JP2014099282A - 絶縁シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 厚さが薄くても高温での使用が可能であり、且つ油中での使用も可能であるとともに、積層体であっても層間剥離の懸念がなく、耐熱性および耐油性に優れた絶縁紙として使用できる絶縁シートを提供することを課題とした。
【解決手段】 耐熱性および耐薬品性に優れた樹脂材料として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を用いた絶縁シートを、PPS樹脂層とPPS不織布とを接着剤を用いずに積層した2層あるいは3層構造のPPSラミネートシートの構成にすることを特徴とした耐熱性および耐薬品性、耐油性に優れるとともに薄葉化が可能な絶縁シート。PPS繊維を湿式抄造法にて抄紙してPPS不織布を作成する工程と、PPS樹脂を溶融押出成形にてPPS樹脂層を作成する工程と、該PPS樹脂層に前記PPS不織布を融着して積層化する工程とを有することを特徴とする絶縁シートの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 耐熱性および耐薬品性に優れた樹脂材料として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を用いた絶縁シートを、PPS樹脂層とPPS不織布とを接着剤を用いずに積層した2層あるいは3層構造のPPSラミネートシートの構成にすることを特徴とした耐熱性および耐薬品性、耐油性に優れるとともに薄葉化が可能な絶縁シート。PPS繊維を湿式抄造法にて抄紙してPPS不織布を作成する工程と、PPS樹脂を溶融押出成形にてPPS樹脂層を作成する工程と、該PPS樹脂層に前記PPS不織布を融着して積層化する工程とを有することを特徴とする絶縁シートの製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、耐熱性および耐油性に優れた絶縁シート、特にモーター用相間絶縁シートや油浸モーター用絶縁シートおよびその製造方法に関する。
ハイブリッドカーや電気自動車には、電気モーターおよび発電機として選択的に機能するモータージェネレータが搭載されている。モータージェネレータは、例えば、軸心まわりに回転可能に支持された出力軸に固定された円柱状のロータと、該ロータの外周面に対して所定の隙間を隔てた内周面を有するモーターステータと、該モーターステータを収容するモータハウジングとを備えてなるものである。そして、該モータージェネレータは、自動車の加速や減速といった操作によって発熱し、100℃以上の高温となるために、所定の性能を維持するために十分な冷却が必要となる。そこで、該モータージェネレータを効果的に冷却する方法として、従来、前記ハウジング内に冷却油を供給してモーターステータやロータを該冷却油に浸漬させ、該冷却油を循環させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
ここで、該モータージェネレータを構成するモーターステータは、一般にコア材と巻線とから構成されてなり、コア材と巻線あるいは相の異なる巻線と巻線とを絶縁するための材料として絶縁紙が用いられているが、発熱によって高温となるモーターステータにおいては、該絶縁紙について耐熱性が必要となる。また、上述のように冷却のために冷却油中に含浸されるこの種の油浸モーターにおいては、耐油性に優れることも必要となる。
従来、このようなモーター用絶縁紙としては、所定の強度や絶縁破壊電圧など求められる諸特性を担保するため、異なる特性を有する複数のシート材が接着剤などにより接着されて積層された積層シートが用いられたりしている。例えば、ポリエステル系フィルムの両面に、ウレタン系やアクリル系の常温硬化型あるいは熱硬化型接着剤を介して耐熱紙を積層したものが検討されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、近年、モータージェネレータにおいては、高出力、コンパクト化の要望からその内部温度が150℃を超えるような温度で用いられることが検討され、このような温度で使用することが可能な絶縁紙が求められている。このような高温での使用が可能な絶縁紙として、耐熱性のある接着剤を用いたものが検討されている(例えば、特許文献3参照。)。その一方で、コンパクト化及び電気エネルギー変換の高効率化の要望等から、厚さが薄い絶縁紙が求められている。
耐熱性のある接着剤を用いて耐油性と耐熱性を両立させようとした場合、例えばポリエステル系フィルムの両面に耐熱性を有する接着剤を介して耐熱紙が積層されると、全体で5層となり、薄い絶縁紙とすることが困難であった。また、積層体における異種材料層間では接着剤層の劣化や層間での剥離等の問題が常に懸念される。このような問題に鑑み、本発明は、厚さが薄くても高温での使用が可能であり、且つ油中での使用も可能であるとともに、積層体であっても層間剥離の懸念がなく、耐熱性および耐油性に優れた絶縁紙として使用できる絶縁シートを提供することを課題とした。
本発明は、鋭意検討の結果、下記の技術的構成により前記課題を解決できたものである。
(1)ポリフェニレンサルファイド樹脂からなることを特徴とする絶縁シート。
(2)ポリフェニレンサルファイド樹脂層の両面あるいは片面にポリフェニレンサルファイド不織布が積層された構造を特徴とする前記(1)記載の絶縁シート。
(3)ポリフェニレンサルファイド樹脂層とポリフェニレンサルファイド不織布が接着剤を介さず、該層間が融着によって積層されていることを特徴とする前記(1)または(2)記載の絶縁シート。
(4)ポリフェニレンサルファイド不織布がポリフェニレンサルファイド繊維を50〜100質量%含むことを特徴とする前記(1)〜(3)いずれかに記載の絶縁シート。
(5)ポリフェニレンサルファイド不織布が叩解処理されたポリフェニレンサルファイド樹脂粉末を含有していることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれかに記載の絶縁シート。
(6)ポリフェニレンサルファイド不織布を湿式抄造法により製造する工程と、ポリフェニレンサルファイド樹脂層を溶融押出法で作成する工程と、該ポリフェニレンサルファイド樹脂層に該ポリフェニレンサルファイド不織布が融着により積層一体成形される工程とを有することを特徴とする絶縁シートの製造方法。
(1)ポリフェニレンサルファイド樹脂からなることを特徴とする絶縁シート。
(2)ポリフェニレンサルファイド樹脂層の両面あるいは片面にポリフェニレンサルファイド不織布が積層された構造を特徴とする前記(1)記載の絶縁シート。
(3)ポリフェニレンサルファイド樹脂層とポリフェニレンサルファイド不織布が接着剤を介さず、該層間が融着によって積層されていることを特徴とする前記(1)または(2)記載の絶縁シート。
(4)ポリフェニレンサルファイド不織布がポリフェニレンサルファイド繊維を50〜100質量%含むことを特徴とする前記(1)〜(3)いずれかに記載の絶縁シート。
(5)ポリフェニレンサルファイド不織布が叩解処理されたポリフェニレンサルファイド樹脂粉末を含有していることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれかに記載の絶縁シート。
(6)ポリフェニレンサルファイド不織布を湿式抄造法により製造する工程と、ポリフェニレンサルファイド樹脂層を溶融押出法で作成する工程と、該ポリフェニレンサルファイド樹脂層に該ポリフェニレンサルファイド不織布が融着により積層一体成形される工程とを有することを特徴とする絶縁シートの製造方法。
本発明の絶縁シートは、耐熱性、耐薬品性および耐油性にすぐれたポリフェニレンサルファイド(以下、PPSという。)を用い、PPS樹脂層とPPS不織布とを2層あるいは3層に積層した構成にしたことにより、耐熱性および耐薬品性、耐油性に優れるとともに薄葉化が可能である。本発明の絶縁シートを用いることにより、例えば油浸モーターに使用される場合、高温状態で冷却油に浸漬して長期間にわたって用いられても、劣化せずに十分な絶縁性および強度を確保するとともに、薄葉化によるモータージェネレータのコンパクト化を達成することができる。
本発明の絶縁シートの製造方法によれば、湿式抄造法により繊維同士の分散と絡み合いが適度で強度が高い均一なPPS不織布を作製することができ、接着剤を用いずにPPS樹脂層とPPS不織布とを2層あるいは3層に積層したラミネートシート構成とすることができ、前記耐熱性および耐薬品性、耐油性に優れるとともに薄葉化が可能である絶縁シートを得ることができる。
本発明の絶縁シートの製造方法によれば、湿式抄造法により繊維同士の分散と絡み合いが適度で強度が高い均一なPPS不織布を作製することができ、接着剤を用いずにPPS樹脂層とPPS不織布とを2層あるいは3層に積層したラミネートシート構成とすることができ、前記耐熱性および耐薬品性、耐油性に優れるとともに薄葉化が可能である絶縁シートを得ることができる。
以下、本発明の実施形態について、PPS樹脂層の表面にPPS不織布を熱融着して一体成形した絶縁シートを例として説明する。
前記PPS不織布は、繊維状のPPSを用いて多孔質性の薄いシートを形成したものであり、例えば湿式抄造法により作製することができる。該繊維状のPPSとしては、延伸あるいは未延伸のPPS繊維を用いることができるが、熱融着のしやすさ及び加熱時の寸法安定性の観点から未延伸のPPS繊維を主として用いることが好ましい。
前記PPS不織布におけるPPS繊維の含有量は、PPS本来の耐熱性を損なわないために、50〜100質量%であることが好ましく、60〜100質量%がより好ましく、未延伸のPPS繊維が60〜100質量%であればさらに好ましい。
前記湿式抄造法にて不織布を作製する際には、シート強度を確保するために、抄造温度を未延伸PPS繊維同士が融着する温度(例えば200℃)以上とすることによりドライヤーでPPS繊維間を融着させることもでき、あるいは、繊維間を融着させてシート強度を確保するためにバインダー繊維を添加することもできる。特に、一般的な抄紙用ドライヤーは150℃程度以下までしか設定できない場合があり、このような抄紙機を使用して本実施形態のPPS不織布を作製する場合には、バインダーを添加することが有効である。
前記バインダーの形態の例としては、繊維状、粉末状、パルプ状に加え、樹脂粒子が水に分散されたエマルジョン状態の樹脂を用いることもできる。
前記バインダーの物質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニロン、PVA等を用いることができる。バインダー機能に加えて、湿式抄造工程時の湿紙強度確保やワイヤー剥離性の観点から、繊維径が細い繊維を用いることが好ましい。特に、前記150℃程度以下までしか設定できない抄紙用ドライヤーを用いる場合には、150℃以下の設定温度で溶融する物質であれば繊維間を融着させる効果を期待できる。加えて、ドライヤー加熱による熱融着ではなく、繊維間の絡み合いである物理的な強度向上を目的に天然パルプを用いてもよい。
前記バインダーの添加量は、絶縁シートの耐熱性を損なわないために10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。この範囲を超えてバインダーを添加すると、バインダー成分の低い耐熱性に影響されて、絶縁シート全体の耐熱性の低下による高温長期使用時の強度劣化等の不具合を発生する可能性がある。
前記PPS不織布に用いられる延伸あるいは未延伸のPPS繊維の繊維長及び繊維径は、適宜に設定すればよい。ただし、特に前記湿式抄造法により不織布を作製する場合には、繊維長は0.5〜25mmが好ましく、より好ましくは1〜6mmである。また、繊維径は30μm以下が好ましく、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。湿式抄造法における繊維長の適正範囲については、後述する抄紙用スラリーにおいて、PPS繊維の繊維長を0.5mm以上とすることで、繊維同士の分散と絡み合いが適度となり湿式不織布の強度を高くすることができる。一方、この範囲を超えて長い繊維を用いた場合、該スラリー中で繊維同士が分散せずにそのまま不織布中に残る「ダマ」が発生しやすくなり、不織布中における繊維の分散が不均一となる「ムラ」やそれによって不織布がうねる「ヨレ」が発生しやすくなり、場合によっては不織布に穴があく「欠点」が発生してしまう可能性も生じやすくなる。湿式抄造法における繊維径の適正範囲については、繊維径が前記範囲より大きいと繊維の分散が均一な湿式不織布を得ることが困難となるとともに、不織布を薄くすることが困難となりやすい。
前記未延伸あるいは延伸PPS繊維を叩解処理して繊維長の調整あるいは毛羽立たせることもできる。これにより、緻密且つ繊維同士の絡みあるいはひっかかりによる強度確保等の効果を得ることが出来る。叩解処理方法としては、抄紙工程で一般的に用いられるSDR、DDR、ビーター等で適宜行うことが出来る。
前記叩解処理したPPS繊維の代用としてPPS樹脂粉末を叩解処理したものを用いることもできる。コスト面から考えてPPS繊維よりPPS樹脂粉末を用いることが有利であるが、樹脂粉末をそのまま湿式抄紙工程で抄造することは困難である。したがって、叩解処理によりPPS樹脂粉末の小粒径化や毛羽立ちを行い、樹脂粉末同士のひっかかりやPPS繊維との絡みやひっかかりにより不織布を得ることが可能となる。PPS樹脂粉末の叩解処理方法は、繊維と同じくSDR、DDR、ビーターを用いることができる。加えて、乾式でのミキサーやすりつぶし、粉砕等を行う各種機械による処理を行うこともできる。
前記PPS樹脂粉末を使用する場合、特に前記湿式抄造法により不織布を作製する場合においては、PPS樹脂粉末の単独では叩解処理したとしても不織布を作製することが困難であるために、PPS繊維と叩解処理したPPS樹脂粉末とを混抄することが好ましい。湿式抄造法においてPPS樹脂粉末を使用する場合のPPS繊維とPPS樹脂粉末との配合比率は、95:5 〜 40:60質量%の範囲、より好ましくは80:20 〜 50:50質量%の範囲である。この範囲を超えてPPS樹脂粉末を用いると、抄紙工程での湿紙強度の確保が困難となる恐れがあり、均一な地合いの不織布を得ることが困難となりやすい。
前記PPS不織布の坪量は、150g/m2以下が好ましく、より好ましくは100g/m2以下、更に好ましくは50g/m2以下である。PPS不織布の坪量が150g/m2以上であると、本発明の特徴である薄い絶縁シートを得ることが困難となる。薄い絶縁シートを得る為になるべく坪量が小さい不織布を抄造することが好ましいが、製造工程に必要な強度等を考慮に入れて所望の坪量に設定する必要がある。
次に、本施形態における湿式抄造法でPPS不織布を製造する方法について説明する。
湿式抄造法でPPS不織布を製造するために、PPS繊維、必要に応じてバインダー繊維と各種抄紙用薬剤、例えば界面活性剤、分散剤、粘剤、消泡剤等を水に添加して分散させた抄紙用スラリーを作製する。
前記抄紙用スラリーの濃度は、0.005〜5質量%とすることが好ましい。この範囲より低い濃度では、抄紙工程で大量の水が必要となり生産性が悪くなる恐れがある。また、この範囲より高い濃度では繊維の分散状態が悪くなりやすく、前記ダマ、ムラ等の発生により均一な湿式不織布を得ることが困難となる恐れがある。
以上のようにして得られたスラリーを丸網式、長網式、短網式、傾斜網式などの抄紙機を用いて抄紙し、これをヤンキードライヤー、ロータリードライヤー、バンドドライヤー等で乾燥し、湿式不織布を得ることができる。
抄紙工程で得られた不織布に加熱・加圧処理を施して厚さ調整および繊維間の熱融着による強度向上を施すことができる。未延伸PPS繊維は延伸PPS繊維に比べて、高温・加圧工程で軟化しやすく、繊維間の融着による強度向上が行いやすい。加熱・加圧処理方法としては、平板等での熱プレス、熱カレンダーなどを使用することができる。なかでも、連続して加工ができる点から熱カレンダーを用いることが好ましい。カレンダーロールは、金属−金属ロール、金属−紙ロール、金属−ゴムロール等を使用することが出来る。
加熱・加圧処理における圧力としては、98N/cm〜20KN/cmが好ましい。また、温度はPPS繊維が軟化・溶融する範囲の温度で、例えば200℃〜300℃の範囲で圧力を考慮に入れて適宜調整することが出来る。
加熱・加圧処理における圧力としては、98N/cm〜20KN/cmが好ましい。また、温度はPPS繊維が軟化・溶融する範囲の温度で、例えば200℃〜300℃の範囲で圧力を考慮に入れて適宜調整することが出来る。
次に本実施形態におけるPPS樹脂層の製造方法およびPPS不織布との一体成形法について説明する。
前記PPS樹脂層は、溶融押出成形法によりフィルム状となったものをいう。例えば加熱した押出機のシリンダーの中のスクリューの回転により樹脂粉末、ペレットが供給される。樹脂粉末や、ペレットはスクリューによりシリンダー内を搬送されるとともに溶融して均一な溶融樹脂となる。該溶融樹脂は押出機先端のダイよりフィルム状に押し出され、空冷によりフィルムとなる。
前記PPS樹脂層の厚さは、前記コンパクト化及び電気エネルギー変換の高効率化の要望等から、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、40μm以下であればさらに好ましい。ただし、厚さが薄くなりすぎると絶縁性が確保できなくなる恐れがあるので、求められる絶縁特性によっても厚さは適宜調整される。
本実施形態において、PPS樹脂層とPPS不織布との一体成形は、前記フィルム状にPPS樹脂が溶融押出された直後のPPS樹脂層にPPS不織布を積層して、加圧により融着して一体成形する。この際、ニップロール等により加圧することでより強固にPPS樹脂層とPPS不織布層が溶融接着する。また、PPS樹脂層もPPS不織布もどちらも同じPPS樹脂からなるために、熱溶融による接着が容易であり、異種材料間の接着に比べて強固な接着界面をもつことが出来る。PPS樹脂層へのPPS不織布の積層は、片面あるいは両面のどちらでもよく、両面の場合は、例えば溶融押出機の先端のダイより垂直方向にPPS樹脂層が押し出されたところに、両側からPPS不織布を差し込んでニップロール等で加圧により一体成形することができる。PPS樹脂層の片面にのみPPS不織布を積層する場合は、PPS不織布を積層しない反対面は剥離紙等を差し込んで、後工程で剥離する方法がある。
本実施形態において、PPS樹脂層とPPS不織布との一体成形は、前記フィルム状にPPS樹脂が溶融押出された直後のPPS樹脂層にPPS不織布を積層して、加圧により融着して一体成形する。この際、ニップロール等により加圧することでより強固にPPS樹脂層とPPS不織布層が溶融接着する。また、PPS樹脂層もPPS不織布もどちらも同じPPS樹脂からなるために、熱溶融による接着が容易であり、異種材料間の接着に比べて強固な接着界面をもつことが出来る。PPS樹脂層へのPPS不織布の積層は、片面あるいは両面のどちらでもよく、両面の場合は、例えば溶融押出機の先端のダイより垂直方向にPPS樹脂層が押し出されたところに、両側からPPS不織布を差し込んでニップロール等で加圧により一体成形することができる。PPS樹脂層の片面にのみPPS不織布を積層する場合は、PPS不織布を積層しない反対面は剥離紙等を差し込んで、後工程で剥離する方法がある。
上記実施形態からもわかる通り、本発明において、PPS樹脂層とPPS不織布とを積層して一体成形した絶縁シートは、接着剤を使用しないため、接着剤由来の特性劣化が無く、また、PPS樹脂フィルム単体に比べて、PPS不織布の層が存在するために、表面のキズによる絶縁性の低下防止、表面の滑り性に起因する取扱い性、引き裂き強度の向上、紙のこしおよび柔軟性のバランス等の観点からモーターへの組み込みの際の加工性に優れているという特徴を有する。
実施例及び比較例より本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔測定・評価方法〕
耐熱テストは、絶縁シートを絶縁油中、150℃の条件で1000時間暴露し、形状変化と絶縁破壊の強さ(JIS C2110)を測定した。
耐熱テストは、絶縁シートを絶縁油中、150℃の条件で1000時間暴露し、形状変化と絶縁破壊の強さ(JIS C2110)を測定した。
[実施例1]
(PPS不織布の作成)
PPS繊維として、未延伸PPS繊維(東レ株式会社製、商品名:トルコン 5.5dtex × 5mm)をスラリー濃度0.2%に調整して、傾斜網式の湿式抄造機で抄造し、ヤンキードライヤー(温度140℃)にて乾燥させて坪量50g/m2のシートを抄造し、引き続き、熱カレンダーにおいて、カレンダーロール温度200℃、線圧100N/cmの条件で熱接着処理を行いPPS不織布を作成した。
(PPS不織布の作成)
PPS繊維として、未延伸PPS繊維(東レ株式会社製、商品名:トルコン 5.5dtex × 5mm)をスラリー濃度0.2%に調整して、傾斜網式の湿式抄造機で抄造し、ヤンキードライヤー(温度140℃)にて乾燥させて坪量50g/m2のシートを抄造し、引き続き、熱カレンダーにおいて、カレンダーロール温度200℃、線圧100N/cmの条件で熱接着処理を行いPPS不織布を作成した。
(PPS樹脂層の作成とPPS不織布の積層)
PPS樹脂粉末(ポリプラスチックス株式会社製、商品名:フォートロン W−220A)を用い、溶融押出装置において、シリンダーおよびダイの設定温度を280〜300℃にしてPPS樹脂を押出し、厚さ約30μmのフィルム状のPPS樹脂層を作成し、ダイからPPS樹脂層がフィルム状にでてきた直後に、坪量50g/m2のPPS不織布をPPS樹脂層の両面に差込み、ニップロールにて加圧しながらPPS樹脂層とPPS不織布を積層一体成形した。
PPS樹脂粉末(ポリプラスチックス株式会社製、商品名:フォートロン W−220A)を用い、溶融押出装置において、シリンダーおよびダイの設定温度を280〜300℃にしてPPS樹脂を押出し、厚さ約30μmのフィルム状のPPS樹脂層を作成し、ダイからPPS樹脂層がフィルム状にでてきた直後に、坪量50g/m2のPPS不織布をPPS樹脂層の両面に差込み、ニップロールにて加圧しながらPPS樹脂層とPPS不織布を積層一体成形した。
(カレンダー処理による厚さ調整)
熱カレンダーにおいて、カレンダーロール温度235℃、線圧150N/cmで上記3層構造のPPSシートを加熱・加圧処理して、厚さ100μmのPPS不織布/PPS樹脂層/PPS不織布からなる3層構造の実施例1の絶縁シートを得た。
熱カレンダーにおいて、カレンダーロール温度235℃、線圧150N/cmで上記3層構造のPPSシートを加熱・加圧処理して、厚さ100μmのPPS不織布/PPS樹脂層/PPS不織布からなる3層構造の実施例1の絶縁シートを得た。
実施例1の絶縁シートについて、前記耐熱テストを実施したところ、形状変化は認められず、絶縁破壊強さも初期値を維持した。
[実施例2]
PPS繊維として、未延伸PPS繊維(東レ株式会社製、商品名:トルコン 5.5dtex × 5mm)及びPPS樹脂粉末(ポリプラスチックス株式会社製、商品名:フォートロン W−220A)をダブルディスクリファイナーで粒子径20μmまで叩解したPPS叩解品を重量比70:30で混合したスラリー濃度0.2%に調整して、傾斜網式の湿式抄造機で抄造し、ヤンキードライヤー(温度140℃)にて乾燥させて坪量50g/m2のPPS不織布を作成した。前記不織布を実施例1と同様な方法で、厚さ100μmのPPS不織布/PPS樹脂層/PPS不織布からなる3層構造の実施例2の絶縁シートを得た。
PPS繊維として、未延伸PPS繊維(東レ株式会社製、商品名:トルコン 5.5dtex × 5mm)及びPPS樹脂粉末(ポリプラスチックス株式会社製、商品名:フォートロン W−220A)をダブルディスクリファイナーで粒子径20μmまで叩解したPPS叩解品を重量比70:30で混合したスラリー濃度0.2%に調整して、傾斜網式の湿式抄造機で抄造し、ヤンキードライヤー(温度140℃)にて乾燥させて坪量50g/m2のPPS不織布を作成した。前記不織布を実施例1と同様な方法で、厚さ100μmのPPS不織布/PPS樹脂層/PPS不織布からなる3層構造の実施例2の絶縁シートを得た。
実施例2の絶縁シートについて、前記耐熱テストを実施したところ、形状変化は認められず、絶縁破壊強さも初期値を維持した。
[比較例1]
厚さ25μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人株式会社製、商品名:テオネックス)の両面に耐熱接着剤(セメダイン株式会社製 商品名EP160)を塗布し厚さ15μmの接着剤層を設け、実施例1の不織布を両面の接着剤層に積層し、厚さ200μmのPPS不織布/接着剤/ポリエチレンナフタレートフィルム/接着剤/PPS不織布からなる5層構造の比較例1の絶縁シートを得た。
厚さ25μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人株式会社製、商品名:テオネックス)の両面に耐熱接着剤(セメダイン株式会社製 商品名EP160)を塗布し厚さ15μmの接着剤層を設け、実施例1の不織布を両面の接着剤層に積層し、厚さ200μmのPPS不織布/接着剤/ポリエチレンナフタレートフィルム/接着剤/PPS不織布からなる5層構造の比較例1の絶縁シートを得た。
比較例1の絶縁シートについて、前記耐熱テストを実施したところ、PPS不織布がポリエチレンナフタレートフィルムから剥離し、5層構造の形状を維持できず、絶縁破壊強度の測定が出来なかった。
Claims (6)
- ポリフェニレンサルファイド樹脂からなることを特徴とする絶縁シート。
- ポリフェニレンサルファイド樹脂層の両面あるいは片面にポリフェニレンサルファイド不織布が積層された構造を特徴とする請求項1記載の絶縁シート。
- ポリフェニレンサルファイド樹脂層とポリフェニレンサルファイド不織布が接着剤を介さず、該層間が融着によって積層されていることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁シート。
- ポリフェニレンサルファイド不織布がポリフェニレンサルファイド繊維を50〜100質量%含むことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の絶縁シート。
- ポリフェニレンサルファイド不織布が叩解処理されたポリフェニレンサルファイド樹脂粉末を含有していることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の絶縁シート。
- ポリフェニレンサルファイド不織布を湿式抄造法により製造する工程と、ポリフェニレンサルファイド樹脂層を溶融押出法で作成する工程と、該ポリフェニレンサルファイド樹脂層に該ポリフェニレンサルファイド不織布が融着により積層一体成形される工程とを有することを特徴とする絶縁シートの製造方法。
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