JP2014095049A - セルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体 - Google Patents

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耕治 西田
Takashi Otomo
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Abstract

【課題】 布を原材料とする高弾性率、高強度、高耐熱性及び低環境負荷を可能にし、金属並みの低線膨張率が発現可能でエンボス加工性に優れたセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体を提供する。
【解決手段】 1種又は2種以上のセルロース系繊維及び1種又は2種以上の熱可塑性樹脂繊維を構成素材とする布を少なくとも一層又は二層以上積層して、前記熱可塑性樹脂繊維中の少なくとも1種の熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度又は溶融温度以上の温度で成形してなる複合成形体であって、該複合成形体表面において起点を任意とする任意の二つの面内方向における線膨張係数が30〜80℃において3.0×10−5/K以下であるセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、特に熱可塑性樹脂が常用される温度領域における線膨張率が小さく、かつ比剛性等の機械的強度及び耐熱性に優れ、環境に好適である成形体の提供を志向するものである。すなわち、本発明は、セルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体に関し、さらに詳しくは、1種又は2種以上のセルロース系繊維ならびに1種又は2種以上の熱可塑性樹脂繊維を構成素材とする布を少なくとも一層または二層以上積層して、その1種又は2種以上の少なくとも一つの熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度又は溶融温度以上の温度で成形してなるセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体であって、該複合成形体表面において起点を任意とする任意の二つの面内方向における線膨張係数が、30〜80℃において3.0×10−5/K以下であることを特徴とするセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体に関する。さらには、マトリックスである熱可塑性樹脂の溶融温度未満の比較的高い温度であっても、強化材であるセルロース系繊維を損傷することなくエンボス加工などが可能なセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体に関する。
熱可塑性樹脂は成形性に優れ、低比重でありながら適度な機械的強度を有し、耐薬品・耐腐食性などの有利な特徴により自動車・車輌等の機械用途に、電気絶縁性を利用した電気・電子用途に、またフィルム、中空成形、圧空・真空成形等による多くの成形法による成形体が得られることから物流・日用品等の分野において幅広く利用されている。近年は信頼性の蓄積により、電池等エネルギー関連商品や医療用途などの利用分野が拡がっている。金属の代表的材料である製鉄生産量と比較すると、比重見合いでは略同等もしくは凌駕する生産量となっている。
しかしながら、熱可塑性樹脂は金属に比較して軽量であることが大きな特徴ではあるものの、剛性が圧倒的に低い上に、線膨張率が大きい欠点を有している。樹脂が利用される温度領域での線膨張率は一般的に7〜15×10−5/Kであることが知られており、鋼板の線膨張率1.1×10−5/K、アルミニウムの2.3×10−5/Kに比べると極めて大きく、寸法の温度変化が厳しく要求される製品には利用が大幅に制限されている。特に長尺製品、製品端面が拘束されている製品においては寸法変化の小さい材料及び成形体が出現していないため、従前通り比重の高い鋼板が利用されている。しかしながら、近年の軽量化の要請は極めて大きく、かっての小さな部品から小さな省材料化の積み上げによる方法はすでに限界に達しており、軽量化に大きく寄与する材料及び成形体が要求されるようになってきた。
従来は熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、無機フィラーを配合することで剛性の改良を試みてきたが、フィラーのアスペクト比が大きくなるほどフィラー繊維の方向の剛性は高くなる一方で、フィラーの方向と直角方向の剛性は単なるフィラーの剛性が容積見合いで加成されるのみである。このことは同時に線膨張率についても同様な現象となって現われる。例えば、ガラス繊維をポリプロピレン、ポリアミド樹脂等に配合し、射出成形された成形体の線膨張率は、ゲートから樹脂が型内に流動する方向に配向する。
さらに詳細には、肉厚の中心部と型壁付近とでは剪断速度が異なるため、そのガラス繊維の向きが異なる。このとき、ガラス繊維方向の線膨張率は、例えばポリアミド6にガラス繊維30重量%配合した射出成形体のそれは10×10−5/Kが3×10−5/Kまで改良されるものの、直角方向のそれは8〜10×10−5/K程度である。良く知られたことではあるが、射出成形型内の溶融樹脂はゲートから扇状に流動し、末端では衝突ウエルドを生ずるが、この付近でのガラス繊維の方向は、扇状流動部とは異なる方向にガラス繊維が配向された成形体が形成されることになる。したがって、成形体の面方向における線膨張率が部位によって異なることになり、この結果として製品の反りや変形が生ずることになる。このためアスペクト比の高いフィラー、例えばチョップドガラス繊維や炭素繊維を配合されてなる成形体の金型設計は、ゲート位置及びゲート点数、及び金型温度調節配管等に関するそれぞれの工夫がなされるが、それでもなお解決されていないのが実態である。
周知のように自動車は外装、外板、内装、構造体の約3万点に及ぶ部品点数によって成立している。自動車は適用場所によって灼熱の土地を走行する車輌が同時に寒冷地も走行可能であることが要求される。この時、線膨張率の大きい成形体と嵌合させる場合には、外観を犠牲にした上での干渉部位の設定、固定に融通性を持たせるための馬鹿孔を形成する等の、止め手段における工夫が必要となる。それでも全周が拘束されるドア、フード、ルーフなどの部位には適用が困難であり、これが現在でも自動車用大形部材としての熱可塑性樹脂の採用が拡がらず、軽量化の要請に反する鋼板が引き続き利用されている主たる理由である。
また、自動車の使用時の環境温度変化問題よりもさらに厳しいのは製造過程における塗装問題である。高張力鋼板からなるホワイトボディは防錆処理と賦型時及び溶着時の歪み開放を兼ねてエポキシ系カチオン塗装処理をする。しかし、塗料や焼き付けブースの条件にもよりその温度は異なるものの約140℃〜220℃近傍である。所謂オンライン塗装である。当該処理後、プラスチックスの製品をライン中に持ち込み、ホワイトボディに取り付けて110℃〜140℃焼付温度の中塗りして上塗りの塗装を施すインライン塗装と、若しくは別ラインでプラスチックスを塗装しておいて、最終段階で組み立てるオフライン塗装とがある。鋼板のホワイトボディ組み立て時にプラスチックス製品も取り付けておけば、中塗り、上塗り時の外部からの異物コンタミネーションを回避できることもあり、最も好ましいが、プラスチックス製品の耐熱性不足によるヒートサグ問題及び大きな線膨張率による変形があるため適用されていなかった。オンライン塗装の少ない事例としてはポリアミド・ポリフェニレンエーテルのポリマーアロイ樹脂のフェンダー適用事例がある。これはホワイトボディに取り付ける箇所を固定しても線膨張による変形が拘束されていないタイヤアーチ部に逃げることで解決できた極めて限られた部品である。自動車外板の場合、ドア、ルーフ、フードなどの全周が拘束される部品では、オンライン塗装はもとより、走行時の温度環境範囲においてもその大きな線膨張率が障害となって適用できていない。
フィラーとのコンポジットによる線膨張率制御技術以外にも過去いろいろな技術が開発されてきた。射出成形の剪断速度で延伸可能なエチレン/プロピレンエラストマー系やABAトリブロックエラストマーを熱可塑性樹脂内にブレンドすることが利用されている。水添スチレンブタジエンスチレン(SEBS)の特定な組成物はポリプロピレンやポリアミド等のマトリックス内に20〜40重量%配合して射出成形した場合、エラストマーが熱環境下で収縮することからマトリックスの線膨張と打ち消し合い、射出成形方向の線膨張率が小さくなることは知られており、アスペクト比の高い無機フィラーとの併用系で自動車外装のサイドモール部品などに適用されたことがある。しかしながら、この場合でも成形方向(この場合は長尺方向部品)の直角方向及び製品の厚み方向にはその線膨張率は寧ろ増加する。
また、添加フィラーの配向は線膨張率の異方性をもたらす。射出成形や押出成形に限らず、プレス成形においても異方性は問題となる。プレス成形とは樹脂を加熱されたプレス型内で流動させ、次いで冷却して取り出すプロセスである。この過程では樹脂中に配合されている(この段階では配向していなくても)フィラーは型内での樹脂が流動する方向に随伴して配向するからである。特にアスペクト比の高いフィラーにあっては顕著である。いずれの有機、無機フィラーもマトリックスにおいて成形方向及びその垂直方向などで線膨張率の異方性があることから適用可能な製品は限定されている。
異方性を改良するには、炭素繊維複合材料のように多軸方向に炭素繊維を積層させる手段が有効とされてきた。炭素繊維複合材料はその比剛性、比強度が鋼板よりも5〜10倍優れていることから、特に軽量化が要求される航空機への採用が進んでいる。炭素繊維複合材料の多くは熱硬化性樹脂炭素繊維複合材料である。炭素繊維からなるテープに樹脂モノマーもしくは未硬化のオリゴマーを浸透させたプリカーサーを多軸に積層させ、次いで熱硬化処理を行うことにより製品とするプロセスである。このプロセスでは未硬化状態のプリカーサーを製品形状に合わせて積層することで、製品の形状追随性があることから熱硬化後製品も多様な形状となりうる。しかしながら製造プロセス時間が長いこと、使用後の廃棄物問題を抱えていることなど課題が多いのも事実である。
近年、熱硬化系に比較して成形時間が短いこと、使用後のリサイクル性も優れる等の利点を活用すべく、熱可塑性樹脂系炭素繊維複合材料の研究が盛んになってきた。元来、熱可塑性樹脂の粘度は熱硬化性樹脂の粘度よりもかなり高いため、炭素繊維束の中まで浸透させることは困難である。非特許文献1には、炭素繊維束を開繊し、糸間距離を拡げる処理をした上で熱可塑性樹脂をラミネートする等のプロセスで熱可塑性樹脂系の炭素繊維複合体を得る技術が示されている。しかしながら、この開繊技術によっても粘度の高い熱可塑性樹脂を、繊維間の空間にボイドなく完全充満することはできていない。また、熱可塑性樹脂系炭素繊維材料は、一般的には平板からの圧空、真空成形などの二次加工により曲線を有する成形体を得るものの、炭素繊維は伸びが極めて小さいため専ら曲率半径の大きい成形体に限定される欠点がある。圧空成形、真空成形の場合の絞り比は1/100以下にならざるを得ない。このため、平板若しくは曲率半径の大きな成形体をインサート体として、その他のデザイン部分をチョップド炭素繊維熱可塑性樹脂コンパウンドで埋める成形法の利用に限定される。
一方で、近年、ガラス繊維や炭素繊維等の無機繊維に関わる環境問題への配慮から、植物由来の天然繊維であるセルロース繊維を利用する検討が進められている。熱可塑性樹脂をマトリックスとし、セルロース繊維を強化材とするセルロース繊維強化熱可塑性樹脂複合材についてもその検討は進められているが、その製造方法は、熱可塑性樹脂とセルロース繊維集合体とを溶融混練装置を用いて該セルロース繊維集合体を溶融した熱可塑性樹脂中で混練しながら解繊・分散させる、いわゆる溶融混練法が殆どである。しかしながら、この方法では樹脂を溶融させるために高温プロセスが必須となり、かつセルロース繊維を分散させるために強制的に練るという操作が加わるために、セルロース繊維が熱的及び物理的に損傷を受けやすく、特に溶融温度が高い樹脂には適用が困難であった。
また、溶融混練法では、セルロース繊維集合体を解繊させやすくかつ混練装置に供給させ易くするために、該セルロース繊維集合体はペレットやフレーク状或いはセルロース繊維の懸濁水溶液のような短繊維状態に限られ、結果として十分な補強効果を得ることができなかった。セルロース繊維をミクロフィブリル化してアスペクト比を高め補強効果を高める検討も行われているが(例えば、特許文献1、特許文献2)、逆に解繊し難くなるためにセルロース繊維の分散性が不均一化しやすい。結果として、溶融混練法では、セルロース繊維を樹脂中へ均一に切断損傷なく分散させることは未だ容易ではない。したがって、得られるセルロース繊維複合材の機械的強度も未だ満足するものではなく、線膨張率の低減効果も十分ではなかった。しかも、かかるセルロース繊維強化熱可塑性樹脂複合材の成形品は前述の如く線膨張率に異方性をもたらすことになる。
補強用繊維として短繊維ではなく織物や不織布を利用した繊維強化プラスチックの検討も行われている。特許文献3には、熱可塑性樹脂繊維と補強繊維を混織した織物、若しくは熱可塑性樹脂繊維のフィラメントと補強繊維のフィラメントをそれぞれ1又は2本以上集束して混撚した混撚束とし、この混撚束を用いて形成された織物を少なくとも1枚以上その内部に介装させ、さらにその表裏面に熱可塑性樹脂を積層してプレスした繊維強化プラスチックが開示されているが、その熱可塑性樹脂繊維と補強繊維との混織・混撚比率や繊維強化プラスチックの具体的な製造条件、機械的物性及び熱的特性については示されていない。そして、実施例ではポリエステル繊維とガラス繊維について、その織物組織及びフィラメント混撚束の断面図が例示されているだけである。
特許文献4には、天然繊維を含む1本又は複数本の糸を芯糸とし、前記芯糸の周囲を合成樹脂繊維糸でカバリングした繊維強化樹脂用複合糸を複数本引き揃え、その周囲を前記合成樹脂繊維糸でカバリングして繊維強化樹脂用複合糸としたものを少なくとも一方向に配列したもの、又は前記繊維強化樹脂用複合糸を用いて織物、編物、多軸挿入たて編物又は組み物としたもの(中間体)を、前記合成樹脂繊維糸の融点以上であって、前記天然繊維の分解温度より20℃低い温度以下に加熱してプレス成形した繊維強化樹脂成形体が開示されている。しかし、合成樹脂繊維の溶融粘度、天然繊維紡績糸の撚り強さや糸径によっては該天然繊維紡績糸内部まで溶融樹脂が十分に含浸できなくなるおそれがあり、また当該特許文献4の範囲内では天然繊維の分解温度の制約から220℃(好ましくは200℃)を超える高温で溶融する合成樹脂には用いることができず、使用できる合成樹脂繊維が限られていた。このため、かかる繊維強化樹脂成形体の耐熱温度(荷重たわみ温度)が200℃を超えることはなかった。さらに、当該特許文献には、かかる繊維強化樹脂成形体の線膨張率については何ら示されていない。
特開2005−42283号公報
特開2011−38193号公報
特開平5−92527号公報
特開2008−240193号公報
繊維機械学会誌(繊維工学)Vol.55,No.11(2002)別刷
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的は、既存の布製品をそのまま、あるいは、その製造設備を利用して工業的に有利に製造できる布を原材料とする高弾性率、高強度、高耐熱性及び低環境負荷を可能にし、さらには、金属並みの低線膨張率が発現可能で、しかも、工業材料として有用なエンボス加工性などに優れたセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体を提供することである。
本発明者らは、環境に優しいセルロース系繊維を強化素材とし、熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料を種々検討する中で、市販品であるポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)とセルロース繊維(コットン繊維)の混紡糸からなる布に着目した。ポリエチレンテレフタレートの融点は260〜265℃付近にあり、これを溶融するためには270〜280℃の温度が必要となる。一方、一般的なセルロース繊維は約240〜340℃の温度域で熱分解が進行することが知られており、一般的にはセルロース繊維を270〜280℃の高温に晒して成形加工するような事態は避けるのが常識と考えられている。本発明者らは、この常識を打ち破り、市販のポリエチレンテレフタレート繊維とコットン繊維の混紡糸からなる布生地を積層して、270℃の温度でプレス成形を施してみた。すると、驚くべきことに、このプレス成形して得られたシートが、コットン繊維の熱変色は若干見られるものの、非常に優れた機械的特性、耐熱性及び寸法安定性を発現することを見出した。そして、この成形シートがある特定の熱的性質を示すようになると、100℃付近の温度でもコットン繊維の切断や損傷がなく良好なエンボス加工性を示すことも見出し、これらの知見を基に鋭意検討を重ねた結果、ついに本発明を完成するに至った。さらには、マトリックスである熱可塑性樹脂の溶融温度未満の温度であっても、強化材であるセルロース系繊維を損傷することなくエンボス加工が可能なセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体を完成するに至った。
請求項1に記載の発明は、1種又は2種以上のセルロース系繊維及び1種又は2種以上の熱可塑性樹脂繊維を構成素材とする布を少なくとも一層又は二層以上積層して、前記熱可塑性樹脂繊維中の少なくとも1種の熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度又は溶融温度以上の温度で成形してなる複合成形体であって、該複合成形体表面において起点を任意とする任意の二つの面内方向における線膨張係数が、30〜80℃において3.0×10−5/K以下であることを特徴とするセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体である。
請求項2に記載の発明は、前記セルロース系繊維の含有量が15〜85重量%であり、該セルロース系繊維が成形後にあっても切断損傷がなく繊維形態を維持していることを特徴とし、請求項3に記載の発明は、前記セルロース系繊維に対してタンニンを表面被覆することを特徴とし、請求項4に記載の発明は、前記1種又は2種以上のセルロース系繊維と1種又は2種以上の熱可塑性樹脂繊維との混紡糸を構成素材とする布であることを特徴とするセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体である。
請求項5に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂繊維が、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリスチレン系繊維から選ばれることを特徴とするセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体である。
請求項6に記載の発明は、前記複合成形体に対してエンボス加工が施されたことを特徴とするセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体であり、請求項7に記載の発明はJIS K7191の規定に準拠した荷重たわみ温度測定において、荷重たわみ温度曲線が温度−たわみ直交座標系の第一象限に少なくとも二つ以上の変曲点を有する複合成形体であって、その低温側から最初の変曲点(変曲点1)の温度以上であって、その次の変曲点(変曲点2)の温度以下であるような温度範囲で成形加工されることを特徴とするセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体である。
本発明のベースとなるセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体は、1種又は2種以上のセルロース系繊維及び1種又は2種以上の熱可塑性樹脂繊維を構成素材とする布を少なくとも一層又は二層以上積層して、その1種又は2種以上の少なくとも一つの熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度又は溶融温度以上の温度で成形することによって得られる。こうして得られた成形体は前記の1種又は2種以上の少なくとも一つの熱可塑性樹脂繊維を形成する熱可塑性樹脂がマトリックスとなり、前記の1種又は2種以上のセルロース系繊維、又は前記の1種又は2種以上のセルロース系繊維及び前記の1種又は2種以上の熱可塑性樹脂繊維の中で溶融せずに残った繊維が強化材として機能するいわゆる繊維強化複合材料構造を呈する。
この繊維強化複合成形体は、セルロース系繊維や溶融せずに残った熱可塑性樹脂繊維の間に溶融した熱可塑性樹脂が含浸し、かつこれらの繊維の切断や損傷がないため補強効果に優れ、結果として高強度・高弾性率、高耐熱及び低線膨張率を発現する。たとえ成形時における熱可塑性樹脂繊維の溶融温度がセルロースの熱分解温度域にあっても、混練作用のような強い物理的な作用を受けないためセルロース繊維の形状・形態がそのまま維持され、特に、1種又は2種以上のセルロース系短繊維と1種又は2種以上の熱可塑性樹脂短繊維との混紡糸からなる織物組織構造を有する布を用いた場合には補強効果が一段と高まるため、優れた機械的特性、耐熱性及び寸法安定性を有する複合成形体を得ることができる。さらに本発明のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体は、織物や編物の適度な形状追随性に加え、これに特定の熱的性質を付与することによって、マトリックスとなる熱可塑性樹脂の溶融温度未満の温度範囲におけるエンボス成形が可能となる。
本発明に係る荷重たわみ温度曲線の基本パターンを示す図である。 本発明に係る実施例8の荷重たわみ温度曲線を示す図(1)及び実施例9の荷重たわみ温度曲線を示す図(2)である。 本発明に係る実施例18の荷重たわみ温度曲線を示す図である。
以下、本発明の実施形態について実施例を交えて説明するが、本発明のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体は、下記の実施形態或いは実施例のみに限定されるものではなく、さらに本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明におけるセルロース系繊維は、β−1,4−グルカン構造を有する多糖類であれば特に限定されず、例えば、綿(コットン)、カポック等の種子から得られる種子毛繊維、亜麻(リネン)、大麻、苧麻、黄麻、ケナフ、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮等の靭皮から得られる靭皮繊維、マニラ麻、サイザル麻、パイナップル、バナナ、ネギ、ダイコン等の葉から得られる葉脈・葉柄繊維、麦藁、稲藁、イグサ、竹(バンブー)、葦、シュロ、バカス等の茎幹から得られる茎幹繊維、針葉樹及び広葉樹から得られる木材繊維、ココナツ椰子、ヘチマ等の果実から得られる果実繊維などの天然植物由来のセルロース繊維を挙げることができる。
これらの繊維の取出し手段は各々の植物の種類によって様々であり、機械的及び/又は化学的に、それぞれの常法に従って、短繊維の集合体である原綿やパルプの状態で得ることができる。また、これらの天然の繊維や高分子を原料として、硝酸セルロース法、銅アンモニア法、ビスコース法、酢酸セルロース法、有機溶剤紡糸法、熱可塑性セルロース法等の公知の処理法によって得られる銅アンモニアレーヨン(キュプラ)、ビスコースレーヨン、アセテート、精製セルロース繊維(テンセル、リヨセル)、バンブーレーヨン等の再生セルロース繊維や半合成セルロース繊維なども挙げることができる。さらには、酢酸菌等の微生物が産生するバクテリアセルロースやホヤの外皮から得られるセルロース繊維のような動物由来のセルロース繊維も包含する。これらのセルロース系繊維は単独で又は2種以上の組み合わせで使用してもよい。なお、これら例示した各種繊維類の中では、生産性、コストなどの観点から植物由来のセルロース繊維が好ましく採用可能である。
ここで、代表的な植物由来のセルロース繊維である綿(コットン)について説明を加える。農産物である綿花から得られる綿繊維は、綿の種子の表皮細胞が長く生長したもので、表皮細胞の分裂及び伸長生長する速度の違いから綿繊維に長さの差が生じ、種子の表面はリントと呼ばれる長い繊維とリンターと呼ばれる短い繊維(通常5mm以下)で覆われている。一般的に、リントは綿紡績の原料として、リンターはパルプ、銅アンモニア法のキュプラ繊維、火薬、セルロイドなどの原料として用いられる。綿畑で収穫された綿花は、乾燥機で水分が取り除かれた後、葉ごみなどの異物が取り除かれ、さらに綿繰機にかけられ種子部が取り除かれる。このとき得られる綿繊維が長繊維のリント(コットンリント)で、種子側に取り残される短い繊維がリンター(コットンリンター)である。
コットンリントは、その殆どがベール状に強く圧縮された原綿となる。一方、コットンリンターは、バラ積又はシート状若しくは厚板状に強く圧縮された状態で提供される。綿繊維は、デシ綿(短繊維綿)、アプランド綿(中〜中長繊維綿)、エジプト綿、海島綿(長〜超長繊維綿)など品種によってその繊維長は異なるが、普通よく使われるものはリント部の長さが25〜35mmほどのアプランド綿である。また、綿繊維の太さ(径)は概ね10〜20μmほどである。本発明においては、綿繊維であるコットンリント、コットンリンター共に本発明にかかる布の原料素材として用いることができる。また綿繊維はセルロース含有量が高く、木材繊維のようなリグニン成分を含まないため、変色しにくいという特徴を持ち、本発明の熱可塑性樹脂の強化材として好ましいセルロース系繊維である。
セルロース系繊維の原綿は、これを紡績することにより糸状の素材(紡績糸)となる。一般に紡績方法は繊維の種類や長さ等によって綿紡績、落綿紡績、特紡紡績、亜麻紡績、ラミー紡績、ジュート紡績、梳毛紡績、紡毛紡績、絹紡績、スフ紡績、アセテート紡績、トウ紡績などに分けられ、各々、多少の違いはあるものの基本的な操作は次の通りである。
(1)混打綿:調合割合に応じて圧縮された綿塊を開綿機、除塵機、打綿機等一連の工程を通過させ、原綿の解舒・混綿作用を繰り返しながら原綿に含まれている塵埃や雑物を除去し、清浄かつ均斉な板状のラップにする。
(2)梳綿:ラップを櫛梳しながら繊維を解きほぐし夾雑物を除去するとともに繊維をある程度平行に揃え篠状のスライバーにする。
(3)練篠:スライバーを数本合わせて引き伸ばし繊維が均一でより平行度の高いスライバーにする。
(4)粗紡:スライバーをさらに適当な太さまで引き伸ばし軽く撚りをかけた粗糸にする。
(5)精紡:粗糸を一定の長さに伸ばしながら撚りを加え所定の撚り(回数)と太さ(番手)の糸(単糸)にする。
(6)仕上げ:精紡でつくられた糸を必要に応じて加工を施し、所定の長さ・重さ単位でチーズ状やコーン状に巻き上げる。
また、メリヤス糸、レース糸、カタン糸、タイヤコード糸等のような、より均斉で強力な糸をつくるような場合には、梳綿と練篠の間に、スライバーを何本か合わせて精梳綿機にかけより完全な櫛梳作用を施す精紡工程を挿入することがある。本発明においては、紡績糸はセルロース系繊維が1種であっても2種以上のセルロース系繊維を混合して紡績した混紡糸であってもよく、前記の公知の紡績方法の中から繊維の種類、長さ、太さ、混紡比率等に応じて適宜選択又は組み合わせて利用することができる。
2種以上の繊維を混合する場合は、前述の原綿、混打綿、梳綿、練篠の何れの段階でも、或いは2段階以上の組み合わせであってもよく、混紡繊維の種類や混紡比率、生産性等に応じて適宜選択すればよい。例えば、それぞれの繊維の原綿を計量したのちホッパーミキサーへ一括供給して開綿と混綿を行って、さらに混打綿で均質に混合する方法、或いは、混紡割合の高いほうの素材を梳綿・練篠工程でスライバー化するとともに、混紡割合の低いほうの素材からなるスライバー又は粗糸を梳綿又は練篠の段階で所定量供給しながら梳綿機(フラットカード等)や練篠機或いはギル等で混合する方法などを挙げることができる。
本発明における熱可塑性樹脂繊維は、そのガラス転移温度又は溶融温度が、セルロースの熱分解が顕著になる温度(約300℃付近、目安として加熱重量減が10%になる温度)未満のものであって、熱可塑性の高分子化合物から紡糸できる繊維であれば特に限定はなく、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、アクリレート系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリオキシメチレン系繊維、ポリスチレン系繊維、ポリエーテルエステル系繊維等の中から、使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリプロピレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリヘキサメチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリカプロラクトン繊維、ポリブチレンサクシネート繊維、ポリアミド6繊維(6ナイロン繊維)、ポリアミド6−6繊維(6−6ナイロン繊維)、ポリアミド6−10繊維(610ナイロン繊維)、ポリアミド11繊維(11ナイロン繊維)、ポリアミド12繊維(12ナイロン繊維)、アクリル繊維、アクリロニトリル−酢酸ビニル共重合体繊維、アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体繊維、アクリロニトリル−アクリル酸メチル共重合体繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、エチレン−酢酸ビニル共重合体繊維、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維、エチレン−アクリル酸メチル共重合体繊維、ポリメチルペンテン繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリウレタン繊維、ビニロン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アクリレート繊維、ベンゾエート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、シンジオタクチックポリスチレン繊維等の化学繊維を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂繊維は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中で、本発明においては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリスチレン系繊維が好ましく、特に繊維産業で汎用のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維及びポリオレフィン系繊維が好ましい。
また、本発明にかかる熱可塑性樹脂繊維は、前述のように例示した以外にも、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂及び各種熱可塑性エラストマー等の熱可塑性高分子化合物を主体とする共重合体もしくは混合物、及びこれらの樹脂を含有するポリマーアロイ等を原材料としたものであってもよい。かかるポリマーアロイにおいて、非相溶性の樹脂を2種以上組み合わせる場合には、従来公知の相溶化剤を配合することができる。さらに、これらの熱可塑性樹脂繊維を形成する樹脂中には、他の要請ないし所望に応じ、その特性を大きく損なわない範囲において、慣用の各種成分、例えば、無機充填剤や他の有機充填剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性カーボン、滑剤、造核剤、架橋剤、ラジカル発生剤、離型剤、界面活性剤、抗菌・抗カビ剤、染料、顔料、ゴム類などを配合してもよい。
これらの熱可塑性樹脂繊維は、それぞれの熱可塑性樹脂を原料として、溶融紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸、ゲル紡糸、液晶紡糸、静電紡糸(溶媒型、溶融型)、メルトブロー法等の公知の紡糸方法によって製造することができる。紡糸されたフィラメント(長繊維)はそのまま、或いは目的に応じて必要な長さに切断して使用することができる。単一繊維からなるモノフィラメントを数本以上合わせて一本にしたものはマルチフィラメント糸となり、フィラメントを引き揃えて撚りをかけたものはフィラメント糸となる。2種以上のフィラメントからなるフィラメント糸は「混繊糸」と呼ばれる。さらに熱可塑性樹脂繊維においては、ノズル孔の形状を正多角形、十字形、星型等に変えて紡糸することも、或いは2種以上の熱可塑性樹脂をその種類と同数に仕切られたノズルから同時に紡糸してノズル吐出部で合わせて紡糸することも可能である。前者からなる糸は「異形断面糸」、後者からなる糸は「複合糸」と呼ばれる。熱可塑性樹脂繊維は太さや長さを自由に変えることができるため、基本的に前述のどの紡績方法を用いても糸にすることができる。また、短く切断された繊維(ステープル)はセルロース系短繊維(原綿)と同様に紡績糸として加工可能である。本発明にかかる熱可塑性樹脂繊維のステープルは1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。本発明に使用できる熱可塑性樹脂繊維からなる糸状の素材としては、モノフィラメント、マルチフィラメント糸、フィラメント糸、混繊糸、異形断面糸、複合糸、紡績糸(混紡糸含む)の何れの形態のものであってもよく、これらは単独でも又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体を成形するうえで、その基本構成単位となる素材(以下、基材と略記する)は、前記のセルロース系繊維及び熱可塑性樹脂繊維を構成素材とする繊維集合体を薄く平面的(二次元的)に加工した布で、具体的には、織物及び編物を挙げることができる。
織物は糸状の素材を経緯に組み合わせて一定方向に平面的に連なって面組織を形成する織地で、その使用している繊維の種類や織り方によって性質が異なる。この経糸と緯糸の組み合わせ方を組織といい、その基本的な組織である平織、綾織(斜文織)、朱子織は織物の三元組織と呼ばれているが、それぞれの変化形や混合形、特別形などその種類は多岐に亘る。例えば、平織の変化組織としては、正則斜子織、変化斜子織、向かい斜子織、経畝織、緯畝織、変化畝織等が、綾織の変化組織としては、伸び斜文織、曲がり斜文織、破れ斜文織、飛び斜文織、山形斜文織、あじろ斜文織、重ね斜文織、よれ斜文織、昼夜斜文織、飾り斜文織、ぼかし斜文織等が、そして朱子織の変化組織としては、変則朱子織、ひろげ朱子織、重ね朱子織、花崗織、昼夜朱子織、ぼかし朱子織等がある。特別形としては、蜂巣織、模紗織、梨地織、ハック織等があり、それに加え、2種以上の組織を混合して作った混合組織がある。
また織物の多くは一重織であるが、二重織(風通織、ひだ織、フクレ織、ベットフォード織)や多重織(ベルト織等)のように織物が重なり合っているようなものもある。さらには、同じ組織の生地でも、糸の種類や太さ、撚り方、密度(打ち込み)、仕上げや加工の仕方、産地名などで様々な呼名があり、例えば、ブロード、ポプリン、タッサー、ローン、オックスフォード、ボイル、ウェザー、シャンブレー、タイプライター、ガーゼ、晒、細布、金巾、天竺、バーバリー、シーチング、チノクロス、キャンバス、帆布、カツラギ、ツイル、デニム、スエード、タンガリー、シフォン、キャラコ、キャンブリック、ピケ、ダマスク、レノクロス、オットマン、サージ、ギャバジン、トロピカル、ポーラ、ジョーゼット、ドスキン、モスリン、バラシア、ヘリボーン、シャークスキン、カルゼ、アムンゼン、ブッチャー、フランス綾、サキソニー、ネル、タオル、タフタ、羽二重、縮緬、オーガンジ、シャンダン、マーキゼット、ファイユ、グログラン、サテン、ベルベット、クレープ、ギンガム、サッカー、コード織物、ドビー織物、ジャガード織物等がある。
製織には織機を用いるのが一般的であって、人力で動かす手織機と動力を使って動かす力織機に大別される。本発明にかかる織物おいては両者ともに使用できるが、生産性の観点から力織機を用いる機械織のほうが好ましい。工業用汎用織機の種類は多く、その分類方法は様々あるが、例えば、経糸の開口方法や緯入れ方法によって、前者はタペット織機、ドビー織機、ジャガード織機に、後者は有杼織機(シャトル式織機)、無杼織機(シャトルレス織機)に分類される。さらに有杼織機には、シャトルチェンジ(杼替)織機、コップチェンジ(管替)織機、ルームワインダー織機等があり、無杼織機には、レピア織機(しごき方式、つかみ方式)、グリッパー織機、エアジェット織機(クローズドエアガイド方式、補助ノズル付変形筬方式、補助ノズル付エアガイド方式)、ウォータージェット織機、ニードル織機等がある。その他、特殊な織機として、タオル織機、多丁杼織機(ボックス織機)、二重織機、ラペット織機、帆布織機、カーペット織機、三軸織機、多相織機、三次元織機等がある。
そして、一般にこれら織機は、目的とする織物製品に応じて適宜選択される。本発明における織物については、これらの織機を単独で又は2種以上の組み合わせで使用してもよい。なお、製織する上では毛羽立ちや糸切れを防止し生産稼働率の向上を図るため、主に経糸を澱粉、蝋、ワックス、ポリビニルアルコール、アクリル酸エステル、水溶性ポリウレタン、水溶性ポリエステル等の糊剤で被覆し保護する前処理が行われることが多い。本発明においては、上記の織物の形態を有するものであれば限定なく適用可能であるが、中でも空隙率が小さい平織又は/及び綾織の組織をベースとする織物が好ましい。
編物は糸状の素材をループ状に組み合わせて作った編地であり、最初に基本となる結び目を作り、その中に糸状の素材を通して連続して輪(ループ)を作りながら面を形成することが編み方の基本操作となる。編み方には大きく分けて緯方向に編目を作っていく緯編と経方向に編目を作っていく経編とがある。緯編には平編(天竺編)、ゴム編(リブ編)、両面編(インターロック)、パール編(リンクス)の4種類の基本的な組織があり、さらに緯編は編機の違いにより丸編と横編に分かれる。経編には開き目と閉じ目(シングル・デンビー編)を原組織として、トリコット、ラッセル、ミラニーズの3種類の基本的な組織がある。そして、編物にもこれらの組織を様々に変化・複合化させた多くの種類がある。なお、編物は織物よりも歴史が浅く、織物ほど多彩な名称化がなされていないため、一般的には、編組織の名称がそのまま編物生地の名称になっている場合が多い。
例えば、緯編系では平織、ゴム編、両面編、パール編のほか、タッグ編(引き上げ編)、浮き編(フロートスティッチ)、両畦編(フルカーディガン編)、片畦編(ハーフカーディガン編)、振り編(ジョッキング、ラッキング)、鹿の子編、亀甲柄、煉瓦柄、梨地編、レース編(すかし目編、糸抜き編)、アイレット編、添え糸編(プレーティング)、パイル編(立毛編、ループ編)、ペレリン編、アコーディオン編、多衝程両面編(両面出合い)、四段両面編、斜文編、3段両面ヘリボーン、ポンチローマ、両面鹿の子編、シングルピケ、ジャガード編、針抜きゴム編、ゴム亀甲編、目移し柄のゴム編、片袋編、ミラノリブ、ダブルピケ、ブリスター、オーバーニット、ダブルジャージー編(ゴム編み出合い)、裏毛編(フリース編)、ひねり編(縄編)、添え糸ゴム編、バスケット編、パール編の梨地、リンクスミスダイヤ柄、ケーブルアンドパール編、流し編、ガーメントレングス編、からみ添え糸編(刺繍編)、ラーベン編、緯入れ編、アーガイル編等を挙げることができる。
また、経編系では、シングルデンビー編(シングルトリコット編)、ダブルデンビー編(ダブルトリコット編)、ハーフトリコット編、逆ハーフトリコット編、サテントリコット編、緯糸挿入トリコット編、シングルバンダイク編(シングルアトラス編)、ダブルバンダイク編(ダブルアトラス編)、シングルコード編、ダブルコード編、プレーンコード編、クイーンズコード編、ベルリン編(イングリッシュレザー)、二目編(ダブルスティッチ)、シェル編、シャークスキン編、アイドルスイング編、エラスティック編、ラッセルジャージー編、ダブルラッセル編、ラッセルストライプ編、ラッセルチェック編、ラッセルレース編、チュールメッシュ編、トリコットメッシュ編、ミラニーズ編、タック編、紋編、パイナップル編、裏毛編(裏毛経編)、裏毛アトラス編、裏毛コード編等を挙げることができる。
編物の製造方法(編立方法)は手編みであっても機械編であってもよいが、本発明においては生産性に有利な機械編のほうが好ましく、汎用の編機、例えば、横編機(平型横編機、円形横編機)、トンプキン編機、台丸編機、フライス編機、平編機、コットン式編機、両頭編機(平型バール編機、ガータ編機)、円形ゴム編機、円形バール編機、スパイラル編機、ラーベル編機、畦編編機、インターロック編機、スムース編機、多衝撃程両面編機、ダブルニット編機、パイル編機、シール編機、フライス・シール編機、吊編機、ラーベン編機、靴下編機、クチゴム編機、シングルトリコット編機、シングルラッシェル編機、フラットミラニーズ編機、サーキュラミラニース編機等を使用することができる。そして、これら編機も目的とする織物製品に応じて適宜選択すればよく、単独で又は2種以上の組み合わせで使用してもよい。本発明においては、上記の編物の形態を有するものであれば限定なく適用可能であるが、一般に生産性が高く緯編に比べ薄生地で織物と緯編の中間のような編地である経編生地が好ましく、中でも空隙率が比較的小さいシングルトリコット地を有する編物が好ましい。
本発明における布は、前記のセルロース系繊維及び熱可塑性樹脂繊維をそれぞれの構成素材として、これらが基材全体として見たときに平均的に偏在なく均一に混在していることが好ましい。セルロース系繊維からなる独立した基材と、熱可塑性樹脂繊維からなる独立した基材と、を積層して成形するよりも、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維とを平均して均一に混在した基材を積層して成形するほうが、溶融した熱可塑性樹脂が積層体全体に均質に滲みわたりやすくなる。結果として、積層体を構成するセルロース系繊維構造体の単繊維間の空隙まで溶融樹脂で埋まることになり、該セルロース系繊維による高い補強効果が発現する。
織物及び編物について、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維の二つの異なる繊維を平均して均一に混在せしめるには、一つは、次に挙げる糸を織糸及び編糸として用いる方法が挙げられる。
(1)1種又は2種以上のセルロース系短繊維(セルロースステープル)と1種又は2種以上の熱可塑性樹脂短繊維(熱可塑性樹脂ステープル)との混紡糸を用いる。
(2)1種又は2種以上のセルロース系短繊維からなる紡績糸と、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂短繊維からなる紡績糸との、または1種または2種以上の熱可塑性樹脂フィラメントとの交撚糸(混撚糸)を用いる。
(3)1種又は2種以上の熱可塑性樹脂フィラメント糸の外側に1種又は2種以上のセルロース系短繊維からなる紡績糸を巻き付けた被覆糸、或いはその逆型の被覆糸を用いる。
(4)1種又は2種以上の熱可塑性樹脂フィラメント芯糸の廻りに1種又は2種以上のセルロース系短繊維からなる紡績糸を巻きつけながら紡績したコアヤーンを用いる。セルロース系繊維の中でも、レーヨンやアセテートなどの再生セルロース繊維や半合成セルロース繊維はフィラメントとしても製造できるため、この場合、上記(2)及び(3)における1種又は2種以上のセルロース系短繊維からなる紡績糸は、1種又は2種以上のセルロース系フィラメント糸に置き換えることができ、また、セルロース系フィラメント糸と熱可塑性樹脂フィラメントとの混繊糸とすることもできる。
これらの中で本発明にかかる織物及び編物を形成する糸状の素材として最も好ましいのは上記(1)の1種又は2種以上のセルロース系短繊維と1種又は2種以上の熱可塑性樹脂短繊維と混紡糸である。例えば、それぞれ1種のセルロース系短繊維と熱可塑性樹脂短繊維との混紡糸で見た場合、この混紡糸は、撚りがかかっていても、また糸が太くても、糸の内部でセルロース系短繊維と熱可塑性樹脂短繊維とが所定の割合でほぼ均一に分布・分散した状態にあるため、これを加熱して熱可塑性樹脂繊維が溶融したときに、該溶融樹脂が溶けずに残存した撚糸を構成するセルロース系繊維全体に渡って速やかにかつ均質に浸透しやすい。そのため、このような混紡糸からなる織物や編物を積層して熱可塑性樹脂繊維の溶融温度で成形した後はセルロース系繊維の間や周囲にボイドが形成され難く、該セルロース系繊維の補強効果が効率よくマトリックスである熱可塑性樹脂に作用する。上記(2)〜(4)においても、セルロース系短繊維からなる紡績糸をセルロース系短繊維と熱可塑性樹脂短繊維との混紡糸に置換したものは好ましく使用することができる。もちろん、上記(2)〜(4)に挙げた交撚糸、被覆糸、コアヤーン及び混繊糸であっても、本発明の目的とする線膨張率が達成できれば、本発明にかかる織物及び編物を形成する糸状の素材として使用してもよい。
織物及び編物について、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維の二つの異なる繊維を平均して均一に混在せしめるもう一つの方法として、織物は交織、編物は交編をそれぞれ挙げることができる。交織は経糸と緯糸を2種以上の異なる糸を使って織ることをいい、例えば、経緯何れか一方の糸をセルロース系繊維よりなる糸とし、もう一方を熱可塑性樹脂繊維よりなる糸を使って織る方法が挙げられる。また、交編は2種以上の異なる糸を使って編むことをいい、セルロース系繊維よりなる糸と熱可塑性樹脂繊維よりなる糸を使って編む方法を挙げることができる。本発明においては、この交織も交編もセルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維とを複合化させる方法として挙げることができるが、2種以上の異なる糸のうち、少なくとも1種がセルロース系短繊維と熱可塑性樹脂短繊維との混紡糸であることが好ましい。
本発明に使用できる基材は、基本的に前記の熱可塑性樹脂繊維及びセルロース系繊維を構成素材とする繊維集合体を薄く平面的(二次元的)に加工したものであって、かつセルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維の二つの異なる繊維を平均して均一に混在したものであればよく、前述の織物や編物の形態のほかにも、例えば、前記セルロース系繊維と前記熱可塑性樹脂繊維とからなる不織布や前記セルロース系繊維のパルプと前記熱可塑性樹脂繊維のパルプとからなる紙も、基材として又はその一部として、必要に応じて使用することができる。
ここでいう不織布とは、紙以外の、1種又は2種以上のセルロース系繊維と1種又は2種以上の熱可塑性繊維とを一方向に又はランダムに集積して交流及び/又は融着、或いは融着及び/又は接着によって繊維間を結合させたシート、ウェブ又はバットのことをいい、公知の不織布の製造方法に準じて得ることができる。不織布の製造法における基本的な工程は、ウェブの形成工程とウェブ繊維の結合工程であり、それに付加的な工程が加わる。本発明においては、紙以外の1種又は2種以上のセルロース系繊維及び1種又は2種以上の熱可塑性樹脂繊維とからなる薄い集積層として、この不織布を製造する工程によって形成される繊維ウェブを使用することができる。
当該ウェブの形成方法は、湿式法、乾式法、紡糸法に大別されるが、湿式法又は乾式法によって得られるウェブを好適に使用することができる。湿式法は紙の抄紙法と同様であって、後述する木材パルプやリンターパルプのような長さが数mmオーダーのセルロース短繊維と前記の熱可塑性樹脂繊維をステープル状又はパルプ状化したものを所定の混合割合で水中に均一分散させ、その繊維懸濁液をスクリーン上に抄き取って薄い濡れたシート状のウェブ(湿式ウェブ)を形成させるものである。製紙業で一般的な長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜短網式抄紙機等の公知の抄紙機が利用でき、抄き取られた湿式ウェブはプレスローラーで搾水され、その後加熱ドラムで乾燥した後巻き取られ、或いは搾水・乾燥せずに又は乾燥後に巻取らずに次の繊維間結合工程に送られる。本発明においては、この湿式ウェブを搾水・乾燥したものも使用することができる。
一方、乾式法にはカーディング法とエアレイド法がある。カーディング法は主にリント綿のような長さが数cmオーダーの繊維のものに用いられる方法で、これと前記の熱可塑性樹脂繊維をステープル状にしたものとを所定の割合で混合し、ローラーカード等のカード(梳綿機)を用いて繊維塊(原綿から混打綿工程を経たもの)をある一定方向に梳って薄いシート状のウェブを形成させる方法である。エアレイド法は、湿式法と同じように、主に繊維長が数mmオーダーのものに用いられ、所定の割合で混合して解繊したセルロース系短繊維と熱可塑性樹脂短繊維とを空気流で大気中に分散させ、それをスクリーン上に集積させてランダムな繊維配向のウェブを形成させる方法である。
前記の湿式法及び乾式法によって得られたウェブは繊維間結合工程で繊維間結合処理が施される。この場合の繊維間結合処理方法としては、不織布の繊維間結合方法として公知のニードルパンチ法、スパンレース法、ケミカルボンド法、サーマルボンド法等を利用することができる。ニードルパンチ法は、乾式ウェブに特殊形状の針をパンチングして繊維を三次元的に交絡させる方法で、スパンレース法は、湿式ウェブ又は乾式ウェブに高圧ジェット水流を柱状に噴射して繊維を三次元交絡させる方法である。それぞれ、パンチング回数、高圧水柱流処理回数及び水圧等で交絡度合いを調整することができる。高圧水柱流によって交絡させた場合は、水分を除去させるために乾燥させる。また、ケミカルボンド法は、該ウェブに対し、接着剤(バインダー)を噴霧又はサイズプレス等によって含浸させた後に乾燥して繊維間を接着結合させる方法である。サーマルボンド法は、ウェブに熱溶融性接着繊維を混合してその繊維を部分的に熱溶融させ繊維間を結合する方法又は高・低融点からなる熱溶融性繊維を混合してその低融点繊維を熱溶融させ繊維間を結合する方法である。
その他、ウェブが解(ほつ)れないように糸で編み込む方法(ステッチボンド法)や前記高圧ジェット水流の代わりに加熱した高速の水蒸気を吹きつけて繊維間を結合させる方法(スチームジェット法)等も利用することができる。さらには、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して自己接着で結合させるスパンボンド法や熱可塑性樹脂の溶融紡糸を行うときに熱風を吹き付け極細繊維化して繊維間を交絡結合させるメルトブローン法等の紡糸法を利用し、これら集積ウェブ形成時にセルロース系繊維を混入させる方法であってもよい。
また、ここでいう紙とは、1種又は2種以上のセルロース系繊維と1種又は2種以上の熱可塑性樹脂繊維との混合抄紙によって形成される紙であって、それ以外は一般の紙と同様である。一般の紙を製造する上で、その直接的な原料となるのはいわゆるパルプと呼ばれる短いセルロース繊維の集合体である。紡績糸に汎用されるセルロース短繊維(ステープル)よりも短いのが一般的で、針葉樹及び広葉樹木材から得られる木材パルプや綿の紡績から出る繊維や綿織物の屑から得られるラグパルプ、綿実の地毛(リンター)から得られるリンターパルプ、亜麻から得られるリネンパルプ、和紙の原料として使用されている楮・三椏・雁皮パルプ、また、近年、森林資源節約の観点から注目されているバカスパルプ、ケナフパルプ、藁パルプ、竹パルプ等の非木材パルプが紙や不織布の原料として用いられている。
そのほか、新聞、雑誌、ダンボール、損紙、雑紙(オフィス古紙等)などの古紙から得られる古紙パルプも再生紙等の原料に用いられている。さらに、結晶性が高く高剛性を有するバクテリアセルロース繊維やホヤセルロース繊維等のパルプもスピーカーの音響用振動板(コーン紙)等の原料として用いられている。本発明に使用できるパルプは、これらのパルプ又は該パルプを水中に分散させた懸濁液に対して、叩解機、粉砕機、高圧ホモジナイザー等を用いてさらなる機械的なせん断作用を加え、セルロース繊維をミクロフィブリル化させたものであってもよく、また、これらのパルプをマーセル化処理、高温・高圧水蒸気処理等によりセルロースの結晶形態を転移させたものや結晶性を高めたものであってもよい。
製紙用の木材パルプは、その処理方法によって、機械木材パルプ及び化学木材パルプに分類される。機械木材パルプは、針葉樹の丸太やチップなどを粉砕機等の機械的な力で破砕することによって得られるパルプで、製造コストが安価でパルプ収率が高いものの、繊維長が比較的短くパルプ強度が低い。また、繊維中にリグニンやヘミセルロースなどの木材成分が多く含まれるため、変色しやすい。粉砕方法によって、粉砕パルプ(SGW)、加圧式粉砕パルプ(PGW)、リファイナー砕木パルプ(RPM)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などに分けられる。化学木材パルプは、針葉樹や広葉樹のチップに化学薬品を加え高温で蒸解処理することによって得られるパルプで、化学反応によってリグニンその他の非繊維素成分が除去されて繊維成分が抽出される。化学処理の方法は、使用される薬品によって、ソーダ法(水酸化ナトリウム)、硫酸塩法(水酸化ナトリウムと硫酸ナトリウムの混合物)、亜硫酸塩法(重亜硫酸カルシウム又は重亜硫酸マグネシウム)などがあり、ソーダ法及び硫酸塩法によるパルプはクラフトパルプ(KP)、亜硫酸塩法によるパルプはサルファイトパルプ(SP)と呼ばれている。
化学木材パルプは、機械木材パルプより収率が低く高価であるが、同じ原材料から製造された機械木材パルプに比較して繊維長が長くかつセルロース繊維の含有量が多いため、紙にしたときの強度が高く変色しにくいという特徴をもつ。木材パルプには、これらの他にも機械的なパルプ化工程と化学的なパルプ化工程との組み合わせで製造されるセミケミカルパルプ、ケミグランドパルプがある。さらに、これらの木材パルプは、脱色するために塩素漂白法、酸素漂白法、無塩素漂白法、完全無塩素漂白法等による公知の漂白処理が施されることがあり、漂白されたパルプは晒パルプと呼ばれる。漂白処理によってパルプ繊維は脱色されるが繊維は傷みやすく、一般的に晒パルプは未漂白パルプ(未晒パルプとも呼ばれる)に比べ繊維強度は低い。なお、非木材繊維においても、基本的に木材パルプと同様な機械的な破砕処理や化学的な蒸解処理等によってパルプが得られ、その処理方法は、植物の種類及び繊維含有部位等によって適宜選択される。本発明においては、前記の何れの木材パルプも、単独で又は必要に応じて混合して使用することができるが、セルロース繊維の強化材としての機能を効果的に発現させるため、また熱可塑性樹脂と混練する際の熱劣化や変色の防止のため、繊維長が長く不純物の少ない化学木材パルプが好ましく、中でも、環境、社会、経済の面から適切かつ計画的に管理された植林木チップを原料とするクラフトパルプ(KP)が好ましい。
本発明に使用できる混合抄紙は、前記セルロース系繊維のパルプと前記熱可塑性樹脂繊維のパルプを用いて、公知の製紙方法によって得ることができる。基本的な製紙工程は、木材等の植物から抽出したパルプを細かく砕いて水中に分散させるパルプ調成工程、これを竹や樹脂或いは金属製のスクリーンで抄き取り、繊維を薄く平らに絡み合せて濡れた薄い繊維層を形成させ、これを脱水・乾燥する抄紙工程からなる。製紙方法には、紙抄き操作を一枚ずつ手で行ういわゆる手抄き法と、紙抄き操作を機械で連続的に行う機械抄き法があり、何れの方法であってもよいが、生産性の観点から機械抄き法が好ましい。例えば、セルロース繊維を主体とする木材パルプ又は/及び非木材パルプを公知のパルプ化方法で製造した後リファイナー等で該パルプを離解・叩解処理し、これに前記の熱可塑性樹脂繊維をパルプ状にしたものを所定の割合で混ぜ合わせ、必要に応じて、サイズ剤、分散剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、填料等の薬品を添加後、除塵・脱気処理を施すとパルプスラリーが得られる。この調成工程を経たパルプスラリーを抄き上げ(ワイヤーパート)、脱水(プレスパート)、乾燥(ドライヤーパート)、平滑一様化(カレンダーパート)、巻取り(リールパート)の一連の抄紙工程を連続して行うことができる網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜短網式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機等の公知の抄紙機を用いて紙に形成することができる。
本発明においては、成形加工時の形状追随性の観点から、主たる基材は布、すなわち前記の織物及び/又は編物である。織物は一般に経糸及び緯糸が交絡して二次元的に密に組織が形成されているので、この積層成形体は機械的強度、弾性率、寸法安定性、耐熱性、成形性のバランスが良く、非常に優れた性能を有し、本発明においては最も好ましい基材である。編物は、その基本構造がループ構成のため多孔性であり、織物よりも伸縮性に富み弾力性があるのが一般的な特徴である。このような特徴を生かし、本発明にかかる編物は、製品成形時に深絞り成形のような比較的大きな変形が必要とされる部位や部材などに、或いは本発明にかかる成形体は織目や編目がそのまま成形体表面の外観に反映されるので、外観装飾など意匠性を付与したい場合に好ましく使用することができる。例えば、積層体の内部層は織物や不織布で、スキン層は装飾性のある編物で構成させてもよい。一方、前述の不織布や紙は不連続な短い繊維の集積体で構成されているので、これらの積層成形体は強靭性や耐熱性及び形状追随性の面で織物や編物の積層成形体よりも劣る。そのため、本発明の主たる基材としては扱い難いものの、不織布や紙は織物や編物よりもコスト面で有利なことから、目的とする製品の用途や経済性に応じて、これらを適宜組み合わせてセルロース系繊維強化複合成形体を成形してもよい。
通常、これらの基材はその製法から機械的特性に異方性がある場合が多く、例えば織物は経糸方向と緯糸方向、機械抄紙は抄き方向とそれと直交する方向では強度や伸びが違うのが一般的である。よって、かかる基材からなる積層複合材料を設計する上では、基材間の組み合わせ方ばかりでなく、異方性も考慮する必要がある。同じ基材を積層する場合でも、例えば、平織基材を緯糸方向(この方向をX軸方向とする)と経糸方向(この方向をY軸方向とする)が一致するように積層した積層複合材料と、これと同数の平織基材を経糸方向と緯糸方向とが直交するように交互に積層した積層複合材料とでは、両者のX軸方向とY軸方向の機械的特性に違いが現れる。前者はX軸方向とY軸方向の機械的特性に異方性が発現し、後者はX軸方向とY軸方向の機械的特性が等方的になる。このように、例えば各基材間のX軸どうしの角度を±0°、±45°、±60°、±90°等のように変えて積層することによって、或いはこれら角度を適宜組み合わせて積層することによって、積層成形体の機械的特性に多様性を付与することができる。すなわち、それだけ積層複合成形体の設計の自由度が高いことを意味する。
また、本発明においては、これらの基材を単に積層して成形するだけではなく、積層した基材全体をセルロース系繊維等の好ましくは成形温度では溶融しない素材からなる糸などを使って結束(ステッチング)して一体化した状態(交絡一体化)で成形してもよく、こうすることによって積層成形体の層間剥離破壊を防止できるばかりでなく、積層成形体の鉛直方向(厚み方向;Z軸方向)の線膨張率も低減することができる。こうした観点から、三次元の織物や編物(例えば、三次元中空編物)も本発明にかかる基材として好適に使用することができる。
さらには、三本以上の繊維束が長手方向に対して斜めに配向し、切断されることなく連結された組物であってもよい。具体的には、古くから日常生活において用いられてきた平打組物や丸打組物を挙げることができる。これらの組物はスピンドルの一次元的(1D)な移動機構と組物の一次元的(1D)な引き上げ機構の組み合わせにより形成されるが、これら二つの機構の組み合わせは、2D+1D、2D+2D、3D+1D、3D+2Dなどのように次元を拡張することが可能であり、作製できる組物の形状や構造をより複雑にすることができる。本発明の基材にはこのような高次構造組物を用いてもよい。
なお、本発明にかかる基材の目付は、特に制限されるものではなく、例えば10〜500g/m、特に50〜400g/mが好ましい。
本発明におけるセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体に占める強化材としてのセルロース系繊維の含有量は15〜85重量%であることが好ましい。すなわち、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維の混合重量比率、セルロース系繊維/熱可塑性樹脂繊維が15/85〜85/15の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは、セルロース系繊維の含有量が20〜80重量%、すなわち、セルロース系繊維/熱可塑性樹脂繊維が20/80〜80/20の範囲である。セルロース系繊維の含有量が15重量%未満であると、該セルロース系繊維によるセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体の機械的強度・弾性率の向上効果及び線膨張率の低減効果が十分ではなく、特に線膨張率の観点から、セルロース系繊維の含有量が15重量%未満になると3.0×10−5/Kを超えてしまうおそれがあり好ましくない。また、セルロース系繊維の含有量が85重量%を超えると、成形時に溶融した熱可塑性樹脂がセルロース繊維間に十分に行き渡らなくなり、結果として成形後にセルロース繊維間に樹脂の未含浸部が形成され、この成形体の機械的特性が損なわれてしまうおそれがある。
本発明のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体において、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂との親和性(濡れ性、接着性)向上を図るために、セルロース系繊維に従来公知の化合物による表面処理を施してもよい。例えば、リグニンスルホン酸カルシウム、リグニンスルホン酸マグネシウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、変性リグニンスルホン酸カルシウム等のリグニン酸塩類、ロジン又はその誘導体、オリーブ油、菜種油、コーン油、綿実油、リノール酸、オレイン酸等の食物油脂類又はそれらの誘導体、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ・アラルキル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、水素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシ、n−オクチルトリエトキシシラン等のアルキル・アルコキシシラン化合物、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等の官能基(ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフィド基、ウレイド基、アリル基等)を有したシランカップリング剤などを挙げることができる。これらの化合物は単独でも2種以上併用してもよく、熱可塑性樹脂の種類及び用途に応じて適宜選択すればよい。
これらの化合物による表面処理の方法に特に限定はなく、例えば、かかる化合物を水或いはアルコール等の適当な有機溶媒に分散させた溶液を調合し、これに基材を浸漬する方法又はこの調合溶液を基材に噴霧する方法などが挙げられる。この後、表面処理は自然乾燥又は熱乾燥を経て完了するが、前記シランカップリング剤においては、100〜150℃の温度での熱処理が施される。なお、これらの表面処理剤の配合量は特に限定されるものではないが、一般的には、セルロース系繊維100重量部に対し、0.01〜20重量部程度である。
また、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂との親和性を向上させる別の態様として、酸や酸無水物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等により変性された各種変性樹脂を熱可塑性樹脂繊維側に配合してもよい。すなわち、セルロースと親和性のあるカルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等の官能基を有し、かつ使用する熱可塑性樹脂と親和性の大なる部分を同一分子中に併せ有する重合体を配合することによって、熱可塑性樹脂とセルロース繊維との親和性向上を図ることができる。例えば使用する熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合、グリシジルメタクリレート変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィンを挙げることができる。これらの重合体の配合量は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂100重量部に対し、1〜50重量部の範囲である。このように官能基で変性された熱可塑性樹脂繊維は、予め変性重合体を配合混練した熱可塑性樹脂を紡糸することによって得ることができる。本発明においては、これらの化学修飾による変性方法以外にも、熱可塑性樹脂繊維への各種ガス環境下でのプラズマ照射、エキシマレーザー照射等による物理化学変性方法も利用することができる。
本来、撥水加工は布製品に撥水性を付与することが目的であるが、本発明においては、成形時のセルロース系繊維の熱変色、熱劣化、熱分解等の熱変質抑制に効果が見られることから、成形温度に応じて適宜撥水加工を施してもよい。撥水加工剤には、フッ素系、シリコーン系、ワックス系、パラフィン系等があるが、本発明においては、耐熱性のあるフッ素系及びシリコーン系の撥水加工剤を用いることが好ましく、さらに地球環境及び人体への安全性配慮の面からシリコーン系撥水加工剤がより好ましい。フッ素系撥水加工剤としては、例えばパーフルオロ基又はフルオロアルキル基を含有するするモノマーの重合物、あるいはこれらのモノマーと他のモノマーとの共重合物等(パーフルオロアルキル基含有アクリル共重合体等)が挙げられる。通常、フッ素系撥水加工剤には、撥水性の耐久性や耐摩耗性を向上させるために、無機酸塩や有機酸塩の触媒下、メラミン系化合物、エチレンイミン系化合物、アミノブラスト樹脂、多官能ブロックイソシアネート基含有ウレタン樹脂、エチレンカーボネートなどが併用される。また、シリコーン系撥水加工剤としては、前記の各種シリコーンオイル又はこれらのエマルジョンもしくは有機溶剤溶液が挙げられ、一般に加熱硬化反応を促進するために金属の有機酸塩が含有されている。さらに、耐洗濯性向上のために、ユリア系、メラミン系、エチレン尿素系、グリオサゾール系の樹脂などが併用される。
撥水加工方法は特に限定するものではないが、撥水加工剤を水中油滴型(O/W型)に乳化分散させたエマルジョンを用いるのが一般的で、このエマルジョンを公知の浸漬法、パディング法、コーティング法、印捺法、スプレー法等でセルロース系繊維又は基材に付与し乾燥させる方法がよい。さらに、これに熱処理(100〜200℃程度)を施すことによって被膜が硬化して、より優れた撥水性を付与することができる。撥水加工剤は、セルロース系繊維100重量部に対し、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。また、撥水加工方法の別の態様として、前記のシリコーンオイルを付与した基材に対し、公知の電子線或いは放射線照射処理を施すことによって、該シリコーンのセルロース繊維へのグラフト反応を励起させる方法があり、本発明においては、この方法も好ましく利用することができる。
本発明においては、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂との親和性及び成形時のセルロース系繊維の熱変質を抑制する別の態様として、該セルロース系繊維に対し、公知のリグノフェノール誘導体を表面被覆する方法を利用することができる。木材等のリグノセルロース系材料中にフェノール誘導体を反応させると、リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール誘導体でグラフト化されて、リグニンの基本骨格であるフェニルプロパン単位の専ら側鎖α位(ベンジル位)にフェノール誘導体がC−C結合で導入されたリグノフェノール誘導体が得られる。フェノール誘導体としては、フェノール、クレゾール等の1価フェノール誘導体、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の2価フェノール誘導体、フロログルシノール、ヒドロキシヒドロキノン、ピロガロール等の3価フェノール誘導体が挙げられる。このリグノフェノール誘導体を得るには各種の製造方法があり、さらにリグノフェノール誘導体をより利用しやすくするための各種の化学修飾処理や無機イオン吸着処理なども試みられている。本発明においては、リグニンにフェノール誘導体が付加された前記の骨格を有する化合物であれば、これらの処理の有無にかかわらず、特に限定なく使用することができる。
リグノフェノール誘導体による表面処理方法に特に限定はなく、例えば、かかるリグノフェノール誘導体のエマルジョン若しくは適当な有機溶媒との溶液を調合し、これに布地等の基材を浸漬する方法又はこれを基材に噴霧する方法などを挙げることができる。リグノフェノール誘導体のセルロース系繊維に対する被覆量は、特に制限するものではないが、セルロース系繊維100重量部に対し、1〜100重量部である。
また、本発明においては、このリグノフェノール誘導体と前記のシランカップリング剤(中でもエポキシ基含有のシランカップリング剤)とを併用することも好ましいセルロース系繊維の表面処理方法である。これらを併用することによってセルロース系繊維の表面に耐熱性に優れた被膜を形成させることができる。
さらに、本発明においては、セルロース系繊維の耐熱性や耐久性等の向上を図るために、該セルロース系繊維に対し、公知のタンニンを表面被覆する方法を利用することができる。タンニンは、柿の実、栗の渋皮、五倍子、タマリンドの種皮、タラ末、没食子又はミモザの皮等の植物体より水、エタノール、又は、有機溶剤で抽出して得られる多種のポリフェノールを成分とするものであり、一般に、加水分解型タンニンと縮合型タンニンの二つに分けられる。加水分解型タンニンは、酸又はアルカリ、及び/又は酵素により没食子酸とグルコースとに分解されるピロガロール系タンニンであり、その代表的なものとして五倍子や没食子などから抽出されるタンニン酸、チェストナットタンニン、タラの木タンニンなどが知られている。一方、縮合型タンニンは、フラバン骨格を有する化合物(カテキン、エピカテキン等)が炭素−炭素結合で縮合したオリゴマー又はポリマーであり、加水分解型タンニンとその一般的性状は類似するが、化学構造上は異種の化合物群であり、本発明においては縮合型タンニンを用いるのが好ましい。
縮合型タンニンとしては、具体的には、例えば、ケブラチョタンニン、ミモザ(ワットル)タンニン等の心材や樹皮に含まれる縮合型タンニン;バナナ、りんご、柿等の未熟果実に含まれる縮合型タンニン;キャブロ豆、ブドウ等の未熟なサヤや種子に含まれる縮合型タンニンが挙げられる。また、前記のタンニンをトリクロロ酢酸で処理して調製することができるトリクロロ酢酸処理タンニン;フェノール、カテコール、レゾルシノール、クレゾール等のフェノール化合物の存在下で前記のタンニンをトリクロロ酢酸で処理して調製することができるフェノール誘導体タンニン;前記タンニンを亜硫酸ナトリウム又は重亜硫酸ナトリウムで処理して調製することができるスルホン化タンニンなどであってもよい。
タンニンをセルロース系繊維に被覆させる方法は、特に限定するものではないが、水又は他の溶剤にタンニンを溶解し、この溶液に布地等の基材を浸漬する方法又はこれを基材に噴霧する方法などを挙げることができる。タンニンの濃度は、特に限定されるものではないが、タンニン溶液中0.01〜30重量%が好ましい。
さらに前記タンニンには、アルデヒド化合物、イソシアネート化合物、ポリアミン化合物及び糖類などの架橋剤を含むことができる。架橋剤を添加することによって、セルロース系繊維の剛性や耐熱性を高めるとともに、耐水性を向上させることができる。アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、カプリンアルデヒド、カプリルアルデヒドのような脂肪族アルデヒド類;ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、アニスアルデヒドのような芳香族アルデヒド類;グリオキサール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなジアルデヒド類;グリセルアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、3−フェニルプロピオンアルデヒド、アクロレイン、メタクリルアルデヒド等のような多重結合ないし置換基を有するアルデヒド類などが挙げられる。
イソシアネート化合物としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロペニルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート類;
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネート類などが挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。
糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類及びセルロースを除く多糖類などが挙げられる。単糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなどが挙げられる。二糖類としては、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースなどが挙げられる。オリゴ糖としては、例えば、ラフィノース、パノース、スタキオース、シクロデキストリンなどの前記単糖類が3〜10個程度結合した少糖類などが挙げられる。セルロースを除く多糖類としては、例えば、デンプン、グリコーゲン、キチン、ペクチン、ヒアルロナンなどが挙げられる。
これら架橋剤は、目的に応じて適宜選択することができ、単独で又は2種以上を併用してもよい。なお架橋剤の添加量は、特に限定されるものではないが、タンニン100重量部に対し、0.1〜150重量部の範囲が好ましい。
なお、上述の撥水加工、電子線・放射線処理、リグノフェノール誘導体又はリグノフェノール誘導体及びシランカップリング剤、タンニン又はタンニン及び架橋剤等によるセルロース系繊維の表面処理を施す場合には、糸の表面に施してある加工助剤(糊剤、油剤、均染剤等)などは予め洗浄除去(精練加工)しておく方が都合がよい。
本発明にかかるセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体は、自動車のフード、フェンダー、ドア等のパネル部品や長尺製品、端面拘束製品などの温度による寸法精度・安定性が要求される部品や製品に適用可能なように、該複合成形体表面において起点を任意とする任意の二つの面内方向における線膨張係数が30〜80℃において3.0×10−5/K以下であることを特徴としている。
本発明にかかるセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体の成形方法としては、加熱冷却機能を備え積層体を加圧できる成形方法であれば特に限定はなく、例えばプレス成形、積層成形、真空成形、圧空成形、ロール成形等を挙げることができる。これらは単独法でもよいが、2種以上の成形方法を組み合わせてもよく、その成形体の用途、生産性等に応じて、適宜選択することができる。連続生産する場合はロール成形が好ましく、多段構成を取ることにより所望の断面形状に成形することができる。例えば、本発明の連続する積層布をその構成要素の熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度又は溶融温度以上に加熱された多段ロールを通しながら脱気しつつシート状に成形し、これを冷却しながら賦型用多段ロールに通すことによって様々な断面形状を有する連続したストレート形状の成形品を得ることができる。さらに、ロール成形の後段でストレート形状の成形品を型に押し付けることによりR形状へ曲げることもできる(ベンディング成形)。
なお、成形温度は基本的に基材を構成する1種又は2種以上の少なくとも一つの熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度又は溶融温度以上、セルロース系繊維の熱分解が顕著になる温度(約300℃)未満の範囲であって、使用するセルロース系繊維及び熱可塑性樹脂繊維の種類、及びこれらの組み合わせによって適宜設定すればよい。但し、セルロース系繊維の中でも半合成繊維であるアセテート(特にジアセテート)は融点があり耐熱性が低いので、このようなセルロース系繊維を使用する場合は250℃以下が好ましく、使用する熱可塑性樹脂繊維はその少なくとも1種のガラス転移温度又は溶融温度が少なくとも250℃未満のものを選択する必要がある。また、セルロース系繊維は吸湿性がある素材のため、そのまま成形すると成形体内部に水蒸気によるボイドが形成されるおそれがある。そのため、成形前には基材の乾燥処理を施しておくのが好ましい。
本発明にかかるセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体のもう一つの特徴は、ある特定の熱的性質を示す状態では、たとえ、その熱可塑性樹脂の溶融温度未満の温度であっても、セルロース系繊維の切断や損傷なく成形加工が可能であるということである。すなわち、JIS K7191の規定に準拠した荷重たわみ温度測定において、その荷重たわみ温度曲線が温度−たわみ直交座標系の第一象限に少なくとも二つ以上の変曲点を有する本発明のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体であれば、その低温側から最初の変曲点(変曲点1)の温度以上、その次の変曲点(変曲点2)の温度以下の温度で成形加工することができる。ここで、変曲点とは、曲線が凹から凸又は凸から凹に変わる点を指すものである。具体的には、図1に示す(A)、(B)及び(C)の三つの基本的な荷重たわみ曲線を挙げることができる。実際の荷重たわみ温度測定においては、不測のブレやノイズが入ることがあり、必ずしも温度−たわみ曲線が滑らかにならない場合がある。そのような場合には、フィルタリング(ノイズ除去)や移動平均を取るなどして曲線を平滑化処理して変曲点を求めてもよい。なお、荷重たわみ温度測定は、フラットワイズでもエッジワイズであってもよく、荷重もJIS K7191の規定に準拠していれば低荷重であっても高荷重であってもよく、測定条件は適宜選択することができる。
本発明のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体にこのような熱的性質を付与させる方法は、特に限定されるわけではないが、例えば、該成形体を成形する際、急冷する方法を挙げることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリフェニレンサルファイド、シンジオタクチックポリスチレン等の結晶化速度が比較的緩慢な結晶性熱可塑性樹脂(繊維)に対しては効果的かつ簡便な方法であって、例えば、室温〜60℃程度の金型で成形することによって上記のような熱的性質を実現させることができる。また、例えば、ポリアミドのように結晶化速度は速いが吸湿性のある樹脂においては、調湿処理を行うことによって上記のような熱的性質を付与させることができる場合もあり、例えば、6ナイロンや6−6ナイロン等を挙げることができる。
このような特徴を最大限に活用できる成形加工の一つとして、エンボス加工を挙げることができる。すなわち、本発明にかかるセルロース系繊維熱可塑性樹脂複合成形体は、機械的特性、耐熱性、寸法安定性に優れ、織物や編物の組織模様を表面に形成できるため、これにエンボス加工を施すことによって、さらなる機能性や意匠性を付与することができる。特に本発明の成形体の基材となる織物や編物はその組織構造により適度な変形自由度があり、これが該成形体に優れたエンボス加工性を付与する。一般にエンボス加工とは、紙、布、プラスチックシート、金属板などの表面に凹凸の文字や模様などを付与することをいう。本発明においては、凹凸の形状に特に限定はなく、ハニカム形(六角形)、波形、菱形、矩形、円形、楕円形、台形、十字形、卍形、球形、錘形などの任意の幾何的形状や文字類、各種絵模様などを用い、或いはこれらを変形したり組み合わせたりしながら、その使用目的に応じて適宜形状設計すればよい。これらの凹凸の屈曲性や深さ、縦横長さ、ピッチ等に変化を与えることによって、より広範な凹凸の形状設計を展開することができる。
本発明のエンボス加工方法に特に限定はなく、例えば、本発明にかかる基材を積層してエンボス金型で直接熱溶融プレスする方法であってもよいが、好ましくは、本発明のセルロース系繊維熱可塑性樹脂複合成形体シート(一次成形加工シート)を用いる方法であって、より好ましくは、熱可塑性樹脂の溶融温度未満の温度で成形加工が可能な上述の荷重たわみ温度曲線を有する本発明のセルロース系繊維熱可塑性樹脂複合成形体シートを用いる方法である。この一次成形加工シートを用いる方法としては、慣用の方法、例えば凹板と凸版の間に成形板を挟んでプレスする方法や凹凸加工したロールの間に成形板を通して型押しする方法などを挙げることができる。また本発明にかかるセルロース系繊維熱可塑性樹脂複合成形体の板厚は特に限定することはないが、0.05〜5.0mm、好ましくは0.1〜4.0mm、より好ましくは0.3〜3.5mmである。エンボス加工の加工深さは、成形体の基材構成及び厚さ等によって変わってくるため特に限定できるものではないが、最大で10〜20mm程度である。本発明にかかるセルロース系繊維熱可塑性樹脂複合成形体は、セルロース系繊維と熱可塑性樹脂繊維の組み合わせや成形条件等を適宜選択することによって、従来のエンボス加工のほか、各種シボ模様加工、ハニカムエンボス加工、深絞りエンボス加工、穴開きエンボス加工等広範なエンボス加工に対応することができる。
本発明にかかるセルロース系繊維熱可塑性樹脂複合成形体にエンボス加工を施すと、凹凸による空間や起伏面を得ることができ、これによって生じる様々な効果が機能性や意匠性として功を奏することとなる。例えば、凹凸の屈曲を大きく深くすると、エンボス加工後の単位面積当たりの実面積(表面積)が増大し、他の媒体との接触量が増えることにより、吸熱・保温効果、放熱効果、凹凸の点接触による断熱効果などが期待できる。凹凸の屈曲面による光の乱反射等を利用し、凹凸の形状や屈曲角度等を工夫すれば、遮光や艶消しなどの効果を付与することができる。同様に、音についても、防音、遮音、吸音などの効果を付与することができる。また、気体や液体の吸収や吸着等にも利用することができる。さらに、金属製の糸、板、メッシュ等と組み合わせることにより、電磁波の反射、吸収材としても利用することができる。
また、成形シートにエンボス加工を施すと、厚み要素が加わることになり、この厚み要素と入り組んだ凹凸の屈曲面により、該シートへの曲げ・ねじり等に対する抵抗力が増大し、機械的剛性を向上させることができる。この機械的剛性の向上効果を活用することにより、成形シートの薄肉・軽量化を図ることができる。凹凸の屈曲面がバネの役割を果たすことから、凹凸の形状や深さ、ピッチ等を工夫することによって、より高い弾力性(クッション性)を付与することもできる。成形シートに例えば変形量の大きい深絞りエンボス加工を施すと、該成形シートが凹凸起伏状に折り曲げられるため、このシートの長さは加工進行方向においてエンボス加工前に比べ縮むことになる。すなわち、単位長さ当りの実長さが増加していることになり、これが該シートに伸びしろを持たせ、エンボス加工後の成形体に屈曲性や伸縮性を付与することもできる。さらには、凹凸のピッチや凸形状を調整することによって、他の物体との摩擦力を増減したり、フィルム等との貼り付き防止性や剥離特性を向上させたりすることもできる。
そのほか、本発明のセルロース系繊維熱可塑性樹脂複合成形体は、編物や織物の組織がそのまま表面に反映されることもあって、触感や立体感の向上、質感の向上、印刷等の付加技術との組み合わせによるアイキャッチ力の向上、高級感の付与など意匠性においても有用である。このように本発明にかかるセルロース系繊維熱可塑性樹脂複合成形体シートはエンボス加工を施すことにより広範な用途に展開することができる。
本発明のセルロース系繊維熱可塑性樹脂複合成形体においては、セルロース系繊維による補強だけでは用途に見合う十分な機械的特性が得られない場合やその他の機能を付与したい場合には、その特性を大きく損なわない範囲において、原材料となる基材を製造する時又はこれらを積層する時に、もしくは成形時に、従来公知のガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維等の無機繊維やアラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、フッ素繊維等の高耐熱有機繊維を混合たり、これらの繊維を素材とする布と本発明にかかる基材とを組み合わせて成形したりすることができる。また、発明にかかる基材と鋼線、ステンレス線、アルミニウム線、銅線、マグネシウム糸、金糸、銀糸等の金属線糸又はこれらを素材とする金網や布とを組み合わせてもよい。
以下、実施例及び比較例について説明するが、以下の実施例によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。実施例1〜15および比較例1、3で説明する、曲げ特性(曲げ強度および曲げ弾性率)、熱変形温度(荷重たわみ温度)、線膨張率は各々次の方法に従って測定した。
[曲げ特性の測定]
プレス成形した厚さ4mmのシートから幅10mm、長さ100mmの短冊試験片を切り出し、温度23℃、相対湿度50%の条件下でJIS K7171に従い曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
[熱変形温度の測定]
プレス成形した厚さ4mmのシートから幅10mm、長さ100mmの短冊試験片を切り出し、JIS K7191に従い1.80MPaの曲げ応力条件下でフラットワイズでの荷重たわみ温度を測定した。
[線膨張率]
プレス成形した厚さ4mmのシートから幅5mm、長さ10mmの角柱状試験片を切り出し、JIS K7197に従い30℃〜80℃における平均線膨張率を測定した。なお、試験片はX軸方向(成形シート短辺方向)、Y軸方向(成形シート長辺方向)それぞれ測定して両者の平均値とした。
市販のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)65%、コットン35%の混紡糸で織られたTCブロード生地(平織、厚さ190μm、目付け104g/m)から120mm×60mmの大きさに、(a)経糸方向が長辺となるように31枚、(b)緯糸方向が長辺となるように31枚、それぞれ裁断し(計62枚)、これらを105℃で5時間真空乾燥した後、厚さ4mm、内寸125mm×65mm、外寸165mm×105mmの金属型枠内に(a)と(b)を一枚ずつ交互に積層して200mm×165mm×2mmの金属板2枚で挟み、プレス機(東洋精機製ミニテストプレス、上下熱盤サイズ200mm×200mm)で金属板枠ごと270℃の設定温度で5分間熱プレスした。熱プレス後、この試料を挟んだ金属板枠を水冷式冷却プレス(上下盤サイズ:250mm×250mm、上下盤温度:20℃以下)に移し3分間プレスして4mm厚さの長方形シートを得た。得られたシートは外観(コットン繊維組織)がやや熱変色しているものの柔軟な布地から出来ているとは思えないほど剛性感の高いものであった。次に、この成形シートを用いて曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。
市販のTCポプリン生地(ポリエステル65%、コットン35%の混紡糸、平織、厚さ290μm、目付け159g/m)を用い、(a)を21枚、(b)を20枚の計41枚とした以外は、実施例1と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。
市販のTCウェザー生地(ポリエステル65%、コットン35%の混紡糸、平織、厚さ295μm、目付け167g/m)を用い、(a)を19枚、(b)を19枚の計38枚とした以外は、実施例1と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。
市販の無臭柿渋(柿彩;岩本亀太郎商店)100重量部に対し、トレハロース(トレハ;株式会社林原)5重量部を加えた柿渋液を作製し、これに精練加工を施した前記のTCウェザー生地を23℃で24時間の浸漬処理を施した。これを十分乾燥したのち、実施例3と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。なお、ここで得られた成形シートの表面外観色は濃厚な赤ワイン色であった。
市販のTCツイル生地(ポリエステル65%、コットン35%の混紡糸、綾織、厚さ320μm、目付け169g/m)を用い、(a)を19枚、(b)を18枚の計37枚とした以外は、実施例1と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。
実施例5の冷却プレス操作において、熱プレス後の試料を金属板枠ごと250mm×250mm×12mmの耐熱断熱板の間に挟んで10分間冷却プレスでプレスして4mm厚さの長方形シートを得た。次いで、この成形シートを用いて曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。なお、ここで得られた成形シートの表面外観は実施例5で得られた成形シートの表面外観よりも白濁していた。
市販のTCチノクロス生地(ポリエステル65%、コットン35%の混紡糸、綾織、厚さ390μm、目付け224g/m)を用い、(a)を14枚、(b)を14枚の計28枚とした以外は、実施例1と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。
市販のポリエステル40%、コットン60%の混紡糸からなる撥水加工生地(綾織、厚さ280μm、目付け171g/m)を用い、(a)を19枚、(b)を19枚の計38枚とした以外は、実施例1と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。ここで得られたシートの表面コットン繊維の外観は実施例1〜3及び実施例5〜7のそれに比べ熱変色の度合いが小さかった。
実施例8の冷却プレス操作を実施例6と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。なお、ここで得られた成形シートの表面外観はコットン繊維の熱変色が小さい上、実施例8で得られた成形シートの表面外観よりも白濁していた。
市販のポリエステル35%、コットン65%の混紡糸からなる生地(綾織、厚さ290μm、目付け211g/m)を用い、(a)を16枚、(b)を15枚の計31枚とした以外は、実施例1と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。表面コットン繊維の熱変色の度合いは実施例8よりも大きく、実施例1〜3及び実施例5〜7とほぼ同等であった。
実施例10の冷却プレス操作を実施例6と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。なお、ここで得られた成形シートの表面外観は実施例10で得られた成形シートの表面外観よりも白濁していた。
市販の6−6ナイロン35%、コットン65%からなる生地(平織、経糸:ナイロン、緯糸:コットン、厚さ185μm、目付け83g/m)を用い、(a)を37枚、(b)を37枚の計74枚とした以外は、実施例1と同様の条件で熱プレスを行い、冷却操作を実施例6と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。
市販の6ナイロン35%、バンブー65%からなる生地(平織、経糸:ナイロン、緯糸:バンブー、厚さ190μm、目付け70g/m)を用い、(a)を44枚、(b)を44枚の計88枚、熱プレス温度を240℃とした以外は実施例1と同様の条件で熱プレスを行い、冷却操作を実施例6と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。
〔比較例1〕
ポリエステル88%、コットン12%の混紡糸からなる生地(平織、厚さ190μm、目付け103g/m)を用い、(a)を36枚、(b)を35枚の計71枚とした以外は、実施例1と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。
〔比較例2〕
ポリエステル7%、コットン93%からなる生地(綾織、厚さ305μm、目付け196g/m)を用い、(a)を12枚、(b)を12枚の計24枚とした以外は、実施例1と同様の条件でプレス成形を行った。しかし、プレスしてもこの積層体は固化が不十分でシート状に成形することができなかった。
〔比較例3〕
(A)ポリエステル紡績糸からなる100%の生地(平織、厚さ170μm、目付け63g/m)及び(B)コットン紡績糸からなる100%の生地(綾織、厚さ320μm、目付け162g/m)を120mm×60mmの大きさにそれぞれ63枚((a)33枚、(b)30枚)、20枚((a)10枚、(b)10枚)裁断し、実施例1と同様の乾燥処理後、下から(A)の(a)3枚、(B)の(a)1枚、(A)の(b)3枚、(B)の(b)1枚の順に裁断生地を(A)3枚と(B)1枚が交互に配置するように計83枚積層して、実施例1と同様の条件で熱プレスを行い、冷却操作を実施例6と同様にして4mm厚さの長方形シートを作製し、曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。なお、ここで得られた成形シートのセルロース(コットン)繊維含量は約35%であった。
実施例10と同じポリエステル35%、コットン65%からなる生地と実施例13と同じ6ナイロン35%、バンブー65%からなる生地を120mm×60mmの大きさにそれぞれ23枚((a)12枚、(b)11枚)、22枚((a)11枚、(b)11枚)裁断し、実施例1と同様の乾燥処理後、下から6ナイロン35%、バンブー65%からなる生地を(a)と(b)一枚ずつ交互に11枚、ポリエステル35%、コットン65%からなる布生地を(a)と(b)一枚ずつ交互に23枚、6ナイロン35%、バンブー65%からなる生地を(a)と(b)一枚ずつ交互に11枚、計45枚積層して実施例1と同様の条件で熱プレスを行い実施例6と同様の条件で冷却プレスして4mm厚さの長方形シートを作製した。ここで、裁断生地の乾燥後の重量比は「ポリエステル35%、コットン65%からなる生地23枚」:「6ナイロン35%、バンブー65%からなる生地22枚」=77:23であった。次に、この成形シートを用いて曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。なお、この成形シートの切断面の光学顕微鏡観察から、当該シートはスキン部及びコア部の2相構造からなり、スキン部(6ナイロン及びバンブーからなる層群)の厚さが片側約0.5mm、コア部(ポリエステル及びコットンからなる層群)の厚さが約3.0mmであることが分かった。
実施例8と同じ(A)ポリエステル40%、コットン60%からなる生地と実施例13と同じ(B)6ナイロン35%、バンブー65%からなる生地を120mm×60mmの大きさにそれぞれ26枚((a)13枚、(b)13枚)、25枚((a)12枚、(b)13枚)裁断し、実施例1と同様の乾燥処理後、下から(A)の(a)、(B)の(a)、(A)の(b)、(B)の(b)の順に裁断生地を1枚ずつ(A)と(B)が交互に配置するように計51枚積層して(上下両面がポリエステル40%、コットン60%からなる生地となる)実施例1と同様の条件で熱プレスを行い実施例6と同様の条件で冷却プレスして4mm厚さの長方形シートを作製した。ここで、裁断生地の乾燥後の重量比は「ポリエステル40%、コットン60%からなる生地26枚」:「6ナイロン35%、バンブー65%からなる生地25枚」=73:27であった。この成形シートについても曲げ特性、熱変形温度および線膨張率を測定した。
実施例1〜15及び比較例1、3の曲げ特性、熱変形温度および線膨張率の測定結果を表1に示す。なお、何れの場合も、線膨張率にX軸方向とY軸方向の有意差は認められなかった。
Figure 2014095049
実施例1〜3及び実施例5〜11は市販のTC生地を所定の大きさ・厚さになるようにサイズを揃え枚数を調整し、かつX軸方向(緯糸方向)及びY軸方向(経糸方向)の機械的特性がほぼ均等になるように積み重ね、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート)の溶融温度以上の温度でプレス成形したものであるが、成形後は本来の柔軟な織物とは似ても似つかぬ極めて剛直なシートに激変している。これは、ポリエステル短繊維とコットン短繊維との混紡糸で織られた織物の柔軟な繊維構造形態が崩れ、ポリエステル樹脂がマトリックス、コットン繊維がそのまま撚糸の状態で強化材となった複合材料形態に変化しているからにほかならない。同様に、実施例12は6−6ナイロン樹脂がマトリックス、コットン撚糸が強化材となった複合材料、実施例13は6ナイロン樹脂がマトリックス、バンブー撚糸が強化材となった複合材料になっている。樹脂側が溶融してその形態を変えても、セルロース繊維からなるコットン撚糸やバンブー撚糸は溶融することも切断することもなく成形後も殆どその形態を維持した状態で冷却固定されるため、補強効果に優れるばかりでなく、熱変形温度の向上や線膨張率の低減にも優れた効果を発揮しているものと考えられる。
表1に示す結果から、セルロース繊維含有量の多い方がかかる複合成形体の弾性率の向上効果及び線膨張率の低減効果が高いことが分かる。ごく一般の衣料用の布地からこれだけの弾性率、強度、熱変形温度及び線膨張率を示すシートが得られたこと自体まさに驚愕に値するものである。また、実施例8及び9は撥水加工(シリコーン系)を施してある生地を使用したものであるが、他の非撥水加工生地を使用したものよりもセルロース繊維の熱変色の度合いが小さく、セルロース繊維の熱変質を抑制する効果のあることが分かる。さらに、実施例4は、実施例3と同じTC生地に柿渋タンニン及び糖類で表面処理を施して成形体としたものであるが、実施例3に比べ弾性率及び耐熱性が向上していることが分かる。
実施例の5と6、実施例の8と9、それに実施例の10と11は、それぞれ同一試料でプレス成形時の冷却条件のみを変えたもので、実施例の5、8、10は水冷プレスにより、実施例の6、9、11は断熱空冷プレスにより冷却したものである。表1に示すように、水冷プレスで冷却したものよりも断熱空冷プレスで冷却したものの方が弾性率及び熱変形温度が高い傾向にある。これは断熱空冷プレスで徐冷することにより、マトリックスであるポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶化度が高まったためである。このようにマトリックスとなる熱可塑性樹脂の熱的挙動を利用することでもかかる複合成形体の性能を制御することができる。
実施例12は6−6ナイロン35%をマトリックスとするコットン繊維含有率65%の複合成形体に相当するが、同じコットン繊維含有率を有するポリエステルをマトリックスとする複合成形体(実施例10及び11)に比べ、弾性率は低いものの、強度及び耐熱性が高いという特徴を示す。一方、実施例13は6ナイロン35%をマトリックスとするバンブー繊維含有率65%の複合成形体に相当するが、実施例12に比べ耐熱性は劣るものの、強度が高いという特徴を示す。このようにマトリックスとなる熱可塑性樹脂の種類や強化材となるセルロース系繊維の種類によっても複合成形体の性能を制御することができる。
比較例1及び2はセルロース系繊維の含有量が本発明の規定範囲(15〜85重量%)から逸脱した例で、比較例1はセルロース系繊維の含有量が規定量未満(12%)、比較例2はセルロース系繊維の含有量が規定量を超える(93%)場合に相当する。比較例1の場合、耐熱性は徐冷成形効果も手伝いある程度の高温となるものの、曲げ強度・弾性率の向上効果及び線膨張率の低減効果が十分ではなく、線膨張率は3.0×10−5/Kを超えてしまう。一方、比較例2では、生地全体に占めるポリエステル樹脂成分割合が十分ではなく、熱プレスしてもコットン撚糸を構成する単繊維全体にまで溶融樹脂が滲みわたらなくなるためシートが成形できない。
比較例3は、ポリエステル紡績糸単体(ポリエチレンテレフタレート)からなる生地とコットン紡績糸単体からなる生地とを交互に重ね合わせ熱プレス成形したものである。織組織及びセルロース含量、それに成形・冷却条件が同じである実施例6と比較し、曲げ強度及び弾性率、荷重たわみ温度、線膨張率のいずれも比較例3のほうが劣っていることがわかる。特に、比較例3の曲げ強度は極端に低い。当該成形シートの切断面を観察すると、コットン撚糸の内部や周囲にボイドが多数存在していることが確認できた。これは、ポリエステル繊維とコットン繊維とがそれぞれ独立した状態にある基材を使用すると、両基材を積層して熱プレスしても、溶融樹脂がコットン撚糸内部まで十分に含浸できず、その未含浸部が空隙となってしまいコットン繊維による補強作用が損なわれてしまうためである。
実施例14は実施例11の複合成形体をコア部に実施例13の複合成形体をスキン部に配置したハイブリッド型複合成形体に相当し、また実施例15は実施例9の複合成形体と実施例13の複合成形体とを交互に配置積層したハイブリット型複合成形体に相当するもので、それぞれ実施例13の複合成形体に相当する成分を25%前後組み合わせた例である。組み合わせ方は違っても、両者ともに実施例13の複合成形体が特徴とする性能が反映されていることが分かる。このように、異なる特徴を持つ複合成形体を組み合わせることによって、すなわち異種の織物を組み合わせ積層プレスすることによって、これらを成形してなる複合成形体の性能を制御することができる。
実施例3に使用したものと同じTCウェザー生地から160mm×160mmの大きさに3枚裁断し(実施例1記載の(a)2枚、(b)1枚)、120℃で3時間真空乾燥処理を施した。次に、200mm×165mm×2mmの金属板の中央部に底面直径50mm、開口部直径70mm、深さ18mm、厚さ0.5mmのフッ素コーティングした市販のステンレス製円形容器の開口部を上にして置き、この上に前記乾燥処理を施した裁断生地3枚を(a)/(b)/(a)の順に重ね合わせて被せ(容器が裁断生地の中央部になるように配置)、この上にもう一つの前記と同じステンレス製円形容器を裁断生地3枚挟んでその下にあるステンレス製円形容器と嵌合するように開口部を上にして置き、さらにその上に一番下に敷いた金属板と同じサイズの金属板もう1枚載せた。このように上下の金属板に試料及び容器を挟んだまま実施例1と同様にプレス成形をして、中央付近に凹型の円形容器状成形体を有する布シートを得た。この円形容器状成形体の部分はまさに前記ステンレス製円形容器が接触していた部分で、その円形容器の型通りに固化していた。一方、該ステンレス製円形容器に接触していなかった積層布部はほとんど布の状態のままであった。
この円形容器形に固化した成形体を切り抜いて観察してみたところ、その底面、側面及び底面と側面のコーナー部、どの表面部位を観てもコットン糸の切断個所や損傷個所はなく、その平織組織は本来の布地の如く整然となっていた。この円形容器形成形体の底面部の厚さは約350μmであったが、剛性感が高く、容器としての実用性は十分であった。
実施例16から分かるように、コットンの短繊維とポリエステルの短繊維との混紡糸からなる柔軟な積層布を金型で直接プレス成形することにより、平板や曲板ばかりでなくより複雑な形状の繊維強化複合材料成形体を成形することができる。しかも、市販の金属製容器で代用した簡易な金型であっても、これだけ実用的な成形体ができたことはまさに驚きである。
実施例8で用いたポリエステル40%、コットン60%からなる市販の生地から140mm×120mmの大きさに8枚裁断し(実施例1記載の(a)4枚、(b)4枚)、これらを120℃で3時間真空乾燥した後、厚さ1mm、内寸150mm×130mm、外寸170mm×150mmの金属型枠内に(a)と(b)交互に一枚ずつ計8枚積層して200mm×165mm×2mmの金属板2枚で挟み実施例1と同様にプレス成形して1mm厚さの長方形シートを得た。これを雄型、雌型それぞれ厚さ20mm、大きさ160mm×150mmの金型で、板厚0.8mm、最大深さが2.0mmの一辺6mmの正六角形を1mm間隔で配列する蜂の巣状(ハニカム)エンボスシートを成形する金型で挟み、実施例1使用のプレス機を用いて、設定温度100℃で5分間プレスした。プレス後、実施例1と同じ条件でプレス冷却して成形シートを作製した。得られた成形シートは金型のエンボス形状がそのまま賦形、転写された厚さ約1mm弱の蜂の巣状エンボスシートになっていた。エンボス成形前の平板でも剛性感は高かったが、エンボス加工を施したことによりそのシートの剛性感はより一層高くなった。また、かかるハニカムエンボスシートの外観はコットン糸の綾織組織模様が平板で見るよりも鮮鋭に映った。なお、エンボス加工シート表面のコットン糸の切断や損傷及び変形に伴う白化現象などは観られなかった。
〔比較例4〕
1mm厚さの長方形シートを成形する際、冷却操作を実施例6と同様にして行った以外は実施例17と同様にしてエンボス加工まで行った。得られたエンボス加工成形シートの表面には多数の亀裂損傷が見られた。
実施例13で用いた6ナイロン35%、バンブー65%からなる市販の生地から140mm×120mmの大きさに16枚裁断し(実施例1記載の(a)8枚、(b)8枚)、これらを110℃で6時間真空乾燥した後、厚さ0.8mm、内寸150mm×130mm、外寸170mm×150mmの金属型枠内に(a)と(b)交互に一枚ずつ計16枚積層して200mm×165mm×2mmの金属板2枚で挟み実施例13と同様にプレス成形して0.8mm厚さの長方形シートを得た。これを室内静置して約5重量%の水分率に調整した。一方で、実施例13で作製した4mm厚さシートの短冊試験片も同様にして約5重量%の水分率に調整し、その熱変形温度を測定した(フラットワイズ、荷重0.45MPa)。その荷重たわみ曲線の結果を図3に示す。この曲線から変曲点1及び2をそれぞれ求め(変曲点1及び2の温度はそれぞれ約70℃及び130℃であった)、これをもとに前記の調湿した長方形シートを用い、105℃の設定温度で実施例17と同様のエンボス加工を行った。得られた成形シートは金型のエンボス形状がそのまま賦形、転写された厚さ約0.8mmの蜂の巣状エンボスシートになっていた。また、このエンボス加工シート表面のバンブー糸は縦横整然と配置し糸の切断や損傷などは観られなかった。
実施例17は、TC布積層体をそのポリエステル繊維(T成分:ポリエチレンテレフタレート)の溶融温度以上の温度で熱プレスしたものを急冷(水冷式冷却)してコットン繊維強化ポリエステル樹脂の平板状シートとした後(一次成形加工品)、これをエンボス金型に挟んで該ポリエステル樹脂の溶融温度未満の温度であって、本発明に従う温度(荷重たわみ曲線の変曲点1〜変曲点2の温度範囲)でプレスして平板状シートにエンボス加工を施した例(二次成形加工品)である。同様に、実施例18は6ナイロンをマトリックスとした場合の例である。このように2段階に分けても、熱可塑性樹脂繊維の種類と成形条件を適宜選択すれば、所望とする製品を成形することが可能である。一次成形加工品がハンドリング性に優れ用途が多岐に渡りかつ大量生産可能であれば、直接成形するよりも安価に最終製品を製造できることがある。また、製品によっては、その製造プロセス上、一次成形加工品を利用した方が効率よく製造できるものもある。実施例17及び18はこのような場合にも十分適用可能であることを示唆するものである。
実施例17の平板状複合成形体シートが100℃でのプレス加工が可能なのは、そのマトリックスであるポリエチレンテレフタレートの熱的性質とコットン織物組織の柔軟性及び補強効果がバランスよく発現したことによる。ポリエチレンテレフタレートは結晶化速度が比較的遅く、急冷成形すると非晶質部が多くなり熱変形温度は60℃〜80℃程度に過ぎない。一般の短繊維強化タイプでも急冷成形では100℃〜120℃にしかならないことがある。しかし、実施例8に示すように、当該複合成形体の耐熱性は急冷成形をしても230℃にも達している。図2の(1)に実施例17における一次成形加工シート(エンボス加工前のシート)に相当する実施例8の荷重たわみ温度曲線を示した。この荷重たわみ温度曲線のプロファイルを見ると、およそ50℃〜120℃付近にかけてたわみ量が増す方向に変位しているが(この間に一つ変曲点が現れる)、コットン織物の強い補強作用によりこの温度域の変位が僅少(約0.05mm)に抑制され、その後120℃以上に昇温するとポリエチレンテレフタレートの非晶域の結晶化が進行していくため、たわみ変位は止み、結果として230℃という熱変形温度を発現している(この間にもう一つ変曲点が現れる)。図2の(1)における変曲点1及び2の温度は、それぞれ約70℃及び約150℃であった。
この僅少でもたわみ変位が発現する成形シートを前記70℃〜150℃付近の温度範囲でプレス加工のような強い変形力を作用させると、たとえ高耐熱性を有する複合材料シートでも強制的に変形を強いられることとなるが、ここでもうひとつの特徴である織物の柔軟性、形状追随性(賦形性)がその変形量にある程度の許容量を付与するため、実施例17に示すような良好なエンボス加工が可能となる。すなわち織物組織が破損しない範囲内の変形量であれば、70℃〜150℃付近の温度範囲でのプレス加工が可能となる。よって、二次成形加工において、より高変位量が想定される場合には織物よりも伸縮性に富む編物を用いてもよい。また、70℃〜150℃付近の温度範囲でエンボス加工を施したのち、これをアニール処理(実施例17の場合150〜160℃程度)することにより、このエンボス加工品の結晶化度を高め、より高剛性、高耐熱を付与することができる。
図2の(2)に比較例4における一次成形加工シート(エンボス加工前のシート)に相当する実施例9の荷重たわみ温度曲線を示した。この図に示すように、一次成形加工シートを実施例9のような徐冷成形で作製した場合には、マトリックスであるポリエチレンテレフタレートの結晶化度が高くなり硬質・高耐熱化するために、この複合成形体の50〜120℃付近の荷重たわみ変位が発現しなくなり(変曲点が発現しない)、よって、100℃の温度でエンボスプレス加工を行うと、この一次成形加工シートは形状が型に追随出来ずに破損を招くことになる。
実施例18は6ナイロンをマトリックスとするセルロース系熱可塑性樹脂複合成形体を調湿処理することによって、よりエンボス加工性の優れた状態にした例である。その荷重たわみ温度曲線(図3)が図1の(C)のパターンであることが分かる。
以上の実施例に示したように、本発明にかかるセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体は、使用目的に応じて、熱可塑性樹脂繊維の種類やその組み合わせ方、セルロース繊維布の種類及び含有量、成形条件などを適宜調整することによって様々な用途に展開することができる。例えば、前述のように条件次第で低温での成形も可能でかつ寸法安定性に優れることから自動車のフード、フェンダー、ドアパネル等の外板材料として利用可能で、しかも高耐熱であることから、これまで困難とされてきたオンライン塗装にも適用することができる。
本発明に従うセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体は、機械的特性、耐熱性、寸法安定性に優れるため、自動車部品、鉄道車両部品、航空部品、電気・電子部品、石油・ガス輸送パイプ被覆、機械部品、建築部材、光学機器部品、音響機器部品、農園芸用品、日用品などの広範な用途に利用することができる。また、当該複合成形体はエンボス加工性も良好なことから、断熱・保温材、放熱・吸熱材、防音・吸音材、防震・吸震材、電磁波遮蔽・吸収材、化粧板、内・外装材、インテリア用品などの機能性材料や意匠性材料にも利用することができる。さらに、本発明のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体は、廃棄問題において有益な材料であるばかりでなく、該複合成形体の構成素材である基材は繊維衣料産業、紙パルプ産業等で公知の機械設備を利用して経済的に有利に製造することができるため、その工業的価値は極めて大である。

Claims (7)

  1. 1種又は2種以上のセルロース系繊維及び1種又は2種以上の熱可塑性樹脂繊維を構成素材とする布を少なくとも一層又は二層以上積層して、前記熱可塑性樹脂繊維中の少なくとも1種の熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度又は溶融温度以上の温度で成形してなる複合成形体であって、該複合成形体表面において起点を任意とする任意の二つの面内方向における線膨張係数が、30〜80℃において3.0×10−5/K以下であることを特徴とするセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体。
  2. 前記セルロース系繊維の含有量が15〜85重量%であり、該セルロース系繊維が成形後にあっても切断損傷がなく繊維形態を維持していることを特徴とする請求項1に記載のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体。
  3. 前記セルロース系繊維に対してタンニンを表面被覆することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体。
  4. 前記1種又は2種以上のセルロース系繊維と1種又は2種以上の熱可塑性樹脂繊維との混紡糸を構成素材とする布であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体。
  5. 前記熱可塑性樹脂繊維が、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリスチレン系繊維から選ばれることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体。
  6. 前記複合成形体に対してエンボス加工が施されたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体。
  7. JIS K7191の規定に準拠した荷重たわみ温度測定において、荷重たわみ温度曲線が温度−たわみ直交座標系の第一象限に少なくとも二つ以上の変曲点を有する複合成形体であって、その低温側から最初の変曲点(変曲点1)の温度以上であって、その次の変曲点(変曲点2)の温度以下であるような温度範囲で成形加工されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のセルロース系繊維強化熱可塑性樹脂複合成形体。

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