JP6184545B1 - 化粧筆、化粧筆の製造方法および化粧筆による化粧方法 - Google Patents

化粧筆、化粧筆の製造方法および化粧筆による化粧方法 Download PDF

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Abstract

【課題】獣毛を用いずに化粧料の塗布性に優れた化粧筆を提供する。【解決手段】先端部11と末端部15とを有する樹脂繊維10を複数本含むブラシ部20と、ブラシ部20を固定する支持部30とを備えた化粧筆100である。樹脂繊維10の先端部11はテーパー形状になっている。樹脂繊維10は、樹脂材料12とフィブロイン(フィブロインパウダー)とから構成されている。そして、樹脂繊維10の表面10aは、キューティクル類似表面形状(17)を有している。【選択図】図1

Description

本発明は、化粧筆、化粧筆の製造方法および化粧筆による化粧方法に関し、特に、獣毛を用いずに化粧料の塗布性に優れた化粧筆に関する。
化粧を行う際に、化粧料(ファンデーションなど)を塗布するために、チークブラシ、フェイスブラシ、パウダーブラシなどの化粧筆(化粧ブラシ)が広く用いられている(例えば、特許文献1)。化粧筆は、獣毛が使用されていたが、近年の動物愛護精神の観点から、獣毛を用いない化粧筆も開発されている(例えば、特許文献2、特許文献3)。
特許文献1には、獣毛と合成繊維毛とを均一状態で混合した混合化粧ブラシが開示されている。この混合化粧ブラシでは、天然毛である獣毛と、合成繊維毛との混合ブラシであり、獣毛は、全体的にやわらかくキューティクルがあって粉含みが良く、化粧料を肌にのせる効果に優れる特徴を有しており、そして、合成繊維毛は、獣毛同士のくっつきを抑える特徴を有している。当該混合化粧ブラシにおいては、合成繊維毛の穂丈寸法を、獣毛の穂丈寸法よりも長くして、ブラシの穂先に穂丈寸法差の段差を設けている。
特許文献2には、肌に対する刺激を低減する目的で、先端方向にテーパー状の先端部を有するポリエステル繊維からなるブラシが開示されている。特許文献2のブラシにおいては、ポリエステル繊維に対してブラスト処理を行うことによって先端部の繊維表面に0.1〜1.0μmの凹部を形成することで、塗布性の向上を図っている。また、特許文献3には、酸化チタンを含有する合成樹脂製のモノフィラメントからなるブラシが開示されている。このブラシでは、モノフィラメントの先端部分をアルカリ溶液で溶解することでテーパー形状が形成されているが、酸化チタンが溶解しないことによって先端部分に凹部が形成される。
特開2011−72495号公報 特開2008−136712号公報 特開2010−126819号公報
特許文献1に開示されたブラシは、獣毛と合成繊維毛との特徴をいかしているが、次のような問題点がある。まず、獣毛を用いているので、合成繊維毛を混ぜているとはいえ、動物愛護精神からみて好ましくない。次に、天然の獣毛繊維であるので、アレルギーの問題、衛生面の問題がある。さらには、1本1本の太さ・長さ・硬さ(柔らかさ)にバラツキがあり、合成繊維毛と比較して、同じ性能のブラシを製造するのが困難である。加えて、天然の獣毛繊維を取り扱うための習熟度が求められるために、自動化・量産化に不向きであり、製造コスト、製品コストの低下が難しい。
特許文献2および特許文献3に開示されたブラシでは、テーパー形状の先端部に凹凸が形成されているものの、獣毛に匹敵するような優れた塗布性(パウダーの付着量)にまでは至っていない。すなわち、先端部に凹凸が形成されていない合成繊維ブラシの場合、表面が滑るために化粧料の塗布性は悪く、それに比較すると、先端部に凹凸が形成された合成繊維ブラシの場合、塗布性は良好である。しかしながら、天然の獣毛からなるブラシの塗布性が理想的なものとすると、そこにまでは至っていない。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、獣毛を用いずに化粧料の塗布性に優れた化粧筆を提供することにある。
本発明に係る化粧筆は、先端部と末端部とを有する樹脂繊維を複数本含むブラシ部と、前記ブラシ部を固定する支持部とを備え、前記樹脂繊維の先端部はテーパー形状になっており、前記樹脂繊維は、樹脂材料とフィブロインとから構成されている。
ある好適な実施形態において、前記樹脂繊維の表面は、キューティクル類似表面形状を有しており、前記フィブロインは、フィブロインパウダーの形態で前記樹脂材料に配合されている。
ある好適な実施形態において、前記フィブロインパウダーの配合割合(質量%)は1%以下である。
ある好適な実施形態において、前記ブラシ部における全ての前記樹脂繊維が前記フィブロインを含んでいる。
ある好適な実施形態において、前記樹脂材料は、ポリブチレンテレフタレートであり、前記フィブロインは、前記樹脂繊維の少なくとも表面に露出している。
ある好適な実施形態において、前記化粧筆は、アイシャドウブラシ、アイブロウブラシ、アイライナーブラシ、マスカラブラシ、チークブラシ、フェイスブラシおよびパウダーブラシからなる群から選択される一つである。
本発明に係る化粧筆の製造方法は、樹脂材料にフィブロインを混合する工程と、前記樹脂材料と前記フィブロインの混合物から繊維材料を形成する工程と、前記繊維材料を切断する工程と、前記繊維材料の一端を溶解させることによってテーパー形状を形成する工程とを含む。
ある好適な実施形態では、さらに、前記テーパー形状を有する繊維材料を整列させる工程と、前記整列させた前記繊維材料を一纏めに固定する工程とを含む。
ある好適な実施形態では、前記混合する工程において、前記フィブロインパウダーの配合割合(質量%)は1%以下であり、前記フィブロインは、フィブロインパウダーの形態で、前記樹脂材料に分散される。
本発明に係る化粧方法は、化粧筆を用いて化粧料を皮膚に付与する化粧方法であり、上記化粧筆を用意する工程と、前記化粧筆の前記ブラシ部における前記樹脂繊維の先端部を化粧料に接触させる工程と、前記化粧料が付着した前記先端部を、皮膚に接触させる工程とを含む。
本発明に係る化粧筆用の人工毛は、先端部と末端部とを有する樹脂繊維を備え、前記樹脂繊維の先端部はテーパー形状になっており、前記樹脂繊維は、樹脂材料とフィブロインとから構成されている。
ある好適な実施形態において、前記樹脂繊維の表面は、キューティクル類似表面形状を有しており、前記フィブロインは、フィブロインパウダーとして前記樹脂材料に分散されており、前記フィブロインパウダーの配合割合(質量%)は1%以下である。
本発明に係る化粧筆によれば、ブラシ部に含まれる樹脂繊維が樹脂材料とフィブロインとから構成されているので、当該樹脂繊維の表面にキューティクル類似表面形状ができる。その結果、獣毛を用いていない化粧筆であっても、化粧料(例えば、パウダー状化粧品)の肌への塗布性が優れた化粧筆を実現することができる。また、樹脂材料にフィブロインが配合された樹脂繊維を用いていることによって、樹脂製の人工毛でありながら、静電気を軽減することができるので、肌への不快感を低減することができる。
本発明の実施形態に係る化粧筆100の構成を模式的に示す図である。 本発明の実施形態に係る樹脂繊維10の構成を模式的に示す図である。 樹脂繊維10の表面10aの様子を模式的に示す拡大図である。 樹脂繊維10の表面10aを撮影した顕微鏡写真(図面代用写真)である。 化粧筆100を用いた化粧の様子を示す図である。 獣毛、化繊、凹凸がある化繊、絹からなる化粧筆、および、本実施形態の化粧筆との対比テーブルである。 本発明の実施形態に係る化粧筆100の製造方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の実施形態に係る化粧筆100Aから100Fの構成を示す図である。 本発明の実施形態に係る化粧筆100G(マスカラブラシ)の構成を示す図である。
本願発明者は、獣毛(例えば、リス、イタチなど)からなる化粧筆に匹敵するものを、合成繊維毛で達成できないかということを検討した。まず、獣毛を用いた化粧筆の場合、化粧料(パウダー化粧品、ファンデーションなど)の毛への付着がよく、また肌への塗布も良好である。一方、合成繊維毛を用いた化粧筆の場合、合成繊維毛の表面がツルツルであるので、化粧料の付着は悪く、それゆえに、また肌への塗布は良くない。凹凸を形成した合成繊維毛を用いた化粧筆(特許文献2、3参照)の場合、化粧料の付着の悪さは改善されるが、獣毛の良さに迫るものではない。
加えて、合成繊維毛を用いた化粧筆(凹凸が形成されている合成繊維毛の化粧筆も含む)は、樹脂材料から構成されており、すなわち、絶縁材料(誘電体材料)から構成されているので、静電気を持つという問題がある。この静電気を持った合成繊維毛は、肌への不快感へとつながる。人間の皮膚の感覚(そして、主観で感じる感情)は、機械的な測定値(静電気の計測値)よりも大きく反映されるので、静電気を持ちにくい獣毛が肌に接触した肌触り感の違い(良い、悪い)は顕著になる。
一方で、いくら獣毛の化粧筆が優れているといっても、それを理由にむやみに動物を殺害してよいのかという問題がある。近年、動物愛護の精神の高まりとともに、そのような動物殺害がしにくくなるとともに、獣毛を用いた商品の魅力も低下しつつある。また、獣毛は、下処理が不十分であると衛生面の問題があり、そして、使用する人によっては獣毛へのアレルギーの問題もある。加えて、獣毛であるがゆえに、(合成繊維毛と異なり)一本一本は均一の毛ではなく、バラツキのある毛をあわせて、一つの化粧筆にするには職人(熟練工)の技が必要となり、それも、品揃え、製造コスト、製品コストの問題につながっている。
本願発明者は、獣毛を用いずに、合成繊維毛を用いた化粧筆で、獣毛の化粧筆に匹敵するものを開発しようと鋭意検討した。まず、獣毛の良好の塗布性の要因は、獣毛の表面に存在するキューティクル(または、キューティクル模様)によるものと考えた。すなわち、獣毛のキューティクルがきれいに化粧料(パウダー)を付着し、そして、肌に塗ることができる要因であると考えた。しかしながら、凹凸を付けた合成繊維毛は、表面積は拡大しているが、キューティクル形状(または、キューティクルに類似した表面形状)をしているわけではない。したがって、化粧料の付着性および肌へ塗布性の改善はできるものの、獣毛に匹敵するまでにはいかなかったものと推考した。
また、合成繊維毛の化粧筆には静電気が発生し、一方、獣毛の化粧筆には静電気が発生しにくいのは、合成繊維毛の水分量と獣毛の水分量が違うからではないかと推測した。実際に、合成繊維毛を構成する樹脂には水は入っていないのと、当該樹脂は吸水性がないので水分量は低く、一方、天然繊維である獣毛は、合成繊維毛と比較すると、水分を含んでいる。
以上の観点から、本願発明者は、合成繊維毛であっても、合成繊維毛の表面に、キューティクルに類似した表面形状(キューティクル類似表面形状)を形成させ、合成繊維毛が含む水分量(含水率)を上げることで静電気を抑制できれば、合成繊維毛の化粧筆であっても、獣毛の化粧筆に匹敵する特性を出せるのではないかと考えた。そのような中、本願発明者が選択した成分を樹脂材料に配合して合成繊維毛を作製していたところ、タンパク質の一種であるフィブロインを樹脂材料に配合したら、キューティクル類似表面形状が合成繊維毛の表面に形成され、成分が含まれていないときの水分量よりも、当該合成繊維毛の水分量が増加して静電気が抑制できることが見出された。また、このフィブロインが配合された合成繊維毛を用いた化粧筆を作製したところ、化粧料(ファンデーション)の肌への転移具合が、獣毛の化粧筆と同様に理想的であることがわかり、その結果として、本発明に至った。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面において
は、説明の簡潔化のために、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示
す。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必
要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
本発明は、本明細書及び図面によって開示されている内容と当該分野における技術常識と
に基づいて実施することができる。加えて、本発明は、以下の実施形態に限定されるもの
ではない。
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る化粧筆100について説明する。図1は、本実施形態の化粧筆100の構成を模式的に示す図である。図2は、化粧筆100を構成する樹脂繊維(合成繊維毛、化繊毛)10の構成を模式的に示す図である。
本実施形態の化粧筆100は、複数本の樹脂繊維10を含むブラシ部20と、ブラシ部20を固定する支持部30とから構成されている。複数本の樹脂繊維10は、一つに束ねられてブラシ部20を構成している。ブラシ部20は、支持部30によって支持されおり、図示した支持部30は、ブラシ部20を接続部32に接続され、接続部32は軸部(持ち手)35に接続されている。本実施形態の接続部32は、口金(金具)であり、接続部32の前方では、プレス部33にて、ブラシ部20を圧縮固定している。また、接続部32の後方では、カシメ部34によって、軸部35をかしめて固定している。なお、接続部32の固定は、プレスおよび/またはカシメに限定されるものでなく、接着、バンド締めなどの種々の固定手段を採用してよい。加えて、軸部35と接続部32とを一体にした構成で、支持部30を構築してもよい。
ブラシ部20を構成する樹脂繊維10は、図2に示すように、先端部11と末端部15とを有する繊維部材(合成繊維毛)である。樹脂繊維10の先端部11はテーパー形状になっている。先端部11のトップ(先端)11aが尖っており、先端部11は円錐形状(または、略円錐形状)になっている。樹脂繊維10の先端部11が、化粧筆100のブラシ部20の先端側にくるように配置される。先端部11がテーパー状になっていることで、毛が柔らかくしなやかになり、その結果、肌に対する刺激を低減させることができる。樹脂繊維10の末端部15(または端面15a)の径(ここでは、直径)は、先端部11の径(直径)よりも太い。言い換えると、先端部11の径(直径)は、末端部15の径よりも小さくなっている。末端部15の端面15aの直径φ(または厚さ)は例えば0.05mm〜0.2mmである。
樹脂繊維10の長さは、例えば5mm〜50mmである。図1に示した化粧筆100では、異なる長さの樹脂繊維10を用いてブラシ部20を構成しているが、ブラシ部20の形状によっては、同じ長さの樹脂繊維10によってブラシ部20を構成することも可能である。また、異なる径(直径)の樹脂繊維10を用いてもよいし、同じ径(直径)の樹脂繊維10を用いてもよい。また、本実施形態の樹脂繊維10は直線形状を有しているが、ブラシ部20の形態によっては湾曲した樹脂繊維10を用いてもよい。
本実施形態の樹脂繊維10の断面は、円形形状を有している。本実施形態の構成における「円形形状」は、幾何学的な意味での円形の形状(真円)に限らず、多少歪んでいても構わない。例えば、真円から見ると、楕円形状、長円形状などのものであっても構わない。なお、本実施形態の樹脂繊維10の断面は、円形形状に限らず、他の形状にしても構わない。
本実施形態の樹脂繊維10は、樹脂材料12とフィブロインとから構成されている。図2では、便宜上、樹脂繊維10の主成分である樹脂材料12を、樹脂繊維10の構成要素として表している。本実施形態の樹脂繊維10を構成する樹脂材料12は、例えば、ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)など)、アクリル、アクリル系樹脂(モダアクリルなども含む)、塩化ビニル、ナイロンから構成されている。特に、化繊(化学繊維)に好適に利用できる樹脂が向いている。この例の樹脂繊維10は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)から構成されているが、PBT以外のものを使用することは可能である。上述した樹脂のうちでは、PBT、ポリエステル(例えば、PET)、アクリル系樹脂(アクリルを含む)が好適である。なお、樹脂繊維10は、黒色の他、着色された材料から構成されていてもよい。樹脂繊維10は、例えば、ダークブラウン、パープル、ブルー、ピンク、シルバー、グリーン、ライトオレンジ、ライトゴールド、レッド、ワインレッド、ホワイト、イエローなどの色にすることができ、それによって、カラーの樹脂繊維10を実現することが可能である。
本実施形態の樹脂繊維10には、フィブロインが含有されている。本実施形態の構成では、フィブロインとして、フィブロインパウダー(フィブロインの粉末)が樹脂材料12に配合されている。フィブロイン(fibroin)とは、繊維状のタンパク質の一種で、昆虫とクモ類の繭糸を構成しているものであり、カイコの絹糸の主要成分である。フィブロインの分子量は約37万であり、グリシン、アラニン、セリン、チロシンを多く含み、この4つで全アミノ酸の90%近くを占める。本実施形態のフィブロイン(フィブロインパウダー)は、シルク由来のものを使用している。シルクは、セリシン(20〜30%)とフィブロイン(70〜80%)2種類のタンパク質から構成されており、そして、フィブロインは、シルクからセリシンを取り除いたものである。
また、フィブロインは分子が緻密で規則正しく並んだ結晶性の部分と、不規則で緩いつながりの非結晶性の部分からなり、結晶部分が全体に占める割合(結晶化度)は約40〜50%である。これらの割合がシルクの引っ張りや伸び、吸水性、染色性と深い関係があると考えられており、フィブロインの場合は、結晶性部分はグリシン、アラニン、セリンなどの小さな側鎖を持つアミノ酸で形成され、非結晶性部分はチロシンなどの比較的大きな側鎖を持つアミノ酸を含む。また、フィブロインは、ナノレベルの基本構造を持ち、非常に複雑な形状を有しており、原子顕微鏡レベルでは、多孔質のようにもらせん状のようにも見えるものであり、この複雑な隙間によって多孔質の性質を示し、分子量の小さな空気や蒸気などは通すが、分子量の大きな水滴は通さないという性質を有している。
本実施形態のフィブロインパウダーは、不純物が付着しやすいセリシンを取り除いて、芯の部分のファブロインをパウダー(フィブロインパウダー)にしたものである。本実施形態のフィブロインパウダーは、例えば30μm以下程度の粒径(平均粒径)を有しており、好ましくは、20μm以下(または10μm以下)の粒径のものであって粒径ができるだけ揃っているもの(粒径分布がきれいなもの)がよい。また、本実施形態のフィブロインパウダーとしては、平均粒径5マイクロメートル(5μm)程度またはそれ以下の超微粒子パウダーを用いることが可能である。また、フィブロインは、人体との親和性が高く、さらに説明すると、人と同じ組成ではないものの、フィブロインは生体に馴染みやすいという特性があり、人体に安全である。
本実施形態のフィブロインパウダーは、樹脂材料12(ここでは、ポリブチレンテレフタレート)の全体に分散するように配合されている。本実施形態の構成では、図3Aに示すように、樹脂繊維10の表面10aに、キューティクルに類似した表面形状(キューティクル類似表面形状)17が形成されている。必ずしも、獣毛が有するキューティクル形状(たとえるなら、魚のウロコのような形状)とは限らないが、キューティクルに類似した表面形状17で、この表面形状17の溝によって、化粧料(例えば、パウダー状化粧品)の付着がよく、また、皮膚への塗布性が良好になる。
図3Bは、本実施形態(実施例)の樹脂繊維10の表面10aを撮影した顕微鏡写真(図面代表写真)である。顕微鏡写真の位置または撮影具合によって模様は変化し得るが、図3Bに示したように、樹脂繊維10の表面10aに、キューティクル類似表面形状(たとえるなら、魚のウロコのような形状)が発現していることが観察できる。
本実施形態の樹脂繊維10は、キューティクル類似表面形状17を形成するように、フィブロイン(フィブロインパウダー)が配合されている。本実施形態の構成では、フィブロインパウダーは、樹脂材料12中に、例えば、1質量%以下の範囲で配合されている。また、キューティクル類似表面形状17が発現する配合量としては、例えば、0.01質量%以上である。なお、1質量%を超えるフィブロインパウダーを樹脂材料12に配合することも可能であるが、キューティクル類似表面形状を形成するための成分(フィブロインパウダー)を配合しすぎると、樹脂繊維10の特性(すなわち、化粧筆の毛として要求される特性)が変化(悪化)することがあるので、注意が必要である。なお、具体的な配合量(または、パウダーの粒径など)は、使用する材料(樹脂材料)、プロセス条件、化粧筆100に求められる特性などに応じて、適宜好適なものを選択すればよい。例えば、フィブロインパウダーの配合率(質量%)は、例えば0.3%±0.1%、または、0.1%±0.1%のような範囲で、実際の使用条件(要求条件)にあわせて設定したらよい。
なお、フィブロインパウダーは、パウダー状に加工したフィブロインであれば、粒径(平均粒径または粒径分布)に厳密にこだわらなくても場合があり(30μmを超える粒径であってもよい場合があり)、樹脂繊維10にフィブロインパウダーが分散されて配合されていることがポイントとなる。樹脂繊維10全体に均一にフィブロインパウダーが分散できる粒子であることが好ましいが、必ずしも均一な分散が求められるわけではなく、樹脂繊維10の表面10aに適度にフィブロインパウダーが位置していることがポイントとなる。つまり、樹脂繊維10の中心部(芯部)にまで均一にフィブロインパウダーが配合されることが求められているわけではない。
なお、樹脂材料12だけで樹脂繊維が形成されている時の表面10aは、平滑な面であり、疎水性の特性を有している。一方、本実施形態のフィブロインが配合された樹脂繊維10の場合、フィブロインの特性によって、樹脂繊維10の表面10aに吸水性の特性が付与され、樹脂繊維10の含水率が上がり、静電気の発生が抑制される。すなわち、樹脂材料12だけで構成された樹脂繊維には静電気が発生するが、本実施形態の樹脂繊維10では、静電気の発生が抑制される。化粧筆の毛に静電気が発生していると、その毛に肌が接触すると不快になる。その不快をさけるために、獣毛の化粧筆が好んで使用されていたのであるが、本実施形態の樹脂繊維10からなる化粧筆100は、獣毛の化粧筆と同様に、静電気なしに快適に使用することができる。
静電気抑制の観点からは、フィブロイン(フィブロインパウダー)は、少なくとも表面10aに露出していることが好ましい。ただし、上述したように、フィブロインは、完全に均一に分散されている必要はなく、静電気の発生を抑制できるのであれば、樹脂繊維10の表面10aは存在し、樹脂繊維10の中心部(コア)には存在していない(または、密度/濃度が少ない)状態であっても構わない。加えて、キューティクル様模様17が表面10aに形成されているのであれば、表面10aの最表面において、フィブロインが検出されずに、最表面の下の位置に存在しても構わない。なお、キューティクル様模様(キューティクル類似表面形状)17は、あくまで、化粧筆の付着性・塗布性の観点からの特性に着目して獣毛のキューティクルと比較しているものであり、言い換えると、獣毛のキューティクルの外観模様(パターン、形状、顕微鏡にて表された線図模様)の対比をしているものではない。
図4は、本実施形態の化粧筆100を用いて化粧をする様子(化粧方法)を説明する図である。本実施形態の化粧方法では、化粧筆100を用いて、使用者50の肌(特に、顔)51に化粧料(例えば、ファンデーションなど)を付与(塗布)する。具体的には、化粧料(ファンデーション、または、チーク、アイシャドウなどのパウダー化粧品)を化粧筆100の毛先(11)に付けて、その毛先(11)を肌51に接触させて、軽くなでることで、化粧料が肌51に転写(転移)される。通常は、使用者50の手55で、化粧筆100の支持部30を持って、手55を動かすことで、ブラシ部20を動かして、ちょうど良く肌51に当たるようにする。そして、化粧筆100を用いて、化粧料が均一になるように(または、チーク、アイシャドウなどの場合は、所定箇所においてちょうど良い風合いになるように)塗布を行う。
本実施形態の化粧筆100によれば、樹脂繊維10が樹脂材料12とフィブロインとから構成されているので、樹脂繊維10の表面10aにキューティクル類似表面形状17を形成させることができる。その結果、獣毛を用いていない化粧筆100であっても、化粧料(例えば、パウダー状化粧品)の肌51への塗布性(および、化粧料の付着性)が優れた化粧筆100を実現することができる。また、樹脂材料12にフィブロインが配合された樹脂繊維10を用いていることによって、樹脂製の人工毛(合成繊維毛、化繊毛)でありながら、静電気を軽減することができるので、肌51への不快感を低減することができる。
また、本実施形態の化粧筆100は、ブラシ部20の毛が樹脂繊維10だけから構成されているので、獣毛を用いる必要がなく、動物愛護の面からも好ましいとともに、それによって商品力がアップする。また、獣毛を用いた化粧筆でないので、衛生面、アレルギーの問題を解消することができる。加えて、樹脂繊維10に配合しているフィブロイン(フィブロインパウダー)は人体への安全性が高いので、その点でも安心感を与えることができる。なお、獣毛の場合、(合成繊維毛と異なり)一本一本の毛にばらつぎがあって、その獣毛でブラシを作るのは熟練の技が必要となるが、本実施形態の場合、大量に均一の寸法・形状・特性の樹脂繊維10を用意することができ、それゆえに、品揃え、製造コスト、製品コストの問題を解消することができる。
図5は、本願発明者が検討した本実施形態(実施例)の化粧筆100と、他の化粧筆との対比をしたテーブルである。対比した化粧筆の毛は、獣毛(例えば、リス・イタチ)、化繊(合成繊維毛)、凹凸のある化繊、絹と、本実施形態の樹脂繊維10である。
また、評価した特性は、毛先アルカリ処理、毛先の形状(歪みない整列)、表面(毛の表面状態)、水分率、長さ(長さ均一性)、太さ(太さ均一性)、色(色均一性)、静電気、製造時の操作性(製造容易さ)、実用的な筆(化粧筆)の硬さ(コシ)、パウダーの付着量、ファンデーションの肌への転移具合、衛生面・アレルギー性である。
<獣毛(リス・イタチ)>
獣毛の場合、アルカリ液で毛先を処理するのは困難であるが、毛先の形状は理想的であるので、毛先処理自体をしなくてもよい場合が多い。一方で、長さ、太さ、色は、天然の毛(獣毛)であるので、不安定であり、それゆえに、製造には特殊な技術を要する。また、衛生面、アレルギーで問題がある。利点としては、毛の表面にキューティクルがあるので、パウダー付着量、ファンデーションの肌への転移(転写)具合は理想的である。水分率は高いので静電気は発生しにくい。また、実用的な筆の硬さ(コシ)は理想的である。
<化繊(合成繊維毛)>
化繊の場合、アルカリ液で毛先を処理することは可能であり、毛先の形状は理想的にすることができる。また、長さ、太さ、色は、安定させることができ、任意に調整すること容易である。また、実用的な筆の硬さ(コシ)は、物性を調整することで良好なものにすることができる。衛生面・アレルギー性は極めて少ない。一方、欠点としては、毛の表面はほぼツルツルに近いので、パウダー付着量、ファンデーションの肌への転移具合は非常に悪い。また、水分率は非常に低いので、静電気は非常に発生しやすい。また、静電気が多く発生すると、製造時における毛の操作性は悪くなり、製造は容易ではなくなる。
<凹凸のある化繊>
化繊の場合、アルカリ液で毛先を処理することは可能であるが、毛先の形状(歪みのない整列)はやや劣るものになる。また、長さ、太さ、色は、安定させることができ、任意に調整すること容易である。また、実用的な筆の硬さ(コシ)は、物性を調整することで良好なものにすることができる。衛生面・アレルギー性は極めて少ない。毛の表面には凹凸があるので、パウダー付着量は良好で、そして、ファンデーションの肌への転移具合は、理想的や良好までいかなくても、普通のレベルまで改善することができる。一方、欠点としては、水分率は非常に低いので、静電気は非常に発生しやすい。また、静電気が多く発生すると、製造時における毛の操作性は悪くなり、製造は容易ではなくなる。
<絹>
本願発明者は、化粧筆を構成する毛(繊維)として、絹についても検討した。絹の場合、アルカリ液で毛先を処理することは困難であり、毛先の形状(歪みのない整列)の具合はかなり劣る。また、長さ、太さ、色は、安定しており、任意に調整すること容易である。毛の表面にキューティクル類似形状があるので、パウダーの付着量、ファンデーションの肌への転移具合は非常に良い。水分率は高いので、静電気は発生しにくい。衛生面・アレルギー性リスクは極めて少ない。一方、欠点としては、実用的な筆の硬さ(コシ)は、柔らかすぎて、すなわち、コシがなくて使えない。言い換えると、化粧筆を作ることが実質的にできない。また、柔らかすぎてコシがないことから、製造時の操作性を調整することが困難であり、実質的に製造できない。
<本実施形態(実施例)>
本実施形態における化粧筆100及び樹脂繊維10の場合(実施例)、アルカリ液で毛先を処理することは可能であり、毛先の形状(歪みのない整列)を理想的なものにすることができる。また、長さ、太さ、色は、安定させることができ、任意に調整すること容易である。また、実用的な筆の硬さ(コシ)は、使用する樹脂材料などの物性を調整することで、任意に調整可能である。衛生面・アレルギー性は極めて少ない。毛の表面にキューティクル類似形状があるので、パウダーの付着量は理想的であり、ファンデーションの肌への転移具合も理想的である。加えて、水分率を配合量で調整可能であるので、静電気は発生しにくい。また、静電気を抑制できるので、製造時における毛の操作性は非常に良好であり、すなわち、製造時の樹脂繊維10は非常に操作しやすい。
したがって、本実施形態の化粧筆100(および樹脂繊維10)は、獣毛の化粧筆の欠点を取り除きながら、他の毛(化繊、凹凸ある化繊、絹)を用いた化粧筆の特性を超えて、化粧筆の長所に匹敵する特性を持ったものであることがわかる。
次に、図6を参照しながら、本実施形態の化粧筆100の製造方法について説明する。図6は、本実施形態の製造方法を説明するためのフローチャートである。
まず、樹脂材料(一例では、PBT)12に、キューティクル類似表面形状17を生成するための成分(フィブロイン)を混合する(工程S10)。フィブロインは、静電気の発生抑制成分(静電気調節成分)でもある。本実施形態では、樹脂材料12にフィブロインパウダーを混練して、樹脂材料12の全体に均一にフィブロインパウダーが分散するようにする。樹脂材料12にフィブロインパウダーに入れる場合、フィブロインパウダーは粉体のものを樹脂材料12に入れてもよいし、フィブロインパウダーを含む溶液(例えば、フィブロイン水溶液)を樹脂材料12に入れるようにしてもよい。本実施形態では、フィブロインパウダー(またはフィブロインパウダー水溶液)を樹脂材料(PBT)12に入れて、その混合物を混練して、樹脂繊維10を構成する混合物を作製している。なお、すでに混練した状態の樹脂材料12を用意してもよい。
なお、本実施形態では、樹脂繊維10全体の質量に対するフィブロインパウダーの質量を配合割合(質量%)で表しているが、場合によっては、樹脂繊維10全体基準でなく、樹脂材料12基準の方が配合割合を決める方が便利であれば、樹脂材料12を100質量部として、フィブロインパウダーの質量の割合(例えば、1質量部以下、または、0.01質量部以上)を代用しても構わない。
本実施形態の樹脂繊維10を着色する場合には、フィブロインパウダーを樹脂材料12に混合する段階(工程S10)で、樹脂材料12に顔料を入れて、着色を行うことができる。樹脂材料12の着色(または染色)は、黒色にすることができる他、例えば、ダークブラウン、パープル、ブルー、ピンク、シルバー、グリーン、ライトオレンジ、ライトゴールド、レッド、ワインレッド、ホワイト、イエローなどの色にすることができる。フィブロインパウダーと顔料(着色剤)とを同時に樹脂材料12に混合してもよいし、フィブロインパウダーを導入した後に顔料を樹脂材料12に混合してもよい。また、顔料を導入した後にフィブロインパウダーを樹脂材料12に混合しても構わない。なお、白または透明の樹脂繊維10を後から染色することもできる。
次に、樹脂材料12およびフィブロインパウダーを含む混合物を金型から押し出す(工程20)。金型には、樹脂繊維10の形状(断面形状)を規定する開口部が形成されている。本実施形態では、円形形状を有する開口部を規定する金型を用いている。フィブロインパウダーが配合された樹脂混合物を金型に通すと、所定の断面形状(ここでは、円形)を有する繊維状の材料が得られる。なお、上述したように、本実施形態の円形形状は、幾何学形状の円形(真円)に限らず、略円形のものであってよい。また、金型の開口部は、円形形状に近い略円形の形状のものでなく、扁平率の大きいもの(例えば、横広の楕円形または長円)にしても構わない。なお、金型の開口部の形状を変えて、その金型に混合物を押し出せば、円形形状以外の繊維状の材料を作製することが可能である。
次に、押し出しした繊維状の材料を、樹脂繊維(合成繊維毛)10が加工しやすい所定の長さに切断する(工程S30)。すなわち、樹脂繊維10に対応する長さに切断する。切断するときは、所定長さで繊維状の材料をカッター(切断装置)で切断すればよい。その後、切断して所定の長さ(樹脂繊維10に対応する長さ)になった樹脂繊維10の先端を薬品(例えば、アルカリ溶液)につけて、樹脂繊維10の先端部11を形成する(工程S40)。すなわち、樹脂材料12を溶解させる薬品(アルカリ溶液)に樹脂繊維10の一部(先端部11)をつけることで、樹脂材料12の一部を溶解させて、樹脂繊維10の径を細めて先端部11を形成する。具体的には、切断した樹脂繊維10の束をバンド(固定具)で束ねて、そこで樹脂繊維10の先端部11を薬品に所定時間浸けて溶解させ、樹脂繊維10の先端部11を形成する。
次に、樹脂繊維10を整列させる(工程S50)。具体的には、先端部11を有する樹脂繊維10を平板の上に置いて、次いで、重石(文鎮のような器具)で、樹脂繊維10を抑えることにより、樹脂繊維10を整列させる。整列させる時は、樹脂繊維10のそれぞれの尖った先端(頂点)11aがきれいに揃うにして、その先端11aを基準にして、それぞれの樹脂繊維10を揃える。先端11aを基準にした方が(末端部15の端面15aを基準にするよりも)樹脂繊維10の長さを精密に揃える(調整)ことができるからである。
ここで、本実施形態の樹脂繊維10は、フィブロインパウダーが配合されており、それによって水分率(水分量)が調整されているので、静電気の発生が防止(抑制)されている。なお、フィブロインパウダーが配合されていない樹脂繊維(合成繊維毛)の場合、樹脂繊維に静電気が発生し、樹脂繊維の取り扱いの時に、それが作業の邪魔になる。一例としては、軽くて細い樹脂繊維10は当該静電気で複数本が密着してしまい、簡単に整列させることができない。もし、フィブロインパウダーが配合されていない樹脂繊維の静電気の発生を防止するために、霧吹きなどで樹脂繊維に水滴をつけたら、軽くて細い樹脂繊維は水でベタベタになってしまい、整列作業を行うことができなくなってしまう。また、別途、乾燥作業も必要になり、新たな手間が増えるので好ましくない。
一方、本実施形態の樹脂繊維10の場合、静電気の発生がないので、軽くて細い樹脂繊維10であっても、簡単に且つきれいに樹脂繊維10の整列を行うことができる。静電気が発生している樹脂繊維を整列する場合と比較して、静電気が抑制された樹脂繊維10の取り扱いは、同様のスキルの工員で、その時間は二分の一以下にすることができる。加えて、熟練度の低い工員でも、静電気の影響がないので、作業時間は同じように短縮することができる。また、整列工程(S50)の際における樹脂繊維10の取り扱いが簡便になるので、樹脂繊維10の不良品発生率を下げることができ、すなわち、歩留まりの向上、製造コストないし製品コストを下げることができる。
先端が尖った先端部11を基準にして整列を揃えて(整列精度:例えば、±0.5mm以内、好ましくは±0.2mm以内)、隣接する樹脂繊維10の間の隙間がなくなるようにきれいに埋めたら、その整列させた樹脂繊維10のブロックをテープで留めて固定して、次いで、樹脂繊維10の根本(末端部15)を切断する。そうすると、きれいに長さが揃った樹脂繊維10を形成することができる。すなわち、均一の樹脂繊維10を大量に用意することができる。長さ(及び/又は太さ)が異なる樹脂繊維10を用意する場合、上述した製造工程を、その長さ(及び/又は太さ)にあわせて実行すればよい。
その後、工程S50を経て得られた樹脂繊維10を束ねて、ブラシ部20(例えば、図1に示したブラシ部20の形状)を作り、そのブラシ部20を支持部30で固定する(工程S60)。樹脂繊維10を束ねてブラシ部20を形成する場合も、静電気が抑制されているので、作業がしやすい。図1に示した構成の場合、所定のブラシ部20の形状にまとめられた樹脂繊維10の束は、口金(金具)32に入れられた後、口金32をプレスすることによってプレス部(圧縮部)33で固定される。また、口金32に軸部35を挿入し、口金32をかしめる(または、圧縮)することで、口金(接続部)32と軸部35とが互いに固定される。このようにして、本実施形態の化粧筆100が得られる。
なお、化粧筆100の形態によっては、所定のブラシ部20の形状にまとめられた樹脂繊維10の束は、軸部35からなる支持部30に挿入されて、固定される場合もある。固定手法も、プレス以外の方法(接着など)を用いることができる。また、図1に示した構成において、口金(接続部)32と軸部35との接続は、ネジ固定、嵌合、接着などの手法を用いることができる。
本実施形態の化粧筆100は、図7に示したような構成にすることが可能である。図7に示した化粧筆100(A〜F)は、本実施形態の一例である。図7に示した化粧筆100Aは、フェイスブラシであり、この例の接続部32は樹脂製であって、金属口金のプレスではなく、接着などの固定手段によってブラシ部20を接続部32に固定している。
また、化粧筆100Bは、チークブラシである。化粧筆100Cはアイシャドウブラシであり、化粧筆100Dおよび化粧筆100Eも、ブラシ部20の形状が異なるアイシャドウブラシである。また、化粧筆100Fは、アイラインブラシ(アイライナーブラシ)である。また、本実施形態の化粧筆100としては、上記と重複するものもあるが、ハイライトブラシ、アイブロウブラシ、アイライナーブラシ、チークブラシ、リップブラシ、パウダー&フィニッシュブラシ、コーム&スクリューブラシ、シャドウブラシ、コンシーラーブラシ、洗顔ブラシ、ファンデーションブラシを挙げることができる。
また、本実施形態の化粧筆100のブラシ部20に付着される化粧料(化粧品)は、パウダー状化粧品、リキッド状化粧品などであり、化粧筆100を用いて化粧するもの(化粧品)であれば特に制限はない。口紅・リップなどを、本実施形態の化粧筆100で塗ってもよい。加えて、本実施形態の化粧筆100は、図8に示したようなマスカラブラシ100Gであってもよい。図8に示したマスカラブラシ100Gは、本実施形態の樹脂繊維10を含むブラシ部20と、接続部(連結部)32および軸部(把持部)35を含む支持部30とから構成されている。マスカラブラシ100Gを用いる場合は、マスカラブラシ100Gのブラシ部20(樹脂繊維10)にマスカラ液を付けて、そのマスカラ液をまつげに塗布する。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。一例としては、本実施形態の化粧筆100では、ブラシ部20におけるすべての毛を樹脂繊維10で構築したが、例えば、特許文献1に開示された獣毛と合成繊維毛の混合ブラシにおいて、本実施形態の樹脂繊維10を使用しても構わない。また、フィブロインパウダーが配合されていない合成繊維毛と樹脂繊維10とのハイブリッドの化粧筆を構築することも可能である。ただし、動物愛護の観点から獣毛をできるだけ用いないというポリシーと、優れた性能の合成繊維毛を使用するという点からは、すべての毛に、本実施形態の樹脂繊維10を用いることが好ましい。
また、上述の実施形態では、化粧筆100の構成のものを主として説明したが、本実施形態の樹脂繊維10を、化粧筆用の合成繊維(化繊)として、販売・流通させることも可能である。なお、本実施形態の構成は、化粧筆の用途に樹脂繊維10を使用し、そして化粧筆への使用が最も適しているが、動物愛護の観点から獣毛の禁止が益々進むことを踏まえて、書道用筆・絵画用筆(または、ハケなどの工業用・業務用・家庭用用途の筆)への使用を妨げるものではない。
なお、本発明の技術的思想は大きく異なるものであるが、特開平11−29954号号公報において、絹のブラシが開示されている。当該絹のブラシは、樹脂材料にフィブロインパウダーを配合したものではなく、絹繊維の強度が弱く、それを補うために絹繊維のセリシン又はフィブロインを接着成分として絹繊維を接着したものにすぎない。それゆえに、本発明の実施形態の樹脂繊維10を示唆するものではない。したがって、同公報に開示された絹のブラシと、本発明の実施形態に係る化粧筆100とは、基本的な構造ないし発想が異なるものであり、本発明の技術的思想とも顕著に相違するものである。
本発明によれば、獣毛を用いずに化粧料の塗布性(及び/又は付着性)に優れた化粧筆を提供することができる。
10 樹脂繊維
10a 樹脂繊維の表面
11 先端部
12 樹脂材料
15 末端部
17 キューティクル類似表面形状
20 ブラシ部
30 支持部
32 接続部(口金)
33 プレス部
34 カシメ部
35 軸部
50 使用者
51 肌
100 化粧筆

Claims (12)

  1. 先端部と末端部とを有する樹脂繊維を複数本含むブラシ部と、
    前記ブラシ部を固定する支持部と
    を備え、
    前記樹脂繊維の先端部はテーパー形状になっており、
    前記樹脂繊維は、樹脂材料とフィブロインとから構成されており、
    前記樹脂繊維の表面は、キューティクル類似表面形状を有しており、
    前記フィブロインは、フィブロインパウダーの形態で前記樹脂材料に配合されている、
    前記フィブロインパウダーの配合割合(質量%)は1%以下0.01%以上である、化粧筆。
  2. 前記フィブロインパウダーは30μm以下の粒径を有する、請求項1に記載の化粧筆。
  3. 前記ブラシ部における全ての前記樹脂繊維が前記フィブロインを含んでいる、請求項1または2に記載の化粧筆。
  4. 前記樹脂材料は、ポリブチレンテレフタレートであり、
    前記フィブロインは、前記樹脂繊維の少なくとも表面に露出している、請求項1からの何れか一つに記載の化粧筆。
  5. 前記化粧筆は、アイシャドウブラシ、アイブロウブラシ、アイライナーブラシ、マスカラブラシ、チークブラシ、フェイスブラシおよびパウダーブラシからなる群から選択される一つである、請求項1からの何れか一つに記載の化粧筆。
  6. 化粧筆の製造方法であって、
    樹脂材料にフィブロインを混合する工程と、
    前記樹脂材料と前記フィブロインの混合物から繊維材料を形成する工程と、
    前記繊維材料を切断する工程と、
    前記繊維材料の一端を溶解させることによってテーパー形状を形成する工程と
    を含み、
    前記混合する工程において、前記フィブロインは、フィブロインパウダーの形態で前記樹脂材料に配合され、
    前記繊維材料を形成する工程において形成された当該繊維材料の表面は、キューティクル類似表面形状を有しており、
    前記混合する工程において、前記フィブロインパウダーの配合割合(質量%)は1%以下0.01%以上で、前記フィブロインパウダーは前記樹脂材料に分散される、化粧筆の製造方法。
  7. さらに、前記テーパー形状を有する前記繊維材料を整列させる工程と、
    前記整列させた前記繊維材料を一纏めに固定する工程と
    を含む、請求項に記載の化粧筆の製造方法。
  8. 前記フィブロインパウダーは30μm以下の粒径を有する、請求項6または7に記載の化粧筆の製造方法。
  9. 化粧筆を用いて化粧料を皮膚に付与する化粧方法であって、
    請求項1からの何れか一つに記載の化粧筆を用意する工程と、
    前記化粧筆の前記ブラシ部における前記樹脂繊維の先端部を化粧料に接触させる工程と、
    前記化粧料が付着した前記先端部を、皮膚に接触させる工程と
    を含む、化粧方法。
  10. 化粧筆用の人工毛であって、
    先端部と末端部とを有する樹脂繊維を備え、
    前記樹脂繊維の先端部はテーパー形状になっており、
    前記樹脂繊維は、樹脂材料とフィブロインとから構成されており、
    前記樹脂繊維の表面は、キューティクル類似表面形状を有しており、
    前記フィブロインは、フィブロインパウダーの形態で前記樹脂材料に配合されており、
    前記フィブロインパウダーの配合割合(質量%)は1%以下0.01%以上である、化粧筆用の人工毛。
  11. 前記フィブロインパウダーは前記樹脂材料に分散されている、請求項1に記載の化粧筆用の人工毛。
  12. 前記フィブロインパウダーは30μm以下の粒径を有する、請求項1または1に記載の化粧筆用の人工毛。
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