JP7089793B2 - 理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法、理美容技術習得用疑似毛髪、及び理美容技術練習具 - Google Patents
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Description
特許文献1の理美容技術練習具は、人工毛の代わりとなる帯状部を指の間に挟んで引き出すときの捻れや水平方向の角度ずれの有無がわかり易いため、カットやワインディングのための正しい姿勢等を自分で判定することができる。そして、帯状部の捻れや角度ずれがなくなるような正しい姿勢やスタンス、手や鋏の位置等を容易に習得することができ、自分の癖や自分に欠けている技術を客観的に判定することができるため、正しいカットやワインディングの基本技術を短時間で習得することができる。また、帯状部を切り終えてしまっても、理美容技術練習具のみを新しいものと交換することにより、頭部模型を繰り返し使用することができるため、ランニングコストを抑えることができる。しかし、帯状部は幅広で厚さが薄く、人毛とは取扱いが異なる面もある。また、櫛を使って毛束を取り分ける作業を行うこともできないため、人毛に近い人工毛を用いてカットやワインディングを練習することが必要となる。そこで、帯状部の代りに、複数の化学繊維製の人工毛を並べて帯状に形成した理美容技術練習具を使用することが考えられるが、大量の人工毛が必要となり、しかも人工毛が極めて細いため、等間隔で配置するには手間がかかり、著しく量産性に欠ける。
一方、例えば特許文献2には、性状が異なる少なくとも二種類の絹糸を撚り合わせて構成した人工毛髪用絹繊維が開示されている。この人工毛髪用絹繊維は、従来の化学繊維製の人工毛よりも太く、取扱い及び加工が容易である。また、所望のカール及びクリンプを容易に発現させることができ、自然な光沢が得られ、軽量で、吸湿性及び柔軟性にも優れるものと思われる。
ここで、獣毛としては、羊毛(ウール)、モヘア、アルパカ(ワカイヤ、スリ)、ビキューナ、ラマ、カシミヤ、アンゴラ、及びキャメル(ラクダ毛)等が挙げられるが、入手し易い羊毛が好適に用いられる。また、毛糸に含まれる獣毛の割合は55~100%、より好ましくは60~100%、さらに好ましくは70~100%であり、獣毛と混紡する化学繊維としては、アクリル、ポリアミド、又はポリエステル等が好適に用いられる。一般的な毛糸は伸縮性を有しており、コーム(櫛)等で引き出した際に伸び、鋏でカットした後に縮むが、毛束を引き出す際にそれぞれの毛糸に加わる力は均一ではなく、それぞれの毛糸の伸び及び縮みは不均一であるため、切り口が不揃いになる。よって、疑似毛髪の性状を人毛に近付け、伸縮を防止するために、毛糸に伸縮防止処理(伸縮防止加工)を施す必要がある。なお、毛糸の太さは細い方が好ましく、例えば、1kg当たりの長さが20~30km程度、より好ましくは20~25km程度のものが好適に用いられる。
ここで、伸縮防止処理液には、伸縮防止剤としてタンニン等の植物由来成分、又はポリウレタン等の合成樹脂等を含むことができ、これらの水溶液が好適に用いられる。
ここで、縮合型タンニンとしては、例えば渋柿に含まれるカキタンニン(エピカテキン、カテキンガレート、エピガロカテキン、ガロカテキンガレート等のカテキン類(タンニンの一種)を含む)等の高分子タンニンが好適に用いられる。また、加水分解型タンニンとしては、例えばテリマグランジン等のカテキン類(低分子タンニン)を含むユーカリ葉エキス(カテキン類の他に精油等を含む)が好適に用いられるが、ユーカリ葉エキスに含まれるタンニン成分(分子量500程度の低分子タンニン)のみを抽出したものが効果的である。縮合型タンニン(高分子タンニン)は、主に毛糸の表面を樹脂化(コーティング)する役目を果たす(以上、第2の発明において同じ。)。
以下、図1~図4を参照して、本発明の一実施の形態に係る理美容技術習得用疑似毛髪(「以下、単に疑似毛髪と記載」)の製造方法、理美容技術習得用疑似毛髪10(「以下、単に疑似毛髪10と記載」)、及び疑似毛髪10を用いた理美容技術練習具11について説明する。
本発明の一実施の形態に係る疑似毛髪の製造方法は、カットやワインディング等に対して人毛に近い性状を有する疑似毛髪10を安価に製造するためのものである。そして、この製造方法で製造された疑似毛髪10は、カットやワインディング等の理美容技術の習得に好適に用いることができる。また、この疑似毛髪10を用いた理美容技術練習具11は、頭部模型12に着脱可能に取付けて使用することにより、カットやワインディング等の正確な技術を短時間で効率的に習得できるものである。
ここで、毛糸13に含まれる獣毛の割合は55~100%、より好ましくは60~100%、さらに好ましくは70~100%であり、必ずしも化学繊維を含んでいる必要はなく、獣毛を100%としてもよい。また、化学繊維としては、アクリル、ポリアミド、又はポリエステル等を1又は2以上組合せて用いることができ、その組合せ及び配合比は適宜、選択することができる。
また、タンニン水溶液に対する植物油又は動物油の配合量もタンニンの種類及びタンニン水溶液の濃度に応じて、適宜、選択することができる。伸縮防止処理液に適度の油分を含むことにより、疑似毛髪10にしなやかさと保湿性を与え、櫛通りを滑らかにして、カットやワインディング等を行う際に、疑似毛髪10を人毛のように取り扱うことができる。植物油としては、例えばオリーブ油、大豆油、胡麻油、又は菜種油等が好適であるが、これらに限定されるものではなく、適宜、選択することができる。動物油としては、馬の油が好適であるが、牛、豚、若しくは鶏等の油又は魚の油を用いてもよい。
界面活性剤は植物油等の油分を乳化させるために添加するので、伸縮防止処理液に含まれる植物油等の油分の種類及び配合量に応じて、その種類及び配合量を適宜、選択することができる。
よって、水400容量部に対し、伸縮防止剤として縮合型タンニンの一種であるカキタンニン100容量部を加えたタンニン水溶液に、植物油4容量部と界面活性剤4容量部を添加して乳化させることにより、疑似毛髪10の製造に好適な伸縮防止処理液を得ることができる。
また、例えば、タンニン水溶液が、伸縮防止剤として縮合型タンニン及び加水分解型タンニンを含む場合、縮合型タンニンとしてカキタンニンを用い、加水分解型タンニンとしてユーカリ葉エキスを用いるのであれば、水1000容量部に対するカキタンニン及びユーカリ葉エキスの配合量はそれぞれ400~600容量部程度である。このタンニン水溶液に対し、油分(例えば植物油)の配合量は1~10容量部、より好ましくは2~5容量部程度であり、界面活性剤の配合量は4~12容量部、より好ましくは8~10容量部程度である。
また、伸縮防止剤としてタンニン以外の植物由来成分(植物系水溶性樹脂)又はポリウレタン等の水溶性樹脂(水性塗料)を用いてもよいし、これらの代りに、塩化第一錫、ホルマリン、又はグルタルアルデヒド等を用いてもよい。例えば、伸縮防止剤としてポリウレタンを用いる場合、濃度4%のポリウレタン水溶液400容量部に対し、植物油2容量部と界面活性剤5容量部を添加することが好ましいが、これらの配合量は、上記の値に限定されることなく、適宜、選択することができる。
なお、毛糸13は束の状態で、伸縮防止処理液に浸漬してもよいし、リール等に巻き付けた毛糸13の一端を引き出しながら、伸縮防止処理液の中を通過させてもよい。また、処理液付着工程では、毛糸13の外表面全体に伸縮防止処理液を付着させることができればよく、毛糸13を伸縮防止処理液に浸漬する代りに、毛糸13の外表面に伸縮防止処理液を塗布若しくは噴霧してもよい。具体的には、例えば、刷毛を用いて塗布することや、スプレーを用いて噴霧することができる。
自然乾燥の場合、毛糸13を緊張状態で4~7日間放置しなければならないが、上記のように加熱することにより、1日程度で完全乾燥することができる。伸縮防止処理液が乾燥し、毛糸13の外表面が伸縮防止処理層でコーティングされることにより、人毛と同様に伸び縮みしない疑似毛髪10が得られる。疑似毛髪10の直径は、取扱いの面から0.8mm~1.5mm程度が好ましいが、これに限定されるものではなく、毛糸の材質等により、さらに細くすることもできる。
これに対し、図3に示すように、頭部模型12の表面には、装着部18の嵌合部25が着脱可能に取付けられる複数の突起状の被装着部28が設けられている。この被装着部28は、図4に示すように、頭部模型12の表面に当接して固定される座部29と、座部29の上面に突出して形成された円柱状の軸部30と、軸部30の先端に形成された球状の被嵌合部31を有している。なお、被装着部は、予め頭部模型の所定の位置に固定されたものに限らず、頭部模型の所望の位置に針を突き刺すようにして、適宜、取付け位置を変更(選択)できるようにしたものでもよい。ここで、基板部の材質は、合成樹脂でもよいし、紙又は布でもよい。紙又は布を基板部として使用する場合、基板部を二つ折りにして疑似毛髪の端部を挟んで接着するだけで簡単に固定することができる。さらに、表面に溝又は凹凸を形成した厚紙や、表面に波型の凹凸面を有する手芸用のクラフトバンド(パルプ(再生紙)で製造した断面円形のこより(紐体)を並べて接着し帯状に形成したもの)等を用いた場合、対向する表面の凹部に疑似毛髪を挟み込むことにより、疑似毛髪が基板部から外れ難く、取り扱い性及び耐久性にも優れる。特に、二つ折りにした基板部の内側表面に予め粘着層が形成されたものは、生産性に優れるが、別途、両面テープ又は接着剤等を使用して疑似毛髪を固定してもよい。また、基板部を紙製とした場合は、環境保護性にも優れる。
なお、装着部の形状及び構造は、本実施の形態に限られるものではなく、適宜、選択することができる。例えば、摺動部やガイド部等を省略して、基板部と嵌合部を一体に形成することもできる。また、理美容技術練習具は、頭部模型に着脱(装着)することができればよく、装着部と被装着部との組合せは、適宜、選択することができる。例えば、装着部側に球状の嵌合部を設け、被装着部側に球状の嵌合凹部を有する被嵌合部を設けてもよい。
理美容技術練習具11を用いてカットの練習を行った後は、疑似毛髪10が短くなって使えなくなった理美容技術練習具11のみを新しい理美容技術練習具11に交換することにより、頭部模型12を使い続けることができる。
Claims (10)
- カット及びワインディングの理美容技術の習得に用いられる理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法であって、
獣毛を主成分とする毛糸に対して、カット時及びワインディング時の伸縮を防止するための伸縮防止処理を行うことを特徴とする理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法。 - 請求項1記載の理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法において、前記伸縮防止処理は、前記毛糸の外表面に伸縮防止処理液を塗布若しくは噴霧し、又は前記毛糸を伸縮防止処理液に浸漬して、前記毛糸の外表面に前記伸縮防止処理液を付着させる処理液付着工程と、該処理液付着工程により外表面に前記伸縮防止処理液を付着させた前記毛糸を緊張状態で保持し、前記伸縮防止処理液を乾燥させる処理液乾燥工程とを有することを特徴とする理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法。
- 請求項2記載の理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法において、前記伸縮防止処理液は、タンニン水溶液と、植物油又は動物油と、界面活性剤とを含むことを特徴とする理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法。
- 請求項3記載の理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法において、前記伸縮防止処理液は、水400容量部に85~120容量部のカキタンニンを配合した前記タンニン水溶液に対し、2~10容量部の油分と、1~10容量部の前記界面活性剤とを配合したものであることを特徴とする理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法。
- 請求項3記載の理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法において、前記伸縮防止処理液は、水1000容量部にそれぞれ400~600容量部のカキタンニン及びユーカリ葉エキスを配合した前記タンニン水溶液に対し、1~10容量部の油分と、4~12容量部の前記界面活性剤とを配合したものであることを特徴とする理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法。
- 請求項1~5のいずれか1記載の理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法において、前記獣毛は、羊毛であることを特徴とする理美容技術習得用疑似毛髪の製造方法。
- カット及びワインディングの理美容技術の習得に用いられる理美容技術習得用疑似毛髪であって、
獣毛を主成分とする毛糸と、該毛糸の外表面をコーティングしてカット時及びワインディング時の伸縮を防止する伸縮防止処理層とを有することを特徴とする理美容技術習得用疑似毛髪。 - 請求項7記載の理美容技術習得用疑似毛髪において、前記伸縮防止処理層は、タンニンと、植物油又は動物油と、界面活性剤とを含むこと特徴とする理美容技術習得用疑似毛髪。
- 請求項7又は8記載の理美容技術習得用疑似毛髪において、前記獣毛は羊毛であることを特徴とする理美容技術習得用疑似毛髪。
- 頭部模型に装着されて理美容技術の習得に用いられる理美容技術練習具において、
前記頭部模型に設けられた被装着部に着脱可能に取付けられる装着部を有し、並列に配置された請求項7~9のいずれか1記載の複数の理美容技術習得用疑似毛髪の長手方向の一側が前記装着部に保持されていることを特徴とする理美容技術練習具。
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