JP2014094423A - 立方晶窒化硼素超高圧焼結材料製インサート - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性、耐欠損性にすぐれ、仕上げ面粗さの低下を防止した立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサートを提供する。
【解決手段】切れ刃が立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成された立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサートにおいて、該切れ刃の前切れ刃境界より横切れ刃側にかけては、立方晶窒化硼素の含有量が55容量%以上である高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成し、一方、前切れ刃境界から稜線にかけては、上記高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体より立方晶窒化硼素の含有量が10容量%以上少ない低含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成し、上記高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体と上記低含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体が一体焼結されている立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサート。
【選択図】図2
【解決手段】切れ刃が立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成された立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサートにおいて、該切れ刃の前切れ刃境界より横切れ刃側にかけては、立方晶窒化硼素の含有量が55容量%以上である高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成し、一方、前切れ刃境界から稜線にかけては、上記高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体より立方晶窒化硼素の含有量が10容量%以上少ない低含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成し、上記高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体と上記低含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体が一体焼結されている立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサート。
【選択図】図2
Description
本発明は、切れ刃部を立方晶窒化硼素基超高圧焼結体(以下、「cBN焼結体」で示す)で構成した耐摩耗性、耐欠損性にすぐれ、仕上げ面粗さの低下を防止したcBN焼結体インサートに関する。
従来から、cBN焼結体は、すぐれた耐久性、熱安定性、熱伝導性を有し、衝撃抵抗、摩擦係数にも優れることが知られており、さらに、鉄系材料との親和性が低いことから、これらの特性を生かし、鋼、鋳鉄等の鉄系被削材の切削工具材料として用いられている。
例えば、特許文献1には、焼入れ鋼の高精度加工に用いられるcBN焼結体工具であって、焼結体を切れ刃部分とし、焼結体のcBN含有率を20〜80体積%とするとともに、被削材と接触する切れ刃部分において、切込みが最大となる点から、送り方向の切れ刃は切り込み量のx%(但し、xは10以上50以下)、送りと反対方向の切れ刃は切り込み量のy%(但し、yは10以上)をcBN単結晶体で構成し、被削材と接触する他の切れ刃部分をcBN多結晶体で構成することにより、耐摩耗性を改善し、被削材の面粗度の悪化や筋の発生の抑制を図ったcBN焼結体工具が提案されている。
特許文献2には、cBN焼結体を切れ刃部分とし、焼結体のcBN含有率を20〜99体積%としたcBN焼結体工具であって、被削材と接触する切れ刃部分において、切込みが最大となる点から、送り方向の切れ刃が、切り込み量のx%(但し、xは60以上99以下)からy%(但し、yは101以上)までをcBN単結晶体で構成し、被削材と接触する他の切れ刃部分をcBN多結晶体で構成することにより、鋳鉄の粗加工や、耐熱合金等の難削材料の切削加工に際し、横切れ刃境界部を含む横切れ刃部分の損傷を低減したcBN焼結体工具が提案されている。
また、特許文献3には、cBN焼結体の耐摩耗性、耐欠損性等を高めるために、周期律表第4,5および6族金属の群から選ばれる少なくとも1種の金属元素の炭化物と、周期律表第4,5および6族金属の群から選ばれる少なくとも1種の金属元素の窒化物とが共存する結合相を有するcBN焼結体を、チップ本体のコーナ部に設けられたチップ取付座にロウ付けしたcBN焼結体工具が開示されている。
そして、このcBN焼結体工具によれば、cBN粒子の脱落と結合相の摩耗、脱落とを同時に抑制できることから、耐摩耗性が高く、かつ、耐欠損性に優れることが示されている。
そして、このcBN焼結体工具によれば、cBN粒子の脱落と結合相の摩耗、脱落とを同時に抑制できることから、耐摩耗性が高く、かつ、耐欠損性に優れることが示されている。
前記特許文献1および特許文献2で示されたcBN焼結体インサートは、特に、刃先強度と仕上げ面粗さの改善にcBN単結晶を活用することを提案するものであるが、実際の切削加工に供した場合、予想以上に摩耗が激しくなるため、耐摩耗性の点では十分満足できるものであるとはいえなかった。
また、前記特許文献3においては、cBN焼結体の結合相に着目し、結合相として特定の金属元素の炭化物と、特定の金属元素の窒化物とを共存させた場合に、結合相の強度およびcBN粒子との密着力の強化を同時に達成することができ、その結果、cBN粒子の脱落と結合相の摩耗、脱落の進行を同時に抑制して、耐摩耗性及び耐欠損性を改善できるとしているが、切削加工時の切れ刃の摩耗形態についてまでは解明されておらず、また、その対策も取られていなかったために、クレータ摩耗の発生、あるいは、逃げ面摩耗の発生により工具寿命は依然として短命であった。
本発明の目的は、上記従来の立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサート(以下、「cBN焼結体インサート」で示す)の問題点を解決し、耐欠損性にすぐれ、また、仕上げ面粗さの低下を抑制するとともに、長期の使用に亘って優れた耐摩耗性を発揮するcBN焼結体インサートを提供せんとするものである。
また、前記特許文献3においては、cBN焼結体の結合相に着目し、結合相として特定の金属元素の炭化物と、特定の金属元素の窒化物とを共存させた場合に、結合相の強度およびcBN粒子との密着力の強化を同時に達成することができ、その結果、cBN粒子の脱落と結合相の摩耗、脱落の進行を同時に抑制して、耐摩耗性及び耐欠損性を改善できるとしているが、切削加工時の切れ刃の摩耗形態についてまでは解明されておらず、また、その対策も取られていなかったために、クレータ摩耗の発生、あるいは、逃げ面摩耗の発生により工具寿命は依然として短命であった。
本発明の目的は、上記従来の立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサート(以下、「cBN焼結体インサート」で示す)の問題点を解決し、耐欠損性にすぐれ、また、仕上げ面粗さの低下を抑制するとともに、長期の使用に亘って優れた耐摩耗性を発揮するcBN焼結体インサートを提供せんとするものである。
本発明者らは、cBN焼結体を切れ刃とするcBN焼結体インサートにおいて、cBN焼結体中のcBN含有割合と切れ刃の摩耗形態との関連について鋭意検討したところ、以下の知見を得た。
即ち、cBN焼結体は、cBNの含有割合によって摩耗形態が異なり、例えば、cBN含有割合の高い材種は、耐クレータ摩耗性に優れるとともに強度も高いが逃げ面摩耗(例えば、前切れ刃境界摩耗)の進行が速く、一方、cBN含有割合の少ない材種は、耐逃げ面摩耗性には優れているが、耐クレータ摩耗性、強度の点で劣ることから、これらの2つの相反する特性を切削工具に生かすためには、切れ刃の刃先コーナRから横切れ刃側にかけては、cBN高含有割合のcBN焼結体を配し、一方、仕上げ面粗さを決定する刃先コーナRの前切れ刃境界から稜線にかけては、cBN低含有割合のcBN焼結体を配するとともに、さらに、cBN高含有割合のcBN焼結体と低含有割合のcBN焼結体を超高圧下で一体焼結することによって、耐摩耗性、強度に優れるとともに、上記cBN含有率の異なるcBN焼結体をロウ付け接合した場合に生じる接合界面での異常摩耗や界面付近でのチッピング発生を防止可能なcBN焼結体インサートが得られることを見出したのである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「WC基超硬合金基体に対して、立方晶窒化硼素基超高圧焼結体からなる切れ刃材料を切れ刃として固着接合した立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサートにおいて、
該切れ刃の前切れ刃境界より横切れ刃側にかけては、立方晶窒化硼素の含有量が55容量%以上である高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成し、一方、前切れ刃境界から稜線にかけては、上記高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体より立方晶窒化硼素の含有量が10容量%以上少ない低含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成し、上記高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体と上記低含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体が一体焼結されていることを特徴とする立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサート。」
を特徴とするものである。
なお、cBN含有量(容量%)の測定には、以下の方法を用いた。
走査電子顕微鏡にて観察した二次電子像を、画像処理によりcBN粒子を抜き出し、画像解析によりその総面積を算出した値を、画像総面積で除して面積比率を算出することにより、その面積比率でcBN粒子の含有割合を規定する。走査電子顕微鏡の5,000倍、10,000倍の画像の各3視野を上記方法にて処理した値の平均値を測定結果とする。
「WC基超硬合金基体に対して、立方晶窒化硼素基超高圧焼結体からなる切れ刃材料を切れ刃として固着接合した立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサートにおいて、
該切れ刃の前切れ刃境界より横切れ刃側にかけては、立方晶窒化硼素の含有量が55容量%以上である高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成し、一方、前切れ刃境界から稜線にかけては、上記高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体より立方晶窒化硼素の含有量が10容量%以上少ない低含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成し、上記高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体と上記低含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体が一体焼結されていることを特徴とする立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサート。」
を特徴とするものである。
なお、cBN含有量(容量%)の測定には、以下の方法を用いた。
走査電子顕微鏡にて観察した二次電子像を、画像処理によりcBN粒子を抜き出し、画像解析によりその総面積を算出した値を、画像総面積で除して面積比率を算出することにより、その面積比率でcBN粒子の含有割合を規定する。走査電子顕微鏡の5,000倍、10,000倍の画像の各3視野を上記方法にて処理した値の平均値を測定結果とする。
以下に、本発明について、詳細に説明する。
図1に、cBN焼結体インサートの概略平面図を示すが、本発明のcBN焼結体インサートは、切れ刃1を構成するcBN焼結体切れ刃材料と、該切れ刃を固着保持するWC基超硬合金基体2とからなっている。なお、切れ刃1形状は一般的なものであり本発明の詳細切れ刃形状の幾つかの例を図2〜図4に示す。
図2(a)〜(d)に、本発明のcBN焼結体インサートの作製工程の概略図を示す。
図1、図2を参照して、本発明のcBN焼結体インサートの作製工程の概略を説明する。
図2(a)〜(d)に示すように、切れ刃1を構成するcBN焼結体切れ刃材料は、cBN含有量が55容量%以上である高含有cBN材料A(11)と該高含有cBN材料A(11)よりcBNの含有量が10容量%以上少ない低含有cBN材料B(12)からなる。
本発明では、切れ刃1の作製にあたり、まず、高含有cBN材料A(11)からなる予備焼結体と、低含有cBN材料B(12)からなる予備焼結体をそれぞれ作製し、これを、WC基超硬合金基体材料C(2)上に積層して載置し、超高圧高温処理を施して、全体を一体焼結した切れ刃用焼結体を得る(図2(a)参照)。
次いで、この切れ刃用焼結体をワイヤ放電加工機で短冊形状に切断し(図2(b)参照)、さらに、WC基超硬合金基体に形成した凹所に合致するような所定形状に整え、高含有cBN焼結体11、低含有cBN焼結体12およびWC基超硬合金焼結体13からなる切れ刃片を作製する(図2(c)参照)。
次いで、上記切れ刃片をWC基超硬合金基体に形成した凹所に取り付け、切れ刃片をろう付でWC基超硬合金基体に接合する(図2(d)参照)ことにより、本発明のcBN焼結体インサートを作製する。
図3、図4は、本発明のcBN焼結体インサートの切れ刃部の別の態様を示し、図中、21,31は高含有cBN焼結体を示し、22,32は低含有cBN焼結体を示し、さらに、23,33はWC基超硬合金焼結体を示す。
図2(a)〜(d)に、本発明のcBN焼結体インサートの作製工程の概略図を示す。
図1、図2を参照して、本発明のcBN焼結体インサートの作製工程の概略を説明する。
図2(a)〜(d)に示すように、切れ刃1を構成するcBN焼結体切れ刃材料は、cBN含有量が55容量%以上である高含有cBN材料A(11)と該高含有cBN材料A(11)よりcBNの含有量が10容量%以上少ない低含有cBN材料B(12)からなる。
本発明では、切れ刃1の作製にあたり、まず、高含有cBN材料A(11)からなる予備焼結体と、低含有cBN材料B(12)からなる予備焼結体をそれぞれ作製し、これを、WC基超硬合金基体材料C(2)上に積層して載置し、超高圧高温処理を施して、全体を一体焼結した切れ刃用焼結体を得る(図2(a)参照)。
次いで、この切れ刃用焼結体をワイヤ放電加工機で短冊形状に切断し(図2(b)参照)、さらに、WC基超硬合金基体に形成した凹所に合致するような所定形状に整え、高含有cBN焼結体11、低含有cBN焼結体12およびWC基超硬合金焼結体13からなる切れ刃片を作製する(図2(c)参照)。
次いで、上記切れ刃片をWC基超硬合金基体に形成した凹所に取り付け、切れ刃片をろう付でWC基超硬合金基体に接合する(図2(d)参照)ことにより、本発明のcBN焼結体インサートを作製する。
図3、図4は、本発明のcBN焼結体インサートの切れ刃部の別の態様を示し、図中、21,31は高含有cBN焼結体を示し、22,32は低含有cBN焼結体を示し、さらに、23,33はWC基超硬合金焼結体を示す。
(a)高含有cBN焼結体:
超高圧焼結材料製工具基体中のcBNは、きわめて硬質で、焼結材料中で分散相を形成し、そしてこの分散相によって耐摩耗性の向上が図られる。
しかし、cBN焼結体インサートにおけるcBN含有割合によって、クレータ摩耗と逃げ面摩耗に対する挙動が異なっていることから、切れ刃の位置に応じてcBN含有割合を変化させることが必要となってくる。
つまり、切れ刃の刃先コーナRから横切れ刃側にかけては、cBN高含有割合の高含有cBN焼結体を配することが必要であり、これによって、切れ刃の強度を高めることができると同時に耐クレータ摩耗性を高めることができる。
ここで、cBN高含有割合の高含有cBN焼結体におけるcBN含有割合が55容量%未満であると、強度改善効果が少ないばかりか、すぐれた耐クレータ摩耗性を確保することができず、一方、cBN含有割合が多くなりすぎるとcBN焼結体の焼結性が低下し、この結果切れ刃に欠損が生じやすくなることから、cBN含有割合は、最大でも80容量%とすることが好ましく、70容量%以下であることがより好ましい。
超高圧焼結材料製工具基体中のcBNは、きわめて硬質で、焼結材料中で分散相を形成し、そしてこの分散相によって耐摩耗性の向上が図られる。
しかし、cBN焼結体インサートにおけるcBN含有割合によって、クレータ摩耗と逃げ面摩耗に対する挙動が異なっていることから、切れ刃の位置に応じてcBN含有割合を変化させることが必要となってくる。
つまり、切れ刃の刃先コーナRから横切れ刃側にかけては、cBN高含有割合の高含有cBN焼結体を配することが必要であり、これによって、切れ刃の強度を高めることができると同時に耐クレータ摩耗性を高めることができる。
ここで、cBN高含有割合の高含有cBN焼結体におけるcBN含有割合が55容量%未満であると、強度改善効果が少ないばかりか、すぐれた耐クレータ摩耗性を確保することができず、一方、cBN含有割合が多くなりすぎるとcBN焼結体の焼結性が低下し、この結果切れ刃に欠損が生じやすくなることから、cBN含有割合は、最大でも80容量%とすることが好ましく、70容量%以下であることがより好ましい。
なお、高含有cBN焼結体には、その成分として、例えば、Ti化合物,TiAl化合物,Al等を含有することができるが、この発明においては、これらの含有量を特に制限するものではない。
しかし、例えば、Ti化合物(TiN、TiCNおよびTiCのうちから選ばれる1種又は2種以上)については、焼結性を向上させるとともに焼結体中で連続相を形成して強度を向上させる作用があるが、その配合割合が少なすぎては所望の強度を確保することができず、一方その配合割合が多すぎては相対的にcBNの含有量が少なくなり、クレータ摩耗などが生じやすくなることから、これらの観点からその配合量を定めることが望ましい。
しかし、例えば、Ti化合物(TiN、TiCNおよびTiCのうちから選ばれる1種又は2種以上)については、焼結性を向上させるとともに焼結体中で連続相を形成して強度を向上させる作用があるが、その配合割合が少なすぎては所望の強度を確保することができず、一方その配合割合が多すぎては相対的にcBNの含有量が少なくなり、クレータ摩耗などが生じやすくなることから、これらの観点からその配合量を定めることが望ましい。
また、TiAl化合物,Alは焼結時に優先的にcBN粉末の表面に凝集し、反応して反応生成物を形成し、焼結後のcBN焼結体中で、連続相を形成するTi化合物相と硬質分散相を形成するcBN相の間に介在するようになり、この反応生成物は前記連続相を形成するTi化合物相と硬質分散相を形成するcBN相のいずれとも強固に密着接合する性質をもつことから、前記cBN相の連続結合相であるTi化合物相に対する密着性が著しく向上させ、切刃の耐チッピング性を向上させるが、その量が多くなりすぎると、cBNの含有量が少なくなり、クレータ摩耗などが生じやすくなることから、これらの観点からその配合量を定めることが必要である。
(b)低含有cBN焼結体:
切れ刃の刃先コーナRから横切れ刃側にかけては、cBN高含有割合の高含有cBN焼結体を配することが必要であることは前記のとおりであるが、その一方、仕上げ面粗さを決定する前切れ刃境界から稜線にかけては、cBN低含有割合の低含有cBN焼結体を配することが必要である。
そして、低含有cBN焼結体におけるcBN含有割合は、高含有cBN焼結体に含有されるcBNの含有割合(即ち、55容量%以上であって、好ましくは80容量%以下、より好ましくは70容量%以下)より10容量%以上少ないことが必要であり、これによって、逃げ面摩耗性、特に前切れ刃境界から切れ刃稜線にかけての前切れ刃境界摩耗性が改善される。
ここで、低含有cBN焼結体におけるcBN含有割合を、高含有cBN焼結体のcBN含有割合との関係で相対的な値として定めたのは、cBN焼結体インサートの切削条件によって切れ刃に求められる強度は異なってくるため、まず、切削条件に適う高含有cBN焼結体のcBN含有割合が定められ、そして、これに合わせて、前切れ刃境界摩耗を抑制するに必要な低含有cBN焼結体におけるcBN含有割合が定められるという理由によるものである。
ただ、低含有cBN焼結体におけるcBN含有割合が少なすぎる場合には、強度が低下するばかりか、耐摩耗性自体も低下することから、低含有cBN焼結体におけるcBN含有割合は、高含有cBN焼結体のそれに比して、10〜25容量%低いことが望ましく、10〜15容量%低いことがより望ましい。
なお、低含有cBN焼結体に含有される成分、例えば、Ti化合物,TiAl化合物,Al等については、前記した高含有cBN焼結体の場合と同様であり、この発明では、これらの成分の含有量を特に制限するものではない。
切れ刃の刃先コーナRから横切れ刃側にかけては、cBN高含有割合の高含有cBN焼結体を配することが必要であることは前記のとおりであるが、その一方、仕上げ面粗さを決定する前切れ刃境界から稜線にかけては、cBN低含有割合の低含有cBN焼結体を配することが必要である。
そして、低含有cBN焼結体におけるcBN含有割合は、高含有cBN焼結体に含有されるcBNの含有割合(即ち、55容量%以上であって、好ましくは80容量%以下、より好ましくは70容量%以下)より10容量%以上少ないことが必要であり、これによって、逃げ面摩耗性、特に前切れ刃境界から切れ刃稜線にかけての前切れ刃境界摩耗性が改善される。
ここで、低含有cBN焼結体におけるcBN含有割合を、高含有cBN焼結体のcBN含有割合との関係で相対的な値として定めたのは、cBN焼結体インサートの切削条件によって切れ刃に求められる強度は異なってくるため、まず、切削条件に適う高含有cBN焼結体のcBN含有割合が定められ、そして、これに合わせて、前切れ刃境界摩耗を抑制するに必要な低含有cBN焼結体におけるcBN含有割合が定められるという理由によるものである。
ただ、低含有cBN焼結体におけるcBN含有割合が少なすぎる場合には、強度が低下するばかりか、耐摩耗性自体も低下することから、低含有cBN焼結体におけるcBN含有割合は、高含有cBN焼結体のそれに比して、10〜25容量%低いことが望ましく、10〜15容量%低いことがより望ましい。
なお、低含有cBN焼結体に含有される成分、例えば、Ti化合物,TiAl化合物,Al等については、前記した高含有cBN焼結体の場合と同様であり、この発明では、これらの成分の含有量を特に制限するものではない。
高含有cBN焼結体と低含有cBN焼結体の一体焼結:
この発明では、cBN高含有割合の高含有cBN焼結体と、低含有割合の低含有cBN焼結体を超高圧下で一体焼結することによって、耐摩耗性、強度に優れる切れ刃材料が形成される。
そして、上記一体焼結したcBN焼結体からなる切れ刃材料を、所定形状に加工し、WC超硬合金基体に形成した凹所に取り付け、ロウ付けにより接合した場合は、高含有cBN焼結体と低含有cBN焼結体の接合界面での異常摩耗や界面付近でのチッピングが発生することもないcBN焼結体インサートが得られる
この発明では、cBN高含有割合の高含有cBN焼結体と、低含有割合の低含有cBN焼結体を超高圧下で一体焼結することによって、耐摩耗性、強度に優れる切れ刃材料が形成される。
そして、上記一体焼結したcBN焼結体からなる切れ刃材料を、所定形状に加工し、WC超硬合金基体に形成した凹所に取り付け、ロウ付けにより接合した場合は、高含有cBN焼結体と低含有cBN焼結体の接合界面での異常摩耗や界面付近でのチッピングが発生することもないcBN焼結体インサートが得られる
本発明のcBN焼結体インサートは、例えば、以下に示す(a)〜(h)の工程によって作製することができる。
(a)70容量%のcBN粉末(粒径2〜4μm)と、残りTiN粉末(粒径0.3〜0.9μm)、TiAl化合物粉末(粒径0.3〜0.9μm)、Al粉末(粒径0.3〜0.9μm)からなる結合相形成成分をボールミルで24時間、アセトンを用いて湿式混合する。
(b)得られた混合粉末を乾燥後、油圧プレスにて成形圧120MPaで成形する。
(c)得られた成形体を、真空中1Pa、温度1000℃、保持時間30分の条件で熱処理し、揮発成分および粉末表面への吸着成分を除去して予備焼結体Aを得る。
(d)一方、50容量%のcBN粉末(粒径2〜4μm)と、残りTiN粉末(粒径0.3〜0.9μm)、TiAl化合物粉末(粒径0.3〜0.9μm)、Al粉末(粒径0.3〜0.9μm)からなる結合相形成成分をボールミルで24時間、アセトンを用いて湿式混合した後、上記工程(b)、(c)と同様にして予備焼結体Bを得る。
(e)上記で得た予備焼結体Aと予備焼結体Bを積層してWC基超硬合金基材に載置し(図2(a)参照)、代表的には、圧力5GPa、温度1500℃、保持時間30分の条件で超高圧高温処理し、一体焼結によって得られた焼結体からなる切れ刃材料を作製する。
(f)焼結体からなる上記切れ刃材料をワイヤ放電加工機で所定の短冊状に切断し(図2(b)参照)、さらに、WC基超硬合金基体のコーナ部に形成した凹所に合致するような所定形状に整え、焼結体からなる切れ刃片(図2(c)参照)を作製する。
(g)上記焼結体からなる切れ刃片を、WC基超硬合金基体に形成した凹所に取り付け、950℃でAg−Cu−Ti系ろう材でろう付する。
(h)上下面および外周研磨、ホーニング処理を施して、ISO規格CNGA120408のcBN焼結体インサート(図2(d)参照)を作製する。
(a)70容量%のcBN粉末(粒径2〜4μm)と、残りTiN粉末(粒径0.3〜0.9μm)、TiAl化合物粉末(粒径0.3〜0.9μm)、Al粉末(粒径0.3〜0.9μm)からなる結合相形成成分をボールミルで24時間、アセトンを用いて湿式混合する。
(b)得られた混合粉末を乾燥後、油圧プレスにて成形圧120MPaで成形する。
(c)得られた成形体を、真空中1Pa、温度1000℃、保持時間30分の条件で熱処理し、揮発成分および粉末表面への吸着成分を除去して予備焼結体Aを得る。
(d)一方、50容量%のcBN粉末(粒径2〜4μm)と、残りTiN粉末(粒径0.3〜0.9μm)、TiAl化合物粉末(粒径0.3〜0.9μm)、Al粉末(粒径0.3〜0.9μm)からなる結合相形成成分をボールミルで24時間、アセトンを用いて湿式混合した後、上記工程(b)、(c)と同様にして予備焼結体Bを得る。
(e)上記で得た予備焼結体Aと予備焼結体Bを積層してWC基超硬合金基材に載置し(図2(a)参照)、代表的には、圧力5GPa、温度1500℃、保持時間30分の条件で超高圧高温処理し、一体焼結によって得られた焼結体からなる切れ刃材料を作製する。
(f)焼結体からなる上記切れ刃材料をワイヤ放電加工機で所定の短冊状に切断し(図2(b)参照)、さらに、WC基超硬合金基体のコーナ部に形成した凹所に合致するような所定形状に整え、焼結体からなる切れ刃片(図2(c)参照)を作製する。
(g)上記焼結体からなる切れ刃片を、WC基超硬合金基体に形成した凹所に取り付け、950℃でAg−Cu−Ti系ろう材でろう付する。
(h)上下面および外周研磨、ホーニング処理を施して、ISO規格CNGA120408のcBN焼結体インサート(図2(d)参照)を作製する。
なお、上記で一体焼結した予備焼結体Aと予備焼結体Bとの界面を光学顕微鏡で観察したところ、図5に示すように、界面は密着接合しており、界面欠陥の存在は確認されなかった。
本発明によれば、cBN焼結体インサートの切れ刃の刃先コーナRから横切れ刃側にかけては、cBN高含有割合の高含有cBN焼結体を配し、一方、仕上げ面粗さを決定する前切れ刃境界摩耗から稜線部にかけては、cBN低含有割合の低含有cBN焼結体を配するとともに、高含有cBN焼結体と低含有cBN焼結体を超高圧下で一体焼結することによって、耐摩耗性、強度に優れるとともに、上記cBN焼結体からなる切れ刃をロウ付けした接合界面に異常摩耗やチッピング発生のないcBN焼結体インサートを得られる。
つぎに、本発明を実施例により具体的に説明する。
(a) 高含有cBN焼結体の原料粉末として、表1に示される平均粒径を有するcBN粉末と、0.3〜0.9μmの平均粒径を有するTi化合物粉末、TiAl化合物粉末、Al粉末、を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で成形し、得られた成形体を、1Paの真空中、温度1000℃、保持時間30分の条件で熱処理して、揮発成分および粉末表面への吸着成分を除去して予備焼結体Aを作製した。
(b) ついで、低含有cBN焼結体の原料粉末として、表1に示される平均粒径を有し、予備焼結体Aより10容量%以上少ないcBN粉末と、0.3〜0.9μmの平均粒径を有するTi化合物粉末、TiAl化合物粉末、Al粉末、を用意し、これら原料粉末を、高含有cBN焼結体の場合と同様に処理し、予備焼結体Bを作製した。
(c) ついで、予備焼結体Aと予備焼結体Bを積層してCo:8質量%、WC:残りの組成をもったWC基超硬合金基材に載置し、圧力5GPa、温度1500℃、保持時間30分の条件で超高圧高温処理し、一体焼結によって切れ刃材料を作製し、これを、ワイヤ放電加工機で短冊状に切断し、さらに、WC基超硬合金基体のコーナ部に形成した幅:約1.5mm、長さ:約3mm、最大厚み:約0.5mmの凹所に合致する形状の切れ刃片を作製した。
(d) この切れ刃片を、WC基超硬合金基体に形成した凹所に取り付け、950℃でAg−26質量%Cu−5質量%Ti系ろう材でろう付し、上下面および外周研磨およびホーニング処理を施すことにより、表2に示されるISO規格CNGA120408の本発明cBN焼結体インサート1〜5、11〜15を作製した。
(b) ついで、低含有cBN焼結体の原料粉末として、表1に示される平均粒径を有し、予備焼結体Aより10容量%以上少ないcBN粉末と、0.3〜0.9μmの平均粒径を有するTi化合物粉末、TiAl化合物粉末、Al粉末、を用意し、これら原料粉末を、高含有cBN焼結体の場合と同様に処理し、予備焼結体Bを作製した。
(c) ついで、予備焼結体Aと予備焼結体Bを積層してCo:8質量%、WC:残りの組成をもったWC基超硬合金基材に載置し、圧力5GPa、温度1500℃、保持時間30分の条件で超高圧高温処理し、一体焼結によって切れ刃材料を作製し、これを、ワイヤ放電加工機で短冊状に切断し、さらに、WC基超硬合金基体のコーナ部に形成した幅:約1.5mm、長さ:約3mm、最大厚み:約0.5mmの凹所に合致する形状の切れ刃片を作製した。
(d) この切れ刃片を、WC基超硬合金基体に形成した凹所に取り付け、950℃でAg−26質量%Cu−5質量%Ti系ろう材でろう付し、上下面および外周研磨およびホーニング処理を施すことにより、表2に示されるISO規格CNGA120408の本発明cBN焼結体インサート1〜5、11〜15を作製した。
比較のため、表1に示される平均粒径を有するcBN粉末と、0.3〜0.9μmの平均粒径を有するTi化合物粉末、TiAl化合物粉末、Al粉末、Al2O3粉末、WC粉末等を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で成形し、得られた成形体を、1Paの真空中、温度1000℃、保持時間30分の条件で熱処理して、揮発成分および粉末表面への吸着成分を除去して予備焼結体を作製し、この予備焼結体をCo:8質量%、WC:残りの組成をもったWC基超硬合金基材に載置し、前記(c)、(d)と同様な工程で、表2に示されるISO規格CNGA120408の比較例cBN焼結体インサート6〜10、16〜20を作製した。
なお、比較例cBN焼結体インサート6〜9、16〜19については、予備焼結体Aのみを使用して焼結し、予備焼結体Bは使用しなかった。
なお、比較例cBN焼結体インサート6〜9、16〜19については、予備焼結体Aのみを使用して焼結し、予備焼結体Bは使用しなかった。
次に、本発明cBN焼結体インサート1〜10について、予備焼結体Aと予備焼結体Bとの接合界面について、光学顕微鏡で界面の接合状態の観察を行った。
図5に観察結果の一例を示すが、本発明cBN焼結体インサート1〜5、11〜15のいずれについても界面欠陥は観察されず、健全な界面接合であることを確認した。
図5に観察結果の一例を示すが、本発明cBN焼結体インサート1〜5、11〜15のいずれについても界面欠陥は観察されず、健全な界面接合であることを確認した。
次に、本発明cBN焼結体インサート1〜5および11〜15、比較例cBN焼結体インサート6〜10および16〜20のそれぞれについて、浸炭処理された合金鋼SCr420(表面硬度HRc60)を被削材として、切削性能試験を実施した。
≪切削条件A≫
丸棒の外径連続切削
被削材:SCr420(表面硬度HRc60)
切削速度:250m/min
送り:0.15mm/rev
切込み:0.2mm
≪切削条件B≫
長軸方向に幅10mmの2本の溝が付いた丸棒の外径断続切削
被削材:SCr420(表面硬度HRc60)
切削速度:150m/min
送り:0.20mm/rev
切込み:0.4mm
≪切削条件A≫
丸棒の外径連続切削
被削材:SCr420(表面硬度HRc60)
切削速度:250m/min
送り:0.15mm/rev
切込み:0.2mm
≪切削条件B≫
長軸方向に幅10mmの2本の溝が付いた丸棒の外径断続切削
被削材:SCr420(表面硬度HRc60)
切削速度:150m/min
送り:0.20mm/rev
切込み:0.4mm
上記切削性能試験において、それぞれの切削距離(km)、切れ刃の状況、工具寿命を測定・観察するとともに、工具寿命に至った理由について調査した。
表2に、それらの試験結果等を示した。
表2に、それらの試験結果等を示した。
表2に示される結果から、本発明cBN焼結体インサート1〜5および11〜15は、加工距離が長く、仕上げ面粗さにすぐれ、長時間加工可能であったのに対して、比較例cBN焼結体インサート6〜10および16〜20は、クレータ摩耗の進行による欠損、または、境界摩耗の進行による面粗さの悪化により、本発明に比べて短時間で寿命に達した。
面粗さに関しては、切削条件と刃先コーナRの寸法で決まる理論面粗さの2倍を越えた時を寿命とした。測定には、接触式の面粗さ計を用いた。
なお、図6は、比較例cBN焼結体インサートで観察された前切れ刃境界摩耗を撮影した走査型電子顕微鏡写真(倍率:100倍)であり、図7は、比較例cBN焼結体インサートで観察されたクレータ摩耗を撮影した走査型電子顕微鏡写真(倍率:100倍)である。
面粗さに関しては、切削条件と刃先コーナRの寸法で決まる理論面粗さの2倍を越えた時を寿命とした。測定には、接触式の面粗さ計を用いた。
なお、図6は、比較例cBN焼結体インサートで観察された前切れ刃境界摩耗を撮影した走査型電子顕微鏡写真(倍率:100倍)であり、図7は、比較例cBN焼結体インサートで観察されたクレータ摩耗を撮影した走査型電子顕微鏡写真(倍率:100倍)である。
以上のとおり、本発明のcBN焼結体インサートは、チッピング、欠損等の異常損傷の発生がなく、仕上げ面粗さに優れ、長期の使用に亘って優れた切削性能を発揮するものであって、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
1 切れ刃
2 WC基超硬合金基体
11,21,31 高含有cBN焼結体
12,22,32 低含有cBN焼結体
13,23,33 WC基超硬合金焼結体
2 WC基超硬合金基体
11,21,31 高含有cBN焼結体
12,22,32 低含有cBN焼結体
13,23,33 WC基超硬合金焼結体
Claims (1)
- WC基超硬合金基体に対して、立方晶窒化硼素基超高圧焼結体からなる切れ刃材料を切れ刃として固着接合した立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサートにおいて、
該切れ刃の前切れ刃境界より横切れ刃側にかけては、立方晶窒化硼素の含有量が55容量%以上である高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成し、一方、前切れ刃境界から稜線にかけては、上記高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体より立方晶窒化硼素の含有量が10容量%以上少ない低含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体で構成し、上記高含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体と上記低含有立方晶窒化硼素基超高圧焼結体が一体焼結されていることを特徴とする立方晶窒化硼素基超高圧焼結体インサート。
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