JP2014095235A - 制振機能付与梁受金物 - Google Patents
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Abstract
【課題】地震等の振動に対して制振機能を発揮する梁受金物を提供する。
【解決手段】本発明は、柱または梁(第1梁)の側面に他の梁(第2梁)の端部を接合する梁受金物であって、第2梁の端部の側面または第2梁の端面から形成したスリットにおける第2梁の内部側面を受ける梁受金物の側板部の一部または全部が制振機能を有し、特に、前記側板部において、粘弾性体からなる板片(粘弾性体板片)が備わっており、前記制振機能は、前記側板部に備わる粘弾性体板片により発揮されることを特徴とし、さらに加えて、前記粘弾性体板片は前記側板部における2枚の鋼板(側板片および押さえ板片)の間にサンドイッチ状に挟持され配置され、また、前記粘弾性体板片は接着剤等によって前記2枚の鋼板に結合していることを特徴とする梁受金物である。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、柱または梁(第1梁)の側面に他の梁(第2梁)の端部を接合する梁受金物であって、第2梁の端部の側面または第2梁の端面から形成したスリットにおける第2梁の内部側面を受ける梁受金物の側板部の一部または全部が制振機能を有し、特に、前記側板部において、粘弾性体からなる板片(粘弾性体板片)が備わっており、前記制振機能は、前記側板部に備わる粘弾性体板片により発揮されることを特徴とし、さらに加えて、前記粘弾性体板片は前記側板部における2枚の鋼板(側板片および押さえ板片)の間にサンドイッチ状に挟持され配置され、また、前記粘弾性体板片は接着剤等によって前記2枚の鋼板に結合していることを特徴とする梁受金物である。
【選択図】図1
Description
本発明は、木造構造物用の梁受金物に関するものであり、より詳細には地震等に強い制振機能を備えた在来軸組構法用梁受金物に関する。
日本は環太平洋造山火山帯の一角を占めており、古来地震大国として知られている。1995年阪神淡路大震災以降でも、2004年中越地震、2005年福岡西方沖地震、2007年能登半島地震、2007年中越地震、2008年岩手・宮城内陸地震、そして2011年東日本大震災などの大規模な地震が発生しており、そのたびに木造住宅の被害がメディアで報じられる。これらの被害原因は明治以来基本的には変わっておらず、総じて言えば木造建築物における耐力壁や接合部の耐力不足である。日本の木造住宅の主体は在来構法と呼ばれる軸組構法であり、設計の自由度が大きいことから、複雑な間取りとなり、壁量計算という簡易な計算はしているものの、耐震性に疑問が持たれるものも少なくない。また、在来軸組構法による住宅に用いられる制振装置は、在来軸組構法に使用される梁受金物とは別に設置されており、施工も複雑になるためコスト増となる。在来軸組み構法では、柱や梁との接合部は、部材を加工して蟻掛け等によって結合したり、梁受金物で梁端部を支え、梁受金物と柱や梁とをボルトで固定している。この梁受金物に制振機能を付与できれば、在来軸組み構法を大きく変更することがなく木造建築コストの増大を抑制することが可能となる。
図11は、従来の梁受金物を用いて梁を柱に結合させた状態を示した図である。図11において、柱や梁(柱等)104と交差して梁102が横方向に配置され、それらの交差部分に梁受金物101を用いて別の梁103を梁102と直交する方向に取り付けている。梁受金物101は、梁102の側面において固定板101−Fにより取り付けられ、固定板101−Fのボルト孔106にボルトネジ等を通して梁102に固定されている。梁受金物101の対向する側板(101−S1、S2)の間に梁103の側面が嵌合し、梁103の底面は梁受金物101の底板101−Bに載置される。梁103は、取り付け孔105を通して、スクリューボルトで梁受金物101の側板101―S1および101−S2に固定される。あるいは、梁103は、取り付け孔105から梁103に開けた通し孔を通して対向する側板の取り付け孔に通した通しボルトまたは通しピン(ドリフトピン等)をナット等で締め付けることによって、梁受け金物101に固定することもできる。
従来の在来軸組構法用梁受金物は、上述したように、柱や梁(柱等)にボルトやネジ等を用いて取り付けられ、その梁受金物を用いて梁を柱等に組み付け固定するものである。しかし、この梁受金物は基本的には組み付けられた梁を受けているだけで、横方向の力に対してボルトや通しピン等でせん断力に抵抗しており、主に梁等の荷重を鉛直方向に支えるものである。従って、横方向の力や振動に弱く、特に地震に対する制振機能は殆どない。すなわち、従来の梁受金物の材質は鋼(スチール)であり、梁等の材木の側面に鋼が直接接触して押さえている。たとえば、図11において、梁103の端部における側面が梁受金物の側板101(101−S1、S2)に直接接触して押さえている。梁103は、梁受金物の側板101(101−S1、S2)に設けた取り付け孔105から横方向にスクリューボルトや通しボルトまたは通しピンが入り、両側から梁受金物の側板101(101−S1、S2)に押さえられてはいるが、横方向の振動に対しては弱いため、ボルトやナット等が弛んだり、あるいは梁103が裂けたり、割れたりする恐れがある。また、地面や床からの振動が柱等へ伝わり揺れたときに、その振動の力が梁受け金物に取り付けられた梁に直接伝わり梁の接合軸組構造がゆがむ可能性も大きい。
本発明は、梁等を押さえる梁受金物に制振機能を持たせる。たとえば、梁受金物の側板部分に制振機能を有する粘弾性体材料からなる押さえ板を付加して、地震等の振動に対して制振機能を発揮する梁受金物を提供するものである。具体的には以下の特徴を有する。
(1)本発明は、柱または梁(第1梁)の側面に他の梁(第2梁)の端部を接合する梁受金物であって、第2梁の端部の側面または第2梁の端面から形成したスリットにおける第2梁の内部側面を受ける梁受金物の側板部の一部が制振機能を有し、特に、前記側板部において、粘弾性体からなる板片(粘弾性体板片)が備わっており、前記制振機能は、前記側板部に備わる粘弾性体板片により発揮されることを特徴とし、さらに加えて、前記粘弾性体板片は前記側板部における2枚の鋼板(側板片および押さえ板片)の間にサンドイッチ状に挟持されて配置され、また、前記粘弾性体板片は接着剤によって前記2枚の鋼板に結合していることを特徴とする梁受金物である。
(2)本発明は、上記に加えて、梁受金物が固定される仕口において、梁受金物は仕口平面から見てコの字型に形成されており、前記梁受金物は、柱または梁に固定される背板部{中央片(背板片)}および前記背板部{中央片(背板片)}と一体となり、その両側に配置される背板部に垂直でありかつ互いに平行な一対の側板部(側板片)から構成され、さらに、前記梁受金物の側板片上部および/または下部のみに粘弾性体板片を前記側板片内側に付着させ、前記粘弾性体板片はその内側からコの字型形状の押さえ板の一対の側板片で押さえられることによって、前記側板部の上部および/または下部が側板片−粘弾性体板片−押さえ板側板片のサンドイッチ構造となっており、さらに加えて、前記一対の側板部の間に第2梁の両側面が挟まれるとともに、前記側板部の外側から挿入された(たとえば、ボルトまたはドリフトピン等の棒状の)固定具にて前記梁受金物と第2梁が相互に固定されることを特徴とする梁受金物である。
(3)本発明は、上記に加えて、前記側板部が第2梁端面に形成されたスリットへ挿入されるとともに、第2梁の側面から挿入された(たとえば、ボルトまたはドリフトピン等の棒状の)固定具にて前記梁受金物と前記他方の梁が相互に固定されることを特徴とする梁受金物である。
(4)本発明は、梁受金物は板状の柱貫通型梁受金物であり、柱または第1梁を貫通する板状部材は側板片であり、第2梁端面から形成したスリットに挿入される側板部は、中央の側板片の両側に一対の粘弾性体板片が付着し、さらにそれらの外側に前記粘弾性体板片に接着し梁を受ける押さえ板片から構成されることを特徴とする梁受金物である。
(4)本発明は、梁受金物は板状の柱貫通型梁受金物であり、柱または第1梁を貫通する板状部材は側板片であり、第2梁端面から形成したスリットに挿入される側板部は、中央の側板片の両側に一対の粘弾性体板片が付着し、さらにそれらの外側に前記粘弾性体板片に接着し梁を受ける押さえ板片から構成されることを特徴とする梁受金物である。
(5)本発明は、上記に加えて、前記側板部は、前記背板部を構成する背板片と一体の側板片、前記側板片の一部に接着した粘弾性体板片、前記粘弾性体板片に接着し梁を受ける押さえ板片から構成されることを特徴とし、前記一対の側板片および前記一対の側板片の間に配置された梁を貫通する固定具をさらに有し、前記固定具を通す貫通孔は前記側板片のうちで前記粘弾性体板片と接着していない領域に存在することを特徴とする梁受金物である。
(6)本発明は、さらに、前記側板部は、前記背板部を構成する背板片と一体の側板片、前記側板片の一部に接着した粘弾性体板片、前記粘弾性体板片に接着し梁を受ける押さえ板片から構成されることを特徴とし、前記一対の押さえ板片および前記一対の押さえ板片の間に配置された梁を貫通する固定具をさらに有し、前記固定棒を通す貫通孔は前記押さえ板片のうちで粘弾性体板片と接着していない領域に存在することを特徴とする梁受金物である。
本発明の梁受金物は、柱等と梁との接触部分に制振機能を有する粘弾性体を介在しているので、地震等による振動で柱等が揺れても、建物の振動エネルギーは制振機能を有する粘弾性体で吸収され、建物の変形が小さくなる。この結果、建物の損傷を非常に小さくでき、地震の被害を大幅に低減できる。しかも在来軸組構法を使用できるので建造方法が単純であり、コストアップも小さくすることができる。
図1は、本発明の梁受金物の一実施形態を示す斜視図である。図1に示す梁受金物11は上方(あるいは仕口平面)から見た平面形状がU字型またはコの字型に形成された板材であり、その材質は従来使用されているものと同様に、たとえば鋼板や鋳造品である。鋼板として、たとえば熱間圧延軟鋼板(SPHC)が挙げられる。コの字型の梁受金物11は、中央の背板片(あるいは中央片)11−Bからなる背板部、およびその両側の一対の側板片11−S(11−S1、S2)からなる側板部から構成される。中央片およびその両側の一対の側板片は通常一体となった鋼板等を直角に折り曲げたものである。中央片11−Bは柱または梁(以下、柱等と記載する場合がある)にボルト孔11−B−Hからボルトを通して固定される。本発明の梁受金物11は、側板部において側板片11−S(11−S1、S2)に粘弾性体からなる左右一対の側板片(粘弾性体側板片)13および16が付加されている。さらに側板片(粘弾性体側板片)13および16を側板片11−S(11−S1、S2)との間に挟んで固定する鋼板等の左右一対の押さえ板片14および19も付加される。
従って、梁受金物11の側板部は、中央片と一体となった側板片11−S(11−S1、S2)と押さえ板片14および19の間に粘弾性体側板片13および16がそれぞれ入り込んだ(あるいは、挟持された)サンドイッチ構造をしている。サンドイッチ構造をしている部分は、図1に示すように側板片11−S(11−S1、S2)の一部に粘弾性体側板片13および16が付着し、その粘弾性体側板片13および16に押さえ板片14および19の一部が付着している。これらの付着は、たとえば接着剤を用いて強固に接着している。
柱等の側面に横方向に直角に組み付けられる梁31(破線で示す)は、コの字型の梁受金物11の内側に入り、押さえ板片14および19の間に嵌合するように入り込む。すなわち、押さえ板片14および19の間隔W1と梁31の幅W2はほぼ等しくなるように(W1をW2より少し狭く)設計する。この結果、梁31は押さえ板片14および19からの押圧力および摩擦力によって固定される。図1において、梁31は重力により下方へも力を受けるが、この押圧力および摩擦力と釣り合い、梁31は下方へは動かないようになる。
この梁31の梁受金物11による固定を強固にするために、梁受金物11の側板片11−S(11−S1)に設けたピン通し穴11−S1−H1および11−S1−H2から、ボルトやドリフトピン15を入れて、梁31の上部に設けたピン通し穴31−H1および31−H2に挿入して、梁31の上部に設けた他方のピン通し穴31−H3等から出して、さらに梁受金物11の他方の側板片11−S(11−S2)に設けたピン通し穴11−S2−H1および11−S2−H2から出して、梁31を梁受金物11の側板片11−S(11−S1、11−S2)で鉛直方向へ支えるようにしている。
上記に加えて、あるいは、梁31の下部においても、押さえ板14に設けたピン通し穴14−H1および14−H2、梁31に設けたピン通し穴31−H5,31−H6等、他方の押さえ板19に設けたピン通し穴19−H1、19−H2へボルトやドリフトピン17を挿入して、押さえ板14および19で梁31を鉛直方向へ支えるようにしている。
従来の梁受金物では一対の(鋼板等から形成された)側板片11−Sの間に直接梁が挟まれるが、本発明の梁受金物11では一対の3層構造(鋼板等の側板片、粘弾性体側板片、鋼板等の押さえ板片)からなる側板部の(一部の)間に梁が挟まれる。粘弾性体側板片は制振機能を有するので、柱等からの地震等の振動を吸収したり和らげたりする。粘弾性体側板片の厚みは1mm〜10mmである。1mmより薄くすると制振機能の作用が小さい。10mmより厚いと梁を押さえる力が小さくなるので好ましくない。粘弾性体側板片は、たとえば制振機能を有する防振ゴム、制振樹脂、防振(高減衰能)セラミックス、制振合金、あるいはこれらの複合体で形成される。防振ゴムとして、たとえば、天然ゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム等の各種ゴムが挙げられる。制振樹脂として、たとえば、ポリイミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高減衰能樹脂が挙げられる。
図1から分かるように、梁受金物11の側板片11−S(11−S1、11−S2)の上部の一部は粘弾性体側板片13が存在しない。この粘弾性体側板片13の存在しない側板片11−S(11−S1、11−S2)の部分に、梁31を鉛直方向に支えるドリフトピン15の挿入部(ピン通し穴11−S1−H1等やピン通し穴11−S2−H1等)が設けられる。また、梁受金物11の側板片11−S(11−S1、11−S2)の下部は粘弾性体側板片13および16を挟んで押さえ板片14および19が存在し、この押さえ板片14および19の間に密着して梁31が挟まれている。さらに、押さえ板片14および19の一部(粘弾性体側板片13および16の存在しない部分)に梁31を鉛直方向に支えるドリフトピン17の挿入部(ピン通し穴14−H1等、19−H1等)が存在する。このように柱等に固定された梁受金物の一部に粘弾性体(側板片)を介在して梁を横方向に押さえるようにする構造を作ることによって、柱等が地面から受ける振動(エネルギー)を粘弾性体(側板片)で吸収することができるので、所謂制振機能を有し梁の振動を小さくすることができる。
重要なことは、押さえ板は粘弾性体を介さずに梁受金物本体(側板片)に接触しないようにする。また、梁受金物(本体)の一部にドリフトピン等の梁を鉛直方向に支える領域を設けても良い。さらに、押さえ板の一部にドリフトピン等の梁を鉛直方向に支える領域を設けても良い。梁受金物の側板片11−S(11−S1、11−S2)における梁を鉛直方向に支える領域を除いた部分はできるだけ広くし、粘弾性体側板片13および16と接触する領域を多く取ることにより制振機能を高めることができる。たとえば、梁受金物の側板片11−S(11−S1、11−S2)の30%〜90%を粘弾性体側板片の接着領域とする。90%以上では、梁を鉛直方向に支える領域が少なくなり、30%以下では制振機能が小さくなる。同様な理由により、押さえ板14および19についても30%〜90%を粘弾性体側板片の接着領域とすることが望ましい。
図2は、柱または梁に取り付けた本発明の梁受金物に別の梁を接合する状態を示す図である。図2に示す梁受金物11は、スリットを有する梁を柱等に結合するときに用いることができる。梁受金物の形状は図1に示すものと同様に上方(あるいは仕口平面)から見た平面形状がU字型またはコの字型に形成された板材である。図1に示した梁受金物はコの字形状の内側(両側側板の内側)の一部に粘弾性体および押さえ板を有しているが、図2に示す梁受金物は、これらに加えて、コの字形状の外側(両側側板の外側)の一部にも粘弾性体および押さえ板を有している。
すなわち、梁受金物11において、中央片11−Bを挟んで左右(両側)に配置される対向する一対の側板部は、中央片11−Bと同じ材料で一体となった側板片11−S(11−S1、S2)、この側板片11−S(11−S1、S2)の一方の側板片11−S1の一部に付着した制振機能を有する粘弾性体側板片13(13−S1、S2)、さらにその粘弾性体側板片13(13−S1、S2)に付着した鋼板等から成る押さえ板片14(14−S1、S2)、さらに側板片11−S(11−S1、S2)の一方の側板片11−S2の一部に付着した制振機能を有する粘弾性体側板片16(16−S1、S2)、さらにその粘弾性体側板片16(16−S1、S2)に付着した鋼板等から成る押さえ板片19−S(19−S1、S2)から構成されている。この梁受金物11は、柱または梁21の側面に取り付けられる。たとえば、中央片11−Bを柱または梁21の1つの側面の取り付け位置に合わせて配置し、反対の側面からボルト17を柱または梁21に設けた通し孔に差し込んで柱または梁21内を貫通させ、さらに中央片11−Bに設けたボルト孔11−B−Hを通して、ナット18で締め付けて、梁受金物11を柱または梁21に固定する。これらの固定用ボルトの数は梁受金物に結合する梁等の重量等により適宜決定される。
図2においては、別の梁22の端面が、梁受金物11が取り付けられた柱または梁21の側面にT字型に接合する。ボルトナットが通る背板部に対応する梁端面はプレカットされて凹部を形成している。また、梁22の端部において、その端面から梁22の長手方向に、スリット25(25−S1、S2)が梁受金物11の側板部の形状およびサイズに合わせて作製されている。すなわち、スリット25の幅W4は梁受金物11の側板部の幅W3とほぼ等しくし(W4の方をW3より少し狭くする)、梁受金物11の側板部がスリット25にピッタリと(隙間なく)挿入できるようにする。梁22の端面が柱または梁21の側面にT字型に接合した状態では、梁受金物11の一対の側板部は一対のスリットに隙間なく嵌合し、スリットにおける梁の側面を梁受金物11の側板部が接触し(横方向に)押圧力により押さえた状態となっている。梁22は重力により鉛直方向へ力を受けるが、この押圧力による摩擦力によって下方へ動かないようになる。
さらに、梁22の側面から反対の側面に貫通する貫通孔26は、梁22の一方の側面の通し穴26−H1からスリット25(25−S1、25−S2)を抜けてスリット側面の通し穴26―S1−H、26−S2−Hを通り、反対の側面に貫通しているとともに、梁22のスリット部25(25−S1、S2)に嵌合する梁受金物11の側板部11―S(S1、S2)に設けた貫通孔(ボルト孔)11−S1−H等{11−S1−H,11−S2−H、14−S1−H、19−S2−H等}と一直線に貫通した通し孔となっているので、これらの通し孔に梁22の側面の貫通孔26(26−H1)からドリフトピンやボルト等の固定部材28を入れて、梁22の反対側の側面から出して、梁22を梁受金物11で鉛直方向に支えるようにしても良い。
たとえば、固定部材28は、梁22の一方の側面における上部通し穴26−H1から挿入され、スリット25―S2に抜け、梁受金物11の側板片11―S2に設けた貫通孔11−S2−Hを通り、スリット25−S2の他方の通し穴26−S2−Hに入り、梁22の中央部材を通りさらにスリット25―S1に抜け、梁受金物11の側板片11―S1に設けた貫通孔11−S1−Hを通り、スリット25−S1の梁22の側面の他方の通し穴26−S1−Hに入り、梁22の他方の側面から出る。これにより、梁22は梁受金物11の側板片11―S(S1、S2)によって鉛直方向に支えられている。
上記に加えて、或いは、固定部材28は、梁22の一方の側面における下部通し穴26−H2から挿入され、スリット25−S2に嵌合した押さえ板19(19−S1、S2)に設けた貫通孔19−S1−Hおよび19−S2−Hを抜けて梁22の中央部材に入り、さらにスリット25−S1に嵌合した押さえ板14(14−S1、S2)に設けた貫通孔14−S1−H等を抜けて、梁22の他方のスリット側面の通し穴に入り、他方の梁22の側面から出る。これにより、梁22は梁受金物11の押さえ板14(14−S1、S2)および19(19−S1、S2)によって鉛直方向に支えられている。梁受金物11の押さえ板14(14−S1、S2)および19(19−S1、S2)は粘弾性体側板片13(13−S1、S2)および16(16−S1、16−S2)に強く接着し、粘弾性体側板片13(13−S1、S2)および16(16−S1、16−S2)は梁受金物11の側板片11―S(S1、S2)に強く接着しているので、梁22は結局梁受金物11に鉛直方向に支えられている。
この結果、梁受金物11を用いて柱または梁21と別の梁22がT字型に接合することができる。図2に示す梁受金物を用いた柱等−梁接合では、柱等21および梁22は制振機能を有する粘弾性体13および16を介在して結合しているので、柱等21からの振動は粘弾性体13および16で吸収されて梁22へ殆ど伝搬しない。すなわち、梁受金物11によって柱や梁21に接合した梁22には、地震による振動が殆ど伝わらず、建物に及ぼす損傷等の影響を大幅に低減できる。このように本発明の制振機構を有する梁受金物を用いれば、地震等の振動に対して建物に入る振動をなくすか弱くすることができる。
図3は、本発明の梁受金物の別の実施形態を示す図である。図3に示す梁受金物は柱貫通型梁受金物で板状形状を有する。柱または梁41の側面の中央に長手方向にスリット44を設けて、そのスリット44に梁受金物42を挿入貫通させて固定する。図3(b)は梁受金物の平面図である。梁受金物42と柱41の位置関係が分かるように柱41を破線で示している。梁受金物42が柱41に形成されたスリット44に挿入貫通され、柱41の他の側面から挿入されたボルトまたはドリフトピンが、梁受金物42の中央に配置されているボルト孔またはピン通し孔(以下ではボルト孔と記載)46へ挿通され、さらに他方の反対側側面に貫通してナット等で固定される。梁受金物42を柱41に挿入される中央部分42−C、その両側の部分42−A、42−Bと分けると、梁受金物42が柱41に挿入貫通し固定された状態を示す図3(a)において、梁受金物42−1が42−Aに、梁受金物42−3が42−Bに相当する。他の側面に配置されている梁受金物42−2や42−4が図3(b)に示す一体物の梁受金物である場合は、一体物の梁受け金物42−1および42−3と交差させて挿入貫通させることはできないので、たとえば2つに分けてそれぞれの梁受金物42−2や42−4にドリフトピンを付けて、そのドリフトピンを柱等41に挿入して固定するようにする。
梁受け金物42(42−1)の厚み方向は、図3に示すように、中央の側板43−2(43−2−A)の両側の一部に粘弾性体側板片(43−2−B、43−2−C)が付着し、その外側に押さえ板43−1および43−3が付着する構造になっている。中央の側板43−2(43−2−A)は、鋼鉄製(所謂、鋼板)或いは鋳造板となっており、柱等41の内部に挿入され、梁51等を支えるに充分な強度を有している。最外側の押さえ板43−1および43−3も鋼鉄製(所謂、鋼板)或いは鋳造板であり、梁から押圧力を受け粘弾性体側板片に均等に力を伝達する。他の梁受け金物42(42−2、3、4)も上記と同様の構造をしている。中央の側板43−2(43−2−A)は最外側の押さえ板43−1および43−3には接触しておらず、お互いが粘弾性体側板片(43−2−B、43−2−C)に付着していることが重要である。ただし、図1および図2で示したように、梁受金物42を用いて柱等41の側面に結合する梁51等(51、52、53、54)を鉛直方向に支えることを補助する必要がある場合には、通し穴47(押さえ板43−1、3に形成)や通し穴48(側板43−2−Aに形成)並びに梁にドリフトピンやボルト等を通す。
ドリフトピン等で梁を鉛直方向に補助的に支える場合、粘弾性体側板片(43−2−B、43−2−C)は、通し穴48の存在しない中央の側板43−2(43−2−A)の一部に付着するようにする。この粘弾性体側板片(43−2−B、43−2−C)が中央の側板43−2(43−2−A)に付着する面積は中央の側板43−2(43−2−A)の面積の30〜90%とする。30%以下では、制振の効果が小さく、90%以上では梁を支える領域が狭くなる。また、粘弾性体側板片(43−2−B、43−2−C)は、通し穴48の存在しない最外側の押さえ板43−1および43−3の一部に付着するようにする。この粘弾性体側板片(43−2−B、43−2−C)が押さえ板43−1および43−3に付着する面積は押さえ板43−1および43−3の面積の30〜90%とする。30%以下では、制振の効果が小さく、90%以上では梁を支える領域が狭くなる。尚、両側の粘弾性体側板片(43−2−Bおよび43−2−C)並びに/或いは押さえ板43−1および43−3の大きさ(形状、面積、厚み等)は同程度とし、対称になるようにすることが望ましい。梁受金物42が支える梁のバランスが均等になるからである。
図12は、図3(b)のE1−E2およびE3−E4における断面(水平断面)を示す。図12(a)はE1−E2断面図であり、側板43−2−Aに形成された通し穴48を通る水平断面図である。梁受金物の本体(側板)43−2−Aが、柱等41の中央部に挿入され柱等41を左右に貫通して配置されている。また、側板43−2−Aは、梁51のスリット51Sに挿入されているが、この部分には粘弾性体側板や押さえ板がなく、先端側もスリットの底端面に届かないので、側板43−2−Aの周囲に隙間57ができる。梁51のピン通し穴51H、側板43−2−Aのピン通し穴48にボルトまたはドリフトピン55が貫通し、梁51は、ドリフトピンを通じ、梁受金物の本体(側板)43−2−Aによって鉛直方向に支えられる。
図12(b)はE3−E4断面図であり、押さえ板43−1および43−3に形成された通し穴47を通る水平断面図である。梁受金物の本体(側板)43−2−Aが、柱等41の中央部に挿入され柱等41を左右に貫通して配置されている。この部分では、梁受金物の本体(側板)43−2−Aの両側面に粘弾性体側板片43−2−Bおよび43−2−Cが付着し、さらにその外側に押さえ板43−3および43−1がそれぞれ付着している。これらの付着は接着剤等で強力に接着している。この5層構造になった梁受金物42が梁51の端面中央部から形成されたスリット51Sに嵌合している。この部分では梁受金物の本体(側板)43−2−Aおよび/または粘弾性体側板片(43−2−B、43−2−C)にはピン通し穴は存在せず、当然ボルトまたはドリフトピンは存在しない。一方、最外側に配置される押さえ板43−1および43−3は、梁受金物の本体(側板)43−2−Aおよび/または粘弾性体側板片(43−2−B、43−2−C)の先端より伸びており、梁受金物の本体(側板)43−2−Aおよび/または粘弾性体側板片(43−2−B、43−2−C)の存在しない部分に通し穴47が形成され、ボルトまたはドリフトピン58が貫通し、このボルトまたはドリフトピン58が梁51の通し穴51Hに貫通している。
梁51は、ドリフトピン58を通じ、押さえ板43−1および43−3によって鉛直方向に支えられる。押さえ板43−1および43−3は粘弾性体側板片43−2−Bおよび43−2−Cを通し梁受金物の本体(側板)43−2−Aに支えられているので、結局この部分においても梁51は梁受金物42によって支えられている。この5層構造の梁受金物がスリット51Sにおける梁51の側面を押す押圧力による鉛直方向の摩擦力が充分大きければ、梁51は鉛直方向に強固に支えられるので、ボルトまたはドリフトピン等による鉛直方向の支えは必要ないが、補強する意味もあり、ボルトまたはドリフトピン等を配置した方が望ましい。
図3に示す板状の柱貫通型梁受金物においても制振機能を発揮する。すなわち、柱等41に固定した梁受金物本体(側板)43−2−Aと梁51を押圧して接触する押さえ板43−1および43−3は接触せず、これらの間に制振機能を有する粘弾性体43−2−Bおよび43−2−Cが介在する。従って、たとえば、柱等41からの振動は、当然梁受金物本体(側板)43−2−Aに伝搬するが、当然梁受金物本体(側板)に付着した粘弾性体43−2−Bおよび43−2−Cでそのエネルギーが吸収されるので、その振動は押さえ板43−1および43−3には殆ど伝搬しないかかなり弱められる。従って、押さえ板43−1および43−3は梁51を押圧接触しているが、梁51は殆ど振動しない。
図3(c)は、柱または梁41の4つの各側面に取り付けた梁受金物42(42−1、2、3、4)に梁51、52、53、54を接合させた状態を示す図である。梁51、52、53、54の各端面にその長手方向に作製されたスリット51S、52S、53S、54Sに、側板43−2(鋼板等からなる側板43−2−A、この両側面に付着した粘弾性体側板片43−2−Bおよび43−2−C)を鋼板等からなる押さえ板43−1および43−3でサンドイッチした梁受金物42(42−1、2、3、4)を挿入し固定する。梁51、52、53、54の端部側面に設けたピン孔51H、52H、53H、54Hにドリフトピンやボルトを挿入し、さらにそれらを梁受金物42に設けたピン孔47または48に通して梁受金物42(42−1、2、3、4)に梁51、52、53、54を鉛直方向に支える。
従って、横梁51、52、53、54は、制振機能を有する梁受金物42(42−1、2、3、4)に固定され、柱または梁41に接合しているので、地震等の振動を受けて柱または梁41が揺れても、梁受金物42(42−1、2、3、4)で振動のエネルギーを吸収して振動を消失させるか和らげたりできる。すなわち、横梁51、52、53、54に対して柱または梁41からの地震等の振動は殆ど伝わらない。従って、横梁51、52、53、54が破壊したり損傷したりすることは非常に少なくなる。尚、図3(c)では、梁51等の端面から形成したスリット51S等は梁側面に露出しているが、露出させずに梁51等の端面からくり抜いて形成した凹部状のスリット51S等であっても良い。
図4は、本発明の梁受金物のさらに別の実施形態を示す図である。図4に示す梁受金物60はコの字型の板状形状であり、コの字型の内側空間に梁の端部側面を嵌合させて梁を柱等に接合する方式、またはコの字型の一対の側板を梁の端面に長手方向に形成したスリットに挿嵌して梁を柱等に接合する方式である。梁受金物60を構成する梁受金物本体61の側板61(61−S1、61−S2)の一部、すなわち側板61(61−S1、61−S2)の上部61(61−U1、61−U2)および下部61(61−L1、61−L2)に粘弾性体からなる側板片(粘弾性体側板片)68(68−S1、S2)および69(69−S1、S2)を付加し、地震等の振動を吸収するものである。
図4に示すように、梁受金物60は、一対の側板片61(61−S1、61−S2)およびそれらの間にあり柱や梁に固定する背板片(中央片)61(61−B)から構成される梁受金物本体61、梁受金物本体61の側板片61の一部(上部および下部)61(61−U1、U2および61−L1、L2)に接触固定される制振機能を有する粘弾性体からなる側板片(粘弾性体側板片)68(68−S1,S2)および69(69−S1,S2)、梁受金物本体61の側板片61(61−U1、U2および61−L1、L2)との間に粘弾性体側板片68(68−S1,S2)および69(69−S1,S2)を挟み固定するコの字形状をした押さえ板62、63から構成される。金物本体61は、背板片(中央片)61(61−B)に開けられたボルト孔64に通したボルトによって柱等に固定される。
押さえ板62は、一対の側板片62(62−S1、S2)およびそれらの間の中央片62(62−B)を有するコの字形状であり、梁受金物本体61の側板片61(61−S1、S2)の上部61(61−U1、U2)に粘弾性体側板片68(68−S1,S2)を間に挟んで嵌合する。押さえ板62は、嵌合した後、押さえ板62の背板片(中央片)62(62−B)に開けられたボルト孔65に通したボルトによって柱等に固定される。粘弾性体側板片68(68−S1,S2)は、押さえ板62の側板片62(62−S1,S2)と梁受金物本体61の側板片61の上部61(61−U1、U2)から押さえつけられて固定される。
押さえ板63は、一対の側板片63(63−S1、S2)およびそれらの間の中央片63(63−B)を有するコの字形状であり、梁受金物本体61の側板片61(61−S1、S2)の下部61(61−L1、L2)に粘弾性体側板片69(69−S1,S2)を間に挟んで嵌合する。押さえ板63は、嵌合した後、押さえ板63の背板片(中央片)63(63−B)に開けられたボルト孔66に通したボルトによって柱等に固定される。粘弾性体側板片69(69−S1,S2)は、押さえ板63の側板片63(63−S1,S2)と梁受金物本体61の側板片61の下部61(61−L1、L2)から押さえつけられて固定される。押さえ板62、63は、たとえば、1枚の1体となった板を折り曲げて、一対の側板片63(63−S1、S2)および中央片63(63−B)を有するコの字形状に形成できる。
図5は、図4に示す梁受金物本体61、粘弾性体側板片68、69、押さえ板62、63を組み込んだ梁受金物60を柱や梁(柱等)71および梁72に取り付ける状態を示した図である。粘弾性体側板片68(68−S1、S2)は押さえ板62の側板片62(62S1、S2)と梁受金物本体61の側板片61(61−S1、S2)の上部61(61−U1、U2)とによって挟まれて固定されている。また、粘弾性体側板片69(69−S1、S2)は、押さえ板63の側板片63(63S1、S2)と梁受金物本体61の側板片61(61−S1、S2)の下部61(61−L1、L2)とによって挟まれて固定されている。この固定方法は、押さえ板62や63の嵌合力(押さえ板62や63および側板片61(61−S1、S2)の上部61(61−U1、U2)や下部61(61−L1、L2)からの締付け力)だけによって押さえて固定することもできるし、接着剤で接着して固定しても良い。
梁受金物60の背板片(中央片)61(61−B)、62(62−B)、および63(63−B)にはボルト等の固定部材挿入用のボルト孔64、65、66が開けられており、柱等71に開けられたボルト孔73からボルト等の固定部材75を挿入し、梁受金物のボルト孔64、65、66を通してナット等で柱等71に梁受金物60を固定する。柱等71に取り付けられた梁受金物60のコの字形状の間の空間に梁72を嵌合させる。梁72が梁受金物60に嵌合した後に、梁受金物60の側板片61(61―S1,S2)に開けられたボルト通し孔67および梁72に開けられたボルト通し孔74にボルトやドリフトピン等の固定部材76を挿入し、ナット等で締め付けて梁72を梁受金物60、すなわち柱等71に接合し固定する。
梁72の端部の上部は梁受金物60のコの字形状の押さえ板62に嵌合し、梁72の端部の上部側面は、押さえ板62の一対の側板片62(62−S1、S2)によって、押さえ付けられて固定する。また、梁72の端部の下部は梁受金物60のコの字形状の押さえ板63に嵌合し、梁72の端部の下部側面は、押さえ板63の一対の側板片63(63−S1、S2)によって、押さえ付けられて固定する。さらに、ボルトやドリフトピン等の固定棒76を、梁受金物60の側板片61(61−S1、S2)に開けられた一方のボルト孔67から、梁受金物60へ挿入固定された梁に開けられたボルト通し貫通孔74に通し、他方のボルト孔67へ入れて、ナット等で固定する。これによって、梁72が梁受金物60に強固に固定され、抜けないようになる。
このように、梁72の端部側面上部および下部は粘弾性体側板片を中央に挟んだ3層構造の側板片によって押さえられているので、地震等による振動が柱等71を通じて梁受金物60に伝搬しても、粘弾性体側板片で振動を吸収するので、梁72の方への地震等の振動の伝搬はかなり弱められる。この結果、建物自体への損傷を非常に少なくすることが可能となる。
図6は、本発明の梁受金物のさらに別の実施形態を示す図である。図6に示す梁受金物は図4および図5で示した梁受金物の変形体であり(図4および図5と同じものは同じ符号を付す)、梁受金物60の上部に粘弾性体側板片がなく、梁受金物60の下部だけに粘弾性体側板片69が配置されている。従って、上部の押さえ板62や梁受金物本体61の上部側板片61(61−U1、U2)もない。
梁受け金物本体の下部側板片61(61−L1、L2)の内側に粘弾性体側板片69(69−S1、69−S2)が付着し、さらにその内側にコの字形状の下部押さえ板63が入り、粘弾性体側板片69(69−S1、69−S2)は、梁受け金物本体61の下部側板片61(61−L1、L2)と下部押さえ板63の側板片63(63−S1、63−S2)との間にサンドイッチ状に挟まれて固定される。梁72は、コの字形状の下部押さえ板63の内側に入り、下部押さえ板63の一対の側板片63(63−S1、63−S2)の間で押さえ付けられる。このように本発明の梁受金物は下部押さえ板63だけでも梁を押さえて固定でき、梁を押さえている部分には制振機能を有する粘弾性体側板片69(69−S1、69−S2)が介在しているので、地震等の振動が梁の方へ伝搬しにくくなる。
図7は、制振機能を有するさらに別の梁受け金物の実施形態を示す図である。図7に示す梁受金物80は、梁受金物本体81、粘弾性体板状片84および梁86を載置する梁受金物本体81の荷重を鉛直方向に受ける押さえ板85からなる。梁受金物本体81は、柱等88に当接して梁受金物本体81を固定する背板片81(81−F)、梁86の下側側面を載置する底板片81(81−B)、および梁86の端面の中心付近に梁の長手方向に形成されたスリット87に挿入される1枚の側板片81(81−S)から構成される。押さえ板85は、柱や梁(柱等)88に当接して押さえ板85を固定する背板片85(85−F)、粘弾性体板状片84を載置する載置板85(85−U)および支持板(補強板)片85(85−S)から構成される。
梁受金物本体81および押さえ板85を組み付けたときに、粘弾性体板状片84は、梁受金物本体81の底板片81(81−B)と押さえ板85の載置板85(85−U)の間に挟まれて固定する。梁受金物本体81は、背板片85(85−F)に備わるボルト孔82および柱等88に備わるボルト通し孔等91にボルトが挿入されナット等で締結されて柱等88に固定される。同様に、押さえ板85は、梁受金物本体部81と押さえ板85との間に粘弾性体板状片84を挟んだ状態で、背板片81(81−F)に備わるボルト孔89およびボルト通し孔91にボルトが挿入されナット等で締結されて柱等88に固定される。柱等88に固定された梁受金物80の側板片81(81−S)を梁86のスリットに挿入して、梁86を柱等88に接合させ、ボルト通し孔92および側板片81(81−S)に備わるボルト孔83にボルトやドリフトピンを挿入して、梁86を梁受金物80に固定する。梁86は、梁86の下側側面が梁受金物80の底板片81(81−B)に載置された状態で梁受金物80に固定される。
粘弾性体板状片84は、載置板85(85−U)および底板片81(81−B)の間に押し込まれて、あるいは載置板85(85−U)および底板片81(81−B)の間に挟み込まれて固定される。このとき、粘弾性体板状片84の上下面に接着剤を用いて載置板85(85−U)および底板片81(81−B)に接着させて強固に接着しても良い。図7に示すような梁86の下側側面を受ける部分に粘弾性体板状片84を配置することによっても制振機能を発揮させることができる。接着剤等を用いて粘弾性体板状片84を梁受金物80に強固に固定することによってこの制振機能の効果をさらに高めることができる。梁受金物80の側板片81(81−S)にも、図1〜図5と同様に、粘弾性体板状片を配置することによって、さらに制振機能効果を高めることもできる。
図6に示す下部側面に粘弾性体側板片69を有する梁受金物(以下、タイプA)および図7に示す下部底面に粘弾性体側板片84を有する梁受金物(以下、タイプB)を用いて低周波振動に対する減衰効果を調査した。図8は、減衰効果を測定するモーメント加力試験方法を示す図である。柱等91を土台に固定し、梁受金物AまたはBを用いて柱等94に直角に接合した梁95に対して垂直方向に力Fを正負繰り返しで加えて変位計で変位を測定した。正負繰り返しの波形は周波数1Hz〜5Hzの正弦波である。タイプA、Bとも粘弾性体片を接着剤で梁受金物に固定した場合と固定しない場合を測定した。また、コ字型の市販の梁受金物(タイプC)を比較サンプルとした。
梁受金物Aの寸法は、図6に示す記号を用いて、梁受金物60の高さ(梁受け金物本体61の高さと同じ)h=240mm、押さえ板63高さb=40mm、押さえ板63の側板片63(63−S1)長さc=100mm、押さえ板63の背板片(中央片)63(63−B)幅a=40mm、梁受金物本体61の背板片(中央片)61(61−B)のボルト孔64のサイズは12mmφ、押さえ板63の背板片(中央片)63(63−B)のボルト孔66のサイズは12mmφ、受け金物本体61の側板片のボルト孔67のサイズは13.5mmφ、粘弾性体側板片69(69−S1、S2)はブチルゴムを主成分とし、そのサイズは、長さ100mm、高さ40mm、厚さ3mm、梁受金物60の鋼板の材質はSPHCで厚さは3.2mmである。梁受金物Bの寸法は、図7に示す記号を用いて、梁受金物本体81の高さn=240mm、梁受金物本体81の幅m=90mm、押さえ板85の高さp=90mmである。
測定結果の一例を図9に示す。すなわち、図9は、モーメント加力試験における変位と荷重の関係を示す図(グラフ)である。タイプAについて、粘弾性体片を固定したもの(A2)、粘弾性体片を固定しないもの(A1)、および比較として従来梁受金物(従来品)(C)の周波数1Hzにおける荷重―変位曲線を示す。縦軸は荷重(kN)で、横軸は変位(mm)である。耐力の大きさは、A2>A1>Cであり、ループ形状も異なっている。この曲線から求めた地震波を想定した各周波数(1Hz、2Hz、3Hz、4Hz、5Hz)および各サンプル(試験体)における、この曲線から求めた等価粘性減衰定数の値(%)の表を図10に示す。タイプBについて、B2は粘弾性体片を固定したもので、B1は粘弾性体片を固定しないものである。梁受金物に粘弾性体を用いることによって、等価粘性減衰定数の値が大きくなり、制振機能効果があることが分かる。また、粘弾性体を梁受金物に固定することによって制振機能効果が向上する。タイプBよりタイプAの方が幅広い周波数において制振機能効果が大きいことが分かる。タイプBの場合は、梁86を梁受け金物に載置しているだけであり、実際の振動がタイプAと比較して減衰効果が小さいためと考えられる。
以上詳細に説明したように、本発明は、制振機能を有する粘弾性体を用いた梁受金物であり、簡単で安価な方法で地震等の振動に対して強い木造建造物を実現できる。本発明の梁受金物の基本は、柱等と梁との接合において柱等と梁との間に制振機能を有する粘弾性体を介在し、その粘弾性体で地震等の振動エネルギーを吸収して地面等から柱等に伝達してきた地震等の振動を大きく緩和し、柱等から梁まで地震等の振動が伝達しないようにして木造建築物の損傷を抑制することである。木造建築物において、地震被害を減らすメカニズムとしては、耐震、免震、および制振がある。耐震工法は一般的、免震工法は高価であるが、本発明の制振工法は安価である。本発明の制振効果を付与した梁受接合部は、耐震工法に免震というプラスアルファーを狙ったものであり、安価で、耐震改修にも利用でき、実用的である。尚、明細書のある部分に記載し説明した内容を記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が上記実施形態、上記実施例、あるいは上記記載内容に限定されないことも言うまでもない。
本発明は、柱や梁と梁との接合だけでなく、種々の木材同士の接合に用いられる接合金物にも適用できる。
11・・・梁受金物、13・・・粘弾性体側板片、14・・・押さえ板片、
15・・・ボルト、16・・・粘弾性体側板片、17・・・ボルト、
19・・・押さえ板片、21・・・柱等、22・・・梁、25・・・スリット、
26・・・貫通孔、28・・・固定部材、31・・・梁、
41・・・柱等、42・・・梁受金物、43・・・側板部、44・・・スリット、
46・・・ボルト孔、47・・・ピン孔、51・・・梁、52・・・梁、
53・・・梁、54・・・梁、60・・・梁受金物、61・・・側板、
62・・・押さえ板、63・・・中央片、64・・・ボルト孔、
65・・・ボルト孔、66・・・ボルト孔、67・・・ボルト通し孔、
68・・・粘弾性体側板片、69・・・粘弾性体側板片、
71・・・柱等、72・・・梁、73・・・ボルト孔、74・・・ボルト通し孔、
76・・・固定部材、80・・・梁受金物、81・・・梁受金物本体、
82・・・ボルト孔、83・・・ボルト孔、84・・・粘弾性体板状片、
85・・・押さえ板、86・・・梁、87・・・スリット、88・・・柱等、
89・・・ボルト孔、91・・・ボルト通し孔、101・・・梁受106金物、
102・・・梁、103・・・梁、104・・・柱等、
105・・・取り付け孔、106・・・ボルト孔、
15・・・ボルト、16・・・粘弾性体側板片、17・・・ボルト、
19・・・押さえ板片、21・・・柱等、22・・・梁、25・・・スリット、
26・・・貫通孔、28・・・固定部材、31・・・梁、
41・・・柱等、42・・・梁受金物、43・・・側板部、44・・・スリット、
46・・・ボルト孔、47・・・ピン孔、51・・・梁、52・・・梁、
53・・・梁、54・・・梁、60・・・梁受金物、61・・・側板、
62・・・押さえ板、63・・・中央片、64・・・ボルト孔、
65・・・ボルト孔、66・・・ボルト孔、67・・・ボルト通し孔、
68・・・粘弾性体側板片、69・・・粘弾性体側板片、
71・・・柱等、72・・・梁、73・・・ボルト孔、74・・・ボルト通し孔、
76・・・固定部材、80・・・梁受金物、81・・・梁受金物本体、
82・・・ボルト孔、83・・・ボルト孔、84・・・粘弾性体板状片、
85・・・押さえ板、86・・・梁、87・・・スリット、88・・・柱等、
89・・・ボルト孔、91・・・ボルト通し孔、101・・・梁受106金物、
102・・・梁、103・・・梁、104・・・柱等、
105・・・取り付け孔、106・・・ボルト孔、
Claims (12)
- 柱または梁(第1梁)の側面に他の梁(第2梁)の端部を接合する梁受金物であって、第2梁の端部の側面または第2梁の端面から形成したスリットにおける第2梁の内部側面を受ける前記梁受金物の側板部の一部が制振機能を有することを特徴とする梁受金物。
- 前記側板部において、粘弾性体からなる板片(粘弾性体板片)が備わっており、前記制振機能は、前記側板部に備わる粘弾性体板片により発揮されることを特徴とする請求項1に記載の梁受金物。
- 前記粘弾性体板片は前記側板部における2枚の鋼板の間にサンドイッチ状に挟持され配置されることを特徴とする請求項2に記載の梁受金物。
- 前記粘弾性体板片は接着剤によって前記2枚の鋼板に結合していることを特徴とする請求項3に記載の梁受金物。
- 梁受金物が固定される仕口において、梁受金物は仕口平面から見てコの字型に形成されており、前記梁受金物は、柱または梁に固定される背板部および前記背板部の両側に配置される背板部に垂直でありかつ互いに平行な一対の側板部から構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の梁受金物。
- 前記梁受金物の側板部は側板片、粘弾性体板片および押さえ板から構成され、前記側板片上部および/または下部のみに前記粘弾性体板片を前記側板片内側に付着させ、前記粘弾性体板片はその内側からコの字型形状の前記押さえ板で押さえられることによって、前記側板部の上部および/または下部が側板片−粘弾性体板片−押さえ板側板片のサンドイッチ構造となっていることを特徴とする請求項5に記載の梁受金物。
- 前記一対の側板部の間に第2梁の両側面が挟まれるとともに、前記側板部の外側から挿入された固定具にて前記梁受金物と第2梁が相互に固定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の梁受金物。
- 前記側板部が第2梁端面に形成されたスリットへ挿入されるとともに、第2梁の側面から挿入された固定具にて前記梁受金物と前記第2梁が相互に固定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の梁受金物。
- 梁受金物は板状の柱貫通型梁受金物であり、柱または第1梁を貫通する板状部材は側板片であり、第2梁端面から形成したスリットに挿入される側板部は、中央の側板片の両側に一対の粘弾性体板片が付着し、さらにそれらの外側に前記粘弾性体板片に接着し梁を受ける押さえ板片から構成されることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の梁受金物。
- 前記側板部は、前記背板部を構成する背板片と一体の側板片、前記側板片の一部に接着した粘弾性体板片、前記粘弾性体板片に接着し梁を受ける押さえ板片から構成されることを特徴とし、前記一対の側板片および前記一対の側板片の間に配置された梁を貫通する固定具をさらに有し、前記固定具を通す貫通孔は前記側板片のうちで前記粘弾性体板片と接着していない領域に存在することを特徴とする、請求項5〜9のいずれか1項に記載の梁受金物。
- 前記側板部は、前記背板部を構成する背板片と一体の側板片、前記側板片の一部に接着した粘弾性体板片、前記粘弾性体板片に接着し梁を受ける押さえ板片から構成されることを特徴とし、前記一対の押さえ板片および前記一対の押さえ板片の間に配置された梁を貫通する固定具をさらに有し、前記固定棒を通す貫通孔は前記押さえ板片のうちで粘弾性体板片と接着していない領域に存在することを特徴とする、請求項5〜10のいずれか1項に記載の梁受金物。
- 前記固定具はドラフトピンまたはボルトであることを特徴とする、請求項7〜11のいずれか1項に記載の梁受金物。
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JP2012247668A JP2014095235A (ja) | 2012-11-09 | 2012-11-09 | 制振機能付与梁受金物 |
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Cited By (1)
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JP2019210687A (ja) * | 2018-06-04 | 2019-12-12 | 倉敷化工株式会社 | 根太用防振取付構造 |
-
2012
- 2012-11-09 JP JP2012247668A patent/JP2014095235A/ja active Pending
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JP2019210687A (ja) * | 2018-06-04 | 2019-12-12 | 倉敷化工株式会社 | 根太用防振取付構造 |
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