス機にかけることにより得ることができる。ローラープレス機にかけることによって、正極活物質と集電体との接触を良くすると共に正極活物質の密度を高めることができる。また、本発明の正極活物質に導電助剤および結着剤を充分混合したのち、ローラープレスでシート状に成形して正極を得ることができる。
ここで、導電助剤として、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)やアセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などが挙げられる。
また、結着剤として、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンジエンゴム、フッ素ゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などが挙げられる。
また、集電体についても限定されず、例えば従来公知のネット状、シート状、フィルム状のものを用いることができる。
<本発明の二次電池>
本発明の二次電池について説明する。
本発明の二次電池は、正極として本発明の正極を用いること以外は、通常のリチウムイオン二次電池と同様の構成であってよく、円筒型、角型、コイン型、ボタン型などであってよい。すなわち、正極、負極および電解液(非水系電解質等)を主たる電池構成要素とし、これら要素が、例えば電池缶内に封入されている。正極および負極はそれぞれリチウムイオンの担持体として作用し、充電時には、リチウムイオンが負極中に吸蔵され、放電時には負極から離脱する。
負極は特に限定されず、例えば従来公知の負極と同様の態様であってよい。例えば、負極活物質としては、リチウムやリチウム−アルミニウムで代表されるリチウム合金を用いることができ、また、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などのリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出できる炭素系材料を用いることもできる。例えば集電体は、正極の場合と同様のものを用いることができる。
負極は、負極活物質がリチウムやリチウム合金の場合は、そのまま用いるか、あるいは集電体に圧着することによって製造することができる。また、負極活物質がリチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素系材料(グラファイト、カーボンブラックなど)の場合は、必要に応じて正極の場合と同様の結着剤を負極活物質に添加して混合し、溶剤を用いてペースト状にし、得られた負極合剤含有ペーストを銅箔などからなる負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、必要に応じて加圧成形する工程を経ることによって製造することができる。
電解質としては、例えば非水系電解質である有機系電解質、ポリマー電解質、固体電解質などを用いることができる。ここで、有機系電解質とはリチウム塩が非水溶媒に加えられたものであり、ポリマー電解質とは、リチウム塩が高分子化合物に加えられたものである。
ここで、リチウム塩としては、例えば、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li210Cl10、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252が挙げられる。これらの中でもLiBF4(四フッ化ホウ酸リチウム)は、電解質中に存在する水分との反応性がより低いので、安全性により優れ、サイクル特性、レート特性(高率放電特性)および初期特性などの優れたリチウム電池を得易い。
有機系電解質中のリチウム塩の濃度は0.1〜3.0mol/lが好ましく、0.2〜2.0mol/lがより好ましい。非水系電解質のイオン電導率が高くなり、非水系電解質中にリチウム塩が析出し難く、高性能な電池性能を備えるリチウム電池が得られるからである。
有機系電解質の非水溶媒としては、例えば従来公知のものを用いることができ、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネートおよびビニレンカーボネートの混合溶媒を好ましく使用することができる。エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびプロピレンカーボネートは、誘電率が高いことから、イオン伝導を確実に起こすことができ、さらに、非水溶媒にビニレンカーボネートを含有させることにより、充電時において、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびプロピレンカーボネートの分解を確実に抑制可能なビニレンカーボネート由来の皮膜を負極上に形成できるので、充電をより十分に行うことができる。
有機系電解質は、リチウム塩および非水溶媒の他に、さらに他の有機溶媒を含んでもよい。
電解質(非水系電解質)をポリマー電解質とする場合には、可塑剤(非水電解液)でゲル化されたマトリクス高分子化合物を含むが、このマトリクス高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイドやその架橋体などのエーテル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂などを単独、もしくは混合して用いることができる。
これらの中で、酸化還元安定性の観点などから、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂を用いることが好ましい。
ポリマー電解質の作製方法は特に限定されないが、例えば、マトリックスを構成する高分子化合物、リチウム塩および溶媒を混合し、加熱して溶融・溶解する方法が挙げられる。また、混合用有機溶媒に、高分子化合物、リチウム塩、および溶媒を溶解させた後、混合用有機溶媒を蒸発させる方法、重合性モノマー、リチウム塩および溶媒を混合し、紫外線、電子線または分子線などを照射して、重合性モノマーを重合させ、ポリマーを得る方法などを挙げることができる。
ポリマー電解質中の溶媒の割合は10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。このような割合であると、導電率が高く、機械的強度が強く、フィルム化しやすい。
固体電解質としては、例えばリチウムイオンを含む酸化物系急冷ガラス、硫化物ベースのオキシスルフィド系超イオン伝導ガラスなどのガラス系固体電解質、ポリエーテルなどの高分子に、Li塩が溶解・分散した高分子固体電解質などが挙げられる。
また高分子固体電解質は、溶媒成分を含むゲル状であってもよい。
本発明の二次電池は、正極と負極とが直接接触することを防ぐセパレータを有することが好ましい。
セパレータは特に限定されず、例えば従来公知のものを用いることができ、例えば織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが挙げられる。合成樹脂製微多孔膜が好適であるが、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等である。
なお、非水系電解質として有機系電解質またはポリマー電解質を用いる場合、通常セパレータが使用されるが、固体電解質の場合、セパレータを使用せずに固体電解質をセパレータとしてもよい。
本発明の二次電池の製造方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法で製造することができる。例えば、リチウム電池用セパレータを介して本発明の正極と前記負極とを積層する前または積層した後に非水系電解質を注液し、最終的に、外装材で封止することによって製造することができる。外装材としては、例えば、ニッケルメッキした鉄、ステンレススチール、アルミニウム、金属箔を樹脂フィルムで挟み込んだ構成の金属樹脂複合フィルム等が挙げられる。
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
リチウム源としてLiOH・H2O(関東化学社製、LiOH純度:57.8質量%)、ニッケル源としてNiO(関東化学社製、ニッケル純度:77.1質量%、平均粒子径:9.4μm)、マンガン源として電解二酸化マンガン(γ−MnO2、関東化学社製、マンガン純度:60.78質量%、平均粒子径:28.0μm)、ホウ素源としてH3BO3(関東化学社製、純度:99.9質量%)を用意した。そして、それぞれの原料を、Li:Ni:Mn:Bのモル比が1.0000:0.4975:1.4925:0.0100となるように秤量した。
次に、上記の秤量した原料を混合し、ここへ固形分濃度が33.3質量%となるように純水を加えた後、湿式粉砕機(アシザワファインテック社製:スターミルラボスターLMZ−06)を用いて粉砕し、スラリーを得た。ここで、スラリー中の固形分の平均粒子径(メジアン径)が0.40μm以下になるまで粉砕した。粉砕においては600mlのベッセルを用いた。
なお、スラリー中の固形分の平均粒子径(メジアン径)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所:LA−950v2)を用いて求めた。具体的には室温大気中で、スラリーにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を添加し、超音波分散および撹拌によって分散させ、87.5〜88.5%の透過率となるように調節した後、積算粒度分布(体積基準)を測定して求めた。
次に、粉砕後のスラリーに純水を加え、固形分濃度を20質量%に調整した後、ノズル型スプレードライヤー(大川原化工機社製:L−8型スプレードライヤー)を用いて噴霧乾燥を行った。ここで乾燥ガスとして空気を用いた。また、サイクロン差圧が0.7〜0.8kPaとなるよう調整し、乾燥ガスの入口温度は220℃に調整した。スラリー流量は3kg/h、微粒化エアー圧力は0.1MPaとした。
このような噴霧乾燥を行うことで、粒子状の前駆体を得た。
次に、得られた前駆体を850℃で6時間、空気中にて焼成し、さらに700℃で20時間、空気中にて焼成して、焼成体を得た。
得られた焼成体を、複合酸化物[1]とする。
得られた複合酸化物[1]について、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所:LA−950v2)を用いて、平均二次粒子径(メジアン径)を求めた。測定方法は前述の通りである。
測定結果を第1表に示す。
得られた複合酸化物[1]について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて平均一次粒子径を測定した。測定方法は前述の通りである。
測定結果を第1表に示す。
得られた複合酸化物[1]について、Cu−Kα線を用い、Siを内部標準として、粉末X線回折測定を実施した。粉末X線回折測定には、試料水平型多目的X線回折装置(株式会社リガク製「UltimaIV」を使用した。
その結果、複合酸化物[1]はスピネル型であることを確認した。
また、粉末X線回折測定によって求められた格子定数を第1表に示す。
得られた複合酸化物[1]について、全自動BET比表面積測定装置(マウンテック製:Macsorb HM model−1220)を用いてBET比表面積を測定した。測定条件は前述の通りである。
測定結果を第1表に示す。
得られた複合酸化物[1]について、ラマン分光測定を行った。具体的内容は前述の通りである。
この結果、複合酸化物[1]は、空間群がP4332である部分と、Fd−3mである部分との混合物であることがわかった。また、空間群がP4332である部分が概ね90質量%程度と考えられた。
<初期充放電容量の測定>
複合酸化物[1]を85質量%、アセチレンブラックを7.5質量%、ポリフッ化ビニリデンを7.5質量%の割合で秤量し、ノルマルメチルピロリドンに分散させて合剤を得た。そして、得られた合剤を約0.1mmの厚さとなるようにAl箔上に塗布して、約110℃で真空乾燥した後、14mmφのポンチを用いて打ち抜き、正極を作製した。
得られた正極を試験極とし、この試験極とリチウム金属箔(厚さ0.2μm)とをセパレーター(商品名:セルガード)を介してコイン型電池ケース内に積層して配置した後、体積比1:1のエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に1mol/LのLiPF6を溶解した電解液を注入して試験用コインセルを作成した。
このようにして作成した試験用コインセルについて初期充放電容量を測定した。具体的には、充電終止電圧を4.9Vとして、電流密度0.14mA/cm2(0.2C相当)にて定電流・定電圧充電(電圧が4.9Vになった後は、4.9Vの一定電圧にて充電する)を行い、放電終止電圧を3.5Vとして、電流密度0.14mA/cm2(0.2C相当)にて定電流放電を行った際の正極活物質単位質量あたりの初期充電容量(mAh/g)および初期放電容量(mAh/g)を測定する。なお、充電は、充電開始から10時間が経過した時、または、電流が0.05Cになった時に終了とした。
測定結果を第1表に示す。
また、得られた充放電曲線(容量−電圧曲線)を図3に示す。
<4V容量>
上記の充放電容量の測定によって得られた充放電曲線から、3.5〜4.5Vの範囲の放電容量を読み取り、4V容量とした。
測定結果を第1表に示す。
<レート特性>
上記の初期充放電容量の測定は0.14mA/cm2の定電流放電で行ったが、これを7mA/cm2の定電流放電とし、その他については上記の初期充放電容量と同一とした試験を行い放電容量を測定した。そして、次式のように、0.14mA/cm2にて定電流放電試験を行った場合の放電容量に対する、7mA/cm2にて定電流放電試験を行った場合の放電容量を測定し、容量維持率を次式により求めた。
レート容量維持率(%)=(7mA/cm2にて定電流放電試験を行った場合の放電容量)/0.14mA/cm2にて定電流放電試験を行った場合の放電容量×100
測定結果を第1表に示す。
<100サイクル容量維持率の測定>
上記の初期充放電容量を測定する場合と同様の方法で作成した試験用コインセルを、室温(約30℃)の恒温槽に設置し、上記の初期充放電容量の測定と同様に、充電電位4.9Vまで、放電電位3.5Vまでの電位規制の条件で0.7mA/cm2(1C相当)の定電流・定電圧充電と定電流放電のサイクルを100回を行い、容量維持率を次式により求めた。
サイクル容量維持率(%)=(100回目の放電容量/1回目の放電容量)×100
測定結果を第1表に示す。
<実施例2>
実施例1と同様の方法で焼成体を得た。そして、得られた焼成体を純水に加え、60℃に加温して1時間撹拌保持して洗浄した後、濾別した。ここで焼成体と純水との質量比は1:2.5となるようにした。
そして、濾別して得られたウェットケーキを、再度、同様の方法で洗浄する操作を、濾液の電導度が150mS/m以下になるまで繰り返し行った。
その後、ウェットケーキを120℃で0.5時間乾燥し、乾燥体を得た。
次に、得られた乾燥体を400℃で2時間、空気中にて加熱して、洗浄された焼成体を得た。
ここで得られた、洗浄された焼成体を、複合酸化物[2]とする。
そして、得られた複合酸化物[2]について、実施例1において複合酸化物[1]について行った方法と同様の方法で二次粒子径、一次粒子径、格子定数、BET比表面積、空間群、初期充放電容量、4V容量、レート容量維持率およびサイクル容量維持率を測定した。
測定結果を第1表に示す。
また、得られた充放電曲線(容量−電圧曲線)を図4に示す。
なお、粉末X線回折測定によって、複合酸化物[2]がスピネル型であることを確認した。
また、複合酸化物[2]は、空間群がP4332である部分と、Fd−3mである部分との混合物であることがわかった。また、空間群がP4332である部分が概ね90質量%程度と考えられた。
<実施例3>
実施例1では、リチウム源(LiOH・H2O)、ニッケル源(NiO)、マンガン源(電解二酸化マンガン)、ホウ素源(H3BO3)を用いたが、実施例3ではホウ素源を用いず、リチウム源、ニッケル源およびマンガン源を、Li:Ni:Mnのモル比が1.0:0.5:1.5となるように秤量した。
そして、これ以降の操作は全て実施例1と同様にして、同様の測定を行った。
ここで得られた焼成体を、複合酸化物[3]とする。
そして、得られた複合酸化物[3]について、実施例1において複合酸化物[1]について行った方法と同様の方法で二次粒子径、一次粒子径、格子定数、BET比表面積、空間群、初期充放電容量、4V容量、レート容量維持率およびサイクル容量維持率を測定した。
測定結果を第1表に示す。
また、得られた充放電曲線(容量−電圧曲線)を図5に示す。
なお、粉末X線回折測定によって、複合酸化物[3]がスピネル型であることを確認した。
また、複合酸化物[3]は、空間群がP4332である部分と、Fd−3mである部分との混合物であることがわかった。また、空間群がP4332である部分が概ね90質量%程度と考えられた。
<実施例4>
実施例2では、リチウム源(LiOH・H2O)、ニッケル源(NiO)、マンガン源(電解二酸化マンガン)、ホウ素源(H3BO3)を用いたが、実施例4ではホウ素源を用いず、リチウム源、ニッケル源およびマンガン源を、Li:Ni:Mnのモル比が1.0:0.5:1.5となるように秤量した。
そして、これ以降の操作は全て実施例2と同様にして、同様の測定を行った。
ここで得られた、洗浄された焼成体を、複合酸化物[4]とする。
そして、得られた複合酸化物[4]について、実施例1において複合酸化物[1]について行った方法と同様の方法で二次粒子径、一次粒子径、格子定数、BET比表面積、空間群、初期充放電容量、4V容量、レート容量維持率およびサイクル容量維持率を測定した。
測定結果を第1表に示す。
また、得られた充放電曲線(容量−電圧曲線)を図6に示す。
なお、粉末X線回折測定によって、複合酸化物[4]がスピネル型であることを確認した。
また、複合酸化物[4]は、空間群がP4332である部分と、Fd−3mである部分との混合物であることがわかった。また、空間群がP4332である部分が概ね90質量%程度と考えられた。
<比較例1>
ニッケル源としてNiSO4・6H2O(関東化学社製、ニッケル純度:22.3質量%)を用意し、これを純水中に溶解させて、NiSO4・6H2Oが20質量%溶解した硫酸ニッケル水溶液を調製した。
次に、マンガン源としてMnSO4・5H2O(関東化学社製、マンガン純度:22.8質量%)を用意し、これを純水中に溶解させて、MnSO4・5H2Oが20質量%溶解した硫酸マンガン水溶液を調製した。
次に、硫酸アンモニウム(NH42SO4(関東化学社製、試薬純度99.9%)を用意し、これを純水に40質量%になるよう溶解させて、硫酸アンモニウム水溶液を調製した。
次に、上記のように調整した硫酸ニッケル水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケルとマンガンとのモル比が1:3となるように混合した後、得られた溶液に対して10体積%となるように硫酸アンモニウム水溶液を加え、混合溶液を得た。
次に、得られた混合溶液と同じ体積の純水を反応槽に入れ50℃に保持しながら、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHが11.5〜12.0の間になるように調整したアルカリ溶液を得た。そして、得られたアルカリ溶液へ混合溶液を10cm3/minの流量で添加した。ここで、混合溶液をアルカリ溶液へ添加しているときは、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を適宜加えることで、pHを11.0〜11.5の間に調整した。
混合溶液の全量をアルカリ溶液に添加した後は、50℃に保持した状態で1時間放置することで熟成させて、ニッケルマンガン複合物を含んだ溶液(以下「複合溶液[1]とする」を得た。
次に、複合溶液[1]を濾別し、ウェットケーキを得た。そして、得られたウェットケーキを純水に加え、50℃に加温して1時間撹拌保持して洗浄した後、濾別した。
そして、濾別して得られたウェットケーキを、再度、同様の方法で洗浄する操作を、濾液の電導度が100mS/m以下になるまで繰り返し行った。
次に、洗浄後のウェットケーキへ、固形分濃度が15wt%になるよう純水を加えてスラリー状とし、そこへリチウム源としてLiOH・H2O(関東化学社製、LiOH純度:57.8質量%)を添加して、リチウムニッケルマンガン混合スラリーを得た。ここで、リチウム源は、リチウムのモル量と、ニッケルとマンガンとの合計モル量との比が1:2となるよう添加した。
次に、得られたリチウムニッケルマンガン混合スラリーを、実施例1の場合と同様にして噴霧乾燥し、得られた前駆体を焼成して焼成体を得た。
得られた焼成体を、複合酸化物[11]とする。
そして、得られた複合酸化物[11]について、実施例1において複合酸化物[1]について行った方法と同様の方法で二次粒子径、一次粒子径、格子定数、BET比表面積、空間群、初期充放電容量、4V容量、レート容量維持率およびサイクル容量維持率を測定した。
測定結果を第1表に示す。
なお、粉末X線回折測定によって、複合酸化物[11]がスピネル型であることを確認した。
また、複合酸化物[11]は、空間群がFd−3mであることがわかった。

Claims (11)

  1. NiおよびMnを含み下記式(I)で表される組成を備え、平均二次粒子径が3〜29μmであり、結晶構造は、スピネル型であって、かつ、少なくとも一部の空間群がP4332である、リチウム複合酸化物。
    式(I):Li(1+x)(Ni、Mn、M1(2-x-p)2 p(4-a)
    式(I)において、M1はCo、Fe、CrおよびCuからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、M2はB、P、Pb、Sb、Si、Ti、Mg、AlおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、0≦x≦0.2、0≦p≦1.0、0≦a≦1.0である。
  2. 上記式(I)が下記式(I−1)で表される、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
    式(I−1):Li(1+x)Ni0.5-0.25x-0.25p(Mn1.5-y1 -0.75x-0.75p2 p(4-a)
    式(I−1)において0≦y<0.5である。
  3. 平均一次粒子径が0.05〜10μmである、請求項1または2に記載のリチウム複合酸化物。
  4. リチウム源、ニッケル源、マンガン源、M1を含む原料およびM2を含む原料を溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥して前駆体を得る前駆体調整工程と、
    前記前駆体を600〜1200℃の範囲内の焼成温度において焼成して焼成体を得る焼成工程と、
    を備え、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム複合酸化物が得られる、リチウム複合酸化物の製造方法。
  5. 前記焼成工程における焼成温度が750〜950℃である、請求項4に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
  6. 前記前駆体調整工程が、リチウム源、ニッケル源、マンガン源およびM1を含む原料を溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥して前記前駆体を得る工程であり、
    下記式(I−2)で表されるリチウム複合酸化物が得られる、請求項4または5に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
    式(I−2):Li(1+x)(Ni、Mn、M1(2-x)(4-a)
  7. 前記焼成体を洗浄した後、100〜750℃の範囲内の加熱温度において加熱して、洗浄された焼成体を得る洗浄工程をさらに備える、請求項4〜6のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
  8. 請求項4〜7のいずれかに記載の製造方法によって得られるリチウム複合酸化物。
  9. 請求項1、2、3または8に記載のリチウム複合酸化物を含む正極活物質。
  10. 請求項9に記載の正極活物質を含むリチウムイオン二次電池用正極。
  11. 請求項10に記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解液とを有し、5V級の作動電圧を備える、リチウムイオン二次電池。
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