JP2018162548A - 人工まつげの製造方法、人工まつげおよび人工まつげの取付け方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】マスカラのようなボリュームを出すことができる人工まつげの製造方法を提供する。【解決手段】本発明に係る人工まつげの製造方法は、樹脂から構成された繊維状の材料(3000)を切断した後(工程S30)、切断した繊維状の材料の一端を溶解させてエクステンション用人工まつげ本体部を形成し(工程S40)、エクステンション用人工まつげ本体部を整列させ(工程S50)、次いで、エクステンション用人工まつげ本体部の根本部(3500)を切断し、続いて、分離された廃棄繊維(3500)を回収し(工程S60)、その廃棄繊維(3500)を所定長さに切断すること(工程S65)を行う。【選択図】図11
Description
本発明は、人工まつげの製造方法に関し、特に、まつげカール用人工まつげの製造方法に関する。
目元の表情や印象を変える化粧法や道具として、マスカラ、アイライナー、ビューラー、つけまつげ、まつげパーマ、まつげエクステンションなどがある。そして、これらの目的は、まつげを長くしたい、まつげのカールを上向きにしたい、まつげを太く濃くしたいというものである。さらに、一度メイクすれば長く続くものが便利であるため、これらの中でも、まつげエクステンション(エクステンション用人工まつげ)の人気が高まっている(例えば、特許文献1など参照)。
このまつげエクステンション(まつげエクステ、または、エクステンション用人工まつげ)は、まぶたには接着せずに、接着剤を用いてまつげに直接接着するため、装着感が良く、皮膚がかぶれるおそれが少ない。また、まつげエクステは、まつげ一本に対して一本ずつ接着するので、つけまつげに比べて自然な感じでまつげに長さやボリュームを与えることができる。
まつげエクステンション以外の手法として、まつげパーマ(地まつげへのパーマ)を行う場合は、頭髪用パーマ液のような効果が得られる薬剤でまつげを変形させることができる。しかし、頭髪用パーマ液を、その目的以外で使用することは法令により禁止されており、それゆえに、まつげパーマを普及させることは、法令上の制約が大きい。また、ボリューム感を出して濃く太く見せたい場合は、マスカラやアイライナーの使用によってその効果を得ることはできるが、毎日洗い流すため手間がかかり不便である。
なお、まつげエクステ業界において、最近、特許文献1に開示されているように、1本の地まつげに複数本のまつげエクステを付けたり、複数本の地まつげに複数本のまつげエクステを付けてボリュームを出すような装着手法が提案されている。特に後者は地まつげの代謝の妨げとなる他、身体トラブルを引き起こすリスクが高まるので、そのような手法を採用する場合には、安全性の観点から注意を払う必要がある。
図1に、典型的なまつげエクステ1000の構造を示す。図1に示したまつげエクステ1000は、先端部111と末端部115とを有する人工まつげ本体部110から構成されている。人工まつげ本体部110は、化学繊維からなり、樹脂材料(特に、ポリブチレンテレフタレート(PBT))から構成されている。
図1に示したまつげエクステ1000は、図2(a)から(c)に示すようにして、使用者(ユーザ)55のまつげ50に取り付けられる。まず、図2(a)に示すように、まつげエクステ1000(人工まつげ本体部110)の一部をピンセット60で掴み、そして、まつげエクステ1000の末端部115に接着剤(グルー)117を塗布した状態で、まつげエクステ1000をまつげ50の近くに持っていく。
次に、図2(b)に示すように、まつげエクステ1000の接着剤117をまつげ50に付けて、まつげエクステ1000をまつげ50に密着させる。そして、接着剤117が硬化して、まつげエクステ1000がまつげ50に固定されたならば、図2(c)に示すように、ピンセット60を外して、まつげエクステ1000の取り付けが完了する。この作業を各まつげ50について行う。
まつげエクステ1000は、まつげ50への取付け(施術)の前は、図3に示したようなケース2000内に収納されている。図3に示したケース2000は、多数のまつげエクステ1000を収納する容器部2100と、容器部2100の蓋をする蓋部2200とから構成されている。図3に示した容器(まつげエクステ用容器)2100から、まつげエクステ1000を取り出すときは、容器2100の蓋部2200を開けて、容器部2100の中に無造作に入れられている多数のまつげエクステ1000から、一本だけをピンセット(60)で掴む。そうやってピンセット60でまつげエクステ1000を1本掴んだ後は、図2(a)から(c)に示すようにして、接着剤117を介してまつげ50に取り付けていく。
しかしながら、細くて湾曲したまつげエクステ1000の1本1本を、きちんとピンセット60で掴むことは大変であり、しかも、正確な位置で掴まないと、図2(a)から(c)のまつげエクステ1000の取付け(施術)は上手くいかない。そこで、多数のまつげエクステ1000をランダムに容器2100に入れておくのではなく、図4に示すような、まつげエクステ1000をきちんと整列させて収納する容器2500が販売されている。
図4に示した容器(まつげエクステ用容器)2500は、複数のまつげエクステ1000が貼付された台紙2350を収納する容器部2300と、その容器部2300の蓋となる蓋部2400とから構成されている。容器2500内においては、まつげエクステ1000は一列のブロック1500の状態に整列されて台紙2350に貼り付けられている。そして、まつげエクステ1000のブロック1500は、何列もきれいに台紙2350に貼り付けられている。
図4に示した容器2500に収納されたまつげエクステ1000はきれいに整列されているので、ピンセット60で一本のまつげエクステ1000を掴むのは非常に楽である。具体的には、まつげエクステ1000の一部(先端部111の周辺)を掴んで持ち上げると、まつげエクステ1000の末端部115が台紙2350の粘着層から取れて、1本のまつげエクステ1000だけを簡単にかつ上手にピックアップすることができる。また所望の箇所(人工まつげ本体部110の先端部111から中央部の所定箇所)を正確に掴むことが楽にできる。それゆえ、まつげエクステ1000の取付け(施術)はスムーズに進み、施術者も、施術を受ける人も負担が少なくなる。
また、一列のブロック1500は、同じ種類のまつげエクステ1000(長さ、カール曲率、色などが同一、すなわち、同じ品番)として、他の列のブロック1500には、それとは違う種類のまつげエクステ1000を整列することが可能である。この場合、一つの容器2500に複数種類のまつげエクステ1000を入れることができるので、ユーザー(使用者)の要望に応えるのが容易になるので便利である。
図3に示した容器2100の場合は、所定本数の多数のまつげエクステ1000を容器部2100に収納させたらそれでよいが、図4に示した容器2500の場合は、まつげエクステ1000を一列にきれいに整列させる必要がある。図5に示すように、このまつげエクステ1000の整列(ブロック1500の整列)はかなり精密なものであり、具体的には、まつげエクステ1000の先端111が、基準線(基準高さ)1300に対して±0.2mmの範囲内で収まっているものだけを良品としている。
このような極めて高い精度の整列作業(まつげエクステ1000の整列)は、機械では行うことができずに、すべて手作業で行っており、ものすごい手間とコスト、そして工員の習熟度が要求される作業となっている。なお、参考として、歯ブラシの毛の植え込みは機械で自動的に行うことができるが、その毛先の整列精度は±約1mm程度であり、それを超える高精度の毛先の整列は現在の自動化技術では無理である。
このような整列作業の手間を何とか削減・回避するために、本願発明者はいろいろ検討したが、上手い方法は見つからなかった。具体的には、まず、まつげエクステ1000の台紙2350への整列作業を簡便化して、まつげエクステ1000の先端部111が基準線1300に対してばらばらになっても許容する整列を実行した場合、まつげエクステ1000を収納した容器(販売する製品)2500の見栄えが悪く、売れない商品になってしまう。一方で、より高精度整列を実行できる機械による自動化を検討したが、日本および海外まで調べたが、そのような高精度の整列可能な機械は見つからなかった。まつげエクステ1000は、細くて軽くて柔らかいため機械による整列自動化は難しい。毛の形状や製品の種類によって異なるものの結局は、一本一本のまつげエクステ1000を手作業で、台紙2350にきれいに貼り付けていくか、カール加工前の毛を箱型の容器などに積み重ね、横一列に整列し、毛先を揃えた上で複数本の毛を一度にまとめてテープに貼り付けるなどの品質が安定しない方法で製造するしかないのが実情である。
さらに、このまつげエクステ1000のブロック1500(まつげエクステ1000の整列)においては、すべてのまつげエクステ1000のカールを均一に揃える必要がある。一部でも、カールが不揃いなまつげエクステ1000が混じると、このブロック1500、および、複数のブロック1500が貼り付けられた製品(容器2500)は不良品となってしまう。したがって、まつげエクステ1000のそれぞれのカールを高精度に制御する必要が求められる。
加えて、まつげエクステ業界においては、装着の快適性から、より軽いまつげエクステ1000が求められている。まつげエクステ1000を軽くする手法としては、人工まつげ本体部110をより細くしたり、人工まつげ本体部110に溝をつけて断面形状を星形にしたりすることなどがある。まつげエクステ1000(人工まつげ本体部110)が軽くなれば、製造時において、ただでさえ軽くて取り扱いにくい人工まつげ本体部110が、さらに取り扱いが難しくなる。またそれゆえに、より軽いまつげエクステ1000をきれいに整列させることは、非常に難しくなる。
このような状況下において、カールを高精度に制御したまつげエクステ1000のブロック1500を作る上で、人工まつげ本体部110として使用されなかった部分の化学繊維が大量に廃棄される。この廃棄される化学繊維の部位(廃棄繊維部位)は、人工まつげ本体部110のようなまつげ形状をしていないので、仮に人工まつげ本体部110と同様の長さを有していたとしても、まつげエクステンション1000として用いることはできない。また、当該廃棄繊維部位は、人工まつげ本体部110として使用されなかった部分であるので、まつげエクステンション1000(人工まつげ本体部110)よりも短い長さとなることも多い。しかしながら、すべての人が、まつげエクステンション1000を付けることによって、まつげを長くしながらまつげを太く濃くしたいことを望んでいるわけでない。すなわち、マスカラやアイライナーのように地まつげを部分的に濃くしたり、ビューラー、まつげパーマのように地まつげを上向きにしたい場合も数多く存在する。
また、まつげエクステンション1000の製造原価(ひいては販売原価)は比較的高いものであるが、これは、廃棄繊維部位が大量に発生することにも起因している。この廃棄繊維部位を、まつげエクステンションとは異なる人工まつげとはいえ、再利用できるのであれば、新規な人工まつげを安価に提供できるとともに、まつげエクステンションの製造原価を下げることもできる。
本願発明者は、このような状況の中で、まつげエクステンションで使用されなかった廃棄繊維部位を利用して、装用した人のまつ毛(地まつ毛)の角度を変えてマスカラのようなボリュームを出すことができる人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)を開発することに取り組み、鋭意検討した結果、そのような人工まつげを製造することができる方法を見出して、本発明に至った。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、装用した人のまつ毛(地まつ毛)の角度を変えてマスカラのようなボリュームを出すことができる人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)の製造方法を提供することにある。
本発明に係る人工まつげの製造方法は、樹脂から構成された繊維状の材料を切断する工程と、前記切断した繊維状の材料の一端を溶解させることによって、先端部を有するエクステンション用人工まつげ本体部を形成する工程と、前記エクステンション用人工まつげ本体部の先端部を基準にして、前記エクステンション用人工まつげ本体部を整列させる工程と、前記エクステンション用人工まつげ本体部の根本部を切断することによって、前記エクステンション用人工まつげ本体部の末端部を揃える工程と、前記エクステンション用人工まつげ本体部の末端部から分離された廃棄繊維を回収する工程と、前記廃棄繊維を所定長さに切断する工程とを含む。
ある好適な実施形態において、前記所定長さに切断された前記廃棄繊維は、当該廃棄繊維の先端部から末端部まで実質的に同一の径を有しており、前記所定長さに切断された前記廃棄繊維に対してカールを行う工程を実行する。
ある好適な実施形態では、前記繊維状の材料を切断する工程において、前記繊維状の材料は25mm以上50mm以下の長さを有し、前記廃棄繊維を回収する工程における前記廃棄繊維の長さは、13mm以上38mm以下である。
ある好適な実施形態では、前記廃棄繊維を回収した後、前記廃棄繊維の端部を加工する工程を実行する。
ある好適な実施形態では、前記廃棄繊維の端部を加工する工程において、前記廃棄繊維の端部には、アルカリ処理、加熱処理、および、カット処理からなる群から選択される少なくとも一つの処理が実行される。
ある好適な実施形態では、前記エクステンション用人工まつげ本体部の末端部を揃える工程の後、前記エクステンション用人工まつげ本体部の先端部が基準線に対して±0.5mmの範囲内で収まっているように整列した形態で、前記エクステンション用人工まつげ本体部を台紙に貼り付ける工程を実行する。
ある好適な実施形態において、前記繊維状の材料は、含水率を調整する成分が配合された樹脂から構成されており、前記含水率を調整する成分は、水分を保持可能な天然由来高分子成分から構成されており、前記天然由来高分子成分は、前記樹脂に分散して配合されている。
ある好適な実施形態において、前記繊維状の材料を構成する前記樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、および、前記ポリブチレンテレフタレートよりも低温で変性する低温変性樹脂材料を含んでおり、前記樹脂の全体を100質量%としたときに、前記低温変性樹脂材料は50質量%以上含まれている。
本発明に係るまつげカール用人工まつげは、先端部と末端部とを有する人工まつげ本体部と、前記人工まつげ本体部に形成された湾曲部とを備えている。前記人工まつげ本体部は、樹脂から構成されており、前記人工まつげ本体部の長手方向長さは、3mm以上20mm以下であり、前記人工まつげ本体部は、前記先端部から前記末端部まで実質的に同一の径を有している。
ある好適な実施形態において、前記人工まつげ本体部を構成する樹脂は、含水率を調整する成分を含有している。
ある好適な実施形態において、前記含水率を調整する成分は、水分を保持可能な天然由来高分子成分から構成されており、前記天然由来高分子成分は、前記樹脂に分散して配合されており、前記天然由来高分子成分は、前記樹脂を100質量部としたときに0.01質量部から5質量部までの配合割合で、前記樹脂に配合されている。
ある好適な実施形態において、前記人工まつげ本体部を構成する樹脂は、抗菌成分を含有している。
ある好適な実施形態において、前記抗菌成分は、金属を含む抗菌剤から構成されている。
ある好適な実施形態において、前記樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、および、前記ポリブチレンテレフタレートよりも低温で変性する低温変性樹脂材料を含んでおり、前記樹脂の全体を100質量%としたときに、前記低温変性樹脂材料は50質量%以上含まれている。
ある好適な実施形態において、前記人工まつげ本体部は、黒色、ダークブラウン、パープル、ブルー、ピンク、シルバー、グリーン、ライトオレンジ、ライトゴールド、レッド、ワインレッド、ホワイトおよびイエローからなる群から選択される色で着色されている。
ある好適な実施形態において、前記人工まつげ本体部は、粗面化した表面を有している。
ある好適な実施形態において、前記人工まつげ本体部の断面形状は、扁平形状または星形形状を有している。
ある好適な実施形態では、さらに、前記まつげカール用人工まつげの前記末端部を連結する支持部を備えている。
本発明に係るまつげカール用人工まつげの取付け方法は、上記まつげカール用人工まつげを用意する工程と、前記人工まつげ本体部の前記末端部に接着剤を塗布する工程と、前記人工まつげ本体部の末端部に前記接着剤が塗布された状態で、前記接着剤をまつげに付ける工程とを含む。
本発明によれば、前記エクステンション用人工まつげ本体部の根本部を切断した後に廃棄繊維を回収し、次いで、廃棄繊維を所定長さに切断することによって人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)を製造することができる。その結果、当該人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)をまつげ(地まつげ)に装着することで、マスカラのようなボリュームを出すことができるとともに、危険な施術(特にまつげパーマ)を行わずにまつげを上向きにカールさせることができる。また、エクステンション用人工まつげ本体部の製造時に大量に発生する廃棄繊維を再利用することができるので、エクステンション用人工まつげ(まつげエクステンション)の製造原価も低下させることができる。加えて、この廃棄繊維の材質は、エクステンション用人工まつげ本体部のものと高品質の材料であるので、当該人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)を安価かつ高品質に製造することができる。
本発明の実施形態に係る人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)の製造方法の説明の前に、図6および図7から図10を参照しながら、本願発明者が検討した製造方法について説明する。図6は、本願発明者が検討したまつげエクステの製造方法を説明するフローチャートである。
図6に示すように、まつげエクステンションを製造する場合、まず、まつげエクステ用の樹脂(ポリブチレンテレフタレート:PBT)を用意する(工程S110)。次に、その樹脂(PBT)を、まつげエクステ用の繊維を作製するための金型から押し出して、繊維を作製する(工程S120)。その後、その繊維(まつげエクステ用繊維)を、所定長さ(まつげエクステの加工がしやすい長さ)に切断する(工程S130)。
次に、その所定長さの繊維を束ねた状態で繊維の先端を薬品に浸して、それによって、繊維の一部を溶解させて、まつげエクステの先端部を作製する(工程S140)。図7に、所定長さの繊維3000がバンド3100で束ねられた状態で、薬品への含浸によって先端部が形成されたもの(人工まつげ本体部)を示す。
次に、その先端部が形成された人工まつげ本体部3000を平板の上に整列させる(工程S150)。図8に、人工まつげ本体部3000を平版3200の上に配置し、その人工まつげ本体部3000の上に重石3300を載せて、人工まつげ本体部3000を整列させる。図8に示すように、人工まつげ本体部3000の先端部3111が揃うようにして(先端部3111が基準になるようにして)、末端部3115Bの方は、長さが揃わなくてもいいようにしている。
次いで、図9に示すように、人工まつげ本体部3000の先端部3111が揃った状態で、テープ3400を貼り、人工まつげ本体部3000を整列させた状態で固定する(同じく工程S150)。次に、図10に示すように、人工まつげ本体部3000の根本(末端部3115B)をきれいに切断し、まつげエクステ製品の長さ(1mm単位の寸法で規定)となるようにした末端部3115の人工まつげ本体部3000を得る(工程S155)。そして、ここで、人工まつげ本体部3000で使用されなかった廃棄繊維部位3500が発生する。その後、この廃棄繊維部位3500は捨てられることになる。
続いて、所定長さに揃った人工まつげ本体部3000に所定曲率のカールを施して(工程S160)、まつげ形状を有するまつげエクステを作製する。そして、そのまつげエクステを台紙に貼ることで(工程S170)、図4に示した製品(まつげエクステ1000を収納した容器2500)が得られる。なお、台紙に貼らずにバラバラの状態にする場合(例えば、図3に示したケース2000又は袋に入れる場合)は、カール工程(S160)でまつげエクステ1000を作製したら、テープ3400から外して、ケース詰め(袋詰め)をしたらよい。
この一連の製造工程において大変で手間がかかるのが、人工まつげ本体部の整列工程(S150)である。この整列工程の段階で、きれいに人工まつげ本体部(3000)を整列させておかないと(すなわち、先端部3111が±0.2mmの精度)、その後は、不良品に至る可能性が高くなってしまう。また、この整列工程は、機械の自動化が困難であり、人手に頼らなくてはならず、手間もコストもかかるとともに、工員にも習熟度が求められる。この工程がボトルネックとなって、製造の納期短縮が難しかったり、より一層のコスト削減が難しかったりする。
一方で、コスト削減として無視されていたと思われるのが、廃棄繊維部位3500の扱いである。まつげエクステンション1000を製造するにあたって、まつげエクステンション1000は20mm以下の長さであるのに、所定長さの繊維(まつげエクステ用繊維)3000は約25〜50mmの長さのものを使用する。例えば、12mmのまつげエクステンション1000を製造する際には、13〜38mmの廃棄繊維3500が発生する。まつげエクステンション1000の製造は、寸法・太さ・先端形状などを含めて精密に行われるので、この廃棄繊維3500は、まつげエクステンション1000と同じ材料(高品質の樹脂材料)を用いていても廃棄するしかない。ただし、12mmのまつげエクステンション1000を製造するのに、それとほぼ同じ長さ(又はそれ以上)の樹脂繊維材料(3500)を毎回廃棄するのでは、材料コスト(製造原価)を低下させる上で大きな障害となる。
この廃棄繊維3500は、そのまま、まつげエクステンション1000の製造には使用することはできないが、目元の表情や印象を変えたいユーザは、高価なまつげエクステンション1000でなくても、マスカラのようにボリュームを出すことができるものを求めている人もいるはずである。また、危険な施術と言われているまつげパーマを地まつげにかけるのではなく、まつげを上向きにしたい人もおり、その人が、高価なまつげエクステンションではなく、まつげカール用人工まつげを安価に付けて目元の表情を変えたいと望む場合もあると思われる。このような状況(需要・要求)があることが想像されるが、まつげエクステンションの施術は、やはり費用的に高く(施術が比較的高価であることに加えて、まつげエクステンションの原価が比較的高い)、この問題を解決することができれば、目元の表情や印象を変えたいユーザに喜ばれるに違いないと本願発明者は考えた。
そして、本願発明者は、まつげエクステンション1000の製造時に捨てていた廃棄繊維を再利用することで、安価な人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)を製造する手法を思いつくとともに、この廃棄繊維の再利用によって、まつげエクステンション1000のトータルの製造コストを低下させることができることがわかった。すなわち、廃棄していた部分(廃棄繊維)から人工まつげを製造して商品化することで、その商品化した人工まつげの利益を、まつげエクステンションの製造コスト低下に寄与させることができる手法を見出した。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のために、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。加えて、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
以下、本発明の実施形態に係る人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)100およびその製造方法を説明する。図11は、本実施形態の人工まつげ100の製造方法を説明するためのフローチャートである。また、図12は、本実施形態の製造方法によって作製される人工まつげ100の構造を示している。図13及び図14は、それぞれ、図12のA線に沿った断面図、および、B部分の拡大断面図である。加えて、図15から図18は、それぞれ、図12に示した人工まつげ100の構造を示す正面図、上面図、底面図および側面図(左側面図、または、右側面図)である。
まず、図11を参照しながら、本発明の実施形態に係る人工まつげ100の製造方法を説明する。なお、本実施形態の製造方法は、図6に示したまつげエクステンション1000の製造方法と一部関連している。なお、まつげエクステンションは、「まつげエクステ」と称することがある。
最初に、まつげエクステ1000を製造するための樹脂を用意する(工程S10)。本実施形態の樹脂は、まつげエクステ用の樹脂であり、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステル、アクリル、塩化ビニル、ナイロンから構成されている。この例の樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)である。
次に、その樹脂(例えば、PBT)を、まつげエクステ用の繊維を作製するための金型から押し出して、まつげエクステ用繊維を作製する(工程S20)。本実施形態の金型には、まつげエクステ1000の人工まつげ本体部110の形状(断面形状)を規定する開口部が形成されている。本実施形態では、図13に示すような円形形状を有する開口部を規定する金型を用いている。本実施形態の樹脂(PBT)を金型から押し出すと、図13に示した断面形状を有する繊維状の材料(まつげエクステ用繊維)が得られる。なお、上述したように、本実施形態の円形形状は、幾何学形状の円形(真円)に限らず、略円形のものであってよい。また、金型の開口部は、円形形状に近い略円形の形状のものでなく、扁平率の大きいもの(例えば、横広の楕円形または長円)にしても構わない。
次に、押し出しした繊維状の材料(まつげエクステ用繊維)を、まつげエクステ1000(人工まつげ本体部110)の加工がしやすい長さに切断する(工程S30)。切断後のまつげエクステ用繊維の長さは、まつげエクステ1000(人工まつげ本体部110)の長さにも依存するが、例えば、25mm〜50mmである。切断するときは、所定長さで繊維状の材料をカッター(切断装置)で切断すればよい。
その後、切断して所定の長さになったまつげエクステ用繊維の一端(先端)を薬品につけて、まつげエクステ用繊維の先端部(111)を形成する(工程S40)。すなわち、まつげエクステ用繊維を溶解させる薬品に、まつげエクステ1000(人工まつげ本体部110)の先端部111になる部分をつけることで、樹脂の一部を溶解させて、人工まつげ本体部110の径を細めて先端部111を形成する。具体的には、切断したまつげエクステ用繊維を、図7に示したようなバンド3100で束ねて、そこでまつげエクステ用繊維(人工まつげ本体部となる繊維)3000の先端3111を薬品に所定時間浸けて溶解させ、人工まつげ本体部110の先端部111を形成する。
次に、人工まつげ本体部110を整列させる(工程S50)。具体的には、図8に示すように、先端部111(3111)を有する人工まつげ本体部110(3000)を平板3200の上に置いて、次いで、重石(文鎮のような器具)3300で、人工まつげ本体部110(3000)を抑えることにより、人工まつげ本体部110を整列させる。図8に示すように、人工まつげ本体部3000の先端部3111が揃うようにして(先端部3111が基準になるようにして)、末端部3115Bの方は、長さが揃わなくてもいいようにしている。
続いて、先端が尖った先端部11を基準にして整列を揃えて(整列精度:±0.5mm以内、好ましくは±0.2mm以内)、隣接する人工まつげ本体部110の間の隙間がなくなるようにきれいに埋めたら、その整列(整列した人工まつげ本体部110のブロック)をテープで留めて固定する。具体的には、図9に示すようにして、先端部3111を基準にして、整列させた人工まつげ本体部(まつげエクステ用繊維)3000を、テープ3400(繊維用の固定部材、または、粘着層テープ)で固定する。なお、図9では、人工まつげ本体部10(3000)の根本3115Bの不揃いがわかりやすいように、誇張して長さの違いを表している。
次に、人工まつげ本体部(まつげエクステ用繊維)110の根本(末端部115)を切断する(工程S55)。具体的には、図10に示すようにして、整列させたまつげエクステ用繊維3000の根本部3115を切断して、きれいに長さが揃った人工まつげ本体部110(3000)の末端部15(3115)を形成する。
そして、切断によって生じた廃棄繊維(根本部3500)を回収する(工程S60)。なお、きれいに長さが揃った人工まつげ本体部110(3000)の方は、図6に示した人工まつげ本体部のカールを行う工程(工程S160)および台紙に貼る工程(工程S170)を実行して、まつげエクステ1000の商品を作製する。具体的には、人工まつげ本体部のカール工程(工程S160)は、先端部111基準で高精度に整列した人工まつげ本体部110(図10の人工まつげ本体部3000参照)を加熱して、人工まつげ本体部110の形状を湾曲させ、その形状を記憶(固定)させることによって行う。また、台紙に貼る工程(工程S170)は、図5に示すように、所望のカールが形成されたまつげエクステ1000のブロック1500(一列に整列されたまつげエクステ1000)を台紙2350に貼って、まつげエクステ1000のブロック1500を固定する。具体的には、図5に示すようなケース200(本実施形態に係るまつげエクステ用ケース)に収納されている台紙23500の粘着層に、まつげエクステ1000のブロック1500の末端部115を貼り付けることによって行う。すると、図4に示したように、まつげエクステ1000がブロック1500の状態に整列された容器2500を作製することができる。
続いて、回収した廃棄繊維(根本部3500)を、所定の長さに切断する(工程S65)。ここでの所定の長さは、切断した根本部3500の長さ(一例では、13mm以上38mm以下)よりも短い長さであり、具体的には、製品(まつげカール用人工まつげ)として提供したい長さ(例えば、3mm以上20mm以下)にする。当該所定の長さの精度(バラツキ)は、例えば±0.5mm以内、好ましくは±0.2mm以内にすること望ましいが、安価に製造したい場合はこれを外れるものであってもよい場合がある。なお、1ブロックの廃棄繊維(根本部3500)から、異なる長さの所定長さの繊維(まつげカール用人工まつげのための繊維)を切り出しても構わない。
次に、切断によって所定の長さにした繊維(まつげカール用人工まつげの繊維、または、まつげカール用人工まつげを構成する人工まつげ本体部)にカールを行う(工程S70)。このカール工程は、切断によって所定の長さにした繊維(図10に示した根本部3500の長さを揃えたもの)を加熱して、繊維(3500)の形状を湾曲させ、その形状を記憶(固定)させることによって行う。例えば、所定のカール形状になるように、繊維(3500)を型に押し当てて、加熱と冷却を行うことで、所望形状のカールを形成する。ここで、カール工程(工程S70)を行いやすいように、図10に示した切断した根本部3500に対しても(人工まつげ本体部3000と同じように)固定用のテープ3400を貼り付けておくことが望ましい。
カール工程(工程S70)において、具体的には、筒状の金属パイプ(アルミパイプ)やガラス棒に、繊維(3500)をテープなどで巻き付けて一定時間加熱することによってカールの形成を行う。カールの強弱は巻きつけるパイプの口径を小さくしたり大きくしたりすることによって調整する。なお、繊維(3500)の太さや材料によっても値は変化するが、加熱温度は例えば160〜190℃、加熱時間は例えば3〜30分、その後、冷却時間は3〜30分である。毛先の太さによっては加熱と冷却時間を調整し同じ作業を数回繰り返すこともある。
以上の工程を経て、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100が得られる。本実施形態のまつげカール用人工まつげ100は、例えば、図3に示した容器2000に入れて保管される。なお、図4に示した容器2500に収納する構成にしても構わない。
さらに、図12から14を参照しながら、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100の構造について説明する。なお、図15から図18には、それぞれ、図12に示した人工まつげ100の正面図、上面図、底面図および側面図(左側面図と右側面図とは対称形)を示しているので、これらの図から、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100の立体図を特定することが可能である。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ100は、先端部11と末端部15とを有する人工まつげ本体部10から構成されている。そして、人工まつげ本体部10には湾曲部10cが形成されている。言い換えると、人工まつげ本体部10は、湾曲部10cによってかるく湾曲しており、この湾曲部10cによって、まつげ上向きの効果を出すことができる。
また、人工まつげ本体部10は、化学繊維からなり、樹脂12から構成されている。この樹脂12は、まつげエクステ1000用樹脂と同じものである。本実施形態の人工まつげ本体部10を構成する樹脂は、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル、塩化ビニル、ナイロンから構成されている。この例では、人工まつげ本体部10は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)から構成されていることが好ましい。なお、人工まつげ本体部10は、黒色の他、着色された材料から構成されていてもよい。人工まつげ本体部10は、例えば、ダークブラウン、パープル、ブルー、ピンク、シルバー、グリーン、ライトオレンジ、ライトゴールド、レッド、ワインレッド、ホワイト、イエローなどの色にすることができ、それによって、カラーエクステンションを実現することが可能である。
人工まつげ本体部10の長手方向長さは、例えば、3mm以上20mm以下である。具体的には、人工まつげ本体部10の長さは1mm単位の寸法で規定されて製品化される。例えば、人工まつげ本体部10として12mmの長さのもの、7mmの長さのものを、図10に示した廃棄繊維3500から作製することができる。また、廃棄繊維3500は先端(3111)のテーパー処理が施されていないことから、本実施形態の人工まつげ本体部10は、先端部11から末端部15まで実質的に同一の径を有している。具体的には、人工まつげ本体部10の末端部15の径(ここでは、直径)と、先端部11の径(直径)とは同じであり、違いがあるとしても製造時においける公差の範囲内に収まっている(例えば±10%程度の差、すなわち、実質的に同一)。末端部15の端面15aの直径(または厚さ)は例えば0.07mm〜0.3mmであり、これは先端部11(または、中間部位)でも同様である。図13及び図14では、末端部15における直径φを表記している。
本実施形態の人工まつげ本体部10の断面は、図13に示すように、円形形状を有している。本実施形態の構成における「円形形状」は、幾何学的な意味での円形の形状(真円)に限らず、多少歪んでいても構わない。例えば、真円から見ると、楕円形状、長円形状などのものであっても構わない。本実施形態の例では、人工まつげ本体部10の表面10aには、溝、山・谷のような凹凸は形成されておらず、人工まつげ本体部10の表面(断面図における表面)10aは、なめらかな曲線からなる形状(円形、または、略円形)となっている。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ100は、湾曲部10cの形状・曲率によって種々の構造になり、例えば、図19(a)から(d)に示すように、様々なカール形状にすることができる。図19(a)から(d)では、それぞれ、Iカール、Jカール、Cカール、Dカールのまつげカール用人工まつげ100を示している。なお、カール形状の名称は、まつげエクステ1000と同様なものにしている。また、それ以外にも、CCカール、SCカール、その他のカール(MIXカール、SSCカール、Lカールなど)のまつげカール用人工まつげ100にすることもできる。
図19(a)に示したまつげカール用人工まつげ100Aは、Iカールのまつげカール用人工まつげである。Iカールのまつげカール用人工まつげ100Aは、ほとんどカールがない人工まつげであり、あまり派手にしたくなく、自然な仕上がりにしたい人に向いている。特に、元々まつげ50が上向きに生えていて、まつげカーラー(ビューラー)いらずの方に向いている。
図19(b)に示したまつげカール用人工まつげ100Bは、Jカールのまつげカール用人工まつげである。Jカールのまつげカール用人工まつげ100Bは、ゆるやかで自然なカールがついている人工まつげであり、まるで自まつげのような仕上りにしたい人に向いている。日本人の顔立ちに似合うカールで、伏し目になった時、一番美しい目元を演出できる。特に、自まつげが地面と水平に生えている方に向いており、また、前から見て、毛先が上がって見え過ぎないクールな目元がお好みの方に向いている。
図17(c)に示したまつげカール用人工まつげ100Cは、Cカールのまつげカール用人工まつげである。Cカールのまつげカール用人工まつげ100Cは、ビューラーをかけたようなカールがついている人工まつげである。前から見ると、ほどよく毛先が見えて、その分、目を大きく見せることができ、そして、当該カールが目元を可愛らしく演出することができる。特に、元々まつげがやや下向きに生えている方に向いており、また、前から見て、毛先が上がって見えるためキュートな目元が好みの方に向いている。
図17(d)に示したまつげカール用人工まつげ100Dは、Dカールのまつげカール用人工まつげである。Dカールのまつげカール用人工まつげ100Dは、Cカールよりも更に丸みを帯びたカールが強い人工まつげである。ビューラーを強くかけたイメージで、お人形のようなパッチリした可愛らしい目元を演出できるので、より目を大きく見せることができる。特に、元々まつげが下向きに生えている方に向いており、また、前から見て、毛先が真上に上がるのでキュートでより丸い目元がお好みの方に向いている。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ100は、図1に示したようなまつげエクステ1000と異なって、先端部11が尖っておらず、それゆえに、地まつげの形状にはなっていない。ただし、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100は湾曲部10cが形成されており、その湾曲部10cの形状によって、上述したように様々な目元の印象を変えることができ、地まつげと同様の形状のもの(すなわち、まつげエクステ1000)までユーザは求めない場合もある。すなわち、目元の印象を所望のものにできるのであれば、比較的高価なまつげエクステ1000でなく、比較的安価なまつげカール用人工まつげ10を使用したいというニーズがあり得る。
さらに、地まつげと同様の形状(先端が尖っているもの)を付けてまつげ50を延ばす効果よりも、目を大きく見せたいために、(まつげを下向きでなく)上向きにしたいという要望も強い。このような場合、安価にそのような効果を得ることができる本実施形態のまつげカール用人工まつげ100の優位性がある。
なお、上向き状態を長時間維持するために、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100は、人毛や獣毛でなく、化繊(樹脂製の繊維)から人工まつげ本体部10を構成し、その人工まつげ本体部10を加熱してカール形状を記憶させている。人毛や獣毛は天然素材であるがゆえに加熱だけで形状(湾曲形状)を変化させた場合、水やお湯などによる吸水によってカールがすぐに緩くなって真っ直ぐ(直毛)に戻ってしまう。また、人工まつげの材料としては長さや形や色艶が均一であることが望ましいが、人毛や獣毛は天然素材であるので、そのような均一さを求めることは困難であり、実際にそのレベルの均一さを要求すれば、製造コストが高くなるとともに、不均一な人工まつげ材料を用いて施術することは、美容師の操作技術が高度になってしまい好ましくない。さらには、消費者もそのような不均一な人工まつげ材料を望んでいないということがあり、そして、天然素材からなる人工まつげは、衛生面でも難があり、下処理が不十分なときは目元の眼病リスクを高める恐れがある。
次に、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100をまつげ50に取付ける方法について説明する。図20は、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100を、使用者(装着者)55のまつげ50に取り付けた様子を示す図である。そして、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100は、使用者55のまつげ50を上向きにする人工まつげである。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ100(人工まつげ本体部10)は、ピンセット(不図示)で挟まれて持ち上げられる。そして、人工まつげ本体部10の一端(15)に接着剤20が付与された状態で、まつげ(地まつげ)50にまつげカール用人工まつげ100は装着される。まつげカール用人工まつげ100には湾曲部10cが設けられているので、まつげカール用人工まつげ100が装着されたまつげ50は、上向きにのびて、目元の印象が変わった効果を与える。
なお、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100は、先端部11も末端部15も同じ形状をしているので、図3に示したような容器2000(または袋)に収納された状態から取り出す時に、どちらが先端部11か末端部15か確認したくてよいという利点がある。すなわち、まつげエクステ1000の場合は、非常に細くて小さい繊維(まつげ50とほぼ同様の大きさの繊維)を1本1本、先端部111または末端部115を確認した上で、地まつげ50に装着する必要があるので、作業効率に一定の制約があった。一方、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100の場合には、そのような先端部/末端部の確認が不要であるので、作業効率を向上させることができる。人工まつげ100(または、1000)は非常に細かくて小さくそして軽いため、取り扱いが簡単でないので、1本1本、毎回、先端部/末端部の確認が不要になることは、人工まつげ施術の労力軽減に貢献する。
図21は、上まつげ50にまつげカール用人工まつげ100を取り付けた様子を示している。図21では、数多くのまつげカール用人工まつげ100を上まつげ50に取り付けているが、図1に示したようなまつげエクステ1000を取り付けた後に、ピンポイントで(または、ボリュームを補うように)まつげカール用人工まつげ100を取り付けるようにしても構わない。加えて、地まつげ50に、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100を装着する通常の使用方法の他、既存のつけまつげに本実施形態のまつげカール用人工まつげ100を装着して、ボリュームを増したつけまつげを取り付けるような使用法を実行してもよい。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ100の製造方法では、まつげエクステ用繊維(人工まつげ本体部110となるための繊維)3000の根本部3500を切断した後に廃棄繊維(3500)を回収し、次いで、廃棄繊維(3500)を所定長さに切断することによって人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)100を製造することができる。その結果、本実施形態の人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)100をまつげ(地まつげ)50に装着することで、マスカラのようなボリュームを出すことができるとともに、危険な施術(特にまつげパーマ)を行わずにまつげ50を上向きにカールさせることができる。
また、まつげエクステ1000の製造時に大量に発生する廃棄繊維(3500)を再利用することができるので、まつげエクステ1000の製造原価も低下させることができる。加えて、この廃棄繊維の材質は、まつげエクステ1000と同じ高品質の材料であるので、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100を安価かつ高品質に製造することができる。さらには、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100は、先端部11と末端部15とが同じ形状(同じ太さ)をしているので、まつげカール用人工まつげ100のどちらの端部(11、15)に接着剤20を塗布して、地まつげ50に装着してもよいので、人工まつげ施術の作業効率を向上させることができる。
<第2実施形態>
上述した実施形態のまつげエクステンション100について、さらに次のような改変を行うことができる。本実施形態のまつげエクステ用繊維3000(まつげエクステ用人工まつげ本体部110)の整列工程(図11のS50)においては、人工まつげ本体部110(3000)の静電気による整列の困難性も存在する。すなわち、人工まつげ本体部110(3000)は樹脂(例えば、PBT)から構成されており、当該樹脂は、誘電体(絶縁性材料)であるので、静電気を持ちやすい。まつげのように細い樹脂繊維(人工まつげ本体部3000)が静電気を持った場合、それぞれが静電気で引っ付きあって、簡単には、図9に示すようなきれいな整列状態にはならない。もし静電気の影響を緩和することができれば、人工まつげ本体部3000を図9に示したようなきれいな整列状態(均一配列状態)にすることが容易になる可能性が開ける。
上述した実施形態のまつげエクステンション100について、さらに次のような改変を行うことができる。本実施形態のまつげエクステ用繊維3000(まつげエクステ用人工まつげ本体部110)の整列工程(図11のS50)においては、人工まつげ本体部110(3000)の静電気による整列の困難性も存在する。すなわち、人工まつげ本体部110(3000)は樹脂(例えば、PBT)から構成されており、当該樹脂は、誘電体(絶縁性材料)であるので、静電気を持ちやすい。まつげのように細い樹脂繊維(人工まつげ本体部3000)が静電気を持った場合、それぞれが静電気で引っ付きあって、簡単には、図9に示すようなきれいな整列状態にはならない。もし静電気の影響を緩和することができれば、人工まつげ本体部3000を図9に示したようなきれいな整列状態(均一配列状態)にすることが容易になる可能性が開ける。
ただし、まつげエクステ用繊維(人工まつげ本体部)3000は樹脂製(PBT製)であるので、その樹脂(誘電体)が静電気を持つことは物性であり、それゆえ、人工まつげ本体部3000を構成する樹脂が静電気を持ってしまうことは仕方ない。また、当該樹脂(PBT)は、疎水性材料であるので、静電気を防止するために霧吹きのようなものをかけても、当該樹脂の表面に水滴(霧吹きの粒子)が付くだけで、樹脂の内部に吸い込まず逆に水によってくっついてしまう上、さらに乾燥させる工程も必要となり製造工数が増える。すなわち、整列作業に悪影響をもたらしてしまう。
本願発明者は、まず、整列工程(S50)における作業空間の湿度を上げることで静電気の発生を調整しようとするような発想もしてみたが、実際に、広い工場内でそのようなことは無理であり、仮にそのようなことを行うと、まつげエクステの製造コストがあがってしまうので好ましくない。また、当該樹脂(PBT)に水を導入したとしても、疎水性の樹脂と水とは上手く混合しないので、人工まつげ本体部(まつげエクステ)の材料としては好ましくない。
そのような中、人工まつげ本体部(3000)を構成する材料(樹脂材料)に、親水性の材料(含水材料)を混練することで、人工まつげ本体部の含水率を調整・コントロールできないかというアイデアを思いつき、それを実行してみたところ、その含水率が調整された人工まつげ本体部の整列作業は、静電気の抑制効果によって良好に実行できた。さらに、その含水率が調整された人工まつげ本体部(3000)をカールする工程を実行したところ、人工まつげ本体部(まつげエクステ)のカール(湾曲)の持続時間をコントロールすることができることもわかった。そして、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100も、同じ材料(廃棄繊維3500)からできているので、この材料を用いると、同じく、まつげカール用人工まつげ100のカール(湾曲部10c)の持続時間をコントロールすることもできる。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ100において、人工まつげ本体部10の含水率は調整されている。人工まつげ本体部10の含水率を調整すること(高めること)によって、静電気の発生を防止/抑制することができ、そして、人工まつげ本体部10の含水率を調整することで(具体的には、上限を設定することで)、人工まつげ本体部10のカール(湾曲部10c)の持続力(持続時間)をコントロールすることができる。
本実施形態の人工まつげ本体部10の含水率(質量%)は、例えば、0.1%を超え10%以下である。より良い静電気発生の防止(抑制)を満たす観点からは、人工まつげ本体部10の含水率(質量%)の下限値(「以上」の基準値となる値)は、例えば0.2%以上、または、0.3%以上であることが好ましい。本実施形態の人工まつげ本体部10の含水率の一例は、0.2%以上5%以下であり、または、0.2%以上1%以下、あるいは、0.3%(±0.1%)、または、0.4%(±0.1%)、0.5%(±0.1%)、1.0%(±0.1%)もしくは1.0%(±0.5%)である。含水率の測定は、市販の加熱乾燥式水分計(例えば、PETペレットの含水率を測定可能な装置)を用いて行うことができる。ただし、公定試験法(加熱乾燥法)、近赤外分光法、その他の含水率の測定手法を排除するものではない。
本実施形態の人工まつげ本体部10は、含水率を調整する成分を含有している。さらに説明すると、人工まつげ本体部10を構成する樹脂(例えば、PBT)は、疎水性材料であるので、樹脂中に水を混練させることが難しく、また、均一に水を含有させることが困難である。また、樹脂中に水が含浸しているというよりか、樹脂とは分離した形態で水が含有されているとすると、水を含有する人工まつげ本体部10から水分が蒸発したり、蒸発しなかったりして、含水率のコントロールが難しく、含水率を一定に制御することが難しくなる。本実施形態の人工まつげ本体部10では、含水率を調整する成分(「含水率調整成分」などと称する)が樹脂12に配合されている。
本実施形態の含水率調整成分は、水分を保持できる成分で、その成分が樹脂12に混練されると、樹脂12中に均一に分散されるような成分であることが好ましい。そのような含水率調整成分は、人工まつげ本体部10の表面10aに露出することができるが、完全に均一に分散されている必要はなく、人工まつげ本体部10の含水率を調整(向上)できるのであれば、人工まつげ本体部10の表面10aに存在して静電気を防止し、人工まつげ本体部10の中心部(コア)には存在していない(または、密度/濃度が少ない)状態であってもよい。なお、含水率調整成分が樹脂12中に均一に分散していなくてよいが、静電気防止機能を果たす観点からは、少なくとも、人工まつげ本体部10の表面(表面部)10aには存在している方が好ましい。
本実施形態の構成において、含水率調整成分は、例えば、水分を保持可能な天然由来高分子成分である。そのような天然由来高分子成分としては、タンパク質(場合によっては、ペプチドも含む)またはタンパク質を含む材料、多糖類または多糖類を含む材料を挙げることができ、種々あるタンパク質または多糖類のうちで、特性/製造プロセス条件にあわせて、適宜好適なものを選択して使用する他、アミノ酸(またはその誘導体)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、寒天、アルギン酸(またはその誘導体)、キチン、キトサンなどを使用することができる。含水率調整成分として、天然由来高分子成分を使用した場合は、天然材料というイメージから、ユーザに安心感を与えることができるが、含水率調整成分としては、水分を保持可能な人工材料(例えば、親水性/水分保持可能な人工高分子材料・親水性ポリマー)を使用することができる。また、水分を保持できる無機材料(例えば、親水性無機材料、酸化金属材料(酸化金属イオン粒子)、金属イオン材料(金属イオン粒子など)を使用することも可能である。さらに、上述した材料の組み合わせ(混合物)を用いることも可能であるし、上述した材料の誘導体(例えば、エステル、修飾基付加、塩など)またはそれらの混合物を用いることも可能である。加えて、人工まつげ本体部10の樹脂12中に良好に含水率調整成分を分散させる観点からは、含水率調整成分は粒子状であることが好ましく、例えば、30μm以下程度の粒径(平均粒径)を有しており、好ましくは、20μm以下(または10μm以下)の粒径のものであって粒径ができるだけ揃っているもの(粒径分布がきれいなもの)がよい。ただし、粒子形態であることや粒径の数字などは、製造/使用するまつげエクステによって好適なものを選択すればよく、それらのものに限定されるものではない。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ100を作製する場合には、図11に示したフローチャートにおける樹脂を用意する工程(工程S10)で、樹脂12の含水率を調整するようにしたらよい。例えば、樹脂12(例えば、PBTなど)に、含水率調整成分(または、吸湿・吸水成分)を入れて混練すればよい。なお、すでに混練した状態の樹脂12を用意してもよい。含水率調整成分には水分を含ませたり、自然に水を吸収した状態で含水率調整成分を使用することも可能である。
本実施形態においては、含水率調整成分は、樹脂(PBT)12を100質量部としたときに、例えば0.01質量部から5質量部までの配合割合(境界値は含む)で、樹脂12に配合される。なお、含水率調整成分の配合割合は、人工まつげ本体部を整列させる工程(S50)、および、人工まつげ本体部10のカールを行う工程(S70)の際における人工まつげ本体部10の含水率にあわせて決定される。したがって、ターゲット(目標)としている所望の含水率に応じ、そして、使用する含水率調整成分の種類(または、含水率調整成分に含まれる水分量)にあわせて、適宜、適切な値(割合、質量)を採用したらよい。なお、少量の含水率調整成分であっても多くの水(水分)を保持することがあるので、含水率調整成分の割合(質量%、または、質量割合)が、水の割合(含水率(%)など)の値になるとは限らない。
本実施形態の構成おいて、人工まつげ本体部10(樹脂12を含む全体の質量)に含有させる含水率調整成分の配合割合(質量%)は10%以下であり、実際の製品における実用性を考慮すると5%以下である。含水率調整成分の配合割合が多すぎると、人工まつげ本体部10を構成する混合物(樹脂12および含水率調整成分が混合された材料)の物性が、樹脂12単独のものと比べて変化してしまい、まつげカール用人工まつげ100のカーブ(湾曲)が出せなくなったり、所定の柔らかさが出なくなったりする可能性がでてくる。本実施形態の一例の含水率調整成分の配合割合(質量%)は、2%以下、または、約1%または1%以下(好適には、1%、または1%程度、例えば1%±0.3%、または1%±0.5%など)である。また、物性の変化を極力抑えるために、上限を1%として、例えば0.5%±0.1%などの範囲で、配合割合を決定してもよい。人工まつげ本体部10のカーブ(湾曲)が出せて、他の条件(柔らかさなど)を満たせるのであれば、含水率調整成分の配合割合は、上記の数字に限定されず、適宜好適なものにしても構わない。なお、本実施形態では、人工まつげ本体部10に全体の質量に対する含水率調整成分の質量を配合割合で表しているが、場合によっては、人工まつげ本体部10全体基準でなく、樹脂12基準の方が配合割合を決める方が便利であれば、樹脂12を100質量部として、含水率調整成分の質量の割合(例えば、10質量部以下)を代用しても構わない。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ100を着色する場合には、含水率調整成分を樹脂12に混合する段階で、樹脂12に顔料を入れて、着色を行うことができる。樹脂12の着色(または染色)は、黒色にすることができる他、例えば、ダークブラウン、パープル、ブルー、ピンク、シルバー、グリーン、ライトオレンジ、ライトゴールド、レッド、ワインレッド、ホワイト、イエローなどの色にすることができる。含水率調整成分と顔料(着色剤)とを同時に樹脂12に混合してもよいし、含水率調整成分を導入した後に顔料を樹脂12に混合してもよい。また、顔料を導入した後に含水率調整成分を樹脂12に混合しても構わない。なお、白または透明の繊維(樹脂繊維)を後から染色することもできる。
ここで、本実施形態の人工まつげ本体部10は、含水率(水分量)が調整されているので、静電気の発生が防止(抑制)されている。なお、典型的なまつげエクステ用繊維3000(含水率調整成分が配合されていない人工まつげ本体部)の場合、まつげエクステ用繊維3000に静電気が発生する。結果として、軽くて細い繊維3000は当該静電気で複数本が密着してしまい、簡単に整列させることができない。加えて、典型的なまつげエクステ用繊維3000(含水率調整成分が配合されていない繊維)の静電気の発生を防止するために、霧吹きなどで繊維3000に水滴をつけたら、軽くて細い繊維3000は水でベタベタになってしまい、整列作業を行うことができなくなってしまう。
一方、本実施形態の構成の場合、静電気の発生がないので、軽くて細い繊維3000であっても、簡単に且つきれいに繊維3000の整列を行うことができる。含水率が制御されていない繊維3000の整列工程を行う場合、この整列工程は、熟練の工員でも、例えば4センチ幅×8センチ幅で6分以上(一例では、6〜10分)かかるが、本実施形態の整列工程の場合、同様のスキルの工員で、例えば3分以下(一例では、2〜3分)で行うことができ、時間は二分の一以下にすることができ、さらに熟練度の低い工員でも、静電気の影響がないので、作業時間は同じように短縮することができる。また、整列工程の際における繊維3000の取り扱いが簡便になるので、不良品発生率を下げることができ、すなわち、歩留まりを向上させることができる。
次に、繊維3000中の含水率に対する静電気体感度、整列時間、および、作業効率の体感変化との関係についての実験結果を図22に示す。本実験は、次のようにして行った。すなわち、カールしていないPBTベースの繊維3000を用意し、整列作業を行い、作業員による静電気体感度、整列時間、作業効率の体感変化を評価した。なお、ここでは、繊維3000の断面形状は円形のもので行った。
含水率(%)が「無」のサンプルは、含水調整成分を混入させていない繊維3000である。ただし、含水調整成分が含有されていなくても、含水率(%)が「無」のサンプルは、周囲の水分・湿度の影響で、0.1%未満(または、0.1%以下)の含水率を示した。含水率(%)が0.20%、0.30%、1.00%、5.00%のサンプルは、含水調整成分を含有(配合)させることで含水率を調整した繊維3000である。室温・湿度および工員の熟練度によるバラツキをできるだけおさえるべく、同一の場所で、同日に同じ時間に2名の工員で整列工程を行い、その工程の際の静電気体感度、整列時間(平均)、作業効率の体感変化を実験により確認した。なお、静電気については、電子機器による測定(数値)よりも、人間の手の感度の方がより意味があるものであるので(すなわち、繊細なものがわかるとともに、整列工程の評価として意味があるので)、そちらを採用した。
図22のテーブルに示すように、まず、含水率が「無」のサンプルでは、静電気体感度は「強」であり、整列時間(平均)は6分30秒であった。これが通常の整列工程である。作業効率の体感としては、整列に静電気が邪魔をするために手直しが2分ほどかかった。
含水率が0.20%のサンプルでは、静電気体感度は「強」であり、整列時間(平均)は5分20秒であった。整列時間は、「無」のサンプルよりも、約1分短縮された(約2割の時間短縮ができた)。静電気体感度の変化としては、静電気の減少の体感はないが、整列の手直しの時間は短縮した。
含水率が0.30%のサンプルでは、静電気体感度は「弱」であり、整列時間(平均)は2分45秒であった。整列時間は、「無」のサンプルよりも、約4分短縮された(約6割の時間短縮ができた)。静電気体感度の変化としては、明らかに整列しやすくなり、手直しの時間は大幅に短縮した。
含水率が1.00%のサンプルでは、静電気体感度は「弱」であり、整列時間(平均)は2分10秒であった。整列時間は、「無」のサンプルよりも、約4分20秒短縮された(約6割以上の時間短縮ができた)。非常に整列しやすくなり、また、部分的な手直しの必要性はほぼゼロになった。
含水率が5.00%のサンプルでは、静電気体感度は「無し」であり、静電気は感じられなくなった。整列時間(平均)は3分00秒であった。整列時間は、「無」のサンプルよりも、約3分30秒短縮された(約5割の時間短縮ができた)。整列はしやすいが、部分的な直しが若干必要となった。
この実施例からわかるように、含水調整成分を配合して含水率を調整した繊維3000の整列工程は大幅に改善した。この実施例では、特に、含水率が0.20%〜5.00%の範囲において整列時間の向上が見られ、含水率が0.30%から1.00%の範囲において手直しの時間がほぼゼロになったか、大幅に短縮できた。
なお、含水率を多くすれば静電気の影響が減るので良いのであるが、その一方で、含水率が高くなればなるほど、カール(10c)を維持する期間は短くなるという関係が本願発明者によって見出された。また、空気中の水分で硬化が開始する接着剤(20)を使用しているので、含水率(水分率)が高すぎる人工まつげ本体部(10)を用いると、接着剤の硬化速度が必要以上に早まるため施術が困難になる。さらに、含水率が高すぎると、含水率が低い場合と比較して、膨張しやすいため、接着剤(20)の破壊につながる可能性があり、それゆえに、人工まつげの装着持続力が低下する可能性を高める。含水率が多くなればなるほど、カール(10c)の維持期間が短くなるという関係があるので、含水率の値に上限を設けることで(すなわち、所定値以下の含水率にすることで)、カール(湾曲)の持続時間をコントロールし、カール形状が崩れて(緩くなって)しまうケースを抑制することができる。本実施形態の構成においては、人工まつげ本体部10中の含水率(質量%)は、10%以下が好ましく、例えば5%以下(場合によっては、3%以下、または、2%以下もしくは1%以下)である。
また、本実施形態の更なる改変として、人工まつげ本体部10に抗菌成分(抗菌剤)を含有させるようにすることもできる。本実施形態の改変例における抗菌成分(抗菌材料)は、金属粒子(例えば、1マイクロメートル以下の金属微粒子(ナノ粒子))、または、金属を含む抗菌剤(金属イオン単独の抗菌剤も含む)から構成されている。例えば、本実施形態の抗菌成分の一例は、銀イオン(Ag+)であり、具体的には、銀ナノ粒子、銀コロイド溶液の粒子(銀コロイド粒子)などである。ここで、抗菌性を有する銀イオン(Ag+)は、例えば、銀イオン水、銀ナノ粒子(銀ナノ粒子が入った銀ナノ溶液)、銀コロイド粒子などの形態で利用することができる。銀イオン(Ag+)は、原子としての銀(Ag)から電子が外れた陽イオンとして存在している銀イオンのことであり、大きさは銀原子とほぼ同じで200ピコメートル程度のいわゆる原子の大きさである。銀ナノ粒子は、銀をナノメートルのオーダーにした粒子である。また、鉱物であるアルミナシリカに微粒子化した銀イオンを保持させた銀ナノ粒子を用いることも可能である。銀コロイド粒子は、コロイド状の銀粒子であり、例えば、脱イオン化された電解液中で半永久的に浮遊状態(コロイド状態)を保持されているものである。銀コロイド粒子の直径は、例えば、0.0001μmのものもあり、その場合は、毛髪の太さ(80μm)の80万分の1の大きさに該当する。
なお、銀イオンは、各種の細菌の細胞に強く吸着し、細菌の細胞酵素をブロッキングして死滅させることができる。したがって、銀イオンによって細菌の繁殖を制御することができる。また、銀イオンは、抗菌効果が比較的強い特徴を有するとともに、人体に対して極めて安全性が高いという特徴を有しており、したがって、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100が間違って人間の口に入ったとしても、銀イオンによる問題は実質的に生じない利点がある。
また、本実施形態の抗菌成分は、銀イオン(Ag+)以外のものを使用することができる。例えば、金コロイド溶液に含まれている金コロイド粒子、または、白金コロイド溶液に含まれている白金コロイド粒子などである。金コロイド粒子は、1マイクロメートル以下の金微粒子(ナノ粒子)が、流体中に分散しているコロイド状態の粒子である。白金コロイド粒子(白金ナノコロイド粒子)は、白金の微粒子によって形成されたコロイド状態の粒子である。なお、本実施形態においてナノ粒子とは、粒径がナノオーダー(例えば、1〜1000nm、または、1〜100nm)の粒子のことを称することがあり、1nm以下の粒子を含む場合もある。このナノ粒子は、比表面積が極めて大きいこと等により、一般的な大きさの固体(バルク)の材料とは異なる性質を示すことがあり、その特性の一つとして、抗菌性を示す場合、抗菌剤として利用することができる。さらに、金属イオンによる抗菌剤について説明したが、抗菌効果を奏する条件において、他の抗菌材料を人工まつげ本体部10に配合することも可能である。例えば、銀イオンのような金属イオンに代えて(または、金属イオン(銀イオン)とともに)、酸化チタンを人工まつげ本体部10に配合させることができる。なお、銀イオン、酸化チタンの他の抗菌材料を用いることも可能である。抗菌材料としては、無機系抗菌剤(金属イオンの静菌作用を利用したもの)、有機系抗菌剤(有機物を利用した抗菌剤。合成系抗菌剤または天然系抗菌剤)を挙げることができる。
本実施形態の改変例における抗菌剤(例えば、銀イオン)の効果は、まつげカール用人工まつげ100をユーザに装着した時の抗菌効果だけでなく、まつげカール用人工まつげ100を保管しておく間も雑菌繁殖を抑制するため衛生的であるという点での抗菌効果もある。
なお、図12に示したまつげカール用人工まつげ100では、断面が円形であるものを示したが、それに限らず、まつげカール用人工まつげ100の断面を多面形(六角形、八角形など)に改変することも可能であるし、断面を星形(六角形の星形、八角形の星形)にすることも可能である。そのようなまつげカール用人工まつげの一例としては、具体的には、図23から図25に示すように、溝34が形成された多角形の星形形状のまつげカール用人工まつげ101にすることができる。
図23は、本実施形態のまつげカール用人工まつげ101の構成を示す斜視図である。図24は、図23中のA−A線に沿った断面図を示している。図25は、図23中のB部分における拡大側面図を示している。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ101では、人工まつげ本体部10は樹脂12から構成されており、そして、人工まつげ本体部10の延長方向65に沿って溝34が延びている。また、図24に示すように、人工まつげ本体部10の断面は、正八角形の構造を有しており、各頂点32の間に溝34が形成されている。より具体的には、人工まつげ本体部10の断面の頂点32は、正八角形の頂点に位置している。したがって、頂点32は45°ごとに形成されている。0°と90°との間の部分で説明すると、0°と45°と90°の位置に頂点32が位置しており、0°と45°との頂点の間に溝34が設けられ、そして、45°と90°との頂点の間にも溝34が設けられている。なお、断面の星形は、六角形でも五角形でも四角形でも、又は三角形を採用しても構わない。
人工まつげ本体部10に形成される溝34の深さTは、太さを100とした場合に、例えば20から40(典型的には30)にすることができる。本実施形態の構成では、溝34は、末端部(根本部)15の端面15aから先端部11まで形成されている。ただし、全領域において溝34を形成しなくても、少なくとも根本部15に形成されていればよい。
本実施形態の構成において、人工まつげ本体部10における断面は、頂点32の間に溝34が位置する多角形状を有している。したがって、人工まつげ本体部10の多角形状の溝34によって、接着剤20を保持することが容易となり、使用者のまつげ50と人工まつげ本体部10との接着性を良好にすることができる。したがって、接着性を良好にすることができる。また、多角形の断面の頂点32の間に溝34が位置しているので、1つの方向だけでなく他の方向からでも、接着剤を保持した溝34を使って、人工まつげ本体部10をまつげ50に接着させることができる。
さらに、人工まつげ本体部10には複数本の溝34が形成されているので、溝34が形成されていないものと比較すると、まつげカール用人工まつげ101の重さ(質量)を軽くすることができる。まつげカール用人工まつげ101の一本一本の重さは軽くても、それらは使用者のまつげに取り付けられるものであるから、まつげカール用人工まつげ101の重さを軽くできることは、使用者(ユーザ)の使用感に影響を与えることができ、その結果、つけ心地の感じのよいまつげカール用人工まつげ101を実現することができる。本実施形態のまつげカール用人工まつげ101では、人工まつげ本体部10の太さや溝34の深さTにも依存するが、複数の溝34がないものと比較して、まつげエクステの重さを例えば10%〜70%程度軽くすることが可能である。
次に、図12に示したまつげカール用人工まつげ100では、人工まつげ本体部10の表面10aに凹凸部やザラザラ部が形成されていないものを示したが、それに限らず、まつげカール用人工まつげ100の表面10aに凹凸部やザラザラ部が形成されているものに改変することも可能である。そのような表面(凹凸部やザラザラ部)を有するまつげカール用人工まつげであっても、本実施形態のメリットを受けることができるからである。そのような人工まつげの一例としては、具体的には、図26から図28に示すように、ザラザラした表面部40を有するまつげカール用人工まつげ102にすることができる。
図26は、本実施形態のまつげカール用人工まつげ102の構成を示す斜視図である。図27は、図26中のA−A線に沿った断面図を示している。図28は、図26中のB部分における拡大断面図を示している。
図示したまつげカール用人工まつげ102では、人工まつげ本体部10の長手方向における中間点よりも根本部15の端面15a側に、ザラザラした表面部40が形成されていが、全領域に形成されていてもよい。ザラザラした表面部40は、まつげ50と接する領域に形成されていればよく、接着剤20が付与される箇所だけに選択的に形成することも可能である。
本実施形態のザラザラした表面部40は、複数の粒状の凹凸41を含んでいる。この粒状の凹凸41からなるザラザラした表面部40は、根本部(末端部)15の全周にわたって形成されている。したがって、根本部15の表面の全方位において、ザラザラした表面部40が形成されており、接着剤20を何れの方向から根本部15に付与しても、ザラザラした表面部40の上に塗布することができる。
本実施形態の構成において、人工まつげ本体部10のザラザラした表面部40は、フロスト加工を施すことによって形成されている。言い換えると、人工まつげ本体部10には、フロスト加工によって生じた凹凸41が形成されている。フロスト加工とは、表面を霜のようにザラザラさせる加工(または、磨りガラスのようにザラザラさせる加工)のことをいい、本実施形態では、サンドブラストによって人工まつげ本体部10に凹凸41を形成する。サンドブラストは、表面に砂などの研磨材を吹き付ける加工方法のことである。例えば、人工まつげ本体部10の根本部15に、コンプレッサによる圧縮空気に研磨剤を混ぜて吹き付けることにより、当該根本部15にザラザラした表面部40を形成することができる。サンドブラストに使用するサンド(研磨材)は、いわゆる砂に限らず、人工まつげ本体部10に凹凸41を形成するのに適した研磨剤を使用することができる。
本実施形態の凹凸41の深さ(凸部から凹部までの高さの差)は、例えば、0.01mm〜0.1mm程度であるが、それに限定されるものではない。具体的には、ザラザラした表面部40を形成するために使用したフロスト加工(例えば、サンドブラスト)の条件によって決定されるとともに、使用するフロスト加工にあわせて適宜好適な凹凸41を形成することが可能である。
加えて、人工まつげ本体部10に貫通孔を形成して、その貫通孔によって、ザラザラした表面部40を形成することも可能である。その場合には、凹凸41を構成する貫通孔の長さは、人工まつげ本体部10の直径φに相当するものになる。また、貫通孔を形成した場合には、まつげカール用人工まつげ102の重さ(質量)を軽くすることができるという利点も得られる。まつげカール用人工まつげ102の一本一本の重さは軽くても、それらは使用者のまつげに取り付けられるものであるから、人工まつげの重さを軽くできることは、使用者(装着者)の装着感に影響を与えることができ、その結果、つけ心地の感じのよいまつげカール用人工まつげを実現することができる。
本実施形態のザラザラした表面部40は、ヤスリ(具体的には、紙ヤスリ)を擦りつけることによって形成することができる。紙ヤスリは、研磨加工に用いる紙状のシートに研磨材を塗布した工具である。紙ヤスリによって、ザラザラした表面部40を形成する場合、使用する紙ヤスリの粗さ(番手)によって、ザラザラした表面部40の凹凸41の形状・深さなどを調整することができる。
人工まつげ本体部10の根本部15にザラザラした表面部40を形成する場合、多数の人工まつげ本体部10を揃えて、次いで、サンドブラストを根本部15に施すことにより、一度の処理で、ザラザラした表面部40を有する人工まつげ本体部10を多数形成することができる。また、多数の人工まつげ本体部10を揃えた状態で(例えば、図9又は図10に示した繊維3000または廃棄繊維3500の状態で)、根本部15に紙ヤスリを施すことにより、一度の処理で、ザラザラした表面部40を有する人工まつげ本体部10を多数形成することも可能である。もちろん、一本の人工まつげ本体部10に紙ヤスリを施して、ザラザラした表面部40を形成しても構わない。加えて、本実施形態のまつげカール用人工まつげ102は、ザラザラした表面部40(凹凸41)はレーザ照射によって形成してもよい。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ102では、人工まつげ本体部10の根本部15(または、場合よっては先端部11)はザラザラした表面部40を有しているので、当該ザラザラした表面部40によって、接着剤20を保持することが容易となり、使用者のまつげ50と人工まつげ本体部10との接着性を良好にすることができる。すなわち、上述したまつげカール用人工まつげ100の効果に加えて、さらに接着性を良好にすることができる。さらに説明すると、本実施形態のまつげカール用人工まつげ102の場合、ザラザラした表面部40により、平滑の場合の表面と比較して表面積が増えたことによって(あるいは、凹凸41によって)接着剤20の保持がよく、それゆえに、接着剤20の付きがよい。
また、上述した例では、人工まつげ本体部10の形状を星形にしたり、ザラザラした表面40にしたりして、接着力を増すようにしたが、凹凸・ザラザラにするような人工まつげ本体部10の改変(凹凸、ざらざら)は、加熱、加圧、レーザ照射などの手法を用いて(あるいは、それらを組み合わせて)、線または線状のものを、人工まつげ本体部10の表面に形成することによって行うことができる。凹凸・ざらざらのための線(線分)は、人工まつげ本体部10の長手方向に沿って形成してもよいし、人工まつげ本体部10の長手方向でない側の方向(例えば、円周方向、斜め方向)に形成してもよい。
さらに、図12に示したまつげカール用人工まつげ100では、断面が円形であるものを示して、上述の例では、まつげカール用人工まつげ100の断面を多面形(六角形、八角形など)のもの、断面を星形(六角形の星形、八角形の星形)にしたものを示したが、断面を大きく扁平にした形状のものにしてもよい。具体的には、図29から図31に示すように、扁平形状のまつげカール用人工まつげ102にすることができる。
図29は、本実施形態のまつげカール用人工まつげ102の構成を示す斜視図である。図30は、図29中のA−A線に沿った断面図を示している。図31は、図29中のB部分における拡大側面図を示している。図29に示したまつげカール用人工まつげ102ででは、人工まつげ本体部10の表面は、ザラザラした表面部40を有しているが、ザラザラした表面部40でなく平滑な表面のものであっても構わない。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ102を構成する人工まつげ本体部10の断面形状は扁平形状を有しており、図30に示すように、扁平形状の幅(W)に対して厚さ(T)が半分以下の寸法である。言い換えると、本実施形態の人工まつげ本体部10の断面は、図12に示したまつげカール用人工まつげ100の円形(略円形)の形状のもよりも、顕著に平べったくなっている。
本実施形態の構成において、扁平形状の厚さ(T)を規定する上面10aと下面(上面10aの反対側の面)とは、実質的に平行な面となっている。なお、人工まつげ本体部10は全体的に湾曲しているので、上面10aと下面は水平面に延びる平行面というわけではなく、互いに相対的に平行な面(略平行面)となっているものである。また、扁平形状の幅(W)を規定する側面10b(左側面、右側面)とは、実質的に対称形になるように構成されている。図示した例では、側面10bは、円形の外縁の一部(円弧)であるが、他の形状にすることも可能である。また、側面10b(左側面、右側面)を実質的に平面(断面で略直線)にしてもよいし、非対称の構造のものにすることも可能である。
本実施形態のまつげカール用人工まつげ102では、扁平形状の幅(W)を100単位としたときの厚さ(T)は例えば50単位以下、典型的には40単位以下である。図示した例では、幅(W)0.2mm、厚さ(T)0.07mmの構成例を模式的に示しており、その場合は、扁平形状の幅(W)を100単位としたときの厚さ(T)は35単位になるが、それ未満の扁平形状(例えば、30単位以下、25単位以下)にすることも可能である。なお、扁平形状の幅(W)に対して厚さ(T)が半分以下の寸法であれば、絶対的な寸法(mm)も含めて、他の割合にすることも可能である。
本実施形態では、工程S20の金型の押出口(開口部)を、扁平形状のものにしている。すなわち、本実施形態の金型の開口部は、幅寸法(W)に対して縦寸法(T)が半分以下の寸法を有する扁平形状の開口部である。これにより、扁平形状のまつげエクステ用繊維を得ることができる。また、工程S20において、円形(または略円形)の開口部を有する金型を用いて、円形形状のまつげエクステ用繊維を作製した後に、そのまつげエクステ用繊維を加工して、扁平形状のまつげエクステ用繊維(または、所定長さの人工まつげ本体部)を得ることも可能である。具体的には、円形形状のまつげエクステ用繊維の上面/下面を除去(カット、研磨など)することで、扁平形状のまつげエクステ用繊維に加工することができる。
加えて、上述した実施形態まつげカール用人工まつげでは、人工まつげ本体部10を構成する樹脂12を、専らポリブチレンテレフタレート(PBT)としたが(例えば、95%以上)、それに変更を加えることができる。例えば、人工まつげ本体部10を構成する樹脂12を、ポリブチレンテレフタレート(PBT)と、ポリブチレンテレフタレートよりも低温で変性する低温変性樹脂材料とから構成することができる。ここで、樹脂の全体を100質量%としたときに、低温変性樹脂材料が50質量%以上含まれるようにすると、一度、湾曲部10cが形成された人工まつげ本体部10(または、湾曲部10cが形成されていない人工まつげ本体部10)を、まつげカーラー(ビューラー)によって所望のカール(第2のカール)の曲率に変更することができる。ポリブチレンテレフタレートよりも低温で変性する低温変性樹脂材料は、例えば、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)などである。これらのうちの1種の材料(低温変性樹脂材料)を用いてもよいし、いくつかの種類を混ぜた材料(低温変性樹脂材料)を用いてもよい。ポリブチレンテレフタレートよりも低温で変性する低温変性樹脂材料の温度特性は、例えば、高分子のガラス転移点(ガラス転移点)によって決定することができるが、物理的・化学的な特性も重要であるが、それとともに、まつげカーラーによって変性するかどうかの温度がポイントとなる。低温変性樹脂材料が50質量%以上含まれているとすれば、その具体的に割合は適宜好適なものを採用することができる。
まつげカール用人工まつげ100、101、102(人工まつげ本体部10)が専らポリブチレンテレフタレート(PBT)から構成されている場合は、人工まつげ本体部10に湾曲部(カール)10cを施すのに、180℃前後の温度で20分から90分の加熱を、毛の太さ別に行う。このカール加熱処理を行った後は、再度のカール変更を行うことは難しく、仮に二度目のカールを行ったとしても高精度のカール形状の制御を行うことは困難である。また、まつげカール用人工まつげ(人工まつげ本体部10)が専らポリブチレンテレフタレート(PBT)から構成されている場合、比較的低温(120°前後)でカールを作るまつげ用ホットカーラー(ビューラー)では、人工まつげ本体部10に湾曲部(カール)10cを施すことはできない。ここで、本実施形態の改変例の構成によれば、人工まつげ本体部10を構成する樹脂12に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とともに、低温変性樹脂材料が含まれているので、比較的低温(120°前後)でカールを作るまつげ用ホットカーラー(ビューラー)でも、人工まつげ本体部10のカールの曲率を変更することができる。
さらに説明すると、人工まつげ本体部10を構成する樹脂12において低温変性樹脂材料が50%以上含まれている場合、例えば120℃以下の温度の加熱式まつげカーラー(または、加圧式まつげカーラー)を用いて、カールの弱い人工まつげ(例えば図19(a)参照)、少し強い人工まつげ(例えば図19(b)参照)、少し強い人工まつげ(例えば図19(c)参照)、非常に強い人工まつげ(例えば図19(d)参照)に調整することができる。これにより、カールの度合い別の人工まつげ(例えば、図16(a)〜(d)のまつげカール用人工まつげ100A〜100D)を在庫として用意しておく必要がなくなる。特に、まつげエクステ1000の補強として、まつげカール用人工まつげ100を使用する場合は、ユーザの細かい要求(趣味、好み)にあわせたカールを持った地まつげ100をそのユーザに装着することもできて便利である。
なお、本実施形態の改変例のまつげカール用人工まつげの場合、人工まつげ本体部10を構成する樹脂12において低温変性樹脂材料が含まれているので(少なくとも40%、典型的には50%以上)、製造時のカール工程(図11の工程S70)において、溶けてしまうおそれがある。そこで、金属パイプ(例えば、アルミパイプ)を加熱源として、そのパイプに人工まつげ本体部10(3500)を巻き付けて、カールを施す場合、溶けないようにしっかりと温度調整を行っておくことが好ましい。そのような温度調整を行う場合、金属パイプ(または、それに適用するヒーター)の熱伝導率(または、抵抗率)の調整しておくことが好ましい。
製造後の人工まつげ本体部10にカールを施す場合(すなわち、二度目のカール)は、円形のまつげカール用人工まつげ100よりも、図29に示した扁平形状のまつげカール用人工まつげ102の方が、所望のカールを付けやすい。ただし、扁平形状以外のまつげカール用人工まつげ100(101、102)でも、後からカール(二度目のカール)を施すことは可能である。
また、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100(101〜102)においては、人工まつげ本体部10の径が、先端部11から末端部15まで実質的に同一の太さのものについて示してきたが、一般的なまつげエクステ用人工毛の毛先部分をカットした廃棄原料を使用するため、先端部10から末端部11の径の太さは±50%程度の差異があってもよい。また、各人工まつげ10の構造(寸法・形状など)は均等でなくてもよい。また、廃棄繊維3500を回収した後に、廃棄繊維3500の端部を加工しても構わない。廃棄繊維3500の端部を加工する場合には、廃棄繊維3500の端部にアルカリ処理を施して繊維(人工まつげ本体部10)の径(直径)を小さくするようにしてもよい。あるいは、廃棄繊維3500の端部に加熱処理を施して、繊維(人工まつげ本体部10)の形状を変えたり(例えば、扁平形状にしたり、径を小さくしたり)、または、廃棄繊維3500の端部にカット処理を施して(例えば、切断器具による物理的な切断を実行して)、繊維の形状を変えたり(例えば、扁平形状にしたり、径を小さくしたり)してもよい。加えて、図8に示した状態においてまつげエクステ用繊維3000の先端3111を少し深く溶かして、切断して廃棄する根本部(廃棄繊維)3500の一部が細くなっているような形態にして、その廃棄繊維3500から、まつげカール用人工まつげ100を製造するようにしても構わない。また、まつげエクステ用繊維3000の状態でカールをしておいてから、カールがかかった廃棄繊維3500を用いて、まつげカール用人工まつげ100を作製しても構わない。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、図16に示した例では、上まつげ50にまつげカール用人工まつげ100を装着したが、下まつげにまつげカール用人工まつげ100を装着しても構わない。加えて、まつげエクステンション1000のように、地まつ毛(人毛)50にパーマやカールを施してから、本実施形態のまつげカール用人工まつげ100を装用してもよい。また、上述した改変例の形態を、相互に(矛盾しない限り)適用することも可能である。さらに、上述した例では、1本のまつげ50に、1本のまつげカール用人工まつげ100を装着したが、複数本(2本とか3本、4本とか)の人工まつげ本体部10が一つのまつげカール用人工まつげ100になった構成のもの(枝分かれしたまつげエクステ、二股になったまつげエクステなど)を、まつげ50に装着してもよい。
加えて、上述の実施形態では、まつげカール用人工まつげ100を接着剤20で直接まつげ50に装着する形態について説明してきたが、つけまつげの形態(商品)にも適用可能である。すなわち、本発明の実施形態に係る技術は、カール(10c)が形成された人工まつげ本体部10を含む人工まつげ(「つけまつげ」を含む)に用いることができる。図32は、本実施形態に係るつけまつげ105の構成を示している。つけまつげ105は、本実施形態の人工まつげ本体部10と、それを接続する接続繊維部(支持部)19とから構成されている。つけまつげ105の人工まつげ本体部10でもカール(10c)は施されている。つけまつげは、まつげエクステ1000よりもさらにコスト低下の要請が強く求められるので、本実施形態の人工まつげの技術(人工まつげ本体部10の廃棄物再利用生産技術)は、つけまつげにも好適に適用することができる。なお、上述の実施形態および第2実施形態の区分けは便宜上のものであり、本発明の実施形態において開示した各特徴は、つけまつげ105の特徴も含めて相互に適用できるものである。
本発明によれば、装用した人のまつ毛(地まつ毛)の角度を変えてマスカラのようなボリュームも出すことができる人工まつげ(まつげカール用人工まつげ)の製造方法を提供するができる。
10 人工まつげ本体部
10c 湾曲部
11 先端部
12 樹脂
15 末端部
15 根本部
19 接続繊維部(支持部)
20 接着剤
32 頂点
34 溝
40 ザラザラした表面部
41 凹凸
50 地まつげ
60 ピンセット
100 まつげカール用人工まつげ
101、102 まつげカール用人工まつげ
105 つけまつげ
1000 まつげエクステンション
1500 ブロック
3000 まつげエクステンション用繊維
3100 バンド
3200 平板
3300 重石
3400 テープ
3500 廃棄繊維(根本部)
10c 湾曲部
11 先端部
12 樹脂
15 末端部
15 根本部
19 接続繊維部(支持部)
20 接着剤
32 頂点
34 溝
40 ザラザラした表面部
41 凹凸
50 地まつげ
60 ピンセット
100 まつげカール用人工まつげ
101、102 まつげカール用人工まつげ
105 つけまつげ
1000 まつげエクステンション
1500 ブロック
3000 まつげエクステンション用繊維
3100 バンド
3200 平板
3300 重石
3400 テープ
3500 廃棄繊維(根本部)
Claims (19)
- 人工まつげの製造方法であって、
樹脂から構成された繊維状の材料を切断する工程と、
前記切断した繊維状の材料の一端を溶解させることによって、先端部を有するエクステンション用人工まつげ本体部を形成する工程と、
前記エクステンション用人工まつげ本体部の先端部を基準にして、前記エクステンション用人工まつげ本体部を整列させる工程と、
前記エクステンション用人工まつげ本体部の根本部を切断することによって、前記エクステンション用人工まつげ本体部の末端部を揃える工程と、
前記エクステンション用人工まつげ本体部の末端部から分離された廃棄繊維を回収する工程と、
前記廃棄繊維を所定長さに切断する工程と
を含む、製造方法。 - 前記所定長さに切断された前記廃棄繊維は、当該廃棄繊維の先端部から末端部まで実質的に同一の径を有しており、
前記所定長さに切断された前記廃棄繊維に対してカールを行う工程を実行する、請求項1に記載の製造方法。 - 前記繊維状の材料を切断する工程において、前記繊維状の材料は25mm以上50mm以下の長さを有し、
前記廃棄繊維を回収する工程における前記廃棄繊維の長さは、13mm以上38mm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。 - 前記廃棄繊維を回収した後、前記廃棄繊維の端部を加工する工程を実行する、請求項1から3の何れか一つに記載の製造方法。
- 前記廃棄繊維の端部を加工する工程において、前記廃棄繊維の端部には、アルカリ処理、加熱処理、および、カット処理からなる群から選択される少なくとも一つの処理が実行される、請求項4に記載の製造方法。
- 前記エクステンション用人工まつげ本体部の末端部を揃える工程の後、前記エクステンション用人工まつげ本体部の先端部が基準線に対して±0.5mmの範囲内で収まっているように整列した形態で、前記エクステンション用人工まつげ本体部を台紙に貼り付ける工程を実行する、請求項1から5の何れか一つに記載の製造方法。
- 前記繊維状の材料は、含水率を調整する成分が配合された樹脂から構成されており、
前記含水率を調整する成分は、水分を保持可能な天然由来高分子成分から構成されており、
前記天然由来高分子成分は、前記樹脂に分散して配合されている、請求項1から6の何れか一つに記載の製造方法。 - 前記繊維状の材料を構成する前記樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、および、前記ポリブチレンテレフタレートよりも低温で変性する低温変性樹脂材料を含んでおり、
前記樹脂の全体を100質量%としたときに、前記低温変性樹脂材料は50質量%以上含まれている、請求項1から7の何れか一つに記載の製造方法。 - まつげカール用人工まつげであって、
先端部と末端部とを有する人工まつげ本体部と、
前記人工まつげ本体部に形成された湾曲部と
を備え、
前記人工まつげ本体部は、樹脂から構成されており 、
前記人工まつげ本体部 の長手方向長さは、3mm以上20mm以下であり、
前記人工まつげ本体部は、前記先端部から前記末端部まで実質的に同一の径を有している、まつげカール用人工まつげ。 - 前記人工まつげ本体部を構成する樹脂は、含水率を調整する成分を含有している、請求項9に記載のまつげカール用人工まつげ。
- 前記含水率を調整する成分は、水分を保持可能な天然由来高分子成分から構成されており、
前記天然由来高分子成分は、前記樹脂に分散して配合されており、
前記天然由来高分子成分は、前記樹脂を100質量部としたときに0.01質量部から5質量部までの配合割合で、前記樹脂に配合されている、請求項10に記載のまつげカール用人工まつげ。 - 前記人工まつげ本体部を構成する樹脂は、抗菌成分を含有している、請求項9から11の何れか一つに記載のまつげカール用人工まつげ。
- 前記抗菌成分は、金属を含む抗菌剤から構成されている、請求項12に記載のまつげカール用人工まつげ。
- 前記樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、および、前記ポリブチレンテレフタレートよりも低温で変性する低温変性樹脂材料を含んでおり、
前記樹脂の全体を100質量%としたときに、前記低温変性樹脂材料は50質量%以上含まれている、請求項9から13の何れか一つに記載のまつげカール用人工まつげ。 - 前記人工まつげ本体部は、黒色、ダークブラウン、パープル、ブルー、ピンク、シルバー、グリーン、ライトオレンジ、ライトゴールド、レッド、ワインレッド、ホワイトおよびイエローからなる群から選択される色で着色されている、請求項9から14の何れか一つに記載のまつげカール用人工まつげ。
- 前記人工まつげ本体部は、粗面化した表面を有している、請求項9から15の何れか一つに記載のまつげカール用人工まつげ。
- 前記人工まつげ本体部の断面形状は、扁平形状または星形形状を有している、請求項9から16の何れか一つに記載のまつげカール用人工まつげ。
- さらに、前記まつげカール用人工まつげの前記末端部を連結する支持部を備えている、請求項9から16の何れか一つに記載のまつげカール用人工まつげ。
- まつげカール用人工まつげの取付け方法であって、
請求項9から17の何れか一つに記載のまつげカール用人工まつげを用意する工程と、
前記人工まつげ本体部の前記末端部に接着剤を塗布する工程と、
前記人工まつげ本体部の末端部に前記接着剤が塗布された状態で、前記接着剤をまつげに付ける工程と
を含む、まつげカール用人工まつげの取付け方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017061992A JP2018162548A (ja) | 2017-03-27 | 2017-03-27 | 人工まつげの製造方法、人工まつげおよび人工まつげの取付け方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN114727678A (zh) * | 2019-11-12 | 2022-07-08 | 欧莱雅 | 一排人造睫毛的制造方法 |
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JPS57501218A (ja) * | 1980-08-06 | 1982-07-15 | ||
JP2012092491A (ja) * | 2010-09-03 | 2012-05-17 | Matsukaze Co Ltd | 人工まつげおよび人工まつげの取り付け方法 |
JP2015081387A (ja) * | 2013-10-21 | 2015-04-27 | 暁 若林 | 付け睫毛保持部材および付け睫毛の装着方法 |
JP2016040416A (ja) * | 2012-11-29 | 2016-03-24 | 株式会社フロンティア | 人工毛と地毛との接着性を増大するための処理剤及び処理方法 |
JP2016183424A (ja) * | 2015-03-25 | 2016-10-20 | 株式会社松風 | まつげエクステンションの製造方法、まつげエクステンションおよびまつげエクステンションの取付け方法 |
-
2017
- 2017-03-27 JP JP2017061992A patent/JP2018162548A/ja active Pending
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