JP2014105266A - プリプレグ、その成形体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、プリプレグと、そのプリプレグを用いた成形体、およびその製造方法に関するものである。
【解決手段】 炭素繊維(A)を1.0〜79.9質量%と、サイズ剤(B)を0.01〜10.0質量%と、熱可塑性樹脂(C)を20.0〜98.9質量%とを含むプリプレグであって、サイズ剤(B)が、(a)ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂(b)ポリヒドロキシ化合物および(c)芳香環を含むジイソシアネ−トで構成されるポリウレタンと、(d)エポキシ樹脂との混合物、または/および、それらの反応生成物を含んでなるウレタン変性エポキシ樹脂であるプリプレグおよびその成形品ならびに製造方法により解決される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、プリプレグと、そのプリプレグを用いた成形体、およびその製造方法に関するものである。
近年、強化繊維材料である炭素繊維は、各種のマトリックス樹脂と複合化され、得られる繊維強化プラスチックは種々の分野・用途に広く利用されるようになってきた。そして、高度の機械的特性や耐熱性等を要求される航空・宇宙分野や、一般産業分野では、従来、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されてきた。しかし、特に航空・宇宙分野では、これらのマトリックス樹脂は、脆く、耐衝撃性に劣るという欠点を有するため、その改善が求められてきた。また、熱硬化性樹脂の場合、これをプリプレグとしたとき、樹脂のライフタイムが短いために保存管理上に問題があること、製品形状に対して追従性が乏しいこと、成形時間が長く生産性が低いこと等の問題もあった。これに対して、熱可塑性樹脂プリプレグの場合は、複合材料としたときの耐衝撃性が優れ、プリプレグの保存管理が容易で、かつ成形時間が短く、成形コスト低減の可能性もある。
成形材料を製造する過程で、熱可塑性樹脂を連続した強化繊維束に含浸させるには、これらの成形品の機械的特性を高めるには、強化繊維と熱可塑性樹脂との界面接着を高め、結果的に成形品の力学特性を向上させる方法がある。
例えば、強化繊維に表面酸化処理を施して反応性官能基を付与し、熱可塑性樹脂との接
着を向上される方法がある。しかしながら、この場合、表面処理量を多くすると強化繊維
自体の強度が低下し、成形品の力学特性に影響を及ぼすという問題があった。
そこで、強化繊維と熱可塑性樹脂以外に、接着性向上成分を添加する方法が試みられて
きた。接着性向上成分としては、例えば、強化繊維との親和性が高く、熱可塑性樹脂と反応するエポキシを使用する方法が提案されている(特許文献1 参照)。しかしながら、この場合、強化繊維との親和性は良好であるが、熱可塑性樹脂と反応性がありマトリックス樹脂粘度上昇により含浸性が不十分で、プリプレグ製造時に微小ボイドが残ってしまった場合に、そのようなプリプレグから得られる熱可塑性成形板にもプリプレグ由来の微小ボイドが残る可能性があり、力学特性に優れた成形品が得られないという問題があった。
このように、強化繊維と熱可塑性樹脂の両者との親和性もたせつつ含浸性を十分に満足するサイズ剤は見出されていないのが現状である。
特開昭61‐66616号公報
本発明は、強化繊維と熱可塑性樹脂との接着性と親和性を持ち、かつ樹脂の含浸性を向上させることで、成形品の力学特性を十分に発揮させることができる熱可塑性樹脂組成物を用いた、プリプレグを提供することを目的とするものである。
本発明は、炭素繊維(A)を1.0〜79.9質量%と、サイズ剤(B)を0.01〜10質量%と、熱可塑性樹脂(C)を20.0〜98.9質量%とを含むプリプレグであって、サイズ剤(B)が、(a)ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂(b)ポリヒドロキシ化合物および(c)芳香環を含むジイソシアネ−トで構成されるポリウレタンと、(d)エポキシ樹脂との混合物、または/および、それらの反応生成物を含んでなるウレタン変性エポキシ樹脂であるプリプレグである。
本発明によれば、強化繊維と熱可塑性樹脂との親和性に優れ、かつ樹脂の含浸性が向上することにより、従来残存しやすかった微小ボイドも無い、曲げ強度や曲げ弾性率等の力学特性が極めて優れた成形品を製造するための繊維強化熱可塑性樹脂組成物を得ることができるので、この熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品は、電気・電子機器、OA機器、家電機器または自動車の部品、内部部材および筐体などに好適に用いることができる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のプリプレグは、炭素繊維(A)を1.0〜79.9質量%と、サイズ剤(B)を0.01〜10質量%と、熱可塑性樹脂(C)を20.0〜98.9質量%とを含むプリプレグであって、サイズ剤(B)が、(a)ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂(b)ポリヒドロキシ化合物および(c)芳香環を含むジイソシアネ−トで構成されるポリウレタンと、(d)エポキシ樹脂との混合物、または/および、それらの反応生成物を含んでなるウレタン変性エポキシ樹脂であるプリプレグである。
本発明のプリプレグに含まれる炭素繊維(A)の平均単繊維繊度としては0.5〜2.5dtxであるものが好ましい。より好ましくは0.65〜1.2dtxである。また炭素繊維表面状態については、電気化学的測定法(サイクリック・ボルタ・メトリー)により求められるipa値が0.05〜0.45μA/cmであることが重要である。このipa値は、炭素繊維の酸素含有官能基数量と電気二重層形成に関与する表面凹凸度と微細構造の影響を受ける。特に表層のエッチングを大きく受けた炭素繊維やアニオンイオンが黒鉛結晶に層間に入り込んだ層間化合物を形成している場合、大きな値となる。優れた機械的性能を発現する複合材料において、炭素繊維と樹脂との界面は重要であり、特に適当な酸素含有官能基の存在と、小さな電気二重層を形成するような表面を有する炭素繊維が最適な界面を形成することがわかった。
ipa値が0.05μA/cm未満の場合、基本的に酸素含有官能基の数量は少なく、十分な界面接着性を有しないものとなる。一方、ipa値が0.45μA/cmを超える場合、表面のエッチングが過剰に生じているか、あるいは層間化合物が形成されている。このような表面は、表面脆弱層に移行し易く、その結果樹脂との十分な界面接着性を有するものとすることができない。より好ましくは、0.07〜0.36μA/cmである。
さらに、本発明において、X線光電子分光法により求められる炭素繊維表面の酸素含有官能基量(O1S/C1S)が0.05〜0.16の範囲にある炭素繊維であることが望ましい。適度なマトリックス樹脂との界面接着性を有することが重要だからである。
(サイズ剤)
本発明のプリプレグに用いることができる炭素繊維の表面に付与されるサイズ剤(B)としては、(a)ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂、(b)ポリヒドロキシ化合物、(c)芳香環を含むジイソシアネ−トで構成されるポリウレタンと(d)エポキシ樹脂との混合物またはおよびそれらの反応生成物を含んでなるウレタン変性エポキシ樹脂を含むものであることが必要である。エポキシ基は、炭素繊維表面の酸素含有官能基との相互作用が非常に強く、サイジング剤成分の炭素繊維表面に強固に接着させることができる。また、分子末端、ポリヒドロキシ化合物と芳香環を含むジイソシアネ−トからなるウレタン結合ユニットを有することにより、柔軟性の付与とウレタン結合と芳香環の有する極性による炭素繊維表面との強い相互作用の付与が可能となる。したがって、分子中にエポキシ基と上記ウレタン結合ユニットを有するウレタン変性エポキシ樹脂は、炭素繊維表面に強く付着した柔軟性を有する化合物であり、マトリックス樹脂を含浸させる複合化工程において、炭素繊維表面に強固に接着した柔軟な界面層を形成することになり、その結果複合材料としての機械的性能に優れたものとすることができる。ここで、(a)ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂は特に制限はなく、たとえばグリシドール、メチルグリシドール、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オキシカルボン酸グリシジルエステルエポキシ樹脂などを用いることができる。特に好ましいヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂である。これらは、芳香環を有することから、炭素繊維表面との相互作用が強く、また複合材料に用いられるマトリックス樹脂が、耐熱性、剛直性の観点から、芳香環を有するエポキシ樹脂を用いる場合が多く、これらマトリックス樹脂との相溶性に優れることによる。
また、(b)ヒドロキシ化合物が、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物、脂肪族ポリヒドロキシ化合物、ポリヒドロキシモノカルボキシ化合物のいずれか、あるいはこれら混合物より構成されるものであるとより好ましい。これらの化合物は、ウレタン変性エポキシ樹脂を柔軟にすることができるからである。
また、(c)芳香環を含むジイソシアネ−トには特に制限はない。特に好ましいのは、トルエンジイソシアネートあるいはキシレンジイソシアネートである。
また、(d)エポキシ樹脂は特に制限はなく、また(a)ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂と同じものを用いてもよい。好ましくは、分子中に2つ以上のエポキシ基を有するものがよい。これは、炭素繊維の表面とエポキシ基の相互作用が強く、これら化合物が表面に強固に付着するからである。エポキシ基の種類には特に制限はなく、グリシジルタイプ、脂環エポキシ基などを採用することができる。好ましいエポキシ樹脂としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、 ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エピクロン HP−7200シリーズ:大日本インキ化学工業株式会社)、トリスヒドロキシンフェニルメタン型エポキシ樹脂(エピコート1032H60、1032S50: ジャパンエポキシレジン株式会社)、DPPノボラック型エポキシ樹脂(エピコート157S65、157S70:ジャパンエポキシレジン株式会社)、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加エポキシ樹脂などを用いることができる。
(a)ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂(b)ポリヒドロキシ化合物(c)芳香環を含むジイソシアネ−トで構成されるポリウレタンと、(d)エポキシ樹脂の混合物、あるいは反応物は、ポリウレタン樹脂を合成する際に、(a)〜(d)を同時に混入してもよく、あるいはポリウレタン樹脂を合成したのち、ジイソシアネート化合物と(d)を追加で添加し、最終生成物として得ることもできる。このような化合物からなる水分散液としては、ハイドランN320(製品名、DIC株式会社製)
などがあげられる。
(熱可塑性樹脂(C))
本発明のプリプレグに用いることができる熱可塑性樹脂(C)は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ABS、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステルや、アクリロニトリルとスチレンの共重合体等を用いることができる。
その中でも、炭素繊維と樹脂の親和性を向上し、かつ含浸性を向上させる点からポリアミドであることが好ましい。本発明におけるポリアミドとしては、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン69)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ナイロン9T、ナイロンMXD6、ナイロン6/66コポリマー、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンセバカミドコポリマー(ナイロン6/610コポリマー)、ナイロン6/6Tコポリマー、ナイロン6/66/610コポリマー、ナイロン6/12コポリマー、ナイロン6T/12コポリマー、ナイロン6T/66コポリマー、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6Iコポリマー)、ナイロン66/6I/6コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/6I/66コポリマー、ナイロン6/66/610/12コポリマー、ナイロン6T/M−5Tコポリマーなどが挙げられる。含浸性の観点から融点が250℃以下であるナイロン6、ナ
イロン12、ナイロン610、ナイロンMXD6が好ましい。これらの熱可塑性樹脂には、通常用いられる難燃剤、耐候性改良剤、その他酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、充填剤、導電性フィラー、カーボンブラック等を適宜添加してもよい。
本発明の熱可塑性成形体の製造方法に用いることができる炭素繊維は、撚の有無は問わず、引き揃えに際しては、できるだけ開繊させることが好ましい。
(熱可塑性プリプレグ)
本発明の熱可塑性成形体の製造方法に用いることができる熱可塑性プリプレグの製造方法は、特に限定されず従来公知の方法をとることができ、例えば、直接溶融した熱可塑性樹脂を複数の炭素繊維をシート状に並べたものに含浸する方法、複数の炭素繊維をシート状に並べたものの片面もしくは両面にフィルム状の熱可塑性樹脂を積層させ、フィルム状の熱可塑性樹脂を溶融して、含浸させる方法、粉体状の熱可塑性樹脂を溶融して、含浸させる方法などがあるが、含浸性や開繊自由度の観点や、得られるプリプレグの外観品位の観点から、複数の炭素繊維をシート状に並べたものの片面もしくは両面にフィルム状の熱可塑性樹脂を積層させて、フィルム状の熱可塑性樹脂を溶融して含浸させる方法が好ましい。特に、得られる熱可塑性プリプレグの反りの発生を防げる観点から、炭素繊維ストランドの両面からフィルム状の熱可塑性樹脂を積層させ、ロール温度150〜400℃、ロール圧力10.0〜1000.0MPaの条件下で溶融含浸させる方法が特に好ましい。
本発明の熱可塑性成形体の製造方法に用いることができる熱可塑性プリプレグは、1枚以上積層された後、次の(1)〜(3)の各工程を経て、熱可塑性成形板となる。
(1)予熱工程、(2)加熱加圧工程、(3)冷却加圧工程
熱可塑性成形体の製造方法が、回分式工程である場合、用いる熱可塑性樹脂により各種温度は異なるが、例えば成形機加熱部温度を180℃〜350℃の範囲内に昇温させておき、熱可塑性プリプレグを1枚以上積層した積層体を成形機加熱部に導入して、例えば前記積層体の温度が150℃〜300℃の範囲内になる程度まで予熱を行う。その後、加熱加圧工程として、成形機加熱部温度を保持したまま熱可塑性プリプレグを1分〜10分加圧を行い、その後、冷却加圧工程として、熱可塑性プリプレグを成形機冷却部に移し加圧を行い、熱可塑性成形板を得る方法などがある。
一方連続式工程である場合、熱可塑性プリプレグを1枚以上積層させた積層体をスチールベルトに乗せ、用いる熱可塑性樹脂により温度は異なるが、150℃〜300℃まで予熱を行った後、予め180℃〜350℃まで昇温させておいた熱ロール間を通すことによって加熱・加圧し、その後冷却加圧させることで熱可塑性成形板を得る方法がある。その他、例えば、加熱加圧・冷却加圧をベルトプレスで行ったり、予熱を遠赤外線ヒータ方式や電磁誘導方式やジュール加熱方式によって行うなど、適宜材料によって工程を選択することができる。
本発明の熱可塑性成形体の製造方法の加熱加圧工程では、得られる熱可塑性成形体の加熱面辺りの圧力が、0.4MPa以上10.0MPaとする必要がある。0.4MPa未満であると熱可塑性プリプレグ内の未含浸部分の空気を系外に完全に追い出すことが困難となるため、そのような成形条件で得られた熱可塑性成形板の機械物性が低下するため好ましくない。より好ましい圧力の下限は0.6MPa以上である。一方、10.0MPaを超えると加熱加圧工程中に生じる熱可塑性樹脂の流動が増加してしまい、仕込みに対して得られる熱可塑性成形板の繊維体積含有率などがずれてしまうため好ましくない。より好ましい圧力の上限は8MPaである。
加熱加圧工程での加圧時間は、用いる成形型の材質や大きさ等により異なるが、例えば、1分以上10分以下であることが好ましい。加圧時間が1分未満となる、加熱加圧工程後の成形機加熱部温度と熱可塑性プリプレグの積層体の温度との乖離が著しく、加熱不十分となる傾向にある。一方加圧時間が10分を超えると、加熱加圧工程後の成形機加熱部温度と熱可塑性プリプレグの積層体の温度との乖離がなく加熱十分となるが、トータルでの成形時間が長くなるため生産性の悪化を招く傾向にある。
本発明の熱可塑性成形体の製造方法の冷却加圧工程での加圧圧力は、得られる熱可塑性成形体の加熱面辺りの圧力が、0.4MPa以上10.0MPaである必要がある。0.4MPa未満であると、冷却時に生じる熱可塑性樹脂の熱収縮に追従することができず、系内に微小ボイドが新たに生成される傾向があり、そのような成形条件で得られた熱可塑性成形板は機械物性が低下する傾向にある。一方、10.0MPaを超えると加熱加圧工程中に生じるバリの量が増加してしまい、結果仕込みに対して得られる熱可塑性成形板の繊維体積含有率などがずれてしまう傾向にある。
また、本発明において、ナイロン6等は、εカプロラクタム等のモノマーとアニオン触媒、重合開始剤などの作用により比較的低温にて重合できるため、連続繊維や織物などにモノマーを含浸させた後、重合を行うRIM成形により成形体を得ることも可能である。
上記方法においては、しばしばサイズ剤の成分が重合モノマーの触媒などと反応し、失活させてしまうため、重合阻害を起こすことが問題となる。特にエポキシ基は反応阻害を起こすことが知られている。しかし本発明におけるサイズ剤では重合阻害成分が少ないウレタン基をもち、かつエポキシとウレタンの反応により活性エポキシ末端が減少していることにより、重合阻害を起こしにくく、良好な成形品が得られる利点がある。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
以降の実施例および比較例においては、原材料として下記のものを用いた。
(炭素繊維)
炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:TR50S15L、12000本、密度1.82g/cm2
(熱可塑性樹脂フィルム)
ナイロン6(宇部興産株式会社製、製品名:「UBEナイロン」1013B)を用い、以下の方法により作成した。
十分に乾燥させたナイロン6を、加熱冷却二段プレス(神藤金属工業所社製、F−37)を用いて、260℃まで昇温させた加熱盤で挟み込み、加圧して薄く引き延ばした。その後、冷却盤で冷却することにより、熱可塑性樹脂フィルムを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムの目付けは、45.2g/mであった。
以下、一実施態様例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、特にこれに制限されるというものではない。
[実施例1]
(炭素繊維束の調製)
組成がアクリロニトリル97質量%、メタクリル酸1質量%、アクリルアミド2質量%のアクリロニトリル系重合体をジメチルアセトアミドに溶解し21.0質量%の原液を調製した。
調製した紡糸原液は径50μm、数24000の吐出孔を配置した紡糸口金から、38℃に調温した67質量%ジメチルアセトアミドを含有する水溶液を満たした凝固液中に吐出し凝固させ、凝固糸を引取った。次いで空気中で1.05倍の延伸後、55℃に調温した35質量%ジメチルアセトアミドを含有する水溶液を満たした延伸槽にて1.7倍延伸した。引き続き、60℃から98℃の範囲で5段の延伸・洗浄槽を通して、2.0倍の延伸と洗浄を同時に行い、次に、95℃の熱水中で0.98倍の緩和を行った。引き続き、繊維束にアミノ変性シリコーンを主成分とする油剤を1.1質量%となるよう付与し乾燥緻密化した。乾燥緻密化後の繊維束を、約150℃程度のスチームによる可塑化延伸により3.0倍延伸を行った後に巻き取ってアクリロニトリル系前駆体繊維束を得た。アクリロニトリル系前駆体繊維フィラメントの繊度は、0.77dtexであった。ここで、アミノ変性シリコーンオイルを主成分とする水系繊維油剤は以下のものを使用した。
アミノ変性シリコーン; KF−865(信越化学工業(株)製)
85質量%(1級側鎖タイプ、粘度110cSt(25℃)、アミノ当量5,000g/mol)
乳化剤;NIKKOL BL−9EX(日光ケミカルズ株式会社製)
15質量%(POE(9)ラウリルエーテル)
次いで、複数の前駆体繊維束を平行に揃えた状態で耐炎化炉に導入し、220〜280℃に加熱された空気を前駆体繊維束に吹き付けることによって、前駆体繊維束を耐炎化して密度1.345g/cmの耐炎繊維束を得た。伸張率は−4.0%とし、耐炎化処理時間は70分とした。
次に耐炎化繊維束を窒素中300〜700℃の温度勾配を有する第一炭素化炉にて4.5%の伸長を加えながら通過させた。温度勾配は直線的になるように設定した。処理時間は1.3分とした。更に窒素雰囲気中で1000〜1600℃の温度勾配の設定可能な第二炭素化炉を用いて所定の温度にて熱処理を行い、炭素繊維束を得た。伸張率は、−4.5%、処理時間は1.3分とした。
引き続いて、重炭酸アンモニウム10質量%水溶液中を走行せしめ炭素繊維束を陽極として、被処理炭素繊維1g当たり30クーロンの電気量となる様に対極との間で通電処理を行い、温水50℃で洗浄した後乾燥した。
引き続き、ハイドランN320を0.8質量%付着させ、ボビンに巻きとり、炭素繊維束を得た。
(一方向プリプレグの製作)
炭素繊維を一方向に配向した炭素繊維のシート状物(目付145.0g/m2)の両面に樹脂フィルムを積層させて積層体を得た。この積層体を200〜260℃に加熱して、熱可塑性樹脂フィルムを炭素繊維のシート状物に溶融含浸させ、熱可塑性UDプリプレグを得た。得られた熱可塑性プリプレグの厚みは159μm、目付けは145.0g/m2、繊維堆積含有率は50.0%であった。
(積層板の成形)
前記熱可塑性UDプリプレグを、繊維軸方向が一致するようにして、12枚積層し、その積層体を成形型に入れた。さらに、予め加熱盤を300℃とした加熱冷却二段プレス機(神藤金属工業所社製、製品名:F−37)に投入し金型の内温が240℃になるまで予熱を行った。続いて、圧力2.0MPaで1分間加熱加圧プレスを行った後、圧力2.0MPaで冷却プレスを行い、成形板1を得た。得られた成形板1の繊維体積含有率Vf、厚み、機械物性及びボイド率は表1に示す。
[比較例1]
サイズ剤種を変更して得た炭素繊維を使用した結果を表1にまとめる。
ここでサイズ剤2は以下のように調整した。
固形エポキシ樹脂(三菱化学社製、製品名:jER1001)5.0gと液状エポキシ樹脂(同社製、製品名:jER828)10.0gを約90℃で加熱混合し50℃で約200ポイズの樹脂組成物を得た。ノニオン系活界面活性剤(花王アトラス社製、製品名:エマルゲン903)5.0gを加え水2.0Lに分散させてエマルジョンを調整した。付着量0.8質量%とした。
[評価方法]
(繊維体積含有率の測定)
曲げ試験用の試験片の密度をJIS K7112に準じた方法にて測定を行った。その後、炭素繊維及び樹脂フィルムの密度から繊維堆積含有率を算出した。
(90°曲げ試験)
得られた成形板を湿式ダイヤモンドカッターにより、長さ60.0mm(0°方向)×幅12.7mm(90°方向)の寸法に切断して試験片を作製した。得られた試験片にて、万能試験機(Instron社製、製品名:Instron5565)と解析ソフト(製品名:Bluehill)を用い、ASTM D790準拠(圧子R=5.0、L/D=16)で3点曲げ試験を行い、強度と弾性率を得た。
(含浸率)
成形体をポリエステル樹脂(クルツァー社製、製品名:テクノビット4000)に包埋し、断面を耐水ペーパーの番手#200、400、600、800、1000の順に、各番手で5分間研磨後、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、製品名:VHX−100)を用いて150倍で断面の撮影を行い、撮影した断面の正常部とボイドの面積率を測定し、100%からボイド率を減じることで含浸率が得られる。
評価指標は、含浸率が95%以上のものを○、90%以上95%未満のものを△、90%未満のものを×とした。

Claims (7)

  1. 炭素繊維(A)を1.0〜79.9質量%と、サイズ剤(B)を0.01〜10.0質量%と、熱可塑性樹脂(C)を20.0〜98.9質量%とを含むプリプレグであって、
    サイズ剤(B)が、(a)ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂(b)ポリヒドロキシ化合物および(c)芳香環を含むジイソシアネ−トで構成されるポリウレタンと、(d)エポキシ樹脂との混合物、または/および、それらの反応生成物を含んでなるウレタン変性エポキシ樹脂であるプリプレグ。
  2. 前記サイズ剤(B)に含まれる(a)ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項1に記載のプリプレグ。
  3. 前記サイズ剤(B)に含まれる(b)ポリヒドロキシ化合物が、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物、脂肪族ポリヒドロキシ化合物、ポリヒドロキシモノカルボキシ化合物のいずれか、あるいはこれら混合物より構成されるウレタン変性エポキシ樹脂である請求項1または2のいずれか一項に記載のプリプレグ。
  4. 前記サイズ剤(B)に含まれる(c)芳香環を含むジイソシアネ−トが、トルエンジイソシアネートあるいはキシレンジイソシアネートのいずれかである請求項1から3のいずれか一項に記載のプリプレグ。
  5. 前記熱可塑性樹脂(C)がポリアミド樹脂である請求項1から4のいずれか一項に記載のプリプレグ。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のあるプリプレグからなる成形体。
  7. (a)ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂、(b)ポリヒドロキシ化合物、および(c)芳香環を含むジイソシアネ−トで構成されるポリウレタンと(d)エポキシ樹脂との混合物またはおよびそれらの反応生成物を含んでなるウレタン変性エポキシ樹脂を含むサイズ剤(B)を付着させた複数の炭素繊維(A)をシート状に並べ、230〜300℃、0.1〜2.0MPaの圧力で熱可塑性樹脂樹脂(C)を含浸させるプリプレグの製造方法。
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