JP2014106144A - ホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ホウ酸含有放射性廃液を高減容で安定なセメント固化体とすることができ、運転安定性に優れたホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法を提供する。
【解決手段】ホウ酸を含有する放射性の廃液を固化処理する方法であって、前記廃液にアルカリ金属化合物を添加してアルカリ金属/ホウ素のモル比を0.2〜0.3に調整する第1工程と、前記廃液を乾燥して乾燥粉体とする第2工程と、前記乾燥粉体を混練水と一次混練してスラリーとする第3工程と、前記スラリーにアルカリ金属化合物を加えてアルカリ金属/ホウ素のモル比を0.5〜0.7に調整する第4工程と、前記スラリーに水硬性無機固化材を添加して二次混練し、固化する第5工程と、を具備している。
【選択図】図1
【解決手段】ホウ酸を含有する放射性の廃液を固化処理する方法であって、前記廃液にアルカリ金属化合物を添加してアルカリ金属/ホウ素のモル比を0.2〜0.3に調整する第1工程と、前記廃液を乾燥して乾燥粉体とする第2工程と、前記乾燥粉体を混練水と一次混練してスラリーとする第3工程と、前記スラリーにアルカリ金属化合物を加えてアルカリ金属/ホウ素のモル比を0.5〜0.7に調整する第4工程と、前記スラリーに水硬性無機固化材を添加して二次混練し、固化する第5工程と、を具備している。
【選択図】図1
Description
本発明は、ホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法に関する。
一般に、加圧水型原子力発電所等から発生するホウ酸を主成分とする放射性廃液の固化処理においては、水酸化ナトリウムによる中和処理後、セメントやアスファルトにより固化する方法が採用されている。しかし、アスファルトは、加熱時の火災の危険性があることや、放射性核種の化学的吸着性が劣ることから、新規のプラントではセメントによる固化が主流となっている。
但し、セメント固化ではホウ酸がセメントの凝結反応を妨害する為に、大幅な硬化遅延や強度の低下が生じる。この為、減容性を高めながらもホウ酸廃液をセメント固化処理する観点から、水酸化カルシウム等を前処理剤として添加して固化する等、種々の提案がなされている。
例えば、ホウ酸含有廃液(ホウ酸ナトリウム液)を90℃以上で加熱濃縮し、60℃以下の温度に冷却し、ホウ酸ナトリウムを析出させた後、高炉セメントを添加して混練し、混練物をドラム缶に排出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、ホウ酸或いはホウ酸塩溶液をpH7〜10に調整し、二価もしくは二価以上の金属酸化物、水酸化物、塩類やセメント、スラグ等の粉体と混合してスラリー化し、このスラリーの水分を40%以下として、硬化させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)
また、ホウ酸廃液に水酸化カルシウムを添加して乾燥粉体化した後、圧縮固化、樹脂による固化、セメント固化等を行う方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
また、ホウ酸含有放射性廃液にアルカリ金属元素化合物を添加調整する第1の工程と、この後に温度を85℃より高い所定温度に昇温し、アルカリ土類金属化合物を添加して撹拌する第2の工程からなるホウ酸の難溶化処理をし、その後に乾燥処理して乾燥粉体をセメント固化する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
また、ホウ酸含有放射性廃液を乾燥粉体化した後にセメント固化する方法として、難溶化等の前処理をせずにホウ酸含有放射性廃液を乾燥し、セメントの硬化促進材としてアルミン酸ナトリウムを固化材に添加するとともに、助材として水酸化リチウムを固化材に添加してセメント固化する方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
従来のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法のうち、ホウ酸廃液を過飽和にまで濃縮した液にセメントやスラグ等の固化材を添加して混合すると、ホウ酸ナトリウムが水を吸収して水和物を生成し、極短時間に流動性を喪失して凝結を起こす。この事は、ホウ酸ナトリウム廃液を乾燥粉体として、セメント固化する場合も同様である。さらに、廃液成分のホウ素がセメントのカルシウム分と化合してしまうため、固化体の余剰水、ならびに固化体を水浸漬した液相が中性であることも、最終処分を考慮すると問題である。
また、ホウ酸ナトリウム廃液を乾燥しセメント固化するに際して、硬化促進材としてアルミン酸ナトリウム、助材として水酸化リチウムを用いる場合、これらの添加量が固化材中35質量%程度と多くなるという課題がある。さらに、これらの硬化促進材等が高価であるため、コストが増大するという課題もある。
また、ホウ酸塩による硬化遅延やホウ酸ナトリウムの水和物化を回避するため、ホウ酸含有廃液に水酸化カルシウム等を添加して難溶化処理した上で、乾燥等の減容及び固化する方法では、ホウ酸塩を安定化してから処理するため有用であるが、難溶化した廃液成分が配管内に沈降して閉塞、あるいは乾燥機等の内部に固着した廃液成分が洗浄し難い等の不都合がある。
上述したように、従来のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法においては、高減容が困難であったり、システムの安定運転が困難である等の課題がある。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ホウ酸含有放射性廃液を、高減容で安定したセメント固化体とすることのできるホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法を提供することを目的とする。
本発明のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法の一態様は、ホウ酸を含有する放射性の廃液を固化処理する方法であって、前記廃液にアルカリ金属化合物を添加してアルカリ金属/ホウ素のモル比を0.2〜0.3に調整する第1工程と、前記廃液を乾燥して乾燥粉体とする第2工程と、前記乾燥粉体を混練水と一次混練してスラリーとする第3工程と、前記スラリーにアルカリ金属化合物を加えてアルカリ金属/ホウ素のモル比を0.5〜0.7に調整する第4工程と、前記スラリーに水硬性無機固化材を添加して二次混練し、固化する第5工程と、を具備したことを特徴とする。
本発明によれば、ホウ酸含有放射性廃液を、安定的に、高減容で安定したセメント固化体とすることができる。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法の工程を示すフロー図である。以下、図1を参照して本発明の一実施形態について説明する。
(第1工程(図1に示すステップ101))
本実施形態において固化処理の対象とする放射性廃棄物は、ホウ酸を主成分とする放射性の廃液(ホウ酸含有放射性廃液)である。本実施形態の第1工程では、このホウ酸含有放射性廃液1のホウ素に対して、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)/ホウ素モル比が0.2〜0.3となるようにアルカリ金属化合物2を投入して、アルカリ金属/ホウ素モル比調整11を行う。
本実施形態において固化処理の対象とする放射性廃棄物は、ホウ酸を主成分とする放射性の廃液(ホウ酸含有放射性廃液)である。本実施形態の第1工程では、このホウ酸含有放射性廃液1のホウ素に対して、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)/ホウ素モル比が0.2〜0.3となるようにアルカリ金属化合物2を投入して、アルカリ金属/ホウ素モル比調整11を行う。
この第1工程は、後述する第2工程における乾燥処理を考慮したもので、ホウ酸のアルカリ金属化合物では、このアルカリ金属/ホウ素モル比の溶解度が最も高いため、乾燥機等の洗浄性を考慮して設定したものである。なお、アルカリ金属化合物2としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム若しくはこれらの混合物等を使用することができ、いずれを使用しても、同様の効果が得られる。
(第2工程(図1に示すステップ102))
次に第2工程を実施する。この第2工程では、ホウ酸含有放射性廃液1を高減容で、多量に固化できるようにするため、第1工程でアルカリ金属/ホウ素モル比を調整した廃液に対して乾燥処理12を実施し、乾燥粉体3として減容する。なお、この乾燥処理12には、遠心薄膜乾燥機を用いることが好ましい。遠心薄膜乾燥機は、熱効率が高いことから装置をコンパクト化できる、乾燥処理時の気相部への粉体移行量が少ない等の特徴を有する。
次に第2工程を実施する。この第2工程では、ホウ酸含有放射性廃液1を高減容で、多量に固化できるようにするため、第1工程でアルカリ金属/ホウ素モル比を調整した廃液に対して乾燥処理12を実施し、乾燥粉体3として減容する。なお、この乾燥処理12には、遠心薄膜乾燥機を用いることが好ましい。遠心薄膜乾燥機は、熱効率が高いことから装置をコンパクト化できる、乾燥処理時の気相部への粉体移行量が少ない等の特徴を有する。
(第3工程(図1に示すステップ103))
次に第3工程を実施する。通常のセメント固化手順では、セメントと混練水を練り混ぜたスラリー(セメントペースト)に乾燥粉体等の廃棄物を投入し、混練するのが一般的である。しかし、本実施形態では、第2工程で得た乾燥粉体3を水硬性無機化合物で固化するに際して、先ずは、混練機で乾燥粉体3と混練水4と混練する一次混練13を行う。
次に第3工程を実施する。通常のセメント固化手順では、セメントと混練水を練り混ぜたスラリー(セメントペースト)に乾燥粉体等の廃棄物を投入し、混練するのが一般的である。しかし、本実施形態では、第2工程で得た乾燥粉体3を水硬性無機化合物で固化するに際して、先ずは、混練機で乾燥粉体3と混練水4と混練する一次混練13を行う。
乾燥粉体3の成分は、例えば、ホウ酸ナトリウム等であるが、通常の練り混ぜ手順、すなわちセメントペーストに乾燥粉体3を投入すると、ホウ酸ナトリウム等が水を吸収して含水塩となり、これによってセメント混練物の粘性が極端に高まって混練不良、若しくは疑凝結を生じるという問題が生じる。本実施形態では、乾燥粉体3と混練水4とを先に混練することで、この間に予め含水塩を生成させておく。この生成時間を考慮して、この工程では乾燥粉体3と混練水4を10分以上混練することが好ましい。
(第4工程(図1に示すステップ104))
次に第4工程を実施する。ホウ酸含有放射性廃液1の主成分であるホウ酸は、セメントの硬化を大幅に遅延させる作用を有する。このため、第4工程では、練り混ぜた乾燥粉体3と混練水4のスラリーに、アルカリ金属化合物5を再度投入して、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)/ホウ素モル比が0.5〜0.7となるように、アルカリ金属/ホウ素モル比調整14を行う。
次に第4工程を実施する。ホウ酸含有放射性廃液1の主成分であるホウ酸は、セメントの硬化を大幅に遅延させる作用を有する。このため、第4工程では、練り混ぜた乾燥粉体3と混練水4のスラリーに、アルカリ金属化合物5を再度投入して、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)/ホウ素モル比が0.5〜0.7となるように、アルカリ金属/ホウ素モル比調整14を行う。
上記のようにアルカリ金属/ホウ素モル比調整14を行うのは、後述する第5工程におけるセメント固化を考慮したもので、ホウ酸のアルカリ金属化合物では、このアルカリ金属/ホウ素モル比の溶解度が低いためである。これによって、セメント固化する際に乾燥粉体からのホウ酸化合物の溶出を抑えられる。
(第5工程(図1に示すステップ105))
次に第5工程を実施する。すなわち、上記第4工程までの処理を施した後、ここで水硬性無機固化材6を加えて、再度混練する二次混練15を行う。この二次混練15によって得られる混練物は、ドラム缶等の固化容器に収納することで、良好な固化体7とすることができる。
次に第5工程を実施する。すなわち、上記第4工程までの処理を施した後、ここで水硬性無機固化材6を加えて、再度混練する二次混練15を行う。この二次混練15によって得られる混練物は、ドラム缶等の固化容器に収納することで、良好な固化体7とすることができる。
水硬性無機固化材6としては、例えば、ポルトランドセメントを用いることが好ましい。これは以下のような理由による。すなわち、ホウ酸のアルカリ金属化合物をセメント固化する場合、セメント中のCaがホウ酸と結合することでセメント固化に寄与するCa分が少なくなる傾向にある。このため、固化材中のCa分が多いポルトランドセメントを好適に用いることができる。
なお、我が国の放射性廃棄物処分場の概念からは、固化体浸出液のpHがアルカリであることが望ましく、pH12以上であることがさらに望ましい。このため、図2に示す実施形態のように、必要に応じて、第5工程では、アルカリ性骨材8を併せて混練する。
アルカリ性骨材8としては、例えば、セメント硬化体の破砕片、粒状の消石灰等を用いることができる。粒径は通常の細骨材と同等の2.5mm以下とすることが望ましい。このような粒径のアルカリ性骨材8を用いることによって、混練物の流動性を高めることで廃棄物をより多く投入できる等のメリットがある。また、水硬性無機固化材6/アルカリ性骨材8の比率(重量比)は、1乃至1/2程度とすることが好ましい。
この場合、当該混練物の流動性維持時間が1時間程度得られることが、混練や洗浄等を裕度もって操作する観点から望ましい。このため、必要に応じて、遅延型の高性能減水剤9を用いることができる。なお、図2に示す実施形態では、第5工程における上記した点のみが図1に示す実施形態と相違している。
(実施例1)
以下、図1に示した工程に基づき、ホウ酸廃液の固化試験を実施した結果について説明する。先ず、60℃程度に加温したホウ酸12質量パーセントの水溶液に水酸化ナトリウムを投入して、Na/Bモル比を0.25に調整し、ホウ酸ナトリウムの水溶液を得た(図1に示す第1工程)。
以下、図1に示した工程に基づき、ホウ酸廃液の固化試験を実施した結果について説明する。先ず、60℃程度に加温したホウ酸12質量パーセントの水溶液に水酸化ナトリウムを投入して、Na/Bモル比を0.25に調整し、ホウ酸ナトリウムの水溶液を得た(図1に示す第1工程)。
この第1工程で作製したホウ酸ナトリウム水溶液を模擬廃液として、加熱温度160℃程度に設定した遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥粉体を得た(図1に示す第2工程)。なお、乾燥処理方法は、遠心薄膜乾燥機を用いた方法に限定されるものでは無いが、熱効率や粒径の安定性等の観点から遠心薄膜乾燥機を用いることが好ましい。
次に、1Lポリカップに、混練水393g、続いて第2工程で作製した乾燥粉体315gを投入して卓上攪拌機で60分攪拌して一次混練を行なった(図1に示す第3工程)。これは、乾燥粉体の成分であるホウ酸ナトリウムの水和を考慮したものであり、水和が安定しない状態で水硬性無機固化材を投入すると、混練に必要な水分が不足して粘度上昇し、混練不良に陥る。これを抑制するため、実施例1では60分以上攪拌した。
次に、一次混練したスラリーに水酸化ナトリウムを加えて攪拌、溶解させ、Na/Bモル比を0.5〜0.7とするアルカリ金属/ホウ素モル比調整を行なった(図1に示す第4工程)。このモル比調整により、ホウ酸ナトリウムの溶解度を落とし、ホウ酸によるセメントの凝結遅延を抑制することが可能となる。
この後、普通ポルトランドセメント750gを添加し、10分程度攪拌して二次混練を行った(図1に示す第5工程)。この混練物について物性を測定し、この後、50mmφ×100mmHの型枠に注ぎ、固化体とした。
混練物の特性は、粘度が9dPa・s(判定値50dPa・s以下)で良好な流動特性であった。固化体は、24時間後にはブリージング率0vol%(判定値0vol%)、材齢28日の一軸圧縮強度が12.1MPa(判定値10MPa以上)であり、良好な固化特性も併せて得られた。
(実施例2、実施例3)
実施例2、実施例3では、実施例1の第1工程におけるNa/Bモル比のみを変動させ、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。すなわちまず、60℃程度に加温したホウ酸12質量%の水溶液に水酸化ナトリウムを投入して、Na/Bモル比を0.2(実施例2)及び0.3(実施例3)に調整し、ホウ酸ナトリウムの水溶液を得た(図1に示す第1工程)。
実施例2、実施例3では、実施例1の第1工程におけるNa/Bモル比のみを変動させ、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。すなわちまず、60℃程度に加温したホウ酸12質量%の水溶液に水酸化ナトリウムを投入して、Na/Bモル比を0.2(実施例2)及び0.3(実施例3)に調整し、ホウ酸ナトリウムの水溶液を得た(図1に示す第1工程)。
この第1工程で作製した各Na/Bモル比のホウ酸ナトリウム水溶液を模擬廃液として、実施例1と同様に遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥処理を行った(図1に示す第2工程)。この結果、実施例2及び実施例3のいずれのNa/Bモル比の廃液においても粉体処理性、乾燥器の洗浄性に問題は無く、良好な乾燥粉体が得られた。
次に、実施例1と同様の条件で、各Na/B比(0.2(実施例2)及び0.3(実施例3))の乾燥粉体と混練水を60分間一次混練した(図1に示す第3工程)。
次に、一次混練したスラリーに水酸化ナトリウムを加えて攪拌、溶解させ、Na/Bモル比を0.6に調整した(図1に示す第4工程)。
この後、実施例1と同様に普通ポルトランドセメント750gを添加して10分間二次混練を行った(図1に示す第5工程)。この結果、混練物の粘度は、実施例2が15dPa・s、実施例3が7dPa・s(判定値50dPa・s以下)であった。また、実施例2及び実施例3における固化体は、24時間後にはブリージング率0vol%(判定値0vol%)、材齢28日の一軸圧縮強度が、実施例2では11.5MPa、実施例3では13MPa(判定値10MPa以上)であり、いずれも良好な特性が得られた。
(比較例1、比較例2)
比較例1、比較例2では、実施例1の第1工程におけるNa/Bモル比のみを変動させ、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。すなわちまず、60℃程度に加温したホウ酸12質量%の水溶液に水酸化ナトリウムを投入して、Na/Bモル比を0.15(比較例1)及び0.35(比較例2)に調整して、ホウ酸ナトリウムの水溶液を得た(図1に示す第1工程)。
比較例1、比較例2では、実施例1の第1工程におけるNa/Bモル比のみを変動させ、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。すなわちまず、60℃程度に加温したホウ酸12質量%の水溶液に水酸化ナトリウムを投入して、Na/Bモル比を0.15(比較例1)及び0.35(比較例2)に調整して、ホウ酸ナトリウムの水溶液を得た(図1に示す第1工程)。
次に、この第1工程で作製した各Na/Bモル比のホウ酸ナトリウム水溶液を模擬廃液として、実施例1と同様に遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥処理を行った(図1に示す第2工程)。この乾燥処理の結果、得られた乾燥粉体中に多くの塊が混入していることが確認された。また、洗浄後の遠心薄膜乾燥機の内部には多くの付着物が見られ、洗浄性も不良であった。このため、比較例1、比較例2は、第2工程である乾燥処理工程に対して、不適であると判断した。
(実施例4、実施例5)
実施例4、実施例5では、実施例1の第3工程における一次混練時間のみを変動させ、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。第2工程までは、実施例1と同条件で廃液のNa/Bモル比を0.25に調整し、加熱温度160℃程度に設定した遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥粉体を得た。
実施例4、実施例5では、実施例1の第3工程における一次混練時間のみを変動させ、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。第2工程までは、実施例1と同条件で廃液のNa/Bモル比を0.25に調整し、加熱温度160℃程度に設定した遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥粉体を得た。
次に、第3工程において乾燥粉体と混練水を一次混練する際に、実施例4では、1次混練時間を10分とし、実施例5では、1次混練時間を30分とした。その後の第4工程及び第5工程では、実施例1と同一の条件で処理を行い、第5工程後の測定項目も第1実施例と同様とした。
この結果、混練物の粘度は、実施例4が35dPa・s、実施例5が20dPa・s(判定値50dPa・s以下)であった。また、固化体は、実施例4、実施例5とも、24時間後にはブリージング率0vol%(判定値0vol%)、材齢28日の一軸圧縮強度が実施例4では11.9MPa、実施例5では11.8MPa(判定値10MPa以上)であり、いずれも良好な特性が得られた。
(比較例3)
比較例3では、実施例1の第3工程における一次混練時間のみを変動させて、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。第2工程までは、実施例1と同条件で廃液のNa/Bモル比を0.25に調整し、加熱温度160℃程度に設定した遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥粉体を得た。
比較例3では、実施例1の第3工程における一次混練時間のみを変動させて、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。第2工程までは、実施例1と同条件で廃液のNa/Bモル比を0.25に調整し、加熱温度160℃程度に設定した遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥粉体を得た。
次に、第3工程において乾燥粉体と混練水を一次混練する際に、比較例3では、1次混練時間を5分とした。次に、実施例1と同様に第4工程を行い、引き続き第5工程を行ったところ、第5工程の二次混練時にセメントを投入した時点で混練物粘度が上昇し、全体の混練が困難な粘度100dPa・s(判定値50dPa・s以下)となった。また、固化体は、24時間後にはブリージング率0vol%(判定値0vol%)となったが、二次混練の不良によって材齢28日の一軸圧縮強度が約4MPaで判定値(10MPa以上)を満足できなかった。このため、一次混練時間が5分である比較例3は不適であると判断した。
(実施例6、実施例7)
実施例6、実施例7では、実施例1の第4工程におけるNa/Bモル比の二次調整条件のみを変動させ、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。第3工程までは、実施例1と同条件で、廃液のNa/Bモル比を0.25に調整し、加熱温度160℃程度に設定した遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥粉体を得、この粉体を、第3工程において10分間一次混練してスラリーを得た。
実施例6、実施例7では、実施例1の第4工程におけるNa/Bモル比の二次調整条件のみを変動させ、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。第3工程までは、実施例1と同条件で、廃液のNa/Bモル比を0.25に調整し、加熱温度160℃程度に設定した遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥粉体を得、この粉体を、第3工程において10分間一次混練してスラリーを得た。
次に、第4工程において、実施例6では、Na/Bモル比を0.5とし、実施例7では、0.7に各々調整した。その後、第5工程の二次混練を、実施例1と同一の条件で行った。この結果得られた混練物の粘度は、実施例6では10dPa・s、実施例7では11dPa・s(判定値50dPa・s以下)となった。また、固化体は、実施例6及び実施例7とも、24時間後にはブリージング率0vol%(判定値0vol%)、材齢28日の一軸圧縮強度が実施例6では11.5MPa、実施例7では12MPa(判定値10MPa以上)であり、いずれも良好な特性が得られた。
(比較例4、比較例5)
比較例4、比較例5では、実施例1の第4工程におけるNa/Bモル比の二次調整条件のみを変動させ、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。第3工程までは、実施例1と同条件で、廃液のNa/Bモル比を0.25に調整し、加熱温度160℃程度に設定した遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥粉体を得、この粉体を、第3工程において10分間一次混練してスラリーを得た。
比較例4、比較例5では、実施例1の第4工程におけるNa/Bモル比の二次調整条件のみを変動させ、その他の条件は実施例1と同様として固化処理を行った。第3工程までは、実施例1と同条件で、廃液のNa/Bモル比を0.25に調整し、加熱温度160℃程度に設定した遠心薄膜乾燥機に定量供給して、乾燥粉体を得、この粉体を、第3工程において10分間一次混練してスラリーを得た。
次に、第4工程において、比較例4では、Na/Bモル比を0.4とし、比較例5では、0.8に各々調整した。その後、第5工程の二次混練を、実施例1と同一の条件で行った。この結果、二次混練時にセメントを投入した時点で混練物の粘度が上昇し、全体の混練が困難な粘度100dPa・s(判定値50dPa・s以下)となった。また、固化体は24時間後にはブリージング率0vol%(判定値0vol%)となったが、二次混練の不良によって材齢28日の一軸圧縮強度が約4MPaで判定値(10MPa以上)を満足できなかった。このため、比較例4、比較例5におけるNa/Bモル比の二次調整条件は不適であると判断した。
表1、表2に示す結果から、第1工程におけるアルカリ金属/ホウ素モル比は、0.2〜0.3とすることが好ましいことが分かる。また、第3工程における一次混練時間は、10分以上とすることが好ましいことが分かる。さらに、第4工程におけるアルカリ金属/ホウ素モル比は、0.5〜0.7とすることが好ましいことが分かる。
なお、第5工程で添加する水硬性無機固化材として、ポルトランドセメントに換えて高炉セメントを用いた以外は実施例1と同じ条件で固化処理を行ったところ、二次混練の混練物の粘度は、11dPa・s(判定値50dPa・s以下)となった。また、固化体は、24時間後にはブリージング率0vol%(判定値0vol%)であった。しかし、材齢28日の一軸圧縮強度が約2MPa(判定値10MPa以上)であった。したがって、使用する水硬性無機固化材として高炉セメントを用いることは好ましくなく、ポルトランドセメント等を用いることが好ましい。
実施例1で作製した固化体について、材齢28日後に一部を採取して、固液比10として7日間浸漬後に上澄み液のpHを測定したところ、8.5程度であった。固化体の浸出液pHは、我が国においては処分後の長期安定性の観点からアルカリ性であることが望ましく、pH12以上であることがさらに望ましい。
そこで、図2の実施形態における第5工程105に示すように、二次混練を行う際に、水硬性無機固化材の一部を、アルカリ性骨材8(セメント硬化物の破砕片及び粒状消石灰)に置き換えて、実施例1と同様の条件で試験を行った。この際、水硬性無機固化材6/アルカリ性骨材8の比率(重量比)は1/2として、アルカリ性骨材8の粒径は2.5mm以下とした。
この結果、混練物の粘度は10〜12dPa・s(判定値50dPa・s以下)、固化体は24時間後にはブリージング率0vol%(判定値0vol%)、材齢28日の一軸圧縮強度が約11MPa(判定値10MPa以上)であり、いずれも良好な特性が得られた。更に、材齢28日後の固化体を一部採取して固液比10で水に7日間浸漬して上澄み液のpHを測定したところ、12.5であった。
上記のように、セメント硬化物の破砕片や粒状消石灰等からなるアルカリ性骨材を用いてもよい。なお、セメント硬化物の破砕片や粒状消石灰等の粒径が小さすぎると混練物の流動性が低下する場合がある。このような場合、混練水量を増やすと固化体強度が低下するため、遅延型の高性能減水剤9を微量添加するのが望ましい。この遅延型の高性能減水剤9としては、例えばリグニン系、オキシカルボン酸系、ナフタリン系、メラミン系の遅延型を使用することができる。特に、遅延型の高性能減水剤に属するメラミン系のものとしては、例えば、高縮合トリアジン系化合物/または変性メチロールメラミン縮合物と水溶性特殊高分子化合物の配合物を主成分とするものがある。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
101……第1工程、102……第2工程、103……第3工程、104……第4工程、105……第5工程。
Claims (10)
- ホウ酸を含有する放射性の廃液を固化処理する方法であって、
前記廃液にアルカリ金属化合物を添加してアルカリ金属/ホウ素のモル比を0.2〜0.3に調整する第1工程と、
前記廃液を乾燥して乾燥粉体とする第2工程と、
前記乾燥粉体を混練水と一次混練してスラリーとする第3工程と、
前記スラリーにアルカリ金属化合物を加えてアルカリ金属/ホウ素のモル比を0.5〜0.7に調整する第4工程と、
前記スラリーに水硬性無機固化材を添加して二次混練し、固化する第5工程と、
を具備したことを特徴とするホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法。 - 請求項1記載のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法であって、
前記アルカリ金属化合物が、ナトリウムの化合物であることを特徴とするホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法。 - 請求項1又は2記載のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法であって、
前記アルカリ金属化合物が、水酸化物であることを特徴とするホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法。 - 請求項1〜3いずれか1項記載のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法であって、
前記第2工程を、遠心薄膜乾燥機で行うことを特徴とするホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法。 - 請求項1〜4いずれか1項記載のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法であって、
前記第3工程において前記乾燥粉体を混練水と一次混練する時間が10分以上であることを特徴とするホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法。 - 請求項1〜5いずれか1項記載のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法であって、
前記水硬性無機固化材がポルトランドセメントであることを特徴とするホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法。 - 請求項1〜6いずれか1項記載のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法であって、
前記第5工程において、前記水硬性無機固化材と共に、アルカリ性骨材として、セメント物、又は、消石灰、若しくは、これらの混合物を添加して混練することを特徴とするホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法。 - 請求項7記載のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法であって、
前記アルカリ性骨材が、粒径2.5mm以下であることを特徴とするホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法。 - 請求項7又は8記載のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法であって、
前記アルカリ性骨材が、水溶性無機固化材重量と骨材重量の比(水溶性無機固化材重量/骨材重量)が1乃至1/2であることを特徴とするホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法。 - 請求項1〜9いずれか1項記載のホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法であって、
前記第5工程において、減水剤を添加することを特徴とするホウ酸含有放射性廃液の固化処理方法。
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