JP6919193B2 - 縦構造材用接合金物および制震構造 - Google Patents
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Description
この接合金物は、耐力壁と基礎との間に引張力または圧縮力が作用した際に、当該引張力または圧縮力によるエネルギーを面内方向におけるせん断変形で吸収する板状のダンパ部材と、このダンパ部材の外周を囲んで配置され、前記耐力壁および基礎への取付部を有する枠体とを備えている。
前記ダンパ部材は矩形状の板材で構成され、前記枠体は、ダンパ部材の任意の一辺に固定された円管状の鋼管と、ダンパ部材の残りの三辺に固定されたコ字状の枠部材とから構成されている。
すなわち、基礎から突出しているアンカーボルトを接合金物の枠部材および鋼管に挿通し、枠部材の上下の水平部の上下両面を挟み込むようにナットを設けるとともに当該ナットをアンカーボルトに螺合して締め付けることによって、接合金物をアンカーボルトを介して基礎に取り付ける。
また、接合金物の枠部材の背面部を耐力壁の内側を支持する縦枠材に固定する。縦枠材は、例えば2つのリップ溝形鋼からなり、溝部の底面どうしを当接させ、開口を外側に向けて立設される。この底面に枠部材の背面部を当接させ、背面部に設けられた複数の小径孔から複数のドリルねじを縦枠材にねじ込むことによって、接合金物を耐力壁に取り付ける。
また、地震時に耐力壁に所定の大きさを超える外力が作用したときに、前記ダンパ部材がせん断変形することにより、前記耐力壁と基礎との間に作用する引張力または圧縮力によるエネルギーを吸収することで、制震している。
このため、例えば、中実の壁の場合は、上述した接合金物を使用せずに、壁の下端部を一部刳り貫くことで、当該下端部に凹部を形成し、この凹部に箱型の金物を設けるとともに、この金物の上部壁を凹所に固定するとともに、基礎から突出するアンカーボルトを金物の下部壁にナットによって固定している。そして、アンカーボルトに極軟鋼を用いることで、地震時において、引張力によってアンカーボルトが塑性変形することで、エネルギーを吸収するようになっている。
また、壁の凹所に挿入した金物が外部に露出するために、当該金物を覆う必要があり、施工に手間がかかることになる。
さらに、上述した特許文献1に記載されている従来の接合金物は、矩形状の板材で構成されたダンパ部材の面外変形を拘束するために、ダンパ部材の三辺にコ字状の枠部材を固定する必要があるため、接合金物の構造が複雑になるという問題もある。
前記縦構造材と前記基礎との間に引張力または圧縮力が作用した際に、前記引張力または圧縮力によるエネルギーを面内方向におけるせん断変形で吸収する板状のダンパ部材と、
前記縦構造材および前記基礎への取付部材と備え、
前記ダンパ部材は、前記縦構造材に形成されたスリット部に、当該スリット部の対向する内壁面によって面外変形が拘束されるようにして、挿入されることを特徴とする。
また、ダンパ部材は、縦構造材に形成されたスリット部に、当該スリット部の対向する内壁面によって面外変形が拘束されるようにして、挿入されるので、従来の接合金物と異なり、ダンパ部材の面外変形を拘束するための枠部材が不要である。このため、従来の接合金物に比して構造が簡単なものとなる。また、スリット部の内壁面によってダンパ部材の面外変形を拘束することで、せん断時の座屈やねじれを防止し、安定した塑性化となり、より効果的にエネルギー吸収を行うことができる。
さらに、ダンパ部材はスリット部に挿入されて、当該スリット部の対向する内壁面によって覆われる。このため、縦構造材用接合金物の殆どが外部に露出することがない。
また、取付部材の少なくとも一部とダンパ部材とが溶接により結合されているので、地震時にダンパ部材と取付部材の少なくとも一部とが切断されるのを抑制できる。
前記筒状部は前記縦構造材の内部に前記アンカーを挿入可能な状態で収容され、
前記固定部は前記縦構造材に止着材によって固定されてもよい。
前記縦構造材に所定の大きさを超える外力が作用したときに、前記ダンパ部材がせん断変形することにより、前記縦構造材と前記基礎との間に作用する引張力または圧縮力によるエネルギーを吸収することを特徴とする。
図1は第1の実施の形態の縦構造材用接合金物を示すもので、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図2は、図1に示す縦構造材用接合金物にアンカーボルトを挿通して固定した状態を示す側面図である。
ダンパ部材10は、全伸び20%以上、または、一様伸び10%以上の鋼材が用いられる。ダンパ部材10は、例えば板厚6mm程度の極軟鋼からなり、例えば降伏点が100N/mm2程度の弾塑性履歴型ダンパ用鋼板が用いられる。
また、ダンパ部材10は、極軟鋼の他に、トリップ鋼、DP鋼またはIF鋼によって形成されていてもよい。
筒状部12は鋼管12によって形成されている。鋼管12は、ダンパ部材10の上下方向の辺と同じ長さを有する円管であり、鋼管12の径方向中央部には、アンカーボルト4を挿通可能な貫通孔12aが軸方向に沿って形成されている。鋼管12は、例えば普通鋼からなる外径34mm程度、肉厚4.5mm程度の圧力用炭素鋼管である。
なお、鋼管12の長さは、ダンパ部材10の上下方向の辺の長さと異なっていてもよい。
固定部13には、止着材としてのドリルねじ14がねじ込まれ、当該ドリルねじ14はさらに縦構造材2にねじ込まれるようになっている。なお、ドリルねじ14は固定部13にダンパ部材10を挟んで2列に配置されるようになっている。
また、止着材としてドリルねじ14に代えて、釘やスクリュー釘を使用してもよい。
なお、固定部13の上下方向の長さはダンパ部材10の上下方向の長さと異なっていてもよい。
すなわちまず、縦構造材2は、内部が中実の木質の壁であり、この壁(縦構造材)2の下端部には、図5および図6に示すように、壁2の下端面からスリット部21が形成されている。このスリット部21の壁2の下端面からの高さはダンパ部材10の上下の長さとほぼ等しくなっている。また、壁(縦構造材)2の側端面には、矩形状の凹部22が形成されている。この凹部22は、接合金物1の固定部13が嵌め込まれるものであり、その深さは固定部13の厚さとほぼ等しく、幅は固定部13の幅とほぼ等しく、長さは固定部13の長さとほぼ等しくなっている。
また、凹部22の幅は壁2の厚さとほぼ等しくなっており、当該凹部22の両側部は壁2の両側面に開口しており、凹部22の下端部は壁2の下端面に開口している。また、凹部22の底面は、壁2の側端面が切り欠かれることで、壁2の上下方向に形成される面である。
なお、図3〜図6、図8および図9においては、壁2の左下部の角部を図示しているが、壁2の右下部の角部は、左下部の角部と壁2の幅方向の中心線に対して対称的に構成されている。
また、スリット部21の対向する内壁面21a,21a間の距離はダンパ部材10の厚さより若干長くなっている。内壁面21aとダンパ部材10との間の隙間は、例えば0.1〜1.0mm程度に設定されており、これによって、地震等の際にダンパ部材10が塑性変形する場合に、内壁面21a,21aによってダンパ部材10の局部変形を抑制することで、ダンパ部材10の面外変形が拘束されるようになっている。
なお、スリット部21にダンパ部材10を挿入する前後または挿入する際に、当該スリット部21に、例えば、粘弾性体等の充填材を充填し、この充填材によって、内壁面21aとダンパ部材10との間の隙間を埋めるようにしてもよい。
また、挿入孔25の内壁面には前記スリット部21の側端部(図5および図6において右側端部)が開口している。
このようにして、壁2の内部に接合金物1が挿入された後、凹部22に嵌め込まれた固定部13は、壁(縦構造材)2に、ドリルねじ(止着材)14によって固定される。すなわち、壁2の側端面側から固定部13にドリルねじ14を2列、上下に所定間隔で固定部13を貫通するようにして、凹部22の底面にねじ込む。これによって、接合金物1が壁2の側端部に固定される。この際、固定部13の表面は壁2の側端面とほぼ面一になる。
また、図7に示すように、接合金物1は、壁2の左右両側端部の下端部にそれぞれ設けられる。
まず、図8(a)に示すように、基礎3の上面には土台5が設置されている。基礎3からはアンカーボルト4が突出しており、この突出しているアンカーボルト4は土台5に形成されている貫通孔5aに挿通され、さらに、土台5の上面から突出している。貫通孔5aの上端部には、ナット4bを収容するための座掘り部5bが形成されている。
そして、アンカーボルト4にナット4bを螺合するとともに当該ナット4bを座掘り部5bに収容したうえで、アンカーボルト4の上方から接合金物1をアンカーボルト4に近づけ、接合金物1の筒状部12をアンカーボルト4に外挿する。つまり、接合金物1の筒状部12にアンカーボルト4を挿通する。
次に、壁(縦構造材)2を、クレーン等によって接合金物1の上方から吊り下ろして、壁2の内部に当該壁2の下端面側から接合金物1を挿入する。つまり、壁2の挿入孔25、スリット部21および凹部22に、接合金物1の筒状部12、ダンパ部材10および固定部13を壁2の下端面側から挿入する。
次に、図8(c)に示すように、壁2の側端面側から固定部13にドリルねじ14を2列、上下に所定間隔で固定部13を貫通するようにして、凹部22の底面にねじ込む。これによって、接合金物1を壁2の側端部に固定する。
まず、図9(a)に示すように、壁2の内部に予め接合金物1を挿入しておく。すなわち、壁2の挿入孔25、スリット部21および凹部22に、接合金物1の筒状部12、ダンパ部材10および固定部13を壁2の下端面側から挿入する。
次に、壁2の側端面側から固定部13にドリルねじ14を2列、上下に所定間隔で固定部13を貫通するようにして、凹部22の底面にねじ込む。これによって、接合金物1を壁2の側端部に固定する。
また、基礎3および土台5から突出しているアンカーボルト4にナット4bを螺合するとともに当該ナット4bを座掘り部5bに収容しておく。
このようにして、接合金物1によって壁2と基礎3とを接合した後、図9(c)に示すように、凹部2aの開口部に隠し板2bを嵌め込んで、ナット4a等を隠す。
また、図7において、壁2に左側向きの外力が作用したときには、図7の右側の接合金物1について同様の変形が生じる。地震等による外力が、一次設計の耐力の範囲内であれば、左右交互に、ダンパ部材10の弾性範囲でのせん断変形を繰り返す。
また、ダンパ部材10と筒状部12とが溶接により結合されているので、地震時にダンパ部材10と筒状部12とが切断されるのを抑制できる。
図10(a)に示す接合金物1では、ダンパ部材10に細長い長方形状の貫通孔10aが縦方向にほぼ等間隔で設けられ、図10(b)に示す接合金物1では、ダンパ部材10に横長の菱形状の貫通孔10cが縦方向にほぼ等間隔で設けられ、図10(c)に示す接合金物1では、ダンパ部材10に円形状の貫通孔10cが縦方向にほぼ等間隔で設けられている。
このように、ダンパ部材10に貫通孔10a,10b,10cを設けることによって、ダンパ部材10のせん断変形時にダンパ部材10に引張、圧縮ならびに曲げ変形が起こり易くなる。
図11(a)に示す接合金物1Aでは、例えば極軟鋼等の板状の鋼材を折り曲げ加工または押出し加工することによって、ダンパ部材10と筒状部12と固定部13とを一体成形している。
図11(b)に示す接合金物1Bでは、固定部13はその端部に壁2の表裏面に当接するフランジ部13aを有しており、このフランジ部13aからもドリルねじ14が壁2にねじ込まれている。また、接合金物1Aと同様に、例えば極軟鋼等の板状の鋼材を折り曲げ加工または押出し加工することによって、ダンパ部材10と筒状部12と固定部13とフランジ部13aとを一体成形している。なお、接合金物1Bでは、固定部13を通して壁2にドリルねじ14をねじ込むことができない場合、フランジ部13aを通して壁2にドリルねじ14をねじ込んでもよい。
図11(c)に示す接合金物1Cでは、例えば鋳鋼や鋳鉄による鋳造によって、ダンパ部材10と筒状部12と固定部13とを一体成形している。
2 壁(縦構造材)
3 基礎
4 アンカー(アンカーボルト)
10 ダンパ部材
10a,10b,10c 貫通孔
11 取付部材
12 鋼管(筒状部)
13 固定部
14 ドリルねじ(止着材)
21 スリット部
21a 内壁面
Claims (8)
- 木質でかつ内部が中実の壁または柱である縦構造材と基礎とを接合する縦構造材用接合金物であって、
前記縦構造材と前記基礎との間に引張力または圧縮力が作用した際に、前記引張力または圧縮力によるエネルギーを面内方向におけるせん断変形で吸収する板状のダンパ部材と、
前記縦構造材および前記基礎への取付部材と備え、
前記ダンパ部材は、前記縦構造材に形成されたスリット部に、当該スリット部の対向する内壁面によって面外変形が拘束されるようにして、挿入されることを特徴とする縦構造材用接合金物。 - 前記ダンパ部材に、貫通孔が縦方向に所定間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の縦構造材用接合金物。
- 前記取付部材の少なくとも一部と前記ダンパ部材とが別体に構成され、これら取付部材の少なくとも一部とダンパ部材とが溶接により結合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の縦構造材用接合金物。
- 前記ダンパ部材と前記取付部材とが一体成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の縦構造材用接合金物。
- 前記ダンパ部材が、全伸び20%以上、または、一様伸び10%以上の鋼材によって形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の縦構造材用接合金物。
- 前記取付部材は、前記ダンパ部材に設けられて、前記基礎から突出するアンカーが挿入固定される筒状部と前記縦構造材に固定される固定部とを備え、
前記筒状部は前記縦構造材の内部に前記アンカーを挿入可能な状態で収容され、
前記固定部は前記縦構造材に止着材によって固定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の縦構造材用接合金物。 - 止着材がドリルねじであることを特徴とする請求項6に記載の縦構造材用接合金物。
- 木質でかつ内部が中実の壁または柱である縦構造材と基礎とを請求項1〜7のいずれか1項に記載の縦構造材用接合金物で接合した制震構造であって、
前記縦構造材に所定の大きさを超える外力が作用したときに、前記ダンパ部材がせん断変形することにより、前記縦構造材と前記基礎との間に作用する引張力または圧縮力によるエネルギーを吸収することを特徴とする制震構造。
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