JP2014105132A - セリア−ジルコニア複合酸化物材料及びその製造方法 - Google Patents

セリア−ジルコニア複合酸化物材料及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】より実用的なセリア−ジルコニア複合酸化物材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】 セリア原料及びジルコニア原料を水滴中に含む油中水滴型のエマルションを形成し、前記油中水滴型エマルションに中和剤を添加して得られるセリウム−ジルコニウム水酸化物粒子を、還元雰囲気下で焼成してセリア−ジルコニア複合酸化物と炭化物とを含む第1の焼成体を取得し、前記第1の焼成体を酸化雰囲気下で焼成して前記第1の焼成体中の炭化物を除去して第2の焼成体を取得し、水と、少なくとも二つのヒドロキシ基を含むヒドロキシ基含有化合物と、前記第2の焼成体と、を含有し、アルカリ性である原料液を加熱して、前記第2の焼成体からパイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物の粒子を分離するようにする。
【選択図】図1

Description

本発明は、セリア−ジルコニア複合酸化物材料及びその製造方法に関する。
セリア(CeO2)は、酸素放出する酸素貯蔵能(以下、OSCともいう。)が高く、自動車等の車両の排気ガス浄化用触媒の酸素吸蔵材料(助触媒)等として応用されている。また、このほか、研磨剤を含めて各種の用途がある。
例えば、上記した酸素吸蔵材料として用いる場合のセリア系材料としては、セリアにジルコニア(ZrO2)を添加して、セリアとジルコニアとの複合酸化物やこれらの固溶体としたものが知られている。セリアにジルコニアを添加することで、セリアが高温下で結晶成長することによるOSCの低下を抑制して、高温耐久性を向上させることが行われている。特に、パイロクロア相を有する複合酸化物がある(特許文献1)。パイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物は、貧酸素雰囲気下では、酸素を放出してパイロクロア相を呈するが、富酸素雰囲気下でパイロクロア相中の酸素欠損に酸素を吸蔵してκ相となることから、良好なOSCを発揮することができる。
特開2003−277059号公報
近年、排ガス規制は年々厳しくなってきており、より低温でも排ガス浄化性能を有することが望まれている。ここで、触媒における酸素吸蔵材料の量を低減すると、触媒の熱容量を低下させることができ、運転早期での触媒活性化が可能となる。触媒における酸素吸蔵材料の含有量を低下させるには、OSCの一層の向上が求められる。
上記したパイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物は、セリアとジルコニアとを混合して1200℃以上で不活性雰囲気で焼成する方法などが利用されている。この方法では、数ミクロン程度まで粒成長するため、良好なOSCを期待できないという問題があった。
そこで、本発明は、より実用的で特性が向上したセリア−ジルコニア複合酸化物材料及びその製造方法を提供することを一つの目的とする。
本発明者らは、セリア−ジルコニア複合酸化物材料の特性を高めるための当該複合酸化物材料の作製方法を種々検討したところ、セリア−ジルコニア複合酸化物を、還元焼成、酸化焼成及び水熱処理を経て取得することで、パイロクロア相を有ししかも微小なセリア−ジルコニア複合酸化物粒子を取得できるという知見を得た。さらに、かかる粒子がOSC向上に貢献できるという知見を得た。本発明によれば、これらの知見に基づき以下の手段が提供される。
(1)セリア−ジルコニア複合酸化物材料の製造方法であって、
セリア原料及びジルコニア原料を水滴中に含む油中水滴型のエマルションを形成し、
中和剤により水滴中にセリウムージルコニウム水酸化物を生成させた後、このエマルションを乾燥して乾燥物を取得し、
前記乾燥物を、還元雰囲気下で焼成してセリア−ジルコニア複合酸化物と炭化物とを含む第1の焼成体を取得し、
前記第1の焼成体を酸化処理して前記第1の焼成体中の炭化物を除去して第2の焼成体を取得し、
水と、少なくとも二つのヒドロキシ基を含むヒドロキシ基含有化合物(α―ヒドロキシ酸などの)と、前記第2の焼成体と、を含有し、アルカリ性である原料液を加熱して、前記第2の焼成体からセリア−ジルコニア複合酸化物の粒子を分離する、製造方法。
(2)前記水熱処理は、50℃以上200℃以下で行う、(1)に記載の製造方法。
(3)微粒化された前記セリア−ジルコニア複合酸化物粒子は、κ相を有する球状粒子であって、平均粒子径が50nm以下である、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4) セリア−ジルコニア複合酸化物材料であって、
パイロクロア相を有し、平均粒子径が50nm以下である、セリア−ジルコニア複合酸化物粒子を含む、材料。
(5)前記粒子の平均粒子径が20nm以下である、(4)に記載の材料。
(6)前記粒子の平均粒子径が15nm以下である、(4)又は(5)に記載の材料。
(7)内燃機関の排ガス浄化用触媒の酸素貯蔵材料である、(4)〜(6)のいずれかに記載の材料。
(8)排ガス浄化装置であって、
(4)〜(7)のいずれかに記載のセリア−ジルコニア複合酸化物材料を含む触媒相を備える、装置。
本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料の製造方法のフローの一例を示す図である。 本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料の製造方法における現象の説明図である。 水熱処理粉末の顕微鏡写真を示す図である。 水熱処理粉末のOSC評価結果を示す図である。
本発明は、新規なセリア−ジルコニア複合酸化物材料とその製造方法並びにその用途に関する。
本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料の製造方法の一例を図1に示す。本発明の製造方法によれば、微粒化したセリア−ジルコニア複合酸化物の粒子を含んだ材料が得られる。このような材料は、例えば、図2に示すように、以下の現象により製造されると考えられる。なお、以下の現象は、推論であって本発明を拘束するものではない。
セリア原料及びジルコニア原料を水滴中に含む油中水滴型のエマルションに中和剤を添加して、セリウムージルコニウム水酸化物を水滴中に取得し、前記エマルションを乾燥し、乾燥物を還元焼成することで、前記水酸化物に由来するセリア−ジルコニア複合酸化物相が前記エマルション材料に由来する炭化物相を境界相として集合したような第1の焼成体が取得される。この第1の焼成体を酸化焼成すると、炭化物が除去されてセリア−ジルコニア複合酸化物相が少なくとも部分的に集合した状態の第2の焼成体が取得される。さらに、第2の焼成体をアルカリ下であってしかもヒドロキシ酸等の存在下で水熱処理すると、第2の焼成体から、微粒化したセリア−ジルコニア複合酸化物粒子が取得される。
以上の現象は、また、セリア−ジルコニア複合酸化物の高温での粒成長を炭化物を介在させることで抑制し、その後酸化焼成で炭化物を除去し、さらに、所定条件の水熱処理によって、エマルション粒子由来のセリア−ジルコニア複合酸化物粒子が凝集して集合した状態から開放されることで生じると考えられる。
また、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物粒子は、通常の粒成長が抑制された結果微粒化されているため、優れたOSCを発揮することができる。
以下、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料の製造方法とセリア−ジルコニア複合酸化物材料等について適宜図面を参照しながら説明する。
(セリア−ジルコニア複合酸化物材料の製造方法)
本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料は、以下の工程を実施することで製造することができる。製造方法の一例を図1に示す。
(a)油中水滴型エマルション形成工程及びセリウムージルコニウム水酸化物含有水滴を含むエマルションの乾燥工程
(b)セリア−ジルコニア複合酸化物と炭化物とを含む第1の焼成体を得る第1の焼成工程
(c)第1の焼成体から炭化物を除去した第2の焼成体を得る第2の焼成工程
(d)第2の焼成体からセリア−ジルコニア複合酸化物の粒子を分離する水熱処理工程
(油中水滴型エマルション形成工程)
油中水滴型エマルション形成工程は、水滴中にセリア原料及びジルコニア原料を含む油中水滴型エマルションを形成する工程である。セリア原料及びジルコニア原料は、還元雰囲気下での熱分解によりセリア及びジルコニアをそれぞれ生成するものであれば特に限定されない。例えば、セリウムやジルコニウムの各種の塩又は水酸化物を利用することができる。セリウム塩及びジルコニウム塩は、例えば、硝酸塩,硫酸塩,亜硫酸塩,塩化物,各種無機錯塩などの無機塩、カルボン酸塩,ハロゲン化オキソ酸塩、各種有機錯塩などの有機塩を用いることができる。
水溶性のセリア原料及び水溶性のジルコニア原料を水滴中に含む油中水滴型エマルションは、セリア原料及びジルコニア原料を含む水溶液と界面活性剤と非水溶媒とを適宜混合することで形成することができる。用いる界面活性剤は、特に限定しないで非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。例えば、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(n=5)(NP−5ともいう。)、1、2−ビス、2−エチルヘキシルスルホスクシネートナトリウム(AOT)等を用いることができる。また、非水溶媒としても、特に限定しないで、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、スチレン等を利用できる。油中水滴型エマルションはおおよそ透明な程度に均一であることが好ましい。こうした透明に近いエマルションに対して中和剤を添加することで、より微小な不溶化したセリウム−ジルコニウム水酸化物粒子を得ることができる。
(セリウム−ジルコニウム水酸化物粒子の乾燥工程)
水酸化セリウム及び水酸化ジルコニウムを含むセリウム−ジルコニウム水酸化物粒子を形成するには、以下の方法を採用できる。すなわち、セリウム塩及びジルコニウム塩をセリア原料及びジルコニア原料として水滴中に含む油中水滴型エマルションを形成後に、このエマルションをアルカリで中和して水不溶性の各水酸化物を水滴中に生成させることで、セリウム−ジルコニウム水酸化物粒子を不溶物(沈殿物)として取得できる。なお、中和工程においては、必要に応じて界面活性剤や非水溶媒を添加することができる。界面活性剤及び非水溶媒も、既に説明した公知の材料を特に限定しないで用いることができる。アルカリは、無機、有機アルカリを問わずに用いることができる。好ましくは、金属イオンを含まないアンモニアなどの有機アルカリを用いる。中和工程において設定されるpHは、8以上14以下とすることができる。好ましくは、8以上10以下とすることができる。
乾燥は、油中水滴型のエマルションにできた不溶性のセリウム−ジルコニウム水酸化物粒子を、固液分離あるいは溶媒を留去することにより、エマルション由来の油分や水分を低減させてより高い濃度で不溶性セリウム−ジルコニウム水酸化物粒子を取得する工程である。乾燥は、油中水滴型エマルションの溶媒(油分)が多い場合において有効である。乾燥は、デカンテーションや乾燥を組み合わせることが純度の点において好ましい。乾燥工程で得られる水酸化物粒子には、エマルション由来の溶媒(油分)と界面活性剤とが残留している。また、水分も含有している。
(第1の焼成工程)
第1の焼成工程は、乾燥後のセリウム−ジルコニウム水酸化物粒子を還元雰囲気下で焼成して、第1の焼成体を得る工程である。還元焼成することで、油分や界面活性剤等に由来する炭化物を粒子間に有するセリア−ジルコニア複合酸化物粒子が集合した複合体である第1の焼成体を得ることができる。還元焼成は、窒素、アルゴン等の公知の不活性ガス、もしくは水素を用い、1200℃以上1500℃以下、好ましくは1200℃以上1300℃以下の温度範囲で、数時間程度、例えば、1時間以上6時間以下、好ましくは2時間以上5時間以下程度焼成する。
(第2の焼成工程)
第2の焼成工程は、第1の焼成工程後に得られる第1の焼成体をさらに酸化雰囲気で焼成して、第2の焼成体を得る工程である。こうすることで第1の焼成体中のセリア−ジルコニア複合酸化物粒子間の炭化物を除去して、セリア−ジルコニア複合酸化物からなる粒子を含む第2の焼成体を得ることができる。第2の焼成工程の加熱条件は特に限定しないで、第1の焼成体から炭化物が除去できる温度及び時間とすればよい。典型的には、第2の焼成工程は、空気などの酸化雰囲気下で、400℃以上600℃以下で加熱する。第2の焼成体にあっては、通常、炭化物が酸化除去された後も、依然として粒子が集合状態を採っている。例えば、第2の焼成体は、10nmから20nm程度の1次粒子が5〜6個程度凝集してできた二次粒子が数珠繋ぎのようにさらに凝集している。
(水熱処理工程)
水熱処理工程は、第2の焼成体を、少なくとも2つのヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有化合物と、水とが存在するアルカリ性である原料液を加熱して、第2の焼成体からセリア−ジルコニア複合酸化物粒子を分離する工程である。
ヒドロキシ基含有化合物としては、ヒドロキシ酸が挙げられる。ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シキミ酸等の脂肪族ヒドロキシ酸、モノヒドロキシ安息香酸誘導体、ジヒドロキシ安息香酸誘導体、トリヒドロキシ安息香酸誘導体、フェニル酢酸誘導体等の芳香族ヒドロキシ酸が挙げられる。典型的には、例えば、グリコール酸などが用いられる。
こうしたヒドロキシ基含有化合物は、原料液中のセリア−ジルコニア複合酸化物1モル対して1モル以上10モル以下の比率で存在することが好ましい。より好ましくは、ヒドロキシ基含有化合物は、同2モル以上6モル以下である。当該有機化合物の量がこの範囲より少なかったり超えたりすると、均一な粒経のCeO−ZrOを得ることが困難となるからである。また、多すぎるとセリア、ジルコニア成分の溶解の問題が生じるからである。
原料液におけるセリア−ジルコニア複合酸化物濃度は、特に限定しないが、0.01M〜1M程度であることが好ましい。より好ましくは0.05〜0.5M程度である。アルカリとしては、無機アルカリであっても有機アルカリであってもよいが、金属元素を含まない有機アルカリが好ましい。典型的には、アンモニア溶液などを用いることができる。原料液のpHは、pH10以下の範囲でpH8から10程度が望ましい。セリアージルコニア複合酸化物の分散性がよいからである。
原料液の水熱処理条件は、特に限定しないで原料液を好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上、一層好ましくは100℃以上に加熱する。さらに、好ましくは、120℃以上であり、より一層好ましくは140℃以上である。また、加熱時間は、加熱温度にもよるが、数時間以上加熱することが好ましく、より好ましくは10数時間以上であり、さらに好ましくは20時間以上である。
水熱処理工程によれば、第2の焼成体において集合されていたセリア−ジルコニア複合酸化物粒子を分離し、結果として、第2の焼成体よりも、微粒子化されたセリア−ジルコニア複合酸化物材料を得ることができる。
こうして得られた材料は、以下の特徴を有することができる。
(1)セリア−ジルコニア複合酸化物粒子は、実質的にセリア−ジルコニア複合酸化物の固溶体からなる粒子である。
(2)パイロクロア相(κ相)を有している。具体的には、CuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が、14°、28°、37°、44.5°及び51°の位置に回折角ピークを有していることを意味している。
(3)平均粒子径が50nm以下である。
ただし、平均粒子径の測定は、TEM観察によるものとする。
(4)粒子の平均粒子径が20nm以下である。
(5)粒子の平均粒子径が15nm以下である。
(6)OSC量が、400℃において250μmolOg-1以上である。(ただし、O22%含有ガス30秒−CO22%含有ガス30秒を1ml/分で供給時において、0.5g試料を用いたときのOSC量である。)
(7)OSC量が、300℃において50μmolOg-1以上である。(ただし、O22%含有ガス30秒−CO22%含有ガス30秒を1ml/分で供給時において、0.5g試料を用いたときのOSC量である。)
水熱処理工程後の原料液に対して、公知の固液分離手段を適用して、固相としての複合粒子を回収できる。こうして回収した固相を公知の乾燥手段を適用して乾燥することで、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料を得ることができる。乾燥後には、適宜粉砕等することもできる。
本製造方法によれば、油中水滴型エマルション中のジルコニア原料及びセリア原料を含む水滴に由来すると考えられるセリア−ジルコニア複合酸化物粒子を含む材料を得ることができる。このためパイロクロア相を維持し、粒成長が抑制されて微粒子状態のセリア−ジルコニア複合酸化物材料を得ることができる。また、エマルション法によれば、エマルションの大きさを調節できるため、任意の粒子径の材料を得ることができる。
(セリア−ジルコニア複合酸化物材料)
本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料は、セリア−ジルコニア複合酸化物固溶体を主体とする粒子を含んでいる。すなわち、当該固溶体を最も優勢成分として有することが好ましい。したがって、前記粒子は、セリア−ジルコニア複合酸化物固溶体を全体の50モル%を超えて有していることが好ましい。より好ましく60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、一層好ましくは80モル%以上であり、より一層好ましくは90モル%以上であり、さらに一層好ましくは95モル%以上であり、実質的に当該固溶体のみからなることが最も好ましい。なお、セリア−ジルコニア固溶体は、EDXやX線回折スペクトルなどを組み合わせるなどして確認することができる。
「実質的にセリア−ジルコニア複合酸化物の固溶体のみからなる」とは、当該複合酸化物以外の他には、不可避不純物のみを含む意味である。不可避不純物量は、特に限定しないが、通常、5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
また、本複合酸化物材料は、パイロクロア相(κ相)を有している。本複合酸化物材料におけるパイロクロア相は、CuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が、14°、28°、37°、44.5°及び51°の位置に回折角ピークを有していることを意味している。パイロクロア相を有することにより、高いOSCを発揮することができる。
さらに、当該粒子は、平均粒子径が50nm以下であることが好ましい。こうした微粒のセリア−ジルコニア複合酸化物粒子を含む材料であると、高いOSCを発揮させることができる。より好ましくは、同平均粒子径は20nm以下であり、さらに好ましくは15nm以下である。なお、平均粒子径の測定方法は既に説明したとおりである。
こうした本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料は、そのセリアの特性及びジルコニア添加の効果により、車両等の内燃機関の排ガス浄化用触媒の酸素貯蔵材料として用いることができる。すなわち、貴金属などとともに、あるいはこうした貴金属触媒を含む担持材料の少なくとも一部として用いることができる。したがって、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料は、例えば、内燃機関の排ガス浄化用の複合材料として用いることができる。なお、排ガス浄化用の金属触媒、担持材料は、当業者に周知であり、周知材料から適宜選択して用いることができる。
本発明によれば、内燃機関の排ガス浄化装置も提供される。すなわち、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料を含む触媒相を備える、排ガス浄化装置も提供される。排ガス浄化装置の形態は特に限定しないで公知の各種形態を採用できるが、典型的にはハニカム構造体である。本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料を含む触媒相は、ハニカム構造体を構成するマトリックスに含まれていてもよいし、その内壁等の表面に付与されていてもよい。こうした排ガス浄化装置の製造方法は当業者において周知であって、当業者であれば、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料を酸素貯蔵材料あるいは触媒担持材料として適用して排ガス浄化装置を容易に製造することができる。
以下、本発明を具体例を挙げて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(第1及び第2の焼成体の作製)
Ce(NO33・6H2OとZrOCl2・8H2Oとを水に溶解して、それぞれが0.5mol/lの水溶液を調製した。ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(n=5)(NP−5)のシクロヘキサン溶液(0.4mol/l)を調製した。水溶液10mlとこのシクロヘキサン溶液100mlとを、混合して、油中水滴型の原料エマルションを形成した。次いで、1,2−ビス(2−エチルエキシルオキシカルボニル)エタンスルホン酸ナトリウム(AOT)のシクロヘキサン溶液(0.4mol/l)にアンモニア水(試薬特級)を溶解して、透明なアルカリ性エマルションを調製した。その後、これらのエマルションを混合中和して(pH9程度)、この混合液中に沈殿物を得た。
沈殿物を回収して、乾燥し、乾燥物を、N2還元雰囲気下、800℃で2時間焼成し、さらに、同雰囲気下、1200℃で1時間焼成して、界面活性剤由来の炭化物とセリア−ジルコニア複合酸化物を第1の焼成体として得た。さらに、酸化雰囲気下、500℃で2時間焼成して、炭化物を除去し、実質的にセリア−ジルコニア複合酸化物固溶体を第2の焼成体として得た。
(水熱処理)
第2の焼成体0.1mol/l、グリコール酸0.4mol/lで、アンモニア水を用いてpHを10に調整した水熱反応液を調製し、この水熱反応液を、150℃で24時間水熱反応を行った。その後、反応後の原料液をろ過して固相を回収し、乾燥し、1種類の粉末(緑がかった黄色)を得た。これらにつき、顕微鏡観察を行った。結果を図3に示す。また、この粉末のほか、比較例として、市販のセリア−ジルコニア粉末(パイロクロアCZ)についても同様に、OSCを評価した。結果を図4に示す。なお、平均粒子径はTEMにて80×120nmの視野中で評価した。粒子数は、15個程度としそのの平均値とした。
なお、OSCの測定は、試料0.5gを用いて、200℃、300℃及び400℃の各温度にて、流量1ml/分でO2 2%ガスを30秒流した後、CO 2%ガスを30秒流すことを5回繰り返して常法により評価した。
図3に示すように、本実施例で作製した水熱合成粉末では、セリア−ジルコニア複合酸化物固溶体粒子が、水熱合成前よりも微細化した粒子となっていることがわかった。この合成粒子の平均粒子径はTEMによる測定の結果、10nmから20nmであることがわかった。
また、図4に示すように、OSCの評価結果からは、本実施例の合成粉末は、300℃の比較低温でも、比較例に比べて10倍程度のOSCを発揮し、400℃においては、比較例よりも10倍を超えるOSCを発揮した。これは、本実施例で得られた粉末がパイロクロア相を有しかつ微細な粒子による効果と考えられる。
以上のことから、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料は、油中水滴型エマルションの水滴中からセリウム−ジルコニウム酸化物粒子を不溶物として取得するなどして、セリア−ジルコニア複合酸化物の焼成状況を制御し、最終的に水熱処理することで、パイロクロア相を有するセリア−ジルコニア複合酸化物組成を有し、しかも、微粒化されて高いOSCを有するセリア−ジルコニア複合酸化物材料となっていることがわかった。また、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物材料は、低温〜高温域において優れたOSCを発揮できており、広い温度域でセリアの特性を向上させることができる材料であることがわかった。また、本発明の製造方法によれば、水熱処理によって微粒化されたセリア−ジルコニア複合酸化物材料を得ることができるため、効率的に優れたセリア−ジルコニア複合酸化物材料を提供できることがわかった。

Claims (8)

  1. セリア−ジルコニア複合酸化物材料の製造方法であって、
    セリア原料及びジルコニア原料を水滴中に含む油中水滴型のエマルションを形成し、
    前記エマルションに中和剤を添加して不溶性のセリウム−ジルコニウム水酸化物粒子を取得して、
    前記セリウム−ジルコニウム水酸化物粒子を、還元雰囲気下で焼成してセリア−ジルコニア複合酸化物と炭化物とを含む第1の焼成体を取得し、
    前記第1の焼成体を酸化雰囲気下で焼成して前記第1の焼成体中の炭化物を除去して第2の焼成体を取得し、
    水と、少なくとも二つのヒドロキシ基を含むヒドロキシ基含有化合物と、前記第2の焼成体と、を含有し、アルカリ性である原料液を加熱して、前記第2の焼成体からセリア−ジルコニア複合酸化物の粒子を分離する、製造方法。
  2. 前記水熱処理は、50℃以上200℃以下で行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記セリア−ジルコニア複合酸化物粒子は、パイロクロア相を有する粒子であって、平均粒子径が50nm以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. セリア−ジルコニア複合酸化物材料であって、
    パイロクロア相を有し、平均粒子径が50nm以下である、セリア−ジルコニア複合酸化物粒子を含む、材料。
  5. 前記粒子の平均粒子径が20nm以下である、請求項4に記載の材料。
  6. 前記粒子の平均粒子径が15nm以下である、請求項4又は5に記載の材料。
  7. 内燃機関の排ガス浄化用触媒の酸素貯蔵材料である、請求項4〜6のいずれかに記載の材料。
  8. 排ガス浄化装置であって、
    請求項4〜7のいずれかに記載のセリア−ジルコニア複合酸化物材料を含む触媒相を備える、装置。
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